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【発明の名称】 ハロゲン系溶液からの板状電気銅の製造方法
【発明者】 【氏名】土屋 弘雄

【要約】 【課題】銅硫化鉱のハロゲン系浸出液に平滑化添加剤としてポリエチレングリコールを添加したハロゲン系電解液から銅を電解採取する方法では、緻密な電着銅を得るためには、電解液をカソード近傍で強制的に攪拌する必要がある。

【解決手段】カソード2の近傍にカソード2に対して一回り小さい窓6bを開けた遮蔽板6を設置して、電解液の強制撹拌を併用せずに、緻密な板状電気銅を製造する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅硫化鉱のハロゲン系浸出液に平滑化添加剤としてポリエチレングリコールを添加したハロゲン系電解液から銅をカソードに電着する銅の電解採取方法において、前記カソードの近傍にカソードに対して一回り小さい窓を開けた遮蔽板を設置して、前記遮蔽板の前記窓以外の周縁板部を前記カソードの端部に対向させ、電解液の強制撹拌を併用せずに、緻密な板状電気銅を製造することを特徴とするハロゲン系溶液からの板状電気銅の製造方法。
【請求項2】
前記電解採取後の電解後液により銅硫化鉱を浸出することを特徴とする請求項1記載のハロゲン系溶液からの板状電気銅の製造方法。
【請求項3】
前記ハロゲン系銅電解液が、支持塩として3mol/L以上のアルカリ金属の塩化物、臭化物及びこれらの混合物の少なくとも1種を含む液に、銅の塩化物及び臭化物の少なくも1種を溶解した溶液であることを特徴とする請求項1又は2記載のハロゲン系溶液からの板状電気銅の製造方法。
【請求項4】
前記ハロゲン系銅電解液中のポリエチレングリコールの濃度が10mg/Lから100mg/Lであることを特徴とする請求項1から3までの何れか1項記載のハロゲン系溶液からの板状電気銅の製造方法。
【請求項5】
カソード上の電流密度を125A/m以下として電解採取することを特徴とする請求項1から4までの何れか1項記載のハロゲン系溶液からの板状電気銅の製造方法。
【請求項6】
カソードと遮蔽板との間隔(X)は、カソードが遮蔽板の周縁板部と対向する幅(Y)の1/2より大きい、X>Y/2ことを特徴とする請求項1から5までの何れか1項記載のハロゲン系溶液からの板状電気銅の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、電解採取による金属銅製造に関するものであり、より詳しく述べるならばハロゲン系溶液から緻密な組織を有する板状電気銅を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
SX−EW法に代表される銅電解採取法は金属銅の製造方法として広く実用化されている。現在使われている方法は、主に酸化鉱を対象として硫酸を使って原料銅鉱石から銅を浸出し溶媒抽出や浄液工程を経て精製・濃縮した硫酸系銅電解液から金属銅を製造するものである。これに対して、塩化物などのハロゲン系溶液を用いて銅を浸出した液から銅を電解採取する技術が検討されてきた。(特許第2857930号:特許文献1)
【0003】
ハロゲン系溶液を用いる浸出法の長所としては、(1)アノード酸化で生じる単体塩素や臭素またはその化合物の強い酸化性を利用して反応性の低い硫化鉱等を分解し、鉱石に含まれる金や銀も浸出できること、(2)高濃度のハロゲン塩類を含む液中で銅が一価の状態で安定に溶存するために一価銅イオンとして電解するために、硫酸浴での二価電解に比べ半分の電気量で金属銅が製造できること、(3)イオンの伝導性・交換電流密度が高く高電流密度でも大幅には電流効率が低下しないため生産性が高いこと、などが挙げられる。
【特許文献1】特許第2857930号
