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【発明の名称】 電解コンデンサ用アルミニウム箔の製造方法
【発明者】 【氏名】吉井 章

【氏名】渡辺 英雄

【要約】 【課題】電解コンデンサアルミニウム箔を焼鈍する際に、コイルの幅方向における酸化膜の不均一や端面における酸化現象などが発生して、後工程でのエッチングが良好になされないのを防止する。

【解決手段】冷間圧延により製造されたアルミニウム箔を焼鈍する際に、負圧雰囲気にするとともに、0.4×10Pa〜0.9×10Paの圧力範囲において、雰囲気ガスの排出による降圧と雰囲気ガスの導入による昇圧とを繰り返す。降圧の到達圧力は0.4×10Pa〜0.6×10Pa、昇圧の到達圧力は0.7×10Pa〜0.9×10Paに設定するのが望ましい。本発明により、巻きずれなどを発生させることなくコイル状のアルミニウム箔表面にコイル幅方向で均一性の高い酸化皮膜を形成することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷間圧延により製造されたアルミニウム箔を焼鈍する際に、負圧雰囲気にするとともに、0.4×10Pa〜0.9×10Paの圧力範囲において、雰囲気ガスの排出による降圧と雰囲気ガスの導入による昇圧とを繰り返して焼鈍を行うことを特徴とする電解コンデンサ用アルミニウム箔の製造方法。
【請求項2】
前記降圧の到達圧力が0.4×10Pa〜0.6×10Paの範囲内に設定され、前記昇圧の到達圧力が0.7×10Pa〜0.9×10Paの範囲内に設定されていることを特徴とする請求項1記載の電解コンデンサ用アルミニウム箔の製造方法。
【請求項3】
前記降圧と昇圧とがなされる1サイクルが30分以内であることを特徴とする請求項1または2に記載の電解コンデンサ用アルミニウム箔の製造方法。
【請求項4】
前記アルミニウム箔を昇温させて焼鈍温度で焼鈍させる際に、前記アルミニウム箔が300℃に達しない昇温途中では雰囲気圧力を0.8×10Pa〜0.9×10Paに設定することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電解コンデンサ用アルミニウム箔の製造方法。
【請求項5】
前記降圧と昇圧とは、焼鈍時の冷却温度が200℃に至るまで行われることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電解コンデンサ用アルミニウム箔の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は電解コンデンサの電極に用いられる電解コンデンサ用アルミニウム箔の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム電解コンデンサの電極には、一般に、厚さ20〜150μmで強酸溶液中でエッチングをして表面積を拡大した高純度アルミニウム箔が使用されている。
上記アルミニウム箔は、高純度のアルミニウム材を原料として冷間圧延を経て所定厚さの箔にされ、その後、上記エッチングにより粗面化がなされる。このアルミニウム箔のうち中高圧用電解コンデンサなどに使用される箔では、上記アルミニウム箔圧延により薄厚にした後、コイル状に巻き取り、このコイルをバッチ炉に収容して、500℃以上の高温で焼鈍して立方晶率を95%以上に高めることでエッチング性を向上させている。
【0003】
上記焼鈍では高温での加熱によってアルミニウム箔表面に酸化皮膜が成長するが、この酸化皮膜が過度に成長した場合、著しくエッチング性が低下する。したがって、焼鈍の際には酸化皮膜の厚さが通常20〜80Åになるよう制御されている。このために、焼鈍雰囲気中の酸素濃度、又は露点を管理するのが一般的である。例えば、焼鈍前に焼鈍炉内の真空引きを行った後、Ar、N等の不活性ガスを流入させて炉内の酸素濃度を低減した後、アルミニウム箔を加熱処理する。しかし、箔圧延後のアルミニウム箔表面には、圧延油、水分等が付着しており、上記焼鈍に際し、加熱された圧延油や水分がガス化し、焼鈍雰囲気を汚染するとともに、ガス化した物質がコイル中央部から端部に押し出される際にアルミニウム箔表面で反応し、酸化皮膜のバラツキ、端部酸化等の異常を招くという問題がある。酸化皮膜のバラツキは電解コンデンサの容量のバラツキの原因となる。また、過度に酸化された端部はエッチング性が悪く、良好な粗面化が行えない。
