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【発明の名称】 アルミニウム合金材の熱処理装置および熱処理方法
【発明者】 【氏名】大橋 孝行

【要約】 【課題】冷却歪みを抑制可能なアルミニウム合金材の熱処理装置および熱処理方法を提供する。

【解決手段】アルミニウム合金からなる薄肉鋳造品Wを共晶点近傍まで昇温させ、その温度で所定時間保持し、その後、複数のノズル5から鋳造品Wに対して冷却媒体を吹付けて急冷することにより溶体化処理を行うアルミニウム合金材の熱処理装置および熱処理方法であり、前記ワークWに対面させてワークWに冷却媒体を吹付ける複数の吹付けノズル5と、前記ワーク表面の冷却媒体の吹き付け箇所と異なるワーク表面に臨んで開口し且つ冷却ブース1外に連通させた排気ダクト6と、を備え、前記吹付けノズル5からワーク表面に沿って排気ダクト6の開口に向かう冷却媒体の流動によりワークWを冷却するようにした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム合金からなる薄肉鋳造品を共晶点近傍まで昇温させ、その温度で所定時間保持し、その後、冷却ブース内において、複数の吹付けノズルから鋳造品に対して冷却媒体を吹付けて急冷することにより溶体化処理を行うアルミニウム合金材の熱処理方法であり、
前記ワーク表面に臨むよう配置した複数の吹付けノズルより冷却媒体をワーク表面に吹き付けつつ、前記ワーク表面の冷却媒体の吹き付け箇所と異なるワーク表面に臨んで開口し且つ冷却ブース外に連通させた排気ダクトから冷却ブース内の冷却媒体を排出させることにより、吹付けノズルからワーク表面に沿って排気ダクトの開口に向かい流動する冷却媒体によりワークを冷却することを特徴とするアルミニウム合金材の熱処理方法。
【請求項2】
前記複数の吹付けノズルからの冷却媒体の吹付け箇所はワークの一方の表面に臨み且つ前記排気ダクトの開口はワークの他方の表面に臨み、
前記吹付けノズルからワークに吹き付けられた冷却媒体はワークの一方からワーク表面に沿ってワークの他方へ回り込んで排気ダクトの開口から排出されることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム合金材の熱処理方法。
【請求項3】
前記排気ダクトは、ワークの片側に存在する冷却媒体を全体的に排出させる大排気ダクトと、ワークの局所的な表面に開口を隣接させて局部的な表面から冷却媒体を排出させる局所排気ダクトと、から形成され、ワークを回り込んだ冷却媒体は大排気ダクトを経由させて排出させる一方、ワーク表面の局所部位の冷却媒体は局所排気ダクトを経由させて排出させることを特徴とする請求項2に記載のアルミニウム合金材の熱処理方法。
【請求項4】
アルミニウム合金からなる薄肉鋳造品を共晶点近傍まで昇温させ、その温度で所定時間保持し、その後、複数のノズルから鋳造品に対して冷却媒体を吹付けて急冷することにより溶体化処理を行うアルミニウム合金材の熱処理装置であり、
前記ワークに対面させてワークに冷却媒体を吹付ける複数の吹付けノズルと、
前記ワーク表面の冷却媒体の吹き付け箇所と異なるワーク表面に臨んで開口し且つ冷却ブース外に連通させた排気ダクトと、を備え、
前記吹付けノズルからワーク表面に沿って排気ダクトの開口に向かい流動する冷却媒体によりワークを冷却することを特徴とするアルミニウム合金材の熱処理装置。
【請求項5】
前記複数の吹付けノズルの噴出口と排気ダクトの開口とは、ワークを挟んで対向する位置に配置されていることを特徴とする請求項4に記載のアルミニウム合金材の熱処理装置。
【請求項6】
前記排気ダクトは、ワークの片側に存在する冷却媒体を全体的に排出させる大排気ダクトと、ワークの局所的な表面に開口を隣接させて局部的な表面から冷却媒体を排出させる局所排気ダクトと、から形成されていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のアルミニウム合金材の熱処理装置。
