トップ :: C 化学 冶金 :: C22 冶金;鉄または非鉄合金;合金の処理または非鉄金属の処理

【発明の名称】 アルミニウム合金押出材の製造装置
【発明者】 【氏名】青野 雅路

【氏名】宮木 利孝

【氏名】吉田 朋夫

【要約】 【課題】曲げ加工の精度を向上させると共に、塗装焼付け後にばらつきの少ない所望の材料強度を得ることができるアルミニウム合金押出材を製造する装置を提供する。

【構成】加熱されたアルミニウム合金の鋳塊から押出材Mに押出成形する押出機71と、押出機71からの押出材Mを搬送しながら冷却するクーリングテーブル74と、を少なくとも備えたアルミニウム合金押出材の製造装置1であって、該製造装置は、前記クーリングテーブル74から搬送された押出材Mを予備時効処理するための加熱炉10をさらに備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱されたアルミニウム合金の鋳塊から押出材に押出成形する押出成形手段と、該押出成形手段から押出された押出材を搬送しながら冷却する冷却処理手段と、を少なくとも備えたアルミニウム合金押出材の製造装置であって、
該製造装置は、前記冷却処理手段から搬送された押出材に対して予備時効処理を行う手段をさらに備えることを特徴とするアルミニウム合金押出材の製造装置。
【請求項2】
前記予備時効処理手段は、前記押出材を加熱する手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム合金押出材の製造装置。
【請求項3】
前記予備時効処理手段は、前記押出材から放熱される熱を断熱するための断熱手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のアルミニウム押出材製造装置。
【請求項4】
前記予備時効処理手段は、前記押出材を搬送する搬送手段を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のアルミニウム合金押出材の製造装置。
【請求項5】
前記搬送手段は、前記押出材の搬送時に、該押出材が搬送される方向に沿って回転可能に構成されていることを特徴とする請求項4に記載のアルミニウム合金押出材の製造装置。
【請求項6】
前記製造装置は、前記冷却処理後の押出材を所定の長さに切断処理する切断処理手段をさらに備えており、前記予備時効処理手段は、前記冷却処理手段と前記切断処理手段との間に配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のアルミニウム合金押出材の製造装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム合金の押出材の製造装置に係り、特に、塗装焼付けを行うに好適なアルミニウム合金の押出材の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護の観点から、自動車用構造用部材の材料としてアルミニウム合金が注目されている。このような自動車用構造用部材の素形材となるアルミニウム合金押出材は、図3に示すような、押出機71,プラー72,ランアウトテーブル73,クーリングテーブル74,切断テーブル75を少なくとも備えた製造装置70を用いて製造される。
【0003】
具体的には、まず、加熱したアルミニウム合金の鋳塊(図示せず)を押出機71内に投入し、押出機71を用いて鋳塊を加圧すると共に、押出機71から押出材Mを押出成形する。この際、プラー72を用いて押出される押出材Mの先端を把持し、ランアウトテーブル73上方においてプラー72を押出方向Lに移動させ、押出材Mを引張りながら押出成形を行う。成形された押出材Mは、ランアウトテーブル73からクーリングテーブル74まで搬送される。クーリングテーブル74に搬送された押出材Mを、さらにクーリングテーブル74の搬送テーブル74aにより搬送すると共に複数のファン74bにより押出材Mを冷却処理する。冷却処理された押出材Mは、切断テーブル75のソーチャージテーブル75aまで搬送され、切断機75bにより押出材Mを所定の長さに切断処理する(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このように、製造装置70を用いることにより、押出成形、冷却処理、切断処理などの処理工程を連続して行うことができるので、押出材の生産性を向上させることができる。そして、さらに切断された押出材に対して、曲げ加工→調質処理→塗装焼付け処理等の一連の処理工程を行うことにより自動車用構造用部材を製造することができる。
【0005】
