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クランクシャフトの高周波焼入れ方法及び高周波焼入れ装置 - 特開2008−1956 | j-tokkyo
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【発明の名称】 クランクシャフトの高周波焼入れ方法及び高周波焼入れ装置
【発明者】 【氏名】今村 雄一郎

【氏名】川島 大明

【氏名】篠原 明彦

【要約】 【課題】設備の小型化と汎用化とを両立することが可能なクランクシャフトの高周波焼入れ方法及び高周波焼入れ装置を提供する。

【構成】一対のロボットアーム2,3によってクランクシャフトをピン中心で回転させて高周波焼入れが行われる。したがって、高周波焼入れ時に加熱コイル6を固定することができ、従来の高周波焼入れ装置における追従機構を廃止することで、設備が大幅に小型化される。また、加熱コイル6等の段替え部品を交換するだけで複数種のクランクシャフトに対応させることが可能になり、汎用性が向上する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクシャフトを多関節ロボットアームのハンド部によって把持すると共に、該クランクシャフトにおける焼入れの対象となるピンを加熱コイルに配設された少なくとも3個のガイドチップに接触させ、この状態で、前記クランクシャフトをジャーナル中心を回転中心として所定方向へ回転させながら、前記各ハンド部を円軌道で動作させ、該クランクシャフトを前記焼入れの対象となるピンの軸心を回転中心として回転させることにより、該焼入れの対象となるピンを高周波焼入れすることを特徴とするクランクシャフトの高周波焼入れ方法。
【請求項2】
上記請求項1に記載のクランクシャフトの高周波焼入れ方法に用いられる高周波焼入れ装置であって、
一対のハンド部によって前記クランクシャフトの両端部を把持し、該クランクシャフトをジャーナル中心を回転中心として所定方向へ回転させながら、前記各ハンド部を円軌道で動作させることにより、該クランクシャフトを焼入れの対象となるピンの軸心を回転中心として回転させる一対の多関節ロボットアームを具備することを特徴とする高周波焼入れ装置。
【請求項3】
ロボット制御装置に前記一対のロボットアームの基準姿勢を教示するティーチング手段と、前記クランクシャフトを前記焼入れの対象となるピンの軸心を回転中心として所定角度位相づつ回転させた時の各段階における前記一対のロボットアームの各姿勢を、前記一対のロボットアームの基準姿勢に基づく演算によって教示する演算教示手段と、を具備することを特徴とする請求項2に記載の高周波焼入れ装置。
【請求項4】
前記演算教示手段を用いて作成された前記一対のロボットアームの動作プログラムに基づいて、前記クランクシャフトを前記焼入れの対象となるピンの軸心を回転中心として回転させた時の前記ピンの変位を測定する第1の変位測定手段と、該第1の変位測定手段の測定結果に基づいて前記動作プログラムを補正するプログラム補正手段と、を具備することを特徴とする請求項3に記載の高周波焼入れ装置。
【請求項5】
加熱コイルを変位可能に支持するフローティング機構と、高周波焼入れ時における前記加熱コイルの変位を測定する第2の変位測定手段と、該第2の変位測定手段の測定結果に基づいて前記一対のロボットアームの動作を修正する動作修正手段と、を具備することを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の高周波焼入れ装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、クランクシャフトの高周波焼入れ方法及び高周波焼入れ装置に関し、特に、ジャーナル中心を回転中心として回転させたクランクシャフトのピンを加熱コイルによって高周波焼入れする方法の改良、及び該クランクシャフトの高周波焼入れ方法に用いられる高周波焼入れ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クランクシャフトのピンを高周波焼入れする場合、クランクシャフトを、ジャーナル中心を回転中心として所定方向へ回転させ、加熱コイルを、該クランクシャフトのピンのジャーナル中心回りの円軌道動作に追従させていた。一般に、高周波焼入れ装置では、加熱コイルとトランス(高周波変流器)とがコイルユニットとして一体に構成されるため、重量物であるトランスをピンの円軌道動作に追従させる必要がある。このため、従来の高周波焼入れ装置では、トランスをピンの動作に追従させる機構(例えば、特許文献1参照。)、延いては設備全体が大型化し、設備コスト及び製造コストを増大させている。また、従来の高周波焼入れ装置では、コイルユニットをピンの動作に追従させる機構(以下、追従機構と称する)を、ピンの偏心量(ジャーナル中心からピンの軸心までの距離)が異なる複数種のクランクシャフトに対応させることが難しく、汎用化が極めて困難である。