【請求項7】
前記複数の吹付けノズルの噴出口と排気ダクトの開口とは、同一の方向からワークに臨んでいることを特徴とする請求項4に記載のアルミニウム合金材の熱処理装置。
【請求項8】
前記吹付けノズルの噴出口と排気ダクトの開口とは、互いに隣接した配列によりワーク表面に臨んでいることを特徴とする請求項7に記載のアルミニウム合金材の熱処理装置。
【請求項9】
前記排気ダクトには、冷却ブース内の冷却媒体を冷却ブース外に排出する吸引手段が配置されていることを特徴とする請求項4から請求項8のいずれか一つに記載のアルミニウム合金材の熱処理装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム合金材の熱処理装置および熱処理方法に関し、特に、薄肉部品に好適なアルミニウム合金材の熱処理装置および熱処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からAl−Si系のアルミニウム合金の鋳造鋳物を共晶点直下の温度まで急速に昇温し、該共晶点近傍に到達した後に急冷することで溶体化処理を行い、その後、各種の時効化処理を行うアルミニウム合金材の熱処理方法が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
これは、アルミニウム合金材を、鋳造機において鋳造する第1工程と、鋳造されたピストン鋳造品を昇温室内で、熱発生機から内部に流入循環させた高熱ガスによって、共晶点(530℃)近傍の約520℃までに急速に加熱する第2工程と、急速高温になったピストン鋳造品を、保持室内で冷却ファン装置によって雰囲気温度が均一になるように制御しながら、約3分間、各ピストン鋳造品がそれぞれ約520℃の温度に保持される第3工程とを備える。そして、ピストン鋳造品を、保持室から冷却用水槽内に投入して急速に冷却する第4工程と、その後に、急冷却したピストン鋳造品を、時効化炉内に投入して所定温度、時間で時効化処理を行う第5工程を備え、これによって熱処理を行うようにして、処理時間の短縮化とエネルギ消費を抑制しつつアルミニウム合金鋳物の十分な硬度を確保するようにしている。
【特許文献1】特開2005−133103号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来例の熱処理方法を薄肉のアルミニウム合金材に適用した場合、第4工程において保持室から冷却用水槽内に投入して急速に冷却するものであるため、急速冷却に伴いワークに冷却歪みを生じ、特に、部品形状が複雑な場合には部品の部位の質量差により冷却速度に差が生じ、前記冷却歪みが顕著となることが懸念される。この冷却歪みは、冷却手段として冷却用水槽に代えて、冷却エアの吹付けにより急速冷却する場合においても、部品形状が複雑な場合には、同様に発生すると予想される。
【0005】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、冷却歪みを抑制可能なアルミニウム合金材の熱処理装置および熱処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、アルミニウム合金からなる薄肉鋳造品を共晶点近傍まで昇温させ、その温度で所定時間保持し、その後、複数のノズルから鋳造品に対して冷却媒体を吹付けて急冷することにより溶体化処理を行うアルミニウム合金材の熱処理装置および熱処理方法であり、前記ワークに対面させてワークに冷却媒体を吹付ける複数の吹付けノズルと、前記ワーク表面の冷却媒体の吹き付け箇所と異なるワーク表面に臨んで開口し且つ冷却ブース外に連通させた排気ダクトと、を備え、前記吹付けノズルからワーク表面に沿って排気ダクトの開口に向かう冷却媒体の流動によりワークを冷却するようにした。
【発明の効果】
【0007】
