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【発明の名称】 電解コンデンサ用アルミニウム箔の製造方法
【発明者】 【氏名】吉井 章

【氏名】渡辺 英雄

【要約】 【課題】電解コンデンサ用アルミニウム箔を一度に大量に焼鈍処理する際に、酸化皮膜を適切に形成して良好なエッチング性を得て高品質の電解コンデンサの製造を可能にする。

【解決手段】圧延後の合計1トン以上のアルミニウム箔コイルを焼鈍する際に、露点が−10℃以下であり、かつ70%以上の水素濃度雰囲気にて焼鈍処理を行なう。雰囲気維持は、例えば焼鈍処理中に、連続して、または間欠的に水素ガスを供給して行う。焼鈍雰囲気の露点および水素濃度が適切に維持されることで、焼鈍中での異常酸化皮膜成長等が回避され、高品質の酸化皮膜が形成される。その結果、良好なエッチング性が得られ、高品質の電解コンデンサが得られる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延後の合計1トン以上のアルミニウム箔コイルを焼鈍する際に、露点が−10℃以下であり、かつ70%以上の水素濃度雰囲気にて焼鈍処理を行なうことを特徴とする電解コンデンサ用アルミニウム箔の製造方法。
【請求項2】
前記焼鈍処理中に、連続して、または間欠的に水素ガスを供給して焼鈍雰囲気中における前記露点および水素濃度を維持することを特徴とする請求項1記載の電解コンデンサ用アルミニウム箔の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、電解コンデンサの電極として用いる前にエッチングが施される電解コンデンサ電極用アルミニウム箔の製造方法に関するものであり、特に中高圧用電解コンデンサに好適なものである。
【背景技術】
【0002】
電解コンデンサ用アルミニウム箔の内、200WV以上の中高電圧用陽極箔には、強酸溶液中でエッチング処理を行って表面積を拡大した後、陽極酸化により化成皮膜を成長させた箔が使用されている。このエッチングの際、ピットと呼ばれる箔断面方向へ成長した穴を多数発生させることで、表面積の拡大が行なわれる。ピットを箔断面方向に成長させるためには、アルミニウム箔の結晶方位を(100)面にする必要があり、そのため、中高圧用陽極箔に使用されるアルミニウム箔は、圧延終了後に500℃以上の高温にて焼鈍処理がされている。この焼鈍の際、アルミニウム箔表面には酸化皮膜が成長する。過度に成長した酸化皮膜はエッチング性を著しく低下させるため、焼鈍の際、極力酸素化を防止する必要がある。このため、通常、Ar、N等の不活性ガス雰囲気下で焼鈍が行なわれており、さらには、焼鈍雰囲気中の酸素濃度を管理するのが一般的である。例えば、焼鈍前に焼鈍炉内の真空引きを行った後、Ar、N等の不活性ガスを流入させて炉内の酸素濃度を低減した後、アルミニウム箔を加熱処理している(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−206941号公報(段落0009)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のように、通常、アルミニウム箔の焼鈍は、十分に酸素濃度を低下させた不活性雰囲気ガス雰囲気下で行なわれる。しかし、Ar、N等の不活性ガスを用いた場合、その熱伝導率より、アルミニウム箔の昇温速度に限界があり、生産性を高めることは困難である。
これに対し、本発明者は、水素ガスは、Ar、N等よりも熱伝導率が高く、生産性を高められることを見いだしている。
【0004】
ところが、上記製造に際しては、一般に、工業的には、厚さ0.09〜0.15mm、幅400mm〜600mmのアルミニウム箔をコイル状に巻取り、100〜1000kgのコイルを炉中で複数同時に焼鈍処理しており、通常総量としては1〜20Tonである。このように大量のアルミニウム箔を焼鈍処理する場合には、雰囲気維持の点で課題がある。すなわち、アルミニウム箔表面には、圧延油、吸着水分等が付着しており、上記のように大量のアルミニウム箔においてはこれらが焼鈍の際に大量にガス化し、酸化皮膜の異常性成長等の不具合を顕著に生じさせ、電解コンデンサの電極として用いた場合の品質を低下させるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、大量の電解コンデンサ用アルミニウム箔を焼鈍する際に、特に雰囲気中の水素濃度及び露点を厳格に管理することで、高品質なアルミニウム箔を安定に且つ効率よく量産することを可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明の電解コンデンサ用アルミニウム箔の製造方法のうち、請求項1記載の発明は、圧延後の合計1トン以上のアルミニウム箔コイルを焼鈍する際に、露点が−10℃以下であり、かつ70%以上の水素濃度雰囲気にて焼鈍処理を行なうことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の電解コンデンサ用アルミニウム箔の製造方法の発明は、請求項1記載の発明において、前記焼鈍処理中に、連続して、または間欠的に水素ガスを供給して焼鈍雰囲気中における前記露点および水素濃度を維持することを特徴とする。