【0003】
そこで、本出願人は、クランクシャフトの両端部を一対の多関節ロボットアームの各ハンド部によって把持し、各ロボットアームの手首を旋回させて該クランクシャフトをジャーナル中心を回転中心として所定方向へ回転させながら、各ハンド部を円軌道で動作させることにより、クランクシャフトを焼入れの対象となるピンの軸心を回転中心として回転させる(以下、クランクシャフトをピン中心で回転させると称する)ことを試みた。これが実用化されれば、高周波焼入れ時にコイルユニットを固定することができ、上記追従機構を廃止して高周波焼入れ装置を小型化、且つ汎用化することが可能になる。ところで、汎用ロボットアームを円軌道で動作させる場合、ロボットコントローラのティーチング機能を用いて該円軌道(ピン中心)を多点教示し、これら教示点をリンク補間することで円軌道を確保するのが一般である。
【0004】
しかしながら、多点教示には多大な時間と手間とを要し、また、教示精度の影響で教示点に修正が生じた場合、その修正にはさらなる時間を要するため、実用化に向けてティーチング作業を効率化させる必要がある。また、上述したように、多点教示に基づく各ロボットアームの動作の円軌道は、一教示点の姿勢から次の教示点の姿勢へ最短距離で移行するリンク補間であるため、その軌道は正規の円軌道に対して内回りする傾向にある。このため、実用化に向けて一対のロボットアームの動作精度を高める必要がある。さらに、一対のロボットアームを用いた当該システムの実用化には、高周波焼入れ中のクランクシャフトの熱膨張によるピンの位置ずれ(変位)を対策する必要がある。
【特許文献1】特開2004−225092号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、第1の目的は、設備の小型化と汎用化とを両立することが可能なクランクシャフトの高周波焼入れ方法を提供することにある。
また、第2の目的は、設備の小型化と汎用化とを両立することが可能なクランクシャフトの高周波焼入れ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記第1の目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載のクランクシャフトの高周波焼入れ方法は、クランクシャフトを多関節ロボットアームのハンド部によって把持すると共に、該クランクシャフトにおける焼入れの対象となるピンを加熱コイルに配設された少なくとも3個のガイドチップに接触させ、この状態で、クランクシャフトをジャーナル中心を回転中心として所定方向へ回転させながら、各ハンド部を円軌道で動作させ、該クランクシャフトを焼入れの対象となるピンの軸心を回転中心として回転させることにより、該焼入れの対象となるピンを高周波焼入れすることを特徴とする。
【0007】
上記第2の目的を達成するために、本発明のうち請求項2に記載の発明は、上記請求項1に記載のクランクシャフトの高周波焼入れ方法に用いられる高周波焼入れ装置であって、一対のハンド部によってクランクシャフトの両端部を把持し、該クランクシャフトをジャーナル中心を回転中心として所定方向へ回転させながら、各ハンド部を円軌道で動作させることにより、該クランクシャフトを焼入れの対象となるピンの軸心を回転中心として回転させる一対の多関節ロボットアームを具備することを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の高周波焼入れ装置において、ロボット制御装置に一対のロボットアームの基準姿勢を教示するティーチング手段と、クランクシャフトを焼入れの対象となるピンの軸心を回転中心として所定角度位相づつ回転させた時の各段階における一対のロボットアームの各姿勢を、一対のロボットアームの基準姿勢に基づく演算によって教示する演算教示手段と、を具備することを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の高周