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【発明の名称】 誘導加熱コイル
【発明者】 【氏名】清澤 裕

【要約】 【課題】円筒状ワーク(被加熱物)の外周面と一端面を同時に一様に誘導加熱できる誘導加熱コイルを提供する。

【構成】誘導加熱コイル10は、被加熱物Wの外周面WSを取り囲むように配置されるリング状の外周面用誘導加熱コイル20を備えており、この外周面用誘導加熱コイル20は外周面WSを誘導加熱する。また、誘導加熱コイル10は、被加熱物Wの一端面WTの上方に近接して配置される一端面用誘導加熱コイル30を備えており、この一端面用誘導加熱コイル30は、その一部が扇形に切り欠かれた円板状のものである。一端面用誘導加熱コイル30は、外周面用誘導加熱コイル20の一端面20T及びこの一端面20Tに囲まれた空間を覆うように外周面用誘導加熱コイル20に固定されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の被加熱物の外周面と一端面を同時に誘導加熱する誘導加熱コイルにおいて、
前記外周面を取り囲むように配置される、前記外周面を誘導加熱するためのリング状の外周面用誘導加熱コイルと、
該外周面用誘導加熱コイルの一端面及びこの一端面に囲まれた空間を覆うと共に、その一部が扇形に切り欠かれた円板状の一端面用誘導加熱コイルとを備え、
前記外周面用誘導加熱コイルは、その高さ方向に延びて互いに対向すると共に電気的に絶縁された2つの対向部分が形成されたものであり、これら2つの対向部分それぞれは、高周波電源に接続された接続導体部に接続されているものであり、
前記一端面用誘導加熱コイルの切り欠かれた扇形の2つの直線部分のいずれか一方は、前記2つの対向部分のいずれか一方の一端面に重なっているものであることを特徴とする誘導加熱コイル。
【請求項2】
前記一端面用誘導加熱コイルは、前記切り欠かれた扇形の中心が被加熱物の一端面よりも内側に位置するものであることを特徴とする請求項1に記載の誘導加熱コイル。
【請求項3】
前記一端面用誘導加熱コイルのうち前記外周面用誘導加熱コイルに隣接した下面側部分には凹部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の誘導加熱コイル。
【請求項4】
前記扇形の中心角は、15°以上120°以下の範囲内であることを特徴とする請求項1、2、又は3に記載の誘導加熱コイル。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状の被加熱物の外周面と一端面を同時に誘導加熱する誘導加熱コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
被加熱物(ワーク)に近接して配置された誘導加熱コイルに高周波電流を流して(通して)このワークに渦電流を誘導(電磁誘導)し、そのジュール熱でワークを誘導加熱する技術が広く知られている。この技術では、様々な形状のワークが誘導加熱の対象となる。ワークの一例として円筒状のワークが挙げられ、この円筒状ワークの内周面、外周面、及びこれらの間にある端面を同時に誘導加熱する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平11−199920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の技術によれば、円筒状ワークの内周面、外周面、及び端面における単位時間当たりの加熱面積を等しくしているのでこれらの面を一様に加熱できる、とされている。しかし、単位時間当たりの加熱面積を等しくするだけでは、熱伝導の影響を考慮していないので、円筒状ワークの内周面、外周面、及び端面が一様に加熱されないことがある。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑み、円筒状ワーク(被加熱物)の外周面と一端面を同時に一様に誘導加熱できる誘導加熱コイルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための本発明の誘導加熱コイルは、円筒状の被加熱物の外周面と一端面を同時に誘導加熱する誘導加熱コイルにおいて、
(1)前記外周面を取り囲むように配置される、前記外周面を誘導加熱するためのリング状の外周面用誘導加熱コイルと、
(2)該外周面用誘導加熱コイルの一端面及びこの一端面に囲まれた空間を覆うと共に、その一部が扇形に切り欠かれた円板状の一端面用誘導加熱コイルとを備え、
