トップ :: C 化学 冶金 :: C21 鉄冶金

【発明の名称】 耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レールの製造方法
【発明者】 【氏名】上田 正治

【氏名】関 和典

【氏名】佐藤 琢也

【氏名】山本 剛士

【要約】 【課題】鋼の成分、仕上げ圧延条件を制御し、未再結晶オーステナイト組織を残留させ、かつその後の熱処理条件を制御することにより、レールの頭部の組織を微細化し、硬度を所定の範囲に収め、レールの耐摩耗性と延性を向上させる。

【構成】C:0.85〜1.40%、Si:0.05〜2.00%、Mn:0.05〜2.00%を含有していて残部がFeおよび不可避的不純物からなるレール圧延用鋼片に対して、少なくとも粗圧延及び仕上げ圧延をレールを製造する。仕上げ圧延において、レール頭部表面温度がArcm点未満〜700℃以上の温度範囲において、頭部の累積減面率を20%以上とする圧延を行い、圧延終了直後のレール頭部表面に未再結晶オーステナイト組織を面積比率で50%以上生成させ、その後、仕上げ圧延後のレール頭部表面を仕上げ圧延終了後200sec以内で冷却速度5〜50℃/secで少なくとも550℃まで加速冷却する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、C:0.85〜1.40%、Si:0.05〜2.00%、Mn:0.05〜2.00%を含有していて残部がFeおよび不可避的不純物からなるレール圧延用鋼片に対して、少なくとも粗圧延及び仕上げ圧延を行うことにより耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レールを製造する方法であって、
前記仕上げ圧延において、レール頭部表面温度がArcm点未満〜700℃以上の温度範囲において、頭部の累積減面率を20%以上とする圧延を行い、圧延終了直後のレール頭部表面に未再結晶オーステナイト組織を面積比率で50%以上生成させ、かつ仕上げ圧延終了直後のレール頭部表面の未再結晶オーステナイト組織におけるオーステナイト粒界にセメンタイト組織を生成させ、
その後、仕上げ圧延後のレール頭部表面を、仕上げ圧延終了後200sec以内で冷却速度5〜50℃/secで少なくとも550℃まで加速冷却することを特徴とする延性に優れたパーライト系レールの製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、重荷重鉄道で使用されるレールにおいて、頭部の耐摩耗性と延性を同時に向上ざせることを目的としたパーライト系レールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高炭素含有のパーライト鋼はその優れた耐摩耗性鋼から鉄道用レール材料として使用されてきた。しかしながら、炭素含有量が非常に高いため、延性や靭性が低いといった問題があった。
例えば、非特許文献1に示されている炭素量0.6〜0.7mass%の普通炭素鋼レールでは、JIS3号Uノッチシャルピー衝撃試験での常温の衝撃値は12〜18J/cm程度であり、このようなレールを寒冷地等の低温度域で使用した場合、微小な初期欠陥や疲労き裂から脆性破壊を引き起こすといった問題があった。
また、近年、レール鋼は耐摩耗性改善のため、より一層の高炭素化を進めており、これにともない、延性や靭性がさらに低下するといった問題があった。
【0003】
一般にパーライト鋼の延性や靭性を向上させるには、パーライト組織(パーライトブロックサイズ)の微細化、具体的には、パーライト変態前のオーステナイト組織の細粒化及びパーライト組織の微細化が有効であると言われている。オーステナイト組織の細粒化を達成する方法としては、熱間圧延時の圧延温度の低減、圧下量の増加、さらには、レール圧延後に低温再加熱による熱処理がある。また、パーライト組織の微細化を図る方法としては、変態核を利用したオーステナイト粒内からのパーライト変態の促進等がある。
【0004】
しかし、レールの製造においては、熱間圧延時の成形性確保の観点から、圧延温度の低減、圧下量の増加には限界があり、十分なオーステナイト粒の微細化が達成できなかった。また、変態核を利用したオーステナイト粒内からのパーライト変態については、変態核の量の制御が困難なことや粒内からのパーライト変態が安定しない等の問題があり、十分なパーライト組織の微細化が達成できなかった。
【0005】
これらの諸問題から、パーライト組織のレールにおいて延性や靭性を抜本的に改善するには、レール圧延後に低温再加熱を行い、その後、加速冷却によりパーライト変態をさせ、パーライト組織を微細化する方法が用いられてきた。しかし、近年、耐摩耗性改善のためレールの高炭素化が進み、上記の低温再加熱熱処理を行うと、オーステナイト粒内に粗大な炭化物が溶け残り、加速冷却後のパーライト組織の延性や靭性が低下するといった問題が出てくるようになった。また、再加熱であるため、製造コストが高く、生産性も低い等の経済性の問題もある。
【0006】
