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【発明の名称】 マグネシウムの製造法及びそれに用いる反応炉
【発明者】 【氏名】生田 一成
【課題】生成したマグネシウムの反応炉の炉底からの取り出しを可能とし、電気分解のための設備が不要な費用対効果に優れた新規なマグネシウムの製造法及びそれに用いる反応炉を提供すること。

【解決手段】無水塩化マグネシウムを用いるマグネシウムの製造法であって、窒素雰囲気に維持した反応炉内に金属ナトリウムと無水塩化マグネシウムを投入し、反応炉内を塩化ナトリウムの融点以上の温度に加熱して金属ナトリウムと無水塩化マグネシウムとの反応により溶融塩化ナトリウムと溶融マグネシウムを生成させ、比重差により未反応の溶融金属ナトリウム、溶融マグネシウム、溶融塩化ナトリウムが反応炉の上層から順に層をなし、最下層の溶融塩化ナトリウムを反応炉の炉底から取り出し、これに伴い最下層に移動する溶融マグネシウムの反応炉の炉底からの取り出しを可能とするマグネシウムの製造法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無水塩化マグネシウムを用いるマグネシウムの製造法であって、窒素雰囲気に維持した反応炉内に金属ナトリウムと無水塩化マグネシウムを投入し、反応炉内を塩化ナトリウムの融点以上の温度に加熱して金属ナトリウムと無水塩化マグネシウムとの反応により溶融塩化ナトリウムと溶融マグネシウムを生成させ、比重差により未反応の溶融金属ナトリウム、溶融マグネシウム、溶融塩化ナトリウムが反応炉の上層から順に層をなし、最下層の溶融塩化ナトリウムを反応炉の炉底から取り出し、これに伴い最下層に移動する溶融マグネシウムの反応炉の炉底からの取り出しを可能とすることを特徴とするマグネシウムの製造法。
【請求項2】
塩化ナトリウムの融点以上に加熱される温度の上限は、金属ナトリウムの沸点を超えないことを特徴とする請求項1に記載のマグネシウムの製造法。
【請求項3】
反応炉内の加熱は、加熱用の電極又は光線によるものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のマグネシウムの製造法。
【請求項4】
光線がレーザー光線であることを特徴とする請求項3に記載のマグネシウムの製造法。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のマグネシウムの製造法に用いる反応炉であって、上蓋を有する反応浴槽と該反応浴槽内を加熱する加熱手段とを備え、前記反応浴槽の上部には原料投入口が形成され、また、前記反応浴槽の下部にはマグネシウム取り出し口が形成されてなることを特徴とするマグネシウムの製造法に用いる反応炉。
【請求項6】
光線を集光し、反応炉内を加熱するためのレンズが取り付けられてなることを特徴とする請求項5に記載のマグネシウムの製造法に用いる反応炉。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素雰囲気中で無水塩化マグネシウムを用いる新規なマグネシウム製造法及びそれに用いる反応炉に関する。
【背景技術】
【0002】
マグネシウムは、比重がアルミニウムの約3分の2で実用金属中最も軽く、地球上で8番目に豊富な元素として知られ、事実上無尽蔵の資源と考えられている。マグネシウムは、多くがマグネシウム合金としてノート型パソコンの筐体、携帯電話、自動車のホイール等に広く用いられ、マグネシウムの有する軽量性や高放熱性等の特性が活用されている。マグネシウムの原料価格の低減や耐食性に優れたマグネシウム合金の開発により、近年、マグネシウムの需要の増大が予想されている。
【0003】
従来、マグネシウムの製造法は、電解法と熱還元法があり、マグネシウムの多くが電解法により製造されている。原料として塩化マグネシウムを用いる電解法は、マグネシウムの比重が小さく、生成するマグネシウムが電解炉の上面に浮き上がるが(特許文献1参照)、マグネシウムは空気と接触することにより酸化され易いため、できるだけ空気と接触しないようにマグネシウム溶湯のくみ出しに細心の注意を払わねばならないという厄介な問題があった。他方、かかる問題を回避するための提案もあり、電解炉には無水塩化マグネシウムのほか、比重が小さくマグネシウムより軽い塩化リチウムを多量に含ませ、これにより析出したマグネシウム溶湯を沈殿させ、炉底より取り出す(タッピング)ことを可能とし、空気との接触の機会を低減させる電解法である(非特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−226684号公報(図1、図4、図5)
