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【発明の名称】 アルミニウム合金材の製造方法及び熱処理型アルミニウム合金材
【発明者】 【氏名】高馬 久典

【要約】 【課題】溶体化処理を行った場合であっても、アルミニウム合金材の耐力及び疲労強度の低下を抑制することができるアルミニウム合金材の製造方法を提供する。

【解決手段】熱処理型のアルミニウム合金材の溶体化処理を行う工程と、該溶体化処理したアルミニウム合金材に時効処理を行う工程とを少なくとも備えたアルミニウム合金材の製造方法であって、該製造方法は、前記溶体化処理の工程後、前記時効処理の工程の前に、溶体化処理された前記アルミニウム合金材が過時効により軟化しない温度条件で前記アルミニウム合金材を保持しながら少なくとも2以上の方向から前記アルミニウム合金材に所定の相当ひずみ量を与えるように、前記アルミニウム合金材に対して塑性加工を行う工程をさらに含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱処理型のアルミニウム合金材の溶体化処理を行う工程と、該溶体化処理したアルミニウム合金材に時効処理を行う工程とを少なくとも備えたアルミニウム合金材の製造方法であって、
該製造方法は、前記溶体化処理の工程後、前記時効処理の工程の前に、溶体化処理された前記アルミニウム合金材が過時効により軟化しない温度条件で前記アルミニウム合金材を保持しながら、少なくとも2以上の方向から前記アルミニウム合金材に所定の相当ひずみ量を与えるように、前記アルミニウム合金材に対して塑性加工を行う工程をさらに含むことを特徴とするアルミニウム合金材の製造方法。
【請求項2】
前記塑性加工を行う工程において、前記アルミニウム合金材の前記温度条件を0℃〜250℃の温度範囲内とすることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム合金材の製造方法。
【請求項3】
前記相当ひずみ量が2以上となるように、前記塑性加工を行うことを特徴とする請求項1または2に記載のアルミニウム合金材の製造方法。
【請求項4】
アルミニウム合金材の結晶粒の平均粒径が5.0μm以下になるように、前記塑性加工を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のアルミニウム合金材の製造方法。
【請求項5】
アルミニウム合金材のビッカース硬さがHv112以上になるように、前記時効処理を行うことを特徴とする請求項4に記載のアルミニウム合金材の製造方法。
【請求項6】
該塑性加工を行う工程時に前記アルミニウム合金材を前記温度条件で加熱した場合には、前記塑性加工を行う工程後に前記アルミニウム合金材の加熱状態を保持して、前記時効処理を行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のアルミニウム合金材の製造方法。
【請求項7】
前記塑性加工を、鍛造加工により行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のアルミニウム合金材の製造方法。
【請求項8】
結晶粒の平均粒径が5μm以下であり、ビッカース硬さがHv112以上であることを特徴とする熱処理型アルミニウム合金材。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム合金材の製造方法に係り、特に、溶体化処理及び時効処理を含む熱処理型のアルミニウム合金材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年地球環境保護の観点から、自動車用構造用部材などの材料としてアルミニウム合金材が注目されている。例えば、Al−Cu−Mg系合金、Al−Mg−Si系合金、またはAl−Zn−Mg系合金の熱処理型のアルミニウム合金材を用いて、製品を製造する場合には、まず、アルミニウム合金材に対して所望の形状にプレス成形などを利用した成形加工を行う。次に、該成形加工されたアルミニウム合金材に対して、アルミニウム合金材内の析出強化元素が固溶するように、溶体化処理を行い、その後、アルミニウム合金材内に、例えばMgSiなどの析出物を析出させ、アルミニウム合金材を硬化させるべく、再結晶温度よりも低い温度で時効処理を行なう。しかし、このような製造方法では、溶体化処理時に、アルミニウム合金材は、再結晶温度を超えて加熱されるため、前記アルミニウム合金材の強度が低下し、該合金材に時効処理を行なったとしても、所望の強度を得ることができない場合があった。