波焼入れ装置において、演算教示手段を用いて作成された一対のロボットアームの動作プログラムに基づいて、クランクシャフトを焼入れの対象となるピンの軸心を回転中心として回転させた時のピンの変位を測定する第1の変位測定手段と、該第1の変位測定手段の測定結果に基づいて動作プログラムを補正するプログラム補正手段と、を具備することを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項2〜4のいずれかに記載の高周波焼入れ装置において、加熱コイルを変位可能に支持するフローティング機構と、高周波焼入れ時における加熱コイルの変位を測定する第2の変位測定手段と、該第2の変位測定手段の測定結果に基づいて一対のロボットアームの動作を修正する動作修正手段と、を具備することを特徴とする。
【0011】
したがって、請求項1及び2に記載のクランクシャフトの高周波焼入れ方法及び高周波焼入れ装置では、一対のロボットアームによってクランクシャフトを焼入れの対象となるピンの軸心を回転中心として所定方向へ回転させるため、高周波焼入れ時に加熱コイルを固定することが可能になる。
請求項3に記載の高周波焼入れ装置では、ティーチング手段を用いて一対のロボットアームの基準姿勢をロボット制御装置に教示させると、クランクシャフトを焼入れの対象となるピンの軸心を回転中心として所定角度位相づつ回転させた時の各段階における一対のロボットアームの各姿勢が演算教示手段によってロボット制御装置に自動的に教示される。
請求項4に記載の高周波焼入れ装置では、クランクシャフトを実際に回転させた時のピンの変位に基づいて一対のロボットアームの動作プログラムが補正される。
請求項5に記載の高周波焼入れ装置では、高周波焼入れ時における加熱コイルの変位に基づいて一対のロボットアームの動作が修正される。
【発明の効果】
【0012】
設備の小型化と汎用化とを両立することが可能なクランクシャフトの高周波焼入れ方法及び高周波焼入れ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の一実施形態を図1〜図8に基づいて説明する。図1〜4に示されるように、本高周波焼入れ装置1では、一対のロボットアーム2,3の各ハンド部8,9によってクランクシャフト4の両端部を把持し、該クランクシャフト4における焼入れの対象となるピン5を加熱コイル6に挿入し、該ピン5と加熱コイル6とのギャップを該加熱コイル6に配設された各ガイドチップ11によって一定に保持しながら、該クランクシャフト4を該ピン5の軸心C1を回転中心として所定方向へ回転させることにより、該ピン5が高周波焼入れされる。これにより、本高周波焼入れ装置1では、高周波焼入れ時に加熱コイル6を固定することが可能になり、従来の高周波焼入れ装置における追従機構(ピン5の動作に加熱コイル6及びトランス7を追従させる機構)を廃止することができ、設備が小型化、且つ汎用化される構造になっている。なお、以下、クランクシャフト4が焼入れの対象となるピン5の軸心C1を回転中心として回転することを、クランクシャフト4がピン中心C1で回転すると称する。
【0014】
上記各ロボットアーム2,3には、6軸多関節型の汎用ロボットが用いられ、該一対のロボットアーム2,3は単一のロボットコントローラ17(ロボット制御装置)によって制御される。また、図5に示されるように、本高周波焼入れ装置1は、一方のロボットアーム2のハンド部8に、環状に配設された3本の把持爪によってクランクシャフト4の一端を把持するチャック機構が構成されると共に、図6に示されるように、他方のロボットアーム3のハンド部9に、該クランクシャフト4の他端を支持するテールストック式(差込み式)のサポート機構が構成される。そして、本高周波焼入れ装置1では、クランクシャフト4が各ロボットアーム2,3の各ハンド部8,9によって把持された状態で(ハンド部9はサポートのみ)、各ロボットアーム2,3の手首を旋回させると、該クランクシャフト4がジャーナル中心C0(図3参照)を回転中心に所定方向へ回転される。この状態で、ロボットコントローラ17の制御に基づいて、各ハンド部8,9を円軌道で動作させることにより、図4に示されるように、該クランクシャフト4がピン中心C1で回転される構造になっている。
【0015】