【特許文献2】オーストラリア特許出願200502863号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ハロゲン系溶液からの電解採取では、電着する金属銅がデンドライト状粉末ないしは凝集粗粒となる。このため、硫酸浴から製造される電気銅が板状の電着カソードのまま取り出し販売できるのに対し、電解槽からの銅の取り出し・洗浄・製品鋳造などのハンドリングに手間がかかる。また。洗浄を重ねても銅粉末は酸化しやすいため、製品の品位低下の要因となる。
【0005】
このような問題を解決するため、塩化浴の一価銅電解で平滑な電着物を得る条件が実験室レベルで検討されてきた。しかし、ハロゲン系溶液では、硫酸浴に比べて突起状・デンドライト状電着をする傾向が強く、硫酸浴で電着物の緻密化・平滑化に効果のある添加剤、例えばニカワ(ゼラチン)を用いる場合でも数g/L近くの高濃度で添加した上で電流密度を低く抑えて操業する必要があり、長時間にわたって緻密で平滑な電着銅を製造する実用的な条件は知られていなかった。また、既存の方法ではいずれの場合も、緻密な電着を得るためにカソライトを窒素やアルゴンなどの不活性ガスで激しく撹拌する、あるいはカソードを振動・揺動させて電極近傍の液を動かすなど、液を強制的に機械撹拌してイオンの供給を促す必要があった。このため、実用化するには複雑な機構を有する電解装置を必要とするものであった。
【0006】
特許文献2:本出願人のオーストラリア特許出願第200502863は、平滑化剤としてポリエチレングリコール添加剤を含み、且つカソード近傍でハロゲン化物電解質を撹拌しつつハロゲン化銅からの金属銅の電解採取を行うことにより緻密な板状電気銅を製造することを開示している。ポリエチレングリコール添加剤は他の添加剤よりもデンドライト状電着物の形成を抑制しかつ銅電着物を緻密化する効果が大きい。この特許文献2では次のように述べられている。「緻密な電着銅を製造するためにはカソード液は、例えば撹拌板により撹拌されなければならない。撹拌を行なわないと、カソード液に濃度勾配が形成され、添加剤の効果、すなわち電気銅の緻密化及び平滑化が著しく損なわれる。添加剤の効果はポリエチレングリコールが電気銅の表面に強く凝着することによる。」
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ハロゲン系銅電解液からの銅電解採取において、一価電解の利点を生かす一方、電解槽からの取り出しや製品洗浄などのハンドリング性に優れた緻密な板状の電気銅を、実用的な電流密度で製造可能とする技術を提案するものである。特に、本発明は特許文献2で提案された電解液撹拌の必要性をなくして、しかも緻密な板状電気銅を製造する方法を提案するものである。
【0008】
本発明者は、各種の有機添加剤のうちでデンドライト成長を抑制し電着銅の組織を緻密化する上で特異的に効果を有するポリエチレングリコール(PEG)を添加したハロゲン系溶液からの銅の電解採取は、カソード端部での電流集中による影響が大きく、これを緩和するために窓を開けた遮蔽板が有効であることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、
(1)銅硫化鉱のハロゲン系浸出液に平滑化添加剤としてポリエチレングリコールを添加したハロゲン系銅電解液から銅をカソードに電着する銅の電解採取方法において、カソードの近傍にカソードに対して一回り小さい窓を開けた遮蔽板を設置して、遮蔽板の窓以外の部分を前記カソードの端部に対向させ、電解液の強制撹拌を併用せずに、緻密な板状電気銅を製造することを特徴とするハロゲン系溶液からの板状電気銅の製造方法、
(2)電解採取後の電解後液により銅硫化鉱を浸出することを特徴とする(1)項記載のハロゲン系溶液からの板状電気銅の製造方法、
(3)ハロゲン系銅電解液が、支持塩として3mol/L以上のアルカリ金属の塩化物、臭化物及びこれらの混合物の少なくとも1種を含む液に、銅の塩化物及び臭化物の少なくも1種を溶解した溶液であることを特徴とする(1)又は(2)項記載のハロゲン系溶液からの板状電気銅の製造方法、
