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【発明の名称】 エピタキシャル薄膜形成用のクラッド配向金属基板及びその製造方法
【発明者】 【氏名】鹿島 直二

【氏名】長屋 重夫

【氏名】嶋 邦弘

【氏名】星野 博史

【要約】 【課題】

【解決手段】本発明は、金属層と、前記金属層の少なくとも一方の面に接合された銅層とからなるエピタキシャル薄膜形成用のクラッド配向金属基板であって、前記銅層は、結晶軸のずれ角ΔφがΔφ≦6°である{100}〈001〉立方体集合組織を有するエピタキシャル薄膜形成用のクラッド配向金属基板である。この配向金属基板は、銅層の表面上に、形成されるエピタキシャル薄膜に対する中間層を備え、前記中間層は、ニッケル、酸化ニッケル、酸化ジルコニウム、希土類酸化物、酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム(STO)、チタン酸ストロンチウム・バリウム(SBTO)、窒化チタン、銀、パラジウム、金、イリジウム、ルテニウム、ロジウム、白金からなる層を少なくとも1層備えるものとすることがより好ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属層と、前記金属層の少なくとも一方の面に接合された銅層とからなるエピタキシャル薄膜形成用のクラッド配向金属基板であって、
前記銅層は、結晶軸のずれ角ΔφがΔφ≦6°である{100}〈001〉立方体集合組織を有するエピタキシャル薄膜形成用のクラッド配向金属基板。
【請求項2】
金属層と銅層との接合面は略フラットであり、そのうねりが1〜500nmである請求項1に記載のエピタキシャル薄膜形成用のクラッド配向金属基板。
【請求項3】
銅層の表面の面粗さRaは、10nm以下である請求項1又は2に記載のエピタキシャル薄膜形成用のクラッド配向金属基板。
【請求項4】
銅層の表面上に、形成されるエピタキシャル薄膜に対する中間層を備え、前記中間層は、ニッケル、酸化ニッケル、酸化ジルコニウム、希土類酸化物、酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム(STO)、チタン酸ストロンチウム・バリウム(SBTO)、窒化チタン、銀、パラジウム、金、イリジウム、ルテニウム、ロジウム、白金からなる層を少なくとも1層備えるものである請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のエピタキシャル薄膜形成用のクラッド配向金属基板。
【請求項5】
中間層は、その厚さが10nm〜10μmである請求項4に記載のエピタキシャル薄膜形成用のクラッド配向金属基板。
【請求項6】
中間層は1層又は2層以上の層からなり、銅層と接触する層がメッキにより形成されるニッケルからなるものである請求項4又は請求項5に記載のエピタキシャル薄膜形成用のクラッド配向金属基板。
【請求項7】
金属層は、ステンレス、ニッケル合金である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のエピタキシャル薄膜形成用のクラッド配向金属基板。
【請求項8】
エピタキシャル薄膜形成用のクラッド配向金属基板の製造方法であって、下記工程を含む方法。
(a)銅板を95%以上の加工率で冷間加工し、前記冷間加工で得られた銅板を、非酸化性雰囲気下で熱処理することで、少なくとも表面部分を、結晶軸のずれ角Δφ≦6°となる{100}〈001〉立方体集合組織とする配向化熱処理工程。
(b)金属板を用意する工程。
(c)前記配向化熱処理工程で得られた銅板、及び、前記金属板の接合面を非酸化性雰囲気下で乾式エッチングを行い、接合面の酸化物、吸着物を除去した後、銅板と金属板とを無加圧又は加圧下で接合する表面活性化接合工程。
【請求項9】
(a)工程の配向化熱処理の処理温度は、200℃以上、銅の融点以下である請求項8記載のエピタキシャル薄膜形成用のクラッド配向金属基板の製造方法。
【請求項10】
