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【発明の名称】 銅製錬の操業方法
【発明者】 【氏名】亀谷 敏博

【氏名】赤木 進

【氏名】佐藤 文章

【氏名】戸田 勝弥

【要約】 【課題】粉状または粒状の白金族元素(Pt, Pd, Rh, Ru, Ir, Os)を含有するリサイクル原料を自溶炉に装入して白金族元素を回収すると、スラグへの損失が発生して、白金族元素の回収率が低下する。

【構成】転炉あるいは精製炉10の羽口からリサイクル原料を炉内に吹込み、白カワまたは粗銅7に直接接触、反応させることにより白金族元素を粗銅中に濃縮する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅製錬工程において、転炉あるいは精製炉の羽口から粉状または粒状の白金族元素(Pt, Pd, Rh, Ru, Ir, Osを意味する、以下PGMと記す)の一種または全てを含有するリサイクル原料を炉内に吹込み、白カワまたは粗銅に直接接触、反応させることによりPGM成分を粗銅中に濃縮することを特徴とする銅精錬の操業方法。
【請求項2】
前記PGMの一種または全てを含有するリサイクル原料を、その粒度を3mm以下に調整し、その水分を10 mass%以下に乾燥した後、炉内に吹込むことを特徴とする請求項1記載の銅製錬の操業方法。
【請求項3】
吹込みに使用する羽口は必要に応じ1本のみ、または全羽口、あるいは必要数のみ使用することを特徴とする請求項1又は2記載の銅製錬の操業方法。
【請求項4】
PGMの一種または全てを含有するリサイクル原料を転炉造銅期に炉内溶湯に吹込むことを特徴とする請求項1から3記載の何れか1項記載の銅製錬の操業方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、銅製錬工程において転炉と精製炉における貴金属リサイクル品の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
硫化銅鉱石の軟式銅製錬工程としては、さまざまな工程が実施されているが、代表的なプロセスとしては、銅精鉱を自溶炉等の溶錬炉で処理してマットをつくり、さらにそのマットを転炉で処理して銅含有量が98.5mass%程度の粗銅を得て、さらに、その粗銅を精製して銅含有量99.3mass%〜99.5mass%程度に上昇させてからアノードに鋳造し、最終的に電解精製して銅含有量99.99mass%以上の電気銅を得るプロセスがある。このプロセスにおいて、原料中に含まれる金、銀、白金といった貴金属類は、電解精製の際に発生した殿物中に濃縮され、この殿物を原料として貴金属類の回収が行われている。
【0003】
貴金属は、宝飾品、ICのリードフレーム、自動車の排ガス触媒浄化装置、排ガスセンサー、歯科材料などに使用されている。貴金属のリサイクル形態は二種あり、貴金属スクラップと各種産業廃棄物である。貴金属スクラップは通常湿式プロセスで処理される(非特許文献1:資源素材学会誌、Vol.113(1997)No.12, リサイクリング大特集号第1175〜1177頁)。同じ特集号の第1173〜1174頁によると貴金属含有産業廃棄物を焼成、篩別し、次に銅製錬工程に繰り返すことが述べられている。
【0004】
自溶炉では粉状銅鉱石、溶剤成分、リサイクル原料などを酸素とともに炉の反応シャフトに吹込む。これらは、吹込まれた後、速やかに反応してマットとスラグを生じる。マットとスラグは、炉床にたまり比重差により上下に分離する。
【0005】
転炉では、溶錬炉で生産されたマットに含まれる鉄分を酸化物としてスラグ相に分離するとともに、この鉄分と結合しているマット中の硫黄をガス相に分離して白カワを得る造カン期と、この白カワ中の硫黄をガス相に分離して粗銅を得る造銅期の2種類の吹錬が行われる。
【0006】
精製炉では、転炉で得られた粗銅から余分な硫黄と酸素を除去するための酸化工程と還元工程を行い、電解精製に適した形状のアノードに鋳造する。
【0007】
白金族元素(Pt, Pd, Rh, Ru, Ir, Osを意味する。以下PGMと記す)を含む粉状原料、1mm以下の粒状原料は、これまで銅鉱石、溶剤とともに自溶炉に装入されていた。これらに含まれるPGMは、高温溶体中でCuと結びつき易い性質を持つため、その多くがアノードに含有され、電解精製の際に殿物としてCuと分離される。この殿物を原料としてPGMの回収、精製が行われている。
【0008】
また、転炉への吹き込み技術としては、次に挙げるものがある。特許文献1:特開昭57-32339「銅製錬転炉の操業方法」に示されている技術は、転炉において、珪酸鉱または珪石を羽口から転炉内へ装入するもので、リサイクル原料は含まれていない。特許文献2:特開昭57-192233「銅製錬転炉の操業方法」に示されている技術は、転炉において羽口を通じて転炉内へ装入するものを粉粒状鉱石または精鉱、銅製錬において発生した煙灰等の装入物に限定しており、リサイクル原料は含まれていない。
【特許文献1】特開昭57-32339号(銅製錬転炉の操業方法)
【特許文献2】特開昭57-192233号(銅製錬転炉の操業方法)
【非特許文献1】資源素材学会誌、Vol.113(1997)No.12, リサイクリング大特集号第1175〜1177頁、第1173〜1174頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
PGM含有リサイクル原料の溶解の詳細な調査を実施した結果、PGMを多く含む粉状原料、粒状原料を自溶炉に装入した場合には、装入したPGMのそれぞれ10%程度のスラグへ移行していることが判明した。自溶炉内へ装入された原料は反応した後に、銅を含むマットと大部分が不純物のスラグを生成し、比重差によりマット層の上にスラグ層が形成される。スラグ層に移行した銅、貴金属はその多くが回収されることなく損失となる。
このPGMのスラグへの移行が生じる原因として、リサイクル原料の中でも宝飾品や歯科用合金の研磨屑に含まれるようなPGMの微細金属粒子は、自溶炉内においてスラグ中での沈降速度が遅いため、スラグ層の下に存在するマットと接触せずにスラグとして炉から排出されてしまうものがあることや、PGMの融点が非常に高いために溶解に時間がかかることが原因ではないかと推定された。
