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【発明の名称】 銅微粒子の製造方法
【発明者】 【氏名】西久保 英郎

【氏名】藤原 英道

【氏名】原田 琢也

【氏名】荻原 吉章

【要約】 【課題】粒径が小さく、粒度分布が比較的狭く、分散安定性に優れかつデンドロイト化が抑制された銅微粒子を、簡便な方法でかつ大量に生成することのできる金属微粒子の製造方法を提供する。

【解決手段】少なくとも、銅イオン、ハロゲンイオン、及び有機物分散媒が溶解している還元反応溶液において、銅イオンの還元反応により粒子径が1〜500nmの範囲にある銅微粒子を析出させることを特徴とする、銅微粒子の製造方法
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、銅イオン、ハロゲンイオン、及び有機物分散媒が溶解している還元反応溶液において、銅イオンの還元反応により粒子径が1〜500nmの範囲にある銅微粒子を析出させることを特徴とする、銅微粒子の製造方法。
【請求項2】
前記ハロゲンイオンが、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、及び沃素イオンから選択される1種又は2種以上であって、これらのハロゲンイオンの供給源が塩化水素、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化水素、臭化カリウム、臭化ナトリウム、臭化第一銅、臭化第二銅、沃化水素、沃化カリウム、沃化ナトリウム、沃化第一銅、沃化第二銅、フッ化水素、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム、フッ化第一銅、フッ化第二銅、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化アンモニウム、臭化カルシウム、臭化バリウム、臭化アンモニウム、沃化カルシウム、沃化バリウム、沃化アンモニウム、及び弗化アンモニウムから選択される1種又は2種以上である、請求項1に記載の銅微粒子の製造方法。
【請求項3】
前記還元反応溶液におけるハロゲンイオン濃度が0.002〜1.0モル/リットルである、請求項1又は2に記載の銅微粒子の製造方法。
【請求項4】
前記有機物分散媒が水溶性の高分子化合物であって、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、デンプン、及びゼラチンから選択される1種又は2種以上である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の銅微粒子の製造方法。
【請求項5】
前記還元反応溶液における有機物分散媒の添加量が該還元反応溶液に存在する銅原子に対する質量比([有機物分散媒/Cu]質量比)で0.01〜30である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の銅微粒子の製造方法。
【請求項6】
前記還元反応溶液に存在する銅原子が0.01〜4.0モル/リットルとなるように銅化合物を添加することを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の銅微粒子の製造方法。
【請求項7】
前記還元反応による、銅微粒子の製造方法が、還元反応溶液中に設けられたアノードとカソード間に電位を加えることによりカソード表面付近に銅微粒子を析出させる方法であることを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の銅微粒子の製造方法。
【請求項8】
前記還元反応による、銅微粒子の製造方法が、還元反応溶液に還元剤を加えることにより、銅微粒子を析出させる方法であることを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の銅微粒子の製造方法。
【請求項9】