図3に示されるように、本高周波焼入れ装置1は、上記加熱コイル6に、クランクシャフト4のピン5が挿入されるピン挿入部10が設けられ、該ピン挿入部10に、セラミックスによって構成された3個の上記ガイドチップ11が配設される。そして、該ピン挿入部10に挿入されたピン5の外周面に各ガイドチップ11を接触させることにより、該ピン5とコイル本体との間に一定のギャップが確保される構造になっている。図7及び図8に示されるように、本高周波焼入れ装置1は、上記加熱コイル6がトランス7に脱着可能に設けられてコイルユニットが構成されており、該コイルユニットがフローティング機構を介してコイルユニット支持台12に取付けられる。また、上記フローティング機構は、トランス7が固定されるベースプレート13が、ベアリングユニット16を介して中間プレート15に支持されると共に、該中間プレート15が、直動ガイド14を介して上記コイルユニット支持台12に支持される。これにより、本高周波焼入れ装置1では、加熱コイル6が、一対のロボットアーム2,3によって把持されたクランクシャフト4に対して、Y方向(図7における左右方向)及びZ方向(図7における上下方向)へ変位可能な構造になっている。
【0016】
なお、上記フローティング機構は、ばねのばね力によって、加熱コイル6がY方向及びZ方向の各変位可能範囲の中間位置に保持される。また、本高周波焼入れ装置1は、上記フローティング機構に、加熱コイル6のY方向及びZ方向への変位を検出する各変位センサ(第2の測定手段)を備え、クランクシャフト4をピン中心C1で回転させた時の各変位センサの検出結果に基づいて、ロボットコントローラ17の動作プログラムがオンラインで補正されて一対のロボットアーム2,3の動作が修正される構造(動作修正手段)になっている。ここで、図1に示される符号18は高周波発振器、符号19は、加熱コイル6並びに各ハンド部8,9と共に、クランクシャフト4の形状(種類)に応じて選択される焼入れ液ジャケットである。
【0017】
次に、一対のロボットアーム2,3の円軌道動作を、該一対のロボットアーム2,3(ロボットコントローラ17)に教示させる方法を説明する。まず、一対のロボットアーム2,3の相互のX軸を同一直線上に設定し、一方のロボットアーム2のハンド部8(チャック機構)と他方のロボットアーム3のハンド部9(サポート機構)とを心出し、次に、該一対のロボットアーム2,3によって、治具に載置されたクランクシャフト4の両端部を把持する。そして、該クランクシャフト4を、焼入れの対象となるピン5の軸心C1の回りに基準角度位相に位置決めさせる(図3参照)と共に、該クランクシャフト4の焼入れの対象となるピン5を加熱コイル6のピン挿入部10に挿入し、該ピン5が各ガイドチップ11に接触させる。そして、この状態、即ち一対のロボットアーム2,3が基準姿勢の状態におけるジャーナル中心C0の位置を、ロボットコントローラ17(ロボット制御装置)のティーチング機能(ティーチング手段)を用いて、一対のロボットアーム2,3(ロボットコントローラ17)に教示点P0として教示する。
【0018】
次に、図4に示されるように、基準角度位相にあるジャーナル中心C0(教示点P0)を基点として、クランクシャフト4をピン中心C1で回転させた時の、該ジャーナル中心C0の22.5°の角度位相毎の各位置(各教示点P1〜P15)を、CAEシステム(演算教示手段)を用いてCAE教示、即ち演算処理によって割出して一対のロボットアーム2,3(ロボットコントローラ17)に教示させる。次に、これにより得られた一対のロボットアーム2,3の動作プログラムを実行して実際にクランクシャフト4をピン中心C1で回転させる。そして、この時の焼入れの対象となるピン5(軸心C1)のY方向及びZ方向の変位を各変位センサ(第1の変位測定手段)によって測定し、該測定結果に基づいて動作プログラムを補正する(プログラム補正手段)。
【0019】
ここで、一対のロボットアーム2,3は教示点P0〜P15のリンク補間によって円軌道で動作することから、クランクシャフト4を比較的速い速度で回転させた場合、その軌道が正規の円軌道に対して内回りになる傾向にあるが、本高周波焼入れ装置1では、動作プログラムを補正して一対のロボットアーム2,3の内回り動作を修正することにより、一対のロボットアーム2,3の円軌道の動作精度、延いてはクランクシャフト4のピン中心C1での回転精度が確保される構造になっている。なお、クランクシャフト4をピン中心C1で回転させる時の回転方向は、より高い回転精度が得られる方向に適宜設定すればよい。
【0020】
