トップ :: C 化学 冶金 :: C22 冶金;鉄または非鉄合金;合金の処理または非鉄金属の処理

【発明の名称】 バルブプレートの製造方法
【発明者】 【氏名】矢後 亘

【氏名】市田 賢一

【氏名】安川 淳

【氏名】東 哲也

【氏名】油谷 滋行

【氏名】布見 綾

【要約】 【課題】バルブプレートが複雑な形状であっても、熱間型鍛造によりその形状が得られ、強度、耐摩耗性、耐焼付性等の品質を向上させるとともに、複雑形状の穴はもちろん、ほゞ最終形状に近い状態まで、短時間に成形させることが可能であり、大幅な工数低減によりコスト低減を実現でき、また、銅合金のみを使用するため、複合材であるバイメタルよりもリサイクルが容易であるバルブプレートの製造方法を提供する。

【構成】質量%で、Zn:20〜45%を含有し、更に、Mn:0.5〜6%、Si:0.5〜4%、Sn:0.01〜2%、Pb:0.01〜5%、Bi:0.01〜4%、Fe:0.01〜3%、Ni:0.01〜5%、Co:0.01〜3%、Ti:0.01〜3%、Mo:0.01〜2%、Cr:0.01〜1%、Zr:0.01〜2%、Nb:0.01〜1%、V:0.01〜1%のうちから1つ以上の元素を有し、残部がCu及び不可避不純物である銅合金を素材として熱間鍛造し、その熱間鍛造により形状を仕上げる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、Zn:20〜45%を含有し、更に、Mn:0.5〜6%、Si:0.5〜4%、Sn:0.01〜2%、Pb:0.01〜5%、Bi:0.01〜4%、Fe:0.01〜3%、Ni:0.01〜5%、Co:0.01〜3%、Ti:0.01〜3%、Mo:0.01〜2%、Cr:0.01〜1%、Zr:0.01〜2%、Nb:0.01〜1%、V:0.01〜1%のうちから1つ以上の元素を有し、残部がCu及び不可避不純物である銅合金を素材として熱間鍛造し、その熱間鍛造により形状を仕上げることを特徴とするバルブプレートの製造方法。
【請求項2】
質量%で、Zn:20〜45%、Al:0.5〜6%を含有し、更に、Mn:0.5〜6%、Si:0.5〜4%、Sn:0.01〜2%、Pb:0.01〜5%、Bi:0.01〜4%、Fe:0.01〜3%、Ni:0.01〜5%、Co:0.01〜3%、Ti:0.01〜3%、Mo:0.01〜2%、Cr:0.01〜1%、Zr:0.01〜2%、Nb:0.01〜1%、V:0.01〜1%のうちから1つ以上の元素を有し、残部がCu及び不可避不純物である銅合金を素材として熱間鍛造し、その熱間鍛造により形状を仕上げることを特徴とするバルブプレートの製造方法。















