トップ :: C 化学 冶金 :: C12 生化学;ビ−ル;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学

【発明の名称】 アラキドン酸含有脂質並びにジホモ−γ−リノレン酸含有脂質の製造方法
【発明者】 【氏名】秋元 健吾

【氏名】東山 堅一

【氏名】清水 昌

【要約】 【課題】全脂肪酸に対するアラキドン酸又はジホモ−γ−リノレン酸の比率が上昇した、アラキドン酸又はジホモ−γ−リノレン酸含有脂質の新規な製造方法。

【解決手段】モルティエレラ (Mortierella ) 属などに属しアラキドン酸生産能を有する微生物に変異処理を施して得られる、ω3不飽和化活性の低下または欠失した変異株を、培地中で培養開始から、又は最適生育温度で培養した後に、最適生育温度より低い温度で培養し、その培養物からアラキドン酸を含有する脂質を採取することを特徴とするアラキドン酸含有脂質の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モルティエレラ(Mortierella )属、コニディオボラス(Conidiobolus)属、フィチウム(Pythium )属、フィトフトラ(Phytophthora)属、ペニシリューム(Penicillium )属、クラドスポリューム(Cladosporium)属、ムコール(Mucor )属、フザリューム(Fusarium)属、アスペルギルス(Aspergillus )属、ロードトルラ(Rhodotorula )属、エントモフトラ(Entomophthora )属、エキノスポランジウム(Echinosporangium)属、サプロレグニア(Saprolegnia )属に属しアラキドン酸生産能を有する微生物に変異処理を施して得られるω3不飽和化活性の低下または欠失した変異株を、培地中で培養開始から、又は最適生育温度で培養した後に、最適生育温度より低い温度で培養し、その培養物からジホモ−γ−リノレン酸を含有する脂質を採取することを特徴とするジホモ−γ−リノレン酸含有脂質の製造方法。
【請求項2】
前記変異株が、さらにΔ5不飽和化活性の低下又は欠失した変異株である、請求項1記載のジホモ−γ−リノレン酸含有脂質の製造方法。
【請求項3】
上記変異株を、炭化水素、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸塩またはこれらを構成成分として含む油脂を添加した培地で培養するか、あるいは該変異株が培養されている培養液に炭化水素、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸塩またはこれらを構成成分として含む油脂を添加してさらに培養することを特徴とする請求項1又は2記載のジホモ−γ−リノレン酸含有脂質の製造方法。
【請求項4】
モルティエレラ(Mortierella )亜属に属する微生物に変異処理を施して得られるω3不飽和化活性の低下または欠失した変異株を、培地中で培養開始から、又は20〜40℃で培養した後に、20℃より低い温度で培養し、その培養物からジホモ−γ−リノレン酸を含有する脂質を採取することを特徴とするジホモ−γ−リノレン酸含有脂質の製造方法。
【請求項5】
前記変異株が、さらにΔ5不飽和化活性の低下又は欠失した変異株である、請求項4記載のジホモ−γ−リノレン酸含有脂質の製造方法。
【請求項6】
上記変異株を、炭化水素、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸塩またはこれらを構成成分として含む油脂を添加した培地で培養するか、あるいは該変異株が培養されている培養液に炭化水素、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸塩またはこれらを構成成分として含む油脂を添加してさらに培養することを特徴とする請求項4又は5記載のジホモ−γ−リノレン酸含有脂質の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明はω3不飽和化活性の低下または欠失した変異株を用いて醗酵法により、アラキドン酸含有脂質を製造する方法、またはジホモ−γ−リノレン酸含有脂質を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アラキドン酸はドコサヘキサエン酸と同じく母乳中に含まれており、乳児の発育に役立つとの報告(「Advances in Polyunsaturated Fatty Acid Research 」, Elsevier Science Publishers, 1993, pp.261-264 )や、胎児の身長や脳の発育における重要性に関する報告(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90, 1073-1077 (1993), Lancet, 344, 1319-1322 (1994) )がなされ、母乳と調製粉乳の脂肪酸組成の大きな違いであるアラキドン酸及びドコサヘキサエン酸を調製粉乳に添加しようとする動きがある。