次に、本高周波焼入れ装置1を用いた高周波焼入れ方法を説明する。まず、一対のロボットアーム2,3によって、治具に載置されたクランクシャフト4の両端部を把持し、該クランクシャフト4の焼入れの対象となるピン5を加熱コイル6のピン挿入部10に挿入して該ピン5を各ガイドチップ11に接触させる。なお、この状態では、一対のロボットアーム2,3が基準姿勢となる。この状態から、該クランクシャフト4をピン中心C1で所定方向へ回転させながら、該ピン5を加熱コイル6によって加熱し、該クランクシャフト4を所定回転数(または所定時間)回転させることで該ピン5の高周波焼入れが完了する。ここで、高周波焼入れ時におけるクランクシャフト4の熱膨張の影響で、ピン中心C1(焼入れの対象となるピン5の軸心C1)が半径方向へ変位するが、本高周波焼入れ装置1では、フローティング機構によって、該ピン中心C1の変位に応じて加熱コイル6(コイルユニット)を変位させることにより、該ピン中心C1の変位が吸収される。
【0021】
また、高周波焼入れ時におけるクランクシャフト4の熱膨張によるピン中心C1の変位に伴う加熱コイル6のY方向及びZ方向への変位が、フローティング機構の各変位センサ(第2の変位測定手段)によって測定され、該各変位センサの検出結果に基づいて、ロボットコントローラ17の動作プログラムがオンラインで補正されて一対のロボットアーム2,3の動作(円軌道の動作)が修正される(動作修正手段)。なお、クランクシャフト4に複数本のピン5がある場合、各ピン5の高周波焼入れが順次行われる。
【0022】
この実施形態では以下の効果を奏する。
本高周波焼入れ装置1では、一対の多関節型ロボットアーム2,3によってクランクシャフト4の両端部を把持し、該クランクシャフト4における焼入れの対象となるピン5を加熱コイル6に挿入し、この状態で、該ピン5と加熱コイル6とのギャップをガイドチップ11によって一定に保持しながら、該クランクシャフト4をピン中心C1で所定方向へ回転させることにより、当該ピン5の高周波焼入れが行われる。
したがって、本高周波焼入れ装置1では、クランクシャフト4をピン中心C1で回転させるので、従来の高周波焼入れ装置のように、ジャーナル中心C0を回転中心として円軌道で回転するピン5に加熱コイル6を追従させなくて済む。これにより、高周波焼入れ時に加熱コイル6を固定することができ、従来の高周波焼入れ装置における追従機構を廃止することで、設備が大幅に小型化される(従来の高周波焼入れ装置と比較して、体積比で約1/5)。また、加熱コイル6等の段替え部品を交換するだけで複数種のクランクシャフト4に対応させることが可能になり、汎用性が向上して設備コスト、延いては製造コストを削減することができる。
また、本高周波焼入れ装置1は、追従機構を備えた従来の高周波焼入れ装置と比較して、クランクシャフト4のピン5に対するコイル押付力を、ピン5と加熱コイル6とのギャップを一定に保持することが可能な最小押付力に設定することができる。これにより、加熱コイル6の剛性を従来よりも低く設定することが可能になり、設備コストを削減することができる。さらに、ガイドチップ11の磨耗が減少してランニングコストが削減されると共に加熱コイル6の寿命を延ばすことができる。また、高周波焼入れ時のクランクシャフト4の回転速度を高めることが可能になり、工程コスト(製造コスト)を削減することができる。
【0023】
本高周波焼入れ装置1では、一対のロボットアーム2,3が基準姿勢の状態(クランクシャフト4における焼入れの対象となるピン5が加熱コイル6の各ガイドチップ11に接触し、且つ該ピン5が軸心C1の回りに基準角度位相に位置決めされた状態)を、ロボットコントローラ17(ロボット制御装置)のティーチング機能(ティーチング手段)を用いて、教示点P0として一対のロボットアーム2,3(ロボットコントローラ17)に教示し、該教示点P0を基点として、クランクシャフト4をピン中心C1で回転させた時の、各角度位相における各位置(各教示点P1〜P15)を、CAEシステム(演算教示手段)を用いてロボットコントローラ17にCAE教示する(各教示点P1〜P15を演算処理によって割出してロボットコントローラ17に教示する)。
したがって、本高周波焼入れ装置1では、全ての教示点(各教示点P0〜P15)をロボットコントローラ17のティーチング機能を用いて一対のロボットアーム2,3(ロボットコントローラ17)に教示する場合と比較して、教示精度が高められると共に教示作業を効率化することができる。
【0024】
