トップ :: C 化学 冶金 :: C22 冶金;鉄または非鉄合金;合金の処理または非鉄金属の処理

【発明の名称】 陽圧缶蓋用アルミニウム合金板の製造方法
【発明者】 【氏名】松崎和彦

【要約】 【課題】強度、成形性、耳率といった缶蓋として必須の性能に優れ、かつ製造時に耳割れが発生せずに生産性の優れた缶蓋用アルミニウム合金板を提供する。

【解決手段】Mg3.5〜5.0%、Mn0.1〜0.3%、Cu0.01〜0.2%、Cr0.01〜0.1%を含有するAl合金鋳塊を、熱間粗圧延後、タンデム式熱間仕上圧延機にて熱間仕上圧延を施す際に、圧延開始温度を350〜430℃とし、1段目の圧延の圧下率を30〜45%、圧延速度を30〜50m/分とし、熱間仕上圧延全体の総圧下率87〜93%として、熱間仕上圧延後の材料温度を300〜340℃となるようにし、その後、最終板厚までは焼鈍処理を一切施さず、87〜93%の圧延率で冷間圧延を行う。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Mg3.5〜5.0%(mass%、以下同様)、Mn0.1〜0.3%、Cu0.01〜0.2%、Cr0.01〜0.1%を含有し、不純物としてのSiを0.2%以下、Feを0.25%以下とし、残部がAl及び不可避的不純物からなるAl合金鋳塊を、熱間粗圧延後、タンデム式熱間仕上圧延機にて熱間仕上圧延を施す際に、
圧延開始の材料温度を350〜430℃とし、1段目の圧延の圧下率を30〜45%、圧延速度を30〜50m/分とし、熱間仕上圧延全体の総圧下率87〜93%として、熱間仕上圧延後の材料温度を300〜340℃となるように熱間仕上圧延を施し、
その後、製品となる最終板厚までは焼鈍処理を一切施さず、87〜93%の圧延率で冷間圧延を行うことによって、塗料の焼付やフィルム熱融着のための熱処理を施した後のアルミニウム合金板の耐力が320〜360MPa、45°方向の耳率を4%以下とすることを特徴とする陽圧缶蓋用アルミニウム合金板の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料用缶の缶蓋用のアルミニウム合金焼付塗装板とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より缶蓋用材料には強度、耐食性、成形性の観点からJIS−5082(Al−4.5wt%Mg合金)、5182(Al−4.5wt%Mg−0.35wt%Mn合金)、5052(Al−2.5wt%Mg−0.25wt%Cr合金)等のAl−Mg系合金が用いられており,特にビールや炭酸飲料のような内圧のかかるものに対しては、耐圧強度の観点から高強度の5182材が多用されている。
【0003】
特許文献1には、5182材の中間焼鈍を付与しない工程に関する内容が提案されている。しかし、具体的な製造条件が記載されておらず、耳率の劣化、冷間圧延時の耳割れが相当に発生することが予想される。
【0004】
特許文献2は、冷間圧延工程の途中にトリミング工程を設けることなく、耳割れ及び板切れ等の圧延欠陥が抑制されるアルミニウム合金板の製造方法が提案されている。この技術は、アルミニウム合金板の幅方向端部をトリミングして端面角度をできるだけ直角に保つことにより、耳割れ及び板切れ等の圧延欠陥が抑制するものである。トリミング回数を減らすことは材料歩留を上げる点で効果的な手法であるが、本発明ではアルミニウム合金の添加元素及び熱間圧延時の製造条件の規定により、圧延欠陥を低減させることを特徴としている。
【特許文献1】特開昭56−102565号公報
【特許文献2】特開平10−291005号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
