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【発明の名称】 カム焼入れ装置およびカム焼入れ方法
【発明者】 【氏名】肥川 優子

【氏名】水谷 伸郎

【要約】 【課題】必要に応じ複数カムへの同時焼入れが可能であると共に、容易に、カムの外周面に対してバラツキの少ない焼入れを行なうことができ、かつ小型化を実現することができるカム焼入れ装置およびカム焼入れ方法を提供することである。

【構成】カム焼入れ装置10においては、ポンプカム630が加熱コイル550の円環状の内側に配設され、かつカム駆動部320によりポンプカム630が軸心610を中心に回転されるとともに、X軸駆動装置100により加熱コイル550を軸心に垂直なX軸方向に往復動される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カムシャフトを回転させることが可能なカム駆動部と、前記カムシャフト上に形成されるカムの外周面を加熱することが可能な円環状の加熱コイルと、前記加熱コイルを移動させるコイル駆動部と、を含むカム焼入れ装置において、
前記カムは、
円環状の前記加熱コイルの内側に配置され、かつ前記カム駆動部により前記カムシャフトの軸心を中心に回転され、
前記コイル駆動部は、
前記カムの回転に応じて前記加熱コイルを前記軸心に垂直な一軸方向に往復動させることを特徴とするカム焼入れ装置。
【請求項2】
前記コイル駆動部は、
前記カム駆動部により前記カムが一回転する間に、前記一軸方向に一周期の往復動をさせることを特徴とする請求項1記載のカム焼入れ装置。
【請求項3】
前記カムの外周面は、
軸心より最も偏心量の大きいカムトップ部と、
該カムトップ部より軸心の反対側に位置するカムボトム部と、を有し、
前記加熱コイルが前記往復動の中央に位置する状態では、前記カムシャフトの軸心と前記加熱コイルの円環状の中心が一致するとともに、前記一軸方向に垂直な方向に前記カムトップ部を位置させ、前記加熱コイルが前記往復動の往動側の最大の移動点に位置する場合に、前記往復動の複動側で、前記カムボトム部が前記加熱コイルに最も近接するように、制御することを特徴とする請求項2記載のカム焼入れ装置。
【請求項4】
前記カムは、
前記カムシャフトに複数設けられ、
前記コイル駆動部は、
前記加熱コイルを前記カムシャフトと平行に移動させる第1の移動装置と、
前記加熱コイルを前記軸心に垂直な一軸方向に往復動させる第2の移動装置と、
前記カムシャフトの軸心を中心として前記カムシャフトを回転させる回転装置と、
前記第1の移動装置、前記第2の移動装置および前記回転装置の動作を制御する制御装置と、
を含むことを特徴とする請求項1から請求項3記載のカム焼入れ装置。
【請求項5】
カムに対して焼入れを行なうカム焼入れ方法において、
円環状の加熱コイルを移動させて、前記カムを前記加熱コイルの円環状の内側に配置する工程と、
前記カムの軸心を中心に回転させるとともに、前記カムの回転に応じて前記加熱コイルを前記軸心に垂直な一軸方向に往復動させる工程と、
を含むことを特徴とするカム焼入れ方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、カムシャフトのカム外周面を加熱するカム焼入れ装置およびカム焼入れ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の構成部品であるカムシャフトには、各気筒に対応し吸気弁又は排気弁を駆動するバルブカム等、複数のカムが配設されており、前記カムの外周面には耐磨耗性を付与する必要がある。カム外周面に耐磨耗性を付与する手段としては、耐磨耗性に優れた材料によるコーティングも提案されているが、鋳鉄製など金属製のカムシャフトでは、焼入れ処理を施すケースが多い。この焼入れ処理の方法の一つとして、カムを囲むように外側に環状コイル(加熱コイル)を配置して行なう高周波焼入れが知られている。高周波焼入れでは、誘導加熱に用いられる環状コイルに繋ぎ目があり、内側の加熱状態が通常一様とならないため、加熱時にカムシャフトを回転させる等、対策がとられている。しかしながら、前記対策では、まだ、カム外周にて加熱状態のバラツキが大きかった。
【0003】
特許文献1記載の歪形ワークの加熱装置は、歪形ワークの外周面をより均一に加熱することを目的としている。
【0004】
この特許文献1記載の加熱装置においては、円形コイルの略中心位置に配置された平板カム(歪形ワーク)を、平板カムの中心を軸とした自転とともに、円形コイルの中心を軸として平板カムを円形コイル内において公転させ、この移動過程で円形コイルにより平板カムの外周面を誘導加熱して焼入れ処理を行なうものである。
