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【発明の名称】 押出性に優れた熱交換器用押出合金の製造方法および熱交換器用扁平多穴管
【発明者】 【氏名】高橋 宗尚

【氏名】兵庫 靖憲

【氏名】麻野 雅三

【要約】 【課題】十分な強度および耐食性を有し、高速押出により多穴管を製造した場合でも表面にピックアップの発生しない押出性に優れた熱交換器用押出合金の製造方法を提供する。

【解決手段】質量%でCu:0.05〜0.40%、Mn:0.05〜0.30%、Zr:0.05〜0.25%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金を均質化処理する工程を備え、前記均質化処理において、前記アルミニウム合金を560℃〜620℃の範囲の温度で1時間〜18時間保持する第1熱処理と、前記第1熱処理の後に、前記アルミニウム合金を450℃〜520℃の範囲の温度で2時間超〜18時間保持する第2熱処理とを行なう押出性に優れた熱交換器用押出合金の製造方法とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%でCu:0.05〜0.40%、Mn:0.05〜0.30%、Zr:0.05〜0.25%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金を均質化処理する工程を備え、
前記均質化処理において、前記アルミニウム合金を560℃〜620℃の範囲の温度で1時間〜18時間保持する第1熱処理と、
前記第1熱処理の後に、前記アルミニウム合金を450℃〜520℃の範囲の温度で2時間超〜18時間保持する第2熱処理とを行なうことを特徴とする、押出性に優れた熱交換器用押出合金の製造方法。
【請求項2】
前記第1熱処理の後、前記第2熱処理の前に、前記アルミニウム合金を常温とする冷却工程を備えることを特徴とする、請求項1に記載の押出性に優れた熱交換器用押出合金の製造方法。
【請求項3】
前記冷却工程において、20℃/hr〜100℃/hrの冷却速度で前記アルミニウム合金を冷却する冷却工程を備えることを特徴とする、請求項2に記載の押出性に優れた熱交換器用押出合金の製造方法。
【請求項4】
前記第1熱処理の後、前記第2熱処理の前に、前記アルミニウム合金を380℃〜440℃の範囲の温度で10分〜4時間保持する中間工程を備えることを特徴とする、請求項1に記載の押出性に優れた熱交換器用押出合金の製造方法。
【請求項5】
前記アルミニウム合金が、Zrを0.05〜0.15%を含有し、Tiを0.05〜0.15質量%含有することを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の押出性に優れた熱交換器用押出合金の製造方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の押出性に優れた熱交換器用押出合金の製造方法により製造された熱交換器用押出材からなることを特徴とする熱交換器用扁平多穴管。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、カーエアコンなどの自動車用熱交換器に好適に用いることができる押出性に優れた熱交換器用押出合金の製造方法およびその製造方法によって製造された熱交換器用押出材を用いた熱交換器用扁平多穴管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、カーエアコンのコンデンサやエバポレータなどの自動車用熱交換器として、複数のヘッダパイプと、これらのヘッダパイプ間に架設された複数の多穴管と、各多穴管に接合されたフィンとを備えたものが知られている。また、このような自動車用熱交換器を構成する多穴管としては、純アルミニウムやアルミニウム合金を押出加工してなるものが用いられている。
【0003】
また、このような多穴管では、組立性、ろう付け性、熱交換器の強度・耐食性などについて所定の条件を満たすことが要求されている。さらに、このような多穴管は、一般に、幅5〜50mm、高さ1〜5mmの断面形状とされており、所定の寸法精度や表面粗さなどの条件を満たすことが要求されている。
【0004】
このような条件を満たす多穴管を実現できる材料としては、押出性の良好な純アルミニウムや、少量のCuが含有されたアルミニウム合金などが挙げられ、広く使用されている(例えば、特許文献1)。Cuを添加することで、耐食性が良好なものとなり、強度を向上させることができるとともに、高温での変形抵抗を低減させることができ、押出性を向上させることができる。
【特許文献1】特開2001−26832号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最近、製品コストを低減させるために、高速押出化の要求が高まってきている。しかしながら、Cuの含有されたアルミニウム合金では、高速押出により多穴管を製造した場合に、以下に示すようにして、ピックアップと呼ばれるむしれ状の欠陥が表面に発生する場合があり、問題となっていた。
