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【発明の名称】 ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法
【発明者】 【氏名】今村 正樹

【氏名】小林 宙

【要約】 【課題】ニッケル酸化鉱石からニッケル及びコバルトを回収する高温加圧酸浸出に基づく湿式製錬方法において、ニッケル及びコバルトの高純度金属等の最終製品を製造する工程で用いる原料として好適な、ニッケル及びコバルトの濃縮度が高く、かつ付着水分が低い中間精製物を得る湿式製錬方法を提供する。

【構成】ニッケル酸化鉱石のスラリーに硫酸を添加し加圧下で浸出した後、ニッケル及びコバルトを含む浸出液と浸出残渣とに分離し、引き続き、得られた浸出液を電解槽に供給し、電解採取に付すことによって、ニッケル及びコバルトを含む合金を製造することを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル酸化鉱石のスラリーに硫酸を添加し加圧下で浸出した後、ニッケル及びコバルトを含む浸出液と浸出残渣とに分離し、引き続き、得られた浸出液を電解槽に供給し、電解採取に付すことによって、ニッケル及びコバルトを含む合金を製造することを特徴とするニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法。
【請求項2】
前記浸出は、前記スラリーを220〜280℃の温度下で撹拌処理すること特徴とする請求項1に記載のニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法。
【請求項3】
前記電解採取において、電流密度は、5〜100A/mであること特徴とする請求項1に記載のニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法。
【請求項4】
前記電解採取において、電解液の温度は、40〜80℃であること特徴とする請求項1に記載のニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法。
【請求項5】
前記電解採取において、カソードは、チタン板、ステンレス板又はニッケル板から選ばれる少なくとも1種であり、一方、アノードは、鉛板又は鉛を主成分とする合金板からなる不溶性アノードであること特徴とする請求項1に記載のニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法。
【請求項6】
さらに、電解採取に先だって、前記浸出液のpHを2.5〜5.0に調整し、得られた鉄を含む中和澱物を分離除去する中和処理に付すことを特徴とする請求項1に記載のニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法。
【請求項7】
前記pHの調整剤は、炭酸カルシウム又は水酸化カルシウムであることを特徴とする請求項6に記載のニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法に関し、さらに詳しくは、ニッケル酸化鉱石からニッケル及びコバルトを回収する高温加圧酸浸出に基づく湿式製錬方法において、ニッケル及びコバルトの高純度金属等の最終製品を製造する工程で用いる原料として好適な、ニッケル及びコバルトの濃縮度が高く、かつ付着水分が低い中間精製物を得る湿式製錬方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニッケルは、主としてステンレス及び各種合金に使用されている。そのため、ニッケル硫化鉱石又はニッケル酸化鉱石から種々の製錬プロセスにより、最終製品として金属ニッケル、フェロニッケル合金等が製造されている。
ところで、近年、ニッケル酸化鉱石として、これまでニッケル含有量が低いため原料としての経済的な魅力の少なかった低ニッケル品位のラテライト鉱が注目されている。なお、低ニッケル品位のラテライト鉱では、コバルト含有量が比較的多いのが一般的であり、ニッケルとともにコバルトが回収される。さらに、ラテライト鉱の湿式製錬方法としては、硫酸浸出法を用いることが広く行なわれている。
【0003】