【0005】
また、特許文献2記載の複数カム同時焼入れ装置は、位相の異なる複数のカムが形成されたカムシャフトにて、各カムにとって最適な高周波焼入れを同時に施すことを目的としている。
【0006】
この特許文献2記載の複数カム同時焼入れ装置においては、複数のカムに対して、個々に円形の加熱コイルが設けられ、個々の加熱コイルの加熱導体部の中心とカムの中心(シャフトの軸心)とをずらして配置して、駆動機構により加熱コイルを公転運動をさせるものである。それにより、同時に位相の異なる複数のカムに加熱処理を行なうことができる。
【特許文献1】特開2001−131637号公報
【特許文献2】特開2001−214219号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の平板カムの加熱装置および特許文献2記載の複数カム同時焼入れ装置は、製造ラインにて実用に用いる上で、各々問題を有していた。
【0008】
特許文献1記載の歪形ワークの加熱装置においては、一般的な内燃機関のカムシャフトの如く、位相の異なる複数のカムが形成されたカムシャフトに対し、複数のカムへの同時焼入れに制限がある。すなわち、特許文献1では、該当するワークの移動をワーク自転モータと公転モータにより実現しているが、位相の異なるカムに対しては、各カム毎にワーク自転モータと公転モータとの位相を変更する必要がある。つまり、位相の異なるカム外周面を同時に焼入れすることは出来ない。
【0009】
特許文献2記載の複数カム同時焼入れ装置は、特許文献1の前記問題を解決するものであり、加熱コイルを公転運動させることで、複数カムへの同時焼入れを可能としている。しかし、加熱コイルに付属するトランスが共に2軸移動するため、装置が複雑化、大型化することが避けられない。これは、加熱コイルを用い誘導加熱を行なう場合、損失を減らすために加熱コイルとトランスとの間の配線を短くする必要があり、加熱コイルとトランスとが一体に固定された構造が、一般に用いられるためである。
【0010】
本発明の目的は、必要に応じ複数カムへの同時焼入れが可能であると共に、容易に、カムの外周面に対してバラツキの少ない焼入れを行なうことができ、かつ小型化を実現することができるカム焼入れ装置およびカム焼入れ方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)
本発明に係るカム焼入れ装置は、カムシャフトを回転させることが可能なカム駆動部と、カムシャフト上に形成されるカムの外周面を加熱することが可能な円環状の加熱コイルと、加熱コイルを移動させるコイル駆動部と、を含むカム焼入れ装置において、カムは、円環状の加熱コイルの内側に配置され、かつカム駆動部によりカムシャフトの軸心を中心に回転され、コイル駆動部は、カムの回転に応じて加熱コイルを軸心に垂直な一軸方向に往復動させるものである。
【0012】
本発明に係るカム焼入れ装置においては、カムが円環状の加熱コイルの内側に配設され、かつカム駆動部によりカムシャフトが軸心を中心に回転されるとともに、コイル駆動部により加熱コイルを軸心に垂直な一軸方向に往復動させる。
【0013】
つまり、加熱コイルとカムの外周面各部との間の間隔が、交互に近接又は離間を繰り返す構造とすることで、カムの外周面各部の最終的な加熱状態のバラツキを抑制することが可能となる。また、加熱コイルを2軸上で移動させる場合と比較して、装置の構成を簡略化することができる。その結果、小型化を実現することができるとともに、容易な構成でカムに対して焼入れを行なうことができる。
【0014】
(2)
(1)の発明において、好ましい態様の一つは、コイル駆動部は、カム駆動部によりカムが一回転する間に、一軸方向に一周期させるものである。
【0015】
(3)
(2)の発明において、カムの外周面は、軸心より最も偏心量の大きいカムトップ部と、カムトップ部より軸心の反対側に位置するカムボトム部とを有し、加熱コイルが往復動の中央に位置する状態では、カムシャフトの軸心と加熱コイルの円環状の中心が一致するとともに、一軸方向に垂直な方向にカムトップ部を位置させ、加熱コイルが往復動の往動側の最大の移動点に位置する場合に、往復動の複動側で、前記カムボトム部が前記加熱コイルに最も近接するように制御することが好ましい。
【0016】
(4)
(1)から(3)の発明において、カムは、カムシャフトに複数設けられ、コイル駆動部は、加熱コイルをカムシャフトと平行に移動させる第1の移動装置と、加熱コイルを軸心に垂直な一軸方向に往復動させる第2の移動装置と、カムシャフトの軸心に沿ってカムシャフトを回転させる回転装置と、第1の移動装置、第2の移動装置および回転装置の動作を制御する制御装置とを含んでもよい。