(c)工程の表面活性化接合工程の乾式エッチングは、イオンビームエッチング、原子ビームエッチング、プラズマエッチングのいずれかによるものである請求項8又は請求項9に記載のエピタキシャル薄膜形成用のクラッド配向金属基板の製造方法。
【請求項11】
(c)工程の表面活性化接合工程における、乾式エッチング後の銅板と金属板との接合の際の加圧力は、0.01〜300MPaである請求項8〜請求項10のいずれか1項に記載のエピタキシャル薄膜形成用のクラッド配向金属基板の製造方法。
【請求項12】
少なくとも配向化熱処理後の銅板表面について研磨を行い、面粗さRaを10nm以下とする工程を含む請求項8〜請求項11のいずれか1項に記載のエピタキシャル薄膜形成用のクラッド配向金属基板の製造方法。
【請求項13】
銅板の表面に、ニッケル、酸化ニッケル、酸化ジルコニウム、希土類酸化物、酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム(STO)、チタン酸ストロンチウム・バリウム(SBTO)、窒化チタン、銀、パラジウム、金、イリジウム、ルテニウム、ロジウム、白金からなる層の少なくとも1層からなる中間層を形成する工程を含む請求項8〜請求項12のいずれか1項に記載のエピタキシャル薄膜形成用のクラッド配向金属基板の製造方法。
【請求項14】
中間層の形成は、パルスレーザー蒸着法、化学気相蒸着法、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、イオンビーム蒸着法、スピンコーティング法、分子線エピタキシー法、メッキ法の少なくともいずれかによるものである請求項13記載のエピタキシャル薄膜形成用のクラッド配向金属基板の製造方法。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、エピタキシャル薄膜形成用の配向基板及びその製造方法に関し、詳細には、所定の配向組織を有する銅層を備え、高品位かつエピタキシャル成長させることができると共に、強度が確保された配向金属基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エピタキシャル結晶組織の特性に着目した薄膜が様々な分野で用いられている。例えば、エピタキシャル結晶組織を持つ超電導薄膜(酸化物超電導材料から構成)が、各種電力機器に適用される超電導導体、超電導シールド等に使用されている。しかし、かかるエピタキシャル結晶組織を持つ超電導薄膜は加工性に乏しく所望の形状に成形することが困難である欠点を持つ。そのため、従来から、超電導材料の適用のためには必要な基板を適宜用い、その表面上に超電導膜をエピタキシャル成長させることで用途に応じた形状の超電導体を得ている。
【0003】
このようなエピタキシャル薄膜形成のための基板としては、銅、銅合金からなり、{100}〈001〉立方体集合組織を有するクラッド配向金属基板が用いられている(例えば、非特許文献1)。超電導材料の特性は、構成する結晶の配向性に依存するものであるところ、エピタキシャル成長により形成させる結晶組織は、その基板表面の配向性の影響を受ける。銅系の金属材料は、適宜の加工処理及び熱処理(再結晶)を加えることで容易に配向性に優れた基板を得ることができる。
【非特許文献1】“Biaxially textured copper and copper-iron alloy substrates for usein YBa[2]Cu[3]O[7][-][x]” (Superconductor science and technology ISSN0953-2048,2006,vol.19,p.85-95)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した銅系材料からなるエピタキシャル薄膜形成用の配向金属基板にはいくつかの問題があり、特に強度面での問題が指摘されている。これは、配向金属基板の結晶組織は、基本的に再結晶により形成されたものであり、再結晶組織を有する金属は、金属材料一般の性質として強度低下を回避することができないことによる。そして、強度に乏しい基板は、エピタキシャル薄膜形成時において破損するおそれがある等取扱い性が悪い。