また、本高周波焼入れ装置1では、CAE教示によって得られた動作プログラムを実行し、クランクシャフト4をピン中心C1で回転させて該クランクシャフト4の回転時におけるピン5の変位(Y方向及びZ方向)を各変位センサ(第1の変位測定手段)によって測定し、該測定結果に基づいて動作プログラムを補正する(プログラム補正手段)ので、一対のロボットアーム2,3を円軌道で動作させた時の内回り動作が修正され、クランクシャフト4の回転精度が確保される。
【0025】
本高周波焼入れ装置1では、フローティング機構によって加熱コイル6(コイルユニット)を、クランクシャフト4の焼入れの対象となるピン5に対して変位可能に構成したので、高周波焼入れ時におけるクランクシャフト4の熱膨張によるピン中心C1の半径方向への変位を、該ピン中心C1の変位に応じて加熱コイル6を変位させることで吸収することができる。
また、本高周波焼入れ装置1では、フローティング機構による加熱コイル6(トランス7を含むコイルユニット)の変位が該フローティング機構に設けた各変位センサ(第2の変位測定手段)によって測定され、該各変位センサの検出結果に基づいてロボットコントローラ17の動作プログラムがオンラインで補正される(動作修正手段)。これにより、高周波焼入れ時にクランクシャフト4の熱膨張によってピン中心C1が半径方向へ変位した場合であっても、一対のロボットアーム2,3の動作(円軌道の動作)が修正されてクランクシャフト4の回転精度が確保される。
【0026】
なお、実施形態は上記に限定されるものではなく、例えば次のように構成してもよい。
本高周波焼入れ装置1を用いて、クランクシャフト4のジャーナル部を高周波焼入れしてもよい。この場合、クランクシャフト4はジャーナル中心C0で回転させればよい。
本高周波焼入れ装置1では、基準角度位相にあるジャーナル中心C0(教示点P0)を基点として、クランクシャフト4をピン中心C1で回転させた時の該ジャーナル中心C0の22.5°の角度位相毎の各位置(各教示点P1〜P15)をCAEシステムを用いて一対のロボットアーム2,3(ロボットコントローラ17)にCAE教示させたが、教示点の数は必要に応じて適宜設定すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本高周波焼入れ装置の全体図である。
【図2】本高周波焼入れ装置の説明図で、一対のロボットアームの相互のX軸が同一直線上に設定された状態を示す図である。
【図3】本高周波焼入れ装置の説明図で、基準角度位相に位置決めされたピンが加熱コイルの各ガイドチップに接触された状態を示す図である。
【図4】本高周波焼入れ装置の説明図で、図3に示される状態からクランクシャフトをピン中心で回転させた時の、各教示点の位置を示す図である。
【図5】ロボットアームのチャック機構を示す図である。
【図6】ロボットアームのサポート機構を示す図である。
【図7】本高周波焼入れ装置のコイルユニット及びフローティング機構を示す側面図である。
【図8】本高周波焼入れ装置のコイルユニット及びフローティング機構を示す正面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 高周波焼入れ装置、2,3 ロボットアーム、4 クランクシャフト、5 ピン、6 加熱コイル、8,9 ハンド部、11 ガイドチップ、17 ロボットコントローラ(ロボット制御装置)
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成18年6月23日(2006.6.23)
【代理人】 【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫

【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫

【識別番号】100109690
【弁理士】
【氏名又は名称】小野塚 薫

【識別番号】100135035
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 明夫

【識別番号】100131266
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼ 昌宏

【識別番号】100093193
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 壽夫


【公開番号】 特開2008−1956(P2008−1956A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−174005(P2006−174005)