そこで、圧延時成形性を確保し、低温再加熱を行わなくても圧延後のパーライト組織を微細化することができる高炭素鋼レールの製造方法の開発が求められるようになってきた。この問題を解決するため、下記特許文献1〜3に示すような高炭素鋼レールの製造方法が開発された。これらのレールの主な特徴は、パーライト組織を微細化するため、高炭素鋼のオーステナイト粒が比較的低温で、かつ、小さい圧下量でも再結晶し易いことを利用して、小圧下の連続圧延によって整粒の微細粒を得、パーライト鋼の延性や靭性を向上させている。
【0007】
特許文献1の開示技術では、高炭素鋼含有の鋼レールの仕上げ圧延において、所定のパス間時間で連続3パス以上の圧延を行うことにより高延性レールを提供することができる。
また、特許文献2の公開技術では、高炭素鋼含有の鋼レールの仕上げ圧延において、所定のパス間時間で連続2パス以上の圧延を行い、さらに、連続圧延を行った後、圧延後に加速冷却を行うことにより高耐摩耗・高靭性レールを提供することができる。
さらに、特許文献3の公開技術では、高炭素鋼含有の鋼レールの仕上げ圧延において、パス間で冷却を施し、さらに、連続圧延を行った後、圧延後に加速冷却を行うことにより高耐摩耗・高靭性レールを提供することができる。
【0008】
しかし、特許文献1〜3の開示技術では、鋼の炭素量、連続熱間圧延時の温度、圧延パス数やパス間時間の組合せによっては、オーステナイト組織の微細化が図れず、パーライト組織が粗大化し、延性や靭性が向上しないといった問題がある。
【0009】
特に、炭素含有量が高い鋼では、圧延直後の粒成長速度が大きいため、連続圧延時のパス間時間の選択によっては、パス間でのオーステナイト粒の成長が顕著となり、上記に示された連続圧延方法やパス間での冷却を行っても、オーステナイト組織の微細化が図れず、パーライト組織が粗大化し、延性や靭性が向上しないといった問題がある。
【0010】
そこで、炭素含有量が高い鋼において、圧延直後の粒成長を抑制し、オーステナイト組織の微細化を図る方法として、下記特許文献4に示すような高炭素鋼レールの製造方法が開発された。このレールの製造方法の主な特徴は、オーステナイト粒の粒成長を抑制するため、連続圧延時のパス間時間を鋼の炭素量や圧延回数で制御し、さらに、V、Nb、Nの添加量を調整し、微細粒を得、パーライト鋼の延性や靭性を向上させている点にある。このように高炭素鋼含有の鋼レールの仕上げ圧延において、連続圧延時のパス間時間を鋼の炭素量や圧延回数で制御し、V、Nb、Nの添加量を調整し、さらに、圧延直後に加速冷却することにより耐摩耗性および延性に優れたレールを提供することができる。
【0011】
しかし、特許文献4の開示技術では、V、Nb等の添加量と圧延直後に行う加速冷却の冷却速度の組合せによっては、オーステナイト組織の粒成長が抑制できず、最終組織であるパーライト組織が粗大化し、延性や靭性が向上しない、また、粒成長が過度に抑制され、オーステナイト組織が非常に微細な状態となり、その後に熱処理を行っても、焼入れ性の低下によりパーライト組織の硬度が上昇せず、レールの耐摩耗性が確保できないといった問題がある。
【0012】
【特許文献1】特開平7−173530号公報
【特許文献2】特開2001−234238号公報
【特許文献3】特開2002−226915号公報
【特許文献4】特開2005−290544号公報
【非特許文献1】JISE1101−1990
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このような背景から、炭素含有量が高い鋼において、安定的にパーライト組織の微細化を達成し、延性を向上させた耐摩耗性に優れたパーライト系レールの提供が望まれるようになった。本発明は、上述した問題点に鑑み案出されたものであり、その目的とするところは、重荷重鉄道のレールで要求される、頭部の耐摩耗性と延性を同時に安定して向上させることを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のパーライト系レールの製造方法は、頭部表面の圧延温度、頭部の累積圧下率を制御し、さらに、その後、適切な熱処理を施すことにより、レール頭部の延性と耐摩耗性を安定的に向上させることを要旨としている。具体的には、高炭素含有のパーライト系レールにおいて、レール頭部の延性を安定的に向上させるため、圧延直後の頭部表面の未再結晶オーステナイト組織の残留量及び微細なセメンタイト組織の生成を制御し、パーライト組織の微細化を達成し、さらに、耐摩耗性を確保するために加速冷却を行う。本発明の構成は下記のとおりである。
【0015】
(A) 質量%で、C:0.85〜1.40%、Si:0.05〜2.00%、Mn:0.05〜2.00%を含有していて残部がFeおよび不可避的不純物からなるレール圧延用鋼片に対して、少なくとも粗圧延及び仕上げ圧延を行うことにより耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レールを製造する方法であって、
前記仕上げ圧延において、レール頭部表面温度がArcm点未満〜700℃以上の温度範囲において、頭部の累積減面率を20%以上とする圧延を行い、圧延終了直後のレール頭部表面に未再結晶オーステナイト組織を面積比率で50%以上生成させ、かつ仕上げ圧延終了直後のレール頭部表面の未再結晶オーステナイト組織におけるオーステナイト粒界にセメンタイト組織を生成させ、