前記還元剤が水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン、ジメチルアミノボラン、及びトリメチルアミノボランの中から選択された1種又は2種以上である、請求項8に記載の銅微粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、銅イオンの還元反応により粒子径が1〜500nmの範囲にある銅微粒子の製造方法、及び該方法により得られた銅微粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属微粒子は、融点の低下、触媒活性、磁気特性、比熱特性、光学特性の変化等を発現することから、電子材料、触媒材料、蛍光体材料、発光体材料等の分野で広く用いられている。特に、電子材料用の導電性ペーストのような配線形成材料として、プリント配線、半導体の内部配線、プリント配線板と電子部品との接続等に利用されている。最近では、インクジェットプリンターを用いて金属微粒子を含有するインクにより配線パターンの印刷を行い、低温焼成して配線を形成する技術が着目され、研究開発が進められている。しかし、インクジェットプリンターの場合、インクに含まれる金属微粒子は、インク中において長期間分散性を保つことが要請されており、そのため金属微粒子のより微細化が必要となっている。
【0003】
下記特許文献1には、銅(I)アンミン錯イオンを含む水溶液に酸を加えてpHを低下させ、銅(I)イオン(Cu)を、銅(II)イオン(Cu2+)と金属銅(Cu)とに不均化分解反応させることによって、銅を析出させることを特徴とする銅微粒子製造方法が記載されている。
特許文献2には、塩化銅(II)を添加して成るデキストリン・銅水溶液に、還元剤として水素化ホウ素ナトリウムを加えて銅イオンを還元・析出する銅ナノ粒子製造方法が開示されている。
特許文献3には、10〜100nm程度の粒径の銅ナノ粒子を提供するために、有機溶媒中で、該有機溶媒に溶解可能な銅を構成元素とする化合物と、多価アルコールと、保護剤とを含む組成液を非酸化条件下で加熱することによって還元された銅ナノ粒子の形成が開示されている。
特許文献4には、銅の酸化物、水酸化物又は塩をポリエチレングリコール又はエチレングリコール溶液中で加熱還元して銅微粒子を得る方法において、核生成のためのパラジウムイオンを添加すると共に、分散剤としてポリエチレンイミンを添加し、パラジウムを含有する粒径50nm以下の銅微粒子を得る方法が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−363618号公報
【特許文献2】特開2003−213311号公報
【特許文献3】特開2005−281781号公報
【特許文献4】特開2005−330552号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の銅微粒子製造方法では不均化分解反応によるので、反応収量が必ずしも十分といえない。特許文献2の銅ナノ粒子製造方法にはAu、Ag、Pd、Pt、Ru、Rh等の貴金属の場合は、加熱のみで還元反応が生じるために、還元剤を使用せずに金属ナノ粒子を合成することが可能であり、還元剤の除去が不要であると記載されている。一方、Cu、Co、Ni等は、加熱のみでは還元され難いために、還元剤を使用することが好ましいと記載されているが、還元反応後に還元剤を効率よく除去して高純度の銅微粒子を合成する方法は開示されていない。
【0006】
特許文献3に記載の銅ナノ粒子の形成法では、銅化合物(例えばアセチルアセトナト銅錯体)と還元剤として機能しうる多価アルコールで金属イオンを還元する方法が適用されるが、還元反応後にポリビニルピロリドン等の保護剤成分が付与された状態の銅ナノ粒子の精製法については開示されていない。特許文献4に記載の銅微粒子製造方法では、ポリエチレングリコール又はエチレングリコールを用いて得られる銅微粒子の分散性を向上しているが得られる微粒子のデンドライト化の抑制する対策が開示されていない。また、パラジウムイオンの添加が必要であるという問題点もある。
粒径が小さく、分散安定性に優れかつデンドロイト化が抑制された銅微粒子を、簡便な方法でかつ大量に生成することのできる製造方法は未だ確率されていない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、還元反応溶液に有機物分散媒とハロゲンイオンとの存在下に銅イオンの還元反応を行うと得られる銅微粒子の分散性が向上すると共にデンドライト化も抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、少なくとも、銅イオン、ハロゲンイオン、及び有機物分散媒が溶解している還元反応溶液において、銅イオンの還元反応により粒子径が1〜500nmの範囲にある銅微粒子を析出させることを特徴とする、銅微粒子の製造方法に関する発明である。
【0008】
本発明の「銅微粒子の製造方法」においては更に下記(2)ないし(9)に記載の態様とすることができる。
