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銅含有廃棄物からの高純度銅の回収方法及びそれに用いる溶解液又は電解液 - 特開2008−248376 | j-tokkyo
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【発明の名称】 銅含有廃棄物からの高純度銅の回収方法及びそれに用いる溶解液又は電解液
【発明者】 【氏名】大石 哲雄

【氏名】小山 和也

【氏名】田中 幹也

【氏名】矢口 未季

【要約】 【課題】溶液から電解操作により金属銅を回収する方法に使用する主として1価銅イオンを含有する溶液において、溶液中に含まれる銅以外の金属イオンを除去するための方法を提供する。

【解決手段】2価銅イオンを含む溶液中で銅金属廃棄物を溶解処理し、得られた主として1価銅イオンを含む溶液を電気分解して金属銅を析出させる金属銅の回収方法において、前記2価銅イオンを含む溶液に、或いは溶解処理後の主として1価銅イオンを含む溶液に、鉛との溶解度積の低いリン酸又はリン酸塩を添加することで鉛の溶解を防ぎ、回収される銅中への鉛の混入を防止する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2価銅イオンを含む溶液中で銅金属廃棄物を溶解処理し、得られた主として1価銅イオンを含む溶液を電気分解して金属銅を析出させる金属銅の回収方法において、銅金属廃棄物を溶解処理する前の2価銅イオンを含む溶液に、リン酸又はリン酸塩を添加することを特徴とする銅金属廃棄物からの金属銅の回収方法。
【請求項2】
2価銅イオンを含む溶液中で銅金属廃棄物を溶解処理し、得られた主として1価銅を含む溶液を電気分解して金属銅を析出させる金属銅の回収方法において、銅金属廃棄物を溶解処理した後の主として1価銅イオンを含む溶液に、リン酸又はリン酸塩を添加することを特徴とする銅金属廃棄物からの金属銅の回収方法。
【請求項3】
前記リン酸又はリン酸の添加により発生した沈澱を除去する工程を有することを特徴とする請求項2に記載の銅金属廃棄物からの金属銅の回収方法。
【請求項4】
前記リン酸又はリン酸塩の添加濃度が、0.0001M以上である請求項1〜3に記載の銅金属廃棄物からの金属銅の回収方法。
【請求項5】
電気分解により析出する銅金属を回収するのに用いられる、銅金属廃棄物を溶解するための溶解液であって、2価の銅イオンを含有する溶液に、リン酸又はリン酸塩を添加したことを特徴とする溶解液。
【請求項6】
前記リン酸又はリン酸塩の添加濃度が、0.0001M以上である請求項5に記載の溶解液。
【請求項7】
銅金属廃棄物の溶解処理液から電気分解により析出する銅金属を回収するための電解液であって、主として1価銅イオンを含有する溶解処理液に、リン酸又はリン酸塩を添加したことを特徴とする電解液。
【請求項8】
前記リン酸又はリン酸塩の添加により発生した沈殿物が除去されていることを特徴とする請求項7に記載の電解液。
【請求項9】
前記リン酸又はリン酸塩の添加濃度が、0.0001M以上である請求項7又は8に記載の電解液。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、銅含有廃棄物からの金属銅の回収方法に関するものであり、特に高純度の銅を回収する方法、及びそれに用いる溶解液又は電解液に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種金属資源の枯渇防止ならびに環境負荷低減の要請から、リサイクルへの関心が高まり、使用後の製品が廃棄される場合に、元の金属にすることが社会的な要請となっており、金属銅或いは銅化合物に関しても、廃棄物の状態で回収した後、元の金属銅にすることが要請されている。
本発明者らは、この観点から、主として1価銅イオンを含む溶液の電気分解により、金属銅を析出させる銅の回収方法において、前記銅イオンを含む溶液中に金属銅を析出させるためのカソード電極、1価銅イオンを含むアンモニアアルカリ性溶液中にアノード電極、及びカソード電極とアノード電極の間に隔膜を設け、前記電極に電流を流して、カソード電極側からアノード電極側へ溶液を移動させながら電気分解させることを特徴とする1価銅イオンを含む溶液の電気分解による金属銅の回収方法を開発した(特許文献1〜4)。
【0003】
