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【発明の名称】 銅電解精製法の停電時対策
【発明者】 【氏名】竹林 一彰

【氏名】佐々木 茂

【氏名】後田 智也

【要約】 【課題】パーマネントカソード(PC)方式の銅電解精製工場において、計画停電後にできる電気銅外層の薄膜電着により、剥ぎ取り困難となる状況をできるだけ回避することを目的とする。

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーマネントカソード法による銅の電解精製において、電解精製工場の計画停電時に、該電解精製工場に常設された主整流器より電解槽へ通電(以下「定常通電」という)される電流を穏やかに落とし、次に、該電解精製工場に付設された補助整流器により、低電流にて停電復旧まで通電(以下「予備通電」という)することを特徴とする銅の電解精製方法。
【請求項2】
予備通電の電流密度が10〜40A/m2である請求項1記載の銅の電解精製方法。
【請求項3】
予備通電を8〜12時間行う請求項1又は2記載の銅電解精製方法。
【請求項4】
定常通電から予備通電まで電流密度を下げる時間が約1〜3時間である請求項1から3までの何れか1項記載の銅の電解精製方法。
【請求項5】
予備通電時に電解液を循環させる請求項1から4までの何れか1項記載の銅の電解精製方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、銅の電解精製法の停電時対策に関するものであり、さらに詳しく述べるならばパーマネントカソード法(以下「PC法」という)による銅の電解精製法の停電時対策に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願人の日立精銅工場では種板を使用する従来の電解法により電気銅の生産を行ってきたが、従来の方法では、生産性と品質の向上を同時に達成することは困難な状況にあり、課題となっているカソード板の懸垂性について抜本的な改善を図るべくPC法を導入した。
【0003】
PC法の導入後、電気銅品質は改善され、電流効率は従来約94%から98%以上に向上でき、電解能力は182千t/年から210千t/年に増強することができた。
【0004】
日立精銅工場は国内で初めてPC法を導入し、順調な操業を続けている。当該PC法は、ISA方式でマスキング剤(ワックス)を使用しないタイプであり、カソード板から電着銅を効率良く剥ぎ取るため、カソード板側面部には樹脂によるマスキング(エッジストリッププロテクター)を、カソード板底部にV字型の溝加工が施されている。
【0005】
整流器は37KA/150V、37KA/90V、37KA/30Vの3基を備えており、電解槽1槽当たりカソード板56枚を装入させた644基の電解槽に通電している。
このように、多数の電解槽にて、大電流大規模処理が銅電解精製工場の特長である。
【0006】
特許文献1(特開2006−265699号)はPC法におけるエッジストリップとカソード板の密着方法について提案しているが、停電時の対策についてはまったく触れていない。
【0007】
【特許文献1】特開2006−265699号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電解精製工場では、変電所整備のために年一回程度の停電が行われ、この停電時間は8〜12時間である。さらに、導体工事、配管工事、電解槽整備などのため年数回の約8時間程度の停電がなされることがある。
【0009】
上記の停電後、通電を再開すると、図1に示すように、停電前に電着した電気銅2の上に再電着銅3が積層される。なお、1はカソード板、1aはカソード板の底部に設けられたV字型の溝である。
剥ぎ取り機によりカソード板から剥ぎ取られた電着銅板のうち下部の電着銅形状を、停電がない場合に関しては図2に、停電が起こった場合に関しては図3に模式的に示す。
停電がない場合は、電着銅板はカソード板の溝1aを中心として二つに割れ(2a)、分断される。停電が起こった場合は、再電着銅3は薄膜状になって電着銅の外層に積層されており、剥ぎ取りに際しては全体が曲げ力を受けるが、カソード板底部の溝1aの付近で、外層の薄膜電着が剥離し、薄膜電着が割れないことで、電着銅板を二つに分断することが著しく困難な状態となる。
この結果として、剥ぎ取りがネックとなって、電解精製工場の生産性が低下する。
【0010】
したがって、本発明はパーマネントカソード方式の銅電解精製工場において、計画停電後にできる電気銅外層の薄膜電着により、剥ぎ取り困難となる状況をできるだけ回避することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、PC法による銅の電解精製において、電解精製工場の計画停電時に、該電解精製工場に常設された主整流器より電解槽へ定常通電される電流を穏やかに落とし、次に、該電解精製工場に付設された補助整流器により、低い電流で停電復旧まで通電(以下「予備通電」という)を行うことを特徴とする銅の電解精製方法を提供するものである。以下、本発明を詳しく説明する。
【0012】
上述したように、銅の電解精製は250〜320A/m2程度の電流密度で行われる(定常通電)。停電が起こると電解槽の電流密度は一挙にゼロになり、電気銅は硫酸系電解液に8〜12時間さらされることになる。その後、定常通電を再開して積層した電着銅の断面組織を観察すると、中断した電解析出の界面に筋のような模様が観察され、停電時間が長いほど筋状模様が明瞭になり、結晶成長が停電前の履歴を引き継がないことが分かった。また、予期できない停電の場合は、最長でも4時間程度で復旧するが、この場合は特に剥ぎ取り不良などの問題は特に起こっていない。
【0013】
本発明者らは、電解工場が計画停電する場合、補助電源、もしくは発電機により補助整流器を稼動させ、低電流密度にて電解槽に通電を行うことで、当該の課題を解決するものである。
【0014】
補助整流器により10〜40A/m2の電流を通電することで、低電流密度のためほとんど電着は起こらないが、停電復旧後は停電前の結晶成長履歴をほぼ引継ぎ、上記した線状欠陥を目立たなくすることができる。上記した約10〜40A/m2の電流密度での通電を以下「予備通電」という。
【0015】
さらに、計画停電が予告された場合は、停電が起こる直前から徐々に電流密度を予備通電の電流密度まで下げることが必要である。本発明において「穏やかに」とは、停電により一挙に電流密度がゼロになる変化速度よりは本質的に遅く、かつ電気技術により制御可能なできるだけ遅い速度という意味である。実際的には、約2時間で予備通電電流に落とすことが好ましい。
停電復旧後に、電極状態を確認ながら約2時間で定常電流に戻し、電気銅の生産を再開する。