【0003】
このような強度低下の問題を鑑みて、例えば、図4に示すようなアルミニウム合金材の製造方法が提案されている。具体的には、熱的に安定な化合物を形成するZrやScを予め添加したアルミニウム合金材に対して、溶体化処理前に温間状態で繰返し塑性ひずみを与えることによりいわゆる強加工と呼ばれる塑性加工を行う工程と、塑性加工されたアルミニウム合金材に対して溶体化処理を行う工程と、溶体化処理されたアルミニウム合金材に対して時効処理を行う工程と、を少なくとも含むアルミニウム合金材の製造方法が提案されている(非特許文献1参照)。前記製造方法によれば、予め添加元素として、ZrやScを添加することにより、溶体化処理時に発現するアルミニウム合金材の再結晶を抑制することができる。また、温間状態でアルミニウム合金材に対して繰返し塑性ひずみを与えることにより、アルミニウム合金材の結晶粒を微細化することができ、材料の強度の向上を図ることができる。また、前記塑性加工を溶体化処理前に行うので、塑性加工をアルミニウム合金材の成形加工と共に行うことができるので、時間的に効率よく、アルミニウム合金材に塑性ひずみを与えることができる。
【0004】
【非特許文献1】箕田正他、温間圧延による7475系アルミニウム合金板材の結晶粒微細化、(社)軽金属学会、2001年12月,第51巻、第12号、P.651−65
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、非特許文献1のように、ZrやScを添加した場合には、溶体化処理時にアルミニウム合金材の再結晶の発現を抑制することができる点で優れているが、溶体化処理温度を、再結晶温度よりも高い温度まで上げる必要があるため、溶体化処理の熱影響により、アルミニウム合金材の結晶粒が局所的に粗大化(平均粒径:50μm以上)することがある。この結果として、粗大化した結晶粒が、アルミニウム合金材の破壊の起点になり易く、大幅にアルミニウム合金材の強度低下を引起すおそれがある。
【0006】
特に、溶体化処理前の塑性加工により導入されたひずみは、一般的にアルミニウム合金材内において不均一な分布を示すことになるので、たとえ、溶体化処理前に結晶粒の微細化を行ったとしても、溶体化処理後には、局所的にひずみ量の高い領域においては、結晶粒が粗大化する可能性が高く、アルミニウム合金材の耐力及び疲労強度を低下してしまうことがある。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、溶体化処理を行った場合であっても、アルミニウム合金材の耐力及び疲労強度の低下を抑制することができるアルミニウム合金材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決すべく、本発明に係るアルミニウム合金材の製造方法は、熱処理型のアルミニウム合金材の溶体化処理を行う工程と、該溶体化処理したアルミニウム合金材に時効処理を行う工程とを少なくとも備えたアルミニウム合金材の製造方法であって、該製造方法は、前記溶体化処理の工程後、前記時効処理の工程の前に、溶体化処理された前記アルミニウム合金材が過時効により軟化しない温度条件で前記アルミニウム合金材を保持しながら少なくとも2以上の方向から前記アルミニウム合金材に所定の相当ひずみ量を与えるように、前記アルミニウム合金材に対して塑性加工を行う工程をさらに含むことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、アルミニウム合金材に対して所定の相当ひずみ量を与えるように塑性加工を行うことにより、アルミニウム合金材の結晶粒を数μmレベルまで微細化でき、さらに、この該微細化処理である前記塑性加工の工程を溶体化処理後に行うので、微細化した結晶粒が粗大化することはない。さらに、塑性加工の工程において、溶体化処理された前記アルミニウム合金材が過時効により軟化しない温度条件(加熱する場合には加熱温度及び加熱時間を含む条件)で、アルミニウム合金材に対して塑性加工をし、その後、微細化された結晶粒を有したアルミニウム合金材に対して時効処理を行うことにより、アルミニウム母相に固溶していた固溶元素(析出強化元素)を微細な析出物として時効析出させることができる。この結果として、アルミニウム合金材のビッカース硬さをHv100以上にまで確保することができ、さらなる合金元素を添加することなく規格品の状態のアルミニウム合金材に対して、熱処理のみで耐力及び疲労強度を向上させることができ、リサイクル性に優れたアルミニウム合金材を得ることができる。