したがって、本発明では、冷却ブース内のワークに対面させてワークに冷却媒体を吹付ける複数の吹付けノズルと、前記ワーク表面の冷却媒体の吹き付け箇所と異なるワーク表面に臨んで開口し且つ冷却ブース外に連通させた排気ダクトと、を設け、前記吹付けノズルからワーク表面に沿って排気ダクトの開口に向かう冷却媒体の流動によりワークを冷却するようにした。即ち、吹付けノズルから放出された冷却媒体は、ワークへの吹付け箇所から排気ダクトの開口に向かって流動する冷却媒体の流れに沿ってワーク表面を流動し、排気ダクトから順次排出される。このため、吹付けられた冷却媒体がワーク表面から跳ね返って後続して吹出された冷却媒体に対する流動抵抗となったりすることもなく、流速を失うことなくワーク表面を流れ、ワークの冷却効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明のアルミニウム合金材の熱処理装置および熱処理方法を一実施形態に基づいて説明する。図1〜図6は、本発明を適用したアルミニウム合金材の熱処理装置および熱処理方法の第1実施形態を示し、図1は本実施形態の熱処理工程を示す工程図、図2は熱処理工程の急冷工程を示す平面図、図3はワークとしての自動車のドアビームの断面図および側面図、図4は急冷工程における第1実施例の冷却ブースの断面図、図5は急冷工程における第2実施例の冷却ブースの断面図、図6は急冷工程における第3実施例の冷却ブースの断面図である。
【0009】
図1において、アルミニウム合金材の熱処理方法は、アルミニウム合金材を鋳造機において鋳造し(S1)、凝固完了後に鋳造金型から薄肉鋳造品を取出し、湯口やバリを取り除いて仕上げ(S2)後に、加熱炉に投入し、内部に循環している高熱ガスによって共晶点近傍の例えば、約520℃まで加熱し、その状態で保温室において、例えば、60〜90分間保持される(S3)。
【0010】
続いて、薄肉鋳造品は、搬送機によって保温室から冷却ブース内に一定の姿勢で投入されて、ここで、急速に冷却される(S4)。その後、急冷却された薄肉鋳造品を、時効化炉内に投入し、ここで、例えば、約200℃の温度で約1.5時間の時効化処理が行なわれる(S5)。これらの溶体化処理および時効処理よりなるアルミニウム合金材の熱処理方法は、一般的に実施されている工程である。
【0011】
本実施形態の熱処理方法においては、前記急速冷却工程(S4)において、図2および図4に示す冷却ブース1により300〜400℃/minの冷却速度によりワークである薄肉鋳造品Wを冷却媒体である冷却空気により冷却することを特徴とする。
【0012】
ここで、ワークである薄肉鋳造品Wについて、図3により説明する。図3に示す薄肉鋳造品Wは、車両の側面からの衝突時にドアパネルの室内侵入を抑えて乗員の生存空間を確保するために、自動車のドア内部に装備するドアビーム(ガードバー)を示している。このドアビームは、通常高張力鋼のパイプ材が使用されていたが、車両の軽量化および断面形状の自由度の高さからアルミニウム合金による薄肉鋳造品が用いられる場合もある。図3に示すドアビームにおいては、前端Fから後端Rまで一様な断面形状に形成された厚さ2mm前後の薄板(平面部W1)により形成され、上下方向中央部において車両外方に向かって薄板がやや湾曲させて突出され、その突出先端部分に形成した中央厚肉部W2と、上下方向下部側において厚板から車両の内外方向に形成した下部厚肉部W3とを備えるよう構成している。これらの厚肉部W2、W3および厚板に形成した湾曲部W4は、ドアビームの曲げ剛性を向上させるためのものである。また、薄板の上部側の外方には部分的な突起W5が形成されている。
【0013】
