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【発明の名称】 電解コンデンサ電極用アルミニウム箔の製造方法
【発明者】 【氏名】吉井 章

【氏名】渡辺 英雄

【要約】 【課題】電解コンデンサ電極アルミニウム箔の製造に際し、中間焼鈍を省略して生産性を上げることを可能にする。

【構成】質量比で、Si:5〜40ppm、Fe:5〜40ppm、Pb:0.1〜3ppm、Ni:15〜150ppmを含有し、残部がAlと不回避不純物からなり、該不回避不純物としてのCuが10ppm未満であり、かつ、Cu以外の不回避不純物の総量が100ppm以下である電解コンデンサ電極用アルミニウム材を中間焼鈍することなく冷間圧延し、その後、高立方晶率を得るための最終焼鈍熱処理を行う。中間焼鈍を施さなくても最終焼鈍において高い立方晶率が得られ、品質を損なうことなく、その生産性を著しく向上することができる。また、広範囲な箔厚のアルミニウム箔において最終焼鈍のみで高い立方晶率が得られる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量比で、Si:5〜40ppm、Fe:5〜40ppm、Pb:0.1〜3ppm、Ni:15〜150ppmを含有し、残部がAlと不回避不純物からなり、該不回避不純物としてのCuが10ppm未満であり、かつ、Cu以外の不回避不純物の総量が100ppm以下である電解コンデンサ電極用アルミニウム材を中間焼鈍することなく冷間圧延し、その後、高立方晶率を得るための最終焼鈍熱処理を行うことを特徴とする電解コンデンサ電極用アルミニウム箔の製造方法。
【請求項2】
前記最終焼鈍熱処理は、450〜600℃で2〜8時間の加熱条件で行われることを特徴とする請求項1記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム箔の製造方法。
【請求項3】
前記最終焼鈍熱処理によって立方晶率を95%以上とすることを特徴とする請求項1または2に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム箔の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、電解コンデンサの電極に用いられるアルミニウム箔の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電解コンデンサの電極に用いられるアルミニウム箔の製造においては、従来、アルミニウム純度99.9%以上で、Si5〜20ppm、Fe5〜20ppm、Cu10〜80ppm、Pb0.1〜3ppm、その他微量不純物1〜100ppmを含むアルミニウム材が用いられており、これを用いて70〜130μm厚のアルミニウム箔を生産する場合は、図1(b)に示すように、熱間圧延、冷間圧延、中間焼鈍、付加圧延を経て、500℃以上、3時間以上の最終焼鈍を行って95%以上の立方晶率を確保している。このアルミニウムは箔は、その後、表面積の増大を図るために電解エッチングによる粗面化処理をし、さらに化成処理を経て電解コンデンサ電極とされるが、電解エッチングにおける腐食孔(以降ピット)は立方体方位に対し、垂直に成長する。このため、均一にピットを発生させて表面積を増大させるためには、アルミニウム箔として高い立方体方位占有率が必要であり、上記のような複雑な工程を採用している(例えば特許文献1)。
【0003】
また、冷間圧延途中での焼鈍処理(以降、中間焼鈍)を施さなくとも、高い立方晶率が得られる方法として、熱間加工率、冷間加工率を制御することが提案されている。
また、箔厚が>150μm以上の場合、500℃以上の最終焼鈍を行えば、高い立方晶率が得られることを本願発明者等は知見している。
【0004】