上述のところから、本発明の好ましい実施態様は次のとおりである。
【0016】
(1)予備通電の電流密度が約10〜40A/m2である請求項1の方法。
(2)予備通電を8〜12時間行う請求項1又は上記(1)の方法。
(3)定常通電から予備通電まで電流密度を下げる時間が約1〜3時間である請求項1、上記(1)又は(2)記載の方法。
(4)予備通電時に電解液を循環させる請求項1、上記(1)〜(3)の何れか1項記載の方法。

【発明の効果】
【0017】
本発明法によると、銅の電解精製工場の停電後に、電気銅の剥ぎ取り困難な状況を回避できる。なお、出願人の日立精銅工場での実績に基づいて説明するが、何処の銅電解精製工場で本発明を実施しても同様の効果が達成されることはいうまでもない。
・ 生産性
薄膜状の電着が発生した場合、電着板の剥ぎ取りに通常2〜5倍程度の時間を要することとなるが、この方法により、当該問題を回避、もしくは影響を軽減できる。
(2)銅種板の品質
薄膜状の電着発生を抑制できるため、外観品質上の問題は小さい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下日本発明の実施例と比較例を示し詳しく説明する。
(比較例)
本出願人の日立精銅工場において、12時間停電が起こったときに、中間に予備通電を行うことなく、銅電着板を液循環のない電解液中に放置し、2回の定常通電を継続して行った場合の銅断面の金属組織を図4に示す。
【0019】
(実施例)
比較例と同様に12時間停電が予定されたときに図5に示すように電流密度を変化させ、10A/mの電流密度で10時間の通電を行った。
得られた銅電着板の金属組織を図6に示す。図3と6を比較すると、分かるように停電前後の電着銅の境界に発生する線状欠陥は本発明実施例において非常に目立たなくなっている。
【産業上の利用可能性】
【0020】
近年銅の需給が逼迫しているために本発明法が銅製錬業界に貢献するところは著大である。また、銅の需給がゆるむような経済情勢になり、設備保全を徹底して行うような状況になっても本発明の有効性は高い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】種板の製造中に停電前後で成長した銅が層を形成していることを示す模式図である。
【図2】種板を母板から引き剥がす状況の説明図である。
【図3】停電が発生した場合の図2と同様の図である。
【図4】比較例の銅の金属組織を示す写真である。
【図5】実施例における電流密度変化グラフである。
【図6】実施例の銅の金属組織を示す写真である。
【符号の説明】
【0022】
1−電着銅
2−再電着銅
3−カソード板
【出願人】 【識別番号】591007860
【氏名又は名称】日鉱金属株式会社
【出願日】 平成19年3月29日(2007.3.29)
【代理人】 【識別番号】100077528
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 卓雄


【公開番号】 特開2008−248273(P2008−248273A)
【公開日】 平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願番号】 特願2007−88041(P2007−88041)