この方法は、主として1価銅イオンを含むアンモニアアルカリ性溶液から電気分解によって金属銅を回収するものであり、従来の硫酸酸性の状態で電解採取する方法に比べ著しく消費電力量を低下させることが可能となる。また、この電解採取を、アルカリ性溶液を用いる浸出法と組み合わせることによって、含銅金属廃棄物からの金属銅の回収において電力消費量を著しく低減することが可能であるという顕著な効果を有する。また、このときにアノードにおいて生成する2価銅イオンを浸出槽に循環利用することが可能であるため、酸化剤生成に必要な薬剤の物質収支が保たれ、閉回路操業が可能であるという顕著な効果を有するものである。
【0004】
しかしながら、前記浸出はアルカリ性溶液によって行われるため、酸性溶液による浸出に比べ不純物の溶解が少ないが、それでも、銅を回収する処理対象溶液には、マンガン、ニッケル、亜鉛、鉛などの金属の各イオンが含まれており、前記電解操作を行うためには、前記金属イオンを除去することが必要とされている。
【0005】
発明者らは、特許文献4において、上記不純物除去のために抽出剤(有機試薬)を用いることを提案したが、この方法では高価な抽出剤を用いるうえ、その耐久性にも若干の問題があるため、プロセス全体として高コストになってしまい、逆に、この不純物除去を行わない場合は銅中の不純物濃度が非常に高いため、回収した銅から電解精製等により不純物を除去しなければ再利用することは困難であるという問題があった。
【特許文献1】特許第3837483号公報
【特許文献2】特開2003−253483号公報
【特許文献3】特開2003−253484号公報
【特許文献4】特開2006−57137号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、溶液から電解操作により金属銅を回収する方法に使用する主として1価銅を含有する溶液に関し、溶液中に含まれる銅以外の金属イオンを除去するための方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題について検討したところ、最近の研究において、上記の不純物の99%以上は鉛であることが分り、廃棄物から銅を溶出させる段階で鉛の溶解を防止することが有効であるこという知見を得た。
本発明者らは、該知見に基づいて更に研究を重ねた結果、鉛との溶解度積の低いリン酸又はリン酸塩を、銅金属廃棄物の溶解液に添加することで鉛の溶解を防ぎ、回収される銅中への鉛の混入を防止しうることを見いだしたものである。
また、同様の効果は、銅が溶かしだされた後の1価銅イオンを含む溶液にリン酸又はリン酸塩を添加することによっても得られることを見いだした。すなわち、銅を溶解処理した後の溶液に、リン酸又はリン酸塩を添加することにより、一部溶解した鉛を不溶性のリン酸化合物として除去できることが判明した。
【0008】
本発明はこれらの知見に基づいて完成に至ったものであり、本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)2価銅イオンを含む溶液中で銅金属廃棄物を溶解処理し、得られた主として1価銅イオンを含む溶液を電気分解して金属銅を析出させる金属銅の回収方法において、銅金属廃棄物を溶解処理する前の2価銅イオンを含む溶液に、リン酸又はリン酸塩を添加することを特徴とする銅金属廃棄物からの金属銅の回収方法。
(2)2価銅イオンを含む溶液中で銅金属廃棄物を溶解処理し、得られた主として1価銅イオンを含む溶液を電気分解して金属銅を析出させる金属銅の回収方法において、廃棄物から銅を溶出させる工程、銅を溶出させた後の主として1価銅を含む水溶液に、リン酸又はリン酸塩を添加する工程、及び該リン酸又はリン酸塩が添加された溶液から電解により銅を採取する工程とからなることを特徴とする銅金属廃棄物からの金属銅の回収方法。
(3)前記リン酸又はリン酸の添加により発生した沈澱を除去する工程を有することを特徴とする上記(2)の銅金属廃棄物からの金属銅の回収方法。
(4)前記リン酸又はリン酸塩の添加濃度が、0.0001M以上である上記(1)〜(3)の銅金属廃棄物からの金属銅の回収方法。
(5)電気分解により析出する銅金属を回収するのに用いられる、銅金属廃棄物を溶解するための溶解液であって、2価の銅イオンを含有する溶液に、リン酸又はリン酸塩を添加したことを特徴とする溶解液。
(6)前記リン酸又はリン酸塩の添加濃度が、0.0001M以上である上記(5)の溶解液。
(7)銅金属廃棄物の溶解処理液から電気分解により析出する銅金属を回収するための電解液であって、主として1価銅イオンを含有する溶解処理液に、リン酸又はリン酸塩を添加したことを特徴とする電解液。