【0005】
また、従来の銅系の基板は、配向組織を一応有するとしても必ずしも満足行くものではなかった。基板の配向性は、その上のエピタキシャル薄膜の特性に大きく影響を及ぼすものであり、できる限り配向性の良好な基板が求められる。
【0006】
本発明は、以上のような背景のもとになされたものであり、従来以上の配向性を有し、かつ、高い強度を有するエピタキシャル薄膜形成用の配向基板、及び、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行い、強度面の改善法として2層構造のクラッド基板を用い、エピタキシャル薄膜の成長のための基板となる銅層と、これを支持する金属層とからなるものとした。
【0008】
即ち、本発明は、金属層と、前記金属層の少なくとも一方の面に接合された銅層とからなるエピタキシャル薄膜形成用のクラッド配向金属基板であって、前記銅層は、結晶軸のずれ角ΔφがΔφ≦6°である{100}〈001〉立方体集合組織を有するエピタキシャル薄膜形成用のクラッド配向金属基板である。
【0009】
本発明における銅層の結晶組織は、{100}〈001〉立方体集合組織であり、その配向性の指標(配向度)として、結晶軸のずれ角Δφを基準としてΔφ≦6°となっているものである。本発明においては銅層を構成する金属結晶が2軸配向するものであり、{100}面が基板面に略平行であり、〈001〉軸が基板面の長手方向に略平行に配向し、そのずれ角が6°以下である。より高品位のエピタキシャル薄膜を形成するためには、Δφが6°以下とすることが必要だからである。このΔφは、できるだけ小さいものが好ましく、理想的には0°、即ち、結晶軸のずれがないものであるが、生産可能性を考慮すれば0.1°以上のものが好ましい。
【0010】
本発明に係るエピタキシャル薄膜形成用の配向基板においては、金属層と銅層との接合面が略フラットとなっており、そのうねりが1〜500nmであるものが好ましい。接合界面の凹凸が大きい場合、銅層の厚さを不均一なものとする。特に、銅層が薄い場合においては、わずかな凹凸でも銅層の厚さが不均一なものとなるが、このような場合、その上に成長させるエピタキシャル薄膜に悪影響を与えることとなる。そこで、金属層と銅層との接合界面は、十分に平坦化されると共に、平坦化を阻害する酸化物被膜、吸着物がない状態のものが好ましい。本発明において、うねりとは、接合面の断面観察の際にみられる凹凸であり、その大きさは隣接する波の上端と下端との間の振幅を示すものである。本発明では、断面観察(SEM、TEM)により測定されるうねりの平均値が1〜500nmであるものが好ましい。
【0011】
また、銅層の表面の面粗さRaは、10nm以下とすることが好ましい。銅層表面の面粗さについても、その上に成長させるエピタキシャル薄膜の特性に影響を与え得るからである。この面粗さの下限値については、可能な限り小さいことが好ましいが、加工限界、効率を考慮すると0.1nm以上とすることが好ましい。
【0012】
そして、本発明においては、銅層の表面上に、形成されるエピタキシャル薄膜に対する中間層を備えたものがより好ましい。この中間層は、エピタキシャル薄膜形成時において、エピタキシャル薄膜と基板(銅層)との間に存在する層である。中間層の適用が好ましいのは、基板を構成する銅の特性に基づくものである。即ち、基板上に超電導膜のような酸化物を形成する場合、その成膜時の温度等により超電導膜中の酸素が基板へ拡散するときがあり、この酸素は、基板の銅層表面で酸化物(酸化銅)を形成する。酸化銅は、銅及びこれを支持する金属層との結晶整合性が悪いことから、酸化銅が形成されると超電導膜が酸化銅と共に剥離しやすくなる。そこで、超電導膜から基板(銅層)への酸素の拡散を防止するバリア層として中間層を形成しておくのが好ましい。
【0013】
