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【発明の名称】 高周波誘導加熱応力緩和法
【発明者】 【氏名】平野 隆

【氏名】寺嶋 拓郎

【要約】 【課題】小口径で薄肉な管の溶接継手部の残留応力を緩和することができる高周波誘導加熱応力緩和法を提供する。

【構成】小口径かつ薄肉な管2、3の溶接継手部4の管内面を水冷しながら管外面側から高周波誘導コイル6にて加熱して、上記溶接継手部4の内面の残留応力を緩和するための高周波誘導加熱応力緩和法において、上記管2、3の中立半径をR、板厚をtとしたとき、上記高周波誘導加熱の加熱深さSをt/6以上t/2以下に、かつ溶接中心と上記高周波誘導コイル端の距離Dを、下記式
【特許請求の範囲】
【請求項1】
小口径かつ薄肉な管の溶接継手部の管内面を水冷しながら管外面側から高周波誘導コイルにて加熱して、上記溶接継手部の内面の残留応力を緩和するための高周波誘導加熱応力緩和法において、
上記管の中立半径をR、板厚をtとしたとき、
上記高周波誘導加熱の加熱深さSをt/6以上t/2以下に、
かつ溶接中心と上記高周波誘導コイル端の距離Dを、数1
【数1】


以上に設定して、高周波誘導加熱することを特徴とする高周波誘導加熱応力緩和法。
【請求項2】
上記管の中立半径Rが33mm以下、板厚tが17mm以下である請求項1記載の高周波誘導加熱応力緩和法。
【請求項3】
上記高周波誘導加熱の最高加熱温度は、上記管の材料をもとに決定される請求項1または2記載の高周波誘導加熱応力緩和法。
【請求項4】
上記溶接された管が、各々異なる材料からなり、それら材料をもとに各々決定された最高加熱温度の内、低いほうの最高加熱温度にて、上記高周波誘導加熱が行われる請求項3記載の高周波誘導加熱応力緩和法。
【請求項5】
上記管が、ニオブ含有量が1%以上3%以下のニッケルクロム鉄合金製鋼管と、炭素含有量が0.02%以下のオーステナイト系ステンレス鋼製鋼管とからなり、上記高周波誘導加熱の最高加熱温度が650℃以下に設定された請求項1から4いずれかに記載の高周波誘導加熱応力緩和法。
【請求項6】
上記管が、ニオブ含有量が1%未満若しくは3%超のニッケルクロム鉄合金製鋼管と、炭素含有量が0.02%以下のオーステナイト系ステンレス鋼製鋼管とからなり、上記高周波誘導加熱の最高加熱温度が600℃以下に設定された請求項1から4いずれかに記載の高周波誘導加熱応力緩和法。
【請求項7】
上記管が、ニオブ含有量が1%未満若しくは3%超のニッケルクロム鉄合金製鋼管と、炭素含有量が0.02%超のオーステナイト系ステンレス鋼製鋼管とからなり、上記高周波誘導加熱の最高加熱温度が550℃以下に設定された請求項1から4いずれかに記載の高周波誘導加熱応力緩和法。
【請求項8】
予め、残留応力を緩和するのに必要とされる内外面の温度差ΔTの関係式である数2を求め、
【数2】


上記高周波誘導加熱時に、管外面の評価点温度を測定することで、管内面温度Tiを数3および数4にて算出し、
【数3】


【数4】


それら測定した評価点のうちの最低温度と算出した管内面温度Tiとの差ΔTが、数2を満たすことを確認する請求項1から7いずれかに記載の高周波誘導加熱応力緩和法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、応力腐食割れを予防するための高周波誘導加熱応力緩和法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、粒界応力腐食割れ(Intergranular Stress Corrosion Cracking、以下IGSCCという)の予防保全の一環として、オーステナイト系ステンレス鋼母材部および溶接部に対し、高周波誘導加熱による応力緩和法(Induction Heating Stress Improvement、以下IHSIという)が、沸騰水型原子炉(BWR)の溶接継手部に実施されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−226112号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、沸騰水型原子炉(BWR)の水位計装ノズル(ニッケルクロム鉄合金、P−43)と、セーフエンド(オーステナイト系ステンレス鋼、P−8)との溶接継手部は、従来の対象箇所(モリブデン鋼とオーステナイト系ステンレス鋼との溶接継手部など)に比べ、小口径で薄肉であること、および従来と母材の組合せが異なることなどの理由により、IHSIの効果が確認できていなかった。
【0005】
すなわち、従来のIHSIは、大口径で肉厚の管溶接部を対象に実施されてきたが、従来の加熱条件および加熱装置では、水位計測ノズル(P−43+P−8溶接継手)のような小口径、薄肉の管形状に対する応力改善効果が低いとされ、また水位計測ノズル(P−43+P−8溶接継手)に対する施工後の応力改善効果および健全性について確証されていなかったことが問題であった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、小口径で薄肉な管の溶接継手部の残留応力を緩和することができる高周波誘導加熱応力緩和法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、小口径かつ薄肉な管の溶接継手部の管内面を水冷しながら管外面側から高周波誘導コイルにて加熱して、上記溶接継手部の内面の残留応力を緩和するための高周波誘導加熱応力緩和法において、上記管の中立半径をR、板厚をtとしたとき、上記高周波誘導加熱の加熱深さSをt/6以上t/2以下に、かつ溶接中心と上記高周波誘導コイル端の距離Dを、数1
【0008】
【数1】


