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Ni基合金の製造方法 - 特開2008−179864 | j-tokkyo
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【発明の名称】 Ni基合金の製造方法
【発明者】 【氏名】小川 道治

【氏名】清水 哲也

【氏名】植田 茂紀

【要約】 【課題】高強度および非磁性を有するNi基合金を製造性良く得ることが可能なNi基合金の製造方法を提供すること。

【解決手段】重量%で、Cr:30〜45%、Al:1.5〜5.0%を含有し、残部が実質的にNiおよび不可避的不純物よりなる合金を、650℃以上の温度で熱間加工した後、処理温度T(℃)と保持時間t(h)との関係が下記式を満たす熱処理を施すことにより、硬さを600HV未満とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%で、Cr:30〜45%、Al:1.5〜5.0%を含有し、残部が実質的にNiおよび不可避的不純物よりなる合金を、650℃以上の温度で熱間加工した後、処理温度T(℃)と保持時間t(h)との関係が下記式を満たす熱処理を施すことにより、硬さを600HV未満とするNi基合金の製造方法。
(T+273)×(20+logt)/1000=20.5〜26.5
但し、650℃≦T≦α相の固溶化温度(℃)
【請求項2】
前記合金は、さらに、重量%で、B、MgおよびCaから選択される1種または2種以上(2種以上の場合は合計で)を0.02〜0.20%含有する請求項1に記載のNi基合金の製造方法。
【請求項3】
重量%で、Cr:30〜45%、AlおよびMoを合計で:1.5〜5.0%を含有し、残部が実質的にNiおよび不可避的不純物よりなる合金を、650℃以上の温度で熱間加工した後、処理温度T(℃)と保持時間t(h)との関係が下記式を満たす熱処理を施すことにより、硬さを600HV未満とするNi基合金の製造方法。
(T+273)×(20+logt)/1000=20.5〜26.5
但し、650℃≦T≦α相の固溶化温度(℃)
【請求項4】
前記合金は、さらに、重量%で、B、MgおよびCaから選択される1種または2種以上(2種以上の場合は合計で)を0.02〜0.20%含有する請求項3に記載のNi基合金の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、Ni基合金の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高強度と非磁性とが要求される各種部材に適用される材料として、Ni基合金が知られている。
【0003】
この種のNi基合金の製造方法としては、例えば、特許文献1には、重量%で、C:0.1%以下、Si:2.0%以下、Mn2.0%以下、Cr:30〜45%およびAl:1.5〜5%を含有し、残部が不可避的不純物およびNiからなる合金組成を有するNi基合金インゴットを、1200〜950℃の温度で鍛造、圧延した後、固溶化熱処理(1150℃×1時間−水冷)−時効熱処理(700℃×16時間−空冷)する方法が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−69557号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のNi基合金の製造方法によれば、析出強化による強度を有し、非磁性のNi基合金を得ることができると思われる。
【0006】
しかしながら、これまでの製造方法では、その製造時における冷却過程や移動時などに割れが発生したり、角が欠けたりするなど、製造性が低いという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、本発明が解決しようとする課題は、高強度および非磁性を有するNi基合金を製造性良く得ることが可能なNi基合金の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るNi基合金の製造方法は、重量%で、Cr:30〜45%、Al:1.5〜5.0%を含有し、残部が実質的にNiおよび不可避的不純物よりなる合金を、650℃以上の温度で熱間加工した後、処理温度T(℃)と保持時間t(h)との関係が下記式を満たす熱処理を施すことにより、硬さを600HV未満とすることを要旨とする。
(T+273)×(20+logt)/1000=20.5〜26.5
但し、650℃≦T≦α相の固溶化温度(℃)
【0009】
この際、上記合金は、さらに、重量%で、B、MgおよびCaから選択される1種または2種以上(2種以上の場合は合計で)を0.02〜0.20%含有していると良い。
【0010】