【0010】
ここで、本発明にいう熱処理型のアルミニウム合金材とは、例えば、Al−Cu−Mg系アルミニウム合金材、Al−Si系アルミニウム合金材、Al−Mg−Si系アルミニウム合金材、Al−Zn−Mg系アルミニウム合金材などJIS規格でいう2000系、4000系、6000系、7000系のアルミニウム合金材が挙げられ、熱処理により硬化性を有するアルミニウム合金材であれば特に限定されるものではない。
【0011】
また、本発明にいう溶体化処理とは、前記熱処理型のアルミニウム合金材を固溶限温度以上の適温に加熱し、合金成分を十分に固溶させた後、急冷させて過飽和固溶状態にする熱処理であり、加熱されたアルミニウム合金材を焼入れする処理を含む処理である。溶体化処理におけるアルミニウム合金材の加熱温度は、析出強化元素(固溶元素)を飽和固溶状態まで固溶させ拡散することができる温度以上であり、かつ、アルミニウム合金材がバーニングし始める温度以下である。前記温度未満の場合には、元素の固溶が充分でないため、時効処理によりアルミニウム合金材の強度を向上させることができず、温度を超えた場合には、融点の低い共晶元素が溶融し、欠陥となるので強度低下を招く。
【0012】
また、本発明にいう時効処理とは、溶体化処理したアルミニウム合金材内の析出強化元素(固溶元素)を加熱することにより析出物として析出させる処理であり、時効処理におけるアルミニウム合金材の加熱温度は、析出物の析出が可能な温度以上であり、かつ、過時効により軟化しない温度以下、すなわち、時効により硬さ又は強さなどの性質が最高値になる温度以下である。
【0013】
さらに、本発明の「溶体化処理された前記アルミニウム合金材が過時効により軟化しない温度条件」とは、過時効に伴い析出強化元素を含む析出物が凝集することによりアルミニウム合金材が軟化しないような温度条件(加熱する場合には加熱温度及び加熱時間を含む条件)をいう。また、より好ましい温度条件は、溶体化処理時に固溶拡散したアルミニウム合金材内の固溶元素(析出強化元素)の飽和固溶状態を崩さないような条件、すなわち、溶体化処理時に飽和状態で固溶拡散した固溶元素の固溶状態が変化しにくい条件であることがより好ましい。このような条件では、アルミニウム合金材の析出物の析出も抑制されるので、時効析出による硬化前に効率よく塑性加工を行うことができる。
【0014】
より好ましくは、本発明に係るアルミニウム合金材の製造方法において、前記アルミニウム合金材の前記温度条件を0℃〜250℃の温度範囲とする。前記温度条件が0℃よりも低い場合には、保冷のためにコストが上がる上、変形能が悪くなり、250℃よりも高い場合には、塑性加工時にアルミニウム合金材は過時効により軟化するおそれがある。
【0015】
また、本発明の「少なくとも2以上の方向から前記アルミニウム合金材に所定の相当ひずみ量を与えるように、前記アルミニウム合金材に対して塑性加工を行う」とは、例えば、アルミニウム合金材に対して、X軸、Y軸、Z軸を設定した場合に、各軸の引張圧縮方向及び各軸を中心軸としたねじれ方向のうち、すくなくとも2つの方向から、該アルミニウム合金材の結晶粒が微細化するように、所定の相当ひずみ量がアルミニウム合金材に付与されるような塑性加工を行うことをいう。該塑性加工は、いわゆる強加工または強ひずみ加工と呼ばれる加工である。また、「相当ひずみ量」とは、繰り返し塑性変形を加えた場合における各軸方向に累積するひずみ量の総ひずみ量をいい、塑性ひずみ量に比べ弾性ひずみ量は極めて小さいことから、相当塑性ひずみ量に略等しい。
【0016】
本発明に係る製造方法は、前記相当ひずみ量が2以上となるように、前記塑性加工を行うことがより好ましい。本発明によれば、相当ひずみ量を2以上にすることにより、アルミニウム合金材の結晶粒を確実に数μmオーダまで微細化することができる。
【0017】
また、本発明に係るアルミニウム合金材の製造方法は、アルミニウム合金材の結晶粒の平均粒径が5.0μm以下になるように、前記塑性加工を行うことがより好ましい。本発明によれば、前記平均粒径の範囲内となるように、アルミニウム合金材の塑性加工を行うことにより、アルミニウム母相に固溶していた固溶元素が微細な析出物として析出するので、耐力及び疲労強度を向上させることができる。また、平均粒径はより小さい方が好ましいが、製造のし易さ等を考慮すると0.5μm以上である。また、5.0μmよりも大きい結晶粒を有したアルミニウム合金材は、その後に時効処理を行なったとしても、耐力と疲労強度の双方を向上させることは難しい。