その後、仕上げ圧延後のレール頭部表面を、仕上げ圧延終了後200sec以内で冷却速度5〜50℃/secで少なくとも550℃まで加速冷却することを特徴とする延性に優れたパーライト系レールの製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、パーライト系レールにおいて、重荷重鉄道のレールで要求される、頭部の耐摩耗性と延性を同時に安定して向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明を実施する形態として、耐摩耗性および延性に優れたパーライト系レールの製造方法につき、詳細に説明する。以下、組成における質量は、単に%と記載する。
【0018】
まず、本発明者らは、炭素量を変化させた高炭素鋼(0.85〜1.40%)を用いて、レール圧延を模擬した熱間圧延を行い、従来技術であるオーステナイト相単層領域に加えて、オーステナイト相とセメンタイト相の二相領域の範囲まで、熱間圧延時の温度や減面率とオーステナイト粒の挙動の関係を調査した。その結果、これまで高炭素鋼では、延性や靭性に有害なセメンタイト組織の生成の問題からその適用が困難であったArcm変態点以下のオーステナイト相とセメンタイト相の二相域で圧延することにより、初期のオーステナイト粒が再結晶せずに残留した未再結晶オーステナイト粒(扁平な粗大粒)が多量に現れること、及びこのオーステナイト粒界に生成するセメンタイト組織が未再結晶オーステナイト粒の周囲に微細に生成することを発見した。
【0019】
次に、本発明者らは、この圧延後の微細なセメンタイト組織と未再結晶オーステナイト粒の挙動を実験により確認した。その結果、圧延時の減面率がある一定値を超えると、未再結晶オーステナイト組織の生成量が確保され、圧延後の自然放冷中に未再結晶オーステナイト組織が再結晶し、微細なオーステナイト粒へ再結晶すること、さらに、この未再結晶オーステナイト粒界に生成するセメンタイト組織が微細化することを確認した。
【0020】
さらに、本発明者らは、圧延後の自然放冷中における微細なオーステナイト粒と微細なセメンタイト組織の挙動を調査した。その結果、オーステナイト粒界に存在する微細なセメンタイト組織が、ピンニング作用によりオーステナイト粒の粒成長を押さえ、微細粒が長時間維持されることを知見した。
【0021】
これらの結果をベースに、本発明者らは、この微細なセメンタイト組織と未再結晶オーステナイト組織を利用して、延性を安定的に向上させる方法を検討した。ラボ圧延および熱処理実験を行い、引張試験により延性を評価した。その結果、パーライト組織を微細化し、安定的に延性の向上を図るには、圧延直後に生成する未再結晶オーステナイト組織の生成量の確保が必要なこと、さらに、未再結晶オーステナイト組織が微細なオーステナイト粒に再結晶するために、圧延終了から熱処理開始までの自然放冷の時間に一定の範囲が存在することに加えて、微細なオーステナイト粒のピンニングに作用していた微細なセメンタイト組織が粗大化し、延性に悪影響しないためには、圧延終了から熱処理開始までの自然放冷の時間に一定の範囲が存在することを見出した。
【0022】
これらの知見に加えて、本発明者らは、延性をさらに向上させるため、この未再結晶オーステナイト組織を直接的に利用する方法を探索した。ラボ圧延および熱処理実験を行った結果、圧延終了後の自然放冷の時間を短くし、未再結晶オーステナイト組織が再結晶しない状態において、加速冷却を行うことにより、未再結晶オーステナイト組織の内部から微細なパーライト組織が多量に生成し、延性がより一層向上することを確認した。
【0023】
上記した知見から、本発明者らは、高炭素含有の鋼片をレールとして熱間圧延して製造する際に、レール圧延温度、累積減面率をある一定の範囲内に治めることにより、微細なセメンタイト組織と所定の未再結晶オーステナイト組織を一定量残留させ、その後、一定の自然放冷の時間内に熱処理を行い、パーライト組織を微細化することにより、レール頭部の延性と耐摩耗性を同時に確保することを見出した。
【0024】
次に、本発明に関する限定理由について詳細に説明する。以下、組成における質量は、単に%と記載する。
【0025】
(1)レール圧延用鋼片の化学成分の限定理由
Cは、パーライト変態を促進させて、かつ、耐摩耗性を確保する上で有効な元素である。C量が0.85%未満では、パーライト組織中のセメンタイト相の体積比率が確保できず、重荷重鉄道において耐摩耗性が維持できない。また、微細オーステナイト粒のピンニングに作用していた微細なセメンタイト組織が生成せず、延性が向上しない。また、C量が1.40%を超えると、本製造方法では、ピンニングに作用していたセメンタイト組織が粗大化し、延性の向上が認められなくなる。また、熱処理後に粗大な初析セメンタイト組織が多量に生成し、耐摩耗性や延性が低下する。このため、C量を0.85〜1.40%に限定した。
【0026】
