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【発明の名称】 銅材の製造方法及び銅材
【発明者】 【氏名】黒田 洋光

【氏名】青山 正義

【氏名】沖川 寛

【要約】 【課題】安価で、軟化温度の低く、かつ導電率の高い無酸素銅材の製造方法及び銅材を提供するものである。

【解決手段】本発明に係る銅材の製造方法は、上方引上連続鋳造装置を用いて銅溶湯から直接、銅材を製造する方法において、上記上方引上連続鋳造装置の溶湯貯溜手段に貯溜され、酸素含有量が0.001重量%以下の銅溶湯に、Ti、Zr、V、Ta、Fe、Ca、Mg、又はNiから選択される少なくとも1種の金属又は合金を添加し、銅溶湯中に含まれる該金属の割合を0.0007〜0.05重量%に調整し、その銅溶湯を用いて荒引き材を製造し、その荒引き材に減面率30%以上の冷間伸線加工を施し、その冷間伸線材に100〜600℃×1時間以上の熱処理を施すものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方引上連続鋳造装置を用いて銅溶湯から直接、銅材を製造する方法において、
上記上方引上連続鋳造装置の溶湯貯溜手段に貯溜され、酸素含有量が0.001重量%以下の銅溶湯に、Ti、Zr、V、Ta、Fe、Ca、Mg、又はNiから選択される少なくとも1種の金属又は合金を添加し、銅溶湯中に含まれる該金属の割合を0.0007〜0.05重量%に調整し、
その銅溶湯を用いて荒引き材を製造し、
その荒引き材に減面率30%以上の冷間伸線加工を施し、
その冷間伸線材に100〜600℃×1時間以上の熱処理を施すことを特徴とする銅材の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の製造方法を用いて製造された銅材であって、半軟化温度が150℃以下であることを特徴とする銅材。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、銅材の製造方法に係り、特に、上方引上連続鋳造装置を用いて製造される銅材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、銅線を含む各種線材の多くは、連続鋳造圧延法により形成される。先ず、シャフト炉で溶解させた溶湯がSCR方式、又はコンチロッド(登録商標)方式の連続鋳造手段に供給され、鋳造バーが得られる。次に、その鋳造バーは連続鋳造手段に連結された熱間圧延手段に供給され、所定の外径に圧延される。その後、圧延材が冷却され、荒引き線が得られる。
【0003】
連続鋳造圧延法は、溶解工程、鋳造工程、及び熱間圧延工程の各ラインが連続しており、荒引き線の製造法としては効率的で、生産性に優れた方法である。得られた荒引き線は、その後、冷間伸線工程、焼きなまし工程に供され、最終製品(例えば銅線)が得られる。また、無酸素銅の製法として、溶銅湯面に配した鋳型内で溶銅を凝固させて上方に連続的に引上げる上方引上連続鋳造法(アップキャスト法)などがある。この無酸素銅は、近年モータ用のマグネットワイヤにも使用されるようになってきた。
【0004】
【特許文献1】特開平6−240426号公報
【特許文献2】特開昭58−181853号公報
【特許文献3】特開平2−104629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、銅線製造の焼きなまし工程において、連続焼きなましを行う(冷間伸線工程と焼きなまし工程を連続的に行う)ことで、工業生産性を向上させることができる。しかし、この場合、被焼きなまし材の軟化温度が高いと、焼きなまし工程に時間がかかると共に、焼きなまし工程の生産速度に冷間伸線工程の生産速度を合わせる必要があり、銅線の生産性が阻害される。また、被焼きなまし材の軟化温度が高いと、焼きなましに要する熱エネルギーが増大し、製品コストの上昇を招いてしまう。よって、被焼きなまし材の軟化温度の低下が図られている。
【0006】
銅材の軟化温度を低下させるには、銅母材中に含まれる不純物元素を除去し、Cu純度を高めることが必要とされる。不純物元素を除去する方法としては、例えば、溶湯原料の選定(高純度のものを使用)、溶湯の酸化精錬、還元精錬などがある。しかしながら、この不純物元素を除去する方法は、コストが非常にかさむ方法である。このため、溶湯原料にタフピッチ銅を用いた場合、この方法は経済的に極めて不利であり、工業的に適した方法とは言えなかった。さらに、近年では、マグネットワイヤなどの接続溶接時にガスのボイドが生じ難い無酸素銅の要求があり、この点ではタフピッチ銅は適さない。