【0009】
以上に設定して、高周波誘導加熱するものである。
【0010】
好ましくは、上記管の中立半径Rが33mm以下、板厚tが17mm以下である。
【0011】
好ましくは、上記高周波誘導加熱の最高加熱温度は、上記管の材料をもとに決定されるものである。
【0012】
好ましくは、上記溶接された管が、各々異なる材料からなり、それら材料をもとに各々決定された最高加熱温度の内、低いほうの最高加熱温度にて、上記高周波誘導加熱が行われるものである。
【0013】
上記管が、ニオブ含有量が1%以上3%以下のニッケルクロム鉄合金製鋼管と、炭素含有量が0.02%以下のオーステナイト系ステンレス鋼製鋼管とからなり、上記高周波誘導加熱の最高加熱温度が650℃以下に設定されたものでもよい。
【0014】
上記管が、ニオブ含有量が1%未満若しくは3%超のニッケルクロム鉄合金製鋼管と、炭素含有量が0.02%以下のオーステナイト系ステンレス鋼製鋼管とからなり、上記高周波誘導加熱の最高加熱温度が600℃以下に設定されたものでもよい。
【0015】
上記管が、ニオブ含有量が1%未満若しくは3%超のニッケルクロム鉄合金製鋼管と、炭素含有量が0.02%超のオーステナイト系ステンレス鋼製鋼管とからなり、上記高周波誘導加熱の最高加熱温度が550℃以下に設定されたものでもよい。
【0016】
好ましくは、予め、残留応力を緩和するのに必要とされる内外面の温度差ΔTの関係式である数2を求め、
【0017】
【数2】


【0018】
上記高周波誘導加熱時に、管外面の評価点温度を測定することで、管内面温度Tiを数3および数4にて算出し、
【0019】
【数3】


【0020】
【数4】


【0021】
それら測定した評価点のうちの最低温度と算出した管内面温度Tiとの差ΔTが、数2を満たすことを確認するものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、小口径で薄肉な管の溶接継手部の残留応力を緩和することができるという優れた効果を発揮するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の好適な一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0024】
本実施形態の高周波誘導加熱応力緩和法(以下、IHSIという)は、小口径かつ薄肉の管の溶接継手部を対象とし、例えば、原子炉圧力容器の水位計装ノズルとそのノズルに接合されるセーフエンドとの溶接継手部を対象とする。
【0025】
まず、図1および図2に基づきIHSIが対象とする溶接継手部を説明する。
【0026】
図1に示すように、原子炉圧力容器1には、その圧力容器1内の冷却水の水位を計測する水位センサ(図示せず)を接続するための水位計装ノズル2が取り付けられる。
【0027】
図2に示すように、水位計装ノズル2は、圧力容器1から外方に延出する管形状を有し、その先端には、セーフエンド3と呼ばれる管が取り付けられる。
【0028】
より具体的には、水位計装ノズル2は、ニッケルクロム鉄合金(例えば、インコネル(登録商標))からなり、他方、セーフエンド3は、オーステナイト系ステンレス鋼からなり、それらニッケルクロム鉄合金の母材(以下、P−43という)とオーステナイト系ステンレス鋼の母材(以下、P−8という)とは、溶接にて接合される。また、本実施形態では、ニッケルクロム鉄合金の溶接材を加えて溶接が行われる。
【0029】
このように、溶接継手部4は、P−43の母材部2と、P−8の母材部3と、それら母材の間に位置するニッケルクロム鉄合金の溶接部5とで構成される。
【0030】
次に、図3に基づき本実施形態のIHSIを説明する。
【0031】
図3に示すように、IHSIは、溶接継手部4の外周を囲繞するよう高周波誘導コイル(以下、加熱コイルという)6を配置し、その加熱コイル6に高周波加熱電源7から高周波電流を供給して溶接継手部4を管外面側から加熱すると共に、管2、3内に液体(具体的には、水)を流して溶接継手部4の管内面を水冷して行われる。
【0032】
これにより、溶接継手部4の外面側が加熱されて膨張しようとするが、その一方で、内面側は水冷され変形しないため、その内面が圧縮されることとなり残留応力(引張応力)が圧縮応力に移行される。
【0033】
本実施形態では、従来に比べて小口径、薄肉の管2、3の溶接継手部4を対象とすることから、従来のIHSI加熱条件(エッセンシャルバリアブル)である最高加熱温度TO(℃)、管内外面の温度差ΔT(℃)、加熱時間τ(sec)、コイル幅L(mm)、溶接線位置(溶接中心)とコイル端との距離D(mm)の各エッセンシャルについて再検討した。ここで、本実施形態の小口径、薄肉の管2、3とは、管2、3の中立半径Rが33mm以下、板厚tが17mm以下のものをいう。
【0034】
IHSI加熱条件を再検討した結果、表1の加熱条件が得られた。表1に、従来からのIHSI加熱条件と本実施形態のIHSI加熱条件の比較を示す。
【0035】
【表1】


