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【発明の名称】 電着塗装システムおよび電着塗装方法
【発明者】 【氏名】清沢 進

【要約】 【課題】より効率的に電着塗装を実施できる電着塗装システムを提供する。

【構成】電着塗装システムは、電着槽(10)および電着槽の電着液をUF濾過するUFフィルター(19)を有して成る電着塗装システムは、UF濾過すべき電着液を予め濾過する、ゴミ取りフィルターと油吸着フィルターを組み合わせたプレフィルター(17)を更に有して成る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電着槽および電着槽の電着液をUF濾過するUFフィルターを有して成る電着塗装システムであって、UF濾過すべき電着液を予め濾過する、ゴミ取りフィルターと油吸着フィルターを組み合わせたプレフィルターを更に有して成る電着塗装システム。
【請求項2】
油吸着フィルターは、オイルマグネットフィルターである電着塗装システム。
【請求項3】
プレフィルターはカートリッジ型である請求項1または2に記載の電着塗装システム。
【請求項4】
プレフィルターはバッグ型である請求項1または2に記載の電着塗装システム。
【請求項5】
電着槽および電着槽の電着液をUF濾過するUFフィルターを有して成る電着塗装システムを用いて被塗物を電着塗装する方法であって、
UF濾過すべき電着液を、ゴミ取りフィルターと油吸着フィルターを組み合わせたプレフィルターに予め通し、プレフィルターから排出される電着液をUFフィルターに通すことを特徴とする電着塗装方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の電着塗装システムを用いて実施する、請求項5に記載の電着塗装方法。
【請求項7】
水洗槽および水洗槽から排出される洗浄液をUF濾過するUFフィルターを有して成る水洗システムを用いて被塗物を洗浄する方法であって、
UF濾過すべき洗浄液を、ゴミ取りフィルターと油吸着フィルターを組み合わせたプレフィルターに予め通し、プレフィルターから排出される水洗液をUFフィルターに通すことを特徴とする洗浄方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、電着塗装システムおよび電着塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電着塗装は、複雑な形状を有する被塗物であってもその細部にまで塗装を施すことができ、自動的かつ連続的に塗装することができるので、自動車車体などの大型で複雑な形状を有し、かつ高い防錆性が要求される被塗物の下塗り塗装方法として汎用されている。また、他の塗装方法と比較して、塗料の使用効率が極めて高いことから経済的であり、工業的な塗装方法として広く普及している。
【0003】
電着槽において電着塗装すべき被塗物は、油分に加えて、いわゆるゴミ、ブツと呼ばれるものをはじめとして、種々の夾雑物を同伴している。そのような被塗物を電着槽に浸漬するので、電着槽の電着液には、このような夾雑物が蓄積すると、電着塗装に悪影響を与えることになるので、夾雑物を除去するように電着塗装システムは構成されている。
【0004】
そのような電着塗装システムの一例をフローシートにて図2に模式的に示す。このシステムでは、電着槽1からオーバーフローした電着液の一部分を、ポンプ2によってゴミ取りフィルター3に通して夾雑物を除去し、その後、ゴミ取りフィルター3から排出される電着液をUF濾過するUFフィルター4に通し、得られる濃縮された電着液を電着槽1に戻して再度利用している。尚、電着槽内の電着液の撹拌効果を狙って、ポンプ2’を用いて大きい流量で電着液をゴミ取りフィルター3’に通す場合もある。
【0005】
図示した態様では、電着槽1からオーバーフローした電着液が一旦泡切槽5に流入し、そこで電着液の液面に浮いた油分を吸油材等を用いて除去した後、その電着液の一部分をプレフィルター3に通して夾雑物を除去している。
尚、ハジキの発生を防止するために、電着塗装システムにおいて、ハジキの原因となる揮発成分や油分を除去するために、電着槽からオーバーフローした電着液をオイルマグネットフィルターを用いた重力濾過によって処理することが提案されている(下記特許文献1参照)。また、電着塗装システムにおいて、ハジキの原因となる揮発成分や油分を除去するために、電着槽からオーバーフローした電着液の一部分のみをオイルマグネットフィルターに通すことが提案されている(下記特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2006−9127号公報
