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【発明の名称】 鋳造品の空気焼入れ装置及び方法
【発明者】 【氏名】太田 俊介

【氏名】大橋 孝行

【氏名】坪川 正嘉

【要約】 【課題】大型の薄肉鋳造品の空気焼入れ処理において、1つの鋳造品の機械的性質の差を少なくする。

【構成】本発明は、予め加熱されたアルミニウム合金材からなるワークWを空気の吹きつけによって焼入れする空気焼入れ装置であって、ワークWに対して複数の方向から空気を吐出する空気吐出口22を設け、少なくとも一部の方向から吐出される空気の量を調整しながらワークWを冷却する冷却手段100を備えることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め加熱されたアルミニウム合金材からなるワークを空気の吹きつけによって焼入れする空気焼入れ装置であって、
前記ワークに対して複数の方向から空気を吐出する空気吐出口を設け、少なくとも一部の方向から吐出される空気の量を調整しながら前記ワークを冷却する冷却手段を備える
ことを特徴とする空気焼入れ装置。
【請求項2】
前記冷却手段は、複数の方向に設けた前記空気吐出口に空気を供給する空気供給配管に、吐出される空気の量を調整する空気量調整手段を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の空気焼入れ装置。
【請求項3】
前記冷却手段は、予め定められた間隔で複数の方向から順番に空気を吐出させて前記ワークを冷却する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の空気焼入れ装置。
【請求項4】
予め加熱されたアルミニウム合金材からなるワークを空気の吹きつけによって焼入れする空気焼入れ装置であって、
少なくとも1方向から前記ワークに対して空気を吐出する空気吐出口を設け、前記ワークを回転させながら空気を吐出して冷却する冷却手段を備える
ことを特徴とする空気焼入れ装置。
【請求項5】
前記冷却手段は、前記ワークを載置して回転させる回転テーブルを備える
ことを特徴とする請求項4に記載の空気焼入れ装置。
【請求項6】
前記冷却手段は、予め定められた間隔で間欠的に前記ワークを回転させる
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の空気焼入れ装置。
【請求項7】
前記冷却手段は、複数の方向から空気を吐出する空気吐出口と、前記各空気吐出口に空気を供給する空気供給配管に、吐出される空気の量を調整する空気量調整手段とを備え、予め定められた間隔で間欠的に前記ワークを回転させるとともに、それに連動して各吐出口から吐出される空気の量を調整して前記ワークを冷却する
ことを特徴とする請求項6に記載の空気焼入れ装置。
【請求項8】
予め加熱されたアルミニウム合金材からなるワークを空気の吹きつけによって焼入れする空気焼入れ方法であって、
前記ワークに対して複数の方向から空気を吐出する空気吐出口を設け、少なくとも一部の方向から吐出される空気の量を調整しながら前記ワークを冷却する
ことを特徴とする空気焼入れ方法。
【請求項9】
予め加熱されたアルミニウム合金材からなるワークを空気の吹きつけによって焼入れする空気焼入れ方法であって、
少なくとも1方向から前記ワークに対して空気を吐出する空気吐出口を設け、前記ワークを回転させながら空気を吐出して冷却する
ことを特徴とする空気焼入れ方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は鋳造品の空気焼入れ装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム合金などの鋳造品の製造工程において、機械的性質の向上及び調整のために溶体化処理や焼入れ処理などの熱処理を行う技術が公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
溶体化処理温度から急冷する焼入れ処理は、鋳造品を10℃から90℃の水温の水中に侵漬させて冷却する方法が最も一般的である。しかし、この方法では急激かつ不均一な冷却になりやすい。そのため、特に薄肉の鋳造品では歪み(変形)が発生しやすいという問題がある。このような、水没による焼入れ時の歪み発生を防止する方法として、空気の吹きつけによる焼入れ(以下「空気焼入れ」という)によって鋳造品をゆるやかに冷却する方法もまた公知である(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平7−1111号公報
【特許文献2】特開平8−165539号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の空気焼入れ処理は、1方向からのみ鋳造品に空気を吹きつけていた。そのため、鋳造品が大型になると、空気の吐出口に近い部位と遠い部位とで鋳造品の冷却が不均一になりやすい。