(3)前記外周面用誘導加熱コイルは、その高さ方向に延びて互いに対向すると共に電気的に絶縁された2つの対向部分が形成されたものであり、これら2つの対向部分それぞれは、高周波電源に接続された接続導体部に接続されているものであり、
(4)前記一端面用誘導加熱コイルの切り欠かれた扇形の2つの直線部分のいずれか一方は、前記2つの対向部分のいずれか一方の一端面に重なっているものであることを特徴とするものである。
【0006】
ここで、
(5)前記一端面用誘導加熱コイルは、前記切り欠かれた扇形の中心が被加熱物の一端面よりも内側に位置するものであってもよい。
【0007】
また、
(6)前記一端面用誘導加熱コイルのうち前記外周面用誘導加熱コイルに隣接した下面側部分には凹部が形成されていてもよい。
【0008】
さらに、
(7)前記扇形の中心角は、15°以上120°以下の範囲内であってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の誘導加熱コイルでは、高周波電源に接続された接続導体部から供給された高周波電流は、外周面用誘導加熱コイルに流れると共に一端面用誘導加熱コイルにも流れる。外周面用誘導加熱コイルに流れる高周波電流によって被加熱物の外周面には渦電流が発生し、この渦電流によって被加熱物の外周面が加熱される。一方、電流は最短距離を流れる傾向にあり、且つ、一端面用誘導加熱コイルの直線部分は外周面用誘導加熱コイルの対向部分に重なっているので、一端面用誘導加熱コイルに流れる高周波電流は、一端面用誘導加熱コイルの扇形に切り欠かれた直線状の二辺(2つの直線部分)を主に流れる。この結果、被加熱物の一端面に渦電流が生じてこの一端面が誘導加熱される。このように外周面用誘導加熱コイルと一端面用誘導加熱コイルとで被加熱物の外周面と一端面とを同時に均一に加熱できる。また、一端面用誘導加熱コイルは外周面用誘導加熱コイルの一端面を覆っているので、被加熱物の外周面を冷却するためにこの外周面に向けて噴射された冷却液の一部が一端面用誘導加熱コイルに跳ね返されて被加熱物の一端面に当たる。このため、外周面に向けて噴射された冷却液の飛散が防止されて被加熱物の外周面のみならず一端面も効率良く確実に冷却できる。以上説明したように本発明の誘導加熱コイルによれば、被加熱物の一端面及び外周面に一様な深さの加熱層を形成して、この加熱層を効率良く確実に冷却できるので、被加熱物に一様な深さの焼入れ層を形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、円筒状の被加熱物の外周面と一端面を同時に誘導加熱する誘導加熱コイルに実現された。
【実施例1】
【0011】
図1から図3までを参照して、本発明の誘導加熱コイルの一例を説明する。
【0012】
図1は、円筒状の被加熱物を加熱するために誘導加熱コイルを配置した状態を示す斜視図である。図2は、図1の平面図である。図3は、図2のA―A断面図である。
【0013】
誘導加熱コイル10は、円筒状の被加熱物Wの外周面WSと一端面WTを同時に誘導加熱するためのものである。誘導加熱コイル10は、被加熱物Wの外周面WSを取り囲むように配置されるリング状(環状)の外周面用誘導加熱コイル20を備えており、この外周面用誘導加熱コイル20は外周面WSを誘導加熱する。
【0014】
外周面用誘導加熱コイル20は、完全に連続したリング状ではなくて、その一部で分断されている。この分断されている部分には、外周面用誘導加熱コイル20の高さ方向(矢印H方向)に延びて互いに対向する2つの対向部分22,24が形成されている。2つの対向部分22,24は電気的に絶縁されている。これら2つの対向部分22,24それぞれには、高周波電源50に接続された接続導体部52,54が接続されている。
【0015】
また、誘導加熱コイル10は、被加熱物Wの一端面WTの上方に近接して配置される一端面用誘導加熱コイル30を備えており、この一端面用誘導加熱コイル30は、その一部が扇形に切り欠かれた円板状のものである。一端面用誘導加熱コイル30は、外周面用誘導加熱コイル20の一端面20T及びこの一端面20Tに囲まれた空間を覆うように外周面用誘導加熱コイル20に固定されている。
【0016】