すなわち、Cuの含有されたアルミニウム合金では、Cuの含有量が多いと、低融点化合物の形成が避けられなくなり、高速押出の押出加工熱によって局部的な溶融が生じてしまう。この局部的な溶融によってアルミ滓が生じ、アルミ滓が押出金型に凝着・堆積することにより、ピックアップを生じさせる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、十分な強度および耐食性を有し、高速押出により多穴管を製造した場合でも表面にピックアップの発生しない押出性に優れた熱交換器用押出合金の製造方法を提供することを課題としている。
さらに、本発明は、上記の製造方法によって製造された熱交換器用押出材からなり、高い強度および耐食性を有するピックアップのない熱交換器用扁平多穴管を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の押出性に優れた熱交換器用押出合金の製造方法は、質量%でCu:0.05〜0.40%、Mn:0.05〜0.30%、Zr:0.05〜0.25%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金を均質化処理する工程を備え、前記均質化処理において、前記アルミニウム合金を560℃〜620℃の範囲の温度で1時間〜18時間保持する第1熱処理と、前記第1熱処理の後に、前記アルミニウム合金を450℃〜520℃の範囲の温度で2時間超〜18時間保持する第2熱処理とを行なうことを特徴とする。
【0008】
上記の押出性に優れた熱交換器用押出合金の製造方法においては、前記第1熱処理の後、前記第2熱処理の前に、前記アルミニウム合金を常温とする冷却工程を備える方法とすることができる。本発明において「常温」とは、アルミニウム合金が100℃以下の温度とであることを意味する。
また、上記の押出性に優れた熱交換器用押出合金の製造方法においては、前記冷却工程において、20℃/hr〜100℃/hrの冷却速度で前記アルミニウム合金を冷却する冷却工程を備える方法とすることができる。
【0009】
また、上記の押出性に優れた熱交換器用押出合金の製造方法においては、前記第1熱処理の後、前記第2熱処理の前に、前記アルミニウム合金を380℃〜440℃の範囲の温度で10分〜4時間保持する中間工程を備える方法としてもよい。
【0010】
また、上記の押出性に優れた熱交換器用押出合金の製造方法においては、前記アルミニウム合金が、Zrを0.05〜0.15%を含有し、Tiを0.05〜0.15質量%含有する方法とすることができる。
【0011】
また、本発明の熱交換器用扁平多穴管は、上記のいずれかに記載の押出性に優れた熱交換器用押出合金の製造方法により製造された熱交換器用押出材からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の押出性に優れた熱交換器用押出合金の製造方法によれば、十分な強度および耐食性を有し、高速押出により多穴管を製造した場合でも表面にピックアップの発生しない押出性に優れたものを提供できる。
また、本発明の熱交換器用扁平多穴管は、本発明の製造方法によって製造された熱交換器用押出合金からなるものであるので、高い強度および耐食性を有するピックアップのないものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る押出性に優れた熱交換器用押出合金の製造方法および熱交換器用扁平多穴管について例を挙げて詳細に説明する。
本実施形態の押出性に優れた熱交換器用押出合金の製造方法は、質量%でCu:0.05〜0.40%、Mn:0.05〜0.30%、Zr:0.05〜0.25%を含有し、残部Alおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金を均質化処理する工程を備え、前記均質化処理において、後述する第1熱処理と冷却工程と第2熱処理とを行なう方法である。
【0014】
[アルミニウム合金の成分組成]
以下に記載する各元素の含有量は、特に規定しない限り質量%である。
「Cu」0.05〜0.40%
本発明を構成するアルミニウム合金において、Cuは、熱交換器用押出合金の強度、耐食性、押出性を向上させる作用がある。
Cuの含有量が0.05%未満であると、熱交換器用押出合金の強度、耐食性が不十分となるため好ましくない。また、Cuの含有量が0.40%を越えると、押出時の変形抵抗が上昇して高速押出が困難となる恐れが生じるため好ましくない。また、Cuの含有量が0.40%を越えると、低融点化合物が形成されやすくなり、高速押出の押出加工熱によって生じるアルミ滓に起因するピックアップが生じやすくなる。
【0015】
「Mn」0.05〜0.30%
本発明を構成するアルミニウム合金において、Mnは、熱交換器用押出合金の強度および耐食性を向上させる作用がある。
Mnの含有量が0.05%未満であると、熱交換器用押出合金の強度および耐食性が不十分となるため好ましくない。また、Mnの含有量が0.30%を越えると、押出時の変形抵抗が上昇して高速押出が困難となる恐れが生じるため好ましくない。また、Mnの含有量が0.30%を越えると、高速押出時にピックアップが生じやすくなる。
