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【発明の名称】 複数の肝障害マーカーを指標とする肝障害の評価方法
【発明者】 【氏名】鎌田 陽子
【氏名】藤居 亙
【課題】高い精度で肝障害を評価する手段を提供する。

【解決手段】血液試料中のα−GST、OCT、GLDH及びARGのレベルは何れも肝障害に対して高い感度を有するが、単独では肝障害マーカーとして機能できない時期が存在すること、及びこれらの酵素を適切に組み合わせることにより、時期に左右されずに、これら酵素の肝障害に対する高い感度を生かせることを見出した。そのような組合せは、具体的にはα−GSTとOCT又はGLDHである。好ましくはこの組合せに更にARGを組み合わせて用いる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物から採取された血液由来の試料中の少なくともα−グルタチオンSトランスフェラーゼ(α−GST)のレベルとオルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ(OCT)又はグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GLDH)のレベルとを測定することを特徴とする、肝障害の程度を評価するための方法。
【請求項2】
さらに、前記試料中のアルギナーゼ(ARG)のレベルを測定することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
肝障害が急性肝障害又は薬物性肝障害である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
動物から採取された血液由来の試料中の少なくともα−GSTのレベルとOCT又はGLDHのレベルとを測定するための手段を含むことを特徴とする、肝障害の程度を評価するためのキット。
【請求項5】
さらに、前記試料中のARGのレベルを測定するための手段を含むことを特徴とする、請求項4に記載のキット。
【請求項6】
被検物質を与えられた動物から採取された血液由来の試料中の少なくともα−GSTのレベルとOCT又はGLDHのレベルとを測定することを特徴とする、被検物質の肝障害惹起作用を評価する方法。
【請求項7】
さらに、前記試料中のARGのレベルを測定することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
マーカーとして、少なくともα−GSTとOCT又はGLDHとを組み合わせて用いることを特徴とする、肝障害評価の精度を向上させる方法。
【請求項9】
さらに、マーカーとしてARGを用いることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の特定の酵素を肝障害マーカーとして用いる、肝障害の程度を評価するための方法及びキット、並びにそれら特定の酵素を肝障害マーカーとして用いることにより肝障害の評価の精度を向上させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲食品や医薬品のように直接生体内に取り込まれる物質の安全性を確保することは極めて重要である。従って、飲食品や医薬品の開発においては、それら自体又はその原料を、肝障害性試験を含む多くの安全性試験に付す必要がある。
【0003】
肝臓の障害をモニタリングするためのバイオマーカーは数多く存在する。中でも、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST:この酵素はGOTとも称される)及びアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT:この酵素はGPTとも称される)は、臨床及び研究の場において肝障害のマーカーとして広く使用されており、測定されたそれらの酵素活性が種々の肝障害の指標として利用されている(非特許文献1)。
【0004】
しかしながら、いくつかの種類の肝臓疾患においてはこれら酵素の活性は正常レベルでしかなく、肝細胞の損傷が生じていないという誤った判断につながり得る。さらに、これらの酵素は肝臓特異的に発現するものでなく、心臓、筋肉及び腎臓のような肝臓以外の他の器官にも発現する。従って、肝臓自体に障害がなくとも、それら酵素のレベルが異常に高い値を示すことがあり得る。
【0005】
従って、肝障害を精度よく評価するために、より信頼性の高い肝障害マーカー又は肝障害評価方法が必要とされていた。
【非特許文献1】Clinica Chimica Acta 375 (2007), 63-68
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、高い精度で肝障害を評価する手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、信頼性の高い肝障害マーカー又は肝障害評価方法を見出すべく、鋭意研究を行った。具体的には、肝障害モデルにおける種々の酵素の濃度について時間的経過を調査し、特定の複数の酵素を組み合わせて用いると高い精度で肝障害を評価できることを明らかとし、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明は、
(1)動物から採取された血液由来の試料中の少なくともα−GSTのレベルとOCT又はGLDHのレベルとを測定することを特徴とする、肝障害の程度を評価するための方法;
(2)さらに、前記試料中のARGのレベルを測定することを特徴とする、(1)に記載の方法;
(3)肝障害が急性肝障害又は薬物性肝障害である、(1)又は(2)に記載の方法;
(4)動物から採取された血液由来の試料中の少なくともα−GSTのレベルとOCT又はGLDHのレベルとを測定するための手段を含むことを特徴とする、肝障害の程度を評価するためのキット;
(5)さらに、前記試料中のARGのレベルを測定するための手段を含むことを特徴とする、(4)に記載のキット;
(6)肝障害が急性肝障害又は薬物性肝障害である、(4)又は(5)に記載の方法;
(7)被検物質を与えられた動物から採取された血液由来の試料中の少なくともα−GSTのレベルとOCT又はGLDHのレベルとを測定することを特徴とする、被検物質の肝障害惹起作用を評価する方法;
(8)さらに、前記試料中のARGのレベルを測定することを特徴とする、(7)に記載の方法;
(9)肝障害が急性肝障害又は薬物性肝障害である、(7)又は(8)に記載の方法;
