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【発明の名称】 線材の製造方法、線材の製造装置および銅合金線
【発明者】 【氏名】高橋 功

【氏名】北里 敬輔

【要約】 【課題】連続焼鈍によって時効処理を行うことができる、線材の製造方法、線材の製造装置および配線用電線導体等に用いられる銅合金線を提供する。

【解決手段】線材繰り出し装置と、線材巻き取り装置と、線材繰り出し装置および線材巻き取り装置の間に設けられて、通過経路に沿って折り返して時効析出型銅合金線材が通過する走間焼鈍装置とを備えた線材の製造装置。走間焼鈍装置の上流側にタンデムに時効析出型銅合金線材を昇温する通電加熱焼鈍装置をさらに備えていてもよい。走間焼鈍装置の上流側に時効析出型銅合金線材を溶体化処理する別の通電加熱装置をさらにタンデムに備えていてもよい。また、走間焼鈍装置のかわりに通電加熱装置をタンデムに接続して時効処理のための走間加熱装置を構成してもよい。また、これらの装置を用いることにより、直径が0.03mm以上3mm以下の範囲において時効析出型銅合金線を得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時効析出型銅合金の線材を繰り出すステップと、
繰り出した前記線材を走間加熱して時効処理を行うステップと、
前記時効処理が施された前記線材を巻き取るステップを備えた
線材の製造方法。
【請求項2】
前記時効処理を行うステップは、繰り出した前記線材を、走間加熱の際の通過経路に沿って複数回折り返して所定の温度内に所定時間保持しつつ通過させるステップである、請求項1に記載の線材の製造方法。
【請求項3】
前記時効処理は、300℃から600℃の範囲内の温度で、10秒超から1200秒の間行われる、請求項2に記載の線材の製造方法。
【請求項4】
前記時効処理に先立って、前記線材を通電加熱するステップを備えた請求項2または請求項3に記載の線材の製造方法。
【請求項5】
前記通電加熱するステップは、300℃から600℃の範囲内の温度に、5秒以下の時間で、前記線材が昇温されるステップである、請求項4に記載の線材の製造方法。
【請求項6】
前記通電加熱に先立って、前記線材に溶体化処理を施すステップを備えた請求項4に記載の線材の製造方法。
【請求項7】
前記時効処理を行うステップは、繰り出した前記線材を、それぞれ少なくとも1つの異なる通電加熱領域と、前記通電加熱領域の間で無通電により温度低下する領域とを通過させて、前記線材を所定範囲内の温度に保持して、時効処理を行うステップである、請求項1に記載の線材の製造方法。
【請求項8】
前記異なる通電加熱領域が、線材を所定の温度に昇温する通電加熱領域と、所定の温度範囲内に線材を保持する通電加熱領域とからなっており、前記線材を時効温度上限と時効温度下限との間の温度に保持する、請求項7に記載の線材の製造方法。
【請求項9】
前記時効処理は、300℃から600℃の範囲内の温度で、10秒超から1200秒の間行われる、請求項7に記載の線材の製造方法。
【請求項10】
前記時効処理に先立って、前記線材に溶体化処理を施すステップを備えた請求項7に記載の線材の製造方法。
【請求項11】
前記溶体化処理は、800℃以上の温度で、5秒以下の間行われる、請求項6または10に記載の線材の製造方法。
【請求項12】
前記線材は、直径が0.03mm以上3mm以下であることを特徴とする、請求項1から11のいずれか1項に記載の線材の製造方法。
【請求項13】
前記線材は、撚線であることを特徴とする、請求項1から12のいずれか1項に記載の線材の製造方法。
【請求項14】
線材繰り出し装置と、
線材巻き取り装置と、
前記線材繰り出し装置および前記線材巻き取り装置の間に設けられた走間焼鈍装置とを備え、
該走間焼鈍装置は、時効析出型銅合金の線材を、該線材の時効温度上限と時効温度下限との間の温度に保持しながら順次通過するように構成されている
線材の製造装置。
【請求項15】
前記走間焼鈍装置は、前記線材の温度を長手方向でほぼ一定に加熱する装置であり、前記線材が通過経路に沿って複数回折り返して通過するように構成されている、請求項14に記載の線材の製造装置。
【請求項16】
300℃から600℃の範囲内の温度で、10秒超から1200秒の間、前記線材が、前記走間焼鈍装置内に保持される、請求項15に記載の線材の製造装置。
【請求項17】
前記走間焼鈍装置の上流側に、前記線材を昇温する通電加熱装置をさらに備えている、請求項15に記載の線材の製造装置。
【請求項18】
300℃から600℃の範囲内の温度に、5秒以下の時間で、前記線材が、前記通電加熱装置にて昇温される、請求項17に記載の線材の製造装置。
【請求項19】
前記走間焼鈍装置の上流側に、前記線材を溶体化処理する溶体化処理装置を備えていることを特徴とする、請求項15に記載の線材の製造装置。
【請求項20】
800℃以上の温度で、5秒以下の間、前記線材が、前記溶体化処理装置にて加熱される、請求項19に記載の線材の製造装置。
【請求項21】
前記走間焼鈍装置がその内部に複数対のガイドロールを備えており、前記線材が前記ガイドロール間を複数回折り返して通過する、請求項15から20の何れか1項に記載の線材の製造装置。
【請求項22】
前記走間焼鈍装置は、複数の通電加熱装置からなり、前記線材を、該線材の時効温度上限と時効温度下限との間の温度に保持しながら前記線材が順次通過するように構成されている、請求項14に記載の線材の製造装置。
【請求項23】
前記複数の通電加熱装置間における前記線材の温度が、前記時効温度下限を下回らないように構成されている、請求項22に記載の線材の製造装置。
【請求項24】
300℃から600℃の範囲内の温度で、10秒超から1200秒の間、前記線材が前記走間焼鈍装置内に保持される、請求項22に記載の線材の製造装置。
【請求項25】
前記複数の通電加熱装置は、それぞれ1つ以上の昇温用通電加熱装置および温度保持用通電加熱装置からなっており、前記昇温用通電加熱装置によって、所定の温度まで前記線材を昇温し、前記温度保持用通電加熱装置によって前記時効温度上限と時効温度下限との間の温度に前記線材の温度を保持する、請求項24に記載の線材の製造装置。
【請求項26】
前記昇温用通電加熱装置および前記温度保持用通電加熱装置は、線材に通電するガイドロールを備えている、請求項25に記載の線材の製造装置。
【請求項27】
前記走間焼鈍装置の上流側に前記線材を溶体化処理する溶体化処理装置を備えている、請求項22に記載の線材の製造装置。
【請求項28】
800℃以上の温度で、5秒以下の間、前記線材が前記溶体化処理装置にて加熱される、請求項27に記載の線材の製造装置。
【請求項29】
前記走間焼鈍装置を通過する前記線材は、直径が0.03mm以上3mm以下であることを特徴とする、請求項14から28のいずれか1項に記載の線材の製造装置。
【請求項30】
前記走間焼鈍装置を通過する前記線材は、撚線であることを特徴とする、請求項14から28のいずれか1項に記載の線材の製造装置。
【請求項31】
時効析出型銅合金により形成される銅合金線であって、直径が0.03mm以上3mm以下に形成された後、時効処理されることにより製造されたことを特徴とする銅合金線。
【請求項32】
時効析出型銅合金により形成される銅合金線であって、溶体化処理された後、伸線されて直径が0.03mm以上3mm以下に形成され、その後時効処理されることにより製造されたことを特徴とする銅合金線。
【請求項33】
時効析出型銅合金により形成される銅合金線であって、直径が0.03mm以上3mm以下に形成され、複数本撚り合わされた後、時効処理されることにより製造されたことを特徴とする銅合金線。
【請求項34】
時効析出型銅合金により形成される銅合金線であって、溶体化処理された後、伸線されて直径が0.03mm以上3mm以下に形成され、複数本撚り合わされた後、時効処理されることにより製造されたことを特徴とする銅合金線。
【請求項35】
前記時効析出型銅合金は、Cu−Ni−Si系銅合金であって、Niを1.5〜4.0質量%、Siを0.3〜1.1質量%含有し、残部がCuと不可避不純物からなることを特徴とする、請求項31から34までのいずれか1項に記載の銅合金線。
【請求項36】
前記時効析出型銅合金は、Cu−Ni−Si系銅合金であって、Niを1.5〜4.0質量%、Siを0.3〜1.1質量%含有し、さらにAg、Mg、Mn、Zn、Sn、P、Fe、CrおよびCoからなる群から選択される少なくとも1つの元素を0.01〜1.0質量%含有し、残部がCuと不可避不純物からなることを特徴とする、請求項31から34までのいずれか1項に記載の銅合金線。
【請求項37】
前記時効析出型銅合金は、Cu−Cr系銅合金であって、Crを0.1〜1.5質量%含有し、残部がCuと不可避不純物からなることを特徴とする、請求項31から34までのいずれか1項に記載の銅合金線。
【請求項38】
前記時効析出型銅合金は、Cu−Cr系銅合金であって、Crを0.1〜1.5質量%含有し、さらにZn、Sn、Zrからなる群から選択される少なくとも1つの元素を0.1〜1.0質量%含有し、残部がCuと不可避不純物からなることを特徴とする、請求項31から34までのいずれか1項に記載の銅合金線。
【請求項39】
前記時効析出型銅合金は、Cu−Ti系銅合金であって、Tiを1.0〜5.0質量%含有し、残部がCuと不可避不純物からなることを特徴とする、請求項31から34までのいずれか1項に記載の銅合金線。
【請求項40】
前記時効析出型銅合金は、Cu−Fe系銅合金であって、Feを1.0〜3.0質量%含有し、残部がCuと不可避不純物かからなることを特徴とする、請求項31から34までのいずれか1項に記載の銅合金線。
【請求項41】
前記時効析出型銅合金は、Cu−Fe系銅合金であって、Feを1.0〜3.0質量%含有し、さらにP、Znの少なくとも1つの元素を0.01〜1.0質量%含有し、残部がCuと不可避不純物からなることを特徴とする、請求項31から34までのいずれか1項に記載の銅合金線。
【請求項42】
前記時効析出型銅合金は、Cu−Ni−Ti系銅合金であって、Niを1.0〜2.5質量%、Tiを0.3〜0.8質量%含有し、残部がCuと不可避不純物からなることを特徴とする、請求項31から34までのいずれか1項に記載の銅合金線。
【請求項43】