【0017】
この場合、回転装置によりカムシャフトを回転させると共に、第2の移動装置により加熱コイルを一軸方向に往復動させる。これにより、1つのカムに対し、1つの加熱コイルで、焼入れが行なわれる。1つのカムに対する焼入れ終了後、第1の移動装置により加熱コイルを移動させることで、同じ加熱コイルで異なるカムの焼入れを行なうことができる。つまり、1つの加熱コイルで、複数のカムの焼入れを行なうことができる。
【0018】
(5)
本発明に係るカム焼入れ方法は、偏形ワークからなるカムに対して焼入れを行なうカム焼入れ方法において、円環状からなる加熱コイルを移動させて、カムを加熱コイルの円環状の内側に配設する工程と、カムの軸心を中心に回転させる工程と、カムの回転に応じて加熱コイルを軸心に垂直な一軸方向に往復動させる工程と、を含むものである。
【0019】
本発明に係るカム焼入れ方法においては、円環状からなる加熱コイルを移動させて、カムを加熱コイルの円環状の内側に配設させ、カムの軸心を中心に回転させるとともに、カムの回転に応じて加熱コイルを軸心に垂直な一軸方向に往復動させる。
【0020】
この場合、カムシャフトの軸心を中心としてカムを回転させつつ、コイル駆動部により加熱コイルをカムの回転に応じて軸心に垂直な一軸方向に往復動させることにより、カムの外周面に対して均一な加熱を行なうことができる。すなわち、カムの外周面に対して、加熱コイルを遠近移動させ、加熱コイルから均一な熱量をカムの全外周面に対して与えることができる。その結果、容易な構成で偏形ワークに対して均一な焼入れを行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施の形態について説明する。
【0022】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明に係る一実施の形態に係るカム焼入れ装置10の一例を示す模式的斜視図である。
【0023】
図1に示すようにカム焼入れ装置10は、X軸移動装置100、Z軸移動装置200、回転装置300、NC(Numerical Control)制御装置400、トランス500および図示しない高周波発生装置(インバータ)を含む。
【0024】
X軸移動装置100は、一対のX軸方向スライドレール111,112、X軸方向ボールネジ113、X軸ステージ114およびX軸サーボモータ120を含む。また、Z軸移動装置200は、一対のZ軸方向スライドレール211,212、Z軸方向ボールネジ213、Z軸ステージ214およびZ軸サーボモータ220を含む。
【0025】
図1に示すように、X軸移動装置100は、Z軸移動装置200のZ軸ステージ214上に配置され、X軸移動装置100のX軸ステージ114上には、トランス500が設けられる。すなわち、トランス500が、X軸移動装置100およびZ軸移動装置200によりXZ平面に自由自在に移動可能に設けられる。
【0026】
また、図1に示すように、回転装置300は、シャフト回転サーボモータ320を備え、焼入れ処理を施す被対象物であるカムシャフト600がシャフト回転サーボモータ320に接続される。カムシャフト600は、軸心を中心にシャフト回転サーボモータ320により矢印Rの方向に回転される。カムシャフト600には、8個のバルブカム620と、1個のポンプカム630が設けられてる。バルブカム620は、2個1組にて図示しないエンジン各気筒に対応するもので、各組の位相は異なる。また、ポンプカム630は、カムシャフトの回転を燃料ポンプの駆動に利用するもので、カム外周面が円形をなし、カムシャフトの軸心に対し、カム外周面の中心が偏心するごとく、形成されている。
【0027】
トランス500には、円環状の加熱コイル550がX軸方向に延在するように取付けられている。図1に示すように、円環状の加熱コイル550は、カムシャフト600のバルブカム620,ポンプカム630の一つを円環状の内側に内包するように配置される。また、トランス500は、図示しないインバータにつながれている。加熱コイル550により誘導加熱を行なう場合には、外部の電源よりインバータに電力が供給される。電力の供給を受けたインバータは高周波電流を発生させ、トランス500によって電圧が変換された後、加熱コイル550に高周波電流が供給される。トランス500と加熱コイル550の間は、損失を減らすために配線を短くする必要があり、特許文献2にも記載された如く一体に固定された構造とされることが多く、本実施形態でも同様の構成をとっている。
【0028】
次に、NC制御装置400の制御システムについて説明する。図2は、NC制御装置400の制御フローを示す模式図である。
【0029】