また、本発明に係るNi基合金の製造方法は、重量%で、Cr:30〜45%、AlおよびMoを合計で:1.5〜5.0%を含有し、残部が実質的にNiおよび不可避的不純物よりなる合金を、650℃以上の温度で熱間加工した後、処理温度T(℃)と保持時間t(h)との関係が下記式を満たす熱処理を施すことにより、硬さを600HV未満とすることを要旨とする。
(T+273)×(20+logt)/1000=20.5〜26.5
但し、650℃≦T≦α相の固溶化温度(℃)
【0011】
この際、上記合金は、さらに、重量%で、B、MgおよびCaから選択される1種または2種以上(2種以上の場合は合計で)を0.02〜0.20%含有していると良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るNi基合金の製造方法では、上記化学組成を有する合金を、650℃以上の温度で熱間加工した後、処理温度T(℃)と保持時間t(h)との関係が上記式を満たす熱処理を施す。
【0013】
つまり、上記熱間加工の後、過時効と固溶化との間で特定の熱処理を施すことで、α相(αCr)の球状化およびγ’相の粗大化によって、硬さが低下する。そのため、Ni基合金の製造性を向上させることができる。また、得られるNi基合金は、良好な強度および非磁性を有している。
【0014】
この際、用いる合金組成中に、特定割合のMoを含む場合には、強度、耐食性を向上させることができる。また、合金組成中に、特定割合のB、Mg、Caを含む場合には、熱間加工性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係るNi基合金の製造方法(以下、「本製造方法」ということがある。)について詳細に説明する。本製造方法では、特定の化学組成を有する合金を熱間加工した後、特定の条件で熱処理を施す。以下、各条件を限定した理由などについて説明する。
【0016】
本製造方法において用いる合金(第1の合金、第2の合金)は、以下のような元素を含有し、残部が実質的にNiおよび不可避的不純物よりなる。なお、以下にいう成分割合の単位は、重量%である。
【0017】
(第1の合金)
Cr:30〜45%
Crは、α相(αCr)を形成する主要な元素であり、α相がγ’相と複合析出することで高強度が得られる。また、Crは、合金の耐食性の向上にも寄与する。その効果を得るため、Cr含有量の下限を30%以上とする。Cr含有量の下限は、好ましくは、31%以上、より好ましくは、32%以上である。
【0018】
一方、Cr含有量が過剰になると、熱間加工性が低下する傾向が見られる。よって、Cr含有量の上限を45%以下とする。Cr含有量の上限は、好ましくは、44%以下、より好ましくは、43%以下である。
【0019】
Al:1.5〜5.0%
Alは、γ’相を形成する重要な元素である。また、Alは、耐高温腐食性の向上にも寄与する。その効果を得るため、Alの含有量の下限を1.5%以上とする。Al含有量の下限は、好ましくは、1.7%以上、より好ましくは、2.0%以上である。
【0020】
一方、Al含有量が過剰になると、熱間加工性が低下する傾向が見られる。よって、Al含有量の上限を5.0%以下とする。Al含有量の上限は、好ましくは、4.7%以下、より好ましくは、4.5%以下である。
【0021】
上記第1の合金は、上述した元素に加えて、さらに、必要に応じて、下記元素を含有していても良い。
【0022】
B、MgおよびCaから選択される1種または2種以上(2種以上の場合は合計で):0.02〜0.20%
Bは、熱間加工性の改善に寄与するととともに、高温強度および靱性の低下を防止するのに役立つ。また、Bは、さらに、高温クリープ強度を高めるのにも有効である。但し、過剰の添加は、熱間加工性を低下させる。
【0023】
また、MgおよびCaは、脱酸、脱硫作用を有する元素であり、合金の清浄度を高めるのに寄与する。また、MgおよびCaは、粒界に偏析して強度を高めるのに寄与する。但し、過剰の添加は、熱間加工性を低下させる。
【0024】
よって、これらの観点から、上記元素の含有量(2種以上の場合は合計で)の下限を0.02%以上とする。上記元素の含有量(2種以上の場合は合計で)の下限は、好ましくは、0.025%以上、より好ましくは、0.030%以上である。
【0025】
一方、上記元素の含有量(2種以上の場合は合計で)の上限を0.20%以下とする。上記元素の含有量(2種以上の場合は合計で)の上限は、好ましくは、0.17%以下、より好ましくは、0.15%以下である
【0026】
(第2の合金)
第2の合金は、上記第1の合金が、Al:1.5〜5.0%と規定されていたのに対し、AlおよびMo:1.5〜5.0%と規定される点だけで異なる。そのため、その他の点は、第1の合金と同様であるため割愛し、異なる点を主に説明する。
【0027】
AlおよびMo:1.5〜5.0%