このため、転炉あるいは精製炉の羽口から溶融白カワあるいは溶融粗銅中にこれらの原料を吹込み溶融白カワあるいは溶融粗銅と直接反応させることが、PGMの回収向上のために有効と考えられた。
【0010】
本発明は、銅製錬工程でPGM即ちPt、Pd、Rh、Ru、Ir、Osの内一種または全てを含有するリサイクル原料を処理する場合において、従来これを自溶炉に装入した場合に発生していたPGMの損失をなくし、それらの回収率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、PGMの一種または全てを含有するリサイクル原料を自溶炉に装入するのではなく、転炉あるいは精製炉に装入する方法を以下の操業方法を提供示する。
(1)銅製錬工程において、転炉あるいは精製炉の羽口から粉状または粒状の白金族元素(PGM:Pt, Pd, Rh, Ru, Ir, Os)の一種または全てを含有するリサイクル原料を炉内に吹込み、白カワまたは粗銅に直接接触、反応させることによりPGM成分を粗銅中に濃縮する方法。
(2) PGMの一種または全てを含有するリサイクル原料を、その粒度を3mm以下に調整し、その水分を10 mass%以下に乾燥した後、炉内に吹込む(1)記載の方法。
(3)吹込みに使用する羽口は必要に応じ1本のみ、または全羽口、あるいは必要数のみ使用することを特徴とする(1)又は(2)記載の方法。
(4) PGMの一種または全てを含有するリサイクル原料を転炉造銅期に炉内溶湯に吹込む(1)から(3)の何れかに記載の方法。
【発明の効果】
【0012】
上記の発明を実施することにより以下の効果を有する。
銅製錬工程でPGMを含有するリサイクル原料を処理する場合において、転炉あるいは精製炉に装入した場合は、この原料とスラグとが直接接触することがないため、これを自溶炉に装入した場合に発生するスラグへの損失がなくなり、PGMの回収率を98%以上とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明において使用されるリサイクル原料は、PGM即ちPt、Pd、Rh、Ru、Ir、Osの内、一種または全てを含有するものであり、それぞれの含有量で数mass ppmから数mass%、特に1ppm 〜5%含有するものである。例えば、現在処理されているリサイクリング原料としては、Pt含有率が50から1000g/t、Pd含有率が100から5000g/tのものがある。
【0014】
リサイクル原料は転炉又は精製炉で精錬可能であり、かつそのPGMがリサイクル原料の大部分から分離可能であれば、いかなる組成であってもよい。PGMの残部は、産業廃棄物があらゆる産業の種々の発生源から供給されるので、特定はできないが、例示するならば、0〜95mass%のFe,Cu,Alなどの金属、0〜95mass%のこれら金属の酸化物、0〜95mass%のFe、Cuの硫化物、SiO2,Al2O3,並びに0〜95mass%のプラスチック焼成Cである。
【0015】
また、リサイクル原料の条件としては、吹込み配管の閉塞を起こさぬようにするため、原料は水分10mass%以下に乾燥し、また、粗大塊もしくは粗大片は粒度を3mm以下に調製して吹込む。
乾燥処理は、例えばスチームドライヤ等の設備を用いて、温度100から150℃の条件でなされる。
粒度調製は、混入している異物を除去するため篩別装置により篩別し、適性な粒度とする。
【0016】
例えば、PS転炉に吹込む場合は、PGMがスラグに移行することにより発生する損失を避けるため、炉内にスラグと白カワが共存している造カン期を避け、白カワと粗銅が共存している造銅期に吹込むことが好ましい。
更に詳しくは、造カン期は1時間程度に対し、造銅期は3時間程度と長いので、溶解時間が長く保持できること、及び、造カン期では吹込んだ原料の未溶解分は金垢に移行するが、この金垢は次の操業サイクルで受入れる製錬炉(例えば、自溶炉)からのマットと激しく反応し、ここで再びマットに移行することから、造銅期においてリサイクル原料を吹き込むことが好ましい。
【0017】
処理炉としては、PS転炉等のようなマットの溶練炉或いは次工程の精製炉等が使用される。
精製炉はアノードを仕上げる最終段階の炉であるため、この段階で粗銅に加えられる不純物を除去するために除去工程を追加する必要が生じる。このために、吹込むリサイクル原料の量が少なく、かつ/またはその含有する銅製錬電解工程に悪影響を及ぼす不純物の含有量が少ない場合には、精製炉に吹込むことも可能である。
【0018】
吹込に使用する羽口の数は、吹込量との兼ね合いにより、必要に応じて1本のみ、または数本、あるいは全ての羽口から吹込むものとする。羽口の径は、42.9〜50.8mm直径である。炉に吹き込む原料の量は、1操業に付き0.5から5t程度が適当であると考えられる。以下、実施例により本発明を詳しく説明する。
【実施例】
【0019】
実施例1
4日間、実際の転炉の1操業当り1t、合計10tのリサイクル原料を吹込む試験を、概略図を図1に示す装置を使用して、以下のように実施した。
【0020】
試験は転炉造銅期で行った。
吹込んだ原料のPGM含有率は、Pt含有率が299g/t、Pd含有率が1644g/tであった。他の成分は金属換算で、19%Si, 14%Al, 11%Ba, 9%Fe, 5%Ca, 4%S, 4%Ni, 3%Cu, 3%Znであった。
上記原料は、水分が2mass%以下になるようにスチームドライヤにより、温度135℃の条件で、転炉に装入前に乾燥した。さらに一部の原料については10mass%の水分量となるように乾燥を行った。また原料の粒度は3mm以下に調製した。混入する異物除去のためと、空気による吹き込みで転炉に効率的に装入できる粒度とするためである。
【0021】
詳細な吹込方法は、コンプレッサー2から得られる高圧空気をドレーン分離機3及びドライヤー4を経て、流量7.8Nm3/分、ビン1から送られるリサイクリング原料の吹込速度5〜11kg/分の条件で配管11から気流輸送し、転炉10の羽口6に装入した吹込ノズルを経由して炉内の融体7に吹込んだ。吹込配管11において原料による閉塞は起こらず、原料が転炉10内の溶湯7と接触した際に水蒸気爆発も起こらなかった。
【0022】
転炉に羽口からPt、Pd含有リサイクル原料を吹込んだ場合の、転炉において吹込まれたPt、Pdのバランスを表1及び表2に示す。
【0023】
【表1】