(2)前記ハロゲンイオンが、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、及び沃素イオンから選択される1種又は2種以上であって、これらのハロゲンイオンの供給源が塩化水素、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化水素、臭化カリウム、臭化ナトリウム、臭化第一銅、臭化第二銅、沃化水素、沃化カリウム、沃化ナトリウム、沃化第一銅、沃化第二銅、フッ化水素、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム、フッ化第一銅、フッ化第二銅、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化アンモニウム、臭化カルシウム、臭化バリウム、臭化アンモニウム、沃化カルシウム、沃化バリウム、沃化アンモニウム、及び弗化アンモニウムから選択される1種又は2種以上である。
(3)前記還元反応溶液におけるハロゲンイオン濃度が0.002〜1.0モル/リットルである。
(4)前記有機物分散媒が水溶性の高分子化合物であって、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、デンプン、及びゼラチンから選択される1種又は2種以上である。
【0009】
(5)前記還元反応溶液における有機物分散媒の添加量が該還元反応溶液に存在する銅原子に対する質量比([有機物分散媒/Cu]質量比)で0.01〜30である。
(6)前記還元反応溶液に存在する銅原子が0.01〜4.0モル/リットルとなるように銅化合物を添加する。
(7)前記還元反応による、銅微粒子の製造方法が、前記還元反応溶液中に設けられたアノードとカソード間に電位を加えることによりカソード表面付近に銅微粒子を析出させる方法。
(8)前記還元反応による、銅微粒子の製造方法が、前記還元反応溶液に還元剤を加えることにより、銅微粒子を析出させる。
(9)前記還元剤が水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン、ジメチルアミノボラン、及びトリメチルアミノボランの中から選択された1種又は2種以上である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の「銅微粒子の製造方法」により、粒径が小さく、粒度分布が比較的狭く、分散安定性に優れ、デンドライト状の凝集が抑制された球状の銅粒子を析出することが可能である。このように粒径が小さく、しかもデンドライト状の凝集は見られない球状の粒子は、インクジェットプリンター用インク等に好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の構成について詳述する。
本発明の「銅微粒子の製造方法」は、少なくとも、銅イオン、ハロゲンイオン、及び有機物分散媒が溶解している水溶液において、銅イオンの還元反応により粒子径が1〜500nmの範囲にある銅微粒子を析出させることを特徴とする。後述するように、上記還元反応は、電解還元、及び無電解還元の双方の手段を用いることができる。
尚、以下、電解還元において還元反応が行われる溶液を還元反応溶液といい、無電解還元において、少なくとも銅イオン、ハロゲンイオン等が溶解されている水溶液を反応水溶液といい、少なくとも還元剤が溶解されている水溶液を還元剤水溶液といい、前記反応水溶液と還元剤水溶液を混合した溶液を還元反応溶液という。尚、有機物分散媒は、単独で添加してもよく、反応水溶液、又は還元剤水溶液に添加してもよい。
【0012】
〔1〕還元反応溶液
還元反応溶液を構成する銅イオン、有機物分散媒、及びハロゲンイオンについて説明する。この還元反応溶液は、電解還元又と電解還元に共通して使用できる。
(1)銅イオン
還元反応溶液中に存在する銅イオンは、電解還元又は無電解還元により銅微粒子を生成する。
銅イオンは、一価ないし二価の銅イオンを生成するイオン性化合物を使用することができる。
使用可能なイオン性化合物として、酢酸銅、硝酸銅、ハロゲン化銅、シアン化銅、ピロリン酸銅、硫酸銅等が挙げられるが,酢酸銅の使用が好ましく、実用上酢酸銅(II)の1水和物((CHCOO)Cu・1HO)の使用が特に望ましい。還元反応溶液中の好ましい銅原子濃度は、0.01〜4.0モル/リットルである。銅原子が0.01モル/リットル未満では、銅粒子の生成量が低減し反応相からの銅微粒子の収率が低下するという不都合を生じ、4.0モル/リットルを超えると生成される粒子間での粗大な凝集がおこるおそれがある。よリ好ましい銅原子濃度は、0.05〜0.5モル/リットルである。
【0013】
(2)有機物分散媒
本発明における有機物分散媒の作用についてのメカニズムは、明らかではないが、有機物分散媒は、還元反応溶液に存在して、銅イオンが還元されて結晶核が生成するのを助長し、更に析出してくる銅粒子結晶を分散させる機能を有しているものと推定される。