前記時効析出型銅合金は、Cu−Ni−Ti系銅合金であって、Niを1.0〜2.5質量%、Tiを0.3〜0.8質量%含有し、さらにAg、Mg、ZnおよびSnからなる群から選択される少なくとも1つの元素を0.01〜1.0質量%含有し、残部がCuと不可避不純物からなることを特徴とする、請求項31から34までのいずれか1項に記載の銅合金線。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車およびロボットの配線用電線、電子機器のリード線、コネクタピン、コイルバネ等に用いられる線材の製造方法、線材の製造装置および銅合金線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の配線用電線として軟銅線を撚り合わせた撚線を導体とし、この導体に絶縁体を同心円状に被覆した電線が使用されてきた。この分野では、自動車の高機能化により各種機能を果たすため電線の使用が増えて電線重量が増加している。一方で、車両重量の軽量化が要求され、このため電線導体の細径化・高強度化が求められている。
【0003】
それらに対応できるような、機械的、電気的特性に優れる電線導体としては、析出型合金線材が挙げられる。時効析出型の合金線材の時効熱処理には、析出を生じさせるためにある程度の時間が必要であり、通常下記のタイプの炉が使用されている。
1)バッチ焼鈍炉(ベル型、ポット型)
2)連続バッチ焼鈍炉(バルクヘッド型、ローラーハース型)
上述したタイプの炉では、何れも線材をスプールに巻く、またはスタンド材、タバ材にして熱処理を行うため、単線の連続焼鈍装置を使用する場合に比べ、線材の生産性が低い。
【0004】
生産性の高い線材の焼鈍方法として、加熱した炉内に線材を連続的に通す走間焼鈍炉、および、線材に電流を流し自身から発生するジュール熱により焼鈍を行う電流焼鈍法があるが、何れの方法も高温・短時間の熱処理であるため、時効熱処理は不可能であった。
例えば、Cu-Zr合金を走間炉で時効する方法が開示されている(特許文献1:特開平11−256295)。また、Cu-Zr合金を通電加熱で時効する方法が開示されている(特許文献2:特開2000−160311)。
【特許文献1】特開平11−256295号公報
【特許文献2】特開2000−160311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したCu-Zr合金を走間炉で時効する方法によると、走間炉内での熱処理時間は1〜10秒であり、このような短時間では、一般の析出型合金の時効処理は不可能である。 上述したCu-Zr合金を通電加熱で時効する方法によると、熱処理時間は0.3〜4秒であり、このような短時間では、一般の析出型合金の時効処理は不可能である。
さらに、上述したバッチ焼鈍炉、連続バッチ焼鈍炉は、設備費が高価であり、設置するのに広大なスペースを要する。また、例えば撚線機などとタンデム(複数の処理を連続して行うよう、装置を縦列に配置して線材を通すことで、複数の処理を1つの工程とすること)に配置することはできず、「焼鈍」で一工程となる。さらに、焼鈍温度が高い場合には線同士が粘着し、次工程での繰り出し時に表面傷となる。上述したように、従来の走間焼鈍、電流焼鈍では焼鈍時間が短く、時効熱処理は不可能である。
【0006】
このような問題点に鑑み、本発明は、連続焼鈍によって時効処理を行うことができる、配線用電線導体等に用いられる線材の製造装置および線材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は、上述した問題点を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、走間焼鈍装置を通過する線材の走間焼鈍装置内に存在する時間を長くする、即ち、線材を通過経路に沿って複数回折り返して通過させて、走間焼鈍装置内に滞留する時間を長くすると、時効処理に必要な時間、所定の温度に保持することができ、連続焼鈍によって時効処理ができることが判明した。
さらに、走間焼鈍装置内に、複数の通電加熱装置を所定の間隔で縦列に配置し、個々の通電加熱装置で線材を加熱し、通電加熱装置間の無通電区間を通過時に温度低下させると、時効処理に必要な時間、時効温度上限と時効温度下限との間の温度に線材を維持することができ、連続焼鈍によって時効処理ができることが判明した。
【0008】
さらに、走間焼鈍装置の上流側に溶体化専用の通電加熱装置をタンデムに接続すると、溶体化−時効工程の連続製造が可能になることが判明した。さらに、伸線装置を組み合わせることによって、溶体化−伸線−時効、溶体化−時効−伸線、溶体化−伸線−時効−伸線等の工程の連続製造が可能になり、様々な特性の材料を得ることができることが判明した。この発明は上述した研究結果に基づきなされたものである。
【0009】
この発明の線材の製造方法の第1の態様は、時効析出型銅合金の線材を繰り出すステップと、繰り出した前記線材を走間加熱して時効処理を行うステップと、前記時効処理が施された前記線材を巻き取るステップを備えた線材の製造方法である。
【0010】
この発明の線材の製造方法の第2の態様は、前記時効処理を行うステップは、繰り出した前記線材を、走間加熱の際の通過経路に沿って複数回折り返して所定の温度内に所定時間保持しつつ通過させるステップである、線材の製造方法である。
【0011】
この発明の線材の製造方法の第3の態様は、前記時効処理は、300℃から600℃の範囲内の温度で、10秒超から1200秒の間行われる、線材の製造方法である。
【0012】
この発明の線材の製造方法の第4の態様は、前記時効処理に先立って、前記線材を通電加熱するステップを備えた線材の製造方法である。
【0013】
この発明の線材の製造方法の第5の態様は、前記通電加熱するステップは、300℃から600℃の範囲内の温度に、5秒以下の時間で、前記線材が昇温されるステップである、線材の製造方法である。
【0014】
この発明の線材の製造方法の第6の態様は、前記通電加熱に先立って、前記線材に溶体化処理を施すステップを備えた線材の製造方法である。
【0015】
この発明の線材の製造方法の第7の態様は、前記時効処理を行うステップは、繰り出した前記線材を、それぞれ少なくとも1つの異なる通電加熱領域と、前記通電加熱領域の間で無通電により温度低下する領域とを通過させて、前記線材を所定範囲内の温度に保持して、時効処理を行うステップである、線材の製造方法である。
【0016】
この発明の線材の製造方法の第8の態様は、前記異なる通電加熱領域が、線材を所定の温度に昇温する通電加熱領域と、所定の温度範囲内に線材を保持する通電加熱領域とからなっており、前記線材を時効温度上限と時効温度下限との間の温度に保持する、線材の製造方法である。
【0017】
この発明の線材の製造方法の第9の態様は、前記時効処理は、300℃から600℃の範囲内の温度で、10秒超から1200秒の間行われる、線材の製造方法である。
【0018】
この発明の線材の製造方法の第10の態様は、前記時効処理に先立って、前記線材に溶体化処理を施すステップを備えた線材の製造方法である。
【0019】
この発明の線材の製造方法の第11の態様は、前記溶体化処理は、800℃以上の温度で、5秒以下の間行われる、線材の製造方法である。
【0020】
この発明の線材の製造方法の第12の態様は、前記線材は、直径が0.03mm以上3mm以下であることを特徴とする、線材の製造方法である。
【0021】
この発明の線材の製造方法の第13の態様は、前記線材は、撚線であることを特徴とする、線材の製造方法である。
【0022】
この発明の線材の製造方法の第1の態様は、線材繰り出し装置と、線材巻き取り装置と、前記線材繰り出し装置および前記線材巻き取り装置の間に設けられた走間焼鈍装置とを備え、該走間焼鈍装置は、時効析出型銅合金の線材を、該線材の時効温度上限と時効温度下限との間の温度に保持しながら順次通過するように構成されている線材の製造装置である。
【0023】
この発明の線材の製造方法の第2の態様は、前記走間焼鈍装置は、前記線材の温度を長手方向でほぼ一定に加熱する装置であり、前記線材が通過経路に沿って複数回折り返して通過するように構成されている、線材の製造装置である。
【0024】
この発明の線材の製造方法の第3の態様は、300℃から600℃の範囲内の温度で、10秒超から1200秒の間、前記線材が、前記走間焼鈍装置内に保持される、線材の製造装置である。
【0025】
この発明の線材の製造方法の第4の態様は、前記走間焼鈍装置の上流側に、前記線材を昇温する通電加熱装置をさらに備えている、線材の製造装置である。
【0026】
この発明の線材の製造方法の第5の態様は、300℃から600℃の範囲内の温度に、5秒以下の時間で、前記線材が、前記通電加熱装置にて昇温される、線材の製造装置である。
【0027】
この発明の線材の製造方法の第6の態様は、前記走間焼鈍装置の上流側に、前記線材を溶体化処理する溶体化処理装置を備えていることを特徴とする、線材の製造装置である。
【0028】
この発明の線材の製造方法の第7の態様は、800℃以上の温度で、5秒以下の間、前記線材が、前記溶体化処理装置にて加熱される、線材の製造装置である。
【0029】
この発明の線材の製造方法の第8の態様は、前記走間焼鈍装置がその内部に複数対のガイドロールを備えており、前記線材が前記ガイドロール間を複数回折り返して通過する、線材の製造装置である。
【0030】
この発明の線材の製造方法の第9の態様は、前記走間焼鈍装置は、複数の通電加熱装置からなり、前記線材を、該線材の時効温度上限と時効温度下限との間の温度に保持しながら前記線材が順次通過するように構成されている、線材の製造装置である。
【0031】
この発明の線材の製造方法の第10の態様は、前記複数の通電加熱装置間における前記線材の温度が、前記時効温度下限を下回らないように構成されている、線材の製造装置である。
【0032】
この発明の線材の製造方法の第11の態様は、300℃から600℃の範囲内の温度で、10秒超から1200秒の間、前記線材が前記走間焼鈍装置内に保持される、線材の製造装置である。
【0033】
この発明の線材の製造方法の第12の態様は、前記複数の通電加熱装置は、それぞれ1つ以上の昇温用通電加熱装置および温度保持用通電加熱装置からなっており、前記昇温用通電加熱装置によって、所定の温度まで前記線材を昇温し、前記温度保持用通電加熱装置によって前記時効温度上限と時効温度下限との間の温度に前記線材の温度を保持する、線材の製造装置である。
【0034】
この発明の線材の製造方法の第13の態様は、前記昇温用通電加熱装置および前記温度保持用通電加熱装置は、線材に通電するガイドロールを備えている、線材の製造装置である。
【0035】
この発明の線材の製造方法の第14の態様は、前記走間焼鈍装置の上流側に前記線材を溶体化処理する溶体化処理装置を備えている、線材の製造装置である。
【0036】
この発明の線材の製造方法の第15の態様は、800℃以上の温度で、5秒以下の間、前記線材が前記溶体化処理装置にて加熱される、線材の製造装置である。
【0037】
この発明の線材の製造方法の第16の態様は、前記走間焼鈍装置を通過する前記線材は、直径が0.03mm以上3mm以下であることを特徴とする、線材の製造装置である。