一端面用誘導加熱コイル30に形成された扇形の切欠き部分32(以下、扇形切欠き部分32という)においては、外周面用誘導加熱コイル20の一端面20T及び被加熱物Wの一端面WTが露出している。扇形切欠き部分32の中心Cは、円板状の一端面用誘導加熱コイル30の中心Cに一致している。即ち、扇形切欠き部分32の中心Cは、被加熱物Wの一端面WTよりも内側に位置している。また、扇形切欠き部分32の中心角θは、15°以上120°以下が好ましい。この理由は、電流は最短距離を流れようとするので、中心角θが15°未満のときは、一端面用誘導加熱コイル30の直線部分L1,L2(後述する)に高周波電流が流れ過ぎて、外周面用誘導加熱コイル20に流れる高周波電流とのバランスが崩れてしまって被加熱物Wの外周面WSと一端面WTを一様な深さに加熱できず、また、中心角θが120°を超えたときは、一端面用誘導加熱コイル30の扇形切欠き部分32から離れた部分に高周波電流が流れてしまうので、被加熱物Wの外周面WSと一端面WTを一様な深さに加熱できないからである。
【0017】
一端面用誘導加熱コイル30のうち扇形切欠き部分32の直線の辺に相当する部分には2つの直線部分L1,L2が形成されており、直線部分L2は対向部分24の端面24Tに重なって電気的に接続されている。即ち、一端面用誘導加熱コイル30のうち扇形切欠き部分32の直線部分L2に相当する部分は、接続導体部54に電気的に接続されている。
【0018】
一端面用誘導加熱コイル30の下面のうち外周面用誘導加熱コイル20に隣接した下面側部分には、図3に示すように、凹部26が形成されている。この凹部26によって被加熱物Wの角部(外周面WSと一端面WTの境界部分)は、一端面WTよりも一端面用誘導加熱コイル30から離れていることとなる。このため、被加熱物Wの角部の過熱(オーバーヒート)が防止される。
【0019】
被加熱物Wの外周面WSと一端面WTを同時に誘導加熱するに際しては、被加熱物Wが載置された支持台60と共に被加熱物Wを、軸Cを中心にして回転させながら高周波電源50から接続導体部52,54を経由させて誘導加熱コイル10に電力を供給する。高周波電源50の周波数は例えば25kHz、出力は250kWとする。
【0020】
ここで、図2に示すように矢印A方向に高周波電流が流れる場合、電流は最短距離を流れようとするので一端面用誘導加熱コイル30では高周波電流が接続導体部54から直線部分L1を通って直線部分L2に流れ、外周面用誘導加熱コイル20を通って接続導体部52に流れる。また、外周面用誘導加熱コイル20では、高周波電流が接続導体部54から外周面用誘導加熱コイル20の全体を一様に通って接続導体部52に流れる。外周面用誘導加熱コイル20に流れる高周波電流によって被加熱物Wの外周面WSには渦電流が発生し、この渦電流によって被加熱物Wの外周面WSが加熱される。一方、一端面用誘導加熱コイル30に流れる高周波電流は、上記のように一端面用誘導加熱コイル30の2つの直線部分L1、L2を主に流れる。この結果、被加熱物Wの一端面WTに渦電流が生じてこの一端面WTが誘導加熱される。このように外周面用誘導加熱コイル20と一端面用誘導加熱コイル30とで被加熱物Wの外周面WSと一端面WTとを同時に均一に加熱できる。
【0021】
なお、一端面用誘導加熱コイル30は外周面用誘導加熱コイル20の一端面を覆っているので、被加熱物Wの外周面WSを冷却するためにこの外周面WSに向けて噴射された冷却液の一部が一端面用誘導加熱コイル30に跳ね返されて被加熱物Wの一端面WTに当たる。このため、外周面WSに向けて噴射された冷却液の飛散が防止されて被加熱物Wの外周面WSのみならず一端面WTも効率良く確実に冷却できる。このように誘導加熱コイル10によれば、被加熱物Wの一端面WT及び外周面WSに一様な深さの加熱層を形成して、この加熱層を効率良く確実に冷却できるので、被加熱物Wに一様な深さの焼入れ層を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】円筒状の被加熱物を加熱するために誘導加熱コイルを配置した状態を示す斜視図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図2のA―A断面図である。
【符号の説明】
【0023】
10 誘導加熱コイル
20 外周面用誘導加熱コイル
30 一端面用誘導加熱コイル
32 扇形切欠き部分
50 高周波電源
W 被加熱物W
WS 外周面
WT 一端面
【出願人】 【識別番号】390029089
【氏名又は名称】高周波熱錬株式会社
【出願日】 平成18年7月31日(2006.7.31)
【代理人】 【識別番号】100098349
【弁理士】
【氏名又は名称】一徳 和彦


【公開番号】 特開2008−31535(P2008−31535A)
【公開日】 平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願番号】 特願2006−207724(P2006−207724)