まず、図2に示すように、NC制御装置400は、Z軸サーボモータ220に回転指示を与え、位置決めを行なう(ステップS1)。それにより、トランス500およびX軸移動装置100が、Z軸方向に移動される。この場合、円環状の加熱コイル550の内側にカムシャフト600のバルブカム620,ポンプカム630の一つ、図1では側端のバルブカム620が配置される。
【0030】
次に、NC制御装置400は、シャフト回転サーボモータ320に回転指示を与えると、同時に、1軸制御動作の指示をX軸サーボモータ120に与える。すなわち、シャフト回転軸およびX軸を同期させて駆動させる(ステップ2)。
【0031】
次いで、NC制御装置400が、図示しないインバータに電力供給指示を与える。すなわち、高周波装置である加熱コイル550を発振させる(ステップS3)。それにより、トランス500から、加熱コイル550に対して高周波が供給され、加熱コイル550の内側に位置するバルブカム620が加熱される。
【0032】
そして、NC制御装置400は所定時間後、バルブカム620の焼入れ処理を終了させる(ステップS4)。詳しくは、ステップS3の加熱コイルによる加熱開始後、NC制御装置400内に設けられたタイマ(図示せず)を作動させ、タイマが所定時間を経過するまで、シャフト回転サーボモータ320の回転、X軸サーボモータ120の一軸制御、加熱コイル550による誘導加熱を継続する。所定時間の経過が確認された後、シャフト回転サーボモータ320、X軸サーボモータ120、加熱コイル550への電力供給を停止し、次ステップへ進む。なお、本実施の形態において、ステップS4の後にNC制御装置400は、所定時間により焼入れ処理が終了したか否かを判定するステップを追加してもよい。この場合は、加熱されたバルブカム620の外周面の到達温度、その他のセンサ等からの情報に基づいて焼入れ処理が終了したか否かを判定させることができる。焼入れ処理が終了していない、すなわち、何らかの理由でカムの加熱が十分では無かったと判定された場合は、NC制御装置400は、その旨を異常表示し処理を終了させる。
【0033】
続いて、NC制御装置400は、一のカムシャフト600に設けられたバルブカム620,ポンプカム630のうち、他のバルブカム620,ポンプカム630において焼入れ処理が終了したか否かを判定する。すなわち他に未処理のカムがあるか否かを判定する(ステップ5)。ここで、NC制御装置400が他のバルブカム620,ポンプカム630において焼入れ処理が終了していないと判定した場合、焼入れが修了していないカムの位置まで、トランス500および加熱コイル550を移動させ、ステップS1の処理に戻り、ステップS1からステップS5までの処理を再度繰り返す。それにより、トランス500および加熱コイル550が、他のバルブカム620,ポンプカム630の位置に移動し、他のバルブカム620,ポンプカム630の焼入れ処理が施される。
【0034】
一方、NC制御装置400が一のカムシャフト600に設けられたバルブカム620,ポンプカム630において、全てのバルブカム620,ポンプカム630の焼入れ処理が終了したと判定した場合、NC制御装置400は、処理を終了する。
【0035】
次に、図3〜図8は、図2におけるNC制御装置400のステップS3の処理における一軸制御指示を説明するための模式図である。ここでは説明を容易とするために、焼入れ対象がポンプカム630の場合について、説明する。各図における(a)は加熱コイル550およびポンプカム630の動きを示し、各図における(b)はポンプカム630外周面における温度変化を示す図である。各図における(b)の縦軸はポンプカム630の表面温度を示し、(a)の横軸はポンプカム630の回転角度を示す。
【0036】
まず、図3(a)に示すように、加熱コイル550は円環状からなり、ポンプカム630が加熱コイル550の円環状内側に配設される。ここで、図3(a)に示すカムの回転角度を0度とする。
【0037】
また、カムシャフト600の軸心に対して、カム外周面上の最も遠い外形部分(最も偏心量の多い部分;以下、カムトップ部と呼ぶ)を点PAとし、軸心をはさみカムトップ部の反対に位置する外形部分(以下、カムボトム部と呼ぶ)を点PBとする。また、点PAおよび点PBとの間にて、カムトップ部と軸心を結ぶ直線に対し、45度の角度をなす直線上に位置する外形部分(以下、45度部と呼ぶ)を点PCとする。また、円環状の加熱コイル550の中心を中心KCとする。この場合、図3(a)において、中心KCとカムシャフト600の軸心は、同じ位置である。
【0038】
次いで、ポンプカム630がシャフト回転サーボモータ320により回転される。図4は、図3の配置にあったポンプカム630がシャフト回転サーボモータ320により約45度時計回りに回転された状態を示す図である。