【0004】
このような酸化皮膜のバラツキ等を防止するため、例えば、アルミニウム箔に対し脱脂を行って表面を清浄化することで圧延油などの除去を行い、さらに、500〜950Torrの雰囲気で350〜450℃で焼鈍し、一旦、1Torr以下に減圧することで、水分をコイルの各層間から発生させ、これを上記減圧時に炉外に排出し、その後、再度500〜950Torrで450〜600℃に焼鈍することで均一な酸化皮膜を形成することを意図した製造方法(特許文献1参照)が提案されている。
【特許文献1】特開平10−152763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記提案技術においては、一旦1Torr以下に減圧する際に、前記コイル内部に残留するガスが急激に排出されることによってコイルの巻きずれが起きたりアルミニウム箔同士の密着が生じてしまうという問題がある。アルミニウム箔同士の密着は、後工程でコイルを巻き直す際にしわを招いてしまう。
【0006】
本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、巻きずれなどを発生させることなくコイル状のアルミニウム箔表面にコイル幅方向で均一性の高い酸化皮膜を形成することができる電解コンデンサ用アルミニウム箔の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の電解コンデンサ用アルミニウム箔の製造方法のうち、請求項1記載の発明は、冷間圧延により製造されたアルミニウム箔を焼鈍する際に、負圧雰囲気にするとともに、0.4×10Pa〜0.9×10Paの圧力範囲において、雰囲気ガスの排出による降圧と雰囲気ガスの導入による昇圧とを繰り返して焼鈍を行うことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の電解コンデンサ用アルミニウム箔の製造方法の発明は、請求項1記載の発明において、前記降圧の到達圧力が0.4×10Pa〜0.6×10Paの範囲内に設定され、前記昇圧の到達圧力が0.7×10Pa〜0.9×10Paの範囲内に設定されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の電解コンデンサ用アルミニウム箔の製造方法の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記降圧と昇圧とがなされる1サイクルが30分以内であることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の電解コンデンサ用アルミニウム箔の製造方法の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、前記アルミニウム箔を昇温させて焼鈍温度で焼鈍させる際に、前記アルミニウム箔が300℃に達しない昇温途中では雰囲気圧力を0.8×10Pa〜0.9×10Paに設定することを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の電解コンデンサ用アルミニウム箔の製造方法の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の発明において、前記降圧と昇圧とは、焼鈍時の冷却温度が200℃に至るまで行われることを特徴とする。
【0012】
すなわち本発明によれば、焼鈍炉内を負圧雰囲気にすることで、焼鈍中にコイル内で発生するガス(以下不純物ガスとする)がコイル外へ排出される。この際に、0.4×10Pa〜0.9×10Paの圧力範囲において降圧と昇圧とを繰り返すことで、上記不純物ガスが降圧時に円滑かつ速やかにコイル外から炉外に排出され、昇圧時に清浄な雰囲気ガスが炉内に導入されて箔同士の密着が防止され、前記降圧時に不純物ガスがコイル外に排出されるのを一層円滑にする。これにより、不純物ガスが円滑にコイル外に排出されないことによってコイル端部で生じる酸化皮膜のバラツキや端部酸化などの異常発生が防止され、幅方向に均一な酸化皮膜を形成することが可能になる。
【0013】
なお、降圧時の圧力を0.4×10Pa以上に規制することで、0.4×10Pa未満の低圧に減圧した場合に、上記不純物ガスが急激にコイル外に排出されてコイルの巻きずれやアルミニウム箔同士の密着が生じるのを回避することができる。また、過度に低圧にすると、雰囲気ガス濃度が低下して熱伝導性が低下して焼鈍速度が著しく遅くなるため、0.4×10Pa以上の圧力にして熱伝導性を確保する。
