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【発明の名称】 電着金属の剥取装置
【発明者】 【氏名】並木 聡

【氏名】福岡 利昌

【氏名】鈴木 直樹

【氏名】吉田 忠敦

【要約】 【課題】フラッピングを行なうことなく、フレキシング、チゼリング、ダウンエンダという陰極板から電着金属を剥ぎ取る際の一連の作業を1回で完了させることが可能な電着金属の剥取装置を提供する。

【解決手段】電解製錬によってその表面に金属が電着した陰極板1を基台20上に起立させた状態で保持し、陰極板1の両側を押圧することにより陰極板1と電着金属2との間に隙間を生じさせ、この隙間にチゼル35を挿入することによって電着金属2を引き剥がし、引き剥がした電着金属2をさらにその底部を基点として横倒させることによって陰極板1から電着金属2を剥ぎ取る電着金属の剥取装置10において、基台20の両側に突起部21を設け、この突起部21に陰極板1を横倒させながら引き剥がした電着金属2の下部側表面を接触させることによって少なくとも電着金属2の上縁部が突起部21よりも下側に位置するに至るまで横倒させ、それによって電着金属2を陰極板1から分離するようにしたことを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解製錬によってその表面に金属が電着した陰極板を起立させた状態で保持し、当該陰極板の両側を押圧することにより前記陰極板と電着金属との間に隙間を生じさせ、この隙間にチゼルを挿入することによって前記電着金属を引き剥がし、引き剥がした電着金属をさらにその底部を基点として横倒させることによって前記陰極板から電着金属を剥ぎ取る電着金属の剥取装置において、
陰極板を載置する基台の両側に突起部を設け、この突起部に前記陰極板を横倒させながら引き剥がした前記電着金属の下部側表面を接触させることによって少なくとも前記電着金属の上縁部が当該突起部よりも下側に位置するに至るまで横倒させ、それによって前記電着金属を前記陰極板から分離するようにしたことを特徴とする電着金属の剥取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電着金属の剥取装置において、
前記電着金属の横倒時における前記陰極板との角度が少なくとも90°を超え、95°以下であることを特徴とする電着金属の剥取装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電着金属の剥取装置において、
前記基台は半円筒形状とされていることを特徴とする電着金属の剥取装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、電着金属の剥取装置に関し、さらに詳しくは、電解製錬によって陰極板の表面に電着した金属を剥ぎ取るための電着金属の剥取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ISA方式によるパーマネントカソードを用いた金属の電解製錬、例えば、銅の電解精錬は、電解液が貯えられた電解槽中に多数のステンレス製の陰極板(カソード板)と、粗銅を鋳込んだ陽極板(アノード板)とを交互に浸漬して通電することにより、陰極板の両面に電気銅を電着させることによって行なわれる。そして、陰極板表面に電着した銅は、剥取装置によって剥ぎ取られ製品とされる。具体的には、図1に示すように、陰極板1は、ステンレス製の板状材で、その両サイド部には合成樹脂製のプロクテクタ5が嵌め込まれると共に、上端部にはクロスバー4が設けられている。また、クロスバー4の下部には2つの窓部3、3が設けられており、この窓部3、3に図示しない電極板搬送装置のフックを掛止することにより電解槽への装入及び取り出し並びに搬送が行なわれるようになっている。そして、陰極板1の表面に析出した電着金属2を剥取装置によって剥ぎ取りが行なわれる。そして、剥ぎ取られた電着金属はそのまま製品として又は電解製錬の種板として供されることとなる。
【0003】
従来の電着金属の剥取装置にあっては以下のような動作によって電着金属の剥ぎ取りが行なわれていた。すなわち、電解槽から引き上げられた陰極板を剥取装置の受け入れ口(ロードイン)に装入する。装入された陰極板は洗浄室で洗浄されたあと、移載機によってトラバースコンベアに乗せられる。そして、図2に示すように、陰極板1は起立させた状態で基台120上に保持され(図2(a))、陰極板1の両側を押圧する(図2(b))ことにより陰極板1と電着金属2との間に隙間を生じさせ(フレキシング)、この隙間にチゼル35を装入(図2(c))して落とし込むことによって陰極板1から電着金属2を引き剥がし(チゼリング)、引き剥がした電着金属2をさらに基台120と接する底部を基点として横倒(ダウンエンダ)することによって電着金属2を陰極板1から剥ぎ取る(図2(d))。そして、ダウンエンダによって電着金属が割れずに陰極板から分離できなかった場合には、さらに電着金属を引き起こして再び横倒する「フラッピング」を行なって両者を分離する。