【0008】
すなわち、本発明によれば、大量のアルミニウム箔を焼鈍処理する際に、焼鈍雰囲気中の水素濃度および露点が特定条件に維持されているので、水素の還元性により、圧延油、吸着水分等のガス成分を速やかに、かつ確実に分解することができる。この結果、アルミニウム箔の酸化皮膜の異常性成長などが抑止され、高品質な酸化皮膜が得られ、良好なエッチング性が確保される。また、熱伝導性が良好な水素ガスによって効率的な焼鈍処理が可能になる。
以下に、本発明で定めた製造条件を説明する。
【0009】
露点:−10℃以下
−10℃を超える露点の雰囲気で焼鈍した場合、コイル端面で酸化皮膜が異状成長を起こし、製品の幅バラツキが大きくなる。望ましくは−20℃以下とする。ただし、工業的には−50℃以上で十分である。
【0010】
水素濃度:70%以上
水素濃度が70%未満であると、熱伝導率が低くなり生産効率が低下し、ガス成分の分解も不十分になって高品質な酸化皮膜が得られない。望ましくは80%以上の濃度である。
【0011】
また、アルミニウム箔は、焼鈍温度に応じて、その表面から圧延残油、吸着水の分解によるガスが発生する。このため、雰囲気における露点、水素濃度が保てるよう、水素ガスの供給量を制御する。その供給方法としては、連続式、又は間欠式のいずれでもよい。水素ガスの供給量は、焼鈍処理されるアルミニウム箔量、炉体構造によって決定される。
【発明の効果】
【0012】
以上、説明したように本発明の電解コンデンサ用アルミニウム箔の製造方法によれば、圧延後の合計1トン以上のアルミニウム箔コイルを焼鈍する際に、露点が−10℃以下であり、かつ70%以上の水素濃度雰囲気にて焼鈍処理を行なうので、焼鈍を効率的に行うことができるとともに、焼鈍中のアルミニウム箔における酸化皮膜厚成長が適切になされ、エッチングに際し、良好なピットが形成されて高い粗面化率が得られる。その結果、高品質の電解コンデンサ用電極を効率的に製造することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の一実施形態を説明する。
本発明で用いられるアルミニウム箔は、好適にはアルミニウム純度99.9%以上のアルミニウム材を用いて製造をすることができる。該アルミニウム材では、エッチング性を向上させるために、種々の微量元素を添加したものであっても良い。
【0014】
上記製造においては、鋳造などによる溶製、均質化処理(省略も可能)、熱間圧延、冷間圧延を経て所定の厚さ(一般には20〜150μm厚)のアルミニウム箔とされ、コイル状に巻き取られる。また、連続鋳造圧延を経て、冷間圧延によりアルミニウム箔を製造しコイル状に巻き取るものであってもよい。ただし、本発明としては、アルミニウム箔に用いるアルミニウム材の組成、焼鈍に至るまでの製造方法が特に限定をされるものではなく、アルミニウム箔の厚さが上記に限定されるものでもない。
【0015】
前記工程により冷間圧延後に得られるアルミニウム箔は、本発明で製造条件を定める焼鈍が施される。該焼鈍では、焼鈍炉が用いられるが、本発明としては焼鈍炉は雰囲気の維持ができるものであればよく、焼鈍炉の構成が特に限定されるものではない。
【0016】
上記焼鈍では、焼鈍雰囲気中の水素濃度を70%以上にすることが必要であり、残部としてはAr、N等の不活性ガスを含むものでもよく、水素濃度100%でもよい。また、雰囲気中の露点は−10℃以下にする必要がある。露点維持は、露点が十分に低い水素ガスを用いることにより行うことができる。尚、水素濃度は、焼鈍コイル濃度200℃までに満たす必要がある(200℃以上から皮膜の生成が生じるため)。
【0017】
また、焼鈍炉には、アルミニウム箔コイルを総量で1トン以上収容する。アルミニウム箔コイルの数は任意であり、本発明としてはその数は特に限定されず、一つでも良い。
焼鈍炉に雰囲気ガスを充填終了後、焼鈍(加熱)を開始する。この焼鈍に際しては、加熱によりアルミニウム箔コイルから圧延油や吸着水分等に基づくガスが発生し、雰囲気中における水素濃度および露点に影響を与える。このため焼鈍中に、焼鈍温度を維持しつつ、露点が十分に低い水素ガスを焼鈍炉内に連続的または間欠的に供給して、雰囲気中の水素濃度および露点を適切に維持する。
また、焼鈍における焼鈍温度、焼鈍時間は本発明としては特定のものに限定されるものではないが、例えば、焼鈍温度500〜580℃、焼鈍時間1〜24時間を挙げることができる。
上記焼鈍により、アルミニウム箔には、好適には1〜3nm厚の酸化皮膜がばらつきが少なく均質に形成される。
【0018】
上記焼鈍により得られた電解コンデンサ用アルミニウム箔は、エッチングに供する。該エッチングは電解エッチング、化学エッチングを問わないものであり、所望のエッチング方法を採用することができる。該エッチングでは、アルミニウム箔表面にバラツキがなく均質な酸化皮膜が形成されているため、良好なエッチングが均等になされ、高くて均質な粗面化率が得られる。この電解コンデンサ用アルミニウム箔を電極として用いた電解コンデンサは優れた静電容量を得ることができる。