【0018】
さらに、前記塑性加工により、結晶粒の平均粒径を5.0μm以下にしてから、本発明のアルミニウム合金材の製造方法は、アルミニウム合金材のビッカース硬さがHv112以上になるように、前記時効処理を行うことがより好ましい。本発明によれば、さらに前記アルミニウム合金材のビッカース硬さを前記範囲にすることにより、さらに、耐力と疲労強度の双方を向上させることができる。
【0019】
また、本発明に係るアルミニウム合金材の製造方法は、該塑性加工を行う工程時に前記アルミニウム合金材を前記温度条件で加熱した場合には、前記塑性加工を行う工程後に前記アルミニウム合金材の加熱状態を保持して、前記時効処理を行うことがより好ましい。本発明によれば、塑性加工を行う工程後において、アルミニウム合金材を冷却しないで、連続して時効処理を行なうので、時効処理時に再加熱をする必要がなく、より低コストで時効処理を行なうことができる。
【0020】
前記塑性加工としては、引張圧縮による塑性加工、ねじりによる塑性加工、屈曲した等断面のダイス溝穴にアルミニウム合金材を通過させることにより、屈曲部でアルミニウム合金材に剪断変形を付与し、これにより結晶粒を微細化するECAP法(Equal−Channel Angular Pressing法)による塑性加工、または前記塑性加工を複合した塑性加工などが挙げられ、所定の相当ひずみ量を与えることができるのであれば特に限定されるものでないが、本発明に係るアルミニウム合金材の製造方法は、前記塑性加工を、鍛造加工により行うことがより好ましい。本発明によれば、所定の相当ひずみ量を正確に与えることができ、均一に微細化した結晶粒を得ることができる。
【0021】
さらに、本発明として熱処理型アルミニウム合金材をも開示する。本発明に係る熱処理型アルミニウム合金材は、結晶粒の平均粒径が5μm以下であり、ビッカース硬さがHv112以上である。本発明によれば、前記の示した範囲内に平均粒径及び前記ビッカース硬さの双方を満たすことにより、耐力が350MPaを越え、かつ、疲労強度が150MPa近傍の、耐力及び疲労強度に優れたアルミニウム合金材を得ることができる。また、前記結晶粒の平均粒径が5μmよりも大きい場合、またはビッカース硬さがHv112よりも小さい場合には、耐力が350MPaを越え、かつ、疲労強度が150MPa近傍のアルミニウム合金材を得ることができない。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、アルミニウム合金材の結晶粒を数ミクロンオーダまで微細化すると共に、アルミニウム合金材のビッカース硬さをHv100以上にまで確保することができ、アルミニウム合金材の耐力及び疲労強度の双方を向上させることができる。
【実施例】
【0023】
以下に本発明を実施例により説明する。
【0024】
(実施例1)
[製造方法]
出発材料として、表1に示す成分の直径50mm、長さ150mmの連続鋳造丸棒からなる熱処理型アルミニウム合金材(JIS規格:A6061)を準備した。次に、図1及び表2に示すような工程により、該アルミニウム合金材の溶体化処理を行った。まず、540℃に加熱保持して、アルミニウム合金材中の析出強化元素を固溶させ、固溶後のアルミニウム合金材を、75℃の水に浸漬させて、焼入れを行った。
【0025】
【表1】


【0026】
次に、溶体化処理されたアルミニウム合金材が過時効により軟化しない温度条件として、再結晶温度よりもかなり低い温度である150℃にアルミニウム合金材を加熱すると共に、該加熱温度を10分間維持し、その間に、図2(a)〜(d)に示すように、(a)〜(d)の鍛造による総ひずみ量が、アルミニウム合金材の相当ひずみ量で、アルミニウム合金材が2以上の方向から塑性加工されるように、繰り返し温間鍛造加工(多軸鍛造)を行った。具体的には、図2(a)に示すように、鍛造用の上下金型11A,11Bの間に丸棒状の前記アルミニウム合金材W1を配置し、上金型11Aを下金型11Bに向かって加圧することにより、角棒状のアルミニウム合金材W2に鍛造し、図2(b)に示すように、該角棒状のアルミニウム合金材W2を該角棒の断面積よりも小さい金型空間の断面を有する上下金型12A,12Bの間に、角棒状のアルミニウム合金材を45°回転させて配置し、さらに、図2(a)とは別の方向から上金型12Aを下金型12Bに向かって加圧することにより、角棒状のアルミニウム合金材W3に鍛造した。その後、図2(c),(d)に示す順に、前記した工程と同様の工程で鍛造を行い、鍛造後、30℃/秒の条件で水冷した。