Siは、脱酸材として必須の成分である。また、パーライト組織中のフェライト相への固溶強化によりレール頭部の硬度(強度)を上昇させる元素である。さらに、過共析鋼において、初析セメンタイト組織の生成を抑制し、延性の低下を抑制する元素である。しかし、Si量が0.05%未満では、これらの効果が十分に期待できない。また、Si量が2.00%を超えると、熱間圧延時に表面疵が多く生成することや、酸化物の生成により溶接性が低下する。さらに、焼入性が著しく増加し、レールの耐摩耗性や延性に有害なマルテンサイト組織が生成する。このため、Si量を0.05〜2.00%に限定した。
【0027】
Mnは、焼き入れ性を高め、パーライトラメラ間隔を微細化することにより、パーライト組織の硬度を確保し、耐摩耗性を向上させる元素である。しかし、Mn量が0.05%未満では、その効果が小さく、レールに必要とされる耐摩耗性の確保が困難となる。また、Mn量が2.00%を超えると、焼入性が著しく増加し、耐摩耗性や延性に有害なマルテンサイト組織が生成し易くなる。このため、Mn量を0.05〜2.00%に限定した。
【0028】
なお、本発明において、レール圧延用鋼片の化学成分については、C、Si、Mn以外の成分は特に限定していないが、さらに必要に応じて、Cr:0.05〜2.00%、Mo:0.01〜0.50%、V:0.005〜0.500%、Nb:0.002〜0.050、B:0.0001〜0.0050%、Co:0.003〜2.00%、Cu:0.01〜1.00%、Ni:0.01〜1.00%、Ti:0.0050〜0.0500%、Mg:0.0005〜0.0200%、Ca:0.0005〜0.0150、Al:0.010〜1.00%、Zr:0.0001〜0.2000%、N:0.0060〜0.0200%の1種または2種以上を含有することが望ましい。このような成分範囲が望ましいのは以下に理由による。
【0029】
Cr:0.05〜2.00%:Crはパーライト組織を微細にして高硬度(強度)化に寄与し、耐摩耗性を向上させる元素である。しかし、Cr量が0.05%未満では、その効果は小さい。また、Cr量が2.00%を超えると、耐摩耗性や延性に有害なマルテンサイト組織が多量に生成するので、Cr添加量は0.05〜2.00%が望ましい。
【0030】
Mo:0.01〜0.50%:Moはパーライト組織を微細にすることにより高硬度(強度)化に寄与し、パーライト組織の硬度(強度)を向上させる元素である。しかし、Mo量が0.01%未満では、その効果が小さく、また、Mo量が0.50%を超えると、延性に有害なマルテンサイト組織が生成するので、Mo添加量は0.01〜0.50%が望ましい。
【0031】
V:0.005〜0.500%:Vは窒化物や炭窒化物を形成し、延性を向上させ、同時に、硬度(強度)を向上させるのに有効な元素である。しかし、V量が0.005%未満では、その効果が十分に期待できず、また、V量が0.500%を超えると、疲労損傷の起点となる粗大な析出物が生成するので、V添加量は0.005〜0.500%が望ましい。
【0032】
Nb:0.002〜0.050:Nbは窒化物や炭窒化物を形成し、延性を向上させ、同時に、硬度(強度)を向上させるのに有効な元素である。また、オーステナイトの未再結晶の温度域を上昇させ、未再結晶オーステナイト組織を安定化させる元素である。しかし、Nb量が0.002%未満では期待できず、また、Nb量が0.050%を超えると、疲労損傷の起点となる粗大な析出物が生成するので、Nb添加量は0.002〜0.050%が望ましい。
【0033】
B:0.0001〜0.0050%:Bは初析セメンタイト組織の生成を微細化し、頭部の硬度分布を均一化することにより、レールの延性低下を防止し、高寿命化を図る元素である。しかし、B量が0.0001%未満では、その効果は十分でなく、また、B量が0.0050%を超えると、粗大な析出物が生成するので、B添加量は0.0001〜0.0050%が望ましい。
【0034】
Co:0.003〜2.00%:Coは、パーライト組織の硬度(強度)を向上させる元素であり、さらに、レール頭部の摩耗面において、車輪との接触により形成させる微細なフェライト組織をより一層微細化し、耐摩耗性を向上させる元素である。しかし、Co量が0.003%未満では、その効果が期待できない。また、Co量が2.00%を超えると、ころがり面にスポーリング損傷が発生するので、Co添加量は0.003〜2.00%が望ましい。
【0035】
Cu:0.01〜1.00%:Cuはパーライト組織の硬度(強度)を向上させる元素である。しかし、Cu量が0.01%未満では、その効果が期待できない。また、Cu量が1.00%を超えると、耐摩耗性に有害なマルテンサイト組織が生成することから、Cu添加量は0.01〜1.00%が望ましい。
【0036】
Ni:0.01〜1.00%:Niはパーライト鋼の高硬度(強度)化を図る元素である。しかし、Ni量が0.01%未満では、その効果が著しく小さい。また、Ni量が1.00%を超えると、ころがり面にスポーリング損傷が発生する。このため、Ni添加量は0.01〜1.00%が望ましい。
【0037】
Ti:0.0050〜0.0500%:Tiは窒化物や炭窒化物を形成し、延性を向上させ、同時に、硬度(強度)を向上させるのに有効な成分である。また、オーステナイトの未再結晶の温度域を上昇させ、未再結晶オーステナイト組織を安定化させる元素である。しかし、Ti量が0.0050%未満では、その効果が少ない。また、Ti量が0.0500%を超えると、粗大な析出物が生成して、レールの延性が大きく低下するので、Ti添加量は0.0050〜0.0500%が望ましい。