【0003】
また早産児の場合のアラキドン酸およびドコサヘキサエン酸の摂取量をそれぞれ60mg/kg/日および40mg/kg/日に、成熟児の場合のアラキドン酸およびドコサヘキサエン酸の摂取量をそれぞれ40mg/kg/日および20mg/kg/日にするようにとの勧告書もFAO/WHOより出されている。
そこでこれらの脂肪酸を大量に得る方法として、従来から微生物による生産方法が知られており、例えばモルティエレラ(Mortierella )属に属する微生物を使用して、安価な常用の培地を用いて、従来法より短い培養時間で、高収率で、しかも単純な工程でアラキドン酸を製造することができる方法が提供されている(特公平7−34752)。
【0004】
しかしながら、このような従来の製造方法では、アラキドン酸の全脂肪酸に占める割合に関しては、未だ満足いくものではない。すなわちアラキドン酸を含有する脂質を食品などに添加する場合、出来る限りアラキドン酸の含有率が高い方が、不必要な物質の添加を最小限に抑えられ、また該脂質の食品への添加量を最小限に抑えられるため、品質的にもコスト的にも好ましく、また該脂質からアラキドン酸エチルエステルを分離精製する場合にも、出来る限りアラキドン酸の含有率が高い方が簡便かつ低コストで高純度品を得ることができるため好ましい。
【0005】
脂質中のアラキドン酸の全脂肪酸に占める割合を高める方法として、いくつかの方法が知られている。例えば、モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina) を28℃の通常の通気攪拌培養で培養し、グルコースが完全に枯渇した状態で、さらに6日間培養を続けることで67.4%までアラキドン酸の割合を高めることに成功している(Appl. Microbial. Biotechnol, 31, 11-6 (1989)) 。しかし、この方法は、飢餓状態の菌が生命を維持するために菌体内のトリグリセリドの飽和度の低い脂肪酸をβ酸化しエネルギーに変換することを利用している。
【0006】
従ってアラキドン酸の総量には変化が無く、低不飽和度の脂肪酸が減少することによって、相対的にアラキドン酸の割合が高まっているに過ぎない。即ち、アラキドン酸を高含有率で含むトリグリセリドの生成量が上昇しているわけでなく、逆にβ酸化によりトリグリセリドの割合も低下していると考えられる。
【0007】
また一般に、アラキドン酸生産能を有する微生物は、最適生育温度よりも低い温度では、不飽和脂肪酸の不飽和度を高めることで細胞膜の流動性及び機能を維持し低温環境に適応しようとするため、Δ6不飽和化酵素やΔ5不飽和化酵素等の活性が高まり、アラキドン酸のような不飽和度の高い脂肪酸がより多く生成されることが知られている。従ってアラキドン酸の含有率を高めるためには低温で培養することが望ましい。
【0008】
この性質を利用した方法として、モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina) を20℃の通気攪拌培養で16日間培養し、71.2%までアラキドン酸の割合を高めることに成功している(「Industrial Applications of Single Cell Oils 」, American Oil Chemists' Society Champaign, 1992, pp.52-60) 。しかし、この方法では培養に時間がかかりすぎて工業生産には好ましくないばかりでなく、低温培養では、せっかく生産されたアラキドン酸の一部が、低温で働くω3不飽和化酵素(Biochem. Biophys. Res. Commun., 150, 335-341 (1988) )によってエイコサペンタエン酸に変換されてしまい、全脂肪酸に占めるアラキドン酸の割合が減少し、エイコサペンタエン酸の割合が増加してしまうことが知られている。
【0009】
例えば、モルティエレラ(Mortierella ) 属糸状菌を12℃で7週間培養した場合、ω3不飽和化酵素が活性化され、全脂肪酸に対するEPAの割合は2−20%に達し(J. Am.Oil Chem. Soc., 65, 1455-1459 (1988)、それに伴ってアラキドン酸の割合は低下する。これに対し、本発明のω3不飽和化酵素が低下あるいは欠損した株を用いることにより、アラキドン酸の脂質中の全脂肪酸に対する割合を50%以上、さらに変異を繰り返した場合には70%以上にも高めることができ、かつEPAの割合を0.5%以下に押さえることができる。
【0010】