さらに、材質面からいえば、高い立方晶率が得られる箔として、従来、99.9%以上の高純度アルミニウムを用い、Fe、Si、Cu、Pbを主成分とし、その添加量を制御したものが知られている。Fe、Si、Cuはアルミの再結晶挙動を制御し、最終焼鈍後に高い立方晶率を得るために、制御する必要がある元素である。特に、Cuは再結晶温度を高くするため必要で、15ppm以下では圧延途中で再結晶粒が成長し、非立方晶粒の粗大化が起こり、高い立方晶率が得られない。半面、100ppm以上では、粒成長を阻害するため、高い立方晶率が得られない。実用範囲としては、20〜70ppmである。
さらに材質面から途中工程を簡略化する方法として、CuとNiを適量添加する方法が提案されている(例えば、特許文献2)。
【特許文献1】特公昭54−11242号公報
【特許文献2】特開昭63−255911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記のように、複雑な工程を経て製造する方法や加工率を制御する方法では、製造効率が悪く、製造コストを上昇させる要因になる。また、上記のように箔厚が厚いものでは、最終焼鈍での加熱温度を高くすることで中間焼鈍を省略することが可能であるが、箔厚が限定されるため、より薄いアルミニウム箔には適用できないという問題がある。
また、Cuの含有は、電解コンデンサ製品中で電解液中に溶解し、通電時に再析出をおこし、スパーク故障の原因になるという問題点を有している。スパーク故障の原因を有しているため、エッチング終了後に、濃硝酸浸漬処理等でエッチング箔表面のCuを除去している。
本発明は、中間焼鈍を施さずとも、広範囲の箔厚全般で高い立方晶率が得られ、さらにCu成分を含まないため、エッチング工程の簡略化が可能な電解コンデンサ用アルミニウム箔の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、主要元素であるCuに注目し、これの代替となる元素を発見したところにある。すなわち、Cuを添加せず、Niを添加することで、中間焼鈍を必要とせず、且つ、先行技術のような熱間圧延等の加工率を特に制御せずとも、高い立方晶率が得られることを見いだしたものである。
一般的に,熱間圧延終了時点ですでに立方晶の核となるCube粒が存在し、冷間圧延途中で、中間焼鈍にて部分再結晶させ、付加的圧延を行うことでCube粒以外の粒に歪を与え、最終焼鈍時にCube粒が優先成長することにより、高い立方晶率を得ている。しかし、Niなどの成分を適量添加した箔は、このような製造条件を用いずとも、Cube粒が十分に成長するため、圧延材を最終焼鈍するだけで、高い立方晶率が得られる。
【0007】
すなわち、本発明の電解コンデンサ電極用アルミニウム箔の製造方法のうち、第1の発明は、質量比で、Si:5〜40ppm、Fe:5〜40ppm、Pb:0.1〜3ppm、Ni:15〜150ppmを含有し、残部がAlと不回避不純物からなり、該不回避不純物としてのCuが10ppm未満であり、かつ、Cu以外の不回避不純物の総量が100ppm以下である電解コンデンサ電極用アルミニウム材を中間焼鈍することなく冷間圧延し、その後、高立方晶率を得るための最終焼鈍熱処理を行うことを特徴とする。
【0008】
第2の本発明の電解コンデンサ電極用アルミニウム箔の製造方法は、前記第1の本発明において、前記最終焼鈍熱処理は、450〜600℃で2〜8時間の加熱条件で行われることを特徴とする。
【0009】
第3の本発明の電解コンデンサ電極用アルミニウム箔の製造方法は、前記第1または第2の本発明において、前記最終焼鈍熱処理によって立方晶率を95%以上とすることを特徴とする。
【0010】
以下に、本発明の各成分による作用および各成分を限定した理由を説明する。なお、以下における成分含有量はいずれも質量比である。
【0011】
Si:5〜40ppm、Fe:5〜40ppm
Si、FeはAlと化合し適度に析出物を生成し、再結晶粒の粗大化を抑制し、Cube粒の優先成長を促進することができる。ただし、各々、5ppm未満の場合精製コストが高くなり、工業的には不向きである。一方、各々40ppm超の場合、析出物の総量が多くなりすぎてCube粒の優先成長まで制御するため、高い立方晶率が得られなくなる。
このため、Si、Feの含有量を上記範囲に定める。なお、望ましい下限は、Si、Feともに10ppmであり、望ましい上限はSi、Feともに20ppmである。