【0038】
この発明の線材の製造方法の第17の態様は、前記走間焼鈍装置を通過する前記線材は、撚線であることを特徴とする、線材の製造装置である。
【0039】
この発明の銅合金線の第1の態様は、時効析出型銅合金により形成される銅合金線であって、直径が0.03mm以上3mm以下に形成された後、時効処理されることにより製造されたことを特徴とする銅合金線である。
【0040】
この発明の銅合金線の第2の態様は、時効析出型銅合金により形成される銅合金線であって、溶体化処理された後、伸線されて直径が0.03mm以上3mm以下に形成され、その後時効処理されることにより製造されたことを特徴とする銅合金線である。
【0041】
この発明の銅合金線の第3の態様は、時効析出型銅合金により形成される銅合金線であって、直径が0.03mm以上3mm以下に形成され、複数本撚り合わされた後、時効処理されることにより製造されたことを特徴とする銅合金線である。
【0042】
この発明の銅合金線の第4の態様は、時効析出型銅合金により形成される銅合金線であって、溶体化処理された後、伸線されて直径が0.03mm以上3mm以下に形成され、複数本撚り合わされた後、時効処理されることにより製造されたことを特徴とする銅合金線である。
【0043】
この発明の銅合金線の第5の態様は、前記時効析出型銅合金は、Cu−Ni−Si系銅合金であって、Niを1.5〜4.0質量%、Siを0.3〜1.1質量%含有し、残部がCuと不可避不純物からなることを特徴とする銅合金線である。
【0044】
この発明の銅合金線の第6の態様は、前記時効析出型銅合金は、Cu−Ni−Si系銅合金であって、Niを1.5〜4.0質量%、Siを0.3〜1.1質量%含有し、さらにAg、Mg、Mn、Zn、Sn、P、Fe、CrおよびCoからなる群から選択される少なくとも1つの元素を0.01〜1.0質量%含有し、残部がCuと不可避不純物からなることを特徴とする銅合金線である。
【0045】
この発明の銅合金線の第7の態様は、前記時効析出型銅合金は、Cu−Cr系銅合金であって、Crを0.1〜1.5質量%含有し、残部がCuと不可避不純物からなることを特徴とする銅合金線である。
【0046】
この発明の銅合金線の第8の態様は、前記時効析出型銅合金は、Cu−Cr系銅合金であって、Crを0.1〜1.5質量%含有し、さらにZn、Sn、Zrからなる群から選択される少なくとも1つの元素を0.1〜1.0質量%含有し、残部がCuと不可避不純物からなることを特徴とする銅合金線である。
【0047】
この発明の銅合金線の第9の態様は、前記時効析出型銅合金は、Cu−Ti系銅合金であって、Tiを1.0〜5.0質量%含有し、残部がCuと不可避不純物からなることを特徴とする銅合金線である。
【0048】
この発明の銅合金線の第10の態様は、前記時効析出型銅合金は、Cu−Fe系銅合金であって、Feを1.0〜3.0質量%含有し、残部がCuと不可避不純物かからなることを特徴とする銅合金線である。
【0049】
この発明の銅合金線の第11の態様は、前記時効析出型銅合金は、Cu−Fe系銅合金であって、Feを1.0〜3.0質量%含有し、さらにP、Znの少なくとも1つの元素を0.01〜1.0質量%含有し、残部がCuと不可避不純物からなることを特徴とする銅合金線である。
【0050】
この発明の銅合金線の第12の態様は、前記時効析出型銅合金は、Cu−Ni−Ti系銅合金であって、Niを1.0〜2.5質量%、Tiを0.3〜0.8質量%含有し、残部がCuと不可避不純物からなることを特徴とする銅合金線である。
【0051】
この発明の銅合金線の第13の態様は、前記時効析出型銅合金は、Cu−Ni−Ti系銅合金であって、Niを1.0〜2.5質量%、Tiを0.3〜0.8質量%含有し、さらにAg、Mg、ZnおよびSnからなる群から選択される少なくとも1つの元素を0.01〜1.0質量%含有し、残部がCuと不可避不純物からなることを特徴とする銅合金線である。
【発明の効果】
【0052】
本発明の線材の製造方法によると、連続焼鈍で時効熱処理を行うことができる。さらに、走間焼鈍装置を様々な連続装置(例えば、撚線機、被覆機、伸線機)とタンデムに配置することができるので、工程短縮を実現することができる。
【0053】
さらに、溶体化専用の通電加熱装置をこの発明の走間焼鈍装置の上流側に設置することによって、「溶体化−時効」工程の連続製造が可能になり、また伸線機を走間焼鈍装置の前後に入れることによって、「溶体化−伸線−時効」、「溶体化−時効−伸線」、「溶体化−伸線−時効−伸線」工程の連続製造が可能になり、様々な特性の材料を得ることができる。
【0054】
また、本発明の銅合金線は、上記製造方法により直径が0.03mm以上3mm以下の場合に好適に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
以下、この発明の線材の製造装置および製造方法を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0056】
この発明の線材の製造装置の基本的な態様は、線材繰り出し装置と、線材巻き取り装置と、前記線材繰り出し装置および前記線材巻き取り装置の間に設けられた走間焼鈍装置とを備え、該走間焼鈍装置は、時効析出型銅合金の線材を、該線材の時効温度上限と時効温度下限との間の温度に保持しながら順次通過するように構成されている線材の製造装置である。また、この発明の線材の製造方法の基本的な態様は、時効析出型銅合金の線材を繰り出すステップと、繰り出した前記線材を走間加熱して時効処理を行うステップと、前記時効処理が施された前記線材を巻き取るステップを備えた線材の製造方法である。以下、具体的な態様について説明する。
【0057】
この発明の線材の製造装置の1つの態様は、線材繰り出し装置と、線材巻き取り装置と、前記線材繰り出し装置および前記線材巻き取り装置の間に設けられた走間焼鈍装置とを備え、該走間焼鈍装置は、時効析出型銅合金の線材を、該線材の時効温度上限と時効温度下限との間の温度に保持しながら順次通過するように構成され、前記走間焼鈍装置は、前記線材の温度を長手方向でほぼ一定に加熱する装置であり、前記線材が通過経路に沿って複数回折り返して通過するように構成されている線材の製造装置である。
【0058】
また、上述した走間焼鈍装置の上流側に、タンデムに時効析出型銅合金線材を昇温する通電加熱焼鈍装置をさらに備えていてもよい。この通電加熱焼鈍装置は、走間焼鈍装置に送り込まれる線材を、この線材の時効温度上限と時効温度下限との間の温度に予熱するものである。
さらに、上述した走間焼鈍装置の上流側に(走間焼鈍装置の上流側に通電加熱焼鈍装置を備えている場合は、さらにその上流側に)、時効析出型銅合金線材を溶体化処理する通電加熱装置(溶体化処理装置)をさらにタンデムに備えていてもよい。
なお、本願では、上流とは線材の繰り出し側のことであり、下流とは線材の巻き取り側である。
【0059】
図1は、この発明に係る走間焼鈍装置(即ち走間炉設備)を説明する模式図である。図1に示すように、この発明の線材製造装置は、線材繰り出し装置1と、線材巻き取り装置5と、線材繰り出し装置1および線材巻き取り装置5の間に設けられた走間焼鈍装置3とを備えている。この走間焼鈍装置3は、時効析出型銅合金の線材6がこの通過経路に沿って複数回折り返されて通過するように構成されている。
【0060】
図1に示すこの発明の線材の製造装置においては、熱処理時間(即ち、時効処理時間)を稼ぐために、走間焼鈍装置3内で線材を複数回折り返すなどの方向転換をさせて、線材6が走間焼鈍装置3内に、従来よりも長い所定の時間滞留して、所定の時効処理時間を確保している。このことにより、線材6に対して必要な時効処理が施される。
ここで、走間焼鈍装置とは、線材を所定の速度で通過させながら加熱して焼鈍する装置のことをいう。この実施の態様に関して、走間焼鈍装置3は、この内部を通過する線材6の温度をこの長手方向でほぼ一定に加熱する装置であることが好ましい。走間焼鈍装置3は、時効処理を行う装置であり、所定の温度で保持を行う必要があるためである。走間焼鈍装置3としては、誘導加熱装置等の間接加熱装置が好適に用いられる。
【0061】
図1に示すように、線材繰り出し装置1から繰り出された線材6は、ダンサー装置2により線材6の繰り出し張力を安定させる。次いで、線材6は走間焼鈍装置3の中を通過して、所定の温度に加熱焼鈍されて、引取キャプスタン4を通って、線材巻き取り装置5により巻き取られる。
【0062】
図2は、図1に示す走間焼鈍装置3の内部構造の一例を示す模式図である。図2に示すように、走間焼鈍装置3の線材の入り側(繰り出し側)の端部および線材の出側(巻き取り側)の端部に複数対のガイドロール7が配置されている。複数対のガイドロール7の数は、少なくとも2以上であればよい。線材繰り出し装置1の側から走間焼鈍装置3内に入った線材6は、ガイドロール7を通過して、走間焼鈍装置3の内部を少なくとも2回以上方向転換して、走間焼鈍装置3の外部に出て行く。これにより走間焼鈍装置3の内部に滞留する時間を長くすることができ、線材の強度を高めるのに十分な析出を実現することができる。
この場合、線材6は走間焼鈍装置3内の(炉内の)温度に保持され、走間焼鈍装置3内のターン数またはライン速度を変化させることによって、熱処理時間を所望の時間に変化させることができる。ここで、走間焼鈍装置3内の温度も適宜変化させることができる。
【0063】
一般に、走間焼鈍装置では、線材の目標温度よりも焼鈍炉内の温度を高く設定し、短時間で線材を昇温して、線材が目標温度に達した後、冷却を行う。この場合の対象とする熱処理は、再結晶熱処理および低温焼鈍である。これに対して、本発明で対象とする熱処理は時効処理であり、ある温度で保持を行う必要があるため炉内温度は高くできず、昇温に時間がかかる。これを短縮するため、昇温に通電加熱を用いる方法があるが、通電加熱の場合は通電時間が長くなるにつれて線材の温度が高くなるため、線材の温度が時効温度の上限を上回らないような工夫が必要となる。
ここで、通電加熱とは、線材に金属接点(ローラー、プーリー等)から直接電流を流す、または誘導コイルにより間接的に電流を発生させて流し、線材の電気抵抗により発熱させ、温度を上昇させて加熱を行うことである。
【0064】
この発明の線材の製造装置の他の態様において、上述した走間焼鈍装置の上流側にタンデムに、時効析出型銅合金の線材を昇温する通電加熱装置をさらに備えることができる。
図3は、この発明の別の態様の線材の製造装置を説明する模式図である。図3に示すように、この発明の装置においては、走間焼鈍装置3の前(即ち、上流側)に、通電加熱装置8を設置してもよい。
【0065】