【0036】
表1に示すように、本実施形態では、応力緩和の対象部が薄肉であることから、加熱への影響因子として、加熱深さS(mm)を加熱条件として追加した。また、加熱範囲が不十分にならないよう、溶接中心とコイル端の距離D(mm)を新たに設定し直した。
【0037】
すなわち、本実施形態では、管2、3の中立半径(管公称厚さの中心における曲率半径)をR(mm)、板厚をt(mm)としたとき、上記高周波誘導加熱の加熱深さSをt/6以上t/2以下に、かつ溶接中心と上記高周波誘導コイル端の距離Dを、数5
【0038】
【数5】


【0039】
以上に設定して、高周波誘導加熱する(図3参照)。
【0040】
まず、図4に基づき加熱深さSについて説明する。
【0041】
一般に、誘導加熱は、加熱コイル6に誘導電流を流すことにより被加熱物に磁束を発生させ、非常に密度の高い電流(うず電流)を誘導し、これによって被加熱物を加熱させる方法である。
【0042】
うず電流は、被加熱物の表面に近いほど強く、内部に行くにつれて指数的に弱くなる。これを表皮効果という。図4は、この表皮効果を示したものである。
【0043】
図4は、電流浸透深さS(図4ではσ)と渦電流密度分布との関係を示したものである。
【0044】
図4から、うず電流が表面における強さの0.368倍に減少した点までの深さを加熱深さSと定義する。その加熱深さSの式を数6に示す。
【0045】
【数6】


【0046】
以上のように定義された加熱深さSを、本実施形態では、t/6以上t/2以下に設定した。
【0047】
これは、板厚tの適用範囲が8.5〜17mm(実機水位計装ノズル2の板厚範囲)であること、および使用周波数の範囲を20±10kHz程度に設定することが、加熱時の熱伝達性および加熱装置(高周波加熱電源)の性能の点から現実的であると考えられることによる。
【0048】
すなわち、加熱深さSがt/2を超え、加熱深さが深くなると、管板厚方向の温度分布が適切な勾配とならないことから、十分な応力改善効果が得られない。一方、加熱深さSがt/6未満であると、表面での加熱となってしまい、前述と同一の理由により、応力改善効果が十分に得られなくなってしまう。
【0049】
ここで、加熱深さSは、管2、3の材料の固有抵抗と加熱コイル6に付与される周波数とにより決定される。
【0050】
図5および図6に基づき、加熱コイル6に付与する周波数fと加熱深さSの関係について説明する。
【0051】
図5に、インコネル(登録商標)(P−43)およびオーステナイト系ステンレス鋼(P−8)の各周波数による加熱深さSの計算結果を示す。
【0052】
図5より、インコネル(登録商標)とステンレス鋼では、加熱深さSに差異はなく、現状で一般に使用される周波数(f=20kHz)では、加熱深さSは約4mm、周波数設定範囲(f=20±10kHz)では、加熱深さSは3〜5.5mm程度になると言える。
【0053】
図5の結果をもとに、周波数fと、板厚tを加熱深さSで割った商t/Sとの関係を求めると図6のようになる。
【0054】
図6より、板厚tが8.5mmの場合、周波数fが10kHzではt/Sが2.25を下回り、IHSI施工時の外面加熱、内面冷却を行う際に、板厚方向への適切な温度勾配が得られないと考えられることから、周波数fを20kHz以上に設定する必要がある。
【0055】
また、図6より、いずれの板厚tでもt/Sは、最大6を超えない。これは水位計装ノズル2については、使用する周波数fは30kHzを最大とすることが妥当であることを示している。
【0056】
次に、図7に基づき溶接中心からコイル端までの距離Dについて説明する。
【0057】
図7に、事前確認試験の内外面温度計測の結果を示す。試験体には外径φ76.5mm、板厚13.5t(mm)の管を用いた。加熱コイル6は、コイル幅Lが100mmのものを使用しており、水位計装ノズル2のIHSIの規定値(例えば、飯田他、「高周波誘導加熱による応力緩和法に関する指針(SCC対策工法)TNS−G2804−1985」、社団法人火力原子力発電技術協会、原子力発電技術委員会参照)である数7を満足するようになっている。
【0058】
【数7】