【0024】
表1により、転炉に吹込んだ場合の粗銅への移行割合は非常に高く、Ptで98.6%、Pdで98.1%に達し、前工程の自溶炉に装入した場合よりも効率よくPt、Pdが回収できることが明らかである。なお、従来リサイクル原料を溶解していた自溶炉では装入Pt量、装入Pd量のそれぞれ10%程度が自溶炉スラグに移行して大きな損失を生じている。なお、粗銅のCu品位は通常のレベルであった。
【0025】
実施例2
実施例1で使用したリサイクリング原料と同じ原料を5t,実際の精製炉に吹込んだ。Pt及びPdのバランスを表2に示す。この表から分かるように高いPt,Pd回収率が得られる。また、鋳造アノードのCu品位は通常のレベルであった。
【0026】
【表2】


【0027】
以上の試験結果より、Pt、Pdの回収率向上に、本発明が著しい効果をもたらすことが明らかとなった。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一態様であって、PGMの一部または全てを含有するリサイクル原料をPS転炉へ吹込む装置を示す。
【出願人】 【識別番号】591007860
【氏名又は名称】日鉱金属株式会社
【出願日】 平成18年9月28日(2006.9.28)
【代理人】 【識別番号】100077528
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 卓雄


【公開番号】 特開2008−31547(P2008−31547A)
【公開日】 平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願番号】 特願2006−263812(P2006−263812)