本来、母乳中にはエイコサペンタエン酸はほとんど含まれておらず、最近の研究では未熟児の発育には不都合であることが明かとなった(「Advances in Polyunsaturated Fatty Acid Research 」, Elsevier Science Publishers, 1993, pp.261-264 )。したがって、エイコサペンタエン酸を全く含まない、あるいは含んでもごくわずかな、アラキドン酸の含有率の高い脂質を安価な常用の培地を用いて単純な工程で大量に製造する方法を開発することが強く望まれている。
【0011】
一方、ジホモ−γ−リノレン酸は、培養温度に関係なくΔ5不飽和化酵素によってアラキドン酸に変換されるが、ジホモ−γ−リノレン酸を醗酵法により安価に大量生産する方法として、Δ5不飽和化酵素の活性を阻害するような物質、例えばセサミン、エピセサミン、セサミノール、エピセサミノール等やクルクミン等を培地に添加して培養することや、アラキドン酸生産能を有する微生物に突然変異を誘発させΔ5不飽和化活性が低下又は欠損した変異株を用いて培養することが知られている(特開平1-243992、特開平3-72892、特開平3-49688、特開平5-91887号公報)。
【0012】
しかしながら、この場合もジホモ−γ−リノレン酸の含有率を高めようと最適生育温度よりも低い温度、例えば12℃で培養すると上述のω3不飽和化酵素が作用し、ジホモ−γ−リノレン酸の一部が8,11,14,17−エイコサテトラエン酸に変換されてしまうため、ジホモ−γ−リノレン酸の割合が減少し、8,11,14,17−エイコサテトラエン酸の割合が増加してしまうことが懸念される。したがって、ジホモ−γ−リノレン酸の含有率の高い脂質を安価な常用の培地を用いて単純な工程で大量に製造する方法を開発することが強く望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って本発明は、アラキドン酸の含有率が高く、エイコサペンタエン酸を全く含まないあるいは含んでもごくわずかな、アラキドン酸含有脂質を安価な常用の培地を用いて単純な工程で大量に製造する方法、並びにエイコサペンタエン酸や8,11,14,17−エイコサテトラエン酸を全く含まない、あるいは含んでもごくわずかな、ジホモ−γ−リノレン酸の含有率の高い脂質を安価な常用の培地を用いて単純な工程で大量に製造する方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者等は、上記の目的を達成するため、種々研究の結果、アラキドン酸生産能を有する微生物に変異処理を施して得られる、ω3不飽和化活性の低下または欠失した微生物を見出し本発明を完成した。
【0015】
すなわち本発明は、モルティエレラ(Mortierella )属、コニディオボラス(Conidiobolus)属、フィチウム(Pythium )属、フィトフトラ(Phytophthora)属、ペニシリューム(Penicillium )属、クラドスポリューム(Cladosporium)属、ムコール(Mucor )属、フザリューム(Fusarium)属、アスペルギルス(Aspergillus )属、ロードトルラ(Rhodotorula )属、エントモフトラ(Entomophthora )属、エキノスポランジウム(Echinosporangium)属またはサプロレグニア(Saprolegnia )属に属しアラキドン酸生産能を有する微生物に変異処理を施して得られる、ω3不飽和化活性の低下または欠失した微生物を、培地中で培養開始から、又は最適生育温度で培養した後に、最適生育温度より低い温度で培養し、その培養物からアラキドン酸を含有する脂質を採取することを特徴とするアラキドン酸を含有する脂質の製造方法を提供するものである。
【0016】
さらに本発明は、モルティエレラ(Mortierella )亜属に属する微生物に変異処理を施して得られる、ω3不飽和化活性の低下または欠失した微生物を、培地中で培養開始時より又は20〜40℃で培養した後に、20℃より低い温度で培養し、その培養物からアラキドン酸を含有する脂質を採取することを特徴とするアラキドン酸を含有する脂質の製造方法を提供するものである。
【0017】
また本発明は、モルティエレラ(Mortierella )属、コニディオボラス(Conidiobolus)属、フィチウム(Pythium )属、フィトフトラ(Phytophthora)属、ペニシリューム(Penicillium )属、クラドスポリューム(Cladosporium)属、ムコール(Mucor )属、フザリューム(Fusarium)属、アスペルギルス(Aspergillus )属、ロードトルラ(Rhodotorula )属、エントモフトラ(Entomophthora )属、エキノスポランジウム(Echinosporangium)属またはサプロレグニア(Saprolegnia )属に属しアラキドン酸生産能を有する微生物に変異処理を施して得られるΔ5不飽和化活性の低下または欠失した微生物に、変異処理を施して得られるω3不飽和化活性の低下または欠失した微生物を、培地中で培養開始時より又は最適生育温度で培養した後に、最適生育温度より低い温度で培養し、その培養物からジホモ−γ−リノレン酸を含有する脂質を採取することを特徴とするジホモ−γ−リノレン酸を含有する脂質の製造方法を提供するものである。