【0004】
このような従来の剥取装置としては、例えば、特開2001−81591号公報(特許文献1)に示されたものがある。この剥取装置は、陰極板の端部に取り付けられている絶縁プロテクタの一部を取り外す絶縁プロテクタ取り外し装置と、取り外した一部の絶縁プロテクタの位置で定位置に固定されている陰極板と電着金属との間に挿入され電着金属の端縁部を陰極板から離して口開き状態とするチス刃および電着金属に吸着して電着金属を剥ぎ取り方向に移動させる複数の真空吸着パッドを備えて構成されている。そして、陰極板の表面と電着金属の端縁部との間にチス刃を押し込み、楔状のチス刃の楔作用によって陰極板から電着金属を剥がし、電着金属の端縁部を口開き状態とする。口開き状態となった電着金属を複数の真空吸着パッドによって吸着し、陰極板から引き離す(フラッピング)ことによって電着金属の剥ぎ取りを行うというものである。
【0005】
【特許文献1】特開2001−81591号公報
【特許文献2】特願2005−91423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、これまでの剥取装置は、陰極板を載置する基台が平板状であったため陰極板から電着金属を剥ぎ取る際のダウンエンダによる電着金属の横倒しの角度が陰極板に対して最大90°であり、1回の作業では電着金属を完全に剥ぎ取ることが出来ない場合があった。その場合には、フラッピングを1回乃至複数回行なう必要があった。1回乃至複数回のフラッピングによれば陰極板から電着金属を剥ぎ取ることは可能であるが、フラッピングを行なうということはそれだけ余分な時間が取られるということであり、時間当たりの処理量が減ってしまうという問題があった。具体的には、電着金属の剥ぎ取りをフラッピングなしで完了させたとすると1枚あたり約7秒で完了する。従って、1日約8〜10時間の操業で平均4,000〜5,000枚の剥ぎ取り処理を行なうことができる。一連の剥ぎ取り作業のうち1回のフラッピングに約2秒かかるので、1枚の陰極板に対して何回もフラッピングが繰り返して行なわれると1日あたりの処理枚数が少なくなり、操業効率に影響することになる。
【0007】
そこで、本発明は、フラッピングを行なうことなく、フレキシング、チゼリング、ダウンエンダという陰極板から電着金属を剥ぎ取る際の一連の作業を1回で完了させることが可能な電着金属の剥取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために請求項1に記載の本発明は、電解製錬によってその表面に金属が電着した陰極板を起立させた状態で保持し、陰極板の両側を押圧することにより陰極板と電着金属との間に隙間を生じさせ、この隙間にチゼルを挿入することによって電着金属を引き剥がし、引き剥がした電着金属をさらにその底部を基点として横倒させることによって陰極板から電着金属を剥ぎ取る電着金属の剥取装置において、陰極板を載置する基台の両側に突起部を設け、この突起部に陰極板を横倒させながら引き剥がした電着金属の下部側表面を接触させることによって少なくとも電着金属の上縁部が突起部よりも下側に位置するに至るまで横倒させ、それによって電着金属を陰極板から分離するようにしたことを特徴とする。
電解が終了した陰極板を起立させた状態で基台上に保持し、陰極板の表面に析出した電着金属をその上部側から引き剥がし、そして、電着金属の底辺を基点として横倒させる。その際、基台の両側に設けられた突起部が電着金属の下部側の表面に接触するため、電着金属の上縁部はこの突起部よりも下側に位置する状態となるまで横倒させられる。このとき、基台の両側に設けられた突起部が「てこ」の働きをして陰極板と電着金属が上方に持ち上げられて両者は容易に分離される。これによって陰極板からの電着金属の剥ぎ取りがフレキシング、チゼリング、ダウンエンダという一連の作業で確実に行なわれるのでフラッピングを行なう必要がない。
【0009】
上記課題を解決するために請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の電着金属の剥取装置において、電着金属の横倒時における陰極板との角度が少なくとも90°を超え、95°以下であることを特徴とする。
電着金属をダウンエンダにより横倒した時の角度は少なくとも90°を超える角度から95°の角度の範囲内とする。
【0010】