【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、油圧ポンプや油圧式無段変速機等の油圧駆動装置のハウジング内に配設されて流体通路の一部を構成するバルブプレートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バルブプレートは、ショベルローダーやユンボ等の建設機械や農業用トラクターなどの油圧駆動装置において欠かせない機械部品であり、オイルの吸入、吐出をスムーズに行う上で、強度、耐摩耗性、耐焼付性が要求される。また、多様な機能性、例えば低騒音化機能を確保するために、バルブプレートの端面に設けられる貫通穴等には、複雑な形状が付加されるようにもなっている。
【0003】
従来、バルブプレートは、銅合金の鋳造品に全面機械加工を施したもの、あるいは、バイメタルにプレス加工を施したものが多用されている。そのうち、鋳造による場合は、複雑な形状を得るために、銅合金の地金を素材として、鋳造により原形品を作り、最終仕上げを切削による全面機械加工を施して細部を形成していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、鋳造品は、金属組織が不均一でねばり強さに欠けることから、引張強度や摺動特性に欠ける結果、使用に耐えない事態が生じ、特に、油圧駆動装置の使用条件がますます厳しくなる中、従来の連続鋳造等の鋳造素材から製造されたバルブプレートでは、強度や摺動特性が不足することに起因する金属疲労に伴う破損、亀裂等のトラブルが多くなっている。また、連続鋳造等の鋳物素材を用いる場合、殊にバルブプレートの端面に設けられた複雑な形状の貫通穴等は、全面機械加工で削り出さねばならなく、高負荷での使用条件下における強度不足が懸念される場合が多くなっており、また、全面機械加工であるため、切削加工費が高く、しかも加工時間も長くかかるため、コストが高く、納期が長く掛かる欠点があった。
【0005】
バイメタルによる冷間プレス品は、このような切削を要するオール加工品より低コストだが、耐摩耗性不足や初期運転時に焼付けが発生するという問題があった。また、バイメタル品は、鉄と銅の複合材であるため、著しくリサイクルし難いことから処分時の地球環境に与える負荷が大きい。さらに、バイメタル品は、冷間でプレスするため材料に歪みが残存しやすく、使用中の摺動熱で変形しやすく、変形した摺動面は相手材と片当たりを生じるので、焼付けや、異常摩耗といった不具合が発生するおそれがあった。
【0006】
そこで、この発明は、バルブプレートが複雑な形状であっても、熱間型鍛造によりその形状が得られ、強度、耐摩耗性、耐焼付性等の品質を向上させるとともに、複雑形状の穴はもちろん、ほゞ最終形状に近い状態まで、短時間に成形させることが可能であり、大幅な工数低減によりコスト低減を実現でき、また、銅合金のみを使用するため、複合材であるバイメタルよりもリサイクルが容易であるバルブプレートの製造方法を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明は、質量%で、Zn:20〜45%を含有し、更に、Mn:0.5〜6%、Si:0.5〜4%、Sn:0.01〜2%、Pb:0.01〜5%、Bi:0.01〜4%、Fe:0.01〜3%、Ni:0.01〜5%、Co:0.01〜3%、Ti:0.01〜3%、Mo:0.01〜2%、Cr:0.01〜1%、Zr:0.01〜2%、Nb:0.01〜1%、V:0.01〜1%のうちから1つ以上の元素を有し、残部がCu及び不可避不純物である銅合金を素材として熱間鍛造し、その熱間鍛造により形状を仕上げることを特徴とするバルブプレートの製造方法を提供する。
【0008】
また、請求項2の発明は、質量%で、Zn:20〜45%、Al:0.5〜6%を含有し、更に、Mn:0.5〜6%、Si:0.5〜4%、Sn:0.01〜2%、Pb:0.01〜5%、Bi:0.01〜4%、Fe:0.01〜3%、Ni:0.01〜5%、Co:0.01〜3%、Ti:0.01〜3%、Mo:0.01〜2%、Cr:0.01〜1%、Zr:0.01〜2%、Nb:0.01〜1%、V:0.01〜1%のうちから1つ以上の元素を有し、残部がCu及び不可避不純物である銅合金を素材として熱間鍛造し、その熱間鍛造により形状を仕上げることを特徴とするバルブプレートの製造方法を提供するものである。
【0009】
上記の構成によれば、熱間鍛造によりバルブプレートの細部に至るまで形状を仕上げることができた。これは、上記組成の銅合金が熱間鍛造にねばり性や摺動性に基づく優れた変形能を発生することによるものと考えられる。また、熱間鍛造された製品には、強度、特に引張強度、耐摩耗性、耐焼付性の向上が見られた。
【0010】
主な元素について、それぞれの添加理由について説明すると、Mnは、溶湯内の酸素を除去(脱酸)し、湯流れ及び溶湯の品位を向上させると共に、延性を改善する。合金中のMnは、マトリックスに均一に晶出し、合金の耐摩耗性を改善させる。さらに、Ni、Si、Al、Sb群、及びFe、Co、Ti、Mo、Cr、Zr、Nb、V群からなる元素と全量または一部が結合し、金属間化合物を形成し、耐摩耗性を大幅に改善する。なお、各元素の添加量について、所定量より少ないときは、合金の強度が低下し、所定量より多いときは、ハードスポットを生成し、被削性を損なう。
【0011】
Ni、Si、Al群の添加は、マトリックスを強化すると共に、Mnまたは、Fe、Co、Ti、Mo、Cr、Zr、Nb、V群と結合して、硬い金属間化合物を生成し、耐摩耗性、耐焼付性を向上させる。添加量が所定量より多いとハードスポットを生成し、被削性や耐摩耗性を損なう。所定量より少ないときは、合金の強度が低下し、摺動特性を損なう。
【0012】
Fe、Co、Ti、Mo、Cr、Zr、Nb、V群の添加については、結晶粒を微細化し、伸びを改善すると共に、MnまたはNi、Si、Al群と結合して、硬い金属間化合物を生成し、耐摩耗性を向上させる。添加量が所定量より多いとハードスポットを生成し、被削性や耐摩耗性を損なう。所定量より少ないときは、結晶粒の粗大化や金属間化合物の減少により、耐摩耗性を損なう。
【0013】
請求項2の発明について、Al添加については、これで溶湯を脱酸する作用があり、鋳造欠陥の発生を防止すると同時に、材料の強度を向上させる。0.5〜6%でその作用を好適に果たす。また、Mn、Si、Fe、Ni、Co、Ti、Mo、Cr、Zr、Nb、V等と結合し、硬い金属間化合物を生成し、耐摩耗性を向上させる。なお、Alの添加量が所定量より多いと、脆弱なγ相が析出する。所定量より少ないときは、合金の強度が低下する。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、この発明は、銅合金を熱間にて型鍛造することにより、引張強度、耐摩耗性、耐焼付性を向上させるとともに、複雑形状の穴はもちろん、ほゞ最終形状に近い状態まで、短時間に成形させることが可能であり、大幅な工数低減によりコスト低減を実現できる、また、銅合金のみを使用するため、複合材であるバイメタルよりもリサイクルが容易であるという優れた効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、この発明の実施形態を説明する。
【0016】
図1は、油圧ユニットに搭載されているバルブプレートPの正面図である。バルブプレートPは、形状としては同図の如く現在では通常のもので、円環プレートに、外形切欠部1、ノッチ部2、マユ穴部3、内径切欠部4などの複雑な形状が施されている。従来は、鋳造後においてこれらの複雑な形状を切削加工にて行うため、加工時間が長くかかりコスト高となっていた。
【0017】
本発明では、外径切欠部1、ノッチ部2、マユ穴部3、内径切欠部4など複雑な形状を型鍛造にて成形することにより、ほゞ最終形状に近い状態まで短時間に成形させることが可能となった。よって、大幅な工数低減及びコスト低減が実現できる。表1に本発明にて熱間鍛造に用いた6種類(1〜6)のバルブプレートPの銅合金素材の化学成分を、従来の連続鋳造に用いられていた5種類(A〜E)のバルブプレートの銅合金素材の化学成分と比較して同時に示す。
【0018】
上記実施形態にて製作された1〜6例のバルブプレート本体と、従来鋳造法で製作されたA〜E例のバルブプレート本体からそれぞれのバルブプレートについて試験片を採取し、機械的性質としての引張試験(表2)と、耐焼付性試験及び耐摩耗性試験(表3)とを行った。なお、引張試験については、JIS Z 2241 金属材料引張試験方法により、且つ、試験片はJIS 14A号 試験片とした。
【表1】


