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【発明の名称】 電解コンデンサ電極用アルミニウム箔の製造方法
【発明者】 【氏名】遠藤 昌也

【氏名】渡辺 英雄

【要約】 【課題】エッチング性および信頼性に優れ、無電解エッチングが可能な電解コンデンサ電極用アルミニウム箔を提供する。

【解決手段】質量%で、Si:0.01〜0.30%、Fe:0.01〜0.30%、Ni:0.0051〜0.05%を含有し、さらに所望によりZn、Sn、In、Gaの内、少なくとも1種以上を合計で0.0030〜0.10%含有し、残部がAlと不可避不純物からなる組成を有し、熱間圧延後の冷間圧延における圧下率が75%以上98%未満の板厚を有するアルミニウム合金圧延材に、300℃から500℃の中間焼鈍を施して電解コンデンサ電極用アルミニウム箔とする。無電解においてもエッチング時に均一なピットを高密度に形成することが可能になり、高静電容量及び高信頼性を兼ね備えた電解コンデンサ電極を低コストで製造することが可能になる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、Si:0.01〜0.30%、Fe:0.01〜0.30%、Ni:0.0051〜0.05%を含有し、、残部がAlと不可避不純物からなる組成を有し、熱間圧延後の冷間圧延における圧下率が75%以上98%未満の板厚を有するアルミニウム合金圧延材に、300℃から500℃の中間焼鈍を施すことを特徴とする電解コンデンサ電極用アルミニウム箔の製造方法。
【請求項2】
質量%で、Si:0.01〜0.30%、Fe:0.01〜0.30%、Ni:0.0051〜0.05%と、Zn、Sn、In、Gaの内、少なくとも1種以上を合計で0.0030〜0.10%含有し、残部がAlと不可避不純物からなる組成を有し、熱間圧延後の冷間圧延における圧下率が75%以上98%未満の板厚を有するアルミニウム合金圧延材に、300℃から500℃の中間焼鈍を施すことを特徴とする電解コンデンサ電極用アルミニウム箔の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、電解コンデンサの電極として用いる際にエッチングが施される電解コンデンサ電極用アルミニウム箔の製造方法に関するものであり、特に陰極用のアルミニウム箔の製造方法に好適である。
【背景技術】
【0002】
電解コンデンサの陰極に用いられるアルミニウム箔としては、純Al系と合金系(主にAl−Cu系、Al−Mn系)が用いられている。このうち純Al系は、不純物が少なく、信頼性は高いが、溶解性が低いため、電解エッチングが採用されており、コストが高いという課題を有している。一方、合金系は不純物が多く信頼性が低いとされている。例えば、Al−Cu系(例えば、特許文献1参照)は、Cuの含有によりエッチング性を向上させるものの、コンデンサに組み込んだ際に、電解液中に溶出したCuが析出し、短絡などの安全上(信頼性)の問題が発生する。また、Al−Mn系(例えば、特許文献2)は、Mnの含有によりエッチング性を向上させるものの、エッチング時に溶出したMnを含有するエッチング液の廃液処理上の問題(環境問題)が発生する。ただし、これら合金系は、溶解性が高いため、無電解エッチングが可能であり、コストの低い製造方法の採用が可能である。
したがって、信頼性重視の観点からは純Al系が選定され、コスト重視の観点では合金系が選定されている。
【特許文献1】特開2002−80927号公報
【特許文献2】特開2004−076059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで最近では、コンデンサが使用される製品の全体的な品質レベルの向上に伴い、コンデンサに対しても信頼性が重視されるようになり、電極用に使用されるアルミニウム箔も信頼性の高い純Al系が主流になる傾向にある。しかし、上記したように従来の純Al系アルミニウム箔は電解エッチングが必要であるためコスト高になるという問題点を有している。このため低コスト化が可能な無電解エッチングが可能な純Al系アルミニウム箔の開発要求が強くなっている。
これに対し、本願発明者らは、純Al系ベースにNiなどを添加することにより無電解エッチングを可能にしたアルミニウム箔を提案している。しかし、当該アルミニウム箔は、エッチングが圧延目の凹凸に集中し易く、結果的に未エッチ領域がスジ状に残存し、均一性不良や外観不良の問題が発生している。
【0004】
本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、無電解エッチングにおいても均一性の高いエッチングが可能であり、したがってコストが安く、且つ信頼性の高いアルミニウム箔の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明のうち、第1の発明の電解コンデンサ電極用アルミニウム箔の製造方法は、質量%で、Si:0.01〜0.30%、Fe:0.01〜0.30%、Ni:0.0051〜0.05%を含有し、残部がAlと不可避不純物からなる組成を有し、熱間圧延後の冷間圧延における圧下率が75%以上98%未満の板厚を有するアルミニウム合金圧延材に、300℃から500℃の中間焼鈍を施すことを特徴とする。