図2および図4に示す冷却ブース1は、前記加熱炉2および保温室3に連ねてその下流に配置されており、ブース1の中央を縦断させて配置したワーク搬送手段4と、搬送されるワークWに対して冷却媒体としての冷却空気を吹付ける複数のノズル群5と、前記ノズル群5とワークWを挟んで対向する位置に配置されてブース1内の空気を吸引して排出する吸引排気装置6と、各ノズル群5に冷却空気をダクト7を介して供給するブロア8と、ノズル群5から噴射する冷却空気量を調整する調整弁9と、ワークWの温度を測定する複数の温度センサ10と、温度センサ10よりの温度信号に基づき調整弁9の開度およびブロア8の送風量を調整するコントローラ11とを備える。なお、前記複数の温度センサ10は、代表的に一部のみを図示しているが、ワークWの搬送方向の全範囲に亘り且つ搬送されるワークWの各部の温度を測定可能に配置されているものである。
【0014】
また、前記ワークWを挟んで対向する位置のノズル群5と吸引排気装置6とは、図2に示す冷却ブース1においては、冷却ブース1の上流域から下流域に亘って、互い違いの配列により3箇所に分けて配列されている。
【0015】
各ノズル群5は、領域毎に複数本を冷却ブース1の上流域から下流域に沿って配列すると共に、冷却ブース1の上下領域に亘って配列している。そして、冷却ブース1の中央に搬送されるワークWに対して片側のノズル群5からワークWに冷却空気を一斉に吹付ける一方、ワークWの他方に位置する吸引排気装置6によりブース1内の空気を吸引排出することにより、前記ノズル群5から放出された冷却媒体である空気をワークWの他方の面に廻り込ませて、ワークWの他方の面も冷却させた後、吸引排気装置6からブース1外に排出することにより、ワークWを冷却する。
【0016】
ワークWが搬送手段4により下流に移動するに連れて、作動するノズル群5と吸引排気装置6との位置が左右で変化することにより、ワークWは両面から満遍なく冷却され、ワーク搬送位置に応じた目標温度となるよう、温度低下させる。ワークW自体の温度は、その領域毎に配置されている温度センサ10により検出してコントローラ11にフィードバックされる。
【0017】
以上の構成のアルミニウム合金材の熱処理装置による熱処理方法では、鋳造機において鋳造(S1)され、凝固完了後に鋳造金型から取出され、仕上げ(S2)により湯口やバリを取り除いた薄肉鋳造品Wのアルミニウム合金材が、図示しないロボットハンドにより加熱炉2に投入され、内部に循環している高熱ガスによって共晶点近傍の例えば、約520℃まで急速加熱され、その状態で保温室3において、例えば、60〜90分間保持された(S3)後、搬送手段4によって保温室3から冷却ブース1内に一定の姿勢で搬送されて投入される。
【0018】
前記冷却ブース1では、投入側の所定領域に配置したノズル群Sからの冷却空気の吹出しが一時的に停止されており、後段領域に配置したノズル群Lからの冷却空気の吹出しが行われた状態としている。搬送手段4により投入されるワークWが部分的に冷却ブース1に入り込んだ状態では、投入側領域のノズル群Sからの冷却空気の吹出しは停止された状態を維持させ、ワークWの全体が冷却ブース1に入り込んだ時点から投入側領域のノズル群Sからの冷却空気の吹出しが再開される。この投入側領域のノズル群Sからの冷却空気の吹出しの一時停止は、ワークWが冷却ブース1へ投入される毎に実行され、冷却空気の吹出しによる冷却が、ワークWの一部(搬送方向先端側)から開始されることなく、ワークW全体から同時に開始されるようにしている。
【0019】
ブース1の上流領域に配置したノズル群Sから吹出される冷却空気は、ワークWに接触した後、ワークWに沿って左右方向および上下方向に拡がり、ワークWを片面から冷却する。同時に、吸引排気装置6によりワークWの他方の面に臨む空気がブース1外に排出されることにより、前記ノズル群Sから吹出されワークWに沿って流れる冷却空気がワークWの他方の面側に吸い寄せられて回り込み、ワークWの他方の面に沿って流れることにより、ワークWを他方の面からも冷却する。このように、冷却空気がワークWの一方の表面に沿って流れ、ワークWを回り込んで他方の表面に沿っても流れることにより、ワークWは略均一な温度状態で冷却される。
【0020】