Alは、γ’相を形成する重要な元素である。また、Alは、耐高温腐食性の向上にも寄与する。但し、Al含有量が過剰になると、熱間加工性が低下する傾向が見られる。
【0028】
一方、Moは、固溶強化により合金の強度を高めるだけでなく、耐食性を向上させる働きもある。但し、Mo含有量が過剰になると、熱間加工性が低下する傾向が見られる。
【0029】
これらの観点から、AlおよびMoの含有量(Al含有量とMo含有量との合計で)の下限を1.5%以上とする。AlおよびMoの含有量の下限は、好ましくは、1.7%以上、より好ましくは、2.0%以上である。
【0030】
一方、AlおよびMoの含有量の上限を5.0%以下とする。AlおよびMoの含有量の上限は、好ましくは、4.7%以下、より好ましくは、4.5%以下である。溶解炉から混入すると思われるFe、Si、Cなどは、特に限定されるものではない。
【0031】
なお、上記第1の合金、第2の合金は、例えば、電気炉、高周波誘導炉などの溶解炉にて、上述した化学組成の合金を溶製し、合金インゴットに鋳造するなどして準備すれば良い。
【0032】
本製造方法では、上記のような化学組成の合金を、熱間加工する。
【0033】
上記熱間加工の方法としては、熱間鍛造、熱間圧延を例示することができる。必要な形状を得ることができるように適宜最適な方法を選択することができる。本製造方法では、これらは、何れか一方だけで行っても良いし、両方を行っても良い。また、両方行う場合、順序も特に限定されない。好ましくは、熱間鍛造、熱間圧延の順である。
【0034】
本製造方法において、上記熱間加工を行う際の温度の下限は、良好な熱間加工性を確保するなどの観点から、650℃以上とする。好ましくは、675℃以上、より好ましくは、700℃以上であると良い。
【0035】
一方、上記熱間加工を行う際の温度の上限は、特に限定されるものではない。好ましくは、結晶粒の粗大化を防ぐなどの観点から、1300℃以下、より好ましくは、1250℃以下であると良い。
【0036】
上記熱間加工を行う際の温度は、後述する熱処理時に選択する処理温度Tを考慮して選択すると良い。好ましくは、コスト低減、良好な熱間加工性を得るなどの観点から、後述する熱処理時に選択する処理温度Tよりも高い温度を選択すると良い。
【0037】
ここで、本製造方法では、上記熱間加工の後、処理温度T(℃)と保持時間t(h)との関係が下記式を満たす熱処理を施す。これにより、得られるNi基合金の硬さが600HV未満になる。
【0038】
(T+273)×(20+logt)/1000=20.5〜26.5
【0039】
但し、上記処理温度T(℃)の下限は、650℃以上である。上記処理温度の下限が650℃を下回ると、Ni基合金の硬さを600HV未満にし難くなり、製造性が低下するからである。
【0040】
上記処理温度T(℃)の下限は、好ましくは、680℃以上、より好ましくは、690℃以上、さらに好ましくは、700℃以上である。
【0041】
一方、上記処理温度T(℃)の上限は、α相の固溶温度以下の温度である。上記処理温度の上限がα相の固溶温度を上回ると、やはりNi基合金の硬さを600HV未満にし難くなり、製造性が低下するからである。
【0042】
上記処理温度T(℃)の上限は、好ましくは、α相の固溶温度未満の温度である。具体的には、上記処理温度T(℃)の上限は、好ましくは、1200℃未満、より好ましくは、1150℃以下、さらにより好ましくは、1100℃以下である。
【0043】
本製造方法における熱処理では、上記処理温度T(℃)が決定すれば、上記式より、熱処理時の保持時間t(h)の範囲を求めることができる。なお、上記log関数の底は10である。
【0044】
上記熱処理時における熱処理方法は、上記条件を満たす処理温度かつ保持時間で熱処理を行うことができれば、特に限定されるものではない。熱処理方法としては、具体的には、例えば、上記熱間処理を行った後、自然放熱、または、水冷、油冷、ガス冷却などの適当な冷却方法を用い、その流れで上記処理温度の範囲まで温度を下げてから当該熱処理を行う方法を例示することができる。この方法によれば、再度加熱などを行う必要がないので、エネルギー効率が良く、コスト低減にも寄与する。
【0045】
他にも、上記熱間加工の後、上記と同様に温度を下げていき、一端、上記処理温度の下限を下回る温度にした後、その後、再度、加熱炉、通電、誘導加熱などの加熱手段を用いて、上記処理温度の範囲内の温度として当該熱処理を行う方法なども採用することができる。
【0046】
また他にも、上記熱間加工時の温度が、上記処理温度よりも低い場合には、上記熱間加工の後、上記加熱手段を用いて上記処理温度の範囲内の温度に昇温し、当該熱処理を行う方法なども採用することができる。
【0047】
本製造方法の基本的な工程は以上の通りであるが、必要に応じて、固溶化処理、時効処理などの工程を追加しても良い。
【0048】