【0006】
第2の発明の電解コンデンサ電極用アルミニウム箔の製造方法は、質量%で、Si:0.01〜0.30%、Fe:0.01〜0.30%、Ni:0.0051〜0.05%と、Zn、Sn、In、Gaの内、少なくとも1種以上を合計で0.0030〜0.10%含有し、残部がAlと不可避不純物からなる組成を有し、熱間圧延後の冷間圧延における圧下率が75%以上98%未満の板厚を有するアルミニウム合金圧延材に、300℃から500℃の中間焼鈍を施すことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、適切な圧下率で圧延がなされた状態の冷間圧延材に中間焼鈍を行って、さらに冷間圧延を行うことで、エッチングに寄与する元素を表面に濃化させて表層でのエッチング性を向上させることができる。該アルミニウム箔を無電解エッチングする際にも、未エッチング光沢がなく、均一にエッチングピットを形成することができる。
以下に、本発明で規定するアルミニウム箔の成分限定理由および製造条件について説明する。
【0008】
Si:0.01〜0.30%
Siはエッチングの起点となる析出物を形成させる。ただし、0.01%未満では、Siの絶対量が少なく、その作用が十分発揮されない。一方、0.30%を越えると、析出が進行し、過溶解となり、エッテング形態が不均一になり、静電容量が低下する。このため、Si含有量を上記範囲に定める。なお、同様の理由で、Si含有量の下限を0.02%、上限を0.15%とするのが望ましい。
【0009】
Fe:0.01〜0.30%
Feはエッチングの起点となる析出物を形成させ、また強度を高める作用がある。ただし、0.01%未満ではFe絶対量が少なく、その作用が十分発揮されない。また、高純度化のためにコストアップとなる。一方、0.30%を越えると析出が進行し、過溶解となり、エッチング形態が不均一になり、静電容量が低下する。このため、Fe含有量を上記範囲に定める。なお、同様の理由で、Fe含有量の下限を0.02%、上限を0.15%とするのが望ましい。
【0010】
Ni:0.0051〜0.05%
NiはAl−(Ni、Fe)系の析出物を形成する。これらは、電位的に貴であり、バルクとの間で局部電池反応を起こし、エッチング性を向上させる。ただし、0.0051%未満では十分な数のAl−(Ni、Fe)系の析出物が得られず、分散が不十分の為、不均一なエッチング形態となる。一方、0.05%超では、大きな析出物が形成され易くなり、エッチングにより粗大なピットが発生し、好ましくない。このため、Ni含有量を上記範囲に定める。なお、同様の理由で、Ni含有量の下限を0.0075%、上限を0.03%とするのが望ましい。
【0011】
Zn、Sn、Ga、Inの内、少なくとも1種以上:合計0.0030〜0.10%
これら元素はNi同様に中間焼鈍により表層へ濃化し、バルク表層の電位を卑にするので所望により含有させる。これにより、表層において貴であるAl−(Ni、Fe)系析出物と卑であるバルクとの電位差が増大し、特に表層において溶解性が増大し、表面の末エッチ光沢が改善され、均一なエッチングがなされる。上記含有量が0.0030%未満であると、上記効果が不十分となり、0.10%を超えると不純物量が多くなり過ぎ、過溶解となる。このため上記元素の合計含有量を上記範囲に定める。なお、同様の理由で下限を0.0050%、上限を0.05%とするのが望ましい。
【0012】
中間焼鈍:300〜500℃
Niは300℃以上の熱処理により表層へ濃化する。したがって、適温の中間焼鈍によりNiが表層に濃化し適度な析出が起こり、エッチング性を向上させる。この中間焼鈍の温度が300℃未満であると、温度が不十分なため、Niの濃化が起こらない。一方、500℃超えると、Niが表層に濃化し過ぎ、必要以上のNiの析出が起こり過溶解を引き起すので、中間焼鈍における加熱温度を300〜500℃で行う。なお、中間焼鈍は、通常はバッチ炉において行うことができ、その際に保持時間は例えば1〜9時間とすることができる。1時間以上の保持によってNiの表層への濃化を確実に行うことができる。一方、保持時間が9時間を超えるとNiの濃化と共に過度な析出が起こり、過溶解を引き起こすので、上記保持時間が望ましい。
【0013】
圧下率:75〜98%未満
中間焼鈍までの冷間圧延は、Niを表面へ濃化させる為の駆動力となる。ただし、この圧下率が75%未満であると、圧下率が低く駆動力が不十分となり、Niの表層濃縮が十分になされない。一方、圧下率が98%以上になると、中間焼鈍後の圧下率が少なくなり、十分な強度が確保できない。したがって、上記中間焼鈍前の熱間圧延後の圧下率を上記範囲に定める。
【発明の効果】
【0014】