上記課題を解決するために請求項3に記載の本発明は、請求項1又は2に記載の電着金属の剥取装置において、基台は半円筒形状とされていることを特徴とする。
基台を半円筒形状とすることで両側部に突起部を備えた基台を現出することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る電着金属の剥取装置によれば、基台の両側に突起部を設け、この突起部に陰極板から引き剥がされた電着金属の下部側表面を接触させることによって少なくとも電着金属の上縁部が突起部よりも下側に位置するに至るまで種板を横倒させるようにしたので、基台の両側に設けられた突起部が「てこ」のように働いて陰極板と電着金属を上方に持ち上げることとなり、フラッピングを行なうことなくフレキシング、チゼリング、ダウンエンダという一連の作業で確実に陰極板から電着金属を剥ぎ取ることができるという効果がある。
また、電着金属が剥ぎ取られた陰極板は繰り返し電解製錬に使用されるが、本発明に係る電着金属の剥取装置によれば、フレキシング、チゼリング、ダウンエンダという一連の作業で確実に電着金属を剥ぎ取ることができるので、陰極板の回転率が良くなり、1日あたりの処理量も増え、少なくとも毎月約30tを超える増産が可能となるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る電着金属の剥取装置について図面を参照しつつ詳細に説明する。図3は本発明に係る電着金属の剥取装置の一実施形態における正面図、図4はそのA−A断面図、図5はB−B断面図である。
図である。
【0013】
図示された電着金属の剥取装置10は、概略として、床面Gに配置された架台11上に立設された4本の支柱12とそれらを水平方向に連結する横梁13によってフレーム構造をなし、このフレームのほぼ中央に基台20が配置され、この基台20上に電着が終了した陰極板1を起立させた状態で載置するようになっている。また、基台20の上方側には電着金属2の上部側面を両側から支持するホルダ30が左右の両側に設けられている。また、図4の左右の両側にはリンク32がフレームに軸止されると共に、その後端部が油圧シリンダ32aと連結されており、これによってリンク32が揺動可能となっている。さらに、図3に示されているように、クロスバー4を左右から挟持するキャッチャ31を備えている。これにより、陰極板1は基台20上に起立した状態でしっかりと保持されることになる。
【0014】
また、陰極板1が載置されるその上方には、図4に示されているように、陰極板1の表面に析出した電着金属2と、陰極板1との間に挿入して陰極板1から電着金属2を引き剥がすチゼル35が設けられている。チゼル35は先端側にいくほど次第に鋭利に尖った断面略直角三角形の楔状をなし、これを電着金属2と陰極板1との間に挿入して下方に加圧押圧することで電着金属2の上端部側が基台20を基点として拡開し、それによって電着金属2を陰極板1から引き剥がすようになっている。尚、チゼル35は油圧シリンダ35aによって上下方向に可動されるようになっている。
【0015】
ここで、陰極板1は、図示しない洗浄室で洗浄した後、フレキシングを行い、それをトラバースコンベア38によって剥取装置10へ移送してチゼリング、ダウンエンダを行なうようになっている。フレキシングは、図6(b)に示すように、基台20上に載置された陰極板1の左右に位置するようにして配置された押圧具36によって陰極板1の側面を別々に押圧することにより行なわれる。尚、押圧具36は、その後方に配置された図示しない油圧シリンダによって動作するようになっている。このように、陰極板1の側面を押圧具36でそれぞれ別々に一度ずつ押圧することによって陰極板1と電着金属2の間に隙間を生じさせるフレキシングが行われる。そして、フレキシングが行なわれた陰極板1はトラバースコンベア38によって剥取装置10の剥取位置へ搬送される。
剥取装置10には、図4に示されているように、基台20上に載置された陰極板1の左右の両側に位置するようにしてガイドプレート37cが配置されており、ガイドプレート37cには電着金属2の側面近傍位置から伸びる円弧状のレール37が設けられている。ガイドプレート37cには上述したチゼル35によって陰極板1から引き剥がされた左右の電着金属2を両側からそれぞれ保持してダウンエンダ又はフラッピングさせる左右のグリップ37を備えている。グリップ37は、油圧シリンダ37aによって電着金属2の側面近傍位置から伸びる円弧状のレール37b上を移動可能とされている。また、ガイドプレート37cは、下部側に配置された油圧シリンダ37dにより陰極板1側に傾倒するようになっている。
【0016】