したがって、鋳造品の機械的性質に差が生じてしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたものであり、大型の薄肉鋳造品の空気焼入れによって鋳造品の歪みを防止するとともに、1つの鋳造品の中での機械的性質の差を少なくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、予め加熱されたアルミニウム合金材からなるワークを空気の吹きつけによって焼入れする空気焼入れ装置であって、前記ワークに対して複数の方向から空気を吐出する空気吐出口を設け、少なくとも一部の方向から吐出される空気の量を調整しながら前記ワークを冷却することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、空気焼入れ処理において、空気吐出口を複数の方向に設けて、その一部の方向から吐出される空気の量を調整してワークを冷却することで、空気の吐出口に近い部位と遠い部位とでワークの冷却が不均一になることを抑制できる。そのため、ワークが大型の薄肉鋳造品の場合でも、ワークのすべての部位を均一に冷却できる。したがって、空気焼入れ処理によるワークの変形防止効果を得られるとともに、1つのワークの中での機械的性質の差を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0009】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態による空気焼入れ装置100の概略図である。
【0010】
空気焼入れ装置100は、空気焼入れ用ブース10内に構成される。空気焼入れ装置100は、予め溶体化温度に加熱されたアルミニウム合金材からなるワークWに冷却用の空気を吹き付けて焼入れする。ワークWは、アルミニウム合金材からなる例えば鋳造品である。本実施形態では、ワークWは断面ハット状に形成されている。ワークWは、製品形状に合わせたパレット11内に保持される。
【0011】
空気焼入れ用ブース10の床面には、コンベヤ12が敷設される。コンベヤ12には、ガイドローラ13が回動自在に取り付けられる。コンベヤ12は、パレット11を空気焼入れ用ブース10に搬送する。
【0012】
空気焼入れ用ブース10内には、一対の保持プレート21a,21bが配設される。一対の保持プレート21a,21bは、コンベヤ12を挟んで対向して配置される。一対の保持プレート21a,21bのそれぞれの対向面には、複数個のエアノズル22が配設される。エアノズル22は、パレット11内に保持されたワークWに向けて空気を吐出する。
【0013】
一対の保持プレート21a,21bには、エアノズル22に空気を供給するための空気供給配管23がそれぞれ取り付けられる。詳しくは、保持プレート21aのエアノズル22に空気を供給するための第1空気供給配管23aと、保持プレート21bのエアノズル22に空気を供給するための第2空気供給配管23bとが取り付けられる。第1、第2空気供給配管23a,23bの下流には、保持プレート21a又は21bのいずれの保持プレートに空気を供給するかを切り替えるための切替バルブ24が配設される。なお、切替バルブ24によって、各保持プレート21a,21bに供給する空気量に差異を設けることもできる。
【0014】
切替バルブ24を電子制御機器(図示せず)によって制御することで、一対の保持プレート21a,21bに配設されたエアノズル22は、数秒から数十秒間隔で交互に空気を吐出してワークWを冷却する。
【0015】
次に本発明の第1実施形態による空気焼入れ装置100の作用について説明する。
【0016】
溶体化温度(500℃前後)で一定時間保持されたワークWは、コンベヤ12によってパレット11ごと空気焼入れ用ブース10内に搬送されてくる。搬送されてきたパレット11は、空気焼入れ用ブース10内の所定の位置に固定される。パレット11が固定されると、一対の保持プレート21a,21bに配設されたエアノズル22は、予め実験等によって定められた吐出パターンで、所定時間交互に空気を吐出してワークWを冷却する。吐出パターンは、ワークWの形状ごとに、ワークWの変形を防止でき、かつ、良好な機械的性質が得られるような最適な吐出パターンが決定されている。
【0017】
電子制御機器は、このような予め定められた吐出パターンに従って、切替バルブ24を制御する。その結果、保持プレート21aのエアノズル22及び保持プレート21bのエアノズル22から交互に数秒から数十秒間隔で空気が吐出される。
【0018】
これにより、ワークWが大型の薄肉鋳造品の場合でも、ワークWのすべての部位を均一に冷却できる。そのため、空気焼入れ処理によるワークWの変形防止効果を得られるとともに、1つのワークの中での機械的性質の差を少なくすることができる。
【0019】
定められた吐出パターンによる所定時間の空気の吐出によって、ワークWの冷却が終了した後は、コンベヤ12によってパレット11ごと空気焼入れ用ブース10から搬出される。
【0020】
以上説明した本実施形態によれば、空気焼入れ処理において、対向する一対の保持プレート21a,21bの対向面にそれぞれ複数のエアノズル22を配設して、2方向からワークWを冷却する。さらに、空気供給配管23に設けられた切替バルブ24を制御することで、一対の保持プレート21a,21bに配設されたエアノズル22は、数秒から数十秒間隔で交互に空気を吐出してワークWを冷却する。
【0021】
そのため、空気焼入れ処理において、空気の吐出口(エアノズル)に近い部位と遠い部位とでワークWの冷却が不均一になることを抑制でき、ワークWが大型の薄肉鋳造品の場合でも、ワークWのすべての部位を均一に冷却できる。したがって、空気焼入れ処理によるワークWの変形防止効果を得られるとともに、1つのワークWの中での機械的性質の差を少なくすることができる。
【0022】