以上、説明したように本発明の電解コンデンサ電極用アルミニウム箔の製造方法によれば、質量%で、Si:0.01〜0.30%、Fe:0.01〜0.30%、Ni:0.0051〜0.05%を含有し、さらに所望によりZn、Sn、In、Gaの内、少なくとも1種以上を0.0030〜0.10%含有し、残部がAlと不可避不純物からなる組成を有し、熱間圧延後の冷間圧延における圧下率が75%以上98%未満の板厚を有するアルミニウム合金圧延材に、300℃から500℃の中間焼鈍を施すので、表面層に適度に濃化された元素によりエッチングが均一になされ、無電解エッチングにおいても未エッチング部が生じない良好なエッチングが可能になる。この結果、コストが低く、かつ信頼性の高い電解コンデンサ電極用アルミニウム箔を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の一実施形態を図1に基づいて説明する。
本発明の合金組成に調整したアルミニウム合金は、半連続鋳造などによる常法などにより溶製する(工程1)。本発明としては特にその溶製方法が特定されるものではない。得られた合金鋳塊は、550℃以上、1時間以上の均質化処理(工程2)を行うのが望ましい。該均質化処理は、適宜の加熱炉などを用いて行うことができ、加熱方法、加熱手段が特に限定されるものではない。均質化処理後のアルミニウム合金に対しては、常法により熱間圧延を行うことができる。熱間圧延前(工程4)には、アルミニウム合金に対し均熱する(工程3)こともでき、例えば530℃以上に加熱する。熱間圧延における条件は本発明としては特に限定をされるものではない。熱間圧延後に、箔圧延を含む冷間圧延を行う。
【0016】
冷間圧延に際しては中間焼鈍を必須で行う。この中間焼鈍前に、75%以上、98%未満の圧下率で冷間圧延(工程5)を行っておく。中間焼鈍(工程6)は、300〜500℃の加熱温度を条件にして1〜9時間の保持時間により行うことができる。中間焼鈍は、既知の焼鈍炉などを用いて行うことができ、本発明としては中間焼鈍を行う装置の構成が特に限定されるものではない。中間焼鈍後は、最終厚さの箔にまで冷間圧延(工程7)を行う。中間焼鈍後の圧下率は本発明としては特に限定をしないが、例えば70〜99%の圧下率とすることができる。
上記冷間圧延によって、例えば数十μmから100μm程度のアルミニウム箔を得ることができるが、本発明としては最終品としてのアルミニウム箔の厚さが特に限定されるものではない。
【0017】
上記各工程を経て得られたアルミニウム箔には、その後、熱処理を施すことなく、エッチング処理(工程8)がなされる。なお、冷間圧延終了後に熱処理を行うと、回復や再結晶が起こり、強度低下を引き起こすため、冷間圧延後に熱処理を施さないのが望ましい。
エッチング工程は塩酸を主体とする電解液や塩酸を含まない(1000ppm以下)電解液を用いた電解エッチングや無電解エッチングにより行うことができる。コスト面では無電解エッチングが有利である。
エッチング処理においては、ピットが高密度で均一に形成され、未エッチング部が生じることなく高い粗面化率が得られる。この箔を化成処理し、必要な耐電圧を得た後、常法により電解コンデンサに電極として組み込むことにより静電容量の高いコンデンサが得られる。本発明としては化成処理の方法が特に限定されるものではない。
【0018】
本発明は電解コンデンサの陰極として使用するのが好適であるが、本発明としてはこれに限定されるものではなく、例えば化成電圧の低い電解コンデンサの陽極としても使用することができる。
【実施例1】
【0019】
次に、本発明の実施例を説明する。
表1に示す組成(残部Alおよびその他の不純物)において、常法によりアルミニウム合金鋳塊を溶製し、該アルミニウム合金鋳塊に対し、560℃×6時間で均質化処理を行った。該鋳塊を530℃×4時間で均熱処理した後、熱間圧延で板厚7mmに仕上げた後、表1に示す圧下率で冷間圧延を行い、その後、表1に示す条件で中間焼鈍を行った。その後、最終板厚50μmに冷間圧延をして供試材を得た。
【0020】
上記供試材を、
第1段階:6M−HCl+0.5M−HPO、50℃×60sec
第2段階:2M−HCl+1.5M−HPO、40℃×180sec
の条件でエッチング処理した後、85℃のアジピン酸アンモニウム溶液中で3V化成後、静電容量を測定した。静電容量は、供試材No.1の静電容量を100とした相対評価により行った。これらの結果を表1に示した。
表1から明らかなように、本発明の供試材では、高い静電容量と高い強度とが得られている。一方、比較例は、組成と、中間焼鈍前の圧下率、中間焼鈍の温度条件のいずれかが発明の範囲外であることにより、静電容量、強度ともに本発明材よりも劣っている。
【0021】
【表1】


【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態における工程順を示すフロー図である。
【出願人】 【識別番号】000176707
【氏名又は名称】三菱アルミニウム株式会社
【出願日】 平成18年11月15日(2006.11.15)
【代理人】 【識別番号】100091926
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 幸喜


【公開番号】 特開2008−121089(P2008−121089A)
【公開日】 平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願番号】 特願2006−308814(P2006−308814)