(8)前記リン酸又はリン酸塩の添加により発生した沈殿物が除去されていることを特徴とする請求項7に記載の電解液。
(9)リン酸又はリン酸塩の添加濃度が、0.0001M以上である上記(7)又は(8)の電解液。
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法によれば、高価な抽出剤を極力または全く使用せずに高純度の銅を回収する手法を提供することができる。本発明の方法における電解液へのリン酸又はリン酸塩の添加は、銅の浸出には影響を及ぼさず、鉛の浸出を抑制する効果がある。また、本発明の方法で用いる試薬はいずれも安価なものであり、プロセスの大幅な低コスト化および簡略化が期待できる。さらに、銅中の鉛濃度は市販の高純度銅と同等にすることも可能であり、実用性を格段に高める効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の方法では、溶液の電気分解により銅金属として回収するために、1価銅イオンを含有する溶液が用いられる。この1価銅イオンを含有する溶液には、2価銅イオンをできるだけ含まない状態であることが望ましい。2価銅イオンを含むことは、電解に要するエネルギーが多くなる結果となり、好ましくない。したがって、本発明においては、2価銅イオンを含む場合には処理できないわけではなく、ただ、エネルギーを多く消費する結果となるのでできるだけ少ないことが望ましいということである。このようなことから、使用される溶液は、主に1価銅イオンを含む溶液とすることが有効であり、銅イオンは1価銅イオンを含有する溶液、或いは1価銅イオンの状態でできるだけ保持されている溶液を用いることが有効な結果をもたらすということである。
【0011】
1価銅イオンを含む溶液は、2価銅イオンを含む溶液中で、銅金属廃棄物と錯化合物の存在下に溶解処理することにより得られる。
銅金属廃棄物を供給するに当たっては、固体状の銅金属を含有する廃棄物であってもよい。固体状で供給される場合には、溶解処理の前に、粉砕して溶液処理をしやすいようにしておくことが必要である。粉砕物の大きさは溶解処理装置の処理量などにより相違する。比較的小規模なテストをおこなったものであり、平均3から4mm程度のものとすれば十分である。これ以上に小さくすれば、溶解処理には問題はないものと考えられる。粉砕には、工業的規模で行う場合であれば、各種の粉砕機を用いて行うことができる。溶液状で廃棄物が供給される場合には、1価の銅イオンであることが必要である。銅金属廃棄物の溶解反応は2価の銅イオン溶液の存在下に行われる。このときの反応は次式で表される。
[Cu(NH2++Cu=2[Cu(NH
【0012】
この2価の銅イオン溶液は、金属銅回収装置のアノード部分から得られる溶液であり、電気化学反応で、1価の銅イオンが2価の銅イオンに電解酸化されて得られものである。即ち、1価銅イオンを含むアンモニアアルカリ性溶液中で1価銅イオンを2価銅イオンに電解酸化するものである。このときの反応は次式で表される。
[Cu(NH+2NH=[Cu(NH2++e
【0013】
前記銅金属廃棄物を添加した溶液に錯化剤を供給する。錯化剤にはアンモニア、硫酸アンモニウム、アセトニトリル、シアンなどを挙げることができる。
このような溶解処理で得られる1価銅イオンを含む溶液中の1価銅イオンは、配位子を有する錯イオンの状態にある。配位子には、NH、Cl、Br、I、アセトニトリル、シアン、ホスフイン(PRH、PRH、PR:Rはメチル、エチル、プロピル基などのアルキル基、フエニル、トリル、ナフチル基などのアリール基を表す。)、アルシン(AsH、As、AsR、As:Rはメチル、エチル、プロピル基などのアルキル基、フエニル、トリル、ナフチル基などのアリール基を表す。)などが用いられる。これらは、銅イオンと、錯化剤を反応させて製造することができる。
【0014】
2価銅イオン溶液からの1価銅イオンの生成に関し、アンモニア錯イオンを用いる場合について説明する。
溶液中で、銅に、2価の銅イオン及びアンモニアを反応させることにより、前記1価銅イオン錯体が形成される。このときの反応は次式で表される。
[Cu(NH2++Cu=2[Cu(NH
得られる1価銅イオン溶液は電解質錯体であり、溶液中で錯イオンに解離しているものである。
【0015】