この場合、固溶化処理は、上記熱間加工と上記熱処理との間に行うと良い。上記固溶化処理としては、合金の組成に応じた最適な固溶化温度以上の温度に加熱した後、一定時間その温度に保持し、冷却する方法などを例示することができる。
【0049】
上記固溶化処理時の温度の下限は、α相およびγ’相の固溶の観点から、好ましくは、1060℃以上、より好ましくは、1080℃以上、さらにより好ましくは、1100℃以上である。一方、上記固溶化処理時の温度の上限は、結晶粒粗大化の防止の観点から、好ましくは、1300℃以下、より好ましくは、1275℃以下、さらにより好ましくは、1250℃以下である。
【0050】
なお、上記固溶化処理時の時間は、特に限定されることはない。素材の寸法などに応じて可変させることができる。好ましくは、0.1〜10時間の範囲から選択すると良い。
【0051】
また、上記時効処理は、上記熱処理の後、あるいは、熱処理を加えて塑性または機械加工の後に行うことができ、特に限定されることはない。
【0052】
上記時効処理時の温度の下限は、α相およびγ’相の析出などの観点から、好ましくは、350℃以上、より好ましくは、375℃以上、さらにより好ましくは、400℃以上である。一方、上記時効処理時の温度の上限は、α相(αCr)の球状化防止や、γ’相の粗大化防止などの観点から、好ましくは、600℃以下、より好ましくは、625℃以下、さらにより好ましくは、650℃以下である。
【0053】
なお、上記時効処理時の時間は、特に限定されることはない。α相およびγ’相の析出などの観点から、好ましくは、0.1〜100時間の範囲から選択すると良い。
【0054】
本製造方法により得られるNi基合金の硬さは、600HV未満である。Ni基合金の硬さは、上記熱処理条件によって変化する。なお、本願にいう硬さとは、Ni基合金素材そのもののビッカース硬さ(JIS Z 2244に準拠して測定される)のことであり、冷間加工による加工硬化や各種表面処理の影響を受けていない部分から測定される。
【0055】
得られるNi基合金の硬さの上限としては、強度と靱性のバランスなどの観点から、好ましくは、595HV以下、より好ましくは、590HV以下、さらにより好ましくは、585HV以下であると良い。
【0056】
一方、得られるNi基合金の硬さの下限としては、冷間加工性、強度と靱性とのバランスなどの観点から、好ましくは、300HV以上、より好ましくは、305HV以上、さらにより好ましくは、310HV以上であると良い。
【0057】
また、本製造方法により得られるNi基合金の結晶粒径(上記熱処理後)は、上記硬さなどにより異なる。
【0058】
得られるNi基合金の結晶粒径の上限としては、加工性や強度などの観点から、好ましくは、1000μm以下、より好ましくは、700μm以下、さらにより好ましくは、500μm以下であると良い。
【0059】
一方、得られるNi基合金の結晶粒径の下限としては、600HV未満の硬さが得られやすいなどの観点から、好ましくは、0.01μm以上、より好ましくは、0.05μm以上、さらにより好ましくは、0.1μm以上であると良い。
【0060】
なお、上記結晶粒径は、組織観察用の試料を作製し、画像解析装置により測定される値である。
【0061】
また、本製造方法により得られるNi基合金は、非磁性である。
【0062】
得られるNi基合金の透磁率μとしては、発生する磁場に影響を与えないなどなどの観点から、好ましくは、1.05以下、より好ましくは、1.01以下、さらにより好ましくは、1.005以下であると良い。
【0063】
なお、上記透磁率は、VSM(Vibrating Sample Magnetometer:振動試料型磁力計)を用い、外部磁場100 Oe、室温の条件下にて測定した値である。
【0064】
以上、本製造方法について説明した。本製造方法により得られるNi基合金の用途は、特に限定されるものではなく、高強度および非磁性が要求される各種の用途に適用することが可能である。
【0065】
具体的には、例えば、粉末成形用金型、樹脂成形用金型、金属成形用金型、薬品成形用金型、食品成形用金型、混練機、押出機、射出成形機などのスクリュー、自動車部品(ボルト、ナット、バルブ、冷却水系統、オイル系統、電気系統、機械系統など)、電子部品(筐体、ボルト、ナットなど)、医療部品(ボルト、ナット、杵、臼など)などを例示することができる。
【実施例】
【0066】
以下、本発明を実施例を用いてより具体的に説明する。
【0067】
初めに、高周波真空誘導炉を用いて、表1に示す化学成分の合金(α相の固溶化温度は1185℃)を溶製し、各150kgの合金インゴットを鋳造した。
【0068】
次いで、得られた各合金インゴットを1200℃で熱間鍛造することにより、直径16mmの丸棒をそれぞれ製造した。
【0069】
次いで、得られた各丸棒をそのまま自然放熱させ、表2および表3に記載の各処理温度に調温した後、その各処理温度で、表2および表3に記載の各保持時間だけ保持する熱処理を行った。