【0016】
「Zr」0.05〜0.25%
本発明を構成するアルミニウム合金において、Zrは、熱交換器用押出合金の強度の向上、および金型への清浄効果によって押出性を向上させる作用や、押出装置の金型と熱交換器用押出合金との接触部分の高速押出時における潤滑性を向上させてピックアップの発生を抑制するとともに、金型の磨耗性を向上させる作用がある。
Zrの含有量が0.05%未満であると、熱交換器用押出合金の強度が不十分となるため好ましくない。また、Zrの含有量が0.05%未満であると、金型への清浄効果が十分に得られない恐れや、高速押出時におけるピックアップの発生を十分に抑制できない恐れが生じる。また、Zrの含有量が0.25%を越えると、鋳造性が低下して割れなどが生じやすくなるため好ましくない。さらに、Zrの含有量が0.25%を越えると、粗大なZr化合物が発生しやすくなって、アルミニウム合金中の成分が不均一となり、素材の品質を損なうことになるため好ましくない。
【0017】
本実施形態においては、アルミニウム合金を均質化処理する工程において、第1熱処理と冷却工程と第2熱処理とを順に行なう。
「第1熱処理」
第1熱処理においては、上記のアルミニウム合金を560℃〜620℃の範囲の温度、より好ましくは590℃超〜610℃の範囲の温度で1時間〜18時間、より好ましくは3時間〜10時間保持する。
第1熱処理を行なうことで、Cuや不可避不純物として含まれるSiなどの低融点元素を均一に分布させ、高速押出時にピックアップを発生させる元素を固溶させて、ピックアップの発生を抑制することができる。また、アルミニウム合金中に均一に拡散しにくいZrを、アルミニウム合金中に均一に拡散させることができる。
【0018】
第1熱処理の処理温度が上記範囲よりも低い場合や処理時間が上記範囲よりも短い場合には、Si、Cu、Zrなどの元素の分布が不均一となったり、高速押出時にピックアップを発生させる元素の固溶が不十分となり、高速押出時におけるピックアップの発生を十分に抑制できなかったりする恐れが生じる。また、第1熱処理の処理温度が上記範囲よりも高い場合や処理時間が上記範囲よりも長い場合には、アルミニウム合金の一部が溶解する恐れがあるし、第1熱処理を行なうことによる費用が大きくなり、経済的に不利となる。
【0019】
「冷却工程」
冷却工程は、第1熱処理の後、第2熱処理の前に、第1熱処理によって高温となったアルミニウム合金を常温とする工程である。
アルミニウム合金中に析出されたZr化合物は、押出装置の金型と熱交換器用押出合金との接触部分の高速押出時における潤滑性を向上させてピックアップの発生を抑制するとともに、金型の磨耗性を向上させる。Zr化合物からなる析出物(サイト)の大きさは、均質化処理における温度が高温であるほど大きく、低温であるほど小さくなり、Zr化合物からなる析出物の数は、均質化処理における温度が高温であるほど少なく、低温であるほど多くなる。したがって、冷却工程により、Zr化合物からなる析出物の核となる大きさの小さい析出物を多数形成しておくことで、第2熱処理において、冷却工程で形成された小さい析出物を軸としたZr化合物の析出を促進することができ、大きい析出物を多数形成することができる。
【0020】
冷却工程においては、第1熱処理後のアルミニウム合金を、好ましくは20℃/hr〜100℃/hr、より好ましくは40℃/hr〜60℃/hrの冷却速度で冷却する。冷却速度を20℃/hr未満としても、冷却工程を行うことによるZr化合物からなる析出物の核の形成効果に変化はないし、冷却工程に要する時間が長くなるため好ましくない。また、冷却速度が100℃/hrを超えると、冷却工程を行っても、Zr化合物からなる析出物の核が十分に形成されない恐れがある。
【0021】
「第2熱処理」
第2熱処理は、第1熱処理後のアルミニウム合金を450℃〜520℃の範囲の温度、より好ましくは480℃〜510℃の範囲の温度で2時間超〜18時間、より好ましくは3時間〜10時間保持する。
第2熱処理を行なうことで、第1熱処理によって一旦固溶したSi、Cu、Mn、Zrを前記冷却工程で形成した析出物(サイト)と結合させることで、押出装置の金型と熱交換器用押出合金との接触部分の高速押出時における潤滑性を向上させ、ピックアップの発生を抑制するとともに、金型の磨耗性を向上させることができる。
【0022】
第2熱処理の処理温度が上記範囲よりも低い場合や処理時間が上記範囲よりも短い場合には、Cu、MnをZrと結びついた析出物を十分に析出させることができない恐れや、アルミニウム合金中に析出物を十分に拡散させることができない恐れが生じる。また、第2熱処理の処理温度が上記範囲よりも高い場合は、アルミニウム合金中における元素の拡散が活発となり、アルミニウム合金中の元素が拡散してCu、MnとZrとが結びついた析出物が析出されにくくなり、上記範囲よりも処理時間を長くしても、得られる効果は変わらず、むしろ経済的に不利となる。
【0023】