(4)ハロゲン系銅電解液中のポリエチレングリコールの濃度が、10〜100mg/L,好ましくは20mg/Lから40mg/Lであることを特徴とする(1)から(3)項までの何れか1項記載のハロゲン系溶液からの板状電気銅の製造方法、
(5)カソード上の電流密度を125A/m以下として電解採取することを特徴とする(1)から(4)項までの何れか1項記載のハロゲン系溶液からの板状電気銅の製造方法、
(6)カソードと当該遮蔽板との間隔(X)は、カソードが遮蔽板の周縁板部と対向する幅(Y)の1/2より大きい、X>Y/2ことを特徴とする(1)から(5)項までの何れか1項記載のハロゲン系溶液からの板状電気銅の製造方法、
である。
【0009】
本発明により達成される効果は次のとおりである。
(1)窓を開けた遮蔽板を使用すると、電流は窓のみから流れるために、カソード端部での電流集中が抑制される。このために、銅硫化鉱のハロゲン系銅電解液を機械的手段、ガス吹込みなどにより強制撹拌をする必要がなくなり、この結果、設備コスト及び操業コストが低くなる。
(2)平滑化剤としてポリエチレングリコールを添加することにより、ハロゲン系銅電解溶液から緻密な組織を有する電着銅を製造できるため、電解槽からの製品取り出しが容易である。また、電着物の洗浄性に優れ、表面汚染・酸化の問題もないため、製品品位が改善する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、銅を溶解したハロゲン系溶液に、平滑化添加剤としてポリエチレングリコールを添加して行う銅の電解採取法一般に適用することができる。但し、高能率操業を安定して行い、かつ良好な品質の電着銅を製造するためには次のような操業法が必要となる。
先ず、ハロゲン系銅電解液では、塩基性塩や一価銅ハロゲン化物の沈殿生成を防ぐためのpH条件は、pH1〜3の酸性条件であり、かつ一価銅をハロゲン錯イオンとして安定に溶解し、高能率操業を行なうためには、塩化ナトリウムなどのハロゲン化アルカリを支持塩として高濃度に溶解した液であることが好ましい。銅錯イオンが安定で十分に高い溶解度を持つには支持塩濃度は少なくとも3mol/L以上であることが好ましく、特に好ましくは4mol/L以上で飽和溶解度未満の濃度である。
【0011】
本発明の実施方法の一例を図1に示す。
ハロゲン系銅電解液からの電解採取には、アノード室10とカソード室11とを濾布4などの隔膜で隔離した装置1を用いた隔膜電解法を用いることが好ましい。カソード室11には鉱石浸出により得た高Cu濃度の液を供給し、一価銅イオンを還元してカソード2に金属銅5を析出させる。
【0012】
鉱石浸出後の液には空気酸化や反応不足のため若干の二価銅が含まれており、電解時にカソード電流の無駄を生みカソード・アノード反応のバランスを崩す。このため浸出液は還元用の槽で金属銅を用いてあらかじめ二価銅を還元して一価にした後、電解液としてカソード室11に供給することが好ましい。
【0013】
本発明においては、ハロゲン系銅電解液に所定量のポリエチレングリコールを添加して電解採取を行う。
添加剤のポリエチレングリコールは事前に給液(浸出液)に混合しておくか、カソード室11内に供給して給液およびカソライトと混合する。
【0014】
添加剤のポリエチレングリコールには、重合度として好ましくは平均分子量600から4,000、より好ましくは1,000から2,000の範囲の製品を用いる。分子量600未満の低分子量の製品は電着緻密化効果が弱く実用性は乏しく、一方分子量4,000を超える製品では電着物はおおむね緻密なもののカソード周囲の電流集中部で突起や凹凸が成長しやすい傾向があり、24時間以上の長時間の連続操業に使用するには適していない。