この中で、特に、従来問題のあった反応容器材質に高温高圧下において高耐食性を有する材料が開発されたことにより、硫酸を用いた高温加圧酸浸出法(High Pressure Acid Leach)が、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法として注目されている。この方法は、従来の一般的なニッケル酸化鉱の製錬方法である乾式製錬法と異なり、乾燥及び還元工程等の高温処理工程を含まず、一貫した湿式工程からなるので、エネルギー的及びコスト的に有利であるという利点を有している。そのため、すでに、オーストラリア、フィリピン、キューバ等において、高温加圧酸浸出法による操業がなされており、ニッケル生産の重要なプロセスになりつつある。しかも、さらに効率的なプロセスの開発のため、プロセス全体に渡る技術、操業方法等の研究開発がなされている。
【0004】
代表的なものとして、例えば、ニッケル酸化鉱石からニッケル、コバルト等を回収するに当たり、常圧浸出残留物を酸化性雰囲気下で高温高圧で硫酸浸出し、この高圧浸出液を酸化鉱石スラリーと合わせて硫酸酸性下で常圧浸出し、次いで、常圧浸出液を中和後、硫化アルカリ化合物を添加してニッケル、コバルトを硫化物で回収する方法(例えば、特許文献1参照。)が提案されている。
【0005】
また、近年に至っては、前記鉱石のスラリーに硫酸を添加し、220〜280℃の温度下で撹拌処理して、浸出スラリーを形成する浸出工程、前記浸出スラリーを多段洗浄して、ニッケル及びコバルトを含む浸出液と浸出残渣を得る固液分離工程、前記浸出液の酸化を抑制しながら、pHが4以下となるように炭酸カルシウムを添加し、3価の鉄を含む中和澱物スラリーとニッケル回収用母液を形成する中和工程、及び前記母液に硫化水素ガスを吹きこみ、ニッケル及びコバルトを含む硫化物と貧液を形成する硫化工程を含む、プロセス全体として簡素で、かつ高効率な製錬方法(例えば、特許文献2参照。)が本出願人によって提案されている。
【0006】
このような高温加圧酸浸出法では、一般に、まず、ニッケル及びコバルトを酸化物又は水酸化物形態で含有する鉱石をスラリー状にした後、硫酸を添加し、硫酸浸出する。
例えば、まず、ニッケル酸化鉱石を、水中で解砕及び粉砕してスラリー化する。次いで、鉱石スラリーを濃縮する。この鉱石スラリーを、高温加圧容器であるオートクレーブに送り、高温高圧下でニッケルを浸出する。ここで、高温高圧下での浸出は、常温常圧下での浸出に比べてニッケルの浸出速度が著しく向上する。この際、ニッケルのほか、有価金属であるコバルトとともに、マグネシウム、アルミニウム、鉄、クロム等の鉱石に含まれている他の成分も浸出される。
【0007】
次いで、得られた浸出液からニッケル及びコバルトの回収が行なわれる。その方法としては、例えば、硫化水素、硫化アルカリ等の硫化剤、又は水酸化マグネシウム等の中和剤等の薬剤を使用して、ニッケル及びコバルトを他の不純物元素から分離するとともに、濃縮した中間精製物を回収し、次いで、中間精製物から後工程においてニッケル及びコバルトを分離精製する方法、或いは、溶媒抽出法又はイオン交換法により、中間精製物を経ないで浸出液から直接ニッケルを濃縮液中に分離して精製する方法が挙げられるが、一般的には、経済的観点から、薬剤を使用して中間精製物としてニッケル及びコバルトを固定分離する方法が行なわれている。
【0008】
ここで、最も一般的に行なわれている硫化剤を使用する方法では、浸出液中のニッケル及びコバルトは、NiS及びCoS等で表される硫化物の混合物(以下、混合硫化物と呼称する場合がある。)を形成し、浸出液中の鉄、クロム、マンガン等の他の不純物元素と分離し、沈殿濃縮される。次いで、分離回収された混合硫化物は、同一のプラント内に設けられた精製プラント、或いは他の場所に設置された精製プラントにて、分離精製され、金属ニッケル及び金属コバルト等の最終製品として回収される。ここで用いられる硫化反応では、ニッケル及びコバルトの硫化が他の不純物元素に対してきわめて選択的に進む。このことは、他の不純物元素との分離と、得られる沈殿中のニッケル及びコバルトの濃縮度とを向上させる点において有利となる。したがって、前記精製プラントの規模を低く抑えることができるとともに、他の場所に設置された精製プラントへ運搬する際にも、ニッケル及びコバルトの濃縮度が高いので、その物量が少なく運搬コストの低減がなされる。さらに、不純物元素の含有量が少ないので、前記精製プラント内に必要に応じて設けられる不純物元素の除去工程の負荷も低く抑えることができる。