従って、ノズル群Sから放出された冷却空気がワークWに接触した後に跳ね返り、後から吹出された冷却空気に対する抵抗となったり、冷却ブース1内で滞留することがなく、ワークWの表面側から裏面側へ吸い寄せられ、流速を失うことなく、ワーク表面を流れて、ワークWに対する冷却効率を向上できる。
【0021】
搬送手段4によるワークWの下流への搬送に連れて、ワークWに冷却空気を吹出すノズル群Lおよびワーク側方から排出する吸引排気装置6が下流側へと更新されて、他方の面側のノズル群Lから吹出される冷却空気がワークWの他方の面に接触し、ワーク表面に沿って上下左右に拡がって流れる一方、一方の面側の空気がその面側の吸引排気装置6により排出されることにより、前記他方の面のノズル群Lから吹出されワークWに沿って流れる冷却空気がワークWの一方の面側に回り込み、ワークWの一方の面に沿って流れることにより、ワークWを一方の面からも冷却する。このように、ワークWは交互に配置したノズル郡S・Lからの冷却空気がワークWのその表面に沿って流れ、且つ交互に配置した吸引排気装置6による吸引排気により、ワークWを回り込み裏側の表面に沿っても流れることにより、ワークWは両面が交互にノズル群S、Lと吸引排気装置6とにより略均一な温度状態で冷却される。
【0022】
ワークWの温度は温度センサ10により検出される。そして、搬送位置に対応した温度となるよう温度降下されているかどうかコントローラ11により判定され、設定した温度より更に温度低下されている場合には、ブロア8よりの送風量を低下させるか、若しくは、各調整弁9の開度を絞り、設定した温度より温度低下が少ない場合には、ブロア8よりの送風量を増加させるか、若しくは、各調整弁9の開度を開き、ワークWの温度が目標降下温度となるよう制御する。
【0023】
そして、ワークWが冷却ブース1の出口に至り、ワークWが冷却ブース1から搬出される。この時の温度としては、50℃程度に低下されていれば、溶体化処理が完了しており、ワークWは後工程の時効処理が開始される。
【0024】
図5に示す第2実施例のアルミニウム合金材の熱処理装置においては、冷却空気を吹出すノズル群5とブース1内の空気を排出する吸引排気装置6とを、ワークWを挟んで対向させるのではなく、ワークWに対して夫々同一の側に配置するようにしたものである。
【0025】
即ち、図5において、ワークWの両側には、冷却空気を吹出すノズル群5とこれらノズル群5が取囲む位置関係において吸引排気装置6とが、夫々配置されている。従って、ノズル群5から吹出された冷却空気はワークWに接触した後、跳ね返ることなくワーク表面に沿って流れることができ、その後に吸引排気装置6によりワーク表面から離脱されてブース1外に排気される。
【0026】
このように、ワークWの夫々の側にノズル群5と吸引排気装置6とを配置することにより、ノズル群5から吹出された冷却空気はワーク表面に沿って流れた後、ワークWの他方に廻り込むことなく排出されるため、より一層冷却効率を向上させることができる。
【0027】
この場合、ノズル群5の配列は、温度低下し難いワークWの中央部分やワークWの厚肉部分等を重点に配列し、吸引排気装置6は複数個をこれらノズル群を取囲んで配置することが望ましい。
【0028】
図6に示す第3実施例のアルミニウム合金材の熱処理装置においては、ワーク表面の局所的な部位における空気を排出する排気ダクトを設けたものである。
【0029】
即ち、図6において、ワークWの厚肉部W2の両側に近接させて開口が臨み且つブース1外に連通させた局所排気ダクト6Aを夫々配置している。これらの排気ダクト6Aは、ノズル群5より吹出された冷却空気により冷却ブース1内の圧力が上昇される場合に、ワークW近傍の空気を排出するよう機能する。このため、ワークWの製品形状が特に複雑な場合等において、空気の滞留が起き易いワーク表面30に開口が臨むように配置することにより、該当部位における空気を積極的に排出させ、隣接するワーク表面の冷却空気を次々と呼び込み排出させることができる。従って、ワーク表面における空気の滞留を防止して、ワークWを均一に冷却させることができる。