【特許文献2】特開2003−306797号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図示した電着塗装システムでは、電着塗料の上面に浮いた油分の一部しか除去することができず、除去効率が悪かった。また、油分の吸着を、マットのような吸油材などを浮かして取除いていたので、人手がかかり作業性が悪かった。このような方法では、UFフィルター(限外濾過膜)でUF濾過すべき電着液における油分の除去が十分ではなく、その結果、UFフィルターが油分によって目詰まりし、UFフィルターの濾過能力、即ち、透過量が著しく減少し、UFフィルターを頻繁に交換する必要があった。特許文献1に記載の塗装システムでは、オイルマグネットフィルターを使用して重力濾過するだけであるので、電着液からの不純物の除去が必ずしも十分ではないという問題がある。特許文献2に記載の塗装システムでは、図示した電着塗装システムと同様に、油の除去が十分ではなく、UFフィルターの交換頻度が高いという問題がある。従って、より効率的に電着塗装を実施できる電着塗装システムを提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らが鋭意検討した結果、電着槽の電着液の一部分を濾過するに際して、特に上述のようにオーバーフローして泡切槽5に流入する電着液をUFフィルターでUF濾過するに際して、UF濾過に先立って、ゴミ、ブツ等の除去に用いる、いわゆるゴミ取りフィルターに油吸着材のフィルターを組み合わせたプレフィルターによる予備的濾過に付し、その後、UF濾過することによって、UFフィルターの濾材の寿命が飛躍的に延びることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0008】
即ち、本発明は、電着槽および電着槽の電着液を濾過するUFフィルターを有して成る電着塗装システムであって、UF濾過すべき電着液を予め濾過する、ゴミ取りフィルターと油吸着フィルターとを組み合わせたプレフィルターを有して成る電着塗装システムを提供する。
【0009】
本発明のシステムに用いるプレフィルターを構成する油吸着フィルターに用いる濾材は、油吸着材として用いられる繊維製品からできているものであってよい。そのような繊維製品としては、例えば東レ株式会社から市販されている「WOSEP(商品名)」を挙げることができる。
【0010】
本発明のシステムに用いるプレフィルターを構成するゴミ取りフィルターに用いる濾材は、先に説明したように、電着塗装システムにおいてゴミ、ブツ等の夾雑物を除去するために常套的に用いられている比較的目の粗い濾材である。具体例としては、Hayward Industrial Products Inc.社製のPD−50−P2(バッグ型)、チッソ株式会社製のCPフィルター:CP−50−T(カートリッジ型)等をゴミ取りフィルターとして例示できる。このようなフィルターの細孔径は一般的には5〜100μm、通常は25〜50μmである。
【0011】
本発明のシステムに用いるプレフィルターは、上述の油吸着フィルターとゴミ取りフィルターとを組み合わせたものである。そのような組み合わせは、いずれの適当な態様であってもよいが、好ましい態様として、ゴミ取りフィルターの周囲に油吸着フィルターを配置する態様、および油吸着フィルターの周囲にゴミ取りフィルターを配置する態様を例示できる。
【0012】
具体的には、プレフィルターはカートリッジ型であり、この場合、円筒状のゴミ取りフィルターの濾材の外側周囲に袋状(またはバッグ状)または筒状の油吸着材を配置することによって、油吸着フィルターとゴミ取りフィルターとを組み合わせる。
【0013】
別の具体的な態様では、プレフィルターはバッグ型であり、この場合、バッグ状のゴミ取りフィルターの濾材の内側周囲に袋状(またはバッグ状)または筒状の油吸着材を配置することによって油吸着フィルターとゴミ取りフィルターとを組み合わせるか、あるいは、バッグ状のゴミ取りフィルターの濾材の外側周囲に袋状(またはバッグ状)の油吸着材を配置することによって、油吸着フィルターとゴミ取りフィルターとを組み合わせる。
【0014】
尚、袋状(またはバッグ状)の油吸着材としては、オイルマグネット(OIL MAGNET、UNIVERSAL FILTER, INC.社の商標)と呼ばれているフィルター(例えば品番OS−29等)を使用できる。また、LOFCLEAR(ヘイワードジャパン社製)として市販されているフィルターバッグも使用できる。
【0015】
更に、本発明は、電着槽および電着槽の電着液をUF濾過するフィルターを有して成る電着塗装システムを用いて被塗物を電着塗装する方法をも提供し、この方法は、UF濾過すべき電着液を、ゴミ取りフィルターと油吸着フィルターを組み合わせたプレフィルター予め通し、プレフィルターから排出される電着液をUFフィルターに通すことを特徴とする。この電着塗装方法は、上述の本発明の電着塗装システムによって好適に実施できる。
【発明の効果】
【0016】
後述の実施例からも理解できるように、本発明の電着塗装システムでは、ゴミ取りフィルターと油吸着フィルターを組み合わせたプレフィルターを設けることによって、電着槽に戻す濃縮電着液を生成するUFフィルターに供給すべき電着液に含まれる油分が低下すると共に、UFフィルターの濾過能力の低下が飛躍的に抑制される。その結果、UFフィルターの濾材の交換頻度が大幅に減少する。
【発明の実施の形態】
【0017】
以下、本発明の電着塗装システムの一例を示す模式図である図1を用いて本発明を更に詳細に説明する。
【0018】
本発明の電着塗装システムは、電着槽10、それからオーバーフローする電着液を受容するオーバーフロー電着液受容槽15(これは、先に説明した泡消槽であってもよい)、プレフィルター(PF)17およびUFフィルター(UF)19を有して成る。プレフィルター17は、ゴミ取りフィルターと油吸着フィルターを組み合わせることによって構成されている。