なお、降圧時の到達圧力は、0.4×10Pa以上にするとともに、0.6×10Pa以下とするのが望ましい。これにより不純物ガスをコイル外に良好に排出するとともに雰囲気ガスを炉外に速やかに排出することができる。降圧時の到達圧力が0.6×10Pa超であると、不純物ガスの排出作用は得られるが、該作用は十分ではない。降圧時の到達圧力域は、さらに、下限を0.45×10Pa、上限を0.55×10Paに定めるのがさらに望ましい。
【0014】
また、昇圧時の圧力を0.9×10Pa以下にすることで、コイル外への上記不純物ガスの排出が継続してなされる。また、焼鈍炉に備えられているコイル搬出入用などの蓋が十分に吸着されて密閉性が増し、蓋周辺外部からの大気の侵入が防止される。一方、0.9×10Paを超えて昇圧させると、前記不純物ガスの排出が不十分になり、また、前記蓋の吸着力が小さくなって、大気が焼鈍炉内に侵入しやすくなる。
なお、昇圧時の到達圧力は、0.9×10Pa以下にするとともに、0.7×10Pa以上とするのが望ましい。0.7×10Pa以上とすることにより雰囲気ガスを外部から炉内に十分に導入をして焼鈍中のコイルの密着を効果的に防止することができる。昇圧時の到達圧力域は、さらに、下限を0.75×10Pa、上限を0.9×10Paに定めるのがさらに望ましい。
【0015】
なお、上記降圧および昇圧によるサイクルは、1サイクル当たり30分以内とするのが望ましい。これは、コイル内より発生するガスは常時発生しているため、これを効果的に除去するためには、ガスの排出と清浄な雰囲気の導入が必要となる。そのため、1サイクルを30分以内と定める。これ以上では発生したガスによる汚染防止が不十分になる。
また、上記降圧および昇圧によるサイクルは、焼鈍時冷却過程で200℃に降温するまで行うのが望ましい。これは、降温中においても200℃程度までは、コイルからのガスの発生があり、このガスを排出しつつ箔の密着を防止するために、上記降圧と、昇圧を繰り返すのが望ましい。なお、200℃よりも低温になった状態では、ガス発生は殆ど認められない。なお、これ以上の温度で炉出した場合、大気中の酸素による端部酸化が生じるため、できるだけ低温にて炉出することが望ましい。
【0016】
また、上記焼鈍では、昇温時に300℃に達するまでは、炉内圧力は、上記降圧および昇圧による圧力変動によることなく、0.8×10Pa〜0.9×10Paの圧力範囲に設定するのが望ましい。これは、焼鈍の昇温途中、300℃に達するまでは、温度上昇速度が遅いため、炉内圧力を極端に下げて熱伝導性が低い状態にすると、さらに温度の上昇が緩慢になり、生産効率が悪くなるためである。また、0.8×10Pa以上の圧力にするのが望ましい。なお、300℃に達するまでの昇温中でもガス排出作用を得るとともに、炉の蓋の密着性を増すために、炉内圧力は0.9×10Pa以下にするのが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
以上、説明したように本発明の電解コンデンサ用アルミニウム箔の製造方法によれば、冷間圧延により製造されたアルミニウム箔を焼鈍する際に、負圧雰囲気にするとともに、0.4×10Pa〜0.9×10Paの圧力範囲において、雰囲気ガスの排出による降圧と雰囲気ガスの導入による昇圧とを繰り返して焼鈍を行うので、アルミニウム箔の密着が発生することなくアルミニウム箔コイル内から残油や水分などによる不純物ガスが効率よく排出され、コイルの幅方向で均一な酸化皮膜を形成することができる。また、上記不純物ガスは、昇降圧時の圧力調整によって急激に排出されることはなく、コイルの巻きずれ発生を回避することができる。酸化皮膜が均一に形成されたアルミニウム箔は、良好なエッチング性を有しており、エッチングによる粗面化によって単位面積当たりの静電容量に優れ、かつ静電容量のバラツキの小さい電解コンデンサ用アルミニウム箔電極を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明の一実施形態を図1、2に基づいて説明する。
本発明で用いられるアルミニウム箔は、好適にはアルミニウム純度99.9%以上のアルミニウム材を用いて製造をすることができる。該アルミニウム材では、エッチング性を向上させるために、種々の微量元素を添加したものであっても良い。