この通電加熱装置8は、走間焼鈍装置3に送り込まれる線材6を、この線材6の時効温度上限と時効温度下限との間の温度に予熱するものである。この通電加熱装置8は、線材6の時効温度上限と時効温度下限との間の温度に線材6を加熱するため、通電加熱装置8内において線材6の温度がその時効温度下限以上となったときに実質的に時効処理が開始される。また、走間焼鈍装置3の上流側に通電加熱装置8を設けると、通電加熱装置8の下流側ほど通電時間が長くなって線材の温度が高くなる。このため、走間焼鈍装置3の上流側から供給される線材6の温度を時効温度上限と時効温度下限との間の所定の温度に近づけやすくなる。
【0066】
図3に示すように、線材繰り出し装置1から繰り出された線材6は、ダンサー装置2により線材6の繰り出し張力を安定させる。次いで、線材6は通電加熱装置(予熱装置)8によって線材6の時効温度上限と時効温度下限との間の所定の温度まで通電昇温し、次いで、前記所定の温度まで昇温した線材6を走間焼鈍装置3の中を通過させて、線材6が所定の温度で焼鈍されて、引取キャプスタン4を通って、線材巻き取り装置5により巻き取られる。
【0067】
走間焼鈍装置3で対象とする熱処理は時効処理であり、ある温度で保持を行う必要があるため炉内温度は線材6の時効温度上限を越えて高くすることができず、昇温に時間が掛かる。これを短縮するため、昇温には、通電加熱装置(予熱装置)8を走間焼鈍装置3の上流側に用いる。この態様の線材の製造装置によると、線材6をその時効温度上限と時効温度下限との間の所定の温度まで通電加熱することによって時効処理温度に近い温度まで昇温し、その後引き続いて走間焼鈍装置3によって時効処理をすることができる。
【0068】
さらに、時効処理に先立って、溶体化処理を施すこともできる。溶体化処理を行うための装置として、通電加熱装置が好適に用いられるが、誘導加熱装置等、その他の加熱装置を用いることもできる。これにより溶体化処理と時効処理を連続処理できる。さらに伸線機を配置することにより、所望の直径と特性を有する線材を連続処理にて製造することができる。
【0069】
図4は、この発明の他の態様の線材の製造装置を説明する模式図である。図4には、上述した走間焼鈍装置、通電加熱装置(予熱装置)、伸線装置、撚線装置等の配列例が示されている。このように、伸線装置(伸線機)、被覆装置(被覆機)、撚線装置(撚線機)の少なくとも1つ以上の装置をタンデム配置することによって、複数の工程をまとめることが可能となり、製造時間の短縮を図ることができる。
【0070】
図4(a)は、図1を参照して説明したこの発明の線材の製造装置を説明する配列図である。図4(a)に示す配列では、走間焼鈍装置において線材の加熱および温度保持が行われて、時効処理が行われる。即ち、所定の線径(直径が0.03mm以上3mm以下、好ましくは0.1mm以上1mm以下)の線材を、線材繰り出し装置から繰り出し、300〜600℃の範囲内の温度に加熱しその温度で10秒超から1200秒の間保持して、時効処理を施す。その後、線材巻取り装置によって巻き取られる。内部が300〜600℃の範囲内の温度の上述した走間焼鈍装置においては、線材の入り側端部および線材の出側端部にそれぞれ複数個のガイドロールが設けられて、入り側から入った線材がガイドロール間を線材が折り返し通過した後、出側から出て行く。線材がガイドロール間を折り返し通過しながら炉内に滞留する時間が10秒超から1200秒の間である。
【0071】
ここで、走間焼鈍装置における加熱温度を300〜600℃とした理由は、300℃未満では時効析出型銅合金の析出が不十分であり、600℃を超えると析出物の粗大化および再固溶が開始し特性が低下するためである。また走間焼鈍装置における加熱時間を10秒超〜1200秒とした理由は、10秒以下では析出が不十分であり、1200秒を超えると設備が長大となり実用的ではないためである。
【0072】
図4(b)は、走間焼鈍装置の上流側に通電加熱焼鈍装置がタンデムに配置された配列図である。この態様においては、走間焼鈍装置とは別に昇温用の通電加熱装置(予熱装置)を設けて、線材を所定の温度に速やかに加熱する。即ち、所定の線径(直径が0.03mm以上3mm以下、好ましくは0.1mm以上1mm以下)の線材を、線材繰り出し装置から繰り出し、通電加熱装置(予熱装置)において、300〜600℃の範囲内の温度に5秒以内に昇温する。このように通電加熱装置(予熱装置)において昇温された線材を、引き続き走間焼鈍装置に導き、300〜600℃の範囲内の温度で10秒超から1200秒の間保持して、時効処理を施す。その後、線材巻取り装置によって巻き取られる。このように、走間焼鈍装置とは別に予熱用の通電加熱装置を設けることによって、所定の温度に速やかに昇温する。従って、図4(a)に示す態様のように、走間焼鈍装置において加熱・保持する場合に比べて、時効処理時間を短縮することができる。
【0073】
ここで、通電加熱装置(予熱装置)における昇温を300〜600℃の温度で5秒以内とした理由は次の通りである。加熱温度を300〜600℃としたのは、続く走間焼鈍装置で行う時効処理の温度範囲が300〜600℃であるからである。すなわち、300℃未満では昇温の効果が少なく、また600℃を超えると析出物の粗大化および再固溶が開始し特性が低下することによる。また通電加熱装置(予熱装置)における加熱時間を5秒以内とした理由は、5秒を超えると、通電加熱装置(予熱装置)が大型化し大きなスペースを占めるためである。また、0.3秒以下であるとその効果があらわれない。
【0074】
図4(c)は、走間焼鈍装置の上流側に通電加熱装置(予熱装置)がタンデムに配置され、さらに通電加熱装置(予熱装置)の上流側に撚線装置が配置された配列図である。図4(c)において、本来は撚線装置の上流側には撚線となる単線の本数に対応した数の線材繰り出し装置が存在するが、図4(c)では1つのみ図示し、その他は図示を省略する。図4(c)に示すように、先ず、所定の線径(直径が0.03mm以上3mm以下、好ましくは0.1mm以上1mm以下)の線が線材繰り出し装置から繰り出され、撚線装置によって撚り合わされて撚線が形成される。このように形成された撚線が、図4(b)に示したように、通電加熱装置(予熱装置)において、300〜600℃の範囲内の温度に5秒以内に昇温する。このように通電加熱装置(予熱装置)において昇温された線材を、引き続き走間焼鈍装置に導き、300〜600℃の範囲内の温度で10秒超から1200秒の間保持して、時効処理を施す。その後、線材巻取り装置によって巻き取られる。なお、撚線が形成された後に時効処理を施しても、バッチ焼鈍炉を用いた場合のように、撚線を構成する線材同士が粘着することはない。これは、線材同士が密着するような力がかからないためであると考えられる。また、撚線装置については、通電加熱装置(予熱装置)の直前に配置する代わりに、走間焼鈍装置の直後に配置しても差し支えない。
【0075】
図4(d)は、走間焼鈍装置の上流側に通電加熱装置(予熱装置)がタンデムに配置され、さらに走間焼鈍装置の下流側に被覆装置が配置された配列図である。この態様では、線材が予熱され、次いで時効処理され、それに引き続いて被覆されて、線材巻き取り装置によって巻き取られる。即ち、所定の線径(直径が0.03mm以上3mm以下、好ましくは0.1mm以上1mm以下)の線材を、線材繰り出し装置から繰り出し、通電加熱装置(予熱装置)において、300〜600℃の範囲内の温度に5秒以内に昇温する。このように通電加熱装置(予熱装置)において昇温された線材を、引き続き走間焼鈍装置に導き、300〜600℃の範囲内の温度で10秒超から1200秒の間保持して、時効処理を施す。このように時効処理が施された線材に絶縁体が被覆される。その後、線材巻取り装置によって巻き取られる。なお、撚線装置を、通電加熱装置(予熱装置)の直前または走間焼鈍装置の直後(被覆装置の直前)に配置することで、被覆された撚線が得られる。
【0076】
図4(e)は、溶体化処理および時効処理を連続処理するこの発明の線材の製造装置を説明する模式図である。図4(e)に示すように、この発明の線材の製造装置は、線材繰り出し装置、溶体化処理用の通電加熱装置(溶体化処理装置)、伸線装置、昇温用の通電加熱装置(予熱装置)、走間焼鈍装置および線材巻き取り装置をタンデムに備えている。この態様においては、時効処理用の装置だけでなく、溶体化処理用の装置をタンデムに配置して、これらを連続処理する。
【0077】
図4(e)に示すように、所定の線径(直径が0.03mm以上3mm以下、好ましくは0.1mm以上1mm以下)より太い線径の線材(例えば直径が数mmの線:いわゆる荒引線など)を、線材繰り出し装置から繰り出し、先ず、通電加熱装置(溶体化処理装置)において800℃以上の温度で5秒以下の間線材を加熱し、その直後に水冷等の方法で急冷して、溶体化処理を施す。このように溶体化処理が施された線材を伸線装置によって、所定の線径(直径が0.03mm以上3mm以下、好ましくは0.1mm以上1mm以下)に伸線する。次いで、このように伸線された線材を、通電加熱装置(予熱装置)において、300〜600℃の範囲内の温度に5秒以内に昇温する。このように通電加熱装置(予熱装置)において昇温された線材を、引き続き走間焼鈍装置に導き、300〜600℃の範囲内の温度で10秒超から1200秒の間保持して、時効処理を施す。このように時効処理が施された線材を、線材巻取り装置によって巻き取る。
【0078】
図4(f)は、溶体化処理および時効処理を連続処理するこの発明の線材の製造装置の別の態様を説明する模式図である。この態様においては、図4(f)に示すように、所定の線径(直径が0.03mm以上3mm以下、好ましくは0.1mm以上1mm以下)より太い線径の線材(例えば直径が数mmの線:いわゆる荒引線など)を、線材繰り出し装置から繰り出し、先ず、通電加熱装置(溶体化処理装置)において800℃以上の温度で5秒以下の間線材を加熱し、その直後に水冷等の方法で急冷して、溶体化処理を施す。このように溶体化処理が施された線材を伸線装置によって、所定の線径(直径が0.03mm以上3mm以下、好ましくは0.1mm以上1mm以下)に伸線する。次いで、このように伸線された線材を、通電加熱装置(予熱装置)において、300〜600℃の範囲内の温度に5秒以内の時間昇温する。このように通電加熱装置(予熱装置)において昇温された線材を、引き続き走間焼鈍装置に導き、300〜600℃の範囲内の温度で10秒超から1200秒の間保持して、時効処理を施す。このように時効処理が施された線材を、さらに撚線装置で撚り合わせて撚線を形成して、線材巻取り装置によって巻き取る。図4(f)において、本来は撚線装置の上流側には撚線となる単線の本数に対応した数の装置(線材繰り出し装置、溶体化処理装置、伸線装置、予熱装置、走間焼鈍装置がタンデムに配置されたもの)が存在するが、図4(f)では1つのみ図示し、その他は図示を省略する。なお、撚線装置については、走間焼鈍装置の直後に配置する代わりに、図4(c)と同様に、通電加熱焼鈍装置の直前に配置しても差し支えない。
