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【発明の名称】 |
ダクタイル鋳鉄製歯車 |
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【氏名】石丸 良平 【氏名】松川 洋二 【氏名】五家 政人 【氏名】三吉 俊幸 【氏名】高杉 英登 |
【課題】高強度で黒皮部の疲労強度が突出して高い鋼製や鍛造品に匹敵する硬度を持つ鋳鉄素材を用い、鋼製や鍛造品にはない研削工程が不要なほど、被削性に優れ、耐摩耗性、減衰性に優れた、加工コストの低減化を図れる歯車を提供する。
【解決手段】少なくとも、Cu:2.4〜3.3%、Sn:0.01〜0.05%含有のダクタイル鋳鉄を用いて、鋳放しで歯車素材を構成する。歯切り工程を経て、熱処理なく形成する。そのままで面圧強度の大なる歯車を得る。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 球状化処理により得た、重量%でCu2.4〜3.3%を含有するダクタイル鋳鉄にて、鋳放しで熱処理なく歯切り加工にて形成したことを特徴とする面圧強度の大なるダクタイル鋳鉄製歯車。 【請求項2】 少なくとも、Cu:2.4〜3.3%、Sn:0.01〜0.05%含有のダクタイル鋳鉄を用いて、鋳放しで構成した後、歯切り工程を経て形成した熱処理なく面圧強度の大なるダクタイル鋳鉄製歯車。 【請求項3】 鋳放しで面圧強度が1000MPa以上である請求項1又は2に記載のダクタイル鋳鉄製歯車。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、ダクタイル鋳鉄製歯車に関し、例えば自動車用各種歯車、特に引張強さ大で高負荷低回転歯車、又、高速回転で騒音が激しい歯車に対応できる歯車に関する。 【背景技術】 【0002】 ディーゼルエンジンのタイミングギヤは、高負荷、低回転で使用され、また歯車の噛み合い時の片当りが生じやすい等、厳しい条件で使用されるため、通常、炭素鋼及び合金鋼の表面に窒化、軟窒化あるいは浸炭焼入れ等の表面化処理を施した歯車が使用されている。 【0003】 又、新聞用オフセット両面印刷機は高回転で使用され、また歯車の噛み合い時の片当りが生じやすい等、厳しい条件で使用されるため、通常、炭素鋼及び合金鋼の表面に窒化、軟窒化あるいは浸炭焼入れ等の表面化処理を施した歯車が使用されている。加えて、機械加工は、歯形精度はJIS0級から1級の高精度を要求されるため、研削加工を施す必要がある。 【0004】 近年、エンジンの低騒音化がとみに要求されるようになり、これに対応するタイミングギヤとして、振動、騒音の減衰特性の大きい、つまりヤング率の小さい鋳鉄製歯車(鋼材のヤング率E=21000kgf/mm2程度に対し、鋳鉄はE=17000kgf/mm2程度)が提案されてきている。 【0005】 かかる鋳鉄製歯車としては、その強度面や硬さから、球状黒鉛鋳鉄(いわゆるダクタイル鋳鉄、以下このように呼称する)が好適である。然るに、このダクタイル鋳鉄材で以て表面硬化を施した鋼製歯車に匹敵する強度を得るための手段の一つとして、ダクタイル鋳鉄素材に機械加工を施した後に熱処理(以下ADI処理という)を施す手段が提供されている(例えば、特許文献1参照。)。 【0006】 特に、オーステンパ処理に基づく基地組織のベイナイト化により、強靭化されたオーステンパダクタイル鋳鉄の出現により、各種の歯車として使用されることが多く提案され実用化されている。 【0007】 例えば、上記特許文献1には、車輌用エンジンのタイミングギヤ等に採用されるオーステンパダクタイル鋳鉄製歯車が記載されている。 そこでは、従来の製造方法として、FCD500程度のダクタイル鋳鉄を、歯車素材を製造する工程と、同素材にホブ切りその他の歯切り法によって、歯切りを行なった後、歯面をシェービングして切り上げる工程と、その機械加工された歯車に熱処理(以下、ADI処理)を施す工程から成る方法が示されている。 【0008】 又、他の従来法は、鋳鉄により歯車素材を製造する工程とADI処理を施す工程と、熱処理語の歯車素材にホブ切り等の歯切りを行なった後、シェービングを行ない、歯面の精密仕上げを行なう方法である。 【0009】 この方法は、ADI処理後の歯車素材をホブ切り等歯切加工の加工代が大きく、又加工硬化による被削性の悪化等があり、実用上切削コストがかかりすぎる欠点がある。 