そして、この中間層は、ニッケル、酸化ニッケル、酸化ジルコニウム、希土類酸化物、酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム(STO)、チタン酸ストロンチウム・バリウム(SBTO)、窒化チタン、銀、パラジウム、金、イリジウム、ルテニウム、ロジウム、白金からなる層を少なくとも1層備えるものが好ましい。これらの金属又は化合物が好ましい理由は、銅上にエピタキシャル成長可能な材料であり、かつ、銅の表面酸化防止効果を有するからである。これら中間層を構成する化合物において、希土類酸化物としては、酸化セリウムが好ましく、酸化ジルコニウムもイットリアを添加して立方晶を安定化したイットリア安定化ジルコニア(YSZ)が好ましい。そして、中間層の厚さは、10nm〜10μmであるものが好ましい。中間層は、下地となる銅層と同じ配向組織を維持しつつ形成されるが、膜厚を厚くし過ぎるとエピタキシャル成長させることが困難となり、その後に形成される薄膜の品質に影響を与えることとなる。この中間層の厚さとしては、50nm〜5μmがより好ましく、50nm〜1μmがより好ましい。
【0014】
中間層は上記材料からなる層を少なくとも1層備えるものであるから、単層でも多層構造を有していても良い。多層構造を採用する場合、銅層に接触して形成される最下層の層は、ニッケルからなるものが好ましい。そして、このニッケル層は、メッキにより形成されたものが好ましい。メッキにより析出するニッケルは結晶性が良好であり、その下地となる銅層の配向性と相俟って良好な配向性を有するからである。
【0015】
一方、銅層を支持して基板を構成する金属層としては、ステンレス、ニッケル合金(ハステロイ合金、インコネル合金、インコロイ合金、モネル合金等)のいずれかよりなるものが好ましい。銅層の強度を確保するためには、薄板状、テープ状としても十分な強度、柔軟性が必要であり、その観点から上記の材料が好適である。
【0016】
尚、本発明に係る配向基板の厚さ(銅層と金属層との厚さの合計)については特に限定するものではなく、製造目的となる超電導材料の厚さに応じて設定でき、板状、薄板状のものからテープ状(1mm以下)のものまで対応できる。また、銅層、金属層の厚さについても特に限定はないが、強度確保の観点から、金属層の厚さは配向基板全体の40%以上とするのが好ましい。また、金属層の厚さは10μm以上とするのが好ましい。
【0017】
本発明に係るエピタキシャル薄膜形成用の金属配向基板の製造においては、銅層の配向性を十分なものとすると共に、銅層と金属層との接合を強固なものとする必要がある。かかる要求に対して、その製造方法としては、結晶配向された銅板と、金属層となる金属板とを圧接するクラッド方法が考えられるが、この方法では圧接時の圧力により銅層の結晶配向が乱れ、配向基板を製造するという本来の目的が達成できない。一方、まず、銅板と金属板とをクラッドし、その後、熱処理をして銅層の配向処理する方法も考えられるが、この場合には、配向処理の際の熱処理により金属板が軟化し、補強材としての機能を消失し、高強度という目的が達成できない。
【0018】
本発明者等は、本発明にかかる配向基板の製造方法として、まず、銅層となる銅板を配向処理し、これに表面活性化接合を用いて無加圧或いは低加圧で金属層となる金属板を接合する方法を見出した。この方法によれば、銅層の配向性を維持しつつ、強固に金属板と銅層とを接合することができる。この製造方法は、以下の工程からなるものである。
【0019】
(a)銅板を、95%以上の加工率で冷間加工し、前記冷間加工で得られた銅板を、非酸化性雰囲気下で熱処理することで、少なくとも表面部分を、結晶軸のずれ角Δφ≦6°となる{100}〈001〉立方体集合組織とする配向化熱処理工程。
(b)金属板を用意する工程。
(c)前記配向化熱処理工程で得られた銅板、及び、前記金属板の接合面を非酸化性雰囲気下で乾式エッチングを行い、接合面の酸化物、吸着物を除去した後、銅板と金属板とを無加圧又は加圧下で接合する表面活性化接合工程。
【0020】
本発明に係る方法では、まず、上記(a)工程のように、銅板を冷間加工及び熱処理して、その組織の配向化を行なう。銅板の加工率は95%以上、好ましくは97%以上であり、95%未満の加工率では十分な配向化組織を得ることができない。尚、銅板は、純度が高いものが好ましく、99.9%以上であるものが好ましい、純度が低いと、十分に配向した結晶組織が得られないからである。
