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薄鋼板成形品の焼入れ方法 - 特開2008−45183 | j-tokkyo
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【発明の名称】 薄鋼板成形品の焼入れ方法
【発明者】 【氏名】森下 芳行

【氏名】宿輪 新吾

【氏名】岸原 重樹

【氏名】西本 友三

【氏名】羽矢 宏治

【氏名】谷口 易之

【要約】 【課題】加熱を利用した薄鋼板成形品の焼入れを、小規模高周波電源により低消費電力で且つ高能率に行うことのできる技術を提供する。

【構成】薄鋼板成形品を被処理物10とし、その焼入れ対象領域11を誘導加熱してから急冷する薄鋼板成形品の焼入れ方法であって、被処理物10の複数体13,14を夫々の焼入れ対象領域11が直列無端状に連なる閉電路が形成されるような導通取合(15)で且つ各体間の位置関係が固定されるように相互連結(16)して被処理物集合体13+14の形に仮組みし、該集合体の軸線と同方向の磁束が生じる誘導子17を該集合体の外側に配置して誘導子17に高周波通電することにより、誘導子の被処理物との結合度の指標である結合係数を高めた態様で上記閉電路を周回する誘導電流を生じさせて複数体の焼入れ対象領域11,11を同時に焼入れする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄鋼板成形品を被処理物とし、該被処理物内に画定された焼入れ対象領域を、誘導加熱により該領域に誘導電流を生じさせて焼入れ温度に加熱し次いで急冷して行う薄鋼板成形品の焼入れ方法であって、前記焼入れ温度への加熱を、前記被処理物の複数体を該複数体の各体に夫々属する前記焼入れ対象領域が直列無端状に連なる閉電路が形成されるような導通取合で且つ各体間の位置関係が固定されるように相互連結して被処理物集合体の形に仮組みし、該集合体の軸線と同方向の磁束が生じる誘導子を該集合体の外側に配置して該誘導子に高周波通電することにより、前記閉電路を周回する誘導電流を生じさせて該閉電路を構成する前記焼入れ対象領域を誘導加熱して行う、ことを特徴とする薄鋼板成形品の焼入れ方法。
【請求項2】
前記焼入れ対象領域は前記被処理物内に細長く画定されており、該領域がその長手方向に連なって形成されたリング状の閉電路に対向させてリング状の誘導子を配置し、該誘導子を前記閉電路に対して静置させた状態で前記誘導加熱を行う、ことを特徴とする請求項1記載の薄鋼板成形品の焼入れ方法。
【請求項3】
前記焼入れ対象領域は、前記被処理物内の、前記相互連結に供される端部を除く全域であり、該全域が連なって形成された筒状の閉電路に対向させてリング状の誘導子または複巻きされた誘導子を配置し、該誘導子を筒状の閉電路に対してその軸線方向に相対的に走行させながら前記誘導加熱を行う、ことを特徴とする請求項1記載の薄鋼板成形品の焼入れ方法。
【請求項4】
前記導通取合での相互連結を、渡り導体の両端に挟圧把持機能部を設けた連結具を用いて行う、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載された薄鋼板成形品の焼入れ方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、薄鋼板成形品の焼入れ方法に関し、例えば自動車の車体を構成する薄鋼板製の成形品を被処理物として、その要強化領域に焼入れ温度への加熱とこれに続く急冷とを適用して行う薄鋼板成形品の焼入れ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄鋼板成形品の焼入れに関し、厚さ0.6mm〜3.2mmといった薄鋼板製のプレス成形品を被処理物として、焼入れ温度まで誘導加熱するに際して、被加熱領域を全体同時に誘導加熱する一発加熱方式でも入熱分布の調整が容易に行えるよう、ジグザグ電路構成の誘導子を配して誘導加熱する技術が、開発されている(例えば特許文献1参照)。