そこで、新規な方法として、歯車素材をオーステナイト化するため、所定温度で一定時間、更にアッパベーナイト化のため、第2所定温度で保持した後、徐冷する工程、それをシェービング加工して歯車を形成する方法を提案している。 【0010】 【特許文献1】特開平7−136863号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0011】 上記特許文献1記載の製造方法によれば、第1の工程においてダクタイル鋳鉄の歯車素材にホブ切り等の歯切り加工を行い歯車粗材を形成したのち、第2の工程として同歯車粗材にADI処理を施し、最後の第3の工程において歯面のシェービング仕上げ加工が施される。 しかしながら、この製造方法ではADI処理後のシェービング加工コストがかかるため、実用化には至っていない。 【0012】 又、上記特許文献1の方法は歯切り後、シェービングを行なって精密に仕上げられた歯車に熱処理(ADI処理)が行なわれるので、熱処理による変形が大きく、精度が悪くなる欠点がある。 【0013】 しかし、上記の歯車素材をオーステナイト化するため、所定温度で一定時間、更にアッパベーナイト化のため、第2所定温度で保持した後、徐冷する工程、それをシェービング加工して歯車を形成するこの方法でも、ADI処理後、歯車素材の歯面にシェービング仕上げが行なわれることは同じであり、ADI処理も手間がかかることも事実である。 【0014】 上記の如く、オーステンパダクタイル鋳鉄は、高強度を得るため熱処理工程が加わるのでコストの上昇、ベイナイト組織に由来する被削性の低下、加工工程の複雑化等の問題があり、特にコスト的な難点から、歯車として使用されるに至っていない。 【0015】 特に、各種歯車に於いて、オーステンパダクタイル鋳鉄は、強度は極めて高く、且つ減衰性能、耐摩耗性は良いが、その反面、被削性が極めて悪く、そこで、従来のオーステンパダクタイル鋳鉄を歯車として使用する際に於いて、最も問題となる被削性を改善する必要がある。 【0016】 又、従来、自動車等の歯車を中心として、鍛造品が多様されている。 しかし、鍛造品は、素材として鍛造メーカーが製作し、それを使用者が機械加工を施し、更に熱処理を行なって、製品化している。 【0017】 この結果、加工コスト上昇を抑えるために研削加工は行わず、当然、歯形精度が悪く、騒音、振動が大きい。又、歯車精度が悪いので、フリクションが大きく、燃費への影響が大きいとの問題点がある。 【0018】 そこで、本発明の目的はダクタイル鋳鉄製の歯車において、熱処理を施すことなく、振動、騒音の減衰機能が大きく、かつ高い精度を確保しながら低コストで製作可能なタイミングギヤ等の高負荷、低回転歯車として好適な歯車を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0019】 今まで鋳放しによるダクタイル鋳鉄に於いて、FCD800(引張強さ800MPa、伸び2%以上のものを得ることは困難とされてきた。基地組織中のCuはパーライト安定成分であり、その量が増すに従い、引張強さは増大する。 しかし、Cuはダクタイル鋳鉄の球状化阻害元素でもあり、これまで2%以上の添加は試されていなかった。 【0020】 近年、Cuを2%以上添加した鋳放しのままで、高強度を有するダクタイル鋳鉄が本発明者らにより開発された(特許文献2)。 本発明は、この発明を基礎として、広範な用途を有する歯車を提案する。 【0021】 そこで、本発明に於いては、高強度で黒皮部の疲労強度が突出して高く、鋳鉄素材を使用することにより、研削工程が不要なほど、被削性に優れ、耐摩耗性があり、減衰能に優れ、各種歯車に使用できる歯形精度の向上及び加工コスト低減を図れる他、軽量化、騒音の低減を図れる歯車を提案するものである。 【0022】 これにより、鋼製や鍛造歯車に匹敵する強度や硬度を持ち、それらにはない被削性の良好で減衰、耐摩耗性を有する製造コストの安い歯車を提案せんとするものである。 【0023】 具体的には、球状化処理により得た、重量%でCu:2.4〜3.3%を含有するダクタイル鋳鉄にて、鋳放しで熱処理なく歯切り加工にて形成したことを特徴とする面圧強度の大なるダクタイル鋳鉄製歯車である。 