【0030】
図6に示す実施例では、ワークWの片側にノズル群5が配置され、ワークWの他方に全体的な排気のための吸引排気装置6(大排気ダクト)が配置されているため、冷却ブース1内の圧力が上昇し難い構造となっている。そのため、これらの局所排気ダクト6Aには空気を冷却ブース1内から吸引する吸引ファン6B若しくはエジェクタ6Cを装備させることにより、積極的にワーク表面の空気を強制排気するようにしている。
【0031】
図7に示す第4実施例のアルミニウム合金材の熱処理装置においては、多数の吹出しノズル5と多数の排気ダクト6Dとを、冷却ブース1の夫々の壁面に均等分布させて配置したものである。夫々の吹出しノズル5から吹出された冷却空気はワーク表面に接触した後にワーク表面の上下左右に拡がってワーク表面に沿って流れ、夫々隣接して開口する排気ダクト6Dから冷却ブース1外に排出される。従って、ワーク表面には空気の滞留が生ずることを防止できる。
【0032】
この場合、ワーク形状が複雑な場合には、冷却され難い厚肉部位やワーク中央部に対面する吹出しノズル5から吹出す空気流量や流速を多くしたり、空気温度を低下させることにより、ワークWを均一に冷却することができる。また、吹出しノズル5の配置密度を、冷却され難い厚肉部位やワーク中央部に高く配列することによっても、ワークWを均一に冷却することができる。勿論、これらの排気ダクト6Dに空気を冷却ブース1内から吸引する吸引ファン若しくはエジェクタを装備させることにより、積極的にワーク表面の空気を強制排気するようにすると、より一層ワークWの冷却効果を高めることができる。
【0033】
なお、上記実施形態において、冷却ブース1として、ワークWを搬送手段4により搬送しつつブース1側壁に配列したノズル5より吹付けた冷却空気により連続的に冷却するものについて説明したが、図示はしないが、搬送手段を冷却ブース内で停止させて冷却ブースの側壁に配列した吹付けノズルから冷却空気を予め設定した時間だけ吹付けて、ワークを冷却するものであってもよい。
【0034】
また、上記実施形態において、熱処理する薄肉鋳造部品Wとして、ドアビームに対するものについて説明したが、図示はしないが、自動車のアルミニウム合金材よりなる各種補強部材(レインフォース)や構造部材、例えば、サスペンションメンバを対象とするものであってもよい。
【0035】
また、ワークWとして、図示するように、一様な断面形状を備えるものに限られず、例えば、取付ボスのように、部分的に厚肉となっている部分が必要に応じてワーク面に対して散在させて配置されているものであっても、それら厚肉部に向けて冷却空気を供給するものであってもよい。この場合には、ワークは搬送装置により冷却位置で停止されているか、各吹付けノズルが搬送手段と共に移動することが望ましい。
【0036】
本実施形態においては、以下に記載する効果を奏することができる。
【0037】
(ア)アルミニウム合金からなる薄肉鋳造品Wを共晶点近傍まで昇温させ、その温度で所定時間保持し、その後、複数のノズル5から鋳造品Wに対して冷却媒体を吹付けて急冷することにより溶体化処理を行うアルミニウム合金材の熱処理装置および熱処理方法であり、前記ワークWに対面させてワークWに冷却媒体を吹付ける複数の吹付けノズル5と、前記ワーク表面の冷却媒体の吹き付け箇所と異なるワーク表面に臨んで開口し且つ冷却ブース1外に連通させた排気ダクト6と、を備え、前記吹付けノズル5からワーク表面に沿って排気ダクト6の開口に向かう冷却媒体の流動によりワークWを冷却するようにした。したがって、吹付けノズル5から放出された冷却媒体は、ワークWへの吹付け箇所から排気ダクト6の開口に向かって流動する冷却媒体の流れに沿ってワーク表面を流動し、排気ダクト6から順次排出される。このため、吹付けられた冷却媒体がワーク表面から跳ね返って後続して吹出された冷却媒体に対する流動抵抗となったりすることもなく、流速を失うことなくワーク表面を流れ、ワークWの冷却効率を向上させることができる。