前記アンモニアアルカリ性溶液とは、アンモニアとアンモニウム塩が存在する状態の溶液である。具体的に用いられるアンモニウム塩として硫酸アンモニウムまたは塩化アンモニウム等を挙げることができる。または、アンモニア水溶液に硫酸や塩酸等を加えることでアンモニウム塩を生成することも可能である。アンモニアはアンモニア水の添加による。または、アンモニウム塩の水溶液において水酸化ナトリウム等によるpH調整をおこなうことによりアンモニアを生成することが可能である。前記1価銅イオン溶液中に存在する、アンモニア濃度とアンモニウム塩濃度の合計濃度が1価銅イオン濃度に対して5倍以上であることが望ましい。この条件を満たす場合には、銅イオンは安定に存在することができる。この範囲以下の場合には銅イオンの形成が不十分であり1価銅の沈殿物が生成する可能性があるためである。溶液のpHは8から12の間であることが望ましい。この範囲を越えた場合には沈殿物が生成する可能性があるためである。また、1価銅イオンは6.3g/Lより濃度が大きいものが望ましい。銅濃度が小さい場合には、銅析出とともに水素の発生する可能性があり、効率を低下させる原因となるからである。
【0016】
前記銅イオンを含有する溶液中に設けられたアノード電極及びカソード電極に、外部電源より電流を流すと、カソード電極付近では還元反応が起こり、金属銅が電極表面に析出する。
カソード電極付近に、反応に際して不可避的に生成する2価銅イオンを含む場合であっても、主に1価銅イオンを含むアンモニアアルカリ性溶液から金属銅を電解によりカソード電極表面に析出させ、金属銅を回収するものである。
このときの反応は次式で表される。
[Cu(NH+e=Cu+2NH
ここで、eは電子を表す。この反応によって、1価銅イオンを還元して、金属銅として析出することができる。
【0017】
本発明においては、前述の2価銅イオンを含有する溶液に、鉛との溶解度積の低いリン酸又はリン酸塩を含有させることにより、銅金属廃棄物中に含有される鉛の溶解が抑制され、銅を選択的に溶かし出すことができるものである。そして、この鉛の溶解が抑制されて、銅が選択的に溶かし出された溶液を電解液として用いることにより、前記のカソード電極表面に析出する金属銅への鉛の混入は抑制される。
同様の効果は、銅が溶かしだされた後の1価銅イオンを含む溶液にリン酸又はリン酸塩を添加することでも得ることができる。この場合は、溶かし出された鉛を不溶性のリン酸塩として回収することができる。好ましくは、銅が溶かしだされた後の1価銅イオンを含む溶液(浸出液)を別の槽(沈殿槽)に送り、これにリン酸又はリン酸塩を添加・攪拌して鉛分を沈澱させることにより除去し、鉛除去後の液を電気槽に送って銅を析出させる。
【0018】
特に銅金属廃棄物にハンダが含まれている場合には、銅が溶かしだされた後の1価銅イオンを含む溶液にリン酸又はリン酸塩を添加する方法が有効である。
すなわち、リン酸又はリン酸塩の添加により、ハンダに含まれるスズの溶解が促進され、溶解したスズは、銅を電解採取する段階で析出し易い性質を持つため、このスズの溶解は高純度の銅を回収する上では大きな問題となる。しかしながら、銅が溶かしだされた後の1価銅イオンを含む溶液にリン酸又はリン酸塩を添加する方法を採用する場合には、その前の工程の銅の溶解処理に用いられる2価の銅イオンを含有する溶液中にはリン酸が存在しないためにある程度の鉛が溶解するがスズは殆ど溶解しない。その後のリン酸又はリン酸塩の添加により、一度溶解した鉛は、鉛のリン酸化合物として沈澱させて除去することができ、これには元来スズが含まれていないため、結果として、鉛もスズもほとんど含まれない電解液とすることができる。
【0019】
本発明におけるリン酸又はリン酸塩の添加は、アノード電極及びカソード電極の両電極反応に少しも影響を与えるものではない。
本発明に用いられるリン酸又はリン酸塩は、リン酸イオンを含むものであれば特に限定されるものではなく、リン酸(HPO)、リン酸アンモニウム(NHPO)、リン酸水素アンモニウム(NHPO等)、リン酸ナトリウム(NaHPO、NaHPO等)、リン酸カリウム(KHPO等)等が挙げられるが、特に、リン酸あるいはリン酸アンモニウムが望ましい。これらは、繰り返し添加しても溶液中の金属イオン濃度が増加しないからである。
本発明において、1価銅を含有する溶液に添加するリン酸又はリン酸塩の量は、0.01M程度で十分であり、このように少量のリン酸を加えるだけで、銅中への鉛の混入を大幅に抑制できるものである。
【実施例】