添加剤の濃度は、電解条件(カソード電流密度)やカソード室内部の液撹拌状態により適切な値が異なる。ところで機械撹拌によりカソード近傍のカソライトを強く流動させカソード表面への添加剤供給を促せば、2から10mg/Lの添加剤濃度でも緻密で平滑な電着をするが、液の強制撹拌を行わずに、硫酸浴銅電解と同様に浸出液を電解槽に供給するだけで、電解採取時のカソード近傍液の銅濃度低下による液の自然対流の作用で混合するだけの場合には、添加剤濃度を10から100mg/L、好ましくは20から40mg/Lの範囲に増やす必要がある。
【0015】
添加剤濃度がこの範囲より低い場合には、電着組織の緻密化・平滑化効果を十分に達成するためには、電流密度を非常に低いレベルに下げる必要がある。ある程度の電流密度において、添加剤濃度が低いと、部分的に突起が集中成長してショートを起こす問題を生じる。添加剤濃度はさらに増やすことも可能であるが、大きな改善効果は得られない。また、電解採取後の液(銅濃度の低下したアノライト)を浸出工程に戻す際、系内に余分な未分解の添加剤を持ち込む問題が生じる。実用的には、後述の電流密度の範囲で操業する場合、前記のとおり10〜100mg/L,特に20から40mg/Lの範囲で十分な効果が得られる。
【0016】
カソード上の電流密度分布は、銅の緻密電着に影響を与える。ポリエチレングリコールを添加したハロゲン系銅電解液では、電流密度がある上限を超えるとカソード面の何れかの部分に局部的に電着が集中して、突起が急激に成長しカソードとアノードないしは隔膜との間でショートする問題を生じる。
液を機械撹拌する場合には、電流密度250A/mでも緻密電着するが、本発明の目的とする、強制撹拌無しの場合には、操業電流密度を125A/m以下にとどめるのが好ましい。下限は、特に限定されないが、高いほど能率上好ましい。150A/m以上ではカソライトの循環撹拌など、給液よりもさらに強力な液の流動・混合を促す方法を併用しないと電着銅に生じた部分的な凹凸から突起が異常成長することを防ぐのは困難である。
【0017】
カソードの端部は電流が集中して実効電流速度が高くなるので、カソード全体の平均電流密度が低くても突起を生じやすい。この対策として、カソードとアノード室隔膜との間にカソードに対し一回り小さな窓を開けた遮蔽板を設け、周縁板部をカソードの端部と対向させることにより端部への電流集中を緩和する。
一般に、カソード母板は形状が正方形もしくは矩形であり、また幅が500〜1000mm、高さが500〜1000mmである。したがってカソードの端部は上記正方形もしくは矩形に沿って延びており、突起が成長し易い領域であり、電流密度に依存するが一般に10〜15mmである。端部領域を除くカソード表面を以下「主要部」という。
遮蔽板6(図2)の窓6bは主要部と実質的に同じ方法を有しており、したがって、板部6aは端部と実質的に同じ方法を有しており、電気的絶縁性・液体非透過性材料よりなる。
【0018】
遮蔽板6(図1,2)の設置位置はカソード2と窓(6b,図2)の大きさにあわせて窓6bが主要部に対向し、周縁の板部がカソードの端部と対向するようにする。カソード2上に銅が析出して距離が縮まるためカソード引上げ作業を妨げないだけの距離をとる必要がある。カソードを7〜10日に一回の頻度で引き上げる場合、電着銅は表面の凹凸も含めると10〜15mmの厚みで母板に析出するので、少なくともこの電着量に応じて間隔を空ける。
【0019】
上述の範囲の電流密度の下での電解中に金属銅5(図1)が成長する結果、金属銅5と遮蔽板6の窓の間隔が減少する。このような状況では窓からの通電が変化して、突起の形成あるいは異常通電が起こる問題がある。突起の形成などを防止するためには、電解開始時における遮蔽板6とカソードの間隔を考慮して窓6b(図2)の方法を定めることが好ましい。
遮蔽板6とカソード2の位置関係を示す図3において、Xは遮蔽板6とカソード2の間隔であり、Yは遮蔽板6の陰になるカソード2の端部2aの幅を示す。電解中には、銅はカソード上で成長し、かつ突起がカソード端部で発生し易い。好ましくは、間隔Xは間隔Yの半分より大、すなわちX>Y/2とすると、上記した突起の形成などを避けることができる。但し、電流集中緩和のためには極力カソード2に近接して設置するのが好ましいので、最も好ましい遮蔽板の配置は、XがY/2より僅かに大きい配置である。