【0038】
Mg:0.0005〜0.0200%:Mgはオーステナイト粒やパーライト組織の微細化を図り、パーライト組織の延性を向上させるのに有効な元素である。しかし、Mg量が0.0005%未満では、その効果は弱い。また、Mg量が0.0200%を超えると、Mgの粗大酸化物が生成し、レールの延性低下させるため、Mg添加量は0.0005〜0.0200%が望ましい。
【0039】
Ca:0.0005〜0.0150%:Caは、パーライト変態の生成に寄与し、その結果、パーライト組織の延性を向上させるのに有効な元素である。しかし、Ca量が0.0005%未満では、その効果は弱い。また、Ca量が0.0150%を超えると、Caの粗大酸化物が生成し、レールの延性を低下させるので、Ca添加量は0.0005〜0.0150%が望ましい。
【0040】
Al:0.010〜1.00%:Alはパーライト組織の高強度化と初析セメンタイト組織の生成抑制に有効な元素である。しかし、Al量が0.010%以下では、その効果が弱い。また、Al量が1.00%を超えると、粗大なアルミナ系介在物が生成し、レールの延性が低下するため、Al添加量は0.010〜1.00%が望ましい。
【0041】
Zr:0.0001〜0.2000%:Zrは偏析部に生成する初析セメンタイト組織の生成を抑制する元素である。しかし、Zr量が0.0001%以下では、初析セメンタイト組織が生成し、レールの延性を低下させる。また、Zr量が0.2000%を超えると、粗大なZr系介在物が多量に生成し、レールの延性が低下するため、Zr添加量は0.0001〜0.2000%が望ましい。
【0042】
N:0.0060〜0.0200%:Nはパーライト組織の延性を高めると同時に、硬度(強度)を向上させるのに有効な元素である。しかし、N量が0.0060%未満では、その効果は弱い。また、N量が0.0200%を超えると、鋼中に固溶させることが困難となり、疲労損傷の起点となる気泡が生成することから、N添加量は0.0060〜0.0200%が望ましい。なお、レール鋼においては、Nは不純物として最大0.0050%程度含まれる。したがって、N量を上記の範囲にするためには、Nを意図的に添加する必要がある。
【0043】
上記のような成分組成で構成されるレール圧延用鋼片は、本発明では、転炉、電気炉などの通常使用される溶解炉で溶製を行い、この溶鋼を造塊・分塊あるいは連続鋳造される。
【0044】
(2)圧延温度範囲の限定理由
次に、仕上げ圧延のレール頭部表面の圧延温度の範囲を上記請求範囲に限定した理由について詳細に説明する。なお、仕上げ圧延が行われる前には、レール圧延用鋼片に対して粗圧延及び中間圧延が行われる。
【0045】
レール頭部表面温度がArcm変態点以上の状態で圧延すると、微細なセメンタイト組織が生成せず、オーステナイト粒のピンニング作用も得られず、オーステナイト粒が粗大化し、結果的に圧延および熱処理後のパーライト組織も微細化せず、延性が向上しない。また、700℃未満の温度域で圧延すると、圧延中に生成するセメンタイト組織が粗大化し、レールの耐摩耗性や延性が大きく低下する。さらに、圧延成形性が大きく低下し、レール圧延が困難となる。このため、レール頭部表面の圧延温度の範囲をArcm変態点未満〜700℃以上、好ましくは850℃未満〜700℃以上の範囲とした。
【0046】
なお、Arcm変態点は鋼の炭素量や合金成分によりそれぞれ異なっている。Arcm変態点を正確に求めるには実験による検証が必要である。これらの値を簡便に求めるには、炭素量のみを基準に、冶金学の教科書(例えば、鉄鋼材料、日本金属学会編)などに掲載されている、Fe−Fe3C系の平衡状態図から読み取ることが望ましい。本発明の成分系におけるArcm変態点は平行状態図のAcm線よりも20〜30℃低めの値となる。
【0047】
(3)頭部の累積減面率の限定理由
次に、仕上げ圧延のレール頭部の累積減面率を上記請求範囲に限定した理由について詳細に説明する。
【0048】
レール頭部の累積減面率が20%未満になると、所定の未再結晶オーステナイト組織の残留量が得られないことや、未再結晶オーステナイト組織中の歪み量が低下し、本発明の圧延温度範囲では、再結晶後のオーステナイト組織が微細化せず、オーステナイト組織が粗大化する。さらに、この未再結晶オーステナイト粒界に生成するセメンタイト組織が粗大化し、オーステナイト粒のピンニング作用も得られない。また、その後の熱処理において、加工された未再結晶オーステナイト組織の変形帯からパーライト組織が生成せず、結果として、パーライト組織が粗大化し、レールの延性が向上しない。このため、レール頭部の累積減面率を20%以上に限定した。
【0049】
ここで、レール頭部の累積減面率について説明する。累積減面率は仕上げ圧延における最初の圧延パス前の頭部断面の面積に対する最終の圧延パス後の頭部断面の面積の減少率である。したがって、仕上げ圧延途中に如何なる圧延パスが存在しようとも、最初の圧延パスと最終の圧延パスの頭部断面形状が同一の場合、累積減面率は同一となる。
【0050】