上記製造においては、鋳造などによる溶製、均質化処理(省略も可能)、熱間圧延、冷間圧延を経て所定の厚さ(一般には20〜150μm厚)のアルミニウム箔とされる。また、連続鋳造圧延を経て、冷間圧延によりアルミニウム箔を製造するものであってもよい。ただし、本発明としては、アルミニウム箔に用いるアルミニウム材の組成、焼鈍に至るまでの製造方法が特に限定をされるものではなく、アルミニウム箔の厚さが上記に限定されるものでもない。
【0019】
前記工程により冷間圧延後に得られるアルミニウム箔は、本発明で製造条件を定める焼鈍が施される。該焼鈍では、焼鈍炉が用いられるが、本発明としては焼鈍炉は負圧雰囲気が得られるものであればよく、焼鈍炉の構成が特に限定されるものではない。該焼鈍炉1の一例を図1に示す。該焼鈍炉1は、冷間圧延後のアルミニウム箔を巻き取ったアルミニウム箔コイル10を収容可能な容積を有しており、該アルミニウム箔コイル10を搬出入するための開閉部2を有し、該開閉部2を外側から密閉する蓋3を有している。また、焼鈍炉1は、前記蓋3で密閉した状態で、真空引き、雰囲気ガスの排出、導入が可能なガス排出・導入部4を有している。また、焼鈍炉1は、当然にアルミニウム箔コイル10を加熱するための加熱手段(図示しない)を備えている。
【0020】
上記焼鈍では、焼鈍雰囲気を負圧雰囲気にすることが必須であり、さらにHガスなどの還元性雰囲気や、Ar、N等の不活性ガス雰囲気にして焼鈍中にアルミニウム箔表面に形成される酸化皮膜厚を調整するのが望ましい。なお、該雰囲気では、還元性ガスと不活性ガスとが混合されたものでもよく、焼鈍中に雰囲気ガス成分を変更するものであってもよい。また、本願発明における焼鈍の雰囲気が上記に限定されるものでもない。なお、上記酸化皮膜厚は、好適には20〜80Åであるが、本発明としては酸化皮膜厚が特に限定されるものではない。
【0021】
焼鈍に際しては、蓋3を開け開閉部2を通して焼鈍炉1内にアルミニウム箔コイル10を搬入し、その後、蓋3を閉めて焼鈍炉1内を密閉する。
さらに焼鈍前にはガス排出・導入部4を通して焼鈍炉内を好適には100Pa以下まで真空排気し、炉内の酸素分圧を充分に下げるのが望ましい。望ましくはこの真空排気を2回以上行うとより効果的である。真空排気後、前記雰囲気ガスをガス排出・導入部4を通して焼鈍炉1内に導入する。雰囲気ガスとしてHガスを用いる場合は、真空排気後に一旦Ar、N等の不活性ガスを充填した後、Hガスを導入することが望ましい。また、Ar、N等の不活性ガスを雰囲気とする場合は真空引き直後に該当ガスにて充填を行うことができる。
【0022】
雰囲気ガス充填終了後、図2に示すように焼鈍(加熱)を開始する。なお、昇温の途中では、アルミニウム箔コイル10の温度が少なくとも300℃に達するまでの領域では炉内圧力を0.8×10Pa〜0.9×10Paとするのが望ましい。この炉内圧力においても、コイル内部で残油等による不純物ガスが発生し、コイル外に排出することができる。また、負圧雰囲気であることにより、前記蓋3が焼鈍炉本体側に強固に吸着され、開閉部2と前記蓋3とが重ねられた開閉部2周縁の隙間から大気が焼鈍炉1内に侵入するのを防止する。
【0023】
アルミニウム箔コイル10の温度が300℃以上になると、0.4×10Pa〜0.9×10Paの範囲内、好適には、降圧の到達圧力を0.4×10Pa〜0.6×10Paの範囲内、昇圧の到達圧力を0.7×10Pa〜0.9×10Paの範囲内にして、焼鈍炉1内の降圧と昇圧とを繰り返す。降圧と昇圧とが行われるサイクルは30分以内とするのが望ましい。
焼鈍時間は、コイルの大きさ、焼鈍温度、コイルから発生する不純物ガスの排出進行程度などを考慮して定めることができ、焼鈍温度などを含めて本発明としては特定のものに限定されるものではないが、例えば、焼鈍温度450〜580℃、焼鈍時間2〜24時間を挙げることができる。また、上記降圧と昇圧とは、焼鈍全体に亘るものではなく、一部の期間においておこなってもよいが、好適には焼鈍温度での加熱後、冷却に際し、コイル温度が200℃に達するまでは継続するのが望ましい。
【0024】
上記降圧、昇圧時の炉内状況について図2に基づいて説明する。