有機物分散媒としては、上記機能を有するものであれば特に限定されるものではないが、このような機能を有する好ましいものとして、水溶性の高分子化合物が挙げられる。該水溶性の高分子化合物としてポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン等のアミン系の高分子;ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース等のカルボン酸基を有する炭化水素系高分子;ポリアクリルアミド等のアクリルアミド;ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、更にはデンプン、ゼラチン等が例示できる。
【0014】
上記例示した水溶性の高分子化合物の具体例として、ポリビニルピロリドン(分子量:1000〜500、000)、ポリエチレンイミン(分子量:100〜100,000)、カルボキシメチルセルロース(ヒドロキシル基Na塩のカルボキシメチル基への置換度:0.4以上、分子量:1000〜100,000)、ポリアクリルアミド(分子量:100〜6,000,000)、ポリビニルアルコール(分子量:1000〜100,000)、ポリエチレングリコール(分子量:100〜50,000)、ポリエチレンオキシド(分子量:50,000〜900,000)、ゼラチン(平均分子量:61,000〜67,000)、水溶性のデンプン等が挙げられる。上記かっこ内にそれぞれの高分子化合物の数平均分子量を示すが、このような分子量範囲にあるものは水溶性を有するので、本発明の有機物分散媒として好適に使用できる。尚、これらの2種以上を混合して使用することもできる。
また、有機物分散媒の添加量は、還元反応溶液に存在する銅原子に対する質量比([有機物分散媒/Cu]質量比)は0.01〜30が好ましい。有機物分散媒の添加量が前記30を超えると溶液の粘性が高くなり還元反応終了後の銅粒子精製に支障をきたす場合がある。一方、前記0.01未満では粒子分散の効果が発揮されなくなる。より好ましい上記添加量は、0.5〜10である。
【0015】
(3)ハロゲンイオン
本発明におけるハロゲンイオンの作用についてのメカニズムは、明らかではないが、ハロゲンイオンが還元反応溶液中に好適な濃度範囲で存在していると、銅の結晶核の生成を促進すると共に、還元反応により銅微粒子の結晶が結晶核から成長する際にデンドライト状の凝集を顕著に抑制して、結晶が略球状に成長していくのを助長しているものと推定される。
一方、還元反応溶液中ハロゲンイオンを存在させずに、銅化合物及び有機物分散媒が溶解している水溶液から電解還元により銅微粒子を析出させた場合には、析出した結晶中に原料の銅化合物の混入、及び該銅化合物の結晶面を介して結晶がデンドライト状に成長していく。
従って、ハロゲンイオンは、還元反応溶液中でデンドライト状の凝集を顕著に抑制して、粒子が略球状に成長するのを助長していることが確認される。
【0016】
このようなハロゲンイオンは、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、及び沃素イオンから選択される1種又は2種以上であり、イオン性ハロゲン化物が該ハロゲンイオンの供給源となることができ、その具体例としては、塩化水素、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化水素、臭化カリウム、臭化ナトリウム、臭化第一銅、臭化第二銅、沃化水素、沃化カリウム、沃化ナトリウム、沃化第一銅、沃化第二銅、フッ化水素、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム、フッ化第一銅、フッ化第二銅、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化アンモニウム、臭化カルシウム、臭化バリウム、臭化アンモニウム、沃化カルシウム、沃化バリウム、沃化アンモニウム、弗化アンモニウム等が挙げられる。これらは2種以上であってもよい。
上記ハロゲンイオンのうち特に好ましいのは、塩素イオンである。
【0017】
還元反応溶液中での上記ハロゲンイオンの濃度は、還元反応溶液中において0.002〜1.0モル/リットル(L)が好ましい。ハロゲンイオンの濃度が前記0.002モル/L未満では一価ないし二価の銅イオン性化合物の混入という不都合を生じ、1.0モル/Lを超えるとハロゲンイオンの除去に不都合を生じる場合がある。
より好ましいハロゲンイオンの濃度は、0.005〜0.2モル/Lである。