【0024】 又、少なくとも、Cu:2.4〜3.3%、Sn:0.01〜0.05%含有のダクタイル鋳鉄を用いて、鋳放しで構成した後、歯切り工程を経て形成した熱処理なく面圧強度の大なるダクタイル鋳鉄製歯車である。 【0025】 又、鋳放しで面圧強度が1000MPa以上であるダクタイル鋳鉄製歯車である。 【発明の効果】 【0026】 本発明によれば、鋳造鋳放しで高強度で、疲労強度が高い素材によりADI等の熱処理工程を必要としないため、加工が容易で加工工程を大幅に省略した歯形精度の良い振動や、騒音の減衰機能が大きく、低騒音化した歯車を低コストで提供できる。 又、このため自動車用各種歯車、印刷機用減速歯車等、従来騒音振動対策の困難であった歯車としての充分の機能を果たすことができ、その応用範囲は広大である。 【0027】 その他、本発明の請求項1によれば、球状化処理により得た、重量%でCu:2.4〜3.3%を含有するダクタイル鋳鉄にて、鋳放しで熱処理なく歯切り加工にて形成したことを特徴とする面圧強度大なるダクタイル鋳鉄製歯車を提供することが出来る。 【0028】 更に、請求項2によれば、少なくともCu:2.4〜3.3%を添加した後、Snを0.01〜0.05%含有のダクタイル鋳鉄を用いて、鋳放しで構成した後、歯切り工程を経て形成した熱処理なく、面圧強度の大なるダクタイル鋳鉄製歯車を提供することが出来る。 【0029】 又、請求項3によれば、鋳放しで面圧強度が1000MPa以上である請求項1又は2に記載したダクタイル鋳鉄製歯車を提供することが出来る。 【0030】 このように、本発明のダクタイル鋳鉄製歯車は熱処理を施すことなく、振動、騒音の減衰機能が大きく、且つ高い精度を確保しながら低コストで製作可能なタイミングギヤ等の高負荷、低回転歯車として好適な歯車を得ることが出来る。 【発明を実施するための最良の形態】 【0031】 本発明者は、図1の表に示す化学成分の高強度ダクタイル鋳鉄を使用し、以下の試験を実施した。 【0032】 該高強度ダクタイル鋳鉄の面圧強さを、歯車の接触をシュミレートした二円筒試験機を用いて調べ、従来のダクタイル鋳鉄や同程度の硬さの鋼と比較、検討を行ない、高強度ダクタイル鋳鉄の歯車材としての適用の可能性を検討した。 【0033】 その結果、高強度ダクタイル鋳鉄は、FCD700やSCM435と比べて、格段に優れた面圧強さを有し、中硬度領域に於いて、歯車材として充分に適用可能であることが判明した。 【0034】 図1に示す高強度ダクタイル鋳鉄の特徴は、Cu含有量であり、約2.4%のCuを含有している。又、機械的性質を図2の表に示す。 【0035】 平均黒鉛粒径は、約35μm、黒鉛粒数は約120個/mm2程度で、基地はパーライトよりも更に微細な組織となっている。硬さは、HB280程度である。ローラ試験片は、直径70mm、幅25mmの円筒で、高速側ローラに3’のチャンファを付け、接触幅を10mmとした。表面の粗さは、サーメットホブによる仕上げホブ切りを想定して、研削加工により最大高さR2=2μm程度に仕上げた。 【0036】 試験機は、バックアップロール式ローラ試験機を用い、図3の表に示すように、高速ローラ回転数3190rpm、低速ローラ回転数2635rpmで、低速ローラに約−20%の負のすべり率を与えた。潤滑油は、ISO VG150相当基地(比重0.885(15℃)、粘度157.1×106m2/S(40℃)、15.42×106m2/S(100℃))を用い、油量2L/minで、ローラー接触部直上から供給した。 【0037】 試験は、ローラ表面に損傷が発生するまで、或いは発生しない場合は、高速ローラの繰返し数N1=1.2×107(低速ローラの繰返し数N2=1.0×107まで一定荷重で付加運転を行なった。 【0038】 図4に試験条件と結果の概要を示す。試験は、3通りの荷重で行ない、最大ヘルツ応力OH=1372MP3、繰返し数N1=4.5×106に於いて、振動・騒音が増大し損傷を生じた。損傷は、大きなピットが低速ローラに一箇所のみ突然生じるもので、歯が年のように徐々にピットが増加するピッチングとは異なる形態であった。 【0039】 図5に損傷の様子を示す。約2mm×1mmの大ピットは、その右端を起点として、左側に向かって損傷が進行したと推測される。 又、0.1mm程度の小さなピットも接触領域に多数観察されるが、この小ピットの影響により振動・騒音は増大することなく、運転を続けることが出来たため、小ピットは損傷とは見なさず、大ピットの発生をもって試験片の寿命とした。 