【0027】
さらに鍛造後のアルミニウム合金材に対して180℃の温度条件で、5時間加熱することにより時効処理(人工時効処理)を行った。
【0028】
【表2】


【0029】
【表3】


【0030】
<引張試験及び疲労試験>
さらに、時効処理後の試験片を平行部分が直径10mm、長さ70mmとなるように切り出し、ビッカース硬度計により表面硬さを測定すると共に、機械的特性を評価すべく、引張試験と、疲労試験とを行った。この結果を以下の表4に示す。
<組織観察及び平均粒径の測定>
時効処理後のアルミニウム合金材の鍛造品を、軸方向に垂直な方向に切断し、該切断した鍛造品を鏡面研磨後、SEM−EBSP法により表面組織を観察し、平均粒径を測定した。この結果を以下の表4に示す。
【0031】
【表4】


【0032】
(実施例2〜5)
実施例2:実施例1と同様にアルミニウム合金材を製作した。実施例1と相違する点は、表2及び3に示すように、鍛造後の冷却温度を5℃/秒の条件で空冷した点である。
【0033】
実施例3:実施例1と同様にアルミニウム合金材を製作した。実施例1と相違する点は、表2及び3に示すように、鍛造時の加熱温度を250℃にした点である。
【0034】
実施例4:実施例1と同様にアルミニウム合金材を製作した。実施例1と相違する点は、表2及び3に示すように、鍛造時の加熱温度を250℃にした点と、鍛造後の冷却温度を5℃/秒の条件で空冷した点である。
【0035】
実施例5:実施例1と同様にアルミニウム合金材を製作した。実施例1と相違する点は、表2及び3に示すように、鍛造時を加熱しなかった(15℃の温度条件で鍛造した)点と、鍛造後の冷却温度を5℃/秒の条件で空冷した点である。
【0036】
そして、実施例2〜5のアルミニウム合金材に対して、実施例1と同じ条件で引張試験、疲労試験、及び組織観察を行った。この結果を表4に示す。
【0037】
なお、図3(a)は、SEM−EBSP法による表面組織を観察を行った結果である。
【0038】
(比較例1〜6)
比較例1:実施例1と同様にアルミニウム合金材を製作した。実施例1と相違する点は、表2及び3に示すように、鍛造時の加熱温度を300℃にした点である。
【0039】
比較例2:実施例1と同様にアルミニウム合金材を製作した。実施例1と相違する点は、表2及び3に示すように、鍛造時の加熱温度を450℃の再結晶温度以上の温度で加熱し、鍛造した(熱間鍛造した)点である。
【0040】
比較例3:実施例1と同様にアルミニウム合金材を製作した。実施例1と相違する点は、表2及び3に示すように、鍛造時の加熱温度を450℃の再結晶温度以上の温度で加熱し、鍛造した(熱間鍛造した)点と、鍛造後の冷却温度を5℃/秒の条件で空冷した点である。
【0041】
比較例4:図4に示すような方法で、アルミニウム合金材を製作した。具体的には、実施例1と同様の熱処理型アルミニウム合金材を準備し、比較例3に示す条件で熱間鍛造(熱間で塑性加工)を行い、鍛造したアルミニウム合金材を0.5℃/秒で放冷した。次に、実施例1と同様の条件で、鍛造したアルミニウム合金材に対して溶体化処理を行い、溶体化処理後のアルミニウム合金材に対して時効処理を行った。
【0042】
比較例5:比較例4と同じようにして、アルミニウム合金材を製作した。比較例4と相違する点は、熱間鍛造処理の代わりに250℃で温間鍛造をした点である。
【0043】
そして、比較例1〜5のアルミニウム合金材に対して、実施例1と同じ条件で引張試験、疲労試験、及び組織観察を行った。この結果を表4に示す。また、図3(b)は、比較例5についてのSEM−EBSP法による表面組織の観察を行った結果である。
【0044】
比較例6:実施例1と同様の熱処理型アルミニウム合金材を準備し、実施例1と同様の条件で溶体化処理を行い、溶体化処理を行ったアルミニウム合金材に対して、実施例1と同じ方法で時効処理を行ない、該時効処理後、250℃の加熱条件で実施例2と同様の鍛造を行った。この結果を表4に示す。
【0045】
(結果)
実施例1〜5のアルミニウム合金材は、いずれも平均粒径が5μm以下の範囲にあり、ビッカース硬さはHv100以上あった。また、耐力は350MPa以上あり、疲労強度も150MPa程度であった。