【0018】
(4)その他の添加剤
還元反応溶液のpH調整等は特に不要である。光沢剤(アミン誘導体とエピハロヒドリンとのモル比1:1の反応生成物等)や光沢補助剤(パラホルムアルデヒド等のアルデヒド誘導体)は添加すると析出物が膜状となり、粒子状物の析出を抑制するので添加は避けるべきである。
以下に、本発明の銅微粒子の製造方法の具体例である、電解還元と無電解還元について説明する。
【0019】
〔2〕電解還元
(1)還元反応溶液
還元反応溶液は、少なくとも銅イオン、ハロゲンイオン、及び有機物分散媒を含む溶液である。
それぞれの好ましい濃度は上記した通りである。
(2)電極
陰極材料としては、白金、カーボン等の棒状、板状電極、ドット電極のようなナノ構造電極が例示でき、陽極としては、Cu、カーボン、白金等の棒状・板状・網状の形状電極が例示できる。尚、陰極表面付近に析出した粒子を脱離、回収するために陰極に超音波振動等の揺動を与えることが可能な構造とすることもできる。
【0020】
(3)電流密度、電解温度
電流密度は好ましくは0.01〜100kA/dm2 、より好ましくは0.1〜50kA/dm2 程度であり、直流のほかパルス電流とすることもできる。
還元温度は、10〜70℃が好ましく、10〜40℃がより好ましい。還元温度は、高温になるほど還元反応速度は速くなり、低温になるほど析出する粒子の粒径は小さくなる傾向がある。
(4)電解還元操作と生成銅微粒子の回収
以下に電解還元方法を例示するが本発明は下記方法に限定されるものではない。
先ず、上記した電極を有する浴中に還元反応溶液を調製し、上記した条件で電解還元反応を行う。還元反応終了後、カソード表面付近に析出した銅微粒子を回収して、エチルアルコール等の溶剤で洗浄して真空乾燥させる。
尚、析出した銅微粒子を精製する必要がある場合の精製法の例を以下に記載する。
還元反応溶液から回収した銅微粒子に水を加えて撹拌洗浄して遠心分離機で銅微粒子を回収する水洗操作を数度(1度又は2度以上)行い、次にエタノール等のアルコールを添加して撹拌洗浄後、遠心分離機で銅微粒子を回収する洗浄操作を数度(1度又は2度以上)行い、その後、得られた結晶を回収する。尚、必要により精製した銅微粒子をエチレングリコール等の溶剤中に分散させて保存することもできる。
【0021】
〔3〕無電解還元の場合
(1)還元反応溶液
還元反応溶液は、少なくとも銅イオン、ハロゲンイオン、有機物分散媒、及び還元剤を含む溶液である。
還元剤は、めっきを行う際に通常使用されている還元剤が使用可能であり、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン、水素化アルミニウムリチウム等が例示できるが特に好ましいのは、水素化ホウ素ナトリウムである。還元反応溶液中の還元剤の濃度は、還元反応溶液に存在する銅原子に対するモル比([還元剤/Cu]モル比)で10〜500が好ましく、10〜100がより好ましい。
(2)無電解還元操作
窒素雰囲気下で行うのが好ましく、還元温度は10〜50℃が好ましい。pHは特に調整する必要はないが、還元反応溶液のpHは11.5〜12.5程度である。
還元剤の添加方法は、特に制限はなく、一括仕込みしてもよく、銅イオン、ハロゲンイオン、及び有機物分散媒を含む溶液中に連続的に滴下してもよい。
反応溶液をよく撹拌しながら、反応させて銅微粒子を析出させる。
【0022】
(3)生成銅微粒子の回収、精製
以下に上記無電解還元で得られた銅微粒子の精製例について記載する。
無電解還元反応終了後に還元反応溶液に凝集促進剤を添加して銅微粒子を凝集沈殿させる。該沈殿した銅微粒子を還元反応溶液からから分離回収して、溶剤により洗浄し、更に使用した溶剤を除去することにより精製することができる。以下にその具体例を記載する。
無電解還元反応終了後に、得られた銅微粒子を含む還元反応溶液に、例えばクロロホルムのような凝集促進剤を添加してよく攪拌する。攪拌後、遠心分離機等に供給して、粒子成分を沈殿回収する。
次に、粒子成分を水等の溶媒に入れ、例えば超音波ホモジナイザーを用いてよく攪拌した後、遠心分離機で粒子成分を回収する洗浄を1度又は2度以上行う、続いて、必要により回収された粒子成分に有機溶媒を添加して、超音波ホモジナイザー等によりよく攪拌した後、遠心分離機で粒子成分を回収する有機溶媒洗浄を1度又は2度以上行う。
上記有機溶媒としては、炭素数1〜5のアルコールが使用でき、この中でもメタノール又はエタノールが好ましい。