【0079】
ここで、通電加熱装置(溶体化処理装置)における加熱温度を800℃以上としたのは、800℃未満の温度では溶体化が不完全で続く時効処理で生じる析出が不十分となるためである。加熱温度は高ければ高いほど良いが、設備コストの観点から、950℃以下が好ましい。また時間を5秒以下としたのは、5秒を超えると結晶粒が粗大化し、耐力や屈曲性が低下したためである。また、0.1秒以下であるとその効果があらわれない。
【0080】
この発明の線材の製造装置によると、上述したように、溶体化処理用の通電加熱装置(溶体化処理装置)、伸線装置、昇温用の通電加熱装置(予熱装置)、走間焼鈍装置等の各種装置をタンデムに設けて、所望の線径と特性を有する線材を連続処理によって製造することができる。
【0081】
この発明の線材の製造方法について説明する。
この発明の線材の製造方法の1つの態様は、時効析出型銅合金の線材を繰り出すステップと、繰り出した前記線材を、走間加熱の際の通過経路に沿って複数回折り返して所定の温度内に所定時間保持しつつ通過させる時効処理を行うステップと、前記時効処理が施された前記線材を巻き取るステップを備えた線材の製造方法である。ここで、所定の温度とは時効温度下限と時効温度上限との間の温度、具体的には300℃から600℃の範囲内の温度であり、所定時間とは10秒超から1200秒の間の時間である。
【0082】
また、時効処理に先立って、線材を通電加熱(予熱)するステップを備えてもよい。300℃から600℃の範囲内の温度に、5秒以下の時間で昇温される。このステップは線材の予熱が主目的であるが、線材の温度がその時効温度下限以上となったときに実質的に時効処理が開始される。さらに、時効処理に先立って(線材を予熱する場合には予熱に先立って)、線材に溶体化処理を施すステップを備えてもよい。800℃以上の温度で、5秒以下の間加熱され、その直後に水冷等の方法で急冷されて溶体化処理が施される。
【0083】
上述したように、この発明の線材の製造方法によると、連続焼鈍で時効熱処理を行うことができる。走間焼鈍装置を様々な連続装置(例えば、撚線機、被覆機、伸線機)とタンデムに配置することができるので、工程短縮を実現することができる。溶体化専用の通電加熱装置(溶体化処理装置)を走間焼鈍装置の上流側に設置することによって、溶体化−時効工程の連続製造が可能になり、また伸線機を走間焼鈍装置の前後に入れることによって、溶体化−伸線−時効、溶体化−時効−伸線、溶体化−伸線−時効−伸線工程の連続製造が可能になり、様々な特性の材料を得ることができる。
【0084】
次に、この発明の線材の製造装置および製造方法の別の態様を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0085】
この発明の線材の製造装置の他の1つの態様は、線材繰り出し装置と、線材巻き取り装置と、前記線材繰り出し装置および前記線材巻き取り装置の間に設けられた走間焼鈍装置とを備え、該走間焼鈍装置は、時効析出型銅合金の線材を、該線材の時効温度上限と時効温度下限との間の温度に保持しながら順次通過するように構成されている線材の製造装置であって、前記走間焼鈍装置は、複数の通電加熱装置からなり、前記線材を、該線材の時効温度上限と時効温度下限との間の温度に保持しながら前記線材が順次通過するように構成されている線材の製造装置である。
【0086】
縦列に配置された複数の通電加熱装置は、それぞれ1つ以上の昇温用通電加熱装置および温度保持用通電加熱装置からなっており、昇温用通電加熱装置によって、時効温度下限と時効温度上限との間の所定の温度まで線材を昇温し、温度保持用通電加熱装置によって時効温度上限と時効温度下限との間の温度に保持する。即ち、この発明の装置において、間隔をおいて縦列に配置された昇温用通電加熱装置および温度保持用通電加熱装置の個々の装置内で線材が加熱され、装置間を通過時に温度低下が生じても、時効温度上限と時効温度下限との間の温度に線材を維持することができる。
【0087】
通電加熱は、線材自身に流れる電流により発生するジュール熱により加熱を行う。材料の上昇温度ΔTは、熱のロスを無視した場合、以下の式で与えられる。
ΔT=P・t/(m・C) ・・・(1)
P:付与した電力、t:付与時間
m:材料の質量、C:比熱
通電加熱装置において線材は固定された状態ではなく、ある速度で流れているため、付与時間が刻々と変化し、材料温度は段々上昇して行く。
この発明で目的としている熱処理は時効熱処理であり、材料温度が所定温度(時効温度下限と時効温度上限との間の温度、具体的には300℃から600℃の範囲内の温度)に達しないで低すぎると析出が生じず、逆に所定温度を超えて高すぎると析出物が粗大になり、所望の特性向上に寄与しないため、ある範囲内の温度(時効温度下限と時効温度上限との間の温度、具体的には300℃から600℃の範囲内の温度)で、ある時間範囲(10秒超から1200秒の間)の加熱を行う必要がある。
【0088】
これを実現させるために、この発明においては、複数個の通電加熱装置を、間隔をおいて連続的に(縦列に)並べて1つの走間焼鈍装置を構成するようにしている。すなわち、1つの通電加熱装置では段々温度が上昇して行くが、時効温度範囲を超える前に通電加熱装置から脱するようにする。すると、通電が無くなるために線材の温度は低下する。そして、時効温度範囲を下回る前に、次の通電加熱装置に入るようにする。これを繰り返すことで所定の時間加熱を行うことが可能となる。
最初の所定の温度に到達させるための通電加熱装置は、大きめの付与電力が必要となる。その後の温度保持用の通電加熱での付与電力は、時効温度範囲により決定する。また、通電加熱装置間の間隔についても、時効温度範囲により決定する。
【0089】
図5は、この発明に係る走間焼鈍装置(即ち通電加熱設備:以下、走間加熱装置と表現する)の一例を説明する模式図である。図5に示すように、この発明の線材製造装置は、線材繰り出し装置11と、線材巻き取り装置15と、線材繰り出し装置11および線材巻き取り装置15の間に設けられた走間加熱装置13とを備えている。走間加熱装置13は、所定間隔を隔てて縦列に配置された複数の通電加熱装置からなり、線材16の時効温度上限と時効温度下限との間の温度に維持しながら時効析出型銅合金の線材16が順次通過する。
図5に示すこの発明の線材の製造装置においては、熱処理時間(即ち、時効処理に必要な時間)を稼ぐために、走間加熱装置13内に所定間隔をあけて複数の通電加熱装置が縦列に配置されている。その結果、線材が走間加熱装置13内に、従来よりも長い所定の時間滞留して、所定の時効処理時間を確保している。
【0090】
図5に示すように、線材繰り出し装置11から繰り出された線材16は、ダンサー装置12により線材の繰り出し張力を安定させる。次いで、線材は走間加熱装置13の中を通過して、先ず所定の温度に加熱され、次いで時効温度上限と時効温度下限との間の温度に保持され、時効処理されて、引取キャプスタン14を通って、線材巻き取り装置15により巻き取られる。
【0091】
図6は、図5に示す走間加熱装置13の内部構造を示す模式図である。走間加熱装置13の内部は間隔をおいて配置された少なくとも2つの通電加熱装置19、20からなっている。繰り出し側から通電加熱装置13に入った線材16は、昇温用通電加熱装置19により所定温度まで昇温され、次いで、温度保持用通電加熱装置20により温度を保持され、走間加熱装置13の外部に出て行く。このように複数の通電加熱装置19、20が所定の間隔を隔てて配置されているので、線材が走間加熱装置13の内部に置かれる時間を長くすることができ、時効処理によって強度を高めるのに十分な析出を実現できる。
【0092】
図6では、好ましい例として、昇温用通電加熱装置19が1つ、温度保持用通電加熱装置20が3つの例を示しているが、それぞれ1つ以上あれば良い。なお、通電加熱装置19、20は例えば1対のガイドロール17を通して線材16に通電することにより、線材16の温度を上昇させる処理を行うものである。
ここで、通電加熱とは、線材に金属接点(ローラー、プーリー等)から直接電流を流す、または誘導コイルにより間接的に電流を発生させて流し、線材の電気抵抗により発熱させ、温度を上昇させて加熱を行うことである。
【0093】
線材を最初に所定の温度(時効温度下限と時効温度上限との間の温度、具体的には300℃から600℃の範囲内の温度)に到達させるための昇温用通電加熱装置19には、大きめの付与電力が必要となる。その後の温度保持用の通電加熱装置20での付与電力は、線材の時効温度範囲により決定する。また、通電加熱装置20間の間隔についても、時効温度範囲により決定する。
【0094】
図7は走間加熱装置13の内部における線材16の温度変化を示す。線材16は通電加熱装置13内に入ると、昇温用通電加熱装置19により急速に時効温度下限を超えて温度上昇する。次いで、所定間隔で縦列に配置された複数の温度保持用加熱装置20により上昇下降を繰りかえして所望の温度範囲(時効温度上限と時効温度下限の間)に一定時間維持することができる。
【0095】
即ち、図7に示すように、線材16は昇温用通電加熱装置19において時効温度下限を超えて温度上昇し、昇温用通電加熱装置19を出て次の温度保持用加熱装置20に入るまで通電加熱されないので、温度が低下する。温度の低下が時効温度下限を下回らないように昇温用通電加熱装置19の加熱温度、および、昇温用通電加熱装置19と温度保持用加熱装置20との間の間隔を定める。引き続き、線材16は複数の温度保持用加熱装置20を通過するが、線材16が時効温度下限と時効温度上限との間に保持されるように、温度保持用加熱装置20の加熱温度および温度保持用加熱装置20間の間隔を定める。従って、図7に示すように、線材16の温度が時効温度下限と時効温度上限との間で上昇下降を繰り返す。
【0096】
さらに、時効処理に先立って、溶体化処理を施すこともできる。溶体化処理するために、例えば通電加熱装置により構成される溶体化処理装置を用いる。これにより溶体化処理と時効処理を連続処理できる。さらに伸線機を配置することにより、所望の直径と特性を有する線材を連続処理にて製造することができる。
【0097】
図8は、この発明の各種態様の線材の製造装置を説明する模式図である。図8には、上述した走間加熱装置、通電加熱装置(溶体化処理装置)、伸線装置、撚線装置等の配列例が示されている。このように、伸線装置(伸線機)、被覆装置(被覆機)、撚線装置(撚線機)の少なくとも1つ以上の装置をタンデム配置することによって、複数の工程をまとめることが可能となり、製造時間の短縮を図ることができる。
【0098】