【0019】
電着槽10からの電着液は、ポンプ11によって、受容槽15からプレフィルター17へ、そして、プレフィルター17に対して直列に設けられたUFフィルター19へと送られ、UFフィルター19によって濃縮された塗料を含む電着液が電着槽10へとリサイクルされる。被塗物20は、電着槽10に浸けて、その後、そこから取り出すことによって電着塗装される。
【0020】
図示していないが、UFフィルター19の透過液は、例えば、被塗物の電着後の洗浄処理工程において洗浄液として使用してよい。また、本発明の電着塗装システムでは、受容槽15を省略して、電着槽10から電着液の一部を直接取り出して、プレフィルター17に送るように構成することもできる。
【0021】
プレフィルター17として用いるのは、通常のゴミ取りフィルターに油吸着フィルターを組み合わせたものであり、ゴミ取りフィルターは、バッグ型、カートリッジ型等であってよい。油吸着フィルターは、例えばいわゆるオイルマグネットフィルター(OMF)と呼ばれているものであってよい。油吸着フィルターの濾材に使用できる材料としては、油吸着を目的としたものであれば、特に限定されるものではない。例えば、ポリプロピレン材でできた油吸着材を使用できる。一例として、上述のUNIVERSAL FILTER,INC.社の品番OS−29、WOSEP(商品名)(東レ株式会社製)等を好適に使用できる。
【実施例】
【0022】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
実施例1
図1に示した本発明の電着塗装システムを構成した。電着液(電着塗料としてパワーニックス(日本ペイント株式会社製)を30m貯留)が貯留された電着槽10に、電着のための前処理(脱脂、水洗、表面調整、化成処理、および水洗)を実施した被塗物20(具体的にはオイルパン)を600m/hrの割合で浸漬し、その後、取り出して電着塗装を実施した。浸漬時間は3分であった。
【0023】
この電着槽から電着液を取り出し、プレフィルター17(濾材としてGAF:PD−50−P2(ゴミ取りフィルター)+WOSEP(油吸着フィルター)を使用、円筒状のモジュールタイプ、10本)に供給し、プレフィルター17の後、UFフィルター19に通して、その後、濃縮された電着液を電着槽10に戻した。
【0024】
この操作を150日間継続し、UFフィルターの濾過能力の低下、即ち、UFフィルターの透過液量の低下割合を測定したところ、モジュール1本当たりの透過液量の低下割合は0.1リットル/10週であった。
【0025】
比較例1
油吸着フィルターを有さないプレフィルターを使用して、実施例1を繰り返したところ、モジュール1本当たりの透過液量の低下割合は0.1リットル/1週であった。
【産業上の利用可能性】
【0026】
上述の記載から明らかなように、本発明の電着塗装システムは、電着塗装を実施する場合に好適に使用できる。しかしながら、電着塗装だけではなく、電着塗装後に実施する、電着塗装された被塗物の水洗工程にて発生する、電着塗料を含む洗浄液をフィルターで濾過処理、特にUFフィルターで濾過処理するに先立って、上述のプレフィルターによって処理することによって、同様に、フィルターの濾材の交換頻度を大幅に減らすことができる。即ち、本発明の電着塗装システムは、電着液に代えて、水洗によって生じる洗浄液に適用することによって、水洗システムとして利用することができる。
【0027】
即ち、本発明は、水洗槽および水洗槽から排出される洗浄液をUF濾過するフィルターを有して成る水洗システムであって、UF濾過すべき洗浄液を予め濾過する、ゴミ取りフィルターと油吸着フィルターを組み合わせたプレフィルターを更に有して成る洗浄システムをも提供する。加えて、上述の電着塗装方法と同様にして、UF濾過すべき電着液に代えて、UF濾過すべき洗浄液をプレフィルターに付すことを特徴とする、被塗物、特に電着塗装した被塗物の洗浄方法をも提供する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の電着塗装システムの一例のフローシートを示す模式図である。
【図2】従来の電着塗装システムの一例のフローシートを示す模式図である。
【符号の説明】
【0029】
1…電着槽、2,2’…ポンプ、3,3’…ゴミ取りフィルター、
4…UFフィルター、5…泡切槽、10…電着槽、11…ポンプ、
15…オーバーフロー電着液受容槽、17…プレフィルター、19…UFフィルター、
20…被塗物。
【出願人】 【識別番号】000230054
【氏名又は名称】日本ペイント株式会社
【出願日】 平成18年6月30日(2006.6.30)
【代理人】 【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦

【識別番号】100107180
【弁理士】
【氏名又は名称】玄番 佐奈恵


【公開番号】 特開2008−7831(P2008−7831A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−181115(P2006−181115)