剥取装置10は上述のような構成を備えているが、本剥取装置10の最も特徴的なところは基台20の形状にある。すなわち、図4に示されているように、基台20は、その両側にそれぞれ突起部21が設けられており、チゼル35によって陰極板1から引き剥がされた電着金属2をグリップ37によって横倒させるに際して電着金属2の下部側表面を突起部21に接触させることによって少なくとも電着金属2の上縁部が突起部21よりも下側に位置するに至るまで電着金属2を横倒することができるようになっている。この点について、電着金属2の剥ぎ取りを模式的に示した図6を用いてさらに詳しく説明する。まず、図6(a)に示すように、電着の終了し洗浄が行なわれた陰極板1をトラバースコンベア38に起立させた状態で載置する。
【0017】
そして、陰極板1の表面を両側からそれぞれ別々に押圧してフレキシングを行ない(図6(b))。陰極板1と電着金属2との間に隙間を生じさせる。フレキシングによって頂部に隙間が生じたら、トラバースコンベア38で剥取装置10の剥取位置に移送する。そして、フレキシングにより生じた隙間にチゼル35を挿入し、一気に押し下げることによって電着金属2をその基台20に載置されている底部を基点として上縁部側を拡開するようにして引き剥がす(図6(c))。引き剥がされた電着金属2にグリップ37を装着してさらに横倒させると、基台20の両側に設けられた突起部21が電着金属2の下部側の表面に接触し、電着金属2の上縁部はこの突起部21よりも下側に位置する状態となるまで横倒させられる(図6(d))。このとき、基台20の両側に設けた突起部21が「てこ」の働きをして陰極板1と電着金属2の底部が上方に持ち上げられる。この動作によって電着金属2は陰極板1から容易に分離されることとなり、フラッピングを行なうことなくフレキシング、チゼリング、ダウンエンダという一連の作業で陰極板1から電着金属2を確実に剥ぎ取ることが可能となる。
【0018】
ここで、電着金属2を横倒させたときの電着金属2と陰極板1とのなす角度θは、少なくとも90°を超え、95°以下であることが好ましい。90°より小さい角度であると基台の突起部による「てこ」の作用が十分に発揮されず、95°よりも大きいと電着金属2が歪むおそれがあるからである。
また、基台20の形状は図7(a)に示すような平板の両側部に山形の突起部21を備えたものでもよいが、図7(b)に示すような半円筒形状とすることもできる。半円筒形状とすることで両側部に突起部21を備えた基台20を容易に現出することができる。突起部の高さは5〜30mm程度、好ましくは8〜10mm程度の範囲であるとよい。
【0019】
以上のように、本発明に係る電着金属の剥取装置によれば、フラッピングを行なうことなくフレキシング、チゼリング、ダウンエンダという一連の作業で確実に陰極板1から電着金属2を剥ぎ取ることができる。さらに電着金属2が剥ぎ取られた陰極板1を再び電解製錬に供するまでの時間も短縮されるので陰極板1の回転率が良くなり、1日あたりの処理量アップに貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】表面に電着金属が析出した陰極板の概略斜視図である。
【図2】従来の剥取装置による剥ぎ取り作業を示す説明図である。
【図3】本発明に係る電着金属の剥取装置の一実施形態における正面図である。
【図4】図3に示す剥取装置のA−A断面図である。
【図5】図3に示す剥取装置のB−B断面図である。
【図6】本発明に係る剥取装置による剥ぎ取り作業を示す説明図である。
【図7】(a)は基台の斜視図、(b)は半円筒形状とされた基台斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
1 陰極板
2 電着金属
3 窓部
4 クロスバー
5 プロテクタ
10 剥取装置
11 架台
12 支柱
13 横梁
20 基台
21 突起部
30 ホルダ
31 キャッチャ
32 リンク
油圧シリンダ 32a
35 チゼル
35a 油圧シリンダ
36 押圧具
37 グリップ
37a 油圧シリンダ
37b
37c ガイドプレート
37d 油圧シリンダ
38 トラバースコンベア
【出願人】 【識別番号】591007860
【氏名又は名称】日鉱金属株式会社
【出願日】 平成18年9月29日(2006.9.29)
【代理人】 【識別番号】100110722
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 誠一


【公開番号】 特開2008−81825(P2008−81825A)
【公開日】 平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願番号】 特願2006−266326(P2006−266326)