【0038】
(イ)図4に示すように、複数の吹付けノズル5の噴出口と排気ダクト6の開口とは、ワークWを挟んで対向する位置に配置されていることにより、ワークWの一方の面から冷却媒体をワークWの他方の面に回り込ませることができ、数量の限定された吹き付けノズル5および排気ダクト6においても、ワークWを均一且つ効果的に冷却することができる。
【0039】
(ウ)図6に示すように、排気ダクトは、ワークWの片側に存在する冷却媒体を全体的に排出させる大排気ダクト6と、ワークWの局所的な表面に開口を隣接させて局部的な表面から冷却媒体を排出させる局所排気ダクト6Aと、から形成することにより、ワーク表面に滞留する部位30の冷却媒体を効果的に排気でき、冷却歪みの発生を抑制して均一な冷却効果を発揮させることができる。
【0040】
(エ)図5に示すように、複数の吹付けノズル5の噴出口と排気ダクト6の開口とは、同一の方向からワークWに臨んでいることにより、ワークWの一方の面から他方の面への冷却媒体の回り込みを必要とせず、効率的且つ均一にワークWを冷却することができる。
【0041】
(オ)図7に示すように、吹付けノズル5の噴出口と排気ダクト6Dの開口とは、互いに隣接した配列によりワーク表面に臨んでいることにより、吹付けノズル5から吹付けられた冷却媒体のワーク表面に沿って排気ダクト6Dの開口に流動する流動流を安定させて得ることができ、吹付けノズル5よりの冷却媒体の流量・速度や冷却媒体の温度、更には、吹付けノズル5の配置密度等を夫々調整することにより、均一な質量を備えないワークWであっても、均一な冷却速度で冷却させることができる。
【0042】
(カ)排気ダクト6、6Dには、冷却ブース1内の冷却媒体を冷却ブース1外に排出する吸引手段6B、6Cが配置されていることにより、冷却ブース1内の冷却媒体を安定的にブース1外へ排出できるため、吹付けノズル5から排気ダクト6、6Aへ向かう冷却媒体の流動流を安定且つ多量にワーク表面に沿って流すことができ、冷却効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態を示すアルミニウム合金材の熱処理方法の概略工程図。
【図2】同じく同じく熱処理工程の急冷工程を示す平面図。
【図3】ワークとしての自動車のドアビームの断面図および側面図。
【図4】急冷工程における第1実施例の冷却ブースの断面図。
【図5】急冷工程における第2実施例の冷却ブースの断面図。
【図6】急冷工程における第3実施例の冷却ブースの断面図。
【図7】急冷工程における第4実施例の冷却ブースの断面図。
【符号の説明】
【0044】
1 冷却ブース
2 加熱炉
3 保温室
4 搬送手段
5 ノズル
6、6A 吸引排気ダクト
8 ブロア
9 調整弁
10 温度センサ
11 コントローラ
【出願人】 【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【出願日】 平成18年12月8日(2006.12.8)
【代理人】 【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜

【識別番号】100114236
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 正弘

【識別番号】100120178
【弁理士】
【氏名又は名称】三田 康成

【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭


【公開番号】 特開2008−144215(P2008−144215A)
【公開日】 平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願番号】 特願2006−331773(P2006−331773)