また、同じく薄鋼板製のプレス成形品を被処理物として、焼入れ温度まで誘導加熱するに際して、一発加熱方式でも昇温むらが低減されるよう、高周波通電を一時停止又は一時低減する技術が、開発されている(例えば特許文献2参照)。
【0003】
さらに、厚さ3.2mm以下の薄鋼板製等の成形品や板状体を被処理物とし、この被処理物上の被加熱領域を加熱すべく、単一の被処理物に一発加熱方式の誘導加熱を適用するに際して、誘導電流が被加熱領域に集中するよう、被加熱領域の端部同士を被処理物の外部に配した導電部材で繋いで短絡させることにより、誘導電流に出入口を供する循環電路を形成する技術が、開発されている(例えば特許文献3参照)。因に、上記循環電路のうちの短絡部分を流れる電流は、誘導加熱には寄与せず銅損しかもたらさない。この技術では、被加熱領域が複数の場合にはそれらの領域同士を導電部材で直列に接続して閉回路(閉電路)にすることや、挟着具を導電部材の端部に設けることにより導電部材を薄鋼板成形品に対して着脱可能にすることも、提案されている。すなわち、この技術では、被加熱領域が単一の場合はもとより、被加熱領域(焼入れ対象領域)が複数の場合であっても、一度に誘導加熱する被処理物は単一であった。
【0004】
【特許文献1】特開2004−353035号公報
【特許文献2】特開2005−015906号公報
【特許文献3】特開2005−054225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1〜3における誘導加熱は、いずれも、誘導子をその磁束が被処理物の板面を貫通するように配置した電磁モードで行う、「トランスバース磁束方式」と称される方式の誘導加熱である。
そして、このトランスバース誘導加熱では、誘導子と被処理物の結合係数(電磁結合の強さを表しており、誘導電流対誘導子電流比率を支配する)が低位なので、誘導子通電電流のうちの何割かは誘導加熱に寄与しない無効電流となってしまう。ついては、入熱に必要な電流よりもかなり大きい割増し電流の通電を要することとなるため、高周波電源の規模を結合係数の高位な方式と比べて大きく設定することが必要となって設備コストが嵩む。また、消費電力も銅損増により割増しされる。これらは、量産が大勢であるプレス成形品処理にあっては不利な要素である。
【0006】
そこで、焼入れ対象領域(被加熱領域)の誘導加熱を、トランスバース方式ではなく誘導子と被処理物の結合係数の高位な方式で行えて高周波電源の規模や消費電力が小さくて済むようにすることが、基本的な課題となる。
また、上述したような従来の薄鋼板成形品の焼入れ方法では、何れの場合も、被処理物が単一である。このため、多数の物品を処理する場合、一つずつ処理していたのでは時間が掛かり、単に処理本数を増やして並列処理や並行処理を行ったのでは、その分だけ設備費等が嵩んでしまう。
そこで、能率向上のため複数体の被処理物を同時に処理することが更なる課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の薄鋼板成形品の焼入れ方法(請求項1)は、このような課題を解決するために創案されたものであり、薄鋼板成形品を被処理物とし、該被処理物内に画定された焼入れ対象領域を、誘導加熱により該領域に誘導電流を生じさせて焼入れ温度に加熱し次いで急冷して行う薄鋼板成形品の焼入れ方法であって、前記焼入れ温度への加熱を、前記被処理物の複数体を該複数体の各体に夫々属する前記焼入れ対象領域が直列無端状に連なる閉電路が形成されるような導通取合で且つ各体間の位置関係が固定されるように相互連結して被処理物集合体の形に仮組みし、該集合体の軸線と同方向の磁束が生じる誘導子を該集合体の外側に配置して該誘導子に高周波通電することにより、前記閉電路を周回する誘導電流を生じさせて該閉電路を構成する前記焼入れ対象領域を誘導加熱して行う、ことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の薄鋼板成形品の焼入れ方法(請求項2)は、上記解決手段を一発加熱方式で具現化したものであり、具体的には、上