ところで、押出材の製造後の前記一連の処理工程において、曲げ加工された部材は調質処理工程において加熱炉に投入されるが、曲げ加工部材の形状によっては、加熱炉内のスペースを広く要するため、効率的に調質処理を行うことができない場合がある。そこで、塗装焼付け時の熱履歴を利用して、調質処理を行うことなくアルミニウム合金を所望の耐力にまで硬化させる、いわゆるベークハードと呼ばれる方法が提案されている。
【0006】
このような方法の一例として、6000系アルミニウム合金(Al−Mg−Si合金)の鋳塊を押出成形し、該成形後直ちに、押出材を90±50℃で1〜24時間保持する(予備時効処理を行う)アルミニウム合金押出材の成形方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この方法によれば、押出成形後、直ちに前記加熱条件で押出材が加熱されるので、アルミニウム合金の自然時効は抑制され、塗装焼付け時のMgSiの相の核を生成することができる。その結果、塗装焼付け時において、MgSi相の析出を促進させることができ、部材を所望の耐力にまで硬化させることができる。
【0007】
【特許文献1】特開平5−7929号公報
【特許文献2】特開2006−97104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献2の製造方法を上述したような製造装置を用いて行った場合には、生産コストの低減のため、所定の長さに切断処理されたアルミニウム合金押出材が所定量ストックされてから、これら押出材を加熱炉まで搬送し、同時にまとめて加熱炉に投入し、予備時効処理が行われている。
【0009】
しかし、このような場合には、押出成形してから押出材を加熱炉に投入するまでにかなりの時間が経過するため、その間にアルミニウム合金の自然時効が進んでしまうことがある。その結果、前記塗装焼付けによる所望の硬化特性(具体的には自動車用構造用部材として必要な耐力)を得ることができない場合がある。
【0010】
また、押出成形された順に、各押出材の自然時効が進むため、これらの押出材を同時にまとめて予備時効処理を行った場合には、該処理後の各押出材の耐力にばらつきが生じてしまう。この耐力のばらつきにより、その後の曲げ加工工程において所望の曲げ加工精度が得られないことがあり、塗装焼付け後の耐力にもさらにばらつきが生じることがある。
【0011】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、曲げ加工の精度が向上すると共に、塗装焼付け後にばらつきの少ない所望の耐力を得ることができるアルミニウム合金押出材を製造する装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るアルミニウム合金押出材の製造装置は、加熱されたアルミニウム合金の鋳塊から押出材に押出成形する押出成形手段と、該押出成形手段から押出された押出材を搬送しながら冷却する冷却処理手段と、を少なくとも備えたアルミニウム合金押出材の製造装置であって、該製造装置は、前記冷却処理手段から搬送された押出材に対して予備時効処理を行う手段をさらに備えることを特徴とする。
【0013】
本発明のような製造装置を用いて前記押出材を製造する場合には、冷却処理手段により冷却された押出材に対して連続して予備時効処理を行うことが可能となり、アルミニウム合金の自然時効を安定的に抑制することができる。その結果、予備時効処理後の押出材の耐力にばらつきが少なくなり押出材の曲げ加工の精度が向上すると共に、塗装焼付け時の熱履歴により安定して硬化特性が向上する。そのために、ばらつきの少ない所望の耐力を有した例えば自動車用構造用部材に好適な部材を得ることができる。
【0014】
なお、押出成形手段は、鋳塊から押出材に成形できるものであれば特に限定されるものではなく、シリンダとプランジャとからなる装置が一般的である。また、押出成形手段は、アルミニウム合金の鋳塊を加熱する装置をさらに備えてもよい。また、冷却処理手段は、加熱状態で成形された押出材を冷却するため装置と押出材を搬送する装置を備えるものであれば、特に限定されるものではない。押出材を冷却する装置としては、例えば、押出材にエアを吹付けるファン、コンプレッサにより圧縮されたエアを吹付けるエアノズル、冷却水を噴霧するスプレなどが挙げられる。
【0015】
なお、本発明にいう予備時効処理とは、その後の塗装焼付け工程における熱履歴によって、アルミニウム合金押出材の時効硬化を促進させるための処理であり、具体的には、自然時効を抑制し、MgSi析出物の核(いわゆるGPzone)を生成することができる範囲の温度条件となるように、押出材に対して行う熱処理である。
【0016】
また、前記予備時効処理手段は、前記押出材を加熱する手段を備えることが好ましい。このような加熱手段を設けることにより、所定の温度範囲となるように押出材を加熱することができ、安定した品質の押出材を得ることができる。
【0017】