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態による空気焼入れ装置200について説明する。本発明の第2実施形態は、空気焼入れ処理の際にパレット11を回転させる点で第1実施形態と相違する。以下、その相違点を中心に説明する。なお、第2実施形態では上述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を用いて重複する説明を適宜省略する。
【0023】
図2は本発明の第1実施形態による空気焼入れ装置200の概略図である。
【0024】
図2において、ワークWは、円形のパレット11の網に乗せられている。そして、空気焼入れ用ブース10内には、パレット11を回転させるためのターンテーブル31が配設される。ターンテーブル31は、対向する一対の保持プレート21a,21bの間に配設される。ターンテーブル31の駆動はモータなどで行う。
【0025】
コンベヤ12によって空気焼入れ用ブース10内に搬送されてきたパレット11は、ターンテーブル31の上に配置、固定される。パレット11が固定されると、モータを駆動してターンテーブル31を回転させ、これに合わせて一対の保持プレート21a,21bに配設されたエアノズル22は空気を吐出してワークWを冷却する。
【0026】
このとき、予め実験等によって定められた吐出パターンで、所定時間交互に空気を吐出してワークWを冷却してもよい。また、ターンテーブル31の回転のタイミング及び回転角度を空気の吐出パターンと連動して制御してもよい。例えば、ワークWの形状によっては冷却しにくい部位、すなわち空気の流れにくい部位などが存在する。その場合には、一旦回転を停止して冷却しにくい部位に長く空気を吹きつけ、冷却しやすい部位と同様の冷却効果が得られるようにする。このようなターンテーブル31の回転駆動パターンは、吐出パターンと合わせて、予め実験等によって、ワークWの形状ごとに、ワークWの歪みを防止でき、かつ、良好な機械的性質が得られるような最適なパターンを決定する。
【0027】
これにより、ワークWが複雑な形状であっても、ワークWのすべての部位を均一に冷却できる。そのため、空気焼入れ処理によるワークWの変形防止効果を得られるとともに、ワークWの機械的特性の向上が図れる。
【0028】
以上説明した本実施形態によれば、空気焼入れ処理において、対向する一対の保持プレート21a,21bの対向面にそれぞれ複数のエアノズル22を配設して、2方向からワークWを冷却する。さらに、ワークWが乗せられたターンテーブル31を空気の吐出に合わせて回転駆動する。
【0029】
そのため、ワークWが複雑な形状の大型薄肉鋳造品であっても、その形状に合わせてワークWを回転させることで、ワークWのすべての部位を均一に冷却できる。したがって、空気焼入れ処理によるワークWの変形防止効果を得られるとともに、1つのワークの中での機械的性質の差を少なくすることができる。
【0030】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【0031】
例えば、本実施形態では、パレット11の搬送方法をローラ式のコンベヤ12によって行ったが、これに限られるものではなく、吊り下げ式ローダーなどの一般的な搬送方法で構わない。また、切替バルブ24を用いて、いずれの保持プレート21a,21bに空気を供給するかを切り替えていたが、これに限られるものではなく、各保持プレート21a,21bに供給する空気量に差異をもうけてワークWを冷却してもよい。
【0032】
また、第1実施形態では、対向する一対の保持プレート21a,21bに配設されたエアノズル22によって、2方向からワークWの冷却を行ったが、これに限られるものではなく、ワークWの形状に合わせて、3方向以上からワークWの冷却を行ってもよい。その場合には、保持プレートを新たに設置してもよいし、また保持プレートの形状を変形(例えば、パレット11を囲むように、くの字形にする)してもよい。
【0033】
さらに、第2実施形態では、1方向からだけワークWの冷却を行っても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1実施形態による空気焼入れ装置の概略図である。
【図2】本発明の第2実施形態による空気焼入れ装置の概略図である。
【符号の説明】
【0035】
22 エアノズル(空気吐出口)
23 空気供給配管
23a 空気供給配管
23b 空気供給配管
24 切替バルブ(空気量調整手段)
31 ターンテーブル(回転テーブル)
100 空気焼入れ装置(冷却手段)
200 空気焼入れ装置(冷却手段)
【出願人】 【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【出願日】 平成18年8月3日(2006.8.3)
【代理人】 【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜

【識別番号】100114236
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 正弘

【識別番号】100120178
【弁理士】
【氏名又は名称】三田 康成

【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭


【公開番号】 特開2008−38182(P2008−38182A)
【公開日】 平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願番号】 特願2006−212050(P2006−212050)