なお、上記均質化処理における加熱方法や加熱炉の構造等については特に限定されない。また、均質化処理する工程の後のアルミニウム合金を押出すことにより熱交換器用押出合金が得られる。ここでの押出において、押出形状は特に限定されるものではなく、熱交換器の形状等に応じて押出形状が選定される。また、押出方法(方式)については特に限定されるものではなく、押出形状等に合わせて適宜常法の方法を採用することができる。
【0024】
このような熱交換器用押出合金は、熱交換器用の材料として使用されるものであり、例えば、熱媒体を流通させる熱交換器用扁平多穴管などとして用いられる。また、熱交換器の使用場所は、特に限定されるものではないが、自動車用の熱交換器に好適である。また、自動車用の熱交換器として、具体的にはコンデンサ、エバポレータ、インタクーラ等の用途に好適に使用できる。
また、このような熱交換器用扁平多穴管は、熱交換器用の部品として使用するに際し、他部材(例えばフィンやヘッダパイプ)と組み付けて、通常はろう付けにより接合される。なお、本発明においては、ろう付けの際の雰囲気や加熱温度、時間などの条件について、特に限定されるものではなく、ろう付け方法も特に限定されない。
【0025】
このような熱交換器用扁平多穴管は、高速押出により製造がなされた場合であっても、表面にピックアップのない良好なものとなる。また、このような熱交換器用扁平多穴管は、高い強度を有しており、かつ高速押出により薄肉化および小断面積化された熱交換器用扁平多穴管の製造がなされた場合であっても、押出形状の寸法精度が十分に高い良好なものとなる。
【0026】
また、上述した実施形態のように、アルミニウム合金を均質化処理する工程において、第1熱処理の後、第2熱処理の前に冷却工程を行った場合、第2熱処理において、冷却工程で形成された小さい析出物にSi、Cu、Mn、Zrの結合を促進することができ、大きい析出物を多数形成することができ、より一層、ピックアップの発生を抑制することができるとともに、より一層、金型の磨耗性を向上させることができる。
【0027】
なお、上述した実施形態では、アルミニウム合金を均質化処理する工程において、第1熱処理と冷却工程と第2熱処理とを順に行なったが、第1熱処理と第2熱処理のみを行なってもよい。この場合においても、十分な強度および耐食性を有し、高速押出により多穴管を製造した場合に表面にピックアップの発生しない多穴管を製造できる。また、冷却工程を行なわない場合、第2熱処理のために常温から所定の温度まで再度加熱する必要がないので、冷却工程を行なう場合と比較して、製造に必要なエネルギーを削減できる。また、冷却工程を行なわない場合、冷却工程を行なう場合と比較して、製造工程を削減できるので、製造効率を向上させることができる。
【0028】
また、上述した実施形態では、アルミニウム合金を均質化処理する工程において、冷却工程を行なったが、冷却工程に代えて、以下に示す中間工程を行なってもよい。
「中間工程」
中間工程は、第1熱処理の後、第2熱処理の前に、第1熱処理によって560℃以上の高温とされたアルミニウム合金を380℃〜440℃、より好ましくは400℃〜420℃の範囲の温度で10分〜4時間保持する工程である。
第1熱処理および第2熱処理よりも低温で行なわれる中間工程を行なうことにより、Zr化合物からなる析出物の核となる大きさの小さい析出物を多数形成しておくことができるので、第2熱処理において、中間工程で形成された小さい析出物を軸としたZr化合物の析出を促進することができ、大きい析出物を多数形成することができる。
なお、上記範囲の4時間を超える保持時間を設けても、得られる効果は変わらず、むしろ経済的に不利となる。
【0029】
また、本発明の熱交換器用押出合金の製造方法においては、アルミニウム合金中のZrの含有量が0.05〜0.15%である場合、アルミニウム合金がTiを0.05〜0.15質量%含有していてもよい。
「Ti」0.05〜0.15%
本発明を構成するアルミニウム合金において、Tiは、熱交換器用押出合金の強度および耐久性を向上させ、押出装置の金型と熱交換器用押出合金との接触部分の高速押出時における潤滑性を向上させてピックアップの発生を抑制するものである。
Tiの含有量が0.05%未満であると、熱交換器用押出合金の強度および耐久性を向上させる効果が十分に得られなくなる場合があるため好ましくない。また、Tiの含有量が0.05%未満であると、高速押出時における潤滑性を向上させる効果が十分に得られず、高速押出時におけるピックアップの発生を抑制する効果を向上させることができない恐れがある。また、Tiの含有量が0.15%を越えると、押出時の変形抵抗が上昇して高速押出が困難となる恐れが生じるため好ましくない。さらに、Tiの含有量が0.15%を越えると、粗大なTi化合物が発生しやすく、素材の品質を損なう場合があるため好ましくない。
【0030】
「実施例1〜実施例32、比較例1〜比較例16」
以下、本発明の実施例および比較例について説明する。
表1に示す成分を含有するアルミニウム合金を鋳造してなるビレットを製作し、このビレットに、表2に示す均質化処理を行なった。そして均質化処理後のビレットを以下に示す条件で押出すことにより、図1に示す複数の媒体通路用穴2を有する断面形状の熱交換器用押出合金1(熱交換器用扁平多穴管)を得た。
【0031】
【表1】