なお、仕上げ圧延のレール頭部の累積減面率の上限値については特に限定をしていないが、レール頭部の成形性を確保し、寸法制度を確保するには、50%程度が実質的に上限となる。
また、本発明では、仕上げ圧延時の圧延パス数や圧延パス間時間については特に限定していないが、圧延途中における未再結晶オーステナイト粒内の歪みの回復を抑制し、さらに、セメンタイト組織を微細化し、自然放冷および熱処理後に微細なパーライト組織を得るには、圧延パス数は4以下、圧延の最大パス間時間は6sec以下が望ましい。
【0051】
(4)頭部表面の未再結晶オーステナイト組織の残留量の限定理由
次に、頭部表面の未再結晶オーステナイト組織の残留量を上記請求範囲に限定した理由について詳細に説明する。
【0052】
レール頭部表面の未再結晶オーステナイト組織の残留量が面積比率で50%未満になると、その後の放冷中に再結晶において、微細なオーステナイト組織が十分に得られず、粗大なパーライト組織の生成量が増加し、延性が向上しない。また、その後の熱処理において、未再結晶オーステナイト組織の内部から生成する微細なパーライト組織が十分に生成せず、粗大なパーライト組織の生成量が増加し、レールの延性が向上しない。このため、頭部表面の未再結晶オーステナイト組織の残留量を面積比率で50%以上に限定した。
【0053】
なお、未再結晶オーステナイト組織の残留量を面積比率の上限値については特に限定をしていないが、本発明の温度範囲では80%程度が実質的に上限となる。
【0054】
また、圧延直後の未再結晶オーステナイト組織の生成量は、レール圧延直後に長尺レールから短尺レールを切断し、焼入れを行うことにより確認が可能である。焼入れを行ったレール頭部からサンプルを切り出し、研摩後、スルホン酸とピクリン酸の混合溶液でエッチングし、オーステナイト組織を確認することができる。なお、未再結晶オーステナイト組織は、再結晶オーステナイト組織と比較して、圧延方向に扁平で、かつ、粗大であることから、光学顕微鏡で分類が可能である。面積比率の算定は、再結晶オーステナイト組織を楕円に近似し、面積を求め、視野面積との割合から比率を算定することができる。測定方法の詳細については特に限定しないが、視野倍率は100倍、視野数は5以上が望ましい。
【0055】
なお、上記の未再結晶オーステナイト組織の生成量を調査する短尺レールの焼入れは生産性を大きく低下させる。そこで、未再結晶オーステナイト組織の生成量を簡便に確認するため、熱間圧延機の反力値と圧延直後の未再結晶オーステナイト組織の生成量の関係を調査した。
【0056】
図1は炭素量0.85〜1.40%の鋼を用いて圧延実験を行った結果を整理したものである。圧延機の反力値を同一累積減面率の圧延温度950℃の反力値で除した値(以降、「反力比」と略す)と圧延直後の未再結晶オーステナイト組織の生成量の関係には直線的な相関があり、反力比が1.40を超えると圧延直後の未再結晶オーステナイト組織の生成量が50%を超えることを確認した。したがって、実操業においては、この反力比を一つの指標として、未再結晶オーステナイト組織の生成量を制御することが可能となる。
【0057】
(5)仕上げ圧延後の熱処理条件の限定理由
次に、仕上げ圧延後のレール頭部表面の熱処理条件の限定理由について詳細に説明する。
【0058】
まず、この未再結晶オーステナイト組織から得られる微細なオーステナイト粒を利用して、延性を安定的に向上させるために行う熱処理開始条件について、上記のように限定した理由を説明する。
【0059】
圧延終了後200secを越えて加速冷却を開始すると、再結晶オーステナイト粒界に生成する微細なセメンタイト組織が粗大化し、オーステナイト粒のピンニング作用が低下し、粒成長が顕著となり、未再結晶オーステナイト組織からの再結晶したオーステナイト組織が粗大化し、熱処理後のパーライト組織の延性が低下する。また、微細なセメンタイト組織の粗大化により延性が低下する。このため熱処理開始時期を圧延終了後200sec以内に限定した。
【0060】
加速冷却開始時期の下限値については特に限定をしていないが、未再結晶オーステナイト組織の内部から微細なパーライト組織を十分に生成させるには、圧延での歪みが回復しないように、圧延直後に加速冷却を行うことが望ましい。したがって、圧延終了後0〜10sec程度が実質的には下限となる。
【0061】
仕上げ圧延が終了してから加速冷却開始するまでの冷却方法については限定していないが自然放冷や緩冷却が望ましい。圧延後に自然放冷や緩冷却を行うと、圧延直後の未再結晶オーステナイト組織が再結晶し、オーステナイト粒の微細化が促進するからである。なお、圧延後自然放冷とは、圧延後、一切の加熱および冷却処理を行わず、大気中で自然に冷却することである。また、緩冷却とは冷却速度2℃/sec以下の範囲である。
【0062】
次に、レール頭部表面の加速冷却速度の範囲について説明する。レール頭部の加速冷却速度が5℃/sec未満では、本製造条件では、加速冷却中にセメンタイト組織が粗大化し、レールの頭部の耐摩耗性や延性が低下する。また、レール頭部の高硬度が図れず、レール頭部の耐摩耗性の確保が困難となる。さらに、鋼の成分によっては、初析セメンタイト組織や初析フェライト組織が生成し、レールの頭部の耐摩耗性や延性が低下する。また、加速冷却速度が50℃/secを超えると、本製造条件では、マルテンサイト組織が生成し、レール頭部の延性や靭性が大きく低下する。このため、レール頭部の加速冷却速度の範囲を5〜50℃/secの範囲に限定した。
