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ガリウム含有溶液の処理方法 - 特開2008−19486 | j-tokkyo
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【発明の名称】 ガリウム含有溶液の処理方法
【発明者】 【氏名】藤田 哲雄

【氏名】田口 良一

【要約】 【課題】微量のガリウム等を含む溶液から効率よくガリウムを濃縮分離し回収する所謂ガリウム−ジャロサイト法において、ジャロサイトの沈殿率、沈降性、ろ過性を改善するガリウムを含有する溶液の処理方法を提供する。

【構成】(1)ガリウムを含む溶液を準備し、当該溶液をFe2+イオン、SOイオン、1価の陽イオン存在下で(2)pHを2〜4に調整し、(4)(5)撹拌加熱しながら、当該溶液へ酸素を含むガスを導入して(6)酸化反応させ、ジャロサイトの析出生成の際に、当該生成するジャロサイトによるガリウムの沈殿率を改善する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガリウムと、2価の鉄イオンと、硫酸イオンと、1価の陽イオンとを含有するpH2〜4の溶液へ、酸素を含むガスを導入し、当該溶液からガリウムを含むジャロサイト化合物を生成させることを特徴とするガリウム含有溶液の処理方法。
【請求項2】
ガリウムと、2価の鉄イオンと、硫酸イオンと、1価の陽イオンと、銅イオンとを含有するpH2〜4の溶液へ、酸素を含むガスを導入し、当該溶液からガリウムを含むジャロサイト化合物を生成させることを特徴とするガリウム含有溶液の処理方法。
【請求項3】
前記銅イオンの濃度が1g/L以上であることを特徴とする請求項2に記載のガリウム含有溶液の処理方法。
【請求項4】
前記酸素を含むガスとして、大気を用いることを特徴とする請求項2または3に記載のガリウム含有溶液の処理方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ガリウムを含有する溶液の処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガリウムやインジウムは、亜鉛などの製錬副産物として微量に得られる金属元素であって、主に化合物半導体に使用されている。当該化合物半導体には、ガリウム砒素(GaAs)、ガリウムリン(GaP)、インジウムリン(InP)などがあり、発光ダイオード、ICなどに利用されている。
【0003】
従来、ガリウムやインジウムを含む溶液から、ガリウムやインジウムを選択的に分離濃縮する方法として、イオン交換法、媒抽出法、ジャロサイト法などがある。ここで、各方法について簡単に説明する。
【0004】
イオン交換法として、本出願人は、特許文献1の開示を行った。
まず、ガリウムを含む溶液を適宜なpHに調整した後、キレート性イオン交換樹脂を通過させ、当該イオン交換樹脂へガリウムを選択的に吸着させて不純物と分離する。次に、当該ガリウムが吸着したイオン交換樹脂へ鉱酸を作用させてガリウムを溶離し、最終的には、当該ガリウムを溶解した鉱酸から電解法によってガリウムを回収する方法である。
【0005】
溶媒抽出としては、例えば、特許文献2に開示がある。
まず、有機溶媒にカルボン酸系または燐酸系キレート抽出剤を含ませ、有機相を準備する。次に、ガリウムを含有する水相のpHを調整し、前記有機相と激しく接触させることにより、当該水相中のガリウムを選択的に有機相へキレート化合物として抽出する。さらに、鉱酸を用いて有機相中のガリウムを水相に逆抽出した後、当該水相から電解法によりガリウムを回収する方法が知られている。
【0006】
これらイオン交換法、媒抽出法は、操業コストが非常に高いことが問題である。その点を改善するため、本出願人は、特許文献3に開示されるジャロサイト法を提案した。引続いて、特許文献4に開示されたように、当該ガリウムを含むジャロサイトをアルカリ浸出して、ガリウムを選択的に浸出しガリウムを回収する方法を提案した。
これらのジャロサイト法は、イオン交換法、溶媒抽出法と比べると、操業コストの低い方法である。
【0007】
【特許文献1】特開昭59−193230号公報
【特許文献2】特開昭61−215214号公報
【特許文献3】特開平2000−204423号公報
【特許文献4】特開2001−97716号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上述したジャロサイト法には、ガリウム析出反応において、析出物が微細なものになり、沈降性・ろ過性が悪化するという問題点がある。さらに未反応物が液中に残る為、この点からも、ろ過性が非常に悪化するという問題点もある。