遮蔽板を設置する替わりにアノード室との間の隔膜(濾布)をつけた隔壁の窓の大きさを絞ることで同様の効果を得ることができるが、この場合はカソードと隔膜との距離を極端に縮める必要があり、引上げ作業中に強度の小さな隔膜(濾布)を破損するおそれがある。
【0020】
カソードには、ハロゲン系銅電解液に対して十分な耐食性を有する素材、具体的にはチタンを用いて、電解採取終了後に電着銅を剥離して製品とする。あるいは、硫酸浴での電気銅製造と同様にカソードに銅の母板を使い電着した銅とともに、鋳造して製品とする方法も利用できる。電着物の外観や組織は電着開始初期を除いて下地素材の影響はほとんど受けない。
【0021】
本発明の一実施態様、即ち段落番号0002(2)項で述べた方法では、Cu濃度が低下したカソライトは濾布4を通ってアノード室10に送られアノード酸化により酸化浸出力のあるアノライトとなって浸出工程に繰り返すことができる。即ち、電解採取後に銅濃度が低下したカソライトは、隔膜を通り抜けてアノード室内でアノード酸化により銅が二価に酸化しかつ液に酸化性の塩素・臭素が溶解したアノライト(電解後液)となる。このアノライトはその酸化能力が強いため、銅硫化鉱を分解し、通常の湿式法では浸出の困難な金も溶解することができる。液に溶解した金は、例えば特許文献1に示すように活性炭と接触させて吸着させるか、あるいは、ジブチルカルビトールなどの金を抽出する抽出剤で液から分離・回収することができる。
【0022】
上記アノライトにはカソライトに添加したポリエチレングリコールの一部が未分解のまま残る。この未分解の残存添加剤は、そのままでは前記の金の浸出および回収の過程で、鉱石からの金浸出を妨害し、あるいは活性炭や抽出剤に優先して吸着して金回収率を低下させる懸念がある。しかし、銅湿式製錬プロセスでアノライトを硫化鉱系の銅鉱石からの銅浸出に繰り返し利用する段落番号0002(2)項で述べた方法の場合、この未分解の残存添加剤は、イオウ濃度が鉱石中よりも高まり、イオウを主成分とするに至った銅鉱石浸出残渣に優先的に吸着して液からほとんどが除かれるため、アノライトを鉱石浸出に繰返し、使用しても液の中に蓄積することなく、金の浸出・回収にも支障はない。
【産業上の利用可能性】
【0023】
以上述べたように、本発明により、ハロゲン系銅溶液から、一価電解による電力節減の利点を生かしながら、緻密で洗浄の容易なハンドリング性に優れた板状の電着銅を製造することができる。以下、本発明の実施例及び比較例を説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例1】
【0024】
硫化物系銅鉱石を、ハロゲン化アルカリの濃度約4mol/Lの塩化銅溶液で浸出して銅濃度が75g/Lの塩化第一銅溶液を得た。この溶液に、ハロゲン化アルカリを含む液を加えて希釈して銅濃度25g/Lとし、pH1〜1.5に調節した。この溶液に、添加剤としてポリエチレングリコール(平均分子量1,000.濃度10mg/L)を加えて、表1に組成(g/L)を示したハロゲン系銅電解液を得た。この電解液を、耐酸テトロン(株式会社帝人の商品名)製濾布の隔膜をつけた図4に示した構造の電解槽に入れ50〜55℃で保温した。
【0025】
この電解槽のカソード室11(図4)にチタン板カソード2(有効面100mm角、片面はマスキングしてアノード対向面だけ使用)を、アノード室10(カソード室11の片側に配置)に不溶性アノード3(チタン板にイリジウム化合物を焼付け塗布したもの、有効面100mm角)を入れた。カソード室11内のカソード2の両側にカソード面から10mm離して80mm角の窓をくり抜いた遮蔽板6をカソードと2中心をあわせて設置した。
【0026】
