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【発明の名称】 Ni基合金製品の製造方法
【発明者】 【氏名】井ノ口 貴之

【氏名】小川 道治

【要約】 【課題】能率及び歩留まりが高く、硬さが容易に調整されるNi基合金製品の製造方法を提供する。

【構成】Ni基合金製品の製造方法では、Ni基合金からなる原材料に対し、固溶化熱処理S20、加工硬化処理及び時効硬化熱処理S50が順次施される。前記加工硬化処理として、固溶化熱処理S20された原材料は400℃以上500℃以下の範囲の温度でロール圧延S30される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ni基合金からなる原材料に対し、固溶化熱処理、加工硬化処理及び時効硬化熱処理を順次施すNi基合金製品の製造方法において、
前記加工硬化処理として、前記固溶化熱処理された前記原材料は400℃以上500℃以下の範囲の温度でロール圧延される
ことを特徴とするNi基合金製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、Ni基合金製品の製造方法に係わり、より詳しくは、耐腐食性に優れた高硬度のNi基合金製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Ni基合金は、高硬度であるとともに耐腐食性に優れていることから、種々の製品に使用されている。例えば、医薬用の錠剤を成型するための錠剤成型機の杵材として、Ni基合金の棒状体が用いられている。従来、このような杵材として、工具綱からなる棒状体の表面に耐食めっきを施したものが用いられていたけれども、Ni基合金の棒状体ならば、それ自身が耐腐食性に優れているため、耐食めっきが必要なく、めっきが剥離する虞がない。
【0003】
ここで、Ni基合金からなる製品の硬さを確保するために、固溶化熱処理、冷間引抜き等の冷間加工による加工硬化処理及び時効硬化熱処理からなる一連の処理を原材料に施すことが知られている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7-242969号公報(段落番号0004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、加工硬化処理として、冷間引抜きを実施した場合、引抜かれた材料に導入される歪量は、その加工度、即ちダイスの孔径によって決まってしまう。このため歪量を調整するにはダイスを変更せねばならず、最終製品の硬さを変化させるのは煩雑である。また、冷間引抜きは、作業能率が低い上に、引抜きのためにチャックした材料の部分が利用されないため、歩留まりも低い。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、能率及び歩留まりが高く、硬さが容易に調整されるNi基合金製品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、Ni基合金からなる原材料に対し、固溶化熱処理、加工硬化処理、機械加工及び時効硬化熱処理を順次施すNi基合金製品の製造方法において、前記加工硬化処理として、前記固溶化熱処理された前記原材料は400℃以上500℃以下の範囲の温度でロール圧延されることを特徴とするNi基合金製品の製造方法が提供される(請求項1)。
【発明の効果】
【0007】
本発明の請求項1のNi基合金製品の製造方法によれば、固溶化熱処理された原材料が、加工硬化処理として、400℃以上500℃以下の範囲の温度でロール圧延される。この方法では、ロール圧延される原材料の温度を変化させることで、ロール圧延により原材料に導入される残留歪の量が変化させられ、これにより、最終製品の硬さが所望の値に容易に調整される。
【0008】
また、この方法では、ロール圧延されるときの丸棒の減面率(加工度)を変化させることによっても、ロール圧延により丸棒に導入される残留歪の量が変化させられ、これにより、最終製品の硬さが所望の値に容易に調整される。
更に、ロール圧延では、冷間引抜きに比べて作業能率が高い上に、原材料をチャックする必要がないために原材料全体が有効に利用されるため、この製造方法は、能率及び歩留まりが高い。このため、この製造方法によればNi基合金製品の製造コストが低減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、医薬用の錠剤の成型機を概略的に示し、この成型機にはNi基合金製品としての杵材10,12が適用されている。
杵材10,12の各々は、析出硬化型のNi基合金からなり、Ni基合金は、好ましくは、質量濃度で、30%以上50%以下のCrと、1%以上5%以下のAlとを含み、且つ、その残部としてNiと不可避的不純物とを含む。なお、Ni基合金は、前記以外の他の添加元素を少量含んでいてもよい。
【0010】
杵材10,12は、それぞれ丸棒状をなし、杵材10,12の先端は、臼材14の貫通孔に両側から挿入される。杵材10,12の先端同士の間には、薬品の粉末が充填され、杵材10,12に圧力を加えることで、粉末が圧縮されて錠剤16に成型される。
なお、杵材10,12は、ガイドブロック18,20にそれぞれ形成されたガイド孔に挿通され、ガイド孔によってスライド自在に支持される。
【0011】
図2は、一実施形態に係るNi基合金製品としての杵材10,12の製造方法を概略的に示し、この製造方法では、熱間加工S10により得られた原材料としてのNi基合金の丸棒が、固溶化熱処理S20される。固溶化熱処理S20では、丸棒が、例えば、900℃以上1200℃以下の範囲の温度まで加熱され、この温度にて0.1時間以上1時間以下の範囲の時間保持された後、500℃以下の範囲の温度まで60℃/分以上の降温速度で冷却される。
【0012】