【0009】
本発明者らは、ジャロサイト法には、ガリウム析出反応において、析出物が微細なものになり、沈降性・ろ過性が悪化する原因について研究した。そして、当該沈降性・ろ過性の悪化する原因が、上述したジャロサイトの析出反応が十分に進行しないことであることに想到した。
ここで本発明者らは、当該ジャロサイトの析出反応が十分に進行しない原因についてさらに研究を行った。そして、ガリウムを含む溶液として、例えば亜鉛製錬残渣処理工程においてインジウムを分離除去した後の液を用いた場合、当該液中において、鉄が2価の状態にあり、3価の状態ではなくなっていることが原因であることに想到した。従って、当該ガリウムを含む溶液に対して、ジャロサイト法による工程を進めるためには、新たに3価の鉄を添加するか、または、当該2価の鉄を3価に酸化することが考えられた。
しかし、新たに3価の鉄を添加するのは、薬品コストが嵩む上、後工程において鉄残渣が増加する原因となることとなり好ましくない。
【0010】
本発明は、上述の問題点を解決するためになされたものであり、ガリウムを含有する溶液からジャロサイトを析出させてガリウムを分離濃縮する反応において、析出したジャロサイトの沈降性・ろ過性を改善し、ガリウムの分離濃縮率を改善することのできる、ガリウムを含有する溶液からガリウムを分離濃縮するガリウム含有溶液の処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決するため、本発明者らが研究をおこなった結果、当該ガリウムを含有する溶液中に十分な量の3価の鉄イオンを存在させる方法として、当該溶液中へ酸素を含むガスを投入し、当該溶液中に存在する2価の鉄イオンを3価の鉄イオンに酸化する方法、さらには、当該酸素ガス投入の際に銅イオンを存在させて、酸化の効率を上げる方法に想到し、本発明を完成したものである。
【0012】
即ち、課題を解決するための第1の手段は、
ガリウムと、2価の鉄イオンと、硫酸イオンと、1価の陽イオンとを含有するpH2〜4の溶液へ、酸素を含むガスを導入し、当該溶液からガリウムを含むジャロサイト化合物を生成させることを特徴とするガリウム含有溶液の処理方法である。
【0013】
第2の手段は、
ガリウムと、2価の鉄イオンと、硫酸イオンと、1価の陽イオンと、銅イオンとを含有するpH2〜4の溶液へ、酸素を含むガスを導入し、当該溶液からガリウムを含むジャロサイト化合物を生成させることを特徴とするガリウム含有溶液の処理方法である。
【0014】
第3の手段は、
前記銅イオンの濃度が1g/L以上であることを特徴とする第2の手段に記載のガリウム含有溶液の処理方法である。
【0015】
第4の手段は、
前記酸素を含むガスとして、大気を用いることを特徴とする第2または第3の手段に記載のガリウム含有溶液の処理方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ガリウムを含有する溶液から、沈降性・ろ過性に優れたガリウムを含有するジャロサイト粒子を析出させることが可能になり、当該ガリウムを含有する溶液中からのガリウムの分離濃縮の生産性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
まず、本発明で用いるジャロサイトについて簡単に説明する。
ジャロサイトとは鉱物名称であってJarositeと記し、鉱物学(Mineralogy)的にはAluniteと呼ばれる鉱物種の1種に属する。ジャロサイトの結晶構造は三方晶系(Trigonal) R3m で、格子定数aがおよそ7.3Å、cがおよそ17Åである。
ここで、前記AluniteとはMFe+3(SO(OH)の結晶構造のものをいい、JarositeはMの部分が、K・Na・NH・HO・Ag・Pbであるものである。
さらに、前記Aluniteグループに属するもうひとつの鉱物種としてBeaveriteがある。Beaveriteの結晶構造は、Pb(Cu,Fe,Al)(SO(OH)または、PbCuFe(SO(OH)である。
【0018】
以下、本発明に係るガリウムの分離濃縮方法について、工程のフロー図を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係るガリウムの分離濃縮方法の工程のフロー図である。
製錬工程から発生する(1)ガリウム含有溶液は、Fe(II)イオン・SOイオンを含んでいる。また、当該ガリウム含有溶液は水溶液であるのでHOイオンを含んでいるが、ここへさらに反応を促進させる目的でNa、K、またはNH等を添加する。ここで添加剤として好ましいのはK、NHである。添加剤としてはPbやAgでも可能であるが、後工程でこれら有価金属を回収するプロセスが必要となる。