【0018】
さらに本発明は、モルティエレラ(Mortierella )亜属に属する微生物に変異処理を施して得られるΔ5不飽和化活性の低下または欠失した微生物に、変異処理を施して得られるω3不飽和化活性の低下または欠失した微生物を、培地中で培養開始時より又は20〜40℃で培養した後に、20℃より低い温度で培養し、その培養物からジホモ−γ−リノレン酸を含有する脂質を採取することを特徴とするジホモ−γ−リノレン酸を含有する脂質の製造方法を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明において、変異処理を施す微生物として、Δ6不飽和化酵素及びΔ5不飽和化酵素を有し、脂肪酸生合成経路中でアラキドン酸まで生産することができるモルティエレラ(Mortierella )属、コニディオボラス(Conidiobolus)属、フィチウム(Pythium )属、フィトフトラ(Phytophthora)属、ペニシリューム(Penicillium )属、クロドスポリューム(Cladosporium)属、ムコール(Mucor )属、フザリューム(Fusarium)属、アスペルギルス(Aspergillus )属、ロードトルラ(Rhodotorula )属、エントモフトラ(Entomophthora )属、エキノスポランジウム(Echinosporangium)属およびサプロレグニア(Saprolegnia )属に属する微生物を、より好ましくはモルティエレラ(Mortierella )属、コニディオボラス(Conidiobolus)属、フィチウム(Pythium )属、エントモフトラ(Entomophthora )属、エキノスポランジウム(Echinosporangium)属及びサプロレグニア(Saprolegnia )属に属する微生物を挙げることができる。
【0020】
より具体的にはフィチウム(Pythium )属に属する微生物として例えばフィチウム・インシジオスム(Pythium insidiosm )ATCC28251を、またエキノスポランジウム(Echinosporangium)属に属する微生物として例えばエキノスポランジウム・トランスバーサリス(Echinosporangium transversalis)ATCC16960(NRRL3116)およびATCC18036(NRRL5525)を、サプロレグニア(Saprolegnia )属に属する微生物として例えばサプロレグニア・フェラクス(Saprolegnia ferax )CBS534.67、サプロレグニア・ラッポニカ(Saprolegnia lapponica )CBS284.38、サプロレグニア・リトラリス(Saprolegnia litoralis )CBS535.67、サプロレグニア・モニリゲラ(Saprolegnia moniligera)CBS558.67およびサプロレグニア・ツルフォサ(Saprolegnia turfosa )CBS313.82等の菌株を挙げることができる。
【0021】
特に本発明ではアラキドン酸の生産能力が高いモルティエレラ(Mortierella )属モルティエレラ(Mortierella )亜属に属する微生物が好ましい。本発明のモルティエレラ(Mortierella )属モルティエレラ(Mortierella )亜属に属する微生物としては、例えばモルティエレラ・エロンガタ(Mortierella elongata)、モルティエレラ・エキシグア(Mortierella exigua)、モルティエレラ・フィグロフィラ(Mortierella hygrophila)、モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)、モルティエレラ・パルビスポラ(Mortierella parvispora)、モルティエレラ・ベルジャコバ(Mortierella beljakovae)、モルティエレラ・グロバルピナ(Mortierella globalpina)、モルティエレラ・エピガマ(Mortierella epigama )、モルティエレラ・クフルマニ(Mortierella kuhlmanii )、モルティエレラ・アクロトナ(Mortierella acrotona)、モルティエレラ・ザイチャ(Mortierella zychae)、モルティエレラ・リシケシャ(Mortierella rishikesha)、モルティエレラ・ミヌチシマ(Mortierella minutissima )、モルティエレラ・バイニエリ(Mortierella bainieri)、モルティエレラ・シュマッカリ(Mortierella schmuckeri)等を挙げることができ、