(10)マーカーとして、少なくともα−GSTとOCT又はGLDHとを組み合わせて用いることを特徴とする、肝障害評価の精度を向上させる方法;
(11)さらに、マーカーとしてARGを用いることを特徴とする、請求項10に記載の方法;
(12)肝障害が急性肝障害又は薬物性肝障害である、(10)又は(11)に記載の方法;
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、現在広く用いられている評価方法では捕捉できない肝障害を高い精度で捕えることが可能となる。従って、例えば飲食品又は医薬品開発における安全性試験に本発明を用いることによって、肝障害リスクを有する素材を精度良く見極めることが可能となる。上市後の肝障害発生を未然に防ぐことは重要であるため、当該分野に対する本発明の技術的貢献は大きい。
【0010】
また、高い精度で肝障害を見出すことは、早期治療又は処置につながるため、臨床分野においても本発明は有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、肝障害のマーカーとしてα−GSTとOCT又はGLDHとの組合せを、場合によってARGと共に用いる。
肝障害
本明細書において用いられる「肝障害」との用語は、肝臓に組織学的又は機能的な異常が生じた状態を意味し、生じる原因に基づいて、薬物性肝障害、アルコール性肝障害、ウィルス性肝障害等に分類される。さらに、これら肝障害は、それぞれ急性肝障害と慢性肝障害とに分類される。
【0012】
マーカーの組合せ
グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)には4つのクラス(α、μ、θ及びπ)が含まれ、これらは、薬物や内因性の種々の求核性化合物にグルタチオンを転移させ、グルタチオン抱合を生じさせる。このうちのα−グルタチオンS−トランスフェラーゼ(α−GST)は、肝臓特異性が高い酵素である。
【0013】
本発明者は、後述される実施例に示されるように、この酵素の血中レベルが肝障害性物質投与後に非常に早期に(ラットにおいては投与の約4時間後に)著しく上昇するが、その後にはAST又はALTと同程度まで低下することを確認した。従って、α−GSTは、AST又はALTよりも肝障害の発生を敏感に示すが、この酵素単独では肝障害の程度を十分に反映することができない時期が存在すると考えられる。
【0014】
オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ(OCT)は、尿素生成系の一酵素であり、オルニチンとカルバモイルリン酸とからシトルリンとリン酸とを生成する反応を触媒する。この酵素は、もっぱら肝臓細胞のミトコンドリアに発現する、肝臓特異的なマーカーであることが知られている。
【0015】
後述される実施例に示されるように、本発明者は、この酵素の血中レベルが、肝障害性物質を投与してから一定時間後に(ラットにおいては約24時間後に)極めて高いレベルまで上昇するが、その前の時点ではAST又はALTと比較して必ずしも高いものではないことを見出した。従って、OCTも、AST又はALTよりも敏感な肝障害マーカーとなりうるが、この酵素単独では肝障害マーカーとして十分に機能できない時期が存在すると考えられる。
【0016】
グルタミン酸脱水素酵素(GLDH)は、グルタミン酸を酸化的脱アミノ化して2−オキソグルタル酸に変換する反応を触媒する。そしてこの酵素は、肝臓中に圧倒的に多く含まれていることが知られている。
【0017】
後述される実施例に示されているように、この酵素の血中レベルは、肝障害性物質投与後一定時間後(ラットにおいては約24時間後)に著しく上昇するが、その前の時点での血中レベルは、AST又はALTと比較して高いものでないことを確認した。従って、この酵素も、AST又はALTよりも感度の高い肝障害マーカーとなりうるが、この酵素単独では肝障害マーカーとして十分に機能できない時期が存在すると考えられる。
【0018】
アルギナーゼ(ARG)は、L−アルギニンを加水分解し尿素とオルニチンを生成する反応を触媒する、肝細胞における尿素回路を構成する酵素の一つである。そして、本酵素の殆どは肝臓に局在していることが知られている。
【0019】
後述する実施例に示されているように、ARGの血中濃度は肝障害時に著しく上昇することを確認した。しかしながら、当該酵素が高い血中濃度を示す時期は、試験により変動し得る。従って、ARGは感度の高い肝障害マーカーとなりうるが、この酵素を単独でマーカーとして用いる場合には、肝障害を十分に検出できない時期が存在し得る。
【0020】
このように、α−GST、OCT、GLDH、及びARGは、いずれも肝障害に対して高い感度を有するが、単独では肝障害マーカーとして機能できない時期が存在する。本発明者は、このようなα−GST、OCT、GLDH、及びARGの血中濃度の経時的変化に関する独自の実験結果に基づいて、これら酵素を適切に組み合わせることにより、時期に左右されることなくこれら酵素の肝障害に対する高い感度を生かすことができることを見出した。
【0021】
そのような組合せは、具体的には、α−GSTとOCT又はGLDHである。好ましくは、その組合せにさらにARGを組み合わせて用いる。
酵素レベルの測定及び肝障害の評価
本発明においては、動物、特にヒト及び非ヒト哺乳動物(マウス、ラット、モルモット、ハムスター及びスナネズミのような齧歯類、ネコ、イヌ、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、サルなどを含む)を含む哺乳動物から得られる血液由来の試料中に存在する各々の酵素のレベルを測定する。測定される試料は、例えば、全血、血清、血漿等である。
【0022】
試料中の酵素のレベルを測定するための種々の方法が知られているが、本発明においては、特に限定されることなくそれら公知の方法のいずれを用いてもよい。或いは、今後開発される如何なる酵素測定方法を用いてもよい。典型的な方法は、酵素活性を測定する方法、酵素分子に対する抗体を利用する免疫学的方法(例えば、ELISA、イムノクロマトグラフィー法)である。特に、イムノクロマトグラフィー法は、特殊な技術の習得が必要とされず、この方法によれば、簡便、迅速に標的マーカーを定性的にもしくは半定量的に測定することが可能である。したがって、イムノクロマトグラフィー法は特に有用である。
【0023】