【0019】
次に、Jarosite生成に際して、ガリウム含有溶液の(2)pH調整を行う。当該pH調整において、ガリウム含有溶液中に亜鉛等を残し鉄を沈殿除去するJarosite法ではpHが4以下であることが求められる。ここで、pHが3〜4では析出物がGoethite(FeOOH)に似たものとなるが、鉄共沈反応でガリウムなども沈殿するので、pHが2〜4の範囲であれば、どのpHであっても構わない。ただし、Jarosite生成に伴い鉄が加水分解して沈殿すると酸が発生することから、pHは低下する方向に向かう。その為、pHを必要以上に下げると、後工程の鉄酸化反応においてpHが低下し過ぎて、反応が進まなくなる可能性がある。
【0020】
(2)pH調整の後、(4)撹拌と(5)加熱とを行なう。
(4)撹拌は、通常の撹拌で構わない。強撹拌の方が酸化反応し易いが、後述する実施例で示したように、特別強い撹拌は不要である。(5)加熱において加熱温度は70℃〜100℃で行なうのが好ましい。加熱温度が70℃以上であれば、Jarositeの生成が起こり易くなり、且つ、酸化反応により溶存する酸素量が減少するので、析出するJarositeが粗大粒子化する。
その結果、析出するJarositeの沈降性・ろ過性が向上する。ここで、溶存酸素量が減少すると析出するJarositeが粗大粒子化するのは、酸素の過飽和度が低下する結果、Jarosite析出反応が一気には進行しなくなること、および、沈殿物の核発生が低調となり十分な粒子成長の後に析出するためである。
【0021】
(5)加熱において加熱温度が100℃よりも低ければ当該溶液は沸騰しないので、反応容器としてオートクレーブ等の密閉容器は不要である。尤も、加熱温度が100℃以上であっても、オートクレーブ等を使用すれば反応は可能である。しかし、オートクレーブは高価な装置であるので、温度は100℃以下が好ましい。さらに、加熱容器の材質の耐熱性と耐薬品性とを考えると、加熱温度は低い方が好ましい。具体的には、加熱温度100〜90℃では耐酸レンガなどが用いられる。加熱温度90〜80℃では耐熱性のあるFRP材などのエンジニアリングプラスチックが、80〜70℃では耐熱性のある塩ビ(PVC)が、70℃以下ではポリプロピレンや高密度ポリエチレンなどが使用できる。建設コスト等を鑑み、適宜材質などを設定、選択することが可能である。
【0022】
(5)加熱により、所定の温度に達するか、または、昇温途中の段階でガリウム含有溶液に(11)酸素を含むガスを吹き込むことによって2価の鉄イオンを3価の鉄イオンとする(6)酸化反応を行なう。酸化反応の効率を上げるために、当該酸素を含むガス中の酸素濃度は50(容量)%以上あることが好ましく、純酸素ガスが最も好ましい。
【0023】
また、当該(11)酸素を含むガスを、吹き込みにより投入することによる酸化反応は、酸化速度が吹き込むガス量によって制御できるので非常に好ましい構成である。例えば、酸化剤として過酸化水素等を用い、一気に酸化反応を進行させると沈殿の(6)析出反応が一気に起こるので、析出物が微粒子化してしまう。このような事態を回避する為、酸化反応は一気に進行させるのでなく、徐々に進行させるのが好ましい。このようにして、酸化速度を制御することで、沈殿物の(6)析出反応が核発生優位から粒成長優位となり、粗大な粒子が生成する。当該粗大な粒子は沈降性、ろ過性も優れ好ましい。
【0024】
次に、Jarositeの生成について、さらに説明する。
Jarositeの生成は、以下の反応式による。
まず、上述した酸素を含むガスの投入により、Fe2+からFe3+への酸化反応がある。
4Fe2++O+4H+=4Fe3++2H
この反応をイオン式でなく、塩を伴った化学反応式として書き直すと、
4FeSO+O+2HSO=2Fe(SO+2HOとなる。
ここで、例えばKSOを加えることで1価の陽イオンを供給してJarositeを生成するとすれば、その化学反応式は、
3Fe(SO+KSO+12HO=2KFe(SO(OH)+6HSOとなる。
この化学反応式2つを組み合わせると、その化学反応式は、
12FeSO+3O+2KSO+18HO=4KFe(SO(OH)+6HSOとなる。
【0025】
このようにして生成したJarositeは沈降性、ろ過性、特に明らかにろ過性が優れる為、次工程の(7)固液分離が非常に速い。この時、析出したJarositeを種晶として(6)酸化・析出反応に一部戻すことも好ましい構成である。当該種晶の戻し量は、操業における動力の増大と併せて、得られる効果と、経済的な優位性により戻し量を決定すればよい。尤も、当該種晶の戻しを行わなくとも、ろ過性は十分に良好である。