【0009】
しかしながら、このようにニッケル及びコバルトの濃縮度において利点を有する混合硫化物においても、ニッケル品位は高々50〜60重量%であり、含有コバルトを加味しても、混合硫化物中の30〜40重量%分は、イオウ、不純物元素等の精製に際して除去しなければならないものであるという問題があった。また、前記混合硫化物は、湿式法により得られる、通常は含水率が高くなる硫化沈殿であり、付着水分が高いという問題があった。
【0010】
一方、中和剤を使用する方法では、ニッケル及びコバルトは水酸化物沈殿として濃縮回収される。しかしながら、得られた沈殿中のニッケル及びコバルトの品位は、混合硫化物よりもさらに低く、20〜40重量%である。しかも、得られる水酸化物の粒子が微細であるため、沈殿の付着水分が30〜60重量%と高いものとなる。このことは、前記水酸化物沈殿からニッケル及びコバルトを分離回収する際に、そのための精製プラントの負荷、或いは運搬を考えると不利な点である。
【0011】
以上のように、現在、高温加圧酸浸出法の中間精製物として回収されている混合硫化物又は水酸化物には、ニッケル及びコバルトの高純度金属等の最終製品を製造する工程で用いる原料として、ニッケル及びコバルトの濃縮度と付着水分に伴なう効率性への問題点があった。すなわち、ニッケルとコバルトを含む中間精製物中のニッケル及びコバルトの品位が100重量%に可能な限り近く、かつ付着水分が可能な限り低いものが望ましい。
【0012】
以上の状況から、ニッケル酸化鉱石からニッケル及びコバルトを回収する湿式製錬方法において、ニッケル及びコバルトの濃縮度が高く、かつ付着水分が低い中間精製物を得る方法の開発が望まれていた。
【0013】
【特許文献1】特開平6−116660号公報(第1頁、第2頁)
【特許文献2】特開2005−350766号公報(第1頁、第2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点に鑑み、ニッケル酸化鉱石からニッケル及びコバルトを回収する高温加圧酸浸出に基づく湿式製錬方法において、ニッケル及びコバルトの高純度金属等の最終製品を製造する工程で用いる原料として好適な、ニッケル及びコバルトの濃縮度が高く、かつ付着水分が低い中間精製物を得る湿式製錬方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記目的を達成するために、ニッケル酸化鉱石からニッケル及びコバルトを回収する湿式製錬方法において、中間精製物について、鋭意研究を重ねた結果、ニッケル酸化鉱石の高温加圧酸浸出により得られた浸出液を電解採取に付し、ニッケル及びコバルトを含む合金を製造したところ、ニッケル及びコバルトの高純度金属等の最終製品を製造する工程で用いる原料として好適な、ニッケル及びコバルトの濃縮度が高く、かつ付着水分がほとんど含まれない中間精製物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0016】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、ニッケル酸化鉱石のスラリーに硫酸を添加し加圧下で浸出した後、ニッケル及びコバルトを含む浸出液と浸出残渣とに分離し、引き続き、得られた浸出液を電解槽に供給し、電解採取に付すことによって、ニッケル及びコバルトを含む合金を製造することを特徴とするニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法が提供される。
【0017】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記浸出は、前記スラリーを220〜280℃の温度下で撹拌処理すること特徴とするニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法が提供される。
【0018】
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、前記電解採取において、電流密度は、5〜100A/mであること特徴とするニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法が提供される。
【0019】