【0007】
一方、銅材の軟化温度を低下させる他の方法として、銅母材中に含まれる不純物元素の内、ある元素の濃度をより低くすればよいことが知られている。ここで言うある元素の1つとして、Cuに固溶した状態で存在する硫黄(S)や鉛(Pb)などがある。このCu中に固溶したSやPbの濃度を低減させるべく、銅の溶湯に真空脱ガス処理を施したり、鋳造後の銅バーに特定温度で熱処理を施すなどの方策が試みられている。しかし、従来のこれらの方策では、SやPbの濃度を十分に低減させることができないため、銅材の軟化温度を十分に低下させることができなかった。さらに、近年HEV車の普及により、モータの高効率化の点から、マグネットワイヤの導体には高い導電率が求められている。
【0008】
以上の事情を考慮して創案された本発明の目的は、安価で、軟化温度の低く、かつ導電率の高い無酸素銅材の製造方法及び銅材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく本発明に係る銅材の製造方法は、上方引上連続鋳造装置を用いて銅溶湯から直接、銅材を製造する方法において、
上記上方引上連続鋳造装置の溶湯貯溜手段に貯溜され、酸素含有量が0.001重量%以下の銅溶湯に、Ti、Zr、V、Ta、Fe、Ca、Mg、又はNiから選択される少なくとも1種の金属又は合金を添加し、銅溶湯中に含まれる該金属の割合を0.0007〜0.05重量%に調整し、
その銅溶湯を用いて荒引き材を製造し、
その荒引き材に減面率30%以上の冷間伸線加工を施し、
その冷間伸線材に100〜600℃×1時間以上の熱処理を施すものである。
【0010】
一方、本発明に係る銅材は、前述した製造方法を用いて製造された銅材であって、半軟化温度が150℃以下のものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、安価で、軟化温度の低く、かつ導電率の高い無酸素銅材を得ることができるという優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好適一実施の形態を説明する。
【0013】
本発明の好適一実施の形態に係る銅材の製造方法は、上方引上連続鋳造装置を用いて銅溶湯から直接、銅材を製造するものである。
【0014】
具体的には、先ず、上方引上連続鋳造装置の溶湯貯溜手段(例えば、溶解炉など)に貯溜され、酸素含有量が0.001重量%以下の銅溶湯、例えば無酸素銅溶湯に、Ti、Zr、V、Ta、Fe、Ca、Mg、又はNiから選択される少なくとも1種の金属又は合金を添加する。この時、銅溶湯中に含まれる少なくとも1種の金属の割合が0.0007〜0.05重量%となるように、その添加量が調整される。これらの金属又は合金は、いずれもSとの親和力が大きな金属(以下、硫黄親和性金属という)である。ここで言う硫黄親和性金属とは、金属元素の単体又は混合体や、合金の単体又は混合体のいずれであってもよい。
【0015】
また、ここで言う無酸素銅とは、10ppm以下の酸素含有量で、かつ不可避的不純物を含む純銅のことを意味する。
【0016】
次に、硫黄親和性金属を含む無酸素銅溶湯を、溶銅湯面に配した鋳型が上方に引上げて凝固させ、無酸素銅の荒引き材(例えば、荒引き線)を連続的に製造する。その後、荒引き材に、減面率が30%以上の冷間伸線加工、100〜600℃×1時間以上の熱処理を適宜繰り返し施して最終線径とし、半軟化温度が150℃以下の銅材(例えば、銅線)が得られる。この銅材に焼きなまし処理を施したものが、最終製品となる。ここで言う半軟化温度とは、60分間加熱した後の銅材の引張強度が加熱前の銅材の引張強度の半分になる時の温度のことである。
【0017】
硫黄親和性金属の含有量を0.0007〜0.05重量%、好ましくは0.001〜0.05重量%と規定したのは、含有量が0.0007重量%未満だと、硫黄親和性金属と銅母材に固溶しているSが十分に反応せず、軟化温度を低下させる効果が十分に得られないためである。一方、含有量が0.05重量%を超えると、銅材に固溶する硫黄親和性金属の固溶量が多くなりすぎて、銅材の軟化温度が逆に上昇するためである。
【0018】
冷間伸線加工の減面率を30%以上と規定したのは、減面率が30%未満だと、SやPbの析出を促進させ、銅材の軟化温度を低減させる効果が不十分となるためである。
【0019】