【0059】
一般に、加熱コイル6は、コイル端に行くほどコイル密度が疎になることから、エネルギー密度が小さくなる。特に水位計装ノズル2の場合は、適用する板厚tが薄いことからIHSI時の内面冷却水の冷却効果が大きく、コイル端ほど温度降下しやすい。
【0060】
以上の理由により、加熱範囲を十分に確保する観点から、溶接中心からコイル端までの距離Dは、コイル幅Lの1/2(数5参照)とした。すなわち、管2、3の溶接中心と、加熱コイル6の軸方向の中心とを一致させて、加熱コイル6を配置する。
【0061】
次に、図8から図10に、本実施形態のIHSI加熱条件で施工した試験体A02(管径φ59×板厚17t(mm))、B02(管径φ67×板厚8.5t(mm))、C05(管径φ78×板厚14.4t(mm))の軸方向および周方向の残留応力計測結果を示す。
【0062】
図8から図10より、いずれの試験体も溶接継手部4における内面の応力は、大部分が圧縮応力(すなわち、残留応力が0以下)となり、IGSCCの発生因子である溶接継手部4の引張応力が圧縮応力に移行し、応力改善効果が確認された。
【0063】
また、オーステナイト系ステンレス鋼側(セーフエンド3側)だけでなく、溶接部5およびインコネル母材側(水位計装ノズル2側)においても、応力改善効果がみられた。
【0064】
このように本実施形態では、加熱深さSをt/6以上t/2以下、溶接中心からコイル端までの距離Dを数5以上とすることで、小口径、薄肉な管でも、残留応力を緩和することができる。
【0065】
次に、高周波誘導加熱の最高加熱温度TOについて説明する。
【0066】
表1に戻り、本実施形態では、高周波誘導加熱の最高加熱温度TOが、管2、3の材料(材質)をもとに決定され、さらに、溶接された管2、3が、各々異なる材料からなり、それら材料をもとに各々決定された最高加熱温度TOの内、低いほうの最高加熱温度TOにて、上記高周波誘導加熱が行われる。
【0067】
具体的には、管2、3が、ニオブ含有量が1%以上3%以下のニッケルクロム鉄合金製鋼管2と、炭素含有量が0.02%以下のオーステナイト系ステンレス鋼製鋼管3とからなるときは、高周波誘導加熱の最高加熱温度TOが650℃以下に設定される。
【0068】
管2、3が、ニオブ含有量が1%未満若しくは3%超のニッケルクロム鉄合金製鋼管2と、炭素含有量が0.02%以下のオーステナイト系ステンレス鋼製鋼管3とからなるときは、高周波誘導加熱の最高加熱温度TOが600℃以下に設定される。
【0069】
管2、3が、ニオブ含有量が1%未満若しくは3%超のニッケルクロム鉄合金製鋼管2と、炭素含有量が0.02%超のオーステナイト系ステンレス鋼製鋼管3とからなるときは、高周波誘導加熱の最高加熱温度TOが550℃以下に設定される。
【0070】
このように、高周波誘導加熱の最高加熱温度TOを、管2、3の材料をもとに決定することで、管2、3の劣化を抑制でき、溶接継手部4の健全性を保つことができる。
【0071】
以上から、本実施形態のIHSIは、水位計測ノズル2(P−43+P−8溶接継手部4)に対するIGSCC予防保全対策として有効であることが分かった。
【0072】
また、高周波誘導加熱後の母材部に健全性確認の目的で機械試験を実施し、規定値を満足していることを確認した。機械試験の結果、本実施形態の加熱条件は、継手性能に悪影響を及ぼさないことが分かった。
【0073】
次に、本実施形態のIHSIでは、高周波誘導加熱時に管内外面の温度差ΔTを求めることで、IHSI施工の効果を確認するようにしている。
【0074】
すなわち、予め、残留応力を緩和するのに必要とされる内外面の温度差ΔTの関係式である数8を求め、
【0075】
【数8】