【表2】


【表3】


【0019】
表2から本発明のバルブプレートは、比較品よりも引張強さ(ねばり強さ)に優れていることが分かるが、これは連続鋳造に対する熱間鍛造による優位と同時に、銅合金の組成の優位として捉えることができる。
【0020】
摩耗試験片は、リングオンディスク方式のスラスト摩擦摩耗試験機を用いる。試験条件は、耐焼付性評価試験と耐摩耗性評価試験にて行う。潤滑油は粘性の低いATFオイルを用い、油温は室温にて計測を行う。耐焼付性評価試験は、丸板試験片に6,000rpmにて回転する相手リングを焼付けが発生するまで増加荷重を与え、焼付けが生じた荷重にて評価する。値が高い程、耐焼付性が良い。耐摩耗性評価試験は、回転数6,000rpmにて一定荷重1,000Nを1時間与え続け、試験後の摩耗痕深さ数値にして評価する。値が小さい程、耐摩耗性が良い。このように表3から本発明品の摺動特性については、比較材より優れた耐焼付性と耐摩耗性を有していることが分かる。
【0021】
そして、本発明品に備わる銅合金素材のねばり、摺動性等から、バルブプレートの細部に至るまでの複雑な形状が熱間鍛造により一挙に形成することができたものと考えられる。
【0022】
以上より、本発明合金は、油圧機器や建設等に使用される油圧駆動装置に欠かせないバルブプレートの強度、特に引張強度、耐摩耗性、耐焼付性が要求される摺動用部品として使用するのに最適であり、最終形状に近い状態まで短時間に成形させることが可能であるため、大幅な工数低減及びコスト低減を実現できる。これを表4に例えて概略的に示すと、コスト及び工数が2分の1程度に抑えられる。同表に本発明品とは、上記表の1〜6を示し、オール加工品とはA〜Eを示す。
【表4】


【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の実施形態として熱間鍛造で成形したバルブプレートの正面図である。
【出願人】 【識別番号】390036593
【氏名又は名称】中越合金鋳工株式会社
【出願日】 平成18年6月26日(2006.6.26)
【代理人】 【識別番号】100083127
【弁理士】
【氏名又は名称】恒田 勇


【公開番号】 特開2008−1964(P2008−1964A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−174781(P2006−174781)