【0046】
比較例1〜3のアルミニウム合金材は、平均粒径が5μmを越え、ビッカース硬さは、Hv100未満であった。また、また、比較例1〜3のアルミニウム合金材の耐力は、200MPa以下であり、疲労強度は110〜120MPa程度であり、耐力及び疲労強度は、実施例1〜5のものに比べていずれも低い値となった。
【0047】
比較例4及び5のアルミニウム合金材は、図3(b)に示すように、平均粒径が200μm以上であり、ビッカース硬さは、Hv100以上であった。また、比較例4及び5のアルミニウム合金材の耐力は、300MPa以下であり、疲労強度は100MPa程度であり、耐力及び疲労強度は、実施例1〜5のものに比べていずれも低い値となった。
【0048】
(考察1)
比較例1のアルミニウム合金材が実施例1〜5のものに比べて、耐力及び疲労強度が低いのは、ビッカース硬さが低いからであると考えられる。この理由としては、比較例1の鍛造時の加熱温度が実施例1〜5よりも高く、鍛造時にアルミニウム合金材が過時効となったと考えられる。よって、鍛造時の加熱温度は、鍛造後の時効処理も考慮すると、溶体化処理された前記アルミニウム合金材が過時効により軟化しない加熱条件であることが必要であり、所定の鍛造加工時間(相当ひずみ量を2以上にするに充分な加工時間)において、過時効によりアルミニウム合金材が軟化しにくい温度条件は、0℃〜250℃であり、該温度条件で鍛造加工(塑性加工)を行うことがより好ましい。また、実施例1〜4のアルミニウム合金材のように、結晶粒の平均粒径が5μm以下となるように塑性加工を行い、時効工程において、ビッカース硬さがHv123以上となるように時効処理を行なえば、耐力が350MPaを越え、かつ、疲労強度が150MPa近傍の、耐力及び疲労強度に優れたアルミニウム合金材を得ることができると考えられる。
【0049】
(考察2)
比較例2および3のように熱間鍛造を行った場合には、実施例1〜5に比べて、結晶粒の微細化に必要なひずみを導入することが難しく、比較例2に比べて比較例3の方が、熱間鍛造後の冷却温度が遅いため、冷却中に結晶粒が成長し、その結果、平均粒径が大きくなった(結晶粒が粗大化した)と考えられる。この結果、その後、時効処理を行なったとしても、実施例1〜5によりも低い耐力及び疲労強度になったと考えられる。
【0050】
(考察3)
比較例4および5のように鍛造後に溶体化処理を行った場合には、溶体化処理により、アルミニウム合金材の再結晶・粒成長が発現され、実施例1〜5のものに比べて、平均粒径が大きくなると考えられる。この結果、その後、平均粒径の大きいアルミニウム合金材に対して時効処理を行なったとしても、実施例1〜5によりも低い耐力及び疲労強度になったと考えられる。
【0051】
(考察4)
比較例6のように鍛造前に時効処理を行なった場合には、析出物により硬さが上昇するので、鍛造時に割れが発生したと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係るアルミニウム合金材の製造方法を説明するための図であり、時間経過に伴う合金材の温度履歴を説明するための図。
【図2】アルミニウム合金材の多軸鍛造工程(塑性加工を行う工程)を説明するための図。
【図3】アルミニウム合金材の組織写真を示した図であり、(a)は、実施例2のアルミニウム合金材の組織写真を示した図であり、(b)は、比較例5のアルミニウム合金材の組織写真を示した図。
【図4】従来のアルミニウム合金材の製造方法を説明するための図であり、時間経過に伴う合金材の温度履歴を説明するための図。
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成19年2月13日(2007.2.13)
【代理人】 【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔

【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男

【識別番号】100099128
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 康


【公開番号】 特開2008−196009(P2008−196009A)
【公開日】 平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願番号】 特願2007−32017(P2007−32017)