加熱手段は、アルミニウム合金の予備時効処理条件に合わせた加熱能力を有していればよく、例えば、熱源として電熱線を有した電気加熱炉、熱源としてインダクションヒータを有した誘導加熱炉、熱源として加熱された不活性ガスが送風されるガス加熱炉などが挙げられる。
【0018】
また、前記予備時効処理手段は、前記押出し材から放熱される熱を断熱するための断熱手段を備えることがより好ましい。前記加熱手段と前記断熱手段を共に備えることに加熱手段の加熱効率を向上させることができる。また、アルミニウム押出材の予備時効処理温度は40℃〜140℃程度の温度範囲であり、焼入れなどの加熱処理等に比べるとその温度条件は低い。よって、予備時効処理手段に前記加熱手段を設けない場合であっても、冷却処理手段により冷却される押出材の温度を調整し、該調整された押出材から放熱される熱を断熱することにより押出材を保温すれば、充分に上記温度範囲を確保することができる。この結果、設備投資も少なく、加熱などによるエネルギーコストを新たに発生させることなく、より安価に予備時効処理を行うことができる。
【0019】
尚、冷却処理手段によって冷却される押出材の冷却温度を所望の温度に調整することができれば、より正確にエネルギを押出材に保持させることができるので、押出材に対して安定した予備時効処理を行うことができる。
【0020】
前記予備時効処理手段は、前記アルミニウム合金押出材を搬送する搬送手段を備えることがより好ましい。このような搬送手段を備えることにより、連続して一定時間の間に加熱処理を行うことができ、安定した品質の押出材を製造することができる。搬送手段としては、例えば、押出材が搬送される方向(搬送方向)に沿ってローラを駆動させることにより押出材を搬送する駆動式のガイドローラや、押出材の搬送方向に沿って張られたベルトを駆動させることにより押出材を搬送するコンベアなどが挙げられる。
【0021】
前記搬送手段は、前記押出材の搬送時に、該押出材が搬送される方向に沿って回転可能に構成されていることがより好ましい。この構成にすることにより、押出材を加熱しながら回転させることができるので、押出材の加熱方向にかかわらず、押出材全体に均一な熱処理を施すことができる。特に、このような搬送手段は、一般的な調質処理などの熱処理に比べて短時間で行うことにより熱処理が不均一になりがちな予備時効処理に対しては有効な手段である。
【0022】
前記製造装置は、前記冷却処理後の押出材を所定の長さに切断処理する切断処理手段をさらに備え、かつ、前記予備時効処理手段は、前記冷却処理手段と前記切断処理手段との間に配置されていることがより好ましい。そのように予備時効処理手段を配置することにより、押出成形された押出材に対して直ちに予備時効処理を行うことが可能となり、さらに曲げ加工精度を向上させ、塗装焼付け性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の製造装置を用いれば、安定して同じ形状に曲げ加工が可能な押出材を得ることができる。さらに、塗装焼付けに相当する熱履歴を与えた場合に、ばらつきの少ない所望の耐力を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係るアルミニウム合金押出材の製造装置の一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。図1はアルミニウム合金押出材の製造装置の一例を説明するための斜視図を示しており、図2は、図1のA−A方向における矢視断面図である。
【0025】
図1に示すアルミニウム合金押出材の製造装置1は、前記図3に示した従来の製造装置70と同様に、押出機(押出成形手段)71、プラー72、ランアウトテーブル73、クーリングテーブル(冷却処理手段)74、及び切断テーブル(切断処理手段)75を備えており、これらについては同じ符号を付すことにより説明は省略する。
【0026】
図1に示すように、アルミニウム合金押出材の製造装置1は、従来の装置70と比べ、加熱炉(予備時効処理手段)10をさらに備えた点で相違している。該加熱炉10は、クーリングテーブル74から搬送された押出材Mに対して予備時効処理を行うための炉であり、クーリングテーブル74と切断テーブル75との間に配置されている。また、図2に示すように、加熱炉10は、押出材Mを加熱するためのヒータ(加熱手段)11と、クーリングテーブル74から搬送された押出材Mを炉内において搬送するための搬送テーブル(搬送手段)12を備えている。
【0027】