記の請求項1記載の薄鋼板成形品の焼入れ方法であって更に、前記焼入れ対象領域は前記被処理物内に細長く画定されており、該領域がその長手方向に連なって形成されたリング状の閉電路に対向させてリング状の誘導子を配置し、該誘導子を前記閉電路に対して静置させた状態で前記誘導加熱を行う、ことを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明の薄鋼板成形品の焼入れ方法(請求項3)は、上記解決手段を移動加熱方式で具現化したものであり、具体的には、上記の請求項1記載の薄鋼板成形品の焼入れ方法であって更に、前記焼入れ対象領域は、前記被処理物内の、前記相互連結に供される端部を除く全域であり、該全域が連なって形成された筒状の閉電路に対向させてリング状の誘導子または複巻きされた誘導子を配置し、該誘導子を筒状の閉電路に対してその軸線方向に相対的に走行させながら前記誘導加熱を行う、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の薄鋼板成形品の焼入れ方法(請求項4)は、上記解決手段を連結具の利用にて具現化したものであり、具体的には、前記導通取合での相互連結を、渡り導体の両端に挟圧把持機能部を設けた連結具を用いて行う、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
このような本発明の薄鋼板成形品の焼入れ方法(請求項1)にあっては、被処理物の複数体を無端状に連ねた被処理物集合体を誘導加熱するという着想に発して、誘導子の磁束の方向を被加熱体である被処理物集合体の軸線に一致させた電磁モードでの誘導加熱、云い換えれば、誘導子の磁束を取り囲む形で被加熱体が無端環状に配置されて強い電磁結合の確保された結合係数の高位な方式(いわば「同軸磁束方式」)での誘導加熱が実現され、高周波電源の規模や消費電力が小さくて済むこととなって、前記の基本的な課題が解決される。また、被処理物を相互固定状態で加熱する構成としたことで、複数体を同時に加熱できることとなって、前記の更なる課題も併せて解決される。
したがって、この発明によれば、小規模電源設備,低消費電力による高能率処理という生産性の高い薄鋼板成形品の焼入れ方法を実現することができる。
【0012】
誘導子の被処理物との係合係数は、同軸磁束電磁モードでの誘導加熱を実現した本発明構成の場合、形状にもよるが、大抵は0.6〜0.8といった高い値になる。これに対し、トランスバース磁束電磁モードでの誘導加熱では0.5の確保すら難しい。すなわち、同軸磁束加熱を実現できたことで、所要電源規模や消費電力が、トランスバース誘導加熱の場合の半分近くになるということである。
本発明が移動加熱方式での焼入れに適用された場合には、所要電源規模が更に小さくて済むこととなる一方で処理時間が長びくという代償を伴う。しかし、その代償は、複数体を同時処理することで何分の一かに減少する。移動加熱には、走行方向の入熱分布を走行速度や投入電力の加減によって調整できるという利点があるが、この利点は本発明方法においても活用することができる。
【0013】
数値例も交えて詳述する。本発明の適用される被処理物の典型的な肉厚が0.6mm〜3.2mmであるとして、本発明の薄鋼板成形品の焼入れ方法における高周波通電の好適周波数は、1kHz〜50kHzである。この周波数領域は、単一板体を表裏から挟むように誘導子で囲んで誘導加熱する囲み誘導加熱の好適周波数領域である0.1MHz〜5MHzとちがって、ソリッドステート回路素子で電源を構成しやすい範囲であるため、周波数起因の高設備コストという問題も生じない。
【0014】
本発明において被処理物集合体を構成する被処理物の体数としては、集合体の形状の維持が容易な2〜4体が推奨されるが、限定はされない。さらには、該集合体をその軸線方向に多段化することも生産性の向上に有用である。複数体間の接続の手法としては、たとえば、隣り合う長辺部を直に接触させて電気導通状態で連結する手法や、剛な渡り導体を介在させる等のことにより間接的に電気導通状態を確立しながら隣り合う長辺部を連結させる手法を例示できる。