【非特許文献1】マグネシウム便覧(軽金属協会(現 「社団法人 日本アルミニウム協会」発行、軽金属協会編、第9〜第10頁(小松龍造執筆))
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の塩化リチウムを用いる電解法は、塩化リチウムが高価であることとその激しい潮解性が問題となっていた。また、電解法は、無水塩化マグネシウムを電気分解する方法であるため、電力の消費量が高くなるということがあった。さらに、電解法に用いられる電解炉は、電気分解のための大がかりな陽極と陰極を必要とし、また塩素等の気体が発生するため気体の取り出しの設備も必要であった。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであり、塩化リチウムを用いることなく、生成したマグネシウムの反応炉の炉底からの取り出しを可能とし、また、電気分解のための大がかりな陽極と陰極及び気体の取り出しのための設備が不要な費用対効果に優れた新規なマグネシウムの製造法及びそれに用いる反応炉を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための発明は、無水塩化マグネシウムを用いるマグネシウムの製造法であって、窒素雰囲気に維持した反応炉内に金属ナトリウムと無水塩化マグネシウムを投入し、反応炉内を塩化ナトリウムの融点以上の温度に加熱して金属ナトリウムと無水塩化マグネシウムとの反応により溶融塩化ナトリウムと溶融マグネシウムを生成させ、比重差により溶融金属ナトリウム、溶融マグネシウム、溶融塩化ナトリウムが反応炉の上層から順に層をなし、最下層の溶融塩化ナトリウムを反応炉の炉底から取り出し、これに伴い最下層に移動する溶融マグネシウムの反応炉の炉底からの取り出しを可能とすることを特徴とするマグネシウムの製造法を要旨とする。
【0008】
上記の発明において、塩化ナトリウムの融点以上に加熱される温度の上限は、金属ナトリウムの沸点を超えないようにしてもよい。反応炉内の加熱は、加熱用の電極又は光線によってもよい。また、光線はレーザー光線としてもよい。
【0009】
また、本発明は、上記のマグネシウムの製造法に用いる反応炉であって、上蓋を有する反応浴槽と該反応浴槽内を加熱する加熱手段とを備え、前記反応浴槽の上部には原料投入口が形成され、また、前記反応浴槽の下部にはマグネシウム取り出し口が形成されてなることを特徴とするマグネシウムの製造法に用いる反応炉を要旨とする。この発明において、光線を集光し、反応炉内を加熱するためのレンズを取り付けてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のマグネシウムの製造法は、塩化リチウムを用いることなく反応炉の炉底からマグネシウムを取り出すことが可能なので、コスト面で有利に歩留まりと作業効率を高めることができ、また、電気分解が不要のため、電解法に比べ消費電力を抑制できる。
【0011】
本発明のマグネシウムの製造法に用いる反応炉は、電気分解のための大がかりな陽極と陰極及び気体の取り出しの設備が不要で、電解炉より構造を簡素化できるので、コスト面で有利にマグネシウムを製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次いで、本発明を実施の形態により詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0013】
〔第1実施形態〕
本実施形態のマグネシウムの製造法に用いる反応炉50は、図1に示すように、上蓋30を有する略半球状の反応浴槽10と加熱手段に相当する加熱用の電極20とを備えている。反応浴槽10は、鉄製外皮の内側にセラミックが内張され、耐火性が付与されている。反応浴槽10は、上部に原料投入口11が形成され、下部にマグネシウム取り出し口12が形成されている。また、反応浴槽10内には、上蓋30を介して加熱用の電極20が挿入され、該電極20は図示しない電源に接続されている。
【0014】
上記の反応炉50の反応浴槽10は、略半球状に限定されず、例えば四角中体でもよい。また、上蓋30は、反応浴槽10の本体と別体ではなく、一体で構成してもよい。反応浴槽10に耐火性を付与するための材料は、耐火性が付与できる材料であれば、特に限定されない。