図8(a)は、図5を参照して説明したこの発明の線材の製造装置を説明する配列図である。図8(a)に示す配列では、走間加熱装置内に配置された昇温用通電加熱装置、温度保持用通電加熱装置において線材の加熱、温度低下が繰り返されて時効温度範囲内に温度保持が行われて、時効処理が行われる。即ち、所定の線径(直径が0.03mm以上3mm以下、好ましくは0.1mm以上1mm以下)の線材を、線材繰り出し装置から繰り出し、複数の通電加熱装置で構成される走間加熱装置内で300〜600℃の範囲内の所定の温度範囲内に加熱、温度低下を繰り返し、その範囲内の温度で10秒超から1200秒の間保持して、時効処理を施す。その後、線材巻取り装置によって巻き取られる。
【0099】
昇温用通電加熱装置では、線材をその時効温度上限と時効温度下限との間の所定の温度まで加熱し、次の温度保持用通電加熱装置に入るまでの間、無通電状態で時効温度下限以上の温度まで温度低下し、さらに次の温度保持用通電加熱装置において時効温度上限を超えない温度まで加熱され、このようにして温度低下、加熱を繰り返しながら、線材の時効温度下限と時効温度上限との間に保持されて、時効処理が行われる。各通電加熱装置にはガイドロール(電極輪)が配置されて線材に通電される。
【0100】
線材が通電加熱、温度低下を繰り返しながら走間加熱装置(炉)内に滞留する時間が10秒超から1200秒の間である。
ここで、走間加熱装置内の温度を300〜600℃とした理由は、300℃未満では時効析出型銅合金の析出が不十分であり、600℃を超えると析出物の粗大化および再固溶が開始し特性が低下するためである。また走間加熱装置内の滞留時間を10秒超〜1200秒とした理由は、10秒以下では析出が不十分であり、1200秒を超えると設備が長大となり実用的ではないためである。
【0101】
図8(b)は、走間加熱装置の上流側に撚線装置が配置された配列図である。図8(b)において、本来は撚線装置の上流側には撚線となる単線の本数に対応した数の線材繰り出し装置が存在するが、図8(b)では1つのみ図示し、その他は図示を省略する。図8(b)に示すように、先ず、所定の線径(直径が0.03mm以上3mm以下、好ましくは0.1mm以上1mm以下)の線が線材繰り出し装置から繰り出され、撚線装置によって撚り合わされて撚線が形成される。このように形成された撚線が、図8(a)を参照して説明したように、走間加熱装置内に配置された昇温用通電加熱装置、温度保持用通電加熱装置において線材の加熱、温度低下が繰り返されて時効温度範囲内に温度保持が行われて、時効処理が行われる。即ち、所定の線径(直径が0.03mm以上3mm以下、好ましくは0.1mm以上1mm以下)の線材を、線材繰り出し装置から繰り出し、走間加熱装置を構成する複数の通電加熱装置内で300〜600℃の範囲内の所定の温度範囲内に加熱、温度低下を繰り返し、その範囲内の温度で10秒超から1200秒の間保持して、時効処理を施す。その後、線材巻取り装置によって巻き取られる。なお、撚線が形成された後に時効処理を施しても、バッチ焼鈍炉を用いた場合のように、撚線を構成する線材同士が粘着することはない。これは、線材同士が密着するような力がかからないためであると考えられる。また、撚線装置については、走間加熱装置の直前に配置する代わりに、走間加熱装置の直後に配置しても差し支えない。
【0102】
図8(c)は、走間加熱装置の下流側に被覆装置が配置された配列図である。この態様では、線材が加熱され、次いで時効処理され、それに引き続いて被覆されて、線材巻き取り装置によって巻き取られる。即ち、所定の線径(直径が0.03mm以上3mm以下、好ましくは0.1mm以上1mm以下)の線材を、線材繰り出し装置から繰り出し、走間加熱装置内に配置された昇温用通電加熱装置、温度保持用通電加熱装置において線材の加熱、温度低下が繰り返されて時効温度範囲内に温度保持が行われて、時効処理が行われる。即ち、所定の線径(直径が0.03mm以上3mm以下、好ましくは0.1mm以上1mm以下)の線材を、線材繰り出し装置から繰り出し、複数の通電加熱装置で構成される走間加熱装置内で300〜600℃の範囲内の所定の温度範囲内に加熱、温度低下を繰り返し、その範囲内の温度で10秒超から1200秒の間保持して、時効処理を施す。時効処理を施した線材を被覆する。
【0103】
図8(d)は、溶体化処理および時効処理を連続処理するこの発明の線材の製造装置を説明する模式図である。図8(d)に示すように、この発明の線材の製造装置は、線材繰り出し装置、溶体化処理用の通電加熱装置(溶体化処理装置)、伸線装置、走間加熱装置および線材巻き取り装置をタンデムに備えている。この態様においては、時効処理用の装置だけでなく、溶体化処理用の装置(溶体化処理装置)をタンデムに配置して、これらを連続処理する。
【0104】
図8(d)に示すように、所定の線径(直径が0.03mm以上3mm以下、好ましくは0.1mm以上1mm以下)より太い線径の線材(例えば直径が数mmの線:いわゆる荒引線など)を、線材繰り出し装置から繰り出し、先ず、通電加熱装置において800℃以上の温度で5秒以下の間線材を加熱し、その直後に水冷等の方法で急冷して、溶体化処理を施す。このように溶体化処理が施された線材を伸線装置によって、所定の線径(直径が0.03mm以上3mm以下、好ましくは0.1mm以上1mm以下)に伸線する。次いで、このように伸線された線材を、走間加熱装置内に配置された昇温用通電加熱装置、温度保持用通電加熱装置において線材の加熱、温度低下が繰り返されて時効温度範囲内に温度保持が行われて、時効処理が行われる。即ち、所定の線径の線材を、線材繰り出し装置から繰り出し、複数の通電加熱装置内で300〜600℃の範囲内の所定の温度範囲内に加熱、温度低下を繰り返し、その範囲内の温度で10秒超から1200秒の間保持して、時効処理を施す。その後、線材巻取り装置によって巻き取られる。
ここで、加熱温度を800℃以上としたのは、800℃未満の温度では溶体化が不完全で続く時効処理で生じる析出が不十分となるためである。加熱温度は高ければ高いほど良いが、設備コストの観点から、950℃以下が好ましい。また時間を5秒以下としたのは、5秒を超えると結晶粒が粗大化し、耐力や屈曲性が低下したためである。また、0.1秒以下であるとその効果があらわれない。
【0105】
図8(e)は、溶体化処理および時効処理を連続処理するこの発明の線材の製造装置の別の態様を説明する模式図である。この態様においては、図8(e)に示すように、所定の線径(直径が0.03mm以上3mm以下、好ましくは0.1mm以上1mm以下)より太い線径の線材(例えば直径が数mmの線:いわゆる荒引線など)を、線材繰り出し装置から繰り出し、先ず、通電加熱装置(溶体化処理装置)において800℃以上の温度で5秒以下の間線材を加熱し、その直後に水冷等の方法で急冷して、溶体化処理を施す。このように溶体化処理が施された線材を伸線装置によって、所定の線径(直径が0.03mm以上3mm以下、好ましくは0.1mm以上1mm以下)に伸線する。次いで、このように伸線された線材を、走間加熱装置内に配置された昇温用通電加熱装置、温度保持用通電加熱装置において線材の加熱、温度低下が繰り返されて時効温度範囲内に温度保持が行われて、時効処理が行われる。即ち、所定の線径の線材を、線材繰り出し装置から繰り出し、複数の通電加熱装置内で300〜600℃の範囲内の所定の温度範囲内に加熱、温度低下を繰り返し、その範囲内の温度で10秒超から1200秒の間保持して、時効処理を施す。このように時効処理が施された線材を、さらに撚線装置で撚り合わせて撚線を形成して、線材巻取り装置によって巻き取る。図8(e)において、本来は撚線装置の上流側には撚線となる単線の本数に対応した数の装置(線材繰り出し装置、溶体化処理装置、伸線装置、走間加熱装置がタンデムに配置されたもの)が存在するが、図8(e)では1つのみ図示し、その他は図示を省略する。なお、撚線装置については、走間加熱装置の直後に配置する代わりに、図8(b)と同様に、通電加熱装置の直前に配置しても差し支えない。
【0106】
この発明の線材の製造装置によると、上述したように、溶体化処理用の通電加熱装置(溶体化処理装置)、伸線装置、走間加熱装置等の各種装置をタンデムに設けて、所望の線径と特性を有する線材を連続処理によって製造することができる。
【0107】
この発明の線材の製造方法について説明する。
この発明の線材の製造方法の1つの態様は、時効析出型銅合金の線材を繰り出すステップと、繰り出した前記線材を走間加熱して時効処理を行うステップと、前記時効処理が施された前記線材を巻き取るステップを備えた線材の製造方法であって、前記時効処理を行うステップは、繰り出した前記線材を、それぞれ少なくとも1つの異なる通電加熱領域と、前記通電加熱領域の間で無通電により温度低下する領域とを通過させて、前記線材を所定範囲内の温度に保持して、時効処理を行うステップである線材の製造方法である。
【0108】
異なる通電加熱領域が、線材を所定の温度に昇温する通電加熱領域と、所定の温度範囲内に線材を保持する通電加熱領域とからなっており、線材を時効温度上限と時効温度下限との間の温度に保持する。即ち、300℃から600℃の範囲内の所定の温度範囲内で、10秒超から1200秒の間、時効析出型銅合金線材が加熱された状態に保持される。好ましくは、時効処理に先立って、線材に溶体化処理を施す。800℃以上の温度で、5秒以下の間加熱され、その直後に水冷等の方法で急冷されて溶体化処理が施される。
【0109】
ここで、溶体化処理の際の加熱温度を800℃以上としたのは、800℃未満の温度では溶体化が不完全となり、続く時効処理で生じる析出が不十分となるためである。加熱温度は高ければ高いほど良いが、設備コストの観点から、950℃以下が好ましい。また溶体化処理の際の加熱時間を5秒以下としたのは、5秒を超えると結晶粒が粗大化し、耐力や屈曲性が低下したためである。また、0.1秒以下であるとその効果があらわれない。
【0110】
次に、この発明の銅合金線の態様について説明する。この発明において、銅合金線とは、金属材料の成形物である線材のうち、自動車およびロボットの配線用電線、電子機器のリード線、コネクタピン、コイルバネ等の製品として使用されうる具体的な銅合金線を意味する。この発明の銅合金線は、前述の線材の製造方法および製造装置により製造される時効析出型銅合金線であって、例えば、コルソン合金(Cu−Ni−Si系)、Cu−Cr系、Cu−Ti系、Cu−Fe系、Cu−Ni−Ti系が挙げられる。また、銅合金線の直径は、0.03mm以上3mm以下であり、好ましくは0.1mm以上1mm以下である。銅合金線の直径が0.03mm未満となると、線材が断線するおそれが急激に高まり、また、3mmを超えると、線材の単位長さあたりに加える熱量が増加することなどにより連続焼鈍による時効処理が効果的に行われなくなるためである。
以下、それぞれの態様について列挙する。