冷間伸線材に対する熱処理温度は100〜600℃と規定した。ここで、銅材に固溶しているSやPbなどを析出させるための反応は拡散反応であり、拡散反応を十分に生じさせるには、十分な反応温度(加熱温度)を必要とする。熱処理温度が100℃未満だと、拡散反応を十分に生じさせられない。また、熱処理温度が600℃を超えると、Cuに対するSやPbの固溶限が高まることで、銅材に固溶するSやPbの濃度が逆に増えてしまい、その結果、銅材の軟化温度がさらに上昇する。
【0020】
一方、冷間伸線材に対する熱処理時間は1時間以上と規定した。ここで、前述した拡散反応を十分に生じさせるには、十分な反応時間(加熱時間)を必要とする。熱処理時間が1時間未満だと、銅材に固溶しているSやPbなどを析出させるための反応時間を十分に確保できない。
【0021】
また、半軟化温度を150℃以下と規定したのは、半軟化温度が150℃を超えると、銅材の軟化温度の低減効果が十分でないためである。
【0022】
ここで、本実施の形態に係る銅材の軟化温度が大幅に低下する理由は、次のように考えられる。
【0023】
通常の無酸素銅には10ppm前後のSが固溶しており、このSが銅材の軟化温度を上昇させる大きな因子といわれている。そこで、本実施の形態に係る製造方法では、鋳造直前の酸素含有量が0.001重量%以下の銅溶湯、例えば無酸素銅溶湯に、硫黄親和性金属を所定の割合で添加している。この硫黄親和性金属(例えば、Ti)が無酸素銅溶湯に固溶しているSと反応することで、Sが硫化物(例えば、TiS)として析出し、Sの固溶量が減少される。また、硫黄親和性金属は、無酸素銅溶湯が凝固、再結晶する際の核となることから、これによって、無酸素銅の再結晶生成エネルギーを低くすることができる。
【0024】
また、上方引上連続鋳造法で急冷された荒引き材は、SやPbなどの不純物元素が過飽和に固溶された状態にある。ところが、本実施の形態に係る製造方法では、連続鋳造圧延した荒引き材に減面率が30%以上の冷間伸線加工、及び100〜600℃×1時間以上の熱処理を施している。このように、荒引き材に冷間伸線加工を施すことで、冷間伸線加工時に増大、成長した転位によって、Cu原子及びS原子が容易に拡散、移動できるようになる。その結果、熱処理時に、銅材に過飽和に固溶されたSなどの不純物元素がCuと化合し、析出物(例えば、Cu2S)として析出し易くなる。特に、銅の軟化温度を上昇させるSは、Cuに対する固溶限が小さいため、冷間伸線加工及び熱処理によって容易に析出する。その結果、銅材に固溶するSやPbの濃度が低減され、延いては、銅材の軟化温度が低下すると考えられる。このように両者(冷間伸線加工及び熱処理)の効果の組み合わせにより、銅材の軟化温度を大幅に低下させることが可能となると考えられる。
【0025】
本実施の形態に係る製造方法に用いる荒引き材及び最終的に得られる銅材の形態は、減面加工によって形成可能なものであれば特に限定するものではなく、例えば、線状、板状、又は条状などのいずれであってもよい。
【0026】
次に、本実施の形態に係る銅材の作用を説明する。
【0027】
通常、荒引き材に冷間伸線加工を施し、伸延、伸線させてなる銅材は、加工硬化によって高硬度な線材(例えば、硬銅線)となっている。このため、通常の硬銅線に焼きなましを行う際、特にアニーラー焼きなましを行う際は、高温、長時間の熱処理が必要となる。
【0028】
しかしながら、本実施の形態に係る製造方法により得られた銅材は、酸素含有量が0.001重量%以下の銅溶湯、例えば無酸素銅溶湯に、Ti、Zr、V、Ta、Fe、Ca、Mg、又はNiから選択される少なくとも1種の硫黄親和性金属を、その含有量が0.0007〜0.05重量%となるように添加している。
【0029】
ここで、硫黄親和性金属は、酸素との反応性が強い金属であるため、大気中の酸素と容易に反応して酸化する。よって、銅溶湯に硫黄親和性金属を添加してから実際に鋳造に供するまでの時間が長いと、硫黄親和性金属が大気に晒される時間が長くなり、硫黄親和性金属が多量に酸化されて添加ロスとなる。そこで、硫黄親和性金属と大気中の酸素との反応を抑制することが重要となる。本実施の形態に係る製造方法において、硫黄親和性金属を銅溶湯中に添加する望ましいタイミングは鋳造直前である。また、硫黄親和性金属の添加形態は、硫黄親和性金属の単体を、直接、添加してもよいが、銅母材と合金化させたものを添加することが好ましい。これによって、前述したように硫黄親和性金属の酸化を抑制することができる。また、添加量の秤量ばらつきを抑制することができ、延いては硫黄親和性金属の含有量の精度を高めることができる。