実際に、本発明においてマーカーとして用いられる酵素を測定するための具体的な操作がいくつかの公知文献に記載されている。例えば、特表平11−503235には、α−GSTの定量のための免疫学的方法が詳細に記載されている。Clinica Chimica Acta, 368 (2006) 125-130 中には、OCTの定量のためのELISA法が記載されている。また
、OCTに関しては、酵素活性を利用した定量方法も知られている(特開昭62−232398)。GLDHの測定法に関しては、酵素活性を測定するための市販の測定キットであるランドックス社のGL441(Randox Laboratories Ltd., United Kingdom) の添付
書類に説明が記載されている。ARGに関しては、ELISAを利用した方法が非特許文献1に記載されている。また、ARGを定量するための免疫学的方法は、WO96/28733にも記載されている。これらの文献の記載に基づけば、本発明においてマーカーとして用いられる酵素の測定を容易に行うことができる。
【0024】
測定の結果、被検試料中の標的酵素のレベルを、対照試料中の標的酵素のレベルと比較することにより、肝障害の程度を評価することができる。被検試料中の少なくとも一つの標的酵素のレベルが対照試料と比較して著しく増加している場合には、当該試料が由来する動物の肝臓が障害を有するものと判断される。肝障害の程度の評価には、このように肝障害の有無を評価することも含まれる。動物が肝障害を有することを判断するための基準となり得るレベルは、例えば、ラットにおいては、α−GST、OCT、GLDH、ARGについて、それぞれ、対照における血中濃度の約2.5倍以上(好ましくは3.0倍以上)、約1.6倍以上(好ましくは5.0倍以上)、約3.8倍以上(好ましくは5.7倍以上)、約2.3倍以上(好ましくは5.4倍以上)である。
【0025】
また、被検物質を動物に投与した後に採取される血液由来の試料中の各マーカーレベルを測定して肝障害の程度を評価することは、当該被検物質の肝障害惹起作用の評価につながる。従って、本発明の方法は、物質の肝障害惹起作用を評価する方法として用いることもできる。
【0026】
キット
本発明に用いられるキットは、α−GSTのレベルとOCT又はGLDHのレベルとを測定するための試薬又は道具のような手段を少なくとも含む。当該キットは、さらにARGのレベルを測定するための手段を含んでもよい。
【0027】
例えば、酵素の定量のために酵素活性を測定する場合には、本発明のキットには、標的酵素が触媒する反応の基質及び緩衝剤等の試薬が含まれる。そのようなキットの具体例は、GLDHの測定のためのランドックス社のGL441である。免疫学的測定法、例えばELISA法を用いる場合には、本発明のキットには、標的酵素に対する固相化された抗体(例えば、ポリクローナル又はモノクローナル抗体でコーティングされたプレート等の支持体)、西洋ワサビペルオキシダーゼなどの標識酵素が結合した別の抗体、及び当該標識酵素の基質等が含まれる。そのようなキットの具体例は、α−GSTの測定のためのBiotrin社のBiotrin Rat Alpha GST EIAである。また、イムノクロマトグラフィー法を用いる場合には、当該キットには、標的酵素に対する特異的な抗体が固層化されたメンブレン等が含まれる。
【0028】
本発明においては、一つの酵素の測定のためのキットを複数組み合わせて用いてもよいが、複数の酵素を測定することができる一つ以上のキットを用いてもよい。例えば、イムノクロマトグラフィー法においては、複数の抗体が固定された別々の複数の固層(支持体)を用いてもよいし、複数の抗体が固定された1つの固層(支持体)を用いてもよい。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はそれら実施例に限定されるものではない。
実施例1 アセトアミノフェン(APAP)投与による急性薬物性肝障害の評価
SD系雄性ラット(6週齢)に肝臓小葉中心性の障害薬物であるアセトアミノフェン(溶媒
:0.5%CMC)を500、1000、又は1500mg/kg,p.o.投与した。また、対照群には溶媒を単回投与した。
【0030】
投与の4時間後に覚醒下で尾静脈から採血し、遠心処理にて血清を回収した。また、24時間後にはネンブタール麻酔下で腹大動脈から採血し、遠心処理にて血清を回収した。薬物投与時〜投与後24時間後の間は、ラットを絶食状態にした。
【0031】
これら血清を用いて、一般的に肝障害のマーカーとして知られているAST、ALTのレベルと、新規肝障害マーカー候補のα−GST、OCT、GLDH及びARGのレベルを測定した。AST、ALT及びGLDHのレベルは、酵素活性を測定することにより測定した。具体的には、AST及びALTの酵素活性に関しては、それぞれ、測定キットLタイプワコー GOT・J2(和光純薬工業株式会社)、Lタイプワコー GPT・J2(和光純薬株式会社)を使用して、AST又はALTが関与する一連の反応により生成したNADの濃度を日立自動分析装置(7070型)で測定した(反応条件及び測定条件は、測定キットの添付文書の記載に従った)。GLDHに関しては、ランドックス社のキットGL441を使用して、GLDHが関与する反応により生成したNADの濃度を測定した(反応条件及び測定条件は、測定キットの添付文書の記載に従った)。α−GST、ARG、及びOCTのレベルは、酵素免疫測定法により測定した。具体的には、α−GSTに関しては、測定キットBiotrin Rat Alpha GST EIA(Biotrin International Ltd., Ireland)を使用して定量した(詳細な実験操作及び測定条件は、キットの添付書類の記載に従った)。ARGに関しては、文献Clinical Chimica Acta 375(2007)63-68に従い、OCTに関しては、文献Clinical Chimica Acta 368(2006)125-130に従った方法で定量した。つまり、いずれも、標的酵素に対する抗体がコーティングされたプレート;酵素HRPと結合した、標的酵素に対するモノクローナルIgGのF(ab’)2フラクション;及びHRPの基質(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジヂン)等を用いて定量した。
【0032】
各時点(4及び24時間)での対照群(APAP未投与群)のAST、ALT、α-GST、OCT、GLDH、ARGの平均レベルを1として、対応する時点において試験群が示した酵素レベルの相対値(平均値)を求めた。APAP投与4時間後のGLDHは採血量の不足のために測定できなかった。結果を表1に示す。
【0033】
【表1】