焼鈍には、加熱によって上記のようにコイル内で圧延油などによって不純物ガスが発生している。この不純物ガスは、炉内圧力が適度な圧力にまで降圧されることによって急激ではないものの速やかにアルミニウム箔コイル10外へと排出される。この不純物ガスは、焼鈍炉1内の雰囲気ガスがガス排出・導入部4を通して焼鈍炉1外へ排出されるのに伴って焼鈍炉1外へ排出される。なお、炉内圧力が降圧到達圧力に達した後、該圧力で保持すると上記雰囲気ガスおよび不純物ガスの焼鈍炉1外への排出は停止するが、アルミニウム箔コイル10からより穏やかに不純物ガスをコイル外に排出させることができる。
【0025】
次いで、焼鈍炉1内に前記ガス排出・導入部4を通して雰囲気ガスを導入しつつ炉内圧力を適度な圧力にまで昇圧されると、焼鈍炉1内に清浄な雰囲気ガスが拡散し、雰囲気ガスによるアルミニウム箔コイル10が汚損されることがない。また、適度な圧力で負圧が維持されているため、その量は低減するものの、アルミニウム箔コイル10からの不純物ガスの排出がなされる。この際には、雰囲気圧力が上昇することでコイルでのアルミニウム箔同士の密着が抑止される。なお、炉内圧力が昇圧到達圧力に達した後、該圧力で保持する場合、コイル内圧が炉圧に達成するまで不純物ガスはコイルより排出されるが、ガス発生は継続的に起こるため、コイル内圧が炉圧を上回り、不純物ガスのコイル内滞留が生じ、皮膜への悪影響が生じる。したがって、定常的にコイル内ガスの排出、雰囲気の導入を行なうためには、炉圧を停滞させないよう制御することが望ましい。
なお、上記降圧、昇圧時には、焼鈍炉1内が適圧の負圧に維持されることで、蓋3が強固に焼鈍炉本体に密着して良好な密閉性を維持している。
上記降圧、昇圧を繰り返すことで、アルミニウム箔コイル10の巻きずれや密着を招くことなく、アルミニウム箔コイル10内で発生する不純物ガスを速やかにコイル外に排出することができ、該不純物ガスによりアルミニウム箔表面に形成される酸化皮膜に異常を来すことがない。この結果、アルミニウム箔には、コイル幅方向においても均質に酸化皮膜が形成される。
【0026】
上記焼鈍により得られた電解コンデンサ用アルミニウム箔は、エッチングに供する。該エッチングは電解エッチング、化学エッチングを問わないものであり、所望のエッチング方法を採用することができる。該エッチングでは、アルミニウム箔表面にバラツキがなく均質な酸化皮膜が形成されているため、良好なエッチングが均等になされ、高くて均質な粗面化率が得られる。この電解コンデンサ用アルミニウム箔を電極として用いた電解コンデンサは優れた静電容量を得ることができる。
【0027】
なお、上記実施形態では、焼鈍炉内の降圧、昇圧の繰り返しに際し、圧力変化率などについては説明をしておらず、本発明では、降圧、昇圧時の圧力変化率を所望により設定することができ、本発明としては特定のものに限定されない。
図3は、上記降圧、昇圧における圧力変化パターン例を示すものであり、各パターンについて以下に説明する。
【0028】
図3(a)に示すパターンでは、昇温時に300℃まで所定の負圧圧力に維持した後、急激な降圧と、緩やかな昇圧を繰り返しており、昇圧においては、次第に圧力変化率が大きくなるように圧力を変化させている。
図3(b)に示すパターンでは、昇温時に300℃まで所定の負圧圧力に維持した後、急激な降圧と、緩やかな一定の変化率での昇圧を繰り返しており、昇圧時には、到達圧力で所定時間圧力保持を行っている。
図3(c)に示すパターンでは、昇温時に300℃まで所定の負圧圧力に維持した後、徐々に圧力変化率が小さくなるよう降圧し、その後、徐々に圧力変化率が大きくなるような昇圧を繰り返しており、降圧から昇圧に至る際には、徐々に圧力を増し、昇圧から降圧に至る際には急激に圧力を減少させている。
図3(d)に示すパターンでは、昇温時に300℃まで所定の負圧圧力に維持した後、徐々にほぼ一定の圧力変化率で降圧させ、降圧時に到達圧力で所定時間圧力保持した後、徐々にほぼ一定の圧力変化率で昇圧させており、昇圧時の圧力変化率の絶対値は、降圧時の圧力変化率の絶対値よりもやや大きくなっている。
さらに、 図3(e)に示すパターンでは、昇温時に300℃まで所定の負圧圧力に維持した後、急激に降圧させ、降圧時到達圧力で所定時間圧力保持した後、急激に昇圧させており、昇圧時到達圧力では、圧力保持を殆どせずに降圧に移行している。
さらに、 図3(f)に示すパターンでは、昇温時に300℃まで所定の負圧圧力に維持した後、急激に降圧させ、降圧時到達圧力では、圧力保持を殆どせずに昇圧に移行して、急激に昇圧させており、昇圧時到達圧力で所定時間圧力保持している。
【0029】