【0015】
本発明においては、誘導電流が周回する電路内への接続導体の介在を皆無ないしは最小限にできるので、相互接続に起因した銅損が新たに加わるという懸念も実質的に無用である。
すなわち、直接接触での相互連結の場合、誘導電流が被処理物の焼入れ対象領域だけを流れるので、接続用の導電部材などで余計な電力を消費することがない。
また、接続用の導電部材として渡り導体を介在させた相互連結の場合でも、被処理物同士の接続箇所が直接接触も可能なほど近いことから、個々の各焼入れ対象領域における誘導電流の経路長よりも渡り導体における誘導電流の経路長を短くしたり太くすることが容易なので、例えば1/10以下の如く桁違いに電路抵抗を小さくすることすら容易なので、渡り導体における銅損を十分に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の薄鋼板成形品の焼入れ方法の一実施形態(第1形態)について、その手順等を、図面を引用して説明する。図1は、(a)が被処理物10の凹側斜視図、(b)及び(c)が被処理物10の凸側斜視図、(d)が二個の被処理物13,14からなる被処理物集合体13+14の斜視図、(e)が被処理物集合体13+14および支持機構16の縦断面図、(f)が被処理物集合体13+14および誘導加熱装置17+18の平面図、(g)が三個の被処理物からなる被処理物集合体および誘導加熱装置の平面図、(h)が四個の被処理物からなる被処理物集合体および誘導加熱装置の平面図である。なお、高周波電源は記号で簡略図示している。
【0017】
被処理物10は(図1(a),(b)参照)、例えば、自動車のボディの一部に用いられる焼入れに適した炭素鋼板製の山形断面のプレス成形品であり、板厚が2mmで高さが50mm前後で長さが800mm,その山形の頂上にあたる平坦部の幅は20mm,下端側の幅は両脇のフランジ(各10mm幅)を含めて80mmであり、その全域が焼入れ対象領域11となっている(図1(c)のダブルハッチング部分を参照)。長辺部12や,それと焼入れ対象領域11との間の傾斜部は、加熱対象にはなっていない。
【0018】
このような被処理物10は複数体13,14が被処理物集合体13+14の形に組み立てられる(図1(d)参照)。その際、例えば縒り銅線を複数条並列配備した通電断面積の大きい可撓性導体15が二条用いられて、被処理物13の焼入れ対象領域11の一端と被処理物14の焼入れ対象領域11の一端とが第1の導体15にて接続され、被処理物13の焼入れ対象領域11の他端と被処理物14の焼入れ対象領域11の他端とが第2の導体15にて接続される。接続は、電気導通が得られれば、挟着具利用方式でも(例えば特許文献3参照)、他の方式でも良い。このような導通取合で被処理物13,14を相互連結することにより、複数体13,14の各体に夫々属する焼入れ対象領域11が直列無端状に連なる閉電路(11+15+11+15)が形成される。すなわち、複数の焼入れ対象領域11,11がその長手方向に連なって、リング状の閉電路(11+15+11+15)が形成される。
【0019】
被処理物10の複数体13,14を被処理物集合体13+14の形に仮組みする際には、被処理物13,14を対向配置させるとともに、各体間の位置関係が固定されるように相互連結する。対向配置は、誘導加熱により焼入れ対象領域11に誘導電流を生じさせて焼入れ対象領域11を加熱したときに加熱状態や放熱状態が揃って温度分布が一様になるのを目的としたものであり、焼入れ対象領域11を遠ざけ長辺部12側を近づけて対向させる。導体15は柔な渡り導体であり位置関係の固定には役立たないので、各体13,14間の位置関係を固定するには、例えば長辺部12の対を対間の導通が生じない態様で挟圧把持する支持機構16を用いると良い(図1(e)参照)。
【0020】
このような被処理物集合体13+14を一発加熱方式で誘導加熱するため、誘導子17と高周波電源18を具えた誘導加熱装置が使用される(図1(f)参照)。誘導子17は、例えば水冷可能な銅管からなり、被処理物集合体13+14の外側に配置されるが、被処理物13の焼入れ対象領域11及び被処理物14の焼入れ対象領域11に対して例えば5mm〜10mm程度に近接して対向するよう、リング状に形成されている。