【0012】
Pb:0.1〜3ppm
Pbはエッチングにおける表面溶解を均一にする元素である。ただし、0.1ppm未満ではその効果が期待できず、3ppm超では溶解性が高くなりすぎて過剰溶解を起こす。したがって、Pbの含有量を上記に定める。なお、望ましい下限は、0.2ppmであり、望ましい上限は1ppmである。
【0013】
Ni:15〜150ppm
Niは、Cube粒の優先成長を促す元素であり、広範な厚さのアルミニウム箔において中間焼鈍を施すことなく最終焼鈍のみで高い立方晶率を得ることを可能にする。この作用を十分に得るためには15ppm以上の含有が必要であり、15ppm未満では、Cube粒成長が不十分であるため中間焼鈍なしで所望の立方晶率を得ることが困難になる。一方、Niを150ppm超含有すると、最終焼鈍後のNi表面濃縮量が多くなりすぎ、エッチングにおいて過剰溶解が発生するため、立方晶率は95%以上得られるが、エッチングが困難な箔となる。したがって、Ni含有量を上記に定める。なお、望ましい下限は、20ppm、望ましい上限は100ppmである。
【0014】
Cu:10ppm未満
CuはAlの再結晶を抑制する元素であるが、Cube粒の優先成長を抑制するため、多く含有するとNiの添加量を200ppm以上にする必要が生じる。この場合、上記した通り、過剰溶解が発生する。一方、 Ni添加量を過剰溶解の問題ない範囲以下とした場合、95%の立方晶率を得ることは困難になり、中間焼鈍、付加的圧延を適正に行い、Cube粒の優先成長を確保する必要があり、本特許の趣旨である、製造工程の簡略化はできなくなる。このため、Cuはできるだけ含まないのがよいが、地金等に含まれ、不回避なCu以外は無添加とするため、10ppm未満とする。なお、望ましくは、5ppm以下である。
【0015】
その他不純物:100ppm以下
この範囲を超えてCu以外の不純物を含むと、不純物とアルミの析出物が多くなり、Ni添加だけでは高い立方晶率が得られにくくなる。望ましくは50ppm以下である。
【0016】
尚、立方晶率95%以上が現状求められているレベルであるため、本特許内において高い立方晶率とは、95%以上の立方晶率を意味する。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明の電解コンデンサ電極用アルミニウム箔の製造方法によれば、質量比で、Si:5〜40ppm、Fe:5〜40ppm、Pb:0.1〜3ppm、Ni:15〜150ppmを含有し、残部がAlと不回避不純物からなり、該不回避不純物としてのCuが10ppm未満であり、かつ、Cu以外の不回避不純物の総量が100ppm以下である電解コンデンサ電極用アルミニウム材を中間焼鈍することなく冷間圧延し、その後、高立方晶率を得るための最終焼鈍熱処理を行うので、中間焼鈍を施さなくても最終焼鈍において高い立方晶率が得られ、品質を損なうことなく、その生産性を著しく向上することができる。また、広範囲な箔厚のアルミニウム箔において最終焼鈍のみで高い立方晶率が得られ、特に70〜600μmの広範囲な箔厚で好適に高い立方晶率が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明の一実施形態について説明する。
本発明の成分となるように調製された高純度アルミニウム材は、常法により得ることができ、本発明としては特にその製造方法が限定されるものではない。例えば、半連続鋳造によって得たスラブを熱間圧延したものを用いることができるし、その他に連続鋳造により得られる高純度アルミニウム材を対象とするものであってもよい。該アルミニウム材は、好適には純度99.95%以上とする。
【0019】
高純度アルミニウム材は、図1(a)に示すように、上記熱間圧延または連続鋳造圧延によって例えば数mm厚程度のシート材とする。このシート材に対し冷間圧延を行い、数十μmから100μm程度のアルミニウム合金箔を得る。なお、冷間圧延途中あるいは冷間圧延終了後に適宜脱脂を加えてもよい。また冷間圧延の途中での中間焼鈍を必要としない。ただし、本発明としては、所望により中間焼鈍を加えることを排除するものではない。