ヒータ11は、加熱炉10内に搬送された押出材Mを加熱するための電熱線を熱源として備えており、搬送テーブル12の上方に配置されている(図2参照)。また、搬送テーブル12は、押出材Mの搬送方向Sに沿って並設された複数本の長尺ガイド12Aを備えている。長尺ガイド12Aは、枠体12aと、該枠体12a内に収納された複数本のガイドローラ12bとを備えている。各ガイドローラ12bは、搬送方向S及び上下方向に対して垂直な方向(図2の紙面垂直方向)を回転軸として、回転可能なようにモータ(図示せず)に接続されている。さらに、図2に示すように、搬送テーブル12は、押出材Mを搬送方向Sに移動させながら、押出材Mが搬送方向Sに沿って回転可能に構成されている。押出材Mの回転は、押出材Mとガイドローラ12bとの摩擦抵抗、押出材Mの大きさに対する各ガイドローラの搬送方向Sにおける間隔、ガイドローラ12bの径及び回転数等に依存するものであり、これらの各因子を適宜調整することにより、押出材Mを回転させることができる。
【0028】
このような製造装置1を用いて以下に示すよう押出材を製造する。まず、加熱したアルミニウム合金の鋳塊を押出機71内に投入し、前記鋳塊を加圧して押出材Mに押出成形する。この際、プラー72により押出材Mの先端を把持し、押出機71で押出材Mを押出すと共に、把持状態のプラー72を押出方向Lに沿って移動させ押出材Mを押出機71から引き抜く。引き抜かれた押出材Mをクーリングテーブル74の搬送テーブル74aを用いて搬送方向Sに沿って搬送しながら、複数のファン74bにより押出材Mを冷却する。
【0029】
クーリングテーブル74から搬送された押出材Mを搬送テーブル12によりさらに搬送しながら、加熱炉10内においてヒータ11を用いて押出材Mを加熱して予備時効処理を行う。この際、押出材Mは、搬送手段12により図2に示すように搬送方向Sに沿って回転するので、押出材Mの均一な熱処理を行うことができる。さらに、予備時効処理を行った押出材Mを、切断テーブル75のソーチャージテーブル75aに搬送し、切断機75bを用いて押出材Mを所定の長さに切断する。
【0030】
このようにして、得られた押出材は、冷却処理後直ちに予備時効処理を行いアルミニウム合金の自然時効を抑制するように製造された押出材であり、曲げ加工の精度が向上すると共に、塗装焼付け後にばらつきの少ない所望の耐力を得ることができる。
【0031】
さらに、本実施形態では、予備時効処理手段として加熱炉を設けたが、予備時効処理手段として、加熱炉が押出材から放熱される熱を断熱するための断熱構造(断熱手段)を備えた熱処理炉であってもよい。このような断熱構造を備えることにより、エネルギ効率の良い予備時効処理を行うことができる。尚、冷却処理時において、押出材の冷却温度を後工程の予備時効処理が可能な温度となるように押出材を冷却すれば、前記断熱構造によりヒータなどの熱源を設けずに、冷却された押出材からの放熱される熱を利用して押出材の予備時効処理を行うことができる。この結果、押出材を冷却処理後に加熱することなく予備時効処理を行うことができるので、押出材の製造コストを低減することができる。
【0032】
尚、本実施形態では、図1に示すようにクーリングテーブルと切断テーブルとの間に加熱炉を配置したが、自然時効を適切に抑制できるのであれば、その配置は特に制限されるものではなく、例えば、自然時効が遅い材料である場合には、切断テーブルの後段に加熱炉を配置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係るアルミニウム合金押出材の製造装置の一例を説明するための斜視図。
【図2】図1のA−A方向の矢視断面図。
【図3】従来のアルミニウム合金押出材の製造装置の一例を説明する図。
【符号の説明】
【0034】
1…アルミニウム合金押出材の製造装置、10…加熱炉(予備時効処理手段)、11…ヒータ(加熱手段)、12…搬送テーブル(搬送手段)、12A…長尺ガイド、12a…枠体、12b…ガイドローラ、71…押出機(押出成形手段)、72…プラー、73…ランアウトテーブル、74…クーリングテーブル(冷却処理手段)、75…切断テーブル(切断処理手段)、L…押出方向、M…押出材、S…搬送方向
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【識別番号】000100791
【氏名又は名称】アイシン軽金属株式会社
【出願日】 平成18年9月13日(2006.9.13)
【代理人】 【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔

【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男

【識別番号】100099128
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 康


【公開番号】 特開2008−69395(P2008−69395A)
【公開日】 平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願番号】 特願2006−248189(P2006−248189)