【0026】
ここで、従来の技術に係るJarositeの製造においては、まず反応物をシックナー等で濃縮分離して濃縮スラリーとし、当該濃縮スラリーをフィルタープレスや遠心分離機でろ過するのが一般的である。しかし、当該操作において、どうしても沈降しない微細な粒子は分離されることなく回収率を悪化させる。また、ろ液の処理において、当該微細な粒子は後工程の処理負荷が増大し好ましくない。そこで沈降性の改善を目論んで凝集剤等を添加することとなり、コスト高などにつながっていた。
【0027】
これに対し、本発明に係るJarositeの製造においては、ろ過性が十分に優れる為、凝集剤等の添加が不要な上、全量フィルタープレスなどでろ過する事が可能である。
【0028】
(7)固液分離された(8)沈殿物であるJarositeは、ガリウム含有濃縮物として次工程へ行き、ガリウムが浸出される。当該次工程において、ガリウムのみを溶解し浸出する一方、鉄は溶解させたくないので、アルカリによって浸出することとなる。
一方、(7)固液分離された(9)后液は、酸が発生していること、Znイオンが残留していることから、亜鉛製錬の工程内へ戻して再利用される。
当該再利用の例としては、脱砒素工程において、(9)后液と銅とを共に共沈させると砒素が良好に析出するため好ましい。また、亜鉛を水酸化物として回収した後、排水として処理することも可能である。この場合は、(9)后液へ、アルカリ土類金属等の塩を添加して強アルカリとし、亜鉛、(鉄)を回収する。
【0029】
当該構成により、ガリウムを含有する溶液から、沈降性・ろ過性に優れたガリウムを含有するジャロサイト粒子を析出させることが可能になり、当該ガリウムを含有する溶液中からのガリウムの分離濃縮の生産性を向上できた。
【0030】
次に、図2を参照しながら、前記K等を添加した(1)ガリウム含有溶液へ、さらに(3)触媒として銅イオンを存在させるために(10)タンパン(CuSO)を添加する構成について説明する。ここで図2に示す工程は、上述した図1に示す工程のK等を添加した(1)ガリウム含有溶液へ、さらに(3)触媒として銅イオンを存在させるために(10)タンパン(CuSO)を添加する操作が加わった他は、図1に示すに示す工程と殆ど同様である。そこで、図1に示すに示す工程と同様な部分については、同じ符号を付して説明を省く場合がある。尚、当該図2に示す工程において、添加される銅イオンは、(8)沈殿物であるJarositeの構成元素とはなっていないが、これは(0024)に記載した化学式からも明らかである。
【0031】
まず、製錬工程から発生する(1)ガリウム含有溶液を(2)pH調整した後、(3)触媒として銅イオンを添加する。
当該添加する銅イオンは、1価でも2価でもよいが、元素状態のメタル銅を粉末状としたものでもよい。ここで添加された銅は後工程における酸化反応の後、2価の銅として存在するようになるので、予め2価のかたちの銅を添加するのが好ましい。さらに、1価の銅は不安定である点、1価銅化合物は薬品として高価な点、等の観点からも2価のかたちの銅を添加するのが好ましいと考えられる。具体的な操作としては、所定量の(10)タンパン(CuSO)を添加する方法が好ましい。添加する銅イオン濃度が1g/L以上あれば添加効果を発揮する、一方、添加する銅イオン濃度が10g/L以下であれば、後工程において液中に残る銅を回収するプロセスが簡易で済み好ましい。従って、添加する銅イオン濃度は1〜10g/L程度であることが好ましい。
【0032】
この(1)ガリウム含有溶液へ、さらに(3)触媒として銅イオンを存在させる構成により、上述した、昇温途中の段階でガリウム含有溶液に(11)酸素を含むガスを吹き込み2価の鉄イオンを3価の鉄イオンとする(6)酸化反応の際、当該(11)酸素を含むガスとして99(容量)%酸素ガスのような高酸素濃度のガスのみならず、10〜49(容量)%の酸素を含む低酸素濃度のガスを用いることが可能となる。好ましいことに、このような低酸素濃度のガスを用いることが可能となったことから、当該低酸素濃度ガスとして大気を用いることが可能となった。当該銅イオンが存在しない場合、(11)酸素を含むガスとして大気を用いても、大気中の酸素分圧が低い(約20(容量)%)ので酸化の効果は非常に低い。しかし、本発明においては、Cuイオンの存在により酸化還元反応が促進され、効率よく(6)酸化反応が進行する。
【0033】
このCuイオン存在下における、大気を用いた酸化還元反応について、さらに説明する。