また、本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、前記電解採取において、電解液の温度は、40〜80℃であること特徴とするニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法が提供される。
【0020】
また、本発明の第5の発明によれば、第1の発明において、前記電解採取において、カソードは、チタン板、ステンレス板又はニッケル板から選ばれる少なくとも1種であり、一方、アノードは、鉛板又は鉛を主成分とする合金板からなる不溶性アノードであること特徴とするニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法が提供される。
【0021】
また、本発明の第6の発明によれば、第1の発明において、さらに、電解採取に先だって、前記浸出液のpHを2.5〜5.0に調整し、得られた鉄を含む中和澱物を分離除去する中和処理に付すことを特徴とするニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法が提供される。
【0022】
また、本発明の第7の発明によれば、第6の発明において、前記pHの調整剤は、炭酸カルシウム又は水酸化カルシウムであることを特徴とするニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法が提供される。
【発明の効果】
【0023】
本発明のニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法は、ニッケル酸化鉱石からニッケル及びコバルトを回収する高温加圧浸出に基づく湿式製錬方法において、中間精製物としてニッケル及びコバルトを含む合金を製造することにより、ニッケル及びコバルトの高純度金属等の最終製品を製造する工程で用いる原料として好適な、ニッケル及びコバルトの濃縮度が高く、かつ付着水分が低い中間精製物を得ることができる方法であり、その工業的価値は極めて大きい。
【0024】
これにより、この中間精製物からニッケル及びコバルトを分離回収するための精製プラントの規模を最小限に抑えることができる。また、この中間精製物を他の場所へ運搬する際に、ニッケル及びコバルトの濃縮度が高いため物量が少なく運搬コストを削減することができる。また、不純物元素の含有量が低いので、精前記製プラントに必要に応じて設ける浄液工程の負荷を最小限に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明のニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法は、ニッケル酸化鉱石のスラリーに硫酸を添加し加圧下で浸出した後、ニッケル及びコバルトを含む浸出液と浸出残渣とに分離し、引き続き、得られた浸出液を電解槽に供給し、電解採取に付すことによって、ニッケル及びコバルトを含む合金を製造することを特徴とする。
【0026】
本発明において、硫酸を用いた高温加圧酸浸出により得られた浸出液から、中間精製物として、電解採取法によりニッケル及びコバルトを含む合金を製造することが重要である。これによって、ニッケル及びコバルトの濃縮度が高く、かつ付着水分がほとんど含まれない中間精製物を得ることができる。すなわち、電解採取法においては、ニッケル及びコバルトとこれらより貴な金属イオンが選択的に電着されるので、電着物中のニッケル及びコバルト品位が上昇する。例えば、ニッケル酸化鉱石中からその一部が浸出液中へ溶出されたマグネシウム、アルミニウム、鉄、クロム等の不純物元素のうち、共電着される鉄が、電着物中に比較的多量に含有される。従って、通常得られる合金中には、ニッケルとコバルトとともに、不純物元素としては主に鉄が含有される。また、電着物として得られる合金は、容易に乾燥され、付着水分がほとんど含まれない。
【0027】
まず、本発明のニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法の概要について、図を用いて説明する。図1は、本発明に係るニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法による実施態様の一例を表す製錬工程図である。