【0076】
上記高周波誘導加熱時に、評価点温度を計測することで、管内面温度Tiを数9および数10にて算出し、
【0077】
【数9】


【0078】
【数10】


【0079】
それら測定した評価点のうちの最低温度と算出した管内面温度Tiとの差ΔTが、数8を満たすことを確認するようにしている。
【0080】
ここで、IHSI加熱条件の1つである内外面の温度差ΔTを確認するには、管内面温度Tiを算出する必要があるが、小口径、薄肉な管2、3の場合、従来からの管内面温度Tiの計算方法では、試験による内面温度実測値との差が大きい。そこで、本実施形態では、管内面温度Tiの計算式を再検討し、数9および数10を得た。
【0081】
それら数9および数10の計算値と、管内面温度の実測値とを比較検討した結果を図11から図13に基づき説明する。
【0082】
図11から図13は、数11で与えられるAを、管内外面の温度Ti、TOおよび冷却水温度TWの実測値と、数9および数10の計算値とから各々算出して示したものである。
【0083】
【数11】


【0084】
図11から図13によると、板厚tが8.5mm以上14.4mm以下の場合は、数9を用いた計算値が実測値を包絡しており、板厚tが14.4mmより厚く17mm以下の場合は、数10を用いた計算値が実測値を包絡している。
【0085】
このことから、板厚tの違いにより数9、数10を使い分けることで、管内面温度Tiの計算値を適切に評価できることが確認された。
【0086】
ここで、従来からの管内面温度Tiの計算式を数12に示す。
【0087】
【数12】


【0088】
数10と数12は板厚tの条件を除き同一であるので、本実施形態では、従来からのIHSI工法で使用されていた管内面温度Tiの計算式(数10)に数9を追加し、板厚tにより数9、数10を使い分けるようにしていると言える。
【0089】
このように、管内面温度Tiの計算式として、板厚tの違いにより、数9、数10を使い分けることで、管内面温度Tiを適切に評価できる。
【0090】
その結果、IHSI施工後に、応力改善効果を確実に確認することができる。
【0091】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されず、様々な変形例や応用例が考えられるものである。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】図1は、本発明に係る一実施形態による高周波誘導加熱応力緩和法が対象とする水位計装ノズルが設けられた原子炉圧力容器を示す。
【図2】図2は、本実施形態の溶接継手部を示す。
【図3】図3は、本実施形態の溶接継手部と高周波誘導加熱コイルとを示す。
【図4】図4は、誘導加熱の加熱深さを説明するための図である。
【図5】図5は、加熱深さと周波数の関係を説明するための図である。
【図6】図6は、板厚を加熱深さで割った商と、周波数の関係を説明するための図である。
【図7】図7は、高周波誘導加熱時の管軸方向における外面温度の分布を説明するための図である。
【図8】図8は、本実施形態の高周波誘導加熱応力緩和法を施工後における管の残留応力計測結果の一例を示す。
【図9】図9は、本実施形態の高周波誘導加熱応力緩和法を施工後における管の残留応力計測結果の一例を示す。
【図10】図10は、本実施形態の高周波誘導加熱応力緩和法を施工後における管の残留応力計測結果の一例を示す。
【図11】図11は、本実施形態における水位計装ノズル温度の計測結果と計算結果との関係を説明するための図である。
【図12】図12は、本実施形態における水位計装ノズル温度の計測結果と計算結果との関係を説明するための図である。
【図13】図13は、本実施形態における水位計装ノズル温度の計測結果と計算結果との関係を説明するための図である。
【符号の説明】
【0093】
2、3 管
4 溶接継手部
6 高周波誘導コイル
R 中立半径
t 板厚
D 溶接中心と上記高周波誘導コイル端の距離
【出願人】 【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
【出願日】 平成18年7月14日(2006.7.14)
【代理人】 【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄


【公開番号】 特開2008−19499(P2008−19499A)
【公開日】 平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願番号】 特願2006−194641(P2006−194641)