【0063】
最後に、レール頭部表面の加速冷却温度の範囲について説明する。550℃を超えた温度でレール頭部の加速冷却を停止すると、加速冷却終了後に、レール内部から過大な復熱が発生する。この結果、温度上昇によりパーライト変態温度が上昇し、パーライト組織の高硬度が図れず、耐摩耗性を確保できない。また、パーライト組織が粗大化し、レール頭部の延性も低下する。このため、少なくとも550℃まで加速冷却を行うことを限定した。
【0064】
なお、レール頭部表面の加速冷却を開始する温度は特に限定してないが、熱処理によりパーライト組織を安定的に高硬度(強度)化するには、パーライト変態温度よりも高い680℃が必要である。
また、レール頭部の加速冷却を終了する温度の下限は特に限定してないが、レール頭部の硬度を確保し、かつ、頭部内部の偏析部等に生成しやすいマルテンサイト組織の生成を防止するには、実質的に400℃が下限となる。
【0065】
ここで、レールの部位について説明する。図2はレール部位の呼称を示したものである。本発明においてレール頭部とは、図2に示すように、頭側部3の下面を延長した場合に互いに交わる点Aを通る水平線より上部に位置する部分であり、頭頂部1、頭部コーナー部2および頭側部3を含む部分である。熱間圧延時の減面率は、斜線で示す部分の断面積の減少率から算定することができる。また、圧延時のレール頭部表面の温度は、頭頂部1および頭部コーナー部2の頭部表面の温度を制御することにより、圧延時のオーステナイト粒の制御が図れ、レールの延性を向上させることができる。
【0066】
また、圧延終了直後の頭部表面における未再結晶オーステナイト組織の面積比率は、図2に示す頭頂部(符号:1)の頭部表面から深さ6mmの位置を測定すれば、レール頭部の表面全体を代表させることができる。
【0067】
さらに、上記に説明した圧延後の熱処理における加速冷却速度、加速冷却停止温度は、図2に示す頭頂部(符号:1)および頭部コーナー部(符号:2)の頭部表面、または、頭部表面から深さ3mmの範囲で測温すれば、レール頭部の全体を代表させることができ、この部分の温度や冷却速度を制御することにより、耐摩耗性や延性に優れた微細なパーライト組織を得ることができる。
【0068】
本製造方法では、加速冷却における冷媒については特に限定していないが、所定の冷却速度を確保し、レール各部位において、冷却条件の制御を確実に行うため、エアー、ミスト、エアーとミストの混合冷媒を用いて、レール各部位の外表面に所定の冷却を行うことが望ましい。
【0069】
なお、本製造方法ではレール頭部の硬さについては特に限定していないが、重荷重鉄道において耐摩耗性を確保するには、Hv350以上の硬さを確保することが望ましい。
また、本製造方法によって製造された鋼レールの頭部の金属組織は微細なセメンタイト組織を含むパーライト組織であることが望ましいが、成分系、さらには、加速冷却条件の選択によっては、パーライト組織中に微量な初析フェライト組織、粗大な炭化物である初析セメンタイト組織およびベイナイト組織が生成することがある。しかし、微細なセメンタイト組織を含むパーライト組織中にこれらの組織が微量に生成してもレールの耐摩耗性や延性に大きな影響をおよぼさないため、本製造方法によって製造された鋼レールの頭部の組織としては、若干の初析フェライト組織、初析セメンタイト組織およびベイナイト組織の混在も含んでいる。
【0070】
なお、パーライト組織中の微細なセメンタイト組織の生成量や大きさについては特に言及していないが、耐摩耗性や延性に影響を与えず、オーステナイト粒をピンニングできる範囲であることが望ましい。
【実施例】
【0071】
次に、本発明の実施例について説明する。
表1に供試レール鋼の化学成分を示す。表2は、表1に示す供試レール鋼(鋼:A〜J)を用いて、本発明レール製造方法で製造したレールの、仕上げ圧延条件、未再結晶オーステナイト組織の面積比率、熱処理条件、さらには、レール頭表面下2mm位置のミクロ組織、硬さ、図3に示す位置から試験片を採取して行った引張試験の全伸び値、図4に示す位置から試験片を採取し、図5に示す方法で行った摩耗試験の結果も併記した。
【0072】
【表1】


【0073】
【表2】


表3は、表1に示す供試レール鋼(鋼:A〜N)を用いて、比較レール製造方法で製造したレールの、仕上げ圧延条件、未再結晶オーステナイト組織の面積比率、熱処理条件、さらには、レール頭表面下2mm位置のミクロ組織、硬さ、図3に示す位置から試験片を採取して行った引張試験の全伸び値、図4に示す位置から試験片を採取し、図5に示す方法で行った摩耗試験の結果も併記した。
【0074】
【表3】


【0075】
(1)本発明レール製造方法(19本) 符号1〜19
上記限定成分範囲内で、かつ、上記限定範囲内の仕上げ圧延、熱処理条件で製造したパーライト系レール。
(2)比較熱処理レール(15本) 符号20〜34