【0039】
図4(a)に示すように、ポンプカム630が時計回り方向に回転された場合、NC制御装置400の指示により、X軸サーボモータ120が回転し、カムシャフトの軸心に対して加熱コイル550の中心KCが距離X1移動される。
【0040】
この場合、図4(b)に示すように、加熱コイル550よりの誘導加熱で点PBに発生する熱量は、図3(a)における状態RSよりも低い状態GSのように変化する。
【0041】
次いで、ポンプカム630がシャフト回転サーボモータ320によりさらに回転される。図5は、図3の配置にあったポンプカム630がシャフト回転サーボモータ320により約90度時計回りに回転された状態を示す図である。
【0042】
図5(a)に示すように、ポンプカム630が時計回り方向に回転された場合、NC制御装置400の指示により、X軸サーボモータ120が回転し、カムシャフト600の軸心に対して加熱コイル550の中心KCが距離X3移動される。この距離X3が加熱コイル550の最大振幅の値となる。
【0043】
この場合、図5(b)に示すように、加熱コイル550よりの誘導加熱で、点PAに発生する熱量は、状態RSよりも高い状態GSのように変化する。
【0044】
続いて、ポンプカム630がシャフト回転サーボモータ320によりさらに回転される。図6は、図3の配置にあったポンプカム630がシャフト回転サーボモータ320により約180度時計回りに回転された状態を示す図である。
【0045】
図6(a)に示すように、ポンプカム630が時計回り方向に回転された場合、NC制御装置400の指示により、X軸サーボモータ120が回転し、カムシャフト600の軸心に対して加熱コイル550の中心KCが距離0までもどされる。
【0046】
この場合、図6(b)に示すように、加熱コイル550よりの誘導加熱により、点PAに発生した熱量は状態RSよりも低い状態GSのように変化する。
【0047】
次に、ポンプカム630がシャフト回転サーボモータ320によりさらに回転される。図7は、図3の配置にあったポンプカム630がシャフト回転サーボモータ320により約270度時計回りに回転された状態を示す図である。
【0048】
図7(a)に示すように、ポンプカム630が時計回り方向に回転された場合、NC制御装置400の指示により、X軸サーボモータ120が回転し、カムシャフト600の軸心に対して加熱コイル550の中心KCが距離X4に移動される。この距離X4が加熱コイル550の最大振幅の値となる。すなわち、距離X3,X4は同じ値である。
【0049】
この場合、図7(b)に示すように、加熱コイル550よりの誘導加熱により、点PAに発生する熱量は状態RSよりも高い状態GSのように変化する。
【0050】
最後に、ポンプカム630がシャフト回転サーボモータ320によりさらに回転される。図8は、図3の配置にあったポンプカム630がシャフト回転サーボモータ320により約360度時計回りに回転された状態を示す図である。
【0051】
図8(a)に示すように、ポンプカム630が時計回り方向に回転された場合、NC制御装置400の指示により、X軸サーボモータ120が回転し、カムシャフト600の軸心に対して加熱コイル550の中心KCが距離0にもどされる。
【0052】
この場合、図8(b)に示すように、加熱コイル550よりの誘導加熱により、点PAに発生する熱量は状態RSよりも低い状態GSのように変化する。
【0053】
図9は、加熱コイル550とポンプカム630における点PA,PB、PCのそれぞれの距離変化を示す図である。図9の縦軸は加熱コイル550とポンプカム630との距離の変化を示し、横軸はポンプカム630の回転角度を示す。
【0054】
図9に示すように、実線は点PAにおいて、加熱コイル550内周の最近接点までの距離変化を示す。点線は、同様に点PBにおける加熱コイル550内周の最近接点までの距離変化を示し、破線は点PCにおける加熱コイル550内周の最近接点までの距離変化を示す。
【0055】
この場合、加熱コイル550とポンプカム630との距離が最も近接する場合の距離の値は距離bであり、加熱コイル550とポンプカム630との距離が最も遠ざかる場合の距離の値は距離(R−(a+b))である。ここで、距離Rは、加熱コイル550の半径であり、距離aはカムシャフト600の軸心から点PAまでの距離を示す。
【0056】
ポンプカム630における点PA,PBは、一定の振幅で変化している。それにより加熱コイル550よりの誘導加熱により、点PA、PBに発生する熱量の総和が均一に調整されることとなる。
【0057】