【0021】
冷間加工後の配向化熱処理(再結晶処理)の処理温度は、200℃以上、銅の融点以下とすることが好ましい。200℃未満の熱処理では、十分な配向組織が得られない場合がある。また、熱処理は融点以下とするが好ましくは800℃以下である。より好ましい熱処理温度は、300〜700℃である。また、熱処理時間は、1〜30分とするのが好ましい。熱処理温度が700℃より高い、又は熱処理時間が30分より長い場合には、結晶粒界のグルーヴ(溝)が深くなることがあり、配向処理後にこれを除去するための研磨を要することがある。
【0022】
このようにして銅板を配向化熱処理した後、銅板と接合する金属板を用意する(上記(b)工程)。この金属板は、市販の板材、テープ材をそのまま利用しても良いし、圧延等加工の前処理を行なっても良い。
【0023】
そして、本発明では、配向処理後の銅層と金属層との接合法として、表面活性化接合を適用する(上記(c)工程)。表面活性化接合とは、上記説明のように、接合面(表面)の酸化物、吸着物を乾式エッチングにより除去し、素地(純金属)を露出させた直後に両者を接合する方法である。この方法は、表面に酸化物等の不純物が全くない状態の原子(分子)間で生じる金属原子間力に基づき接合する方法である。
【0024】
表面活性化のための乾式エッチングの具体的な手法としては、アルゴン等のイオンビームエッチング若しくは原子ビームエッチングの他、プラズマエッチングのいずれかが適用できる。この乾式エッチングは、非酸化性雰囲気で行なうことが必要であり、特に、真空下で行なうのが好ましい。
【0025】
表面活性化接合は、無加圧での接合を可能とするものであり、接合対象となる材料を重ね合わせるだけでも接合できる。但し、両材料の位置合わせ、或いは、より強固な接合のために加圧しても良い。もっとも、この場合の加圧力は、材料の変形が生じることのない程度に低圧であって、0.01〜300MPaとするのが好ましい。また、表面活性化接合は、常温での接合が可能である。従って、接合時の加工雰囲気を加熱する必要はない。尚、乾式エッチングによって、材料表面の温度上昇がみられることはあるが、これは接合のための加熱とは異なるものである。尚、この接合の際においても、非酸化性雰囲気とすることが好ましい。
【0026】
以上説明した工程により、配向組織を有する銅層と金属層とからなるクラッド基板を製造することができる。
【0027】
また、本発明に係るクラッド基板は、銅層上に中間層を備えたものが好ましいとするが、この中間層は、PLD(パルスレーザー蒸着法)、CVD(化学気相蒸着法)、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、イオンビーム蒸着法、スピンコーティング法、MBE(分子線エピタキシー法)、メッキ法等の各種の薄膜製造プロセスにより製造可能である。尚、中間層形成は、銅層と金属層とのクラッド後に行うのが好ましい。
【0028】
更に、本発明においては、銅層の表面(エピタキシャル薄膜を成長させる面)の面粗さRaが10nm以下であることが好ましいことから、銅層について、適宜の表面処理を行なうことが好ましい。面粗さ調整の処理としては、電解研磨、機械研磨、化学研磨や化学機械研磨等の化学的研磨、電解砥粒研磨や電解機械研磨等の電解複合研磨のいずれかによる研磨が好ましく、少なくとも配向化処理後の銅板表面を研磨するのが好ましい。また、配向処理前の銅板の仕上げ圧延前後にも研磨を行い、配向化処理後或いはクラッドした後に再度研磨を行っても良い。
【0029】