追加給液用の銅浸出液にポリエチレングリコール(平均分子量1000)を10mg/Lの濃度で添加した。電極間に1.23A(遮蔽板窓部分相当面積に対する電流密度150A/m、カソード上全体平均123A/m)の電流を流す一方、カソード室11に前記の添加剤を含む銅浸出液を連続補給してカソライトの銅濃度を25−28g/Lに保った。合計88h通電した結果、図5に示すように細かいコブ状の凹凸があるが、緻密な金属銅が全カソード面に電着した。
【0027】
【表1】


【0028】
(比較例1)・・・従来技術及び添加剤の効果の説明
実施例1で用いたのと同じ装置を使って、同様の組成の銅浸出液にハロゲン化アルカリを添加した液に、添加剤(ポリエチレングリコール)を加えずに電流値1.5A(カソード電着面平均電流密度150A/m)で24h通電した。電着銅は図6(a),(b),(c)に示すように細かいデンドライトが密集した状態であり、カソード引上げ時に電極から容易に脱落した。電流をさらに1A(平均電流密度100A/m)に減らすと図7(a),(b)に示すように電着銅はやや密になり、より長時間の電着(44h)が可能となったが,デンドライトの集合体のままであることは同じであった。このように添加剤無しでは、電流密度を下げかつ遮蔽板を使用しても緻密な電着は得られない。
【0029】
(比較例2)・・・遮蔽板の効果
実施例1で用いたのと同じ電解槽を用い、かつ添加剤も加えた同じ組成の銅電解液と銅浸出液を用いて、遮蔽板を設置せずに電流値1.5A(150A/m)で24h電解した。電着銅は図8(a),(b)に示すように、カソードの中央は緻密であったが、端部(幅約10mm)から突起が多発し、その一部が急激に成長してアノード室との隔膜まで伸びショートを起こした。遮蔽板を用いないと、電流の集中する端部での突起・異常電着発生の問題がある。
【実施例2】
【0030】
・・・より大型の電解槽による安定電着可能な電流密度と添加剤濃度の説明
図1に示すように、カソード室11を二つのアノード室10が挟む構造の隔膜電解槽と大型の電極を用いて、実施例1と同様に緻密・板状電着する条件を検証した。
カソード室11にチタン板カソード3(有効面300mm角)を、アノード室10(カソード室を両側から挟む位置に配置)に不溶性アノード2(有効面270mm角)を入れた。カソード室11内のカソード2の両側にカソード面から18mm離して270mm角の窓をくり抜いた遮蔽板6をカソードと中心をあわせて設置した。
【0031】
16〜24A(遮蔽板窓部分相当面積に対する電流密度100〜150A/m)の電流を流した。カソード室11の電解液および連続補給する給液に10ないし40mg/Lまで濃度を変えて添加剤を加え電着状態を表2に示した。添加剤濃度20〜40mg/L,電流密度100〜125A/mでは、突起発生無しに緻密な板状の銅が電着した。一例を図9(a),(b)に示す。表面にコブ状の凹凸があるもののカソードに密着した板状電着銅が得られ組織も緻密だった。また剥離時にも全体が一枚にまとまって剥がすことができた。
【0032】
(比較例3)・・・長時間電解に適する電流密度の試験
実施例2において、電流密度150A/mではカソード中央部でも凹凸が短時間で顕著となり電着状態も不安定であった。図10(a),(b),(c)に示すように24h以内に表面に突起状の電着を生じて隔膜との間で突起によるショートが多発した。
【0033】
【表2】


【0034】
(比較例4) 実施例2で使用した添加剤を加える前の銅浸出液を、メッキ評価用のハルセルに入れて銅をカソードとして1h通電し、場所により電流密度の異なる電着サンプルを作った。電流密度100〜300Aでの初期電着状態を走査電子顕微鏡で観察したところ、図11の(1)に示すとおり、粒状で凹凸の激しい成長をしていた。
【実施例3】
【0035】
比較例3の浸出液に添加剤(PEG)10mg/Lを加えて同様の試験をすると、図11の(2)に示すとおり、粒のつぶれた凹凸が細かい緻密な電着をした。
【0036】
(参考例1)・・・電解後アノライトに残存する添加剤の挙動