【0034】
表1の結果より、α−GST、OCT、GLDH、ARGは、いずれも、従来用いられてきた指標(AST、ALT)よりも高い値まで肝障害により血中レベルが上昇することが明らかとなった。
また、APAP投与の24時間後の解剖学的検査において、1000mg/kg以上の群の肝臓に異常所見が認められた。従って、これら酵素を利用することにより、従来よりも高い感度で肝障害を検出又は評価することができると考えられる。
【0035】
中でも、α−GSTの血中濃度は、ASTやALTよりも早期に(4時間後)高いレベルまで上昇した。従って、α−GSTをマーカーとして用いると、ASTやALTをマーカーとして用いた場合には検出できない肝障害を検出することが可能となると考えられる。
【0036】
実施例2 グルタチオン枯渇剤(BSO)とアリルアルコール(AA)投与による急性薬物
性肝障害の評価
SD系雄性ラット(7週齢)にグルタチオンの枯渇を惹起するL-Buthionine(S,R)−sulfoximine:(BSO, 400mg/kg,i.p.)を投与し、その1時間後に肝障害性物質であるアリルアルコール(AA)を単回(10,20,又は30mg/kg,p.o.)投与した。
【0037】
このようにグルタチオンを枯渇させることにより、グルタチオンの解毒作用の影響を除くことができる。
実施例1と同様の操作により血液をラットから採取し、得られた血清について、AST、ALT、α−GST、OCT、GLDH及びARGのレベルを測定した。測定に用いたキット及び方法は、実施例1に記載したものと同様であった(BSOの影響をより強く発現させるために、薬物投与の4時間後までラットを絶食させた)。
【0038】
以下に、対照群(AA未投与群)における AST、ALT、α-GST、OCT、GLDH、ARGの平均値を1とした、それぞれの酵素レベルの相対値を示した。
【0039】
【表2】