鋼:20〜23:上記限定成分範囲外で、上記限定範囲内の熱間圧延直後の熱処理条件で製造したレール。
鋼:24〜29:上記限定成分範囲内のレール鋼を、上記限定範囲外の仕上げ圧延条件で製造したレール。
鋼:30〜34:上記限定成分範囲内のレール鋼を、上記限定範囲外の熱処理条件で製造したレール。
【0076】
図6は表2に示す本発明のレール製造方法で製造したレールと表3に示す比較レール製造方法で製造したレールの頭部引張試験の結果を炭素量と全伸び値の関係を示したものである。図7は表2に示す本発明のレール製造方法で製造したレールと表3に示す比較レール製造方法で製造したレールの頭部摩耗試験の結果を炭素量と摩耗量の関係を示したものである。
【0077】
また、各種試験条件は下記のとおりである。
1.頭部引張試験
試験機:万能小型引張試験機
試験片形状:JIS4号相似
平行部長さ:30mm、平行部直径:6mm、伸び測定評点間距離:25mm
試験片採取位置:レール頭部表面下6mm(図5参照)
引張速度:10mm/min、試験温度:常温(20℃)
2.摩耗試験
試験機:西原式摩耗試験機(図7参照)
試験片形状:円盤状試験片(外径:30mm、厚さ:8mm)
試験片採取位置:レール頭部表面下2mm(図6参照)
試験荷重:686N(接触面圧640MPa)
すべり率:20%
相手材:パーライト鋼(Hv380)
雰囲気:大気中
冷却:圧搾空気による強制冷却(流量:100Nl/min)
繰返し回数:70万回
【0078】
表2、表3に示すように、本発明レール鋼(鋼:1〜19)は、比較レール鋼(鋼:20〜23)と比べて、C、Si、Mnの添加量がある一定範囲内に納まっているため、レールの耐摩耗性や延性に悪影響を与える初析フェライト、初析セメンタイト組織、マルテンサイト組織などを生成させず、耐摩耗性や延性に優れたパーライト組織が生成している。
【0079】
また、表2、表3、図6に示したように、本発明レール鋼(鋼:1〜19)は、比較レール鋼(鋼:24〜29)と比べて、仕上げ圧延条件がある一定範囲内に納まっているため、微細なパーライト組織を安定的に生成させ、鋼の炭素量を同一とした場合、レール頭部の延性を向上している。また、本発明レール鋼(鋼:1〜19)は、比較レール鋼(鋼:30〜34)と比べて、熱処理条件がある一定範囲内に納まっているため、微細なパーライト組織を安定的に生成しており、鋼の炭素量を同一とした場合、レール頭部の延性がさらに向上している。
【0080】
さらに、表2、表3、図7に示したように、本発明レール鋼(鋼:1〜19)は、比較レール鋼(鋼:24、25)と比べて、仕上げ圧延条件がある一定範囲内に納まっているため、微細なパーライト組織を安定的に生成しており、耐摩耗性が確保されている。また、本発明レール鋼(鋼:1〜19)は、比較レール鋼(鋼:30〜33)と比べて、熱処理条件がある一定範囲内に納まっているため、耐摩耗性に有害な初析セメンタイト組織やマルテンサイト組織の生成が抑制され、耐摩耗性が確保されている。
【0081】
このように本発明によれば、レール製造において、鋼の成分、仕上げ圧延条件、さらには、熱処理条件を制御することにより、重荷重鉄道に使用されるレールの頭部の組織を制御し、硬度を所定の範囲に収め、レールの耐摩耗性と延性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】炭素量0.85〜1.40%の鋼を用いて圧延実験を行った結果を反力比(圧延機の反力値を同一累積減面率の圧延温度950℃の反力値で除した値)と圧延直後の未再結晶オーステナイト組織の生成量の関係で示した図。
【図2】本発明のレール製造方法で製造したレールの頭部断面表面位置での呼称を示した図。
【図3】表2と表3に示す引張試験における試験片採取位置を示した図。
【図4】表2と表3に示す摩耗試験における試験片採取位置を示した図。
【図5】摩耗試験の概要を示した図。
【図6】表2に示す本発明のレール製造方法で製造したレールと表3に示す比較レール製造方法で製造したレールの頭部引張試験の結果を炭素量と全伸び値の関係で示した図。
【図7】表2に示す本発明のレール製造方法で製造したレールと表3に示す比較レール製造方法で製造したレールの頭部摩耗試験の結果を炭素量と摩耗量の関係で示した図。
【符号の説明】
【0083】
1…頭頂部
2…頭部コーナー部
3…頭側部
4…レール試験片
5…相手材
6…冷却用ノズル
【出願人】 【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日本製鐵株式会社
【出願日】 平成18年7月24日(2006.7.24)
【代理人】 【識別番号】100110858
【弁理士】
【氏名又は名称】柳瀬 睦肇

【識別番号】100110777
【弁理士】
【氏名又は名称】宇都宮 正明

【識別番号】100100413
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 温


【公開番号】 特開2008−25002(P2008−25002A)
【公開日】 平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願番号】 特願2006−200861(P2006−200861)