尚、前記凝集促進剤として好ましいのは、エチレンクロロヒドリン、塩化アリル、塩化エチル、塩化ベンジル、塩化メチル、塩化メチレン、クロロナフタリン、クロロプロピレン、クロロベンゾール、クロロホルム、クロロプレン、四塩化アセチレン、四塩化エタン、四塩化炭素、ジクロロルエタン、ジクロロエチレン、ジクロロベンゾール、トリクロロルエチレン、トリクロロルメタン、ブロムベンゾール、ブロモホルム、ヘキサクロロエタン等の中から選択された少なくとも1種又は2種以上である。このような凝集促進剤の添加量は、還元反応溶液に存在する銅原子質量に対して(mol/銅原子質量(g))比で0.01〜10.0が好ましく、0.1〜1.0がより好ましい。
以上の操作により、還元剤等の不純物が十分に除去された銅微粒子が得ることができる。
【0023】
〔4〕生成銅微粒子
上記電解還元で得られる銅微粒子には、ハロゲン化銅が5質量%以下、酸化銅が1質量%以下で還元剤や他の金属は含まれない。不純物である該ハロゲン化銅の除去は溶媒を用いた洗浄により比較的容易であるので、比較的容易な操作で高純度の銅微粒子を得ることができる。
また、無電解還元により得られる銅微粒子に含まれる還元剤は上記した凝集促進剤を使用して銅微粒子を凝集させて分離回収後に洗浄することにより容易に精製することができる。
上記した電解還元及び無電解還元により得られる銅微粒子は、粒径が1〜500nm程度の範囲にあり、その形状はデンドライト状に凝集していない略球状の微粒子である。
尚、還元反応にハロゲンイオンを使用しないと、銅イオンの原料となる銅化合物(例えば酢酸銅II一水和物を原料に使用すると、無水酢酸銅(II))が20〜30質量%混入し、更に得られる微粒子は、複数の基本粒子がデンドライト状に凝集をおこしており、1ミクロンから10ミクロンぐらいの凝集体になる。
【実施例】
【0024】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
銅イオンの電解還元反応により銅微粒子を生成させ、得られた銅微粒子の評価を行った。
尚、還元反応溶液中のハロゲンイオン濃度は0.01モル/リットル(L)とした。
(1)銅微粒子の調製
銅イオンとして酢酸銅(II)の1水和物((CHCOO)Cu・1HO)20g、有機物分散剤としてポリビニルピロリドン5g([有機物分散剤/Cu]質量比で0.78)、及びハロゲンイオンとして0.1mol/Lの塩酸100mlを使用して、還元反応溶液を1L調製した。pHは約5.0であった。
次にこの溶液中で白金板陰極(カソード電極)(片面16mm)と白金板陽極(アノード電極)と間を25℃で1分間通電し還元反応を行った。この時、印加した電流密度は0.01mA/mm以下とした。
得られたコロイド溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、溶媒を乾燥除去した後、2mgの銅微粒子を得た。
(2)生成した銅微粒子の評価
銅微粒子について、透過電子顕微鏡(TEM)による観測結果、粒子径は5〜300nmの範囲で、形状は略球状でデンドライト状の凝集は観察されなかった。得られた銅微粒子は銅純度94質量%以上、塩化銅2質量%以下、酸化銅1質量%以下、無水酢酸銅1質量%以下であった。
【0025】
[実施例2]
(1)銅微粒子の調製
電極として陰極に白金ドット電極を用いた以外は、実施例1と同様にして、銅イオンの電解還元反応を行った。尚、上記白金ドット電極は、白金基板上に互いに樹脂で絶縁された平均径が50nm程度の樹枝状の白金突起が形成された電極である。
得られたコロイド溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、溶媒を乾燥除去した後、2mgの銅微粒子を得た。
(2)生成した銅微粒子の評価
銅微粒子について、透過電子顕微鏡(TEM)による観測結果、粒径は2〜200nmの範囲で、形状は略球状でデンドライト状の凝集は観察されなかった。
得られた銅微粒子は銅純度94質量%以上、塩化銅2質量%以下、酸化銅1質量%以下、無水酢酸銅1質量%以下であった。
【0026】
[実施例3]
還元反応溶液中のハロゲンイオン濃度を0.1モル/Lとして、銅イオンの電解還元反応により銅微粒子を生成させ、該銅微粒子の評価を行った。
(1)銅微粒子の調製
塩酸濃度を塩酸0.1モル/Lとした以外は実施例1と同様に、還元反応溶液を調製し、還元反応を行った。還元反応溶液のpHは約4.9であった。
還元反応終了後、得られたコロイド溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、溶媒を乾燥除去した後、2mgの銅微粒子を得た。
(2)生成した銅微粒子の評価
銅微粒子について、微粒透過電子顕微鏡(TEM)による観測結果、粒径は3〜250nmの範囲で、形状は略球状でデンドライト状の凝集は観察されなかった。