尚、本発明係るクラッド基板においては、銅層と金属層とのうねりが小さいものが好ましいが、このうねりの制御は、銅板、金属板の圧延の際の圧延ロールを平坦なものとすることで可能である。表面活性化接合による接合では、無加圧或いは低加圧での接合が可能であることから、接合前の接合面をフラットとすることでそのままの状態を維持することができる。この点、圧延に際しては、仕上げ圧延において、うねりを発生させ難い超鋼製のラップロールを用いることが好ましい。また、上記のような研磨を行っても良い。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明に係るエピタキシャル薄膜形成用の基板は、配向組織を有する銅層に、金属層をクラッドしたことにより、従来の基板よりも高い強度を有する。本発明によれば、基板への超電導膜等のエピタキシャル薄膜の形成工程において、基板を破損させることなく安定的に、高品位の薄膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、図面等を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0032】
第1実施形態:板厚3000μmのテープ状の銅板を用意し、これを圧延ロールで加工率95%に設定して、冷間圧延(室温℃)した。このとき、超鋼のラップロールで仕上げ圧延を行い、仕上げ圧延の前に電解研磨を行った。電解研磨は、硫酸系電解液中、電流密度35A/dmで30秒間の条件で行った。圧延後、銅板を熱処理して結晶組織を配向化した。この熱処理は、窒素ガス95%と水素ガス5%とからなる雰囲気中で温度700℃、30分加熱することにより行った。
【0033】
次に、上記銅板にクラッドする金属板を用意した。金属板は、事前に圧延された厚さ100μmのテープ状のステンレス(SUS304)板を用意した。
【0034】
そして、銅板、金属板を、以下説明する表面活性化接合装置100を用いて、表面活性化接合によりクラッド化した。
【0035】
図1は、本実施形態で使用した表面活性化接合装置100の概略図を示す。表面活性化接合装置100は、真空装置であって、エッチングチャンバ22A、22Bと、真空槽1に区切られている。また、真空槽1、エッチングチャンバ22A、22Bは、それぞれ排気ポンプユニット9、25に接続されている。電極ロール6A、6Bは、その一部がエッチングチャンバ22A、22Bに突き出しており、そこでは真空シールされ配置されている。そして、エッチングチャンバ22A、22B外壁には、電極ロール6A、6Bに通電するための電極(図示せず)が設けられている。そして、各電極との間に高電圧を付与する電源部7A、7Bが設置されている。そして、真空槽1内には、乾式エッチング処理前の銅板20A、金属板20Bを巻き出す巻出しリール3A、3Bが設置されている。また、乾式エッチングされ接合された銅板20A及び金属板20Bを巻取る巻取りロール5が設置されている。
【0036】
この表面活性化接合装置100では、巻出しリール3A、3Bから巻き出された銅板20A、金属板20Bが、電極ロール6A、6Bの外周面にそれぞれ張架され、エッチングチャンバ22A、22B内で高電圧が負荷され、室内に封入されたアルゴンガス等の不活性ガスがグロー放電され、不活性ガス分子が高電圧により銅板20A、金属板20の表面を叩きつけエッチングする。これにより、表面の酸化物、吸着物は除去され、清浄かつ平坦な表面を得ることができる。その後、活性化された銅板20A、金属板20Bは、巻取りリール5の巻取り動作とともに接合され、クラッド配向金属基板30が製造されていく。本実施形態においては、乾式エッチングの条件を以下のとおりとした。
【0037】
・エッチング方式:アルゴンビームエッチング
・真空度:10−5Pa
(真空槽、エッチングチャンバ内はアルゴンガス雰囲気下)
・印加電圧:2kV
・エッチング時間:5分間
・クラッド時加圧力:2MPa
【0038】
以上により製造したクラッド配向金属基板を回収し、上記と同様の条件にて銅層表面の電解研磨を行った。その後、銅層の配向性、接合界面の状態を確認した。
【0039】
第2実施形態:第1実施形態と同様の銅板について、配向化のための熱処理温度を200℃に変更し、その他の条件は第1実施形態と同じにしてクラッド配向金属基板を製造した。
【0040】
比較例:上記実施形態に対して、配向化処理の温度の影響を検討するため、熱処理温度を100℃とし、その他の条件は第1実施形態と同じにしてクラッド配向金属基板を製造した。
【0041】