【0019】
本発明の電解コンデンサ用アルミニウム箔は、200WV以上の中高電圧用陽極に好適なものであるが、低圧用の電極に用いることも可能であり、また陰極用に用いることも可能である。
【0020】
以上、本発明について上記各実施形態に基づいて説明をしたが、本発明は、上記説明の内容に限定をされるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲で適宜の変更が可能である。
【実施例1】
【0021】
4N5純度のアルミニウム地金を用い、質量比で、Si:10〜20ppm、Fe:10〜20ppm、Cu:20〜70ppm、Pb:0.2〜2.0ppm、その他Alと不回避不純物からなる高純度スラブを作成した。
このスラブを面削し、530〜600℃×1Hr以上の均熱処理を行なった後、500〜600℃で熱間圧延を開始し、250〜350℃で熱間圧延を終了した。その際、圧下率は90〜99%とした。
熱間圧延終了後、97%以上の圧下にて冷間圧延を行なった。冷間圧延後、200〜300℃×2〜10Hrの中間焼鈍を行い、さらに10〜20%の付加圧延を行い、100〜130μmのアルミニウム箔を得た。
得られたアルミニウム箔を、500mm幅に切断し、100〜800kgのコイルを作成した。
【0022】
これらのコイルを、表1に示す焼鈍量となるように複数を焼鈍炉内に収容し、以下の条件で焼鈍処理を行なった。
すなわち、焼鈍処理は、100Pa以下まで真空引きした後、Nガスにて復圧を行なった後、再度100Pa以下まで真空引きを行い、Nガスにて復圧を行った。
復圧後、焼鈍を開始し、同時に、水素ガスの供給を行なった。水素ガスの供給量により、表1に示すように水素濃度および露点を変えた雰囲気とした。尚、水素雰囲気調整は、コイル温度200℃までに調整した。その後、各雰囲気で、それぞれ500〜580℃までコイル温度を上昇させ、6時間保持した後、冷却を行なった。コイル温度が200℃になった時点で、Nを供給し、炉内の水素ガスを置換した後、コイルの炉出しを行なった。
【0023】
得られた各焼鈍コイルの外周10枚を除去し、酸化皮膜が安定した領域からサンプリングを行った。
酸化皮膜の測定は、次のように行なった。
【0024】
特級試薬を用い、ホウ酸40g/l+四ホウ酸20g/lの溶液を作成した。対極は白金電極、電極電位は銀塩化銀電極を用いた。常温にて、アルミニウム箔をホウ酸溶液に浸漬し、北斗電工(株)HZ−3000を用い、アルミニウム箔の自然電位より、750mV/minで変化させ、その際発生する電流値を測定した。得られた、電流−電位曲線より、図1に示すように、電流が急増する電位を皮膜破壊電位とし、自然電位−皮膜破壊電位間の電位差に1.3を乗じて酸化皮膜厚さ(nm)とした。
上記方法により、500mm幅端面より10mm、250mm、490mm位置をL、C、R部とし、皮膜厚さを計測した。得られた幅方向3点より、(最大−最小)/(最小)×100にてバラツキ(R%)とし、それぞれのデータを表1に示した。
また、焼鈍の際、コイル端面に熱電対をセットし、コイル温度上昇速度を計測し、同様に表1に示した。なお、炉体の温度上昇速度は、150℃/Hrで制御した。
【0025】
表1に示すように、露点が−10℃以下で水素濃度が70%以上の状態を維持した本発明の試験例では、焼鈍の結果、酸化皮膜厚さは適切な厚さとなっており、また、中央及び端部ともにばらつきが小さく、均質な酸化皮膜が形成されている。また、コイル昇温速度が速く、製造効率に優れている。
【0026】
一方、水素濃度が低い比較例1では、酸化皮膜厚のばらつきは小さいものの昇温速度が遅く、効率が悪い。比較例2は、露点が高く酸化皮膜幅方向でバラツキが発生している。
比較例3は、露点が高く水素濃度が低いため酸化皮膜バラツキおよび昇温速度低下が発生している。比較例4は、焼鈍処理量が少ないため、露点、水素濃度は範囲外であり、幅バラツキは小さく、昇温速度も速いが、一度に処理できる量が少なく製造効率が悪い。また若干端部変色が発生している。
【0027】
【表1】


【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】アルミニウム箔における皮膜破壊電位を示す電位−電流密度グラフである。
【出願人】 【識別番号】000176707
【氏名又は名称】三菱アルミニウム株式会社
【出願日】 平成18年11月6日(2006.11.6)
【代理人】 【識別番号】100091926
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 幸喜


【公開番号】 特開2008−115428(P2008−115428A)
【公開日】 平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願番号】 特願2006−299857(P2006−299857)