5182材のように比較的Mg添加量が多くなると、材料が加工硬化されやすくなるため、圧延板から缶蓋体に成形するための成形性が十分に確保されないことが多い。また、Mg添加の多い材料は冷間圧延時の圧延集合組織の発達により、絞り容器として成形した際の耳率が悪くなる。
また、5182材は熱間圧延後に冷間圧延を単数もしくは複数回施すと、材料端部が耳割れをしやすくなる。耳割れは発生後放置すると、材料損傷部位が拡大し板切れ等の重大な損傷を招く。耳切れを減らすためには、複数回にて施される冷間圧延の途中に中間焼鈍処理を施すことが有効であるが、中間焼鈍工程の付与は製造コストの増大を招き、好ましくない。また、耳切れ発生後に、コイル端部をトリミング除去することにより、板切れを避けることは可能であるが、材料の歩留が悪くなる、トリミング工程の追加により製造コストが増加してしまうため、好ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記の課題を解決するために、鋭意研究の結果、5182のような成分で高耐力を有するようにしたアルミニウム合金板においては、加工性、耳率が劣化するのが通常だが、熱間圧延条件及び冷間圧延条件を規制することにより、加工性、耳率を従来材料と同等となることを見出した。
【0007】
さらに、冷間圧延時に耳切れが発生しやすくなるが、缶蓋の性能を確保しつつ耳切れを発生させないためには下記のような手法が有効であることを見出した。
【0008】
1つは、アルミニウム材料中の金属間化合物の存在量をできるだけ低減させることである。材料強度確保には、ある程度の金属間化合物が存在することが必要であるが、過剰に存在すると、冷間圧延時に金属間化合物にて変形が集中して、耳切れの発生起点となり得る。そのため、耳切れを防ぐために、金属間化合物の生成を抑制しなければならない。金属間化合物の存在量は、アルミニウム合金に添加する元素、特にMn、Fe、Cr、Siの添加量に比例するため、これら元素の添加上限を規制することが有効である。また、比較的大きな金属間化合物が材料中に適度に存在すると、熱間圧延途中、終了時の再結晶化の際に、金属間化合物とマトリックス組織との界面にてランダムな方位の結晶が生成、成長しやすくなる。ランダムな方位が優勢になると、引き続く冷間圧延時に圧延集合組織の影響が加味されて、最終的に冷間圧延された材料は、45°方向の耳が強くなってしまい、耳率が悪くなる。以上の理由から、金属間化合物は最低限の強度を維持する程度に、できるだけ低減させた方が良い。
【0009】
もう1つは熱間圧延時の製造条件で、特に熱間仕上圧延の開始温度を低温とし、熱間仕上圧延をタンデム(連続的)に圧延する際に1段目の圧延を、高圧下且つ低速度とすることが有効である。タンデム式の熱間仕上圧延機のように、材料中に高歪みを加えた後、材料を再結晶化温度まで高温保持すると、材料中には立方体方位の結晶が優位に生成、成長し、圧延された材料は、0−90°方向に耳が発達しやすくなる。前述の通り、Mgの多い5182材については、冷間圧延時に圧延集合組織が発達しやすく、冷間圧延された材料は、45°方向の耳が優位となりやすいため、この熱間仕上圧延時にできるだけ立方体方位の結晶を優勢成長させた方が良い。立方体方位の結晶を優位に成長させるためには、熱間仕上圧延時に材料にできるだけ歪みを蓄積させる、すなわち、圧延加工量を増大させれば良い。しかし、熱間仕上圧延機の能力により限界があるため、圧延途中に歪みが回復されないように熱間仕上圧延の開始温度を低温とすることが有効となる。
【0010】