次に、実施例2で得られた電解後のアノライトに銅粉を加えて加熱し酸化剤を分解して銅粉を溶かし電解前の浸出液と同じ銅濃度(75g/L)に戻した還元液で同様の試験を行ったところ、図9の(3)に示すように、添加剤を加えた液と類似した電着をした。このように電解後にアノライトには添加剤が分解せずに残っていて電着に影響が認められた。
【実施例4】
【0037】
参考例1と同じ電解後のアノライトに銅鉱石の浸出工程で得られた銅浸出後の残渣(Cu0.7%,S26%,他FeOOHなど)を100g/Lのパルプ濃度で加えて金浸出工程と同様に60℃で加熱した。この液を比較例3と同様に銅粉を加えて処理し還元した液で同様の試験を行ったところ、図11の(4)に示すように、電着状態は添加剤を加える前と同様に粗大な粒が多発する状態となり、添加剤の影響は消失した。
このように、添加剤の残存する電解後のアノライトを使っても、イオウを含む銅鉱石浸出残渣を浸出する段階で添加剤は残渣に吸着され、液から除かれる。
【実施例5】
【0038】
・・・添加剤の残存する電解後のアノライトのAu浸出能力
添加剤を含まないハロゲン系溶液(ハロゲン化アルカリの濃度約4mol/L、浸出前で塩化第二銅0.4mol/Lを含む浸出用溶液)で硫化銅精鉱から銅を浸出した後の残渣(実施例3で用いたもの、Au35g/t。Cu0.7%,S26%,他FeOOHなど)を用いて、添加剤を含まない浸出液から粉状電着させて得た電解後のアノライトと、実施例2で得られた添加剤を含有するアノライトのそれぞれを使って、残渣に残る金の浸出能力を比較した。
【0039】
それぞれの液0.5Lに、100g/Lのパルプ濃度で残渣を加えて60℃、6h撹拌した後、さらに温度を85℃に上げてスラリーに空気を0.6L/minの速さで吹き込みながら6h撹拌した。浸出残渣中のAu品位はともに金浸出処理前より低下し表3に示すようにともに20g/tとなり成績に差は無かった。
【0040】
【表3】


【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明における電解実施方法の一例である。
【図2】遮蔽板の模式図である。
【図3】遮蔽板とカソードの間隔を説明する模式図である。
【図4】実施例1における電解試験槽の構造である。
【図5】実施例1における電着状態を示す写真である。
【図6】比較例1における電着状態を示す写真である。図中(a)は電着金属外観、(b)は電着金属をカソードから剥がしている状態、(c)は電着金属のデンドライト構造を示す。
【図7】比較例1における電着状態を示す写真である。図中(a)は電着金属外観、(b)は電着金属のデンドライト構造を示す。
【図8】比較例2における電着状態を示す写真である。図中(a)は、電着金属外観、(b)は電解槽の平面写真である。
【図9】実施例2における電着状態を示す写真である。図中(a)は、電着金属外観、(b)は電着金属をカソードから剥がしている状態を示す写真である。
【図10】比較例3における電着状態を示す写真である。図中(a)は電着金属外観,(b)は電解槽平面図、(c)は突起が形成されたカソードを示す。
【図11】実施例4における電着状態を示す写真である。
【符号の説明】
【0042】
2−カソード
3−アノード
4−隔膜
5−金属銅
6−遮蔽板
【出願人】 【識別番号】591007860
【氏名又は名称】日鉱金属株式会社
【出願日】 平成19年6月29日(2007.6.29)
【代理人】 【識別番号】100077528
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 卓雄


【公開番号】 特開2008−266766(P2008−266766A)
【公開日】 平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願番号】 特願2007−195192(P2007−195192)