【0015】
上記の反応炉50を用いる本発明のマグネシウムの製造法を図2を参照して説明する。
No.1では、窒素雰囲気に維持された反応炉50に原料投入口11から投入された過剰の金属ナトリウムが収容されている。原料投入口11から無水塩化マグネシウムが投入され、No.2では、反応炉50に窒素雰囲気下、金属ナトリウムと無水塩化マグネシウムが収容されている。加熱用の電極20により金属ナトリウムに電流が流され、反応炉50内は塩化ナトリウムの融点以上の温度に加熱され、高温平衡状態で金属ナトリウムと無水塩化マグネシウムが高い吸熱性の反応をし、溶融塩化ナトリウムと溶融マグネシウムを生成する。塩化ナトリウムの融点は、他の実験値もあるが、通常、801℃である。塩化ナトリウムの融点以上に加熱することにより、融点が98℃の金属ナトリウムと融点が712℃の無水塩化マグネシウムは溶融化して反応し、さらに生成した塩化ナトリウムを溶融化でき、反応炉50からの取り出しが容易になる。また、加熱による温度は、上限を金属ナトリウムの沸点を越えない温度に調整することが好ましい。金属ナトリウムの沸騰による層間の乱れを防ぐことができるからである。なお、金属ナトリウムの沸点は、他の実験値もあるが、通常、883℃である。No.3では、反応炉50内は比重差により、未反応の溶融金属ナトリウム、溶融マグネシウム、溶融塩化ナトリウムが反応炉50の上層から順に層をなす。未反応の溶融金属ナトリウムは最上層に位置するので、溶融マグネシウムは窒素と接触することがなく、窒素との反応を回避できる。反応炉50の最下層に位置する溶融塩化ナトリウムをマグネシウム取り出し口12から取り出し、No.4では溶融マグネシウムが反応炉50の最下層に移動する。反応で費やされた金属ナトリウムを補充するため、金属ナトリウムが原料投入口11から投入され、No.5では反応炉50内の金属ナトリウムが増量される。溶融マグネシウムは、マグネシウム取り出し口12から取り出され、No.1に回帰する。
【0016】
上記のNo.3の後に取り出された溶融塩化ナトリウムは、金属ナトリウム再生用の電解炉へ回し、塩素と金属ナトリウムに戻して再使用が可能である。また、取り出された溶融マグネシウムは、図示しない冷却用容器に封じ込め固化させ製品化できる。なお、反応炉内の金属ナトリウム量が十分であれば、No.4の後、金属ナトリウムの増量を省略することができる。
【0017】
本発明のマグネシウムの製造法は、上記のNo.1からNo.5に至るサイクルを繰り返すことによりマグネシウムを効率的に製造できる。
【0018】
〔第2実施形態〕
第2実施形態のマグネシウムの製造法に用いる反応炉100は、図3に示すように、加熱手段にレーザー光線60を用いるもので、加熱手段のみが第1実施形態の反応炉50と相違し、他の構成は第1実施形態の反応炉50と同様である。したがって、図3において、第1実施形態と同様な構成部材は図2と同じ符号を用いる。
【0019】
本実施形態の反応炉100は、反応炉100の上部にレンズ70が取り付けられている。レンズ70は、図示しない光源からのレーザー光線60が反応炉100内の金属ナトリウムに集光するように設定され、反応炉100内は塩化ナトリウムの融点以上に加熱される。
【0020】
本実施形態の反応炉100を用いるマグネシウムの製造法は、第1実施形態で説明した方法と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態の溶融マグネシウムが生成された状態の反応炉を示す図である。
【図2】本発明のマグネシウムの製造法を時系列で模式的に示す説明図である。
【図3】第2実施形態の溶融マグネシウムが生成された状態の反応炉を示す図である。
【符号の説明】
【0022】
10 反応浴槽
11 原料投入口
12 マグネシウム取り出し口
20 加熱用の電極
60 レーザー光線
70 レンズ
50、100 反応炉

特許の図
【出願人】 【識別番号】596079471
【氏名又は名称】生田 一成
【出願日】 平成19年1月23日(2007.1.23)
【代理人】 【識別番号】100109597
【弁理士】
【氏名又は名称】西尾 章
【公開番号】 特開2008−179837(P2008−179837A)
【公開日】 平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願番号】 特願2007−12093(P2007−12093)