【0040】 図6に繰返し数に対する許容荷重を示す。比較のために、同程度の硬さ、表面粗さのダクタイル鋳鉄(FCD700)および中硬度合金鋼(SCM435)の実験結果も合わせて示す。 尚、縦軸には一般には最大ヘルツ応力と、硬さの比Pmax/HBがよく用いられるが、ダクタイル鋳鉄と鋼ではヤング率やボアソン比が異なるので、荷重を比較する意味で、ここではヘルツ応力と比較する√Fと硬さの比、即ち√F/HBを用いた。 【0041】 歯面強さ(ピッチングやスポーリングなど歯面損傷に対する疲労強度)は、歯面に歯働く最大接触応力が材料の持つ許容接触応力以下になるように設計されるのが通例である。 最大接触応力は、一般に最大ヘルツ応力(σH)を用いる。 歯面に働く最大接触応力(σH)≦材料の持つ許容接触応力(σHllm) 実際には、σH≦σHllm・K1・K2…Kn (K1・K2・Kn:荷重分布係数、潤滑油係数、粗さ係数…など) どのような係数をどのように考慮するのかいくつか式がある。(JSME、JGMA、AGMA、ISO、BS、DINなど(「歯車強さ設計試料」:日本機械学会発行)) 【0042】 σHllmは、材料により決まる。例えば、HB320程度に調質した合金鋼では、σHllm=840MPa程度、図7にあるσH−N1線図より、本発明品H−FCDのσHllmを読み取ることが出来る。 【0043】 即ち、一般には疲労限度107回におけるσHの値が、σHllmとなるので、σHllm=1000MPa程度となる。実用上では、HB320程度に調質したSCM435の値を用いるのが無難と考えられる。 尚、図8のF/b−N1線図は、σHの値に対応するF/b(単位幅当たりの垂直荷重)を縦軸にしたもので、伝達荷重の目安となる。 【0044】 又、図中の点は、φ0.4mm以上のピット発生点を示し、矢印は損傷の生じなかったことを示す。 【0045】 FCD700は、SCM435とほぼ同程度か、やや優れている程度であるが、本発明品H―FCDは、両者に比べて格段に優れていることが分かる。このことにより、本発明品H―FCDは中硬度領域に於いて、充分に適用可能であると考えられる。従来のFCDに比べて、面圧強さが向上した理由の一つに、基地組織に含まれる銅の影響が考えられる。 【0046】 本発明に於いて使用するダクタイル鋳鉄は、Cu、Sn、Alの作用が大きな特徴であり、特に詳細に説明する。 【0047】 Cuはオーステナイトを安定化し、オーステナイトーパーライト変態が低温でおき、基地パーライト面積率を増加させる作用を有し、質量効果を低減させる。 しかし、その臨界量は研究者により異なり、1.5%、1.9%、2.2%とも言われている。 【0048】 そして、それを超えての使用はオーステナイト粒界に偏析し、不規則黒鉛を晶出して球状化を阻害すると言われている。加えて2%以上の添加はチル化傾向を増大すると言われている。 【0049】 指摘されている事項の確認のため、次なる実験を行った。2000kg容量の低周波誘導炉を用い、鋼屑及び戻し材を使用してFCD450相当の溶湯とし、これにCuを1.3%から2.8%と変化させて添加した後、市販のFe−Si−Mg−Ca−REM合金添加のサンドイッチ法による球状化処理を実施し、注湯取鍋移し換え時に接種、CO2鋳型のJIS G5502 Y型B号(25t×215l)に鋳込んだ。 【0050】 実験は成分毎に2回実施した。その平均値を図9に示す。その結果、Cu1.5%、2.0%で不規則形黒鉛は確認できず、2.3%、2.6%、2.8%で球状黒鉛の周りにいくつかの凝集状黒鉛ができた。 球状化の阻害はCuが2.0〜2.3%で開始されることが予想されるが、注目すべきはCu2.0〜2.6%の範囲はわずかながらも引張強さが向上し、伸びの低下が急激でないことである。引張強さが上昇するのは基地がより緻密に強化され、球形阻害より優位になるためであり、伸びが低下するのは球形阻害がわずかながらも増えるからである。しかし、Cu2.6%を超えると球形阻害が優位となる。しかもその含有量の範囲でセメンタイトの発生は皆無であった。 【0051】 このCu2.8%の試験溶湯に微量のSn0.02%を添加したところ、黒鉛形状、基地組織が改善され、引張強さと伸びが大幅に向上することを発見した。Sn0.02%を添加して得られた引張強さを(A)、伸びを(B)とし、これを図9に示し、前記実験と対比した。