図1において、ニッケル酸化鉱石5は、最初に、浸出工程1で硫酸を用いた高温加圧酸浸出に付され、浸出スラリー6が形成される。浸出スラリー6は、固液分離工程2に付され、ニッケル及びコバルトを含む浸出液7と浸出残渣8に分離される。得られた浸出液7は、必要に応じて、中和工程3に付され、鉄水酸化物を含む中和澱物スラリー9とニッケル回収用の母液10が形成される。得られた母液10は、電解採取工程4に付され、ニッケル及びコバルトを含む合金11とニッケル等が除去された貧液12に分離される。
【0028】
次に、各工程の詳細を説明する。なお、本発明の方法に用いる浸出液としては、下記の浸出工程及び固液分離工程により、ニッケル酸化鉱石のスラリーに硫酸を添加し加圧下で浸出後、浸出残渣を分離して得られる。
【0029】
(1)浸出工程
上記浸出工程は、ニッケル酸化鉱石のスラリーに硫酸を添加し、所定の温度下で撹拌処理して、浸出残渣と浸出液からなる浸出スラリーを形成する工程である。この工程では、所定温度により形成される加圧下、例えば3〜6MPaで行なわれるので、これらの条件に対応することができる高温加圧容器(オートクレーブ)が用いられる。
【0030】
上記工程においては、下記の式(1)〜(5)で表される浸出反応と高温熱加水分解反応によって、ニッケル、コバルト等の硫酸塩としての浸出と、浸出された硫酸鉄のヘマタイトとしての固定化が行われる。しかしながら、鉄イオンの固定化は、完全には進行しないので得られる浸出スラリーの液部分には、ニッケル、コバルト等のほか、2価と3価の鉄イオンが含まれるのが通常である。
【0031】
「浸出反応」
MO+HSO ⇒ MSO+HO (1)
(式中Mは、Ni、Co、Fe、Zn、Cu、Mg、Cr、Mn等を表す。)
2Fe(OH)+3HSO ⇒ Fe(SO+6HO (2)
FeO+HSO ⇒ FeSO+HO (3)
【0032】
「高温熱加水分解反応」
2FeSO+HSO+1/2O ⇒ Fe(SO+HO (4)
Fe(SO+3HO⇒ Fe+3HSO (5)
【0033】
上記工程で用いるニッケル酸化鉱石としては、主としてリモナイト鉱及びサプロライト鉱等のいわゆるラテライト鉱である。前記ラテライト鉱のニッケル含有量は、通常、0.5〜3.0重量%であり、水酸化物又はケイ苦土(ケイ酸マグネシウム)鉱物として含有される。また、鉄の含有量は、10〜50重量%であり、主として3価の水酸化物(ゲーサイト)の形態であるが、一部2価の鉄がケイ苦土鉱物に含有される。また、ラテライト鉱のほかに、ニッケル、コバルト、マンガン、銅等の有価金属を含有する酸化鉱石、例えば深海底に賦存するマンガン瘤等が用いられる。
【0034】
上記ニッケル酸化鉱石のスラリーの調製方法としては、特に限定されるものではないが、ニッケル酸化鉱石を水中で解砕及び粉砕してスラリー化する。その後、シックナー等の固液分離装置を用いてスラリー中の余剰の水を除去し濃縮して、所定濃度の鉱石スラリーを調製することが好ましい。
【0035】
上記工程で用いるスラリー濃度は、特に限定されるものではないが、浸出スラリーのスラリー濃度が15〜45重量%になるように調製することが好ましい。すなわち、浸出スラリーのスラリー濃度が15重量%未満では、浸出の際、同じ滞留時間を得るために大きな設備が必要となり、酸の添加量も残留酸濃度を調整のため増加する。また、得られる浸出液のニッケル濃度が低くなる。一方、スラリー濃度が45重量%を超えると、設備の規模は小さくできるものの、高濃度スラリーの搬送が困難(管内閉塞の頻発、エネルギーを要するなど)という問題が生じることとなる。
【0036】
上記工程で用いる温度は、特に限定されるものではないが、220〜280℃が好ましく、240〜270℃がより好ましい。すなわち、この温度範囲で反応を行うことにより、鉄はヘマタイトとして大部分が固定される。温度が220℃未満では、高温熱加水分解反応の速度が遅いため反応溶液中に鉄が溶存して残るので、鉄を除去するための後続の中和工程の負荷が増加し、ニッケルとの分離が非常に困難となる。一方、280℃を超えると、高温熱加水分解反応自体は促進されるものの、高温加圧浸出に用いる容器の材質の選定が難しいだけでなく、温度上昇にかかる蒸気コストが上昇するため不適当である。
【0037】
上記工程で用いる硫酸量は、特に限定されるものではなく、鉱石中の鉄が浸出されるような過剰量が用いられるが、例えば、鉱石1トン当り200〜500kgであり、鉱石1トン当りの硫酸添加量が500kgを超えると、硫酸コストが大きくなり好ましくない。