また、5182材のようにMgの多い材料は、高温時に延性が乏しくなる。そのため、比較的板厚が厚い時点では、材料温度を低温とし、熱間仕上圧延の加工発熱により、材料の再結晶化に必要な温度まで上昇させる。このような条件にて生成された熱間仕上げ圧延板は延性が優れ、続く冷間圧延にて耳割れが発生し難い。しかし、開始温度を過度に低温にしてしまうと、如何なる製造条件でも熱間仕上圧延後の材料温度が高くならないため、材料が均一に再結晶化されない。材料が均一に再結晶化されないと、材料が過度に強度上昇するとともに、材料の耳率が変化するため、缶蓋材としての必要性能が確保されない。
【0011】
その結果到達したのが、請求項1記載の通り、Mg3.5〜5.0%、Mn0.1〜0.3%、Cu0.01〜0.2%、Cr0.01〜0.1%を含有し、不純物としてのSiを0.2%以下、Feを0.25%以下とし、残部がAl及び不可避的不純物からなるAl合金鋳塊を、熱間粗圧延後、タンデム式熱間仕上圧延機にて熱間仕上圧延を施す際に、
圧延開始の材料温度を350〜430℃とし、1段目の圧延の圧下率を30〜45%、圧延速度を30〜50m/分とし、熱間仕上圧延全体の総圧下率87〜93%として、熱間仕上圧延後の材料温度を300〜340℃となるように熱間仕上圧延を施し、
その後、製品となる最終板厚までは焼鈍処理を一切施さず、87〜93%の圧延率で冷間圧延を行うことによって、塗料の焼付やフィルム熱融着のための熱処理を施した後のアルミニウム合金板の耐力が320〜360MPa、45°方向の耳率を4%以下とすることを特徴とする陽圧缶蓋用アルミニウム合金板の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
アルミニウム合金板の合金組成及び製造条件を調整することにより、強度、成形性、耳率といった缶蓋として必須の性能に優れ、かつ製造時に耳割れが発生せずに生産性の優れた缶蓋用アルミニウム合金板を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の各要素の限定理由について説明する。先ず、この発明における合金成分の限定理由について説明する。
【0014】
Mg:Mg添加量は3.5〜5.0%とする。Mg添加はMgそれ自体の固溶による強度向上があり、また冷間圧延時に導入される転位との交互作用から加工硬化の向上が期待でき、内圧のかかるアルミニウム合金缶蓋材に対して必要な強度を得るためには不可欠な元素である。
Mg量が3.5%未満では十分な強度を得ることができない。一方、5.0%を超えると冷間圧延によって導入される転位密度が過剰になり、缶蓋としての成形性を阻害するとともに板の耳切れが生じやすくなる。
【0015】
Mn:Mn添加量は0.1〜0.3%とする。Mn添加は強度向上と熱処理時の材料軟化を抑制する効果がある。Mn量が0.1%未満では十分な強度付与、軟化抑制効果を得ることができない。しかし、0.3%を超えると、Al−Fe−Mn−(Si)系の金属間化合物が高密度に生成されたり、粗大に成長してしまう。Al−Fe−Mn−(Si)系の金属間化合物は周囲のアルミ素地に比べて硬く延性に乏しいため、このような金属間化合物が高密度あるいは、大きな金属間化合物が存在すると、応力集中による材料の割れが顕著となる。また熱間圧延後の材料中の立方体方位結晶粒が少なくなるため、耳率が悪化してしまう。
【0016】
Cu:Cu添加量は0.01〜0.2%とする。Cuの添加は強度向上と熱処理時の材料軟化を抑制する効果がある。しかし、0.01%未満ではこの効果が少なく、0.2%を超えてしまうと、Al−Cu−Mg系の金属間化合物の析出が過多となり、冷間圧延によって導入される転位密度が高くなる。
【0017】
Cr:Cr添加量は0.01〜0.1%とする。Crの添加は強度向上と塗装焼付け時の軟化抑制に効果がある。しかし、0.01%未満ではこの効果が少なく、0.1%を超えてしまうと、Al−Cr系の金属間化合物の生成と粗大化を伴い、耳切れを助長してしまう。