このような誘導子17を閉電路(11+15+11+15)に対向させて誘導子17を配置する。
【0021】
その際、被処理物集合体13+14の軸線と同方向の磁束が生じる状態で、且つ、狭巾の閉電路(11+15+11+15)に対して誘導子17を静置させた状態で、誘導子17を配置する。そして、焼入れ対象領域11の厚さに基づく例えば10〜20kHz程度の高周波を高周波電源18から供給して誘導子17に高周波通電する。
これにより、閉電路(11+15+11+15)を周回する誘導電流が生じて、その閉電路を構成している二つの焼入れ対象領域11,11が同時に誘導加熱される。
こうして、二個の被処理物10に対する誘導加熱が一発で迅速かつ的確に行われる。
【0022】
なお、上述したような被処理物10を三個ずつ纏めて誘導加熱する場合は、正三角形の各辺に被処理物10を配置し、正三角形の各頂点に導体15を配置する(図1(g)参照)。これにより、複数体の各体に夫々属する焼入れ対象領域11,11,11が直列無端状に連なる閉電路(11+15+11+15+11+15)が形成される。
また、上述したような被処理物10を四個ずつ纏めて誘導加熱する場合は、正方形の各辺に被処理物10を配置し、正方形の各頂点に導体15を配置する(図1(h)参照)。これによっても、複数体の各体に夫々属する焼入れ対象領域11,11,11,11が直列無端状に連なる閉電路(11+15+11+15+11+15+11+15)が形成される。
【0023】
何れの場合も、被処理物10を相互固定したうえで、細長い焼入れ対象領域11がその長手方向に連なって形成されたリング状の閉電路に対向させて該閉電路と略同幅のリング状の誘導子17を配置し、さらに誘導子17を狭巾の閉電路に対して静置させた状態で、誘導加熱を行う。これにより、誘導電流の流路が対向する誘導子による近接効果によって規制されるので、焼入れ対象領域が細長いものであっても、そこへ的確に誘導電流が集中する。しかも、複数体の被処理物を能率良く処理できる。例えば、図1(d)〜(f)のケースについて云えば、焼入れ対象領域11を焼入れ温度として設定された900℃強の温度に1分弱の短時間で昇温させる加熱操作が20kVAの高周波電源を出力に余裕を残した形で稼働させて行える。
加熱後は、水冷などの手法で加熱部全域を同時に急冷し(例えば特許文献1〜4参照)、それから、被処理物集合体の相互連結を解いて、各被処理物10の熱処理を終える。
【0024】
本発明の薄鋼板成形品の焼入れ方法の他の実施形態(第2形態)について、その手順等を、図面を引用して説明する。図2は、(a)及び(b)が被処理物20の凸側斜視図、(c)が二個の被処理物23,24からなる被処理物集合体23+24の斜視図、(d)が長辺部22,22接続の一例を示す斜視図、(e)が被処理物集合体23+24および誘導加熱装置27+28の斜視図、(f)がその端面図である。
【0025】
この形態では、被処理物20が長方形平板を蒲鉾状に曲げた薄鋼板成形品であり、板厚が1.2mm,高さが60mm,長さが600mm,頂部の幅が80mm,下端側の幅(フランジを含む)が105mmである。導通取合での相互連結が直に接触させて行われ、誘導加熱が一発加熱方式でなく移動加熱方式で行われる。
被処理物20は(図2(a)参照)、横断面における形状が長手方向のどこでも同じになっている。焼入れ対象領域21は、被処理物20のうち、相互連結に供される端部である長辺部22を除く全域である(図2(b)のダブルハッチング部分を参照)。
【0026】