【0030】
以上のような製造方法によって得られた銅材は、タフピッチ銅を用い、従来の方法で製造した銅材(以下、従来の銅材という)と比較して軟化温度が低くなる(例えば、半軟化温度が150℃以下となる)。このため、本実施の形態の銅材は、より低い温度で十分な焼きなましを行うことができる。よって、アニーラー焼きなましを行う際、本実施の形態の銅材は、従来の銅材と比較して、より低い温度で、かつ、短時間で焼きなましを行うことが可能となる。その結果、銅材の生産性が向上すると共に、銅材製造に要するエネルギーの削減も可能となる。
【0031】
本実施の形態の銅材は、接続溶接性に優れる無酸素銅で構成されており、かつ、その軟化温度が従来の銅材よりも大幅に低いことから、最終製品の原料コスト及び製造コストが安価となり、その工業的価値が非常に高い銅材である。
【0032】
以上、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、他にも種々のものが想定されることは言うまでもない。
【0033】
次に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0034】
アップキャスト方式の上方引上連続鋳造装置を用い、無酸素銅からなる直径φ8mmの荒引き線を製造した。荒引き線の構成材は、無酸素銅溶湯に硫黄親和性金属を所定の割合で添加したものである。この荒引き線に冷間伸線加工、熱処理を適宜繰り返して施し、直径φ2.6mmの銅線を作製した(試料1〜試料23)。
【0035】
試料1〜4は、それぞれ荒引き線のままの状態(冷間伸線加工及び熱処理は無し)であり、
硫黄親和性金属含有量が0重量%のものを(比較例1)、
硫黄親和性金属含有量が0.0003重量%Tiのものを(比較例2)、
硫黄親和性金属含有量が0.003重量%Tiのものを(比較例3)、
硫黄親和性金属含有量が0.06重量%Tiのものを(比較例4)、
とした。
【0036】
試料5〜7は、硫黄親和性金属含有量が0.003重量%Tiの荒引き線に、それぞれ、
減面率30%の冷間伸線加工、400℃×60minの熱処理を施したもの(実施例1)、
減面率20%の冷間伸線加工、400℃×60minの熱処理を施したもの(比較例5)、
減面率50%の冷間伸線加工、400℃×60minの熱処理を施したもの(実施例2)、
である。
【0037】
試料8〜10は、硫黄親和性金属含有量が0.003重量%Tiの荒引き線に減面率30%の冷間伸線加工を施し、それぞれ更に、
100℃×60minの熱処理を施したもの(実施例3)、
600℃×90minの熱処理を施したもの(実施例4)、
800℃×30minの熱処理を施したもの(比較例6)、
である。
【0038】
試料11,12は、それぞれ硫黄親和性金属含有量が0.003重量%Tiの荒引線に冷間伸線加工を施さず、直接、
600℃×30minの熱処理を施したもの(比較例7)、
800℃×60minの熱処理を施したもの(比較例8)、
である。
【0039】
試料13〜23は、硫黄親和性金属を含む荒引き線に、それぞれ減面率30%の冷間伸線加工、400℃×60minの熱処理を施したものである。
硫黄親和性金属含有量が0重量%のものを(比較例9)、
硫黄親和性金属含有量が0.0003重量%Tiのものを(比較例10)、
硫黄親和性金属含有量が0.06重量%Tiのものを(比較例11)、
硫黄親和性金属含有量が0.003重量%Zrのものを(実施例5)、
硫黄親和性金属含有量が0.003重量%Feのものを(実施例6)、
硫黄親和性金属含有量が0.003重量%Mgのものを(実施例7)、
硫黄親和性金属含有量が0.006重量%Taのものを(実施例8)、
硫黄親和性金属含有量が0.0005重量%Niのものを(比較例12)、
硫黄親和性金属含有量が0.01重量%Niのものを(実施例9)、
硫黄親和性金属含有量が0.01重量%Ni+0.001重量%Tiのものを(実施例10)、
硫黄親和性金属含有量が0.01重量%Ni+0.001重量%Mnのものを(実施例11)、
とした。
【0040】
試料24は、連続鋳造圧延方式(SCR方式)を用いてタフピッチ銅にからなる荒引線φ8mmを製造した。荒引き線の構成材は、無酸素銅溶湯に硫黄親和性金属であるTiを0.003重量%添加したものである。この荒引き線に減面率30%の冷間伸線加工、400℃×60minの熱処理を施し、直径φ2.6mmの銅線を製作したものである(従来例1)。
【0041】