得られた銅微粒子は、銅純度92質量%以上、塩化銅5質量%以下、酸化銅1質量%以下、無水酢酸銅1質量%以下であった。
【0027】
[実施例4]
還元反応溶液中のハロゲンイオン濃度を1モル/Lとして、銅イオンの電解還元反応により銅微粒子を生成させ、該銅微粒子の評価を行った。
(1)銅微粒子の調製
塩酸濃度を塩酸1モル/Lとした以外は実施例1と同様に、還元反応溶液を調製し、還元反応を行った。還元反応溶液のpHは約4.8であった。
還元反応終了後、得られたコロイド溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、溶媒を乾燥除去した後、2mgの銅微粒子を得た。
(2)生成した銅微粒子の評価
銅微粒子について、微粒透過電子顕微鏡(TEM)による観測結果、粒径は1〜200nmの範囲で、形状は略球状でデンドライト状の凝集は観察されなかった。
得られた銅微粒子は、銅純度90質量%以上、塩化銅7質量%以下、酸化銅1質量%以下、無水酢酸銅1質量%以下であった
【0028】
[比較例1]
還元反応溶液中のハロゲンイオン濃度を0モル/Lとして、銅イオンの電解還元反応により銅微粒子を生成させ、該銅微粒子の評価を行った。
(1)銅微粒子の調製
塩酸濃度を塩酸0モル/Lとした以外は実施例1と同様に、還元反応溶液を調製し、還元反応を行った。
還元反応終了後、得られたコロイド溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、溶媒を乾燥除去した後、2mgの銅微粒子を得た。
(2)生成した銅微粒子の評価
銅微粒子について、微粒透過電子顕微鏡(TEM)による観測結果、1次粒子の粒径は5〜300nmの範囲であったが、析出した結晶に無水酢酸銅の混入が見られた。また、結晶形状はデンドライト状に凝集して、1〜10μmの凝集体になっていることが観察された。
得られた結晶は、銅純度70〜80質量%、酸化銅1質量%以下,無水酢酸銅20〜30質量%以下であった。
【0029】
[比較例2]
(1)銅微粒子の調製
電極として陰極に、実施例2で使用したと同様の白金ドット電極を用いた以外は、比較例1と同様にして、銅イオンの電解還元反応を行った。
(2)生成した銅微粒子の評価
銅微粒子について、微粒透過電子顕微鏡(TEM)による観測結果、1次粒子の粒径は2〜250nmの範囲であったが、析出した結晶に無水酢酸銅の混入が見られた。また、結晶形状はデンドライト状に凝集して、1〜10μmの凝集体になっていることが観察された。
得られた銅微粒子は、銅純度70〜80質量%、酸化銅1質量%以下、無水酢酸銅20〜30質量%以下であった。
【0030】
[実施例5]
還元反応溶液中のハロゲンイオンとして臭素イオンを使用して、銅イオンの電解還元反応により銅微粒子を生成させ、該銅微粒子の評価を行った。
(1)銅微粒子の調製
還元反応溶液中で0.1モル/Lとなるように臭化水素を使用した以外は実施例1と同様に、還元反応溶液を調製し、還元反応を行った。還元反応溶液のpHは約4.7であった。
還元反応終了後、得られたコロイド溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、溶媒を乾燥除去した後、2mgの銅微粒子を得た。
(2)生成した銅微粒子の評価
銅微粒子について、微粒透過電子顕微鏡(TEM)による観測結果、粒径は3〜320nmの範囲で、形状は略球状でデンドライト状の凝集は観察されなかった。
得られた銅微粒子は、銅純度93質量%以上、臭化銅4質量%以下,酸化銅1質量%以下,無水酢酸銅1質量%以下であった。
【0031】
[実施例6]
還元反応溶液中のハロゲンイオンとして沃素イオンを使用して、銅イオンの電解還元反応により銅微粒子を生成させ、該銅微粒子の評価を行った。
(1)銅微粒子の調製
還元反応溶液中で0.1モル/Lとなるように沃化水素を使用した以外は実施例1と同様に、還元反応溶液を調製し、還元反応を行った。還元反応溶液のpHは約4.6であった。
還元反応終了後、得られたコロイド溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、溶媒を乾燥除去した後2mgの銅微粒子を得た。
(2)生成した銅微粒子の評価
銅微粒子について、微粒透過電子顕微鏡(TEM)による観測結果、粒径は3〜250nmの範囲で、形状は略球状でデンドライト状の凝集は観察されなかった。
得られた銅微粒子は、銅純度94質量%以上、沃化銅3質量%以下,酸化銅1質量%以下、無水酢酸銅1質量%以下であった。
【0032】
[実施例7]