なお、得られる浸出液のpHは、固液分離工程での生成されたヘマタイトを含む浸出残渣のろ過性から、0.1〜1.0に調整されることが好ましい。
【0038】
上記工程において、ニッケルとコバルトの浸出率は、いずれも90%以上であり95%に達する。しかしながら、浸出工程では、残渣部分の大部分がヘマタイトである浸出スラリーが形成されるが、ヘマタイト自身が非常に微細であるため、この浸出スラリーは、通常のろ過機を用いて残渣と浸出液とをろ過分離するのは困難である。また、ニッケル含有量が低い鉱石を多量に処理する場合、その浸出残渣量も多くなるので、浸出残渣に付着する液中に含まれるニッケル分は実収率に大きく影響する。そのため、浸出残渣に付着するニッケルを低減する必要がある。
【0039】
(2)固液分離工程
上記固液分離工程は、上記浸出工程で形成された浸出スラリーから、ニッケル及びコバルトを含む浸出液と浸出残渣とに分離する工程である。ここで得られる浸出液としては、例えば、ニッケル濃度は、1〜5g/L程度である。なお、上記鉱石には多量の鉄が含まれるが、浸出に際してヘマタイトとして沈殿されるで、浸出液中の鉄濃度は低くなっている。しかしながら、通常、鉄が0.1〜5g/Lの濃度で含有される。
【0040】
上記工程としては、特に限定されるものではないが、浸出残渣に付着して廃棄されるニッケル等を浸出液中に分離回収するため、上記浸出工程で形成される浸出スラリーを多段洗浄することが有効である。具体的には、浸出スラリーを洗浄液と混合した後、シックナーで固液分離を行う。まず、スラリーは洗浄液により希釈され、次に、浸出残渣はシックナーの沈降物として濃縮されるので、浸出残渣に付着するニッケル分をその希釈の度合に応じて減少させることができる。実操業では、このような機能を持つシックナーを多段に連結して用いて、回収率の向上をはかる。
【0041】
上記工程における多段洗浄としては、特に限定されるものではないが、ニッケルを含まない洗浄液で向流に接触させるCCD法が好ましい。これによって、系内に新たに導入する洗浄液を削減するとともに、ニッケル及びコバルトの回収率を95%以上とすることができる。
【0042】
(3)電解採取工程
上記電解採取工程は、上記固液分離工程で得られた浸出液を電解槽に供給し、電解採取に付し、ニッケル及びコバルトを含む合金を製造する工程である。これによって、ニッケル及びコバルトを金属化して、他の不純物元素を含む貧液と分離し、ニッケル及びコバルトを電着物として濃縮する。
【0043】
上記工程で用いる電解採取方法としては、特に限定されるものではなく、不溶性アノードを用いる隔膜電解法が用いられる。ここで、電解時には、カソードとアノードを少なくとも1組以上配列した電解槽内に、電解液として上記浸出液を供給する。
上記カソードとしては、特に限定されるものではなく、硫酸浴での耐食性に優れるチタン板、ステンレス板又はニッケル板から選ばれる少なくとも1種が用いられる。一方、上記アノードとしては、特に限定されるものではなく、鉛板、鉛を主成分とする合金板、貴金属酸化物をコーティングしたチタン板等の種々の不溶性アノードが用いられるが、比較的安価な鉛板又は鉛を主成分とする合金板からなる不溶性アノードがコスト上好ましい。
【0044】
上記工程で用いる電流密度としては、特に限定されるものではないが、好ましくは5〜100A/m、より好ましくは10〜30A/mである。すなわち、電解液は、前述したように上記固液分離工程で得られた浸出液であるので、ニッケル濃度及びコバルト濃度が低い。したがって、上記工程で用いる電流密度としては、低いほど効率的にニッケル及びコバルトを金属化することができる。電流密度が5A/m未満では、電着速度が低く設備容量が大きくなる。一方、電流密度が100A/mを超えると、電流効率が低い。
【0045】
上記工程で用いる電解液の温度としては、特に限定されるものではないが、高温ほど電解液中のイオンの移動が容易になるので、40〜80℃が好ましい。すなわち、温度が40℃未満では、電流効率が低い。一方、温度が80℃を超えると、装置材料の耐食性の低下、及び加熱のためのエネルギーコストの増大を招く。
【0046】
上記工程において、電着物の回収は、1〜10日程度の通電後、カソードを電解槽から引き上げることにより行なう。なお、カソードとしてチタン板又はステンレス板を用いている場合には、電着物をカソードから引き剥がす。