【0111】
(Cu−Ni−Si系)
この発明の銅合金線に用いられるCu−Ni−Si系銅合金は、Niを1.5〜4.0質量%、Siを0.3〜1.1質量%含有し、残部がCuと不可避不純物からなる銅合金、または、Niを1.5〜4.0質量%、Siを0.3〜1.1質量%含有し、さらにAg、Mg、Mn、Zn、Sn、P、Fe、CrおよびCoからなる群から選択される少なくとも1つの元素を0.01〜1.0質量%含有し、残部がCuと不可避不純物からなる銅合金である。
【0112】
CuにNiとSiを添加すると、Ni−Si化合物(NiSi相)がCuマトリックス中に析出して強度および導電性が向上することが知られている。Ni含有量が1.5質量%未満であると析出量が少ないため目標とする強度が得られない。逆にNi含有量が4.0質量%を超えて添加されると鋳造時や熱処理(例えば、溶体化処理、時効処理、焼鈍処理)時に強度上昇に寄与しない析出が生じ、添加量に見合う強度を得ることができないばかりか、伸線加工性、曲げ加工性にも悪影響を与えることになる。
【0113】
Si含有量は析出するNiとSiの化合物が主にNiSi相であると考えられるため、添加Ni量を決定すると最適なSi添加量が決まる。Si含有量が0.3質量%未満であるとNi含有量が少ないときと同様に十分な強度を得ることができない。逆にSi含有量が1.1質量%を超えるときもNi含有量が多いときと同様の問題が生じる。
【0114】
次に、Ag、Mg、Mn、Zn、Sn、P、Fe、Cr、Coを含有する場合の含有量について説明する。Ag、Mg、Mn、Zn、Sn、P、Fe、Cr、Coは、強度、加工性、Snメッキの耐熱性剥離性などの特性を改善する効果を有しているものであり、含有させる場合には、Ag、Mg、Mn、Zn、Sn、P、Fe、Cr、Coの中から選ばれる少なくとも1つの元素を合計量として0.01〜1.0質量%含有させるものである。以下、それぞれの添加元素についてさらに説明する。
【0115】
Agは強度および耐熱性を向上させると同時に、結晶粒の粗大化を阻止して曲げ加工性を改善する。Ag量が0.01質量%未満ではその効果が充分に得られず、0.3質量%を超えて添加しても特性上に悪影響はないもののコスト高になる。これらの観点から、Agを含有する場合の含有量は0.01質量%〜0.3質量%とする。
【0116】
Mgは耐応力緩和特性を改善するが、曲げ加工性には悪影響を及ぼす。耐応力緩和特性の観点からは、0.01質量%以上で含有量は多いほどよい。逆に曲げ加工性の観点からは、含有量が0.2質量%を超えると良好な曲げ加工性を得ることは困難である。
このような観点から、Mgを含有する場合の含有量は0.01〜0.2質量%とする。
【0117】
Mnは、強度を上昇させると同時に熱間加工性を改善する効果があり、0.01質量%未満であるとその効果が小さく、0.5質量%を超えて含有しても、添加量に見合った効果が得られないばかりでなく、導電性を劣化させる。よってMnを含有する場合の含有量は0.01〜0.5質量%とする。
【0118】
ZnはSnメッキや半田メッキの耐熱剥離性、耐マイグレーション特性を改善し、0.2質量%以上添加することが好ましい。逆に導電性を考慮し、1.0質量%を超えて添加することは好ましくない。
【0119】
Snは強度、耐応力緩和特性を改善するとともに伸線加工性を改善する。Snが0.1質量%未満であると改善効果は現れず、逆に1.0質量%を超えて添加されると導電性が低下する。
【0120】
Pは強度を上昇させると同時に導電性を改善する効果を有する。多量の含有は粒界析出を助長して曲げ加工性を低下させる。よって、Pを添加する場合の好ましい含有範囲は0.01〜0.1質量%である。
【0121】
Fe、CrはSiと結合し、Fe−Si化合物、Cr−Si化合物を形成し、強度を上昇させる。また、Niとの化合物を形成せずに銅マトリックス中に残存するSiをトラップし、導電性を改善する効果がある。Fe−Si化合物、Cr−Si化合物は析出硬化能が低いため、多くの化合物を生成させることは得策ではない。また、0.2質量%を超えて含有すると曲げ加工性が劣化してくる。これらの観点から、Fe、Crを含有する場合の添加量は、それぞれ0.01〜0.2質量%とする。
【0122】
CoはNiと同様にSiと化合物を形成し、強度を向上させる。CoはNiに比べて高価であるため、本発明ではCu−Ni−Si系合金を利用しているが、コスト的に許されるのであれば、Cu−Co−Si系やCu−Ni−Co−Si系を選択してもよい。Cu−Co−Si系は時効析出させた場合に、Cu−Ni−Si系より強度、導電性ともにわずかによくなる。したがって、熱・電気の伝導性を重視する部材には有効である。また、Co−Si化合物は析出硬化能が僅かに高いため、耐応力緩和特性も若干改善される傾向にある。これらの観点から、Coを含有する場合の添加量は、0.05〜1質量%とする。
【0123】
(Cu−Cr系)
この発明の銅合金線に用いられるCu−Cr系銅合金は、Crを0.1〜1.5質量%含有し、残部がCuと不可避不純物からなる銅合金、または、Crを0.1〜1.5質量%含有し、さらにZn、Sn、Zrからなる群から選択される少なくとも1つの元素を0.1〜1.0質量%含有し、残部がCuと不可避不純物からなる銅合金である。
【0124】
CuにCrを添加すると、CrがCuマトリックス中に析出して強度、導電性が向上し、さらに前記析出物は加熱による軟化を妨げて耐熱性を向上させることが知られている。Cr含有量が0.1質量%未満であると析出量が少ないため目標とする強度が得られない。逆にCr含有量が1.5質量%を超えて添加されると鋳造時や熱処理(例えば、溶体化処理、時効処理、焼鈍処理)時に強度上昇に寄与しない析出が生じ、添加量に見合う強度を得ることができないばかりか、伸線加工性、曲げ加工性にも悪影響を与えることになる。
【0125】
次に、Zn、Sn、Zrを含有する場合の含有量について説明する。Zn、Sn、Zrは、強度、Snメッキの耐熱性剥離性などの特性を改善する効果を有しているものであり、含有させる場合には、Zn、Sn、Zrの中から選ばれる少なくとも1つの元素を合計量として0.1〜1.0質量%含有させるものである。
【0126】
ZnはSnメッキや半田メッキの耐熱剥離性、耐マイグレーション特性を改善し、0.2質量%以上添加することが好ましい。逆に導電性を考慮し、1.0質量%を超えて添加することは好ましくない。
【0127】
Snは強度、耐応力緩和特性を改善するとともに伸線加工性を改善する。Snが0.1質量%未満であると改善効果は現れず、逆に1.0質量%を超えて添加されると導電性が低下する。
【0128】
Zrを添加すると、Cu−Zr化合物(CuZr相)がCuマトリックス中に析出して強度および導電性が向上する。Zr含有量が0.1質量%未満であると析出量が少ないため目標とする強度が得られない。逆にZr含有量が0.5質量%を超えるとその効果が飽和する上、材料費が高くなる。
【0129】
(Cu−Ti系)
この発明の銅合金線に用いられるCu−Ti系銅合金は、Tiを1.0〜5.0質量%含有し、残部がCuと不可避不純物からなる銅合金である。
【0130】
CuにTiを添加すると、Cu−Tiの変調構造が生じ強度が向上することが知られている。Ti含有量が1.0質量%未満であると変調構造が十分に形成されず、目標とする強度が得られない。逆にTi含有量が5.0質量%を超えて添加されると加工性が急激に低下し伸線加工が困難となるため好ましくない。
【0131】
(Cu−Fe系)
この発明の銅合金線に用いられるCu−Fe系銅合金は、Feを1.0〜3.0質量%含有し、残部がCuと不可避不純物からなる銅合金、または、Feを1.0〜3.0質量%含有し、さらにP、Znの少なくとも1つの元素を0.01〜1.0質量%含有し、残部がCuと不可避不純物からなる銅合金である。
【0132】
CuにFeを添加すると、FeがCuマトリックス中に析出して強度、導電性が向上し、さらに前記析出物は加熱による軟化を妨げて耐熱性を向上させることが知られている。Fe含有量が1.0質量%未満であると析出量が少ないため目標とする強度が得られない。逆にFe含有量が3.0質量%を超えて添加されると鋳造時や熱処理(例えば、溶体化処理、時効処理、焼鈍処理)時に強度上昇に寄与しない析出が生じ、添加量に見合う強度を得ることができないばかりか、伸線加工性、曲げ加工性にも悪影響を与えることになる。
【0133】
次に、P、Znを含有する場合の含有量について説明する。P、Znは、導電性、Snメッキの耐熱性剥離性などの特性を改善する効果を有しているものであり、含有させる場合には、P、Znの中から選ばれる少なくとも1つの元素を合計量として0.01〜1.0質量%含有させるものである。
【0134】
Pは、Cu−Fe系合金においては、マトリックス中でFe−P化合物となって析出し、導電性を向上させる。Pが0.01質量%未満であると効果は現れず、0.2質量%を超えて含有しても、添加量に見合った効果が得られないばかりでなく、加工性を劣化させる。
【0135】
(Cu−Ni−Ti系)
この発明の銅合金線に用いられるCu−Ni−Ti系銅合金は、Niを1.0〜2.5質量%、Tiを0.3〜0.8質量%含有し、残部がCuと不可避不純物からなる銅合金、または、Niを1.0〜2.5質量%、Tiを0.3〜0.8質量%含有し、さらにAg、Mg、ZnおよびSnからなる群から選択される少なくとも1つの元素を0.01〜1.0質量%含有し、残部がCuと不可避不純物からなる銅合金である。
【0136】
CuにNiとTiを添加すると、Ni−Ti化合物(NiTi相)がCuマトリックス中に析出して強度および導電性が向上する。Ni含有量が1.0質量%未満であると析出量が少ないため目標とする強度が得られない。逆にNi含有量が2.5質量%を超えて添加されると鋳造時に割れが生じやすくなり、また溶体化熱処理時に強度上昇に寄与しない析出が生じ、添加量に見合う強度を得ることができなくなる。
【0137】
Ti含有量は析出するNiとTiの化合物が主にNiTi相であると考えられるため、添加Ni量を決定すると最適なTi添加量が決まる。Ti含有量が0.3質量%未満であるとNi含有量が少ないときと同様に十分な強度を得ることができない。逆にTi含有量が0.8質量%を超えるときもNi含有量が多いときと同様の問題が生じる。
【0138】
次に、Ag、Mg、Zn、Snを含有する場合の含有量について説明する。Ag、Mg、Zn、Snは、強度、Snメッキの耐熱性剥離性などの特性を改善する効果を有しているものであり、含有させる場合には、Ag、Mg、Zn、Snの中から選ばれる少なくとも1つの元素を合計量として0.01〜1.0質量%含有させるものである。
【0139】