被処理物20の二体23,24を被処理物集合体23+24の形に組み立てるときには、上述の例と同じく被処理物23,24を対向配置させるが(図2(c)参照)、上述の例と異なり次に述べる直接接触状態での導通取合にて各体間の位置関係の固定まで行う。導通取合での相互連結を直接接触状態で行うには(図2(d)参照)、連結に供される一対の被処理物20,20の長辺部22,22同士すなわち焼入れ対象領域21の両脇の端部同士を相互に重ね合わせて例えば加圧用の隆起部を多点配設したバネ圧挟み付け形式の挟圧具26(詳細構造図示略)にて長辺部22,22の長手方向沿いに多点密着させて相互連結すると良い。このような挟圧具26による相互連結は、被処理物集合体23+24の導通取合に加えて、被処理物集合体23+24の仮組み形状保持を兼ねる。
そして、そのような連結手法により被処理物23,24の長辺部22を直付けして仮組みすると、被処理物集合体23+24は、焼入れ対象領域21,21の総てが連なって筒状の閉電路(21+21)が形成されたものとなる。
【0027】
誘導加熱装置は、ここでも誘導子27と高周波電源28だけを図示したが(図2(e),(f)参照)、図示しない移動機構も設けられており、この機構により誘導子27を筒状の閉電路(21+21)に対してその軸線方向すなわち長手方向へ相対的に走行させるようになっている。誘導子27は、被処理物23の焼入れ対象領域21及び被処理物24の焼入れ対象領域21に対しては誘導電流を誘発可能なところまで近接して対向するようリング状に形成されており、筒状の閉電路(21+21)に対向させて具体的には閉電路のうち一横断面における環状部分に対向させて、閉電路の外側に配置される。
【0028】
誘導子27は銅管製であって中空部を冷却水路とした水冷構造となっており、更に、誘導子27には多数の小孔が飛石状に設けられていて(図示略)、この小孔からの噴射水により誘導子27による加熱部を追随冷却することで移動形式で焼入れを進めるようになっている。この場合、水切りが容易なように縦移動とするのがよい。なお、この水冷を、全長に亘る移動加熱を終えてから一気に行うようにしてもよいが、その場合は移動加熱中の放熱による加熱温度の傾きを補償するようなプログラム入熱を行うことが望ましい。
【0029】
このような誘導子27に高周波電源28から高周波通電を行いながら、誘導子27を被処理物集合体23+24の一端側から他端側まで一定速度で又は入熱分布仕様に基づく可変速度で走行させる。そうすると、被処理物集合体23+24の軸線と同方向の磁束が生じ、それによって閉電路(21+21)のうち誘導子27対向の環状部分に閉電路を周回する誘導電流が生じて、その閉電路を構成している二つの焼入れ対象領域21,21のうち誘導子27対向部分が同時に誘導加熱される。
そして、誘導子27が被処理物集合体23+24の端から端まで走行を終えると、二個の被処理物20に対する誘導加熱が完了する。
【0030】
なお、移動加熱方式でも、誘導子27に対向する環状部分に流れる誘導電流の電流密度は一発加熱方式と同様に大きいので、上記相互連結部で接触抵抗起因の過熱が起りそうであるが、その心配は無用である。何故なら、誘導子27の被処理物との対向間隔を相互連結部近傍では大きくしておくことで誘導子27による誘導電流流路規制作用を弱め、誘導電流に長辺部22の全長に分散する流路をとらせて、相互連結部における電流密度を著減させることができるからである。
【0031】
本発明の薄鋼板成形品の焼入れ方法の他の実施形態(第3形態)について、その手順等を、図面を引用して説明する。図3は、(a)及び(b)が四個の被処理物20からなる被処理物集合体および誘導子27の斜視図、(c)が二点鎖線で囲んだC部の拡大図である。
この形態では(図3(a),(b)参照)、導通取合での相互連結が渡り導体29を介在させて行われる。被処理物20は、上述した第2形態のものと同じであるが、四体が纏めて処理される。誘導加熱は移動加熱方式で行われる。
【0032】
渡り導体29は(図3(c)参照)、何れも金属等からなる外側導体29aと内側導体29bとを対向させて不図示の小ボルト等で連結したものであり、これを用いて被処理物20の長辺部22同士を連結する場合、外側導体29aと内側導体29bとの隙間を開けた状態でその隙間に両側から夫々の長辺部22を差し込み、それからボルト締込み等によって外側導体29aと内側導体29bとの間隙を狭めることにより、両側に被処理物20を挟圧把持するようになっている。図示の例では四体の被処理物20を筒状に仮組みするため各導体29は両側の被処理物20をほぼ直交させて把持するようになっているが、長手方向に直交する横断面における形状が長手方向のどこでも同じであれば移動加熱が適切に行えるので、被処理物20が三体でも五体以上でも本発明の適用が可能である。