そして、固溶化熱処理S20された丸棒は、加工硬化処理として、ロール圧延S30される。ロール圧延S30にあたって丸棒は加熱され、ロール圧延S30されるときの丸棒の温度は、400℃以上500℃以下の範囲にあるのが好ましい。そして、ロール圧延S30による丸棒の減面率は30%以上50%以下の範囲にあるのが好ましい。
ロール圧延S30後に冷却された丸棒は、機械加工S40により、杵材10,12の形状に加工される。
【0013】
最後に、機械加工S40された丸棒は、時効硬化熱処理S50されて最終製品としての杵材10,12になる。
時効硬化熱処理S50では、機械加工S40された丸棒は、700℃以上900℃以下の範囲の温度まで加熱され、この温度にて10秒以上1000秒以下の範囲の時間保持された後、500℃以下の範囲の温度まで60℃/分以上の降温速度で冷却される。この時効硬化熱処理S50により、Ni基合金の組織中に析出物が析出し、Ni基合金が硬くなる。
【0014】
上述したNi基合金製品の製造方法によれば、固溶化熱処理S20された材料が、加工硬化処理として、400℃以上500℃以下の範囲の温度でロール圧延S30される。このロール圧延S30によって、丸棒に残留歪が導入されることで、最終製品である杵材10,12の硬さが高くなる。
そして、この方法では、ロール圧延S30されるときの丸棒の温度を変化させることで、ロール圧延S30により丸棒に導入される残留歪の量が変化させられ、これにより、最終製品である杵材10,12の硬さが所望の値に容易に調整される。
【0015】
また、この方法では、ロール圧延S30されるときの丸棒の減面率(加工度)を変化させることによっても、ロール圧延S30により丸棒に導入される残留歪の量が変化させられ、これにより、最終製品の硬さが所望の値に容易に調整される。
更に、ロール圧延S30では、冷間引抜きに比べて作業能率が高い上に、丸棒をチャックする必要がないために丸棒全体が有効に利用されるため、この製造方法は、能率及び歩留まりが高い。このため、この製造方法によればNi基合金製品の製造コストが低減される。
【0016】
なお、ロール圧延S30されるときの丸棒の温度が400℃未満の場合、変形抵抗が高くなりすぎて、十分な残留歪を丸棒に導入するのが困難になり、一方、500℃超の場合、析出物の析出が始まってしまう。このため、ロール圧延S30されるときの丸棒の温度は、400℃以上500℃以下の範囲にあるのが好ましい。このロール圧延S30のように、冷間加工温度(室温)よりも高く且つ熱間加工温度よりも低い温度での加工は、温間加工と称される。
【0017】
また、ロール圧延S30されるときの丸棒の減面率が30%未満の場合、十分な残留歪が丸棒に導入されず、一方、50%超の場合、導入される残留歪の量が多くなりすぎてしまう。このため、ロール圧延S30されるときの丸棒の減面率は、30%以上50%以下の範囲にあるのが好ましい。
【実施例】
【0018】
実施例1〜27
表1に示した組成を有する複数の丸棒(熱処理前)を熱間加工により得た後、各丸棒に対して、固溶化熱処理、加工硬化処理としてのロール圧延及び時効硬化熱処理を施した、固溶化熱処理では、丸棒を1150℃の温度で10分間保持した後、室温まで空冷した。そして、ロール圧延及び時効硬化熱処理は、表2に示した条件(加工硬化条件、時効条件)でそれぞれ行い、実施例1〜27の熱処理済みの丸棒を得た。
【0019】
比較例1〜3
熱処理前の丸棒に対して加工硬化処理を行わなかったこと以外は実施例1〜3の場合と同様にして、比較例1〜3の熱処理済みの丸棒を作成した。
比較例4〜12
熱処理前の丸棒に対して、加工硬化処理として室温(25℃)で冷間引抜きを行った以外は実施例1〜9の場合と同様にして、比較例4〜12の熱処理済みの丸棒を作成した。なお、冷間引抜きの条件を表2に加工硬化条件として示す。
【0020】
得られた実施例1〜27及び比較例1〜12の熱処理済みの丸棒から試験片を切り出し、ビッカース硬さ、衝撃値、引張強さ又は伸びを測定した。これらの測定結果を表2に合わせて示す。なお、ビッカース硬さについては、固溶化熱処理後の丸棒及び加工硬化後の丸棒についても試験片をそれぞれ用意し、測定を行った。これらの結果も表2に示す。
【0021】
【表1】


【0022】
【表2】


【0023】
表2から明らかなように、実施例1〜27では、ロール圧延の減面率と温度を変化させることによって、時効硬化熱処理後の丸棒のHRC硬さが広範に亘って変化している。
本発明は上記した実施形態及び実施例に限定されることはなく、種々の変形が可能である。
例えば、上記した実施形態では、得られるNi基合金製品が杵材10,12であったけれども、最終製品は他のものであってもよい。
また、上記した実施形態では、ロール圧延S30後に機械加工S40を行ったけれども、機械加工S40は必要に応じて適宜行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】一実施形態に係るNi基合金製品としての杵材を適用した薬品用錠剤成型機の概略構成を示す図である。
【図2】図1の杵材の製造方法を概略的に説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0025】
S20 固溶化熱処理
S30 ロール圧延(温間圧延)
S50 時効硬化熱処理
【出願人】 【識別番号】000003713
【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
【出願日】 平成18年8月14日(2006.8.14)
【代理人】 【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二

【識別番号】100116447
【弁理士】
【氏名又は名称】山中 純一


【公開番号】 特開2008−45167(P2008−45167A)
【公開日】 平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願番号】 特願2006−221011(P2006−221011)