ここで得られる電着物は、ニッケルとコバルトの品位が少なくとも70重量%を超え、また、付着水分がほとんどない合金である。すなわち、従来の混合硫化物又は水酸化物に対し、ニッケル及びコバルトの高純度金属等の最終製品を製造する工程で用いる原料として好適な、ニッケル及びコバルトの濃縮度が高く、かつ付着水分がほとんど含まれない中間精製物を得ることができる。また、貧液は、必要に応じて、上記固液分離工程ヘ繰返し、洗浄液として好ましく用いられる。
【0047】
(4)中和工程
本発明の方法において、必要に応じて、上記電解採取工程に先だって、中和工程を行なうことができる。これにより、上記浸出液中に比較的多量に含まれる鉄を水酸化鉄として除去することができ、電解採取工程において、電着物中のニッケル及びコバルト品位を上昇させることができる。また、ニッケルと同様に電極上で還元される可能性がある、例えば銅、マンガン、クロム等の元素を予め除去しておくことも肝要であるが、これら元素の多くは、電解液のpHを上昇させることである程度除去することができる。
【0048】
さらに、上記浸出液のpHを上昇させ水素イオン濃度を低下させ、電解時に電解液からの水素発生を抑え、ニッケルとコバルトを効率的に還元することができる。すなわち、電解採取工程において、電解採取が可能な浸出液のpHの下限範囲としてはは、特に制限はなく、浸出液そのもののpHが−1〜1程度でも可能である。しかしながら、電解時のカソードでは水素発生を伴うため、電解液のpHを上昇させ水素イオン濃度を低下させておくことが、水素発生を抑えニッケルとコバルトを効率的に還元するため有効である。
【0049】
上記中和工程は、電解採取に先だって、前記浸出液のpHを好ましくは2.5〜5.0、より好ましくは3.0〜4.0に調整し、得られた鉄を含む中和澱物を分離除去する工程である。これによって、上記浸出工程で用いた過剰の酸の中和を行うとともに、溶液中に残留する鉄イオン等の除去を行うことができる。すなわち、pHが2.5未満では、不純物元素の除去が不十分であり、かつ水素イオン濃度の低下も不十分である。一方、pHが5.0を超えると、ニッケルの水酸化物の発生が多くなる。
【0050】
上記工程の温度は、特に限定されるものではないが、50〜80℃が好ましい。すなわち、温度が50℃未満では、澱物が微細となり、固液分離へ悪影響を及ぼす。一方、温度が80℃を超えると、装置材料の耐食性の低下や加熱のためのエネルギーコストの増大を招く。
【0051】
上記pHの調整剤としては、特に限定されるものではないが、ろ過性が良好な中和澱物が生成される、炭酸カルシウム(CaCO)又は水酸化カルシウム(Ca(OH))が好ましい。
【0052】
さらに、上記中和工程で得られる中和澱物スラリーを、必要に応じて、固液分離工程へ送ることができる。これによって、中和澱物スラリーからニッケルを回収することができる。すなわち、中和澱物へのニッケルロスは中和澱物の付着水と中和澱物表面での局所反応によるニッケル水酸化物の付着であり、両者とも完全には防ぐことができない。これに対して、中和澱物スラリーを低pHで操業される固液分離工程へ繰返すことによって、浸出残渣の洗浄と同時に、局所反応した水酸化ニッケルの溶解を促進させることができるからである。
【0053】
以上のような一連の工程を含む本発明の湿式製錬方法により、中間精製物として、高いニッケルとコバルトの実収率で、ニッケル及びコバルトの濃縮度が高く、かつ付着水分がほとんど含まれない合金を得ることができる。したがって、これを用いたニッケル及びコバルトの高純度金属等の最終製品を製造する工程では、従来の混合硫化物又は水酸化物形態の中間精製物を用いる場合に比べ、精製プラントの規模は最小限で済み、また他の場所へ運搬する際にも運搬コストを削減することができる。
【0054】
なお、得られたニッケル及びコバルトを含む合金から、ニッケル及びコバルトの高純度金属等の最終製品を製造する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、これを破砕及び粉砕した後、塩素浸出又は硫酸で浸出し、得られた浸出液からニッケルとコバルトを分離精製し高純度金属を得る方法等が用いられる。
【実施例】
【0055】
以下に、本発明の実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例で用いた金属の分析方法はICP発光分析法で行った。また、実施例で用いたラテライト鉱の化学組成を表1に示す。