【0040】
本実施例の結果は、表1のものと類似していた。即ち、α−GST、OCT、GLDH 、ARGは、いずれも、従来用いられてきた指標(AST、ALT)よりも高いレベルまで血中濃度が上昇し、中でも、α−GSTの血中レベルは、ASTやALTよりも早期(4時間後)に高い値まで上昇した。しかしながら、ARGの血中レベルは、早期(4時間)に上昇しており、この結果は実施例1の結果と異なっていた。
【0041】
尚、AA投与の24時間後の解剖学的検査において、20mg/kg以上の群の肝臓に異常所見が認められた。
実施例1及び2の結果より、α−GSTとOCT又はGLDHとを組み合わせて用いる(場合によってさらにARGを組み合わせる)ことにより、ASTやALTを用いる場合よりも高い精度で肝障害を評価できるものと考えられる。
【0042】
実施例3 飲料の評価例
飲料水(水道水)30容量部、60容量部、100容量部の各々蒸留水とを混合して、それぞ
れ100容量部の水を調製し、SD系雄性ラット(6週齢)に15ml/kg,p.o.単回投与した。対照群には、蒸留水を15ml/kg,p.o.投与した。
【0043】
実施例1と同様の操作により血液をラットから採取し、得られた血清について、AST、ALT、α−GST、OCT、GLDH及びARGのレベルを測定した。測定に用いたキット及び方法は、実施例1に記載したものと同様であった。
【0044】
その結果、どのマーカーのレベルも有意に上昇しなかった。従って、水道水は急性的な薬物性肝障害を有さないことが確認された。

特許の図
【出願人】 【識別番号】000001904
【氏名又は名称】サントリー株式会社
【出願日】 平成20年4月24日(2008.4.24)
【代理人】 【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎

【識別番号】100089705
【弁理士】
【氏名又は名称】社本 一夫

【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰

【識別番号】100080137
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 昭男

【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行

【識別番号】100129458
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 剛
【公開番号】 特開2008−289474(P2008−289474A)
【公開日】 平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願番号】 特願2008−113580(P2008−113580)