【0020】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
(リン酸塩を添加した溶液中の鉛濃度の測定)
アンモニア5M、塩化アンモニウム4M、及び2価銅0.5Mを含有する水溶液を調製した。
該アンモニア−塩化アンモニウム−2価銅からなる水溶液に、リン酸アンモニウムを0.0001〜0.01M添加し、これに銅粒、及び鉛板あるいははんだを、重量比でCu:Pb=10:1になるように浸漬して24時間攪拌したのちの溶液中の鉛濃度を測定した。鉛濃度は、ICP−AESにより分析した。
その結果を図1に示す。図中、縦軸は鉛濃度を示し、横軸は添加したリン酸塩濃度を示している。
図1から、リン酸塩を添加することにより、水溶液中に溶け出す鉛の濃度が減少する様子が分かり、001Mのリン酸アンモニウムを添加した場合、無添加の場合と比較して鉛濃度は1/100以下になったことがわかる。
また、後述するように、この程度の鉛が溶解した水溶液を用いて電解により銅を回収し、銅中の鉛濃度を分析したところ、良好な物では1ppm程度であった。これは、リン酸を添加しなかった場合と比較して1/100以下の値である。
【0021】
(リン酸塩を添加した溶液中の銅及び鉛濃度の時間的変化の測定)
前記アンモニア−塩化アンモニウム−2価銅からなる水溶液に、リン酸アンモニウムを0.01M添加し、これに銅粒、及びはんだを重量比でCu:Pb=10:1になるように浸漬して、溶液中の鉛濃度を測定した。銅及び鉛濃度は、ICP−AESにより分析した。その結果を図2に示す。
リン酸アンモニウムを添加していない場合には、液中の鉛濃度は撹拌開始直後から、100g/mを超え、その後も徐々に増加した。これに対し、リン酸アンモニウムを0.01M添加した場合は、鉛濃度の増加が抑制されており、1週間経過した時点でも液中の鉛濃度は20g/m以下であった。
一方、銅濃度に関しては、リン酸アンモニウムの添加の有無にかかわらず、ほぼ同様の挙動を示し、リン酸イオンが銅の浸出自体に大きな影響を与えないことが確認された。
なお、ハンダの代わりに鉛板を用いた場合にも同様の結果が得られた。
【0022】
(銅中に含有される鉛濃度の影響)
酸化鉛(II)を添加した電解液を用い、様々な電流密度で銅を電析させた際の電析物中の鉛濃度を測定した。その結果を図3に示す。
溶液中の鉛濃度が低いほど電析物中の鉛濃度も低下した。また、電流密度の増加に伴い電析物中の鉛濃度も増加することが分かった。これは、鉛の析出電位が銅の析出電位よりも若干卑であることによるものである。つまり、高電流密度になるほど過電圧が大きくなるため電極電位が卑な方向シフトし、鉛の析出電流が増加することに対応している。この結果から、LME GradeAの基準値である鉛濃度5ppm以下を満たすには、電解液中の鉛濃度が10g/mで400A/m以下、100g/mでは150A/m以下の電流密度が適当であることが分かる。
従来の硫酸−硫酸銅水溶液中の2価銅からの銅電解採取が250A/m程度の電流密度であることを考慮すると、特に鉛濃度10g/mで許容される電流密度は十分に高い値である。
また、今回の電解液中の鉛濃度は、図1および2に示した結果から判断すると、リン酸又はリン酸塩の添加によりほぼ達成することができる。
【0023】
(Pbを含む溶液へのリン酸又はリン酸塩添加後の鉛濃度の時間変化)
Pbを500g/m含む溶液に、リン酸濃度0.01Mとなるようにリン酸塩を添加した。添加後、所定の時間で溶液をサンプリングし、溶液中の鉛濃度を測定した結果を図4に示す。
図4から明らかなように、添加後わずか10分ほどで鉛濃度は20g/m程度まで低下し、約1時間経過した時点では10g/m程度になった。この鉛濃度は、電解により回収される銅中の鉛濃度を十分に低い値に保てる、すなわち十分な純度の銅回収が可能な許容範囲内である。
また、銅金属廃棄物がハンダのようにスズを多く含むものであっても、スズは元々ほとんど溶けていないため、回収される銅中に混入する心配はほとんど無い。
【0024】
図面を用いて、本発明を説明する。
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態は、リン酸又はリン酸塩を添加したアンモニア−塩化アンモニウム−2価銅イオンからなる水溶液を用意し、銅を含有する廃棄物を浸漬する(浸出工程)。次いで、浸漬後の溶液から電解により高純度の銅を回収するとともに、溶液中の1価銅イオンの一部を2価銅イオンへと酸化し、酸化後の溶液を再び前記浸出の工程で再利用するというものであり、図5は、該工程を模式的に示した図である。