まずガリウム含有溶液中の2価のCuイオンが1価のCuイオンになるとき、活性にとんだ酸素が発生し、鉄を2価から3価に酸化させる。一方、生成した1価の銅イオンはガリウム含有溶液中において、溶存酸素により容易に2価の銅イオンに戻る。この反応は被酸化物が無くなるまでずっと循環して続くので、ガリウム含有溶液中の銅イオン量は少量でよい。
【0034】
また、当該大気とCuイオンとを用いた酸化還元反応は、酸化速度が吹き込む大気量によって制御できるので非常に好ましい構成である。例えば、酸化剤として過酸化水素等を用い、一気に酸化反応を進行させると沈殿の(6)析出反応が一気に起こるので、析出物が微粒子化してしまう。このような事態を回避する為、酸化反応は一気に進行させるのでなく、徐々に進行させるのが好ましい。当該観点において、大気は酸化剤として好適である。このようにして、酸化速度を制御することで、沈殿物の(6)析出反応が核発生優位から粒成長優位となり、粗大な粒子が生成する。当該粗大な粒子は沈降性、ろ過性も優れ好ましい。さらに、酸化剤として大気を用いることで、原料コストの大幅な削減が可能となった。結果として、銅は単純に触媒作用としてのみ効果をもたらし、Beaverite系のような化合物形態をとることはないと考えられる。
【0035】
尚、(1)ガリウム含有溶液へ、さらに(3)触媒として銅イオンを存在させる構成を採った後の、操作は、大気を酸化剤として用いる以外は、上述した銅イオンを存在させない構成を採った場合と同様でよい。但し、(7)固液分離された(9)后液中に、Znイオンと伴にCuイオンが残留するが、この場合も亜鉛製錬の工程内へ戻して再利用される。
【実施例】
【0036】
以下、実施例を用いて本発明をより具体的に説明する。但し、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0037】
(実施例1)
亜鉛製錬所から発生した2段中和・硫化后液を準備した。
次に、当該后液中へ炭酸カルシウムを添加して中和してpHを2.4とし、一旦、固液分離して発生した石膏を除去して反応前のpH調整後液とした。
当該液中へ、タンパン(CuSO・5HO)を添加し、当該后液中の銅濃度を10g/Lとした。
当該反応前のpH調整後液1Lに、試薬の水酸化カリウム0.4gを添加し、ビーカに入れて撹拌しながら加温した。当該攪拌において、攪拌羽根形状はタービンとし邪魔板を挿入し、撹拌回転数は500rpmとし、加温温度は90℃とした。
当該反応前のpH調整後液の液温が90℃となった時点で、一旦サンプリングを行い、pH、ORP、そして組成分析を実施した。
引続いて、当該反応前のpH調整後液中へ、大気(O濃度:20.9(容量)%)を200ml/minの流量で吹き込んだ。そして、1時間ごとに液を少量サンプリングして、pH、ORP、組成分析を実施した。反応時間は6時間で終了とした。
【0038】
当該一連の測定結果を表1に示す。同時に、液ベースの沈殿率を計算し、当該計算値を表2に示す。
当該6時間の反応終了時点で、残留しているJarosite反応液(スラリー)を加圧ろ過機にてろ過した。フィルターはPTFEのメンブランで3ミクロンの目開きのものを使用した。 加圧圧力は0.4MPaとした。
当該ろ過において、押し込んでいるガスが抜けた時点をろ過終了時点とし、ろ過時間を測定して、当該ろ過時間と液量とろ過断面積(ここでは0.01mだった。)とからろ過速度を算出した。
当該ろ過後に回収された固形分は、まだ水分を含んでいるので60℃で18時間乾燥機に入れて乾燥した。当該乾燥前後における固形分の重量を測定することで、固形分回収量および水分値を算出した。
乾燥した固形分は組成分析を行い、ガリウム他の含有量の(質量)%を測定した。そして、この固形分重量とガリウム他の含有割合とから、固形分発生ベースの沈殿率も算出し、液ベースとの沈殿率との間に大きな違いが無いか検証し確認した。
これらのろ過速度、固形分重量、水分値、ガリウム他の含有量、残渣ベース沈殿率の結果を表3に示す。同時に、液ベースの沈殿率を計算し、当該計算値を表4に示す。
【0039】
表1〜4の結果から、触媒としてCuイオンを利用する大気を用いた酸化反応によりJarositeが充分良好に析出し、ろ過性も良好であることが判明した。
当該Cuイオンを利用する大気を用いた酸化反応により生成したJarositeは、実施例2において説明するOガスを利用して生成したJarositeと、殆ど差が無いレベルまでろ過が良好であることが判明した。さらに、残渣の水分値が低いことも好ましい結果である。残渣の水分値が低ければ、溶解する際に液の濃度の低下が少ないし、乾燥させる場合にも燃料コストが安くなるからである。さらに、ガリウムの沈殿率は60〜70(質量)%であることが判明した。
【0040】
【表1】