上記一実施の形態においては、バルブカム620およびポンプカム630が偏形ワークからなるカムに相当し、一対のX軸方向スライドレール111,112、X軸方向ボールネジ113、X軸ステージ114およびX軸サーボモータ120がカム駆動部に相当し、円環状の加熱コイル550が円環状の加熱コイルに相当し、トランス500がコイル駆動部に相当し、カム焼入れ装置10がカム焼入れ装置に相当し、X軸方向が、カムシャフトの軸心に垂直な一軸方向に相当し、カムシャフト600がカムシャフトに相当し、Z軸移動装置200が第1の移動装置に相当し、X軸移動装置100が第2の移動装置に相当し、回転装置300が回転装置に相当し、点PBがカムシャフトの中心から最も偏心量の少ない外形点(カムボトム)に相当し、点PAがカムシャフトの中心から最も偏心量の多い外形点(カムトップ)に相当する。
【0058】
上記実施の形態では、ポンプカム630を用い、均一な焼入れが可能であることを詳述した。なお、上記実施の形態では、バルブカムへの適用も記載した。外周が円形のポンプカム630と異なり、バルブカムでは外周面上の焼入れを完全に均一とすることは出来ないが、特許文献1及び2と同様、バラツキの少ない焼入れを行なうことができる。
【0059】
上記実施の形態では、カムの加熱コイルとの間隔が、カム各部にて交互に接近及び離間を繰り返すカムシャフト及び加熱コイルの駆動機構を採用している。誘導加熱によりカムの外周面各部に発生する起電力、すなわち発生する熱量が、時々で異なったとしても、各部に作用する熱量の総和が等しくなることで、平均の到達温度が等しくなり、バラツキの少ない焼入れを可能としている。
【0060】
本発明特長は、特許文献1及び2と同様バラツキの少ない焼入れを可能としながら、特許文献1及び2の如く、カムの加熱コイルとの間隔をカム各部にて常に一定に保つことに拘らず、前述の如き駆動機構を採用することで、駆動機構が加熱コイル及びトランスの重量を支える必要が無くなり、装置の小型化、省力化が可能となる点にある。
【0061】
また、前記の実施形態では加熱コイルを1個としたが、加熱コイル・トランス・駆動機構を複数併設することで、複数カムへの同時焼入れを可能とすることも、容易である。この時には、Z軸ステージを共用化することができるため、特許文献2と比較し、更に省スペース化を図ることができる。
【0062】
本発明は、上記の好ましい一実施の形態に記載されているが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【0063】
例えば、本発明は、カム焼入れ装置10について説明したが、これに限定されず、他の任意の偏形ワークに流用することができること、および焼入れ処理のみならず、他の熱処理(焼き戻し、焼きなまし)等にも流用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係る一実施の形態に係るカム焼入れ装置の一例を示す模式的斜視図
【図2】NC制御装置の制御フローを示す模式図である。
【図3】図2におけるNC制御装置の一軸制御指示を説明するための模式図
【図4】図2におけるNC制御装置の一軸制御指示を説明するための模式図
【図5】図2におけるNC制御装置の一軸制御指示を説明するための模式図
【図6】図2におけるNC制御装置の一軸制御指示を説明するための模式図
【図7】図2におけるNC制御装置の一軸制御指示を説明するための模式図
【図8】図2におけるNC制御装置の一軸制御指示を説明するための模式図
【図9】加熱コイルとカムにおける点PA,PB、PCのそれぞれの距離変化を示す図
【符号の説明】
【0065】
10 カム焼入れ装置
100 X軸移動装置
111,112 一対のX軸方向スライドレール
113 X軸方向ボールネジ
114 X軸ステージ
120 X軸サーボモータ
200 Z軸移動装置
300 回転装置
500 高周波発生装置
550 円環状の加熱コイル
600 カムシャフト
620 バルブカム
630 ポンプカム
PA カムトップ部
PB カムボトム部
【出願人】 【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
【出願日】 平成18年8月11日(2006.8.11)
【代理人】 【識別番号】100089196
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 良之

【識別番号】100104226
【弁理士】
【氏名又は名称】須原 誠


【公開番号】 特開2008−45162(P2008−45162A)
【公開日】 平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願番号】 特願2006−220450(P2006−220450)