【0018】
Si:不純物としてのSi量は0.2%以下とする。Siは精錬前のアルミ中に存在する主な不純物成分であるが、0.20%を超えるとAl−Fe−Mn−SiさらにはMg2 Si金属間化合物の生成と粗大化を引き起こし、材料割れの起点となり得る。
本発明のように、熱間圧延後に中間焼鈍を一切施さずに冷間圧延を施すような製法で作成したアルミニウム合金板では、上記の材料破断を防止するためにSi添加をできるだけ低くすべきであるが、高純度のアルミ精錬には製造コストが過大となってしまうので、0.01〜0.20%にすると好ましい。
【0019】
Fe:不純物としてのFe量は0.25%以下とする。FeはSiと同様に精錬前のアルミ中に存在する主な不純物成分であるが、0.25%を超えるとAl−Fe−Mn(−Si)系の金属間化合物の生成と粗大化を引き起こし、材料破断の問題が生じてしまう。
本発明のように、熱間圧延後に中間焼鈍を一切施さずに冷間圧延を施すような製法で作成したアルミニウム合金板では、上記の材料破断を防止するためにFe添加をできるだけ低くすべきであるが、高純度のアルミ精錬には製造コストが過大となってしまうので、0.01〜0.25%にするのが好ましい。
【0020】
以上の各元素のほかは、基本的にはAlおよび不可避的不純物とすれば良い。
【0021】
注:Ti,Bも記載を変えました。おかしかったら書き変えてください。
また、一般に鋳塊組織を微細にするためにTi0.01%〜0.15%を単独であるいはB0.0001%〜0.05%とともに添加することが多い。組織の微細化は、圧延時の延性を確保するための有効な手段である。一方、Tiが0.01%未満で、かつB0.0001%未満である場合には、鋳塊の組織微細化の効果が少ない。Tiが0.15%を超えるもしくは、Bが0.05%を超えると粗大な金属間化合物が生成されるため、逆に圧延時の耳割れが生じやすくなる。
【0022】
次に本発明の製造方法について説明する。
【0023】
鋳造方法は、特に規定をしないが、DC(半連続)鋳造法にて製造するのが好ましい。
【0024】
鋳塊上下面の面削は、不安定凝固層を除去するように適宜行なう方が好ましい。
【0025】
均質化処理は、特に規定しないが、不安定相の安定化、偏析の均質化を図るべく実施した方が好ましい。温度460〜530℃、処理時間0.5〜15時間程度が良い。
なお、均質化処理と兼ねても良いが、少なくとも熱間粗圧延の前には下記終了温度を保てるように加熱処理を行う。
【0026】
熱間粗圧延は、特に規定しないが、定法により熱間仕上圧延が可能な範囲の板厚まで圧延を行なう。次工程である熱間仕上圧延開始時の材料温度を保つために、300℃を超える温度とすることが好ましい。材料温度が高温な場合は、放置または強制冷却等により温度を低下させる。
【0027】
熱間仕上げ圧延は、タンデム式熱間仕上圧延機を用いる。タンデム式熱間仕上圧延機にて圧延を施すと、各圧延段後に材料が再結晶または回復することなく、一度に大きな歪みを与えることができる。特に限定はしないが、圧延効率と材料集合組織形成の観点から、3段または4段のタンデム式熱間仕上圧延機を用いる方が好ましい。
【0028】
圧延開始の材料温度を350〜430℃とし、1段目の圧延の圧下率を30〜45%、圧延速度を30〜50m/分とし、熱間仕上圧延全体の総圧下率87〜93%として、熱間仕上圧延後の材料温度を300〜340℃となるように実施する。
【0029】
熱間仕上圧延開始の材料温度を350〜430℃とするのは、350℃未満であるとタンデム式熱間仕上圧延機で圧延可能な範囲での他の製造条件(圧延速度、圧延油噴き付け量)を変更したとしても、熱間仕上圧延後に材料を再結晶化させるのに必要な温度を確保することが困難となる。430℃を超えると熱間仕上圧延後の材料延性が不十分となり、材料の耳割れが発生する恐れがある。