【0056】
【表1】


【0057】
(実施例1)
上記ラテライト鉱554gに、水2Lを添加しスラリーとした。このスラリーをオートクレーブに装入後、さらに98%硫酸170gを添加し、245℃で1時間撹拌して浸出した。次いで、浸出残渣と分離して浸出液を得た。得られた浸出液の組成は、ニッケル:3.3g/L、コバルト:0.26g/l、マンガン:3.0g/L、鉄:0.70g/l、及びクロム:0.03g/L、また、pHは、0.3であった。
その後、上記浸出液を塩化ビニール製の電解槽(縦100mm、横100mm、高さ100mm)に供給して、浸出液中のニッケル及びコバルトを電解採取して、電着物としてニッケル及びコバルトを含む合金を製造した。ここで、電解槽のカソードとしてチタン板を、アノードとして貴金属酸化物をコーティングしたチタン板を使用した。また、電解時には、電流密度を50A/mとし、電解液の温度を60℃に調整しながら5時間通電した。通電終了後、カソードチタン板上に電析した電着物を剥ぎ取り、分析に供した。結果を表2に示す。
【0058】
(実施例2)
実施例1と同様に浸出を行ない得られた浸出液を用いて、該浸出液に水酸化カルシウムを添加し、pH2.5に調整し、1時間撹拌して中和処理を行なった。次いで、生成した中和澱物を分離除去して得られた浸出液を電解槽に供給して、浸出液中のニッケル及びコバルトを電解採取して、電着物としてニッケル及びコバルトを含む合金を製造した。なお、電解装置及び電解条件は実施例1と同様であった。通電終了後、カソードチタン板上に電析した電着物を剥ぎ取り、分析に供した。結果を表2に示す。
【0059】
(実施例3)
pH3.0に調整したこと以外は実施例2と同様に行ない、通電終了後、カソードチタン板上に電析した電着物を剥ぎ取り、分析に供した。結果を表2に示す。
【0060】
(実施例4)
pH3.9に調整したこと以外は実施例2と同様に行ない、通電終了後、カソードチタン板上に電析した電着物を剥ぎ取り、分析に供した。結果を表2に示す。
【0061】
【表2】


【0062】
表2より、実施例1〜4では、浸出液中のニッケル及びコバルトを電解採取し、電着物としてニッケル及びコバルトを含む合金を製造することで本発明の方法に従って行なわれたので、ニッケルを58〜71重量%、コバルトを18〜21重量%及び鉄21〜7重量%含有する合金が得られ、従来の混合硫化物又は水酸化物に対し、ニッケル及びコバルトの濃縮度が高く、かつ付着水分が低い中間精製物を得ることができることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上より明らかなように、本発明のニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法は、ニッケル酸化鉱の湿式製錬分野で利用される高温加圧酸浸出に基づく湿式製錬方法において、ニッケル及びコバルトの濃縮度が高く、かつ付着水分が低い中間精製物を得る方法として好適である。これにより、ニッケル酸化鉱石の高温加圧酸浸出に基づく湿式製錬方法において、ニッケル及びコバルトの高純度金属等の最終製品を製造する工程の原料として本発明の方法で得られた中間精製物を用いることにより、プロセス全体として簡素で、かつ高効率な製錬方法が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係るニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法による実施態様の一例を表す製錬工程図である。
【符号の説明】
【0065】
1 浸出工程
2 固液分離工程
3 中和工程
4 電解採取工程
5 ニッケル酸化鉱石
6 浸出スラリー
7 浸出液
8 浸出残渣
9 中和澱物スラリー
10 母液
11 合金
12 貧液
【出願人】 【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
【出願日】 平成18年6月27日(2006.6.27)
【代理人】 【識別番号】100106596
【弁理士】
【氏名又は名称】河備 健二


【公開番号】 特開2008−7801(P2008−7801A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−176411(P2006−176411)