【0033】
高周波電源18の出力が小さい場合は、一巻きだけで作ったリング状の誘導子27を被処理物集合体(20+20+20+20)の外側に配置して移動加熱を行うが(図3(a)参照)、高周波電源18の出力に余裕がある場合は、ソレノイド状あるいは多段リング状に複巻きされた誘導子27を被処理物集合体(20+20+20+20)の外側に配置して移動加熱を行う(図3(b)参照)。
この移動加熱方式の場合も、加熱後の急冷を加熱に追随させた移動形式として移動形式の焼入れを行うことが望ましい。焼入れ後は、被処理物集合体を解体して、複数の強化成形品を得る。
【0034】
[その他]
なお、図2のケースの移動加熱焼入れでは、20〜50kHzの高周波通電による、焼入れ温度900℃強、移動速度3.3mm/s(所要時間3分)での焼入れ処理が、図2(c)〜(f)については20kVA、図3(a)については50kVAの高周波電源により、夫々電源出力に余裕を残した形で行える。
また、被処理物20同士の接続は、上述したような着脱式が便利であるが、短時間での解体さえできれば圧着や溶着などの固着式でも良い。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の典型的な用途としては、自動車車体構成用のプレス成形品を対象として誘導加熱後に急冷するといった焼入れ方法を挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態(第1形態)について、薄鋼板成形品の焼入れ方法を示し、(a)が被処理物の凹側斜視図、(b)及び(c)が被処理物の凸側斜視図、(d)が二個の被処理物からなる被処理物集合体の斜視図、(e)が二個の被処理物からなる被処理物集合体および支持機構の縦断面図、(f)が二個の被処理物からなる被処理物集合体および誘導加熱装置の平面図、(g)が三個の被処理物からなる被処理物集合体および誘導加熱装置の平面図、(h)が四個の被処理物からなる被処理物集合体および誘導加熱装置の平面図である。
【図2】本発明の他の実施形態(第2形態)について、薄鋼板成形品の焼入れ方法を示し、(a)及び(b)が被処理物の凸側斜視図、(c)が二個の被処理物からなる被処理物集合体の斜視図、(d)が長辺部接続の一例を示す斜視図、(e)が二個の被処理物からなる被処理物集合体および誘導加熱装置の斜視図、(f)がその端面図である。
【図3】本発明の他の実施形態(第3形態)について、薄鋼板成形品の焼入れ方法を示し、(a)及び(b)が四個の被処理物からなる被処理物集合体および誘導子の斜視図、(c)が二点鎖線で囲んだC部の拡大図である。
【符号の説明】
【0037】
10…被処理物(薄鋼板成形品)、11…焼入れ対象領域、12…長辺部、
13,14…被処理物(被処理物集合体)、15…可撓性導体、
16…支持機構、17…誘導子、18…高周波電源、
20…被処理物(薄鋼板成形品)、21…焼入れ対象領域、22…長辺部、
23,24…被処理物(被処理物集合体)、26…挟圧具(直接接触導通手段)、
27…誘導子、28…高周波電源、29…渡り導体
【出願人】 【識別番号】000208695
【氏名又は名称】第一高周波工業株式会社
【出願日】 平成18年8月18日(2006.8.18)
【代理人】 【識別番号】100106345
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 香


【公開番号】 特開2008−45183(P2008−45183A)
【公開日】 平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願番号】 特願2006−223653(P2006−223653)