実施例1で使用した還元反応溶液中のポリビニルピロリドン濃度を低くした条件で、銅イオンの電解還元反応により銅微粒子を生成させ、得られた銅微粒子の評価を行った。
(1)銅微粒子の調製
ポリビニルピロリドンを0.5g([有機物分散剤/Cu]質量比で0.078)とした以外は実施例1と同様に、還元反応溶液を調製し、還元反応を行った。還元反応溶液のpHは約5.0であった。
還元反応終了後、得られたコロイド溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、溶媒を乾燥除去した後、2mgの銅微粒子を得た。
(2)生成した銅微粒子の評価
銅微粒子について、微粒透過電子顕微鏡(TEM)による観測結果、粒径は7〜400nmの範囲で、形状は略球状でデンドライト状の凝集は観察されなかった。
得られた銅微粒子は、銅純度92質量%以上、塩化銅5質量%以下、酸化銅1質量%以下、無水酢酸銅1質量%以下であった。
【0033】
[実施例8]
実施例1で使用した還元反応溶液中のポリビニルピロリドン濃度を高くした条件で、銅イオンの電解還元反応により銅微粒子を生成させ、得られた銅微粒子の評価を行った。
(1)銅微粒子の調製
ポリビニルピロリドン濃度を20g([有機物分散剤/Cu]質量比で3.14)とした以外は実施例1と同様に、還元反応溶液を調製し、還元反応を行った。還元反応溶液のpHは約5.0であった。
還元反応終了後、得られたコロイド溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、溶媒を乾燥除去した後、2mgの銅微粒子を得た。
(2)生成した銅微粒子の評価
銅微粒子について、微粒透過電子顕微鏡(TEM)による観測結果、粒径は3〜250nmの範囲で、形状は略球状でデンドライト状の凝集は観察されなかった。
得られた銅微粒子は、銅純度95質量%以上、塩化銅2質量%以下、酸化銅1質量%以下、無水酢酸銅1質量%以下であった。
【0034】
[実施例9]
銅イオンの無電解還元反応により銅微粒子を生成させ、得られた銅微粒子の評価を行った。
(1)銅微粒子の調製
酢酸銅(II)の1水和物((CHCOO)Cu・1HO)2.0g、0.1規定の塩酸10ml、及び有機物分散媒としてポリビニルピロリドン(PVP、数平均分子量:3500)0.5g([有機物分散剤/Cu]質量比で0.78)を蒸留水に溶解させた水溶液100mlに、金属イオン還元剤として5.0mol/Lとなるように水素化ホウ素ナトリウムを混合した。
攪拌溶解させた後、窒素ガス雰囲気中で、約60分間よく攪拌しながら反応させた結果、有機物分散媒としてPVPで被覆された銅微粒子が得られた。
次に、上記方法で得られた有機物保護皮膜で被覆された銅微粒子の水分散液100mlに、凝集促進剤の一例としてハロゲン系炭化水素の一つである四塩化炭素を、5ml添加してよく攪拌した。数分間攪拌した後、反応液を遠心分離機に入れ、粒子成分を沈殿回収した。
【0035】
その後、試験管に得られた粒子と適量の蒸留水とを入れ、超音波ホモジナイザーを用いてよく攪拌した後、遠心分離機で粒子成分を回収する水洗浄を3回、続いて、同じく試験管中で、得られた粒子と適量のエタノールとを入れ、超音波ホモジナイザーを用いてよく攪拌した後、遠心分離器で粒子成分を回収するアルコール洗浄を3回行った。
洗浄後の粒子成分を遠心分離により分離し、銅微粒子を得た。
また上記の方法によって得られた銅微粒子を、分散溶媒の一例としてエチレングリコールに混合することで、銅微粒子分散液を得た。
【0036】
(2)生成した銅微粒子の評価
得られた銅微粒子分散液をカーボン蒸着された銅メッシュ上に塗布乾燥し、日本電子製透過型電子顕微鏡(TEM)で観察を行ったところ、得られた銅微粒子は平均粒径1〜100nmのナノサイズの超微粒子で、形状は略球状でデンドライト状の凝集は観察されなかった。
得られた結晶は塩化銅3質量%以下、酸化銅1質量%以下、無水酢酸銅1質量%以下であった。
【出願人】 【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
【出願日】 平成19年3月23日(2007.3.23)
【代理人】 【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇

【識別番号】100120570
【弁理士】
【氏名又は名称】中 敦士


【公開番号】 特開2008−231564(P2008−231564A)
【公開日】 平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願番号】 特願2007−77354(P2007−77354)