【0032】
【表2】


【0033】
このようにして得られた実施例1〜実施例32、比較例1〜比較例16の熱交換器用扁平多穴管を、所定の条件で外部形状を整える圧延加工を行なってから、ろう付け加熱した後、その扁平多穴管を長手方向に引張試験機にて引っ張る方法により扁平多穴管の強度を測定した。
その結果を表3に示す。
【0034】
【表3】


【0035】
なお、表3において、押出速度とは、比較例2における押出速度を1とした場合の比(倍)を意味する。また、表3において、ピックアップ評価が○であるとは熱交換器用押出合金にピックアップが発生しなかったことを意味し、ピックアップ評価が×であるとは熱交換器用押出合金にピックアップが発生したことを意味する。
また、鋳造割れが○であるとは、ビレットに次工程の押出で不具合が出るような割れが発生していなかったことを意味し、鋳造割れが×であるとは、ビレットに次工程の押出で不具合が出るような割れが発生していたことを意味する。
また、金型磨耗性が○であるとは、ビレットを5〜10本程度押し出した後に、押出材にダイマークと呼ばれる筋状の欠陥が強く発生していなかったことを意味し、金型磨耗性が×であるとは、ビレットを5〜10本程度押し出した後に、押出材に強いダイマークが発生し、金型表面が荒れてしまったことを意味する。
【0036】
表3より、実施例1〜実施例32では、いずれもろう付け後強度65(MPa)以上の十分な強度が得られ、押出速度が1.1〜2.0倍と高速押出であっても、ピックアップの評価が○となり、ピックアップの発生を抑制できることが確認できた。また、実施例1〜実施例32では、鋳造割れおよび金型磨耗性の評価も全て○であった。
【0037】
これに対し、比較例1では、各元素の添加量が何れも少なすぎることから、相対的にアルミの純度が高くなったため、ろう付後強度が60MPaと低く、強度が不十分であった。
また、比較例2では、MnおよびZrの添加量が多すぎるため、ろう付後強度は高いが、ピックアップ、鋳造割れおよび金型磨耗性の評価が全て×となった。
比較例3では、Zrが含まれていないので、ピックアップの評価が×となった。
また、比較例4では、Zrが多すぎるため、鋳造割れおよび金型磨耗性の評価が×となった。
【0038】
また、第1熱処理温度が上限を越える比較例5および比較例11では、押出できなかった。第1熱処理温度が下限未満である比較例6および比較例12や、第1熱処理時間が下限未満である比較例7および比較例13では、押出速度が遅くなった。また、比較例7および比較例13では、ピックアップの評価が×となった。
【0039】
第2熱処理温度が下限未満である比較例8および比較例14では、押出速度が遅くなった。また、第2熱処理温度が上限を越える比較例9および比較例15でも、押出速度が遅くなった。第2熱処理時間が下限未満である比較例10および比較例16では、ピックアップの評価が×で、押出速度も遅くなった。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は本発明の熱交換器用扁平多穴管の一例を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
1…熱交換器用押出合金(熱交換器用扁平多穴管)、2…媒体通路用穴
【出願人】 【識別番号】000176707
【氏名又は名称】三菱アルミニウム株式会社
【出願日】 平成19年7月2日(2007.7.2)
【代理人】 【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武

【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆

【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和


【公開番号】 特開2008−179879(P2008−179879A)
【公開日】 平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願番号】 特願2007−173826(P2007−173826)