【表2】


【表3】


【表4】


【0041】
(実施例2)
タンパン(CuSO・5HO)の添加を行わず、且つ、大気の代わりに純度99(容量)%の酸素ガスを、前記反応前のpH調整後液の液量1Lに対して200ml/minの流量で吹き込んだ。吹き込んだ酸素量は大気の場合の5倍であったが、そのままの流量で吹き込みを実施した。他は、実施例1と同様の操作を実施した。
pH、ORP、そして組成分析の結果を表5に示す。同時に、液ベースの沈殿率を計算し、当該計算値を表6に示す。さらに、ろ過速度、固形分重量、水分値、ガリウム他の含有量、残渣ベース沈殿率の結果を表7に示す。同時に、液ベースの沈殿率を計算し、当該計算値を表8に示す。
【0042】
表5〜8の結果から、高純度のOガスを用いた酸化反応では、Jarositeが充分に良好に析出し、ろ過性も良好であることが判明した。一方、ガリウムの沈殿率は、50〜60(質量)%であることが判明した。
【0043】
【表5】


【表6】


【表7】


【表8】


【0044】
(比較例1)
タンパン(CuSO・5HO)の添加を行わない以外は、実施例1と同様の操作を実施した。
そして、実施例1と同様の測定を実施した。当該一連の測定結果を表9に示す。同時に、液ベースの沈殿率を計算し、当該計算値を表10に示す。さらに、ろ過速度、固形分重量、水分値、ガリウム他の含有量、残渣ベース沈殿率の結果を表11に示す。同時に、液ベースの沈殿率を計算し、当該計算値を表12に示す。
表9〜12の結果から、Cuイオンが存在しない状態における通常の大気を用いた酸化反応では、Jarositeが充分に析出しておらず、ガリウム沈殿率が低く回収できていない上、ろ過性も悪いことが判明した。
【0045】
【表9】


【表10】


【表11】


【表12】


【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態に係るガリウムの分離濃縮方法のフロー図である。
【図2】本発明の異なる実施形態に係るガリウムの分離濃縮方法のフロー図である。
【出願人】 【識別番号】000224798
【氏名又は名称】DOWAホールディングス株式会社
【出願日】 平成18年7月14日(2006.7.14)
【代理人】 【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄

【識別番号】100105256
【弁理士】
【氏名又は名称】清野 仁


【公開番号】 特開2008−19486(P2008−19486A)
【公開日】 平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願番号】 特願2006−193789(P2006−193789)