浸出の工程では、2価の銅イオン溶液の存在下で、次式に示される銅金属廃棄物の溶解反応が行われる。
[Cu(NH2++Cu=2[Cu(NH
この工程で、前記の図1および2に示すように、鉛の溶解が抑制され、銅を選択的に溶かし出すことができる。
図中(1)は、カソード電極が存在する周囲の溶液において、次式に示されるように、1価銅イオンを還元して金属銅を得ることを示している。
[Cu(NH+e=Cu+2NH
本発明のリン酸又はリン酸塩を添加したアンモニア−塩化アンモニウム−2価銅イオンからなる水溶液を電解液として用い、金属銅を析出させた場合、水溶液中の鉛濃度が低いために、カソード電極表面に析出する銅中への鉛の混入は抑制される。
図中(2)は、アノード電極が存在する周囲の溶液において、1価の銅イオンが2価の銅イオンに電解酸化されることを示している。
即ち、次式に示すように、1価銅イオンを含むアンモニアアルカリ性溶液中で1価銅イオンを2価銅イオンに電解酸化するものである。
[Cu(NH+2NH=[Cu(NH2++e
本発明では、リン酸又はリン酸塩の存在はいずれの電極反応にも影響しないことが確認された。
【0025】
(第2の実施形態)
図6は、本発明の第2の実施形態を模式的に示した図である。
本発明の第2の実施形態の工程は、図6に示すように、(1)リン酸又はリン酸塩を含まない浸出液で廃棄物中の銅を1価銅イオンとして溶解する浸出工程、(2)リン酸又はリン酸塩を添加することで、一部溶解した鉛を鉛のリン酸化合物として沈殿させる沈殿工程、(3)鉛分とスズ分がほぼ除去された1価銅イオン水溶液から銅を電解により採取する電解採取工程、からなる銅リサイクルプロセスである。
図6において、浸出工程(1)及び電解工程(3)の反応は、それぞれ前述の図5におけるものと同じであるが、沈澱工程(2)では、以下の反応により、鉛がリン酸化合物として沈澱除去される。
Pb(II)+PO3-=Pb−PO化合物↓
なお、電解採取後の溶液にはリン酸塩が残存しているため、これを浸出工程で繰り返し利用した場合にはスズが一部溶解する恐れがあるが、それと同時にリン酸塩が廃棄物中に含まれる鉛等により固定化(消費)されるため、あまり影響しないと考えられる。
実際、リン酸又はリン酸塩の添加濃度が低くなるにつれて溶液中のスズ濃度も低下することが確認できているが、それでもなお多少の影響は懸念されるため、沈殿槽で添加するリン酸又はリン酸塩の量は必要最低限に留めることが重要である。
さらに、電解工程(3)終了後の溶液を浸出工程(1)に戻す前に、リン酸塩を除去する工程を入れることも有効である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の方法及び電解液を用いることにより、電析物中の鉛濃度を充分に低くできるので、本発明の方法及び電解液は、廃棄物処理のための装置に利用が可能であり、リサイクル関連の産業分野やプリント配線基板製造等の製造技術への適用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】鉛又ははんだを24時間浸漬したのちの水溶液中の鉛濃度を示す図。
【図2】0又は0.01Mのリン酸アンモニウムを添加したアンモニア−塩化アンモニウム−2価銅イオンからなる水溶液に、銅及びハンダを投入した際の、銅濃度及び鉛濃度の時間的変化を示す図。
【図3】アンモニア−塩化アンモニウム−2価銅イオンからなる水溶液に10,000又は500g/mの2価の鉛イオンを添加した電解液を用い、様々な電流密度で銅を析出させた際の析出物中の鉛濃度を示す図。
【図4】Pbを500g/m含む溶液に、0.01Mとなるようにリン酸塩を添加した後の、液中の鉛濃度の時間変化を示す図。
【図5】本発明の第1の実施形態の工程を模式的に示す図。
【図6】本発明の第2の実施形態の工程を模式的に示す図。
【出願人】 【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
【出願日】 平成19年7月27日(2007.7.27)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−248376(P2008−248376A)
【公開日】 平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願番号】 特願2007−195770(P2007−195770)