実施例1〜11、比較例1〜12及び従来例1の各銅線を用いて軟化試験を行い、軟化特性の評価を行った。その結果を表1に示す。ここで、軟化特性の評価は、半軟化温度を用いて行った。また、各銅線については、完全焼きなまし処理(銅線の強度がそれ以上に低下しないところまで軟化させる処理)を行い、導電率の測定も実施した。
【0042】
【表1】


【0043】
表1に示すように、実施例1〜11の各銅線は、いずれも硫黄親和性金属の含有量が0.0007〜0.05重量%の範囲であり、本発明に係る銅線の製造方法を満足していた。実施例1〜11の各銅線の半軟化温度はいずれも150℃以下(130〜150℃)であり、硫黄親和性金属が無添加の銅線(比較例1)の半軟化温度(240℃)と比較すると、大幅に(80℃以上)半軟化温度が低下していた。
【0044】
比較例2の銅線は、硫黄親和性金属の含有量が0.0003重量%Tiと少なすぎるため、銅線の軟化温度を低下させる効果が全く得られず、半軟化温度は比較例1の銅線と全く同じ240℃であった。比較例4の銅線は、硫黄親和性金属の含有量が0.06重量%Tiと多すぎるため、銅線の軟化温度を逆に上昇させてしまい、半軟化温度は硫黄親和性金属無添加の銅線(比較例1)より約100℃も高温(335℃)となった。
【0045】
比較例3の銅線は、硫黄親和性金属の含有量が0.003重量%Tiと規定範囲内であるが、冷間伸線加工及び熱処理を施していないため、半軟化温度(174℃)を十分に低下させることができなかった。
【0046】
比較例5の銅線は、硫黄親和性金属の含有量が0.003重量%Tiで、かつ、熱処理が400℃×60minといずれも規定範囲内であるが、冷間伸線加工の減面率が20%と小さいため、半軟化温度(160℃)を十分に低下させることができなかった。
【0047】
比較例6の銅線は、硫黄親和性金属の含有量が0.003重量%Tiで、かつ、冷間伸線加工の減面率が30%といずれも規定範囲内であるが、熱処理温度が800℃と高い。このため、比較例6の銅線は、実施例1の銅線と比較すると、半軟化温度(176℃)が大幅に高くなった。
【0048】
比較例7,8の各銅線は、硫黄親和性金属の含有量が0.003重量%Tiと規定範囲内であるが、冷間伸線加工を施していない。このため、比較例7,8の各銅線は、実施例1の銅線と比較すると、半軟化温度(152℃,167℃)がそれぞれ高くなった。特に、比較例7,8の各銅線を比較すると、熱処理温度を高くすることで、半軟化温度が高くなることが確認された。
【0049】
比較例9〜12の各銅線は、冷間伸線加工の減面率が30%で、かつ、熱処理が400℃×60minといずれも規定範囲内であるが、硫黄親和性金属の含有量が規定範囲外である。このため、硫黄親和性金属の含有量が規定範囲よりも少ない比較例9,10,12の各銅線は、実施例1の銅線と比較すると、半軟化温度(196℃,196℃,169℃)がそれぞれ高くなった。また、硫黄親和性金属の含有量が規定範囲よりも多い比較例11の銅線は、冷間伸
線加工及び熱処理により、比較例4の銅線と比べると半軟化温度が低くなっているが、依然として高いレベルにあった(296℃)。
【0050】
また、各銅線の完全焼きなまし処理後の導電率は、半軟化温度の低い本実施例1〜11は101.5%IACS以上であったが、半軟化温度の高い比較例1〜12は、101.5%IACS未満であった。また、試料である銅線と銅線の先端同士を突合わせしTIG溶接したところ、従来例の銅線の場合には銅中にボイドが形成されたが、本発明の実施例1〜11及び比較例1〜12の各銅線にはボイドが認められなかった。
【0051】
以上より、荒引き線の構成材である無酸素銅溶湯に硫黄親和性金属を所定の割合で添加し、その無酸素銅溶湯を上方引上連続鋳造装置に供給して荒引き線を製造すると共に、その荒引き線に、所定の条件の冷間伸線加工及び熱処理を施すことで、銅線の軟化温度を大幅に低下させることができ、かつ導電率も高くできることが確認された。さらに、溶接時に導体中のボイドは発生せず、接続信頼性が大幅に向上した。
【出願人】 【識別番号】000005120
【氏名又は名称】日立電線株式会社
【出願日】 平成19年4月5日(2007.4.5)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−255417(P2008−255417A)
【公開日】 平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願番号】 特願2007−98962(P2007−98962)