SnはCuと同様の効果を持つが、Cuとの相乗効果でオーステナイトーパーライト変態により低温側に移動させ、黒鉛粒をより微細にすると共に、適量の添加により不規則形黒鉛の晶出を防止し、黒鉛形状を改善し、伸びを増加させるものである。又、基地組織をより緻密にするため高強度となる。 【0052】 更に、本発明の鋳鉄におけるCuとSnを試験する過程でAlが基地組織に多大な影響を与えていることを発見するに至った。即ち、球状化処理溶湯のAlの含有量を規制することにより、パーライトはソルバイトの如くに画期的に緻密になり、基地組織が強化され、強度が増加することが判明した。 【0053】 AlはCuやSnとは逆にオーステナイトーパーライト変態を高温側に移動させるが、球状化処理後の特性に与えるその影響は極めて小さい。注目すべきは極微量(0.05%)のAlが球状化処理前の溶製中の溶湯に含まれる溶解度を超えて遊離しているCu粒子の酸化を促進するのである。すなわち、球状化処理前のAlの含有量を0.005%以下に規制し、溶製中のこのAlの挙動を阻止することにより、球状化処理後の鋳鉄は基地が逆に強化され、更なる高強度を有するものである。 【0054】 Alは酸素や窒素と化合物を形成し、その多くは不純物として除去されるため、球状化処理前溶湯のAlの含有量を制御するにはAlの含有率の低い、例えば1.0%以下のFe−Siを使用し、過剰にAlが混入している鋼屑の使用を避ければよく、球状化剤や接種剤の含有量に配慮する必要はない。 【0055】 ここで、上記に加え、C、Si、Mgは、Cは3%以下、或いは4%以上も使用可で、例えば2.7%上は例えば4.2%も可能である。又、Siは、2%以下2.7%以上、例えば1.7%、2.9%も可能である。Mnは、1%以下なら使用可能である。 【実施例1】 【0056】 本発明の前記素材を用いて作成した次の要目を有するJIS FCD800規格のダクタイル鋳鉄製歯車に、機械加工(旋削、歯切り、シェービング)を施し、両面印刷機における胴駆動装置に適用して次の(1)、(2)に示すような実験を行った。 (1)実験用ダクタイル鋳鉄製はすば歯車の要目 歯形:高歯 モジュール:2.5 歯数:88 圧力角:14.5° ねじれ角:10.0° (2)騒音計測試験 試験装置における騒音を計測した結果を図10に示す。本発明の実施製品であるFCD800材歯車は、従来のSCM材浸炭焼入れ、焼戻し歯車に比べ、目に見取る騒音低減が図れた。 【実施例2】 【0057】 表1に従って作成した、ダクタイル鋳鉄の被削性について、同程度の鋼名(SCM435QT)と対比して試験した。結果を図11に示す。 【0058】 この結果を図12―1、図12―2により表示する。 この表に示す如く、施削時の切削抵抗は、75.2%、ドリリング時の切削抵抗は69.4%である。これらにより、被削性能は、極めて良いことが判明した。 【実施例3】 【0059】 本発明により形成された歯車と、他の方法により形成される歯車の製造法について比較した表を図14に示す。 この表によれば、クランクシャフトの場合、従来の熱処理ADI処理した方法と比し、ADI、研削二工程が省略される。S45C(H)では、鍛造、切削、高周波熱処理、研削が、FCD800で鍛造、切削の二工程で完成する。 SCMで、鍛造、熱処理、切削、熱処理、研削が必要であるが、同程度の強度、硬度、精度を得るのは、鍛造、熱処理、切削の工程のみで同一程度を得ることができ、その製造工程が大幅に省略でき、製造コストも大幅減を達成できた。 【実施例4】 【0060】 前記試験と同様の手順、即ち2000kg容量の低周波誘導炉を用い、鋼屑及び戻し材を使用してFCD450相当の溶湯とし、これに図1に示す如く所望量のCuを添加した後、市販のFe−Si−Mg−Ca−REM合金添加のサンドイッチ法による球状化処理を実施時に図1に示す如く所望量のSnを添加し、注湯取鍋移し換え時に接種、CO2鋳型のJIS G5502 Y型B号(25t×215l)に鋳込んだ。同様の手順で化学組成を変化させた本発明実施品1〜4についての機械的性質及び化学組成を図13に示す。 又、本発明実施品3の金属組織の顕微鏡写真を図15に示す。 【0061】 図1のCuを単独で含有した時に比べ、Snが加わることにより、引張り強さ、伸びが大幅に向上し、更にCuを2.6%超えても低下しないことがわかる。