最終冷間圧延後には、最終焼鈍熱処理を行う。最終焼鈍の加熱条件は本発明としては特に限定されないが、例えば450〜600℃、2〜8時間の条件を例示することができる。
【0020】
上記各工程を経て得られたアルミニウム箔には、その後、エッチング処理がなされる。エッチング処理は、塩酸を主体とする電解液を用いた電解エッチング等によって行われる。本発明としてはこのエッチング処理の具体的条件等について特に限定されるものではなく、常法に従って行うことができるが、主として直流エッチングが適用される。
エッチング処理においては、前記成分の設定によって高い立方晶率が得られており、箔にピットが高密度で形成され、高い粗面化率が得られる。この箔を常法により電解コンデンサに電極として組み込むことにより静電容量の高いコンデンサが得られる。
本発明のアルミニウム材によって得られるアルミニウム箔は、中高圧電解コンデンサの陽極として使用するのが好適であるが、本発明としてはこれに限定されるものではなく、より化成電圧の低いコンデンサ用としても使用することができ、また電解コンデンサの陰極用の材料として使用することもできる。
【実施例1】
【0021】
表1に示す成分(残部Al)の鋳塊を作製し、500℃以上、30分以上の均熱処理を行った後、加工率95〜99%の熱間圧延を行った。その際仕上がり温度は250〜400℃とした。熱間圧延後に95%以上の冷間圧延を行い箔厚120μmの試料を作成した。
また、圧延加工率の影響を調べるため、表2中の加工率にて圧延を行った。その際の、均熱処理、熱間圧延仕上がり温度は表1と同じとした。
【0022】
一方、比較材として、箔厚150μmの冷間圧延材に、200〜260℃、2〜6時間の中間焼鈍を行い、さらに付加圧延を行って箔厚120μmの試料を作成した。
【0023】
【表1】


【0024】
【表2】


【0025】
これらのアルミニウム箔に、Ar、N、H等の不活性雰囲気中で、500〜570℃、3〜24時間の最終焼鈍を行った。最終焼鈍後のアルミニウム箔を、35%HCl、60%HNO、48%HFを容積比で33:33:1の割合で混合した溶液30℃中に30秒浸漬した後、水洗、乾燥を行い、立方晶と他方位の結晶粒光沢が変化した試料を作製した。
この試料を、画像解析装置に取り込み、立方体方位占有率を評価し、その結果を表1、2に示した。
【0026】
上記の通り、Cuが10ppm未満で、Niを5〜150ppm範囲で添加した実施例のアルミニウム箔は、中間焼鈍、付加圧延を行わなくとも95%以上の立方晶率が得られており、従来の中間焼鈍、最終圧延を経た箔と同等であった。一方、Cuを10ppmを超えて含有するものでは、中間焼鈍なしでは、Ni量が過小なもの(No.8)、Ni量が適切なもの(No.9)ともに高い立方晶率を得ることができなかった。また、エッチング後にCu除去工程を必要とした。また、Cu量が適切でも、Ni量が過小なもの(No.1)、過大なもの(No.6)では、同じく高い立方晶率を得ることができなかった
又、表2に示すように、本発明の実施例材は、圧延加工率の影響を受けずに、中間焼鈍を行わない工程で高い立方晶率が得られることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の製造工程(a)および従来のアルミニウム材を用いた製造工程(b)を示すフロー図である。
【出願人】 【識別番号】000176707
【氏名又は名称】三菱アルミニウム株式会社
【出願日】 平成19年8月10日(2007.8.10)
【代理人】 【識別番号】100091926
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 幸喜


【公開番号】 特開2008−19509(P2008−19509A)
【公開日】 平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願番号】 特願2007−209094(P2007−209094)