配向性の評価;以上製造したクラッド配向金属基板について、銅層の配向性を検討した。この検討は、X線極点図解析(XPFA)により行った。図2〜図4は、各試料の(111)面のX線極点図を示すものである。図からわかるように、第1実施形態(図2)で製造したエピタキシャル薄膜形成用クラッド配向金属基板の銅層は、独立した4つのピークが明瞭に現れており、良好な配向性を有することが確認された。そして、ずれ角Δφは、φスキャンを行い、そのピークの半値幅(FWHM)により求めたが、上記の試料の銅層のずれ角Δφは、4.5°、5.0°であった。一方、比較例1(図4)によれば、上述のように明瞭なピークがなく良好な配向性は得られないことが確認された。
【0042】
接合界面の評価:
図5は、第1実施形態に係るエピタキシャル薄膜形成用クラッド配向金属基板の接合界面を示す写真(倍率×5000)である。図5からわかるように、銅層と金属層との界面は略フラットであり、そのうねり300nm以下であった。
【0043】
第3実施形態:ここでは、中間層を有する金属配向クラッド基板を製造し、その有用性を検討した。まず、第1実施形態とで製造したクラッド基板にニッケルメッキを行った。この際のメッキ条件としては、電流密度1〜10A/dm、浴温度40〜60℃の範囲内とし、厚さ1μmのニッケル層を形成した(試料1)。また、ニッケル層の上に、以下のように更に各種の材料からなる中間層を供える基板を製造した。
【0044】
【表1】


【0045】
ニッケル上に形成する中間層(YSZ、酸化セリウム等)の形成は、いずれもPLD法を用いた。目的となる薄膜の組成と同一のターゲットを使用し、基板温度750〜800℃、ガス圧5〜10Pa、レーザー周波数5〜10Hzとし、各材料に応じて調製した。
【0046】
そして、製造した中間層付きクラッド基板について、超電導薄膜(YBCO)を成膜した。YBCO膜の製造もPLD法を適用し、YBCOターゲットを使用、基板温度780℃、ガス圧35Pa、レーザー周波数2Hzとした。そして、このYBCO成膜の際、薄膜の剥離の有無を調査した。その結果を表2に示す。
【0047】
【表2】


【0048】
超電導膜成膜の剥離は、超電導膜からの酸素拡散による基板の酸化によるものであり、上記の結果から、適切な中間層を用いることで基板の酸化を抑制し薄膜の剥離を防止できることがわかる。そして、剥離がみられなかった試料について、超電導膜の配向性を評価したところ、良好な配向性を有することが確認された。図6は、試料2のYBCO膜の(103)極点図を示す。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施形態における表面活性化接合装置の概略図。
【図2】第1実施形態に係るクラッド配向金属基板の銅層表面のX線極点図。
【図3】第2実施形態に係るクラッド配向金属基板の銅層表面のX線極点図。
【図4】比較例1に係るクラッド配向金属基板の銅層表面のX線極点図。
【図5】第1実施形態に係るクラッド配向金属基板の銅層と金属層との接合界面を示す断面写真。
【図6】第3実施形態の試料2の基板上に形成した超電導膜(YBCO膜)の(103)極点図。
【符号の説明】
【0050】
1 真空槽
3A、3B 巻出しリール
5 巻き取りリール
6A、6B 電極ロール
7A、7B 電源部
9、25 排気ポンプユニット
20A 銅板
20B 金属板
22A、22B エッチングチャンバ
100 表面活性化接合装置
【出願人】 【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
【識別番号】000217228
【氏名又は名称】田中貴金属工業株式会社
【出願日】 平成19年4月17日(2007.4.17)
【代理人】 【識別番号】110000268
【氏名又は名称】特許業務法人 田中・岡崎アンドアソシエイツ


【公開番号】 特開2008−266686(P2008−266686A)
【公開日】 平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願番号】 特願2007−108606(P2007−108606)