図15の金属組成の顕微鏡写真の如く、セメンタイトやベイナイトは皆無で、球形も良好で微細な黒鉛と非常に緻密な組織を有している。本発明のダクタイル鋳鉄はJIS G5502のFCD800−2規格である引張り強さ800MPa、伸び2%以上を鋳放しにて充分満足するものとする。 【実施例5】 【0062】 Al0.7%含有のFe−Siを使用した結果、球状化処理前溶湯のAlの含有率は0.005重量%以下であった。他は前記実施例1と同様の手順で化学組成を変化させた本発明実施品5〜8についての機械的性質及び化学組成を図13に示す。 【0063】 又、本発明実施品の別の金属組織の顕微鏡写真を図16に示す。 図13の本発明実施品1〜4に比べ、本発明実施品5〜8は更に引張り強さが向上し、図16の金属組成の顕微鏡写真より、基地はソルバイトの如く緻密になっているのがわかる。本発明のダクタイル鋳鉄はISO1083のFCD900−2の規格である引張り強さ900MPa以上、伸び2%以上を鋳放しにて充分満足するものである。 【実施例6】 【0064】 前記実験および実施例1と同様の手順で注湯取鍋移し換え時に接種後、生型で造型した外径Φ227、内径Φ93、厚さ30mmの鋳型に鋳込んだ。得られた化学成分分析結果は重量%でCu:2.9%、Sn:0.04%、C:3.7%、Si:2.5%、Mn:0.4%、P:0.02%、Mg:0.04%で残部はFeその他不可避不純物であった。 この鋳物の黒皮部を旋盤加工により除去し、外径に比べ焼入れが困難な内径部に高周波焼入れ(焼入れ方法:定置一発、加熱時間:75秒)を行った。図17は硬化深さを示すもので、実線は本発明材を示し、点線は比較材を表している。 【0065】 尚、比較材のグラフは(財)素形材センター発行の「鋳鉄の生産技術〔改〕」(p112、図2 107)を引用した。 図17に示す硬化深さでわかるように、本発明のダクタイル鋳鉄はSi値が2.5%と焼入れには不利な成分ながら、又、Cr、Mo、Ni等の代表的な焼入れ促進元素を含まず、強力な焼入れ性を有するのは、偏析したCuが熱伝導率を上げ、加熱冷却速度を早めるからであり、良好な微細黒鉛と緻密な組織を有し、セメンタイトの発生がないからである。 【図面の簡単な説明】 【0066】 【図1】本発明高強度ダクタイル鋳鉄の一実施例化学成分(wt%)表 【図2】同上高強度ダクタイル鋳鉄他の一実施例機械的特性表 【図3】本発明品の二円筒試験機による試験表 【図4】試験条件と結果の概要表 【図5】損傷の様子を示す顕微鏡写真 【図6】繰返し数に対する許容荷重を示す表 【図7】本発明一実施例の図6上のH−N1線図 【図8】同上一実施例の図6上のF/b−N1線図 【図9】Sn含有鋳鉄の引張強さと伸びの関係を示すグラフ 【図10】騒音計測結果表 【図11】被削試験比較表 【図12−1】同上グラフ比較表 【図12−2】同上グラフ比較表 【図13】本発明品の機械的性質および化学組成図 【図14】各種製品との製造工程比較図 【図15】本発明品一例の顕微鏡写真 【図16】本発明他実施例の顕微鏡写真 【図17】本発明品一例の硬化深度を示す図
特許の図
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| 【出願人】 |
【識別番号】599158649 【氏名又は名称】青梅鋳造 株式会社 【識別番号】000231121 【氏名又は名称】JFE継手株式会社
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| 【出願日】 |
平成19年3月15日(2007.3.15) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100063842 【弁理士】 【氏名又は名称】高橋 三雄
【識別番号】100118119 【弁理士】 【氏名又は名称】高橋 大典
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| 【公開番号】 |
特開2008−223126(P2008−223126A) |
| 【公開日】 |
平成20年9月25日(2008.9.25) |
| 【出願番号】 |
特願2007−67519(P2007−67519) |
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