以上、本発明について上記各実施形態に基づいて説明をしたが、本発明は、上記説明の内容に限定をされるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲で適宜の変更が可能である。
【実施例1】
【0030】
以下に、本発明の実施例について説明する。
4N5のアルミニウム地金を用い、Si:10〜15ppm、Fe:10〜15ppm、Cu:30〜60ppm、Pb:0.3〜0.6ppm含有に調整したアルミニウムスラブを作成した。得られたスラブを550〜600℃×3〜12時間の均質化処理を行った後、500〜600℃の温度で熱間圧延を開始し、95〜98%の圧下を行い、250〜300℃で巻き上げた。熱間圧延を行ったコイルを98〜99%冷間圧延した後、200〜300℃×3〜10時間の中間焼鈍を行った。
中間焼鈍終了後、10〜30%の最終圧延を行った。圧延後、切断を行い、500〜550mm幅150kgコイルを作成した。
【0031】
得られたコイルを焼鈍炉に入れ、100Pa以下に減圧した後、Arガス、又はNガスを充填し、0.9×10Paまで復圧した。復圧後、再度100Pa以下に真空引きし、Ar又はNガスを充填し、表1に示す焼鈍開始炉内圧(0.6〜1.05×10Pa)まで復圧した。
【0032】
雰囲気を焼鈍開始雰囲気圧にした後、Ar又はNガス又はHガスを1〜100ml/min供給しながら焼鈍中の炉内圧を表1に示す圧力にして焼鈍を行った。
コイル温度が300℃になるまでは、雰囲気圧力を発明材では、0.8×10〜0.9×10Paの範囲内に維持し、コイル温度300℃以上の温度範囲では、雰囲気圧力を表1に示すように降圧と昇圧とを繰り返して焼鈍を行った。比較例では、同様の圧力または圧力条件を代えて焼鈍を行った。各供試材の焼鈍では、500℃以上で6時間保持し、該焼鈍温度での加熱終了後、冷却速度20〜150℃/Hrで冷却し、コイル温度が200℃に低下するまでは、上記降圧と昇圧とを繰り返した。冷却の間も、表1に示す雰囲気圧力を維持できるよう、減圧および雰囲気ガス供給を制御した。
【0033】
コイル温度が200℃以下になった時点で、焼鈍炉内からコイルを取り出し、得られた焼鈍コイルの巻きずれの検査と、酸化皮膜厚さの測定を行った。巻きずれは、コイル全体における主となる端部位置を基準にして、部分的に外側にずれた部分の外側ずれ量を測定し、外側ずれ量が2mm以下のものを○、2mm超5mm以下のものを△、5mm超のものを×と評価し、表2に示した。また、酸化皮膜厚さは、コイルの外周部(最外周より10m長さ内側位置)と内周部(最内周より15m長さ外側位置)のそれぞれにおいて、異なる幅方向位置でESCA(X線光電子分光法)により酸化皮膜厚さを測定し、その結果を表2に示した。これら酸化皮膜厚さの位置によるバラツキについて、各供試材の外周3点及び内周3点の計6点における(最大−最小)/最小%で算出した。
【0034】
また、焼鈍コイルの巻きなおしを行い、しわの発生度合いにより箔の密着性について評価を行った。その際、しわなしを○、最長しわ長さ50cm以下を△、最長しわ長さ50cm超を×として評価し、表2に示した。また、端面の変色具合を観察し、端部より10mm以上の幅にて変色が確認できる場合×、5mm以上の場合は△、それ以外を○として評価を行った。これらの結果も表2に示した。
【0035】
【表1】


【0036】
【表2】


【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に用いられる焼鈍炉の構成および降圧、昇圧時のガスの流れを説明する図である。
【図2】同じく、焼鈍時の温度パターンと圧力パターンを示す図である。
【図3】本発明の他の実施形態における焼鈍時の各圧力パターンを示す図(a〜f)である。
【符号の説明】
【0038】
1 焼鈍炉
2 開閉部
3 蓋
4 ガス排出・導入部
【出願人】 【識別番号】000176707
【氏名又は名称】三菱アルミニウム株式会社
【出願日】 平成18年9月28日(2006.9.28)
【代理人】 【識別番号】100091926
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 幸喜


【公開番号】 特開2008−81811(P2008−81811A)
【公開日】 平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願番号】 特願2006−264694(P2006−264694)