【0030】
1段目の圧延の圧下率を30〜45%とするのは、30%未満であると、圧延効率が悪いとともに、加工発熱が十分とならず熱間仕上圧延終了後の再結晶化に必要な温度の確保が困難となる。45%を超えると、1段目圧延後の材料板厚が薄くなりすぎてしまうため、引き続く後段の圧延時に材料の放熱が過度に起こり、材料の再結晶化が困難となる。
【0031】
1段目の圧延の圧延速度を30〜50m/分とするのは、30m/分未満であると熱間仕上圧延時の加工発熱が十分とならず熱間仕上圧延終了後の再結晶化に必要な温度の確保が困難となる。50m/分を超えると、加工速度が厳しくなり、板切れや表面不良を発生しやすくなる。
【0032】
総圧下率が87%未満であると、タンデム式熱間仕上圧延機を用いての製造としては、総圧延量が少なすぎるため、非効率となる。また圧下量の不足による材料への歪み導入量の過少、加工熱の不足により、材料の再結晶化を阻害する恐れがある。93%を超えるような場合は、ロールと材料間にて凝着が起こり表面が劣化してしまったり、酷い場合は材料破断を生じてしまう恐れがある。
【0033】
前述の条件を全て揃え、熱間仕上圧延後の材料温度を310〜340℃とする。310℃未満であると材料全体にて再結晶化が十分なされない。また340℃を超えるような圧延では、前述のような表面不良を生じてしまう。
【0034】
製品となる最終板厚まで冷間圧延を施すが、その間は焼鈍処理を一切施さない。
一般的に焼鈍処理の付与は、冷間圧延された材料の回復や再結晶化により圧延加工性の向上、製品の成形性を確保する狙いがあるが、本特許のように成分や製造方法を規定することにより、熱間圧延から冷間圧延までの間の焼鈍工程を省略することが可能となる。
【0035】
冷間圧延は87〜93%の圧延率とする。87%未満であると内圧のかかるアルミニウム合金缶蓋材に対して必要な強度を得ることができない。また93%を超えてしまうと、材料に導入される転位密度が過剰になり、缶蓋のリベット成形性を低下させてしまう。
【0036】
アルミニウム合金冷延板の表面にエポキシまたはビニル系の塗料やPET等のフィルムを塗膜し、塗料の焼付やフィルムの熱融着のための熱処理を施した後のアルミニウム合金板の耐力が320〜360MPaとなる陽圧缶蓋用塗膜アルミニウム合金板を提供する。
【0037】
塗料や塗膜の種類により最適な熱処理条件は異なるが、熱処理温度は180〜280℃とすることが好ましい。塗料や塗膜の種類に応じて、材料の組成や冷間圧延率を調整して塗膜板の材料強度を調節することが可能である。このような熱処理を施した後のアルミニウム合金板の耐力が320MPa未満であると、内圧のかかるような缶蓋に材料を供した場合、要求される内圧の付与により蓋が耐えることができない。360MPaを超えるような材料では、缶蓋の成形、特にリベット成形時に割れが多発してしまう。
【実施例1】
【0038】
表1に示す種々の化学成分のアルミニウム合金鋳塊を、均質化処理490℃×3時間を施し、常法の圧延条件にて複数回の熱間粗圧延を行なった。その後、4段タンデム式の熱間圧延機にて熱間仕上圧延を施すが、圧延直前の温度400℃(±5℃)で、1段目の圧延の圧下率を50%、圧延速度を42m/minとし、2段目以降の圧下率をそれぞれ50、40、40%として、総圧下率91%で圧延し、材料の出側コイル温度が318℃(±5℃)とした。その後、圧延率90%にて冷間圧延し、エポキシ系の塗料で塗装し、260℃×20秒で焼き付け処理した。なお表1の1〜5までが本発明の条件を満たす成分組成であり、6〜13は合金の成分組成が外れている比較例である。