【0070】
ここで、表1の合金No.と、実施例、比較例の番号とはそれぞれ対応している。つまり、実施例と比較例とは、それぞれ対応する番号同士は、同じ化学組成の合金を用いている。
【0071】
しかしながら、実施例については、処理温度と保持時間とが、上述した条件式を満足する熱処理を施しているが、比較例については、処理温度と保持時間とが、上述した条件式を満足していない熱処理を施している。また、比較例1〜4および15、16については、上記熱間鍛造工程で、直径150mmの丸棒を表1に記載の冷却速度で冷却した。
【0072】
次に、上記所定の熱処理を経た各丸棒を用い、以下のようにして、硬さ、シャルピー衝撃特性、透磁率を測定した。また、製造性は、熱間鍛造工程における直径150mmの丸棒で評価した。
【0073】
<硬さ>
上記所定の熱処理を経た各丸棒を、その軸方向と垂直な方向に切断し、切断面の中心部から半径方向に、半径の1/2の距離だけ隔てた部分の硬さを、ビッカース硬度計を用い、JIS Z 2244に準拠して5点測定した。なお、測定した5点の硬さの平均値を、各丸棒の硬さとした。
【0074】
<シャルピー衝撃値>
JIS Z 2242に準拠し、上記所定の熱処理を経た各丸棒から採取した10mmRノッチ試験片(10mm角棒)を用いて、シャルピー衝撃値を測定した。なお、各丸棒につき測定した3点のシャルピー衝撃値の平均値を、各丸棒のシャルピー衝撃値とした。
【0075】
<透磁率>
上記所定の熱処理を経た各丸棒を、5mm角に切り出し、VSM(Vibrating Sample Magnetometer:振動試料型磁力計)を用い、外部磁場100 Oe、室温の条件下にて透磁率を測定した。
【0076】
<製造性>
上記各丸棒の製造時に、冷却過程または移動時に割れが発生せず、角に欠けが生じなかった場合を、製造性が良好であると判断した。一方、冷却過程または移動時に割れが発生するか、角に欠けが生じた場合を、製造性に劣ると判断した。なお、表2および表3では、製造性が良好である場合を「○」、製造性に劣る場合を「×」と表記した。
【0077】
表1に、各合金組成の一覧を示す。表2および表3に、各熱処理条件、各測定結果および製造性の評価結果をまとめて示す。
【0078】
【表1】


【0079】
【表2】


【0080】
【表3】


【0081】
表1〜表3を相対評価すると、次のことが分かる。
【0082】
すなわち、同じ化学組成の合金であっても、特定の熱処理を行うか否かにより、得られる硬さが異なってくることが分かる。また、図1に、(T+273)×(20+logt)/1000の値と、ビッカース硬さ(HV)との関係を示す。この図1からも、特定の熱処理条件と硬さとの間に高い相関があることが分かる。また、硬さが600HV未満である場合と600HV以上である場合とでは、実際に製造性の優劣が分かれていることが分かる。
【0083】
また、比較例1〜4および15、16については、熱間鍛造工程で直径150mmの丸棒に、表3記載の冷却速度で冷却を施したとき、割れが発生した。他の比較例は、熱間鍛造工程で直径150mmの丸棒を自然放熱させたとき、割れや欠けが発生した。
【0084】
したがって、これらのことから、特定の熱処理により合金の硬さを600HV未満とすることで、合金の製造性を向上させることが可能であることが分かる。
【0085】
また、シャルピー衝撃値、透磁率の値を比較すると分かるように、比較例では、非磁性の合金を得ることができても、十分な強度を得難いことが分かる。これに対し、実施例では、高強度(高靱性)、非磁性の合金を得ることができている。
【0086】
よって、本発明に係るNi基合金の製造方法によれば、高強度および非磁性を有するNi基合金を製造性良く得ることが可能であると言える。
【0087】
以上、本発明に係るNi基合金の製造方法について説明したが、本発明は、上記実施形態、実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】(T+273)×(20+logt)/1000の値と、ビッカース硬さ(HV)との関係を示した図である。
【出願人】 【識別番号】000003713
【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
【出願日】 平成19年1月25日(2007.1.25)
【代理人】 【識別番号】100095669
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 登


【公開番号】 特開2008−179864(P2008−179864A)
【公開日】 平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願番号】 特願2007−15365(P2007−15365)