Agは強度および耐熱性を向上させると同時に、結晶粒の粗大化を阻止して曲げ加工性を改善する。Ag量が0.01質量%未満ではその効果が充分に得られず、0.3質量%を超えて添加しても特性上に悪影響はないもののコスト高になる。これらの観点から、Agを含有する場合の含有量は0.01質量%〜0.3質量%とする。
【0140】
Mgは耐応力緩和特性を改善するが、曲げ加工性には悪影響を及ぼす。耐応力緩和特性の観点からは、0.01質量%以上で含有量は多いほどよい。逆に曲げ加工性の観点からは、含有量が0.2質量%を超えると良好な曲げ加工性を得ることは困難である。
このような観点から、Mgを含有する場合の含有量は0.01〜0.2質量%とする。
【0141】
ZnはSnメッキや半田メッキの耐熱剥離性、耐マイグレーション特性を改善し、0.2質量%以上添加することが好ましい。逆に導電性を考慮し、1.0質量%を超えて添加することは好ましくない。
【0142】
Snは強度、耐応力緩和特性を改善するとともに伸線加工性を改善する。Snが0.1質量%未満であると改善効果は現れず、逆に1.0質量%を超えて添加されると導電性が低下する。
【0143】
時効析出型銅合金線材である、上述したコルソン合金(Cu−Ni−Si系)、Cu−Cr系、Cu−Ti系、Cu−Fe系、Cu−Ni−Ti系合金線材において、溶体化処理によって、Ni、Si、Cr、Ti、Feなどの合金成分がCuマトリックス中に固溶化される。時効処理においては、Cu−Ni−Si合金ではNiSi、Cu−Cr合金ではCr、Cu−Fe合金ではFeおよびFe化合物がそれぞれ析出し強度が高くなる。Cu−Ti系合金では、Cu−Tiの変調構造を発生させて強度が高くなる。
上述した温度は実体温度であり、特性および流れた電流から推測することもできる。また、線径が太い場合、放射温度計でも測定することができる。また、上述した温度は、導電率から推測する方法もある。
【0144】
次に、この発明を実施例によってさらに詳細に説明する。
【0145】
表1に示す成分組成の合金No.1〜38を調製した。何れも上述した範囲内の元素を含む合金である。即ち、Cu−Ni−Si系銅合金として、合金No.1〜17、Cu−Cr系銅合金として、合金No.18〜23、Cu−Ti系銅合金として、合金No.24〜26、Cu−Fe系銅合金として、合金No.27〜32、Cu−Ni−Ti系銅合金として、合金No.33〜38をそれぞれ調製した。
【0146】
【表1】


【0147】
(実施例1)
表1に示す合金No.1〜38を用いて、溶体化処理を施した後、線径φ0.1mmの銅合金線を形成し、表2に示す条件の下、図3および図4(b)で示される線材の製造装置を用いて、連続焼鈍で時効熱処理を行った。その結果を表2に合わせて示す。ここでは、比較のために、上述した合金を使用して、線径φ0.1mmの銅合金線を形成し、バッチ炉を使用して従来の方法で時効熱処理を行った。即ち、表2に示す温度(℃)に、線材を加熱し、加熱時間(sec)に示す間その温度に保持し、その後、線材巻き取り装置によって巻き取った。走間加熱装置内の線材の引張強さ(MPa)、導電率(%IACS)を表2に合わせて示す。
【0148】
【表2】


【0149】
表2から明らかなように、この発明の方法によると、実施例No.1〜38(Cu−Ni−Si系銅合金No.1〜17、Cu−Cr系銅合金No.18〜23、Cu−Ti系銅合金No.24〜26、Cu−Fe系銅合金No.27〜32、Cu−Ni−Ti系銅合金No.33〜38)においては、必要な時効処理が施されており、かついずれも時効後の粘着は生じなかった。これに対して、比較例No.39〜47(Cu−Ni−Si系銅合金No.2、16、Cu−Cr系銅合金No.19、22、Cu−Ti系銅合金No.25、Cu−Fe系銅合金No.28、32、Cu−Ni−Ti系銅合金No.34、37)においては、いずれも時効後に粘着が生じた。
【0150】
(実施例2)
次に、銅合金線の線径を変化させた例を示す。具体的には、表1に示す合金No.16、22を用いて、溶体化処理を施した後、線径φ0.03mm、φ0.1mm、φ0.9mm、φ3mmの銅合金線を形成し、表3に示す条件の下、図3および図4(b)で示される線材の製造装置を用いて、連続焼鈍で時効熱処理を行った。
【0151】
【表3】


【0152】
表3から明らかなように、実施例No.51〜58(Cu−Ni−Si系銅合金No.16、Cu−Cr系銅合金No.22)においては、必要な時効処理が施されており、かついずれも時効後の粘着は生じなかった。すなわち、線材の直径が0.03mm以上3mm以下の範囲において、連続焼鈍により時効処理が施されていることがわかった。
【0153】
(実施例3)
実施例1と同様の実験を、図5、図6、および図8(a)で示される線材の製造装置を用いて、走間通電加熱により時効熱処理を行った。このとき、時効温度の中心値を、実施例1の表2で示される温度(時効温度)とし、最高温度と最低温度との差はすべて40度となるようにした。例えば、表2で温度が500℃となっているものは、本実施例では温度の中心値が500℃、最高温度が520℃、最低温度が480℃となるようにした。
【0154】
その結果、実施例1の表2のサンプルNo.1〜38に相当する本実施例のサンプルについては、走間加熱装置内の線材の引張強さ(MPa)、導電率ともに、実施例1の各サンプルとほぼ同様の結果が得られ、かついずれも時効後の粘着は生じなかった。すなわち、本実施例において、走間通電加熱により時効処理が施されていることがわかった。
【0155】
本実施例において、時効熱処理中の最高温度と最低温度との差は50度以内であれば、走間通電加熱による時効熱処理が、連続焼鈍による時効熱処理と同様に行われることがわかった。なお、得られる銅合金線の特性向上の観点からは、時効熱処理中の最高温度と最低温度との差は小さいほど望ましいが、このためには1回あたりの通電加熱時間と無加熱時間をそれぞれ短くする必要があり、図6における温度保持用通電加熱装置20の数が増加することになる。したがって、銅合金線に要求される特性と設備上の制約とを考慮して、時効熱処理中の最高温度と最低温度との差を決定することが望ましい。
【0156】
(その他の実施例)
図4および図8に示されるすべての態様の線材の製造装置を用いた例について示す。条件は以下のとおりとした。
(1)銅合金線を構成する時効析出型銅合金としては、表1に示す合金No.16、22を用いた。
(2)線材の直径については、単線の場合は、線径φ0.03mm、φ0.1mm、φ0.9mm、φ3mmの4種類とした。図4(c)(f)と図8(b)(e)を除く製造装置を用いた場合がこの条件に該当する。
(3)撚線の場合は、単線を7本撚り合わせて撚り線とした。なお、単線の種類は、φ0.03mm、φ0.1mm、φ0.9mmの3種類とした。図4(c)(f)と図8(b)(e)の製造装置を用いた場合がこの条件に該当する。
(4)溶体化処理を施す場合は、線材の直径をφ5mmとし、温度を800℃以上950℃以下として、0.1秒以上5秒以下加熱した後、図示されない水冷機構により急冷した。図4(e)(f)と図8(d)(e)の製造装置を用いた場合がこの条件に該当する。
(5)溶体化処理後に伸線する場合、伸線後の線材の直径をφ0.03mm、φ0.1mm、φ0.9mm、φ3mmの4種類とした。
(6)被覆装置については、公知の装置を用いた。なお、被覆はポリエチレンとした。
【0157】
この結果、図4および図8に示されるすべての態様の線材の製造装置を用いた例について、以下のことが確認された。
(A)単線としては、表2および表3とほぼ同様の結果が得られ、銅合金線に対して必要な時効処理が施され、かついずれも時効後の粘着は生じなかった。
(B)撚線としては、これを構成する各単線について、表2および表3とほぼ同様の結果が得られ、かつ各単線に対して必要な時効処理が施されていた。また、各単線間について時効後の粘着は生じなかった。
(C)溶体化、伸線、被覆に関しては、いずれも時効処理と連続して実施することができた。また、銅合金線に対して必要な時効処理が施され、かついずれも時効後の粘着は生じなかった。
【0158】
上述したように、この発明の線材の製造方法によると、連続焼鈍で時効熱処理を行うことができる。走間焼鈍装置(走間加熱装置)を様々な連続装置(例えば、撚線機、被覆機、伸線機)とタンデムに配置することができるので、工程短縮を実現することができる。また、溶体化専用の通電加熱装置(溶体化処理装置)を走間焼鈍装置(走間加熱装置)の上流側に設置することによって、溶体化−時効工程の連続製造が可能になり、また伸線機を走間焼鈍装置(走間加熱装置)の前後に入れることによって、溶体化−伸線−時効、溶体化−時効−伸線、溶体化−伸線−時効−伸線工程の連続製造が可能になり、様々な特性の材料を得ることができる。さらに、本発明においては、線材の製造後にバッチ炉による時効熱処理を施す必要がなくなるので、時効熱処理後に線材が粘着するおそれがなくなり、得られる線材の品質および歩留まりが向上する。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】この発明の第1の態様に係る走間焼鈍装置(即ち走間炉設備)の一例を説明する模式図である。
【図2】図1に示す走間焼鈍装置3の内部構造を示す模式図である。
【図3】この発明の第1の態様の他の例の線材の製造装置を説明する模式図である。
【図4】この発明の第1の態様に係る装置構成例を説明する模式図である。
【図5】この発明の第2の態様に係る走間加熱装置(即ち走間炉設備)の一例を説明する模式図である。
【図6】図5に示す走間加熱装置13の内部構造を示す模式図である。
【図7】走間加熱装置13の内部における線材16の温度変化を示すグラフである。
【図8】この発明の第2の態様に係る装置構成例を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0160】
1、11 線材繰り出し装置
2、12 ダンサー装置
3 走間焼鈍装置
4、14 引取キャプスタン
5、15 線材巻き取り装置
6、16 線材
7 ガイドロール
8 通電加熱装置(予熱装置)
13 走間加熱装置
17 ガイドロール
18 電源
19 昇温用通電加熱装置
20 温度保持用通電加熱装置

【出願人】 【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
【出願日】 平成19年9月3日(2007.9.3)
【代理人】 【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮


【公開番号】 特開2008−88549(P2008−88549A)
【公開日】 平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願番号】 特願2007−228218(P2007−228218)