【0039】
【表1】


【0040】
冷間圧延後の耳割れは、熱間仕上圧延板を圧延率65%にて冷間圧延を施した直後のコイル端面の状態を目視確認し、耳割れが全く生じていないものを「○」、点在的に弱い割れが認められるものを「△」、強い割れもしくは弱い割れでも広範囲に認められるものを「×」と判定した。
【0041】
得られた塗装板に対して、JIS5号の引張試験片を作成し、引張圧縮試験機にて0.2%歪み相当耐力を測定した。
【0042】
耳率の測定は、Φ57の円形ブランクから絞り率48%の円筒容器を作成し、円筒容器の側壁高さを、円周方向にピッチ22.5°で合計16点測定し、下式のような計算から耳率を求めた。
耳率=((45°方向の平均高さ)−(0°、90°の平均高さ))/(全測定点の平均高さ)
耳率が4%以下のものを「○」、4%を超えるもしくはマイナス(0、90°の平均高さの方が、45°方向の平均高さを超える場合)は「×」と判定した。
【0043】
表1の結果からわかるように、発明例1〜5は内圧のかかる缶蓋に必要な耐力、耳率を有し、且つ冷間圧延時に耳割れ等の材料損傷が生じない優れた特性を有している。
【0044】
しかし、比較例6、8、10、11、12、13はそれぞれMg、Mn、Si、Cu、Cr、Fe添加量が高すぎるために冷間圧延中途にて耳割れが発生しており、比較例7、9はそれぞれMg、Mnの添加量が低すぎるために、必要な材料強度(耐力)が得られていない。また、比較例6は、Mg添加が高すぎるため、材料結晶方位がランダム化され、結果的に耳率が45°方位が過度に強くなっており、比較例9は、Mn添加が少なすぎるため、熱間圧延後に集積する立方体方位の影響を引き摺り、0−90°方位の耳が強くなっている。
【実施例2】
【0045】
表1中の発明例1に相当する化学成分のアルミニウム合金鋳塊を、表2に示す各種の製造方法にて、均質化処理・熱間圧延・冷間圧延を施し、その後エポキシ系の塗料で塗装し、260℃×20秒で焼き付け処理した。なお表2の、A〜Fまでが本発明の条件を満たす製造方法であり、G〜Mは一部の条件が外れている比較例である。
材料の各種試験は、実施例1と同様な方法にて実施した。
【0046】
【表2】


【0047】
表2からわかる様に、発明例A〜Fは内圧のかかる缶蓋に必要な耐力、耳率を有し、且つ冷間圧延時に耳割れ等の材料損傷が生じない優れた特性を有している。
【0048】
一方、比較例G、I、Jはそれぞれ熱間仕上圧延における入側温度、1段目圧延の圧下率、圧延速度が本発明の規定範囲外となるため、冷間圧延中途にて耳割れが生成した。比較例Hは、熱間仕上圧延における入側温度が低すぎるため、結果的に熱間仕上圧延後の材料温度が上昇できずに材料が再結晶化されず、過度な強度上昇、耳率の悪化を招いた。比較例Kは、1段目の圧延速度が遅すぎるため、熱間圧延中途または終了時に生成されるべく立方体方位に優位な結晶の生成量が少なくなり、結果的に耳率が悪くなった。比較例Lは、熱間仕上圧延の総圧下率が低すぎるため、冷間圧延量とのバランスが崩れ、強度と耳率の劣化を招いた。逆に比較例Mは、熱間仕上圧延の総圧下率が高すぎるために、熱間仕上圧延時に材料表面に毟れが生じ、その後の圧延が不能となった。
【出願人】 【識別番号】000107538
【氏名又は名称】古河スカイ株式会社
【出願日】 平成18年12月12日(2006.12.12)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−144238(P2008−144238A)
【公開日】 平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願番号】 特願2006−334156(P2006−334156)