【0022】
具体的にはモルティエレラ・エロンガタ(Mortierella elongata)IFO8570、モルティエレラ・エキシグア(Mortierella exigua)IFO8571、モルティエレラ・フィグロフィラ(Mortierella hygrophila)IFO5941、モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)IFO8568、ATCC16266、ATCC32221、ATCC42430、CBS219.35、CBS224.37、CBS250.53、CBS343.66、CBS527.72、CBS529.72、CBS608.70、CBS754.68等の菌株を挙げることができる。
【0023】
これらの菌株はいずれも、大阪市の財団法人醗酵研究所(IFO)、及び米国アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection,ATCC)及び、Centrralbureau voor Schimmelcultures(CBS)からなんら制限なく入手することができる。また我々研究グループが土壌から分離した菌株モルティエレラ・エロンガタSAM0219(微工研菌寄第8703号)(微工研条寄第1239号)を使用することもできる。
【0024】
また本発明において変異処理を施す微生物としては、上記の微生物の野生株に限らず上記の微生物(野生株)、好ましくはモルティエレラ(Mortierella )属モルティエレラ(Mortierella )亜属に属する微生物(野生株)の変異株又は組換え株、即ち、同じ基質を用いて培養したときに、元の野生株が産生する量と比べて、脂質中のアラキドン酸又はジホモ−γ−リノレン酸の含量が多くなるように、または総脂質量が多くなるように、あるいはその両方を意図して設計されたものが含まれる。
【0025】
さらに費用効果の優れた基質を効率よく用いて、対応する野生株と同量の不飽和脂肪酸を産生するように設計された微生物も含まれる。例えばΔ12不飽和化活性が欠失しかつΔ6不飽和化活性が上昇した変異株としてモルティエレラ・アルピナSAM2086(微工研条寄第6032号、FERM BP-6032)や、人為的にジホモ−γ−リノレン酸の生産性を増加させるために誘発したΔ5不飽和化活性が欠失した変異株としてモルティエレラ・アルピナSAM1860(微工研条寄第3589号、FERM BP-3589)を挙げることができる。これらの菌株はいずれも、財団法人醗酵研究所からなんら制限なく入手することができる。
【0026】
また本発明において、本発明のω3不飽和化活性が低下した変異株に変異処理を施し、ω3不飽和化活性がさらに低下したあるいは欠失した変異株を得ることもできる。
本発明においてω3不飽和化活性とは、脂肪酸のメチル基から数えて第3番目と第4番目の炭素の間に二重結合を入れる作用を言うものであり、ω3不飽和化活性の低下または欠失した微生物は、容易にそのω3不飽和化活性の低下または欠失を判定することができる。
【0027】
具体的には、アラキドン酸含有脂質の製造においては、親株を変異処理して得られた変異株を最適生育温度よりも低い温度、たとえば20℃よりも低い温度で培養した際の菌体内のエイコサペンタエン酸の全脂肪酸に占める割合で判定することができる。つまり低温培養下での親株と変異株のエイコサペンタエン酸の割合を比較した場合に親株のエイコサペンタエン酸の割合を1として、変異株のエイコサペンタエン酸の割合が1以下の時、活性が低下していると言え、0の時、活性が欠失していると言える。
【0028】
またジホモ−γ−リノレン酸含有脂質の製造においては、親株(例えばΔ5不飽和化活性の低下または欠失した変異株)を変異処理して得られた変異株を最適生育温度よりも低い温度、たとえば20℃よりも低い温度で培養した際の菌体内の8,11,14,17−エイコサテトラエン酸の全脂肪酸に占める割合で判定することができる。つまり低温培養下での親株と変異株の比較において親株の8,11,14,17−エイコサテトラエン酸の割合を1として、変異株が1以下の時、活性が低下し、0の時、活性欠失していると言える。
【0029】
本発明のジホモ−γ−リノレン酸の製造方法において使用する微生物としては、アラキドン酸生産能を有する微生物を変異処理して得られる、ω3不飽和化活性が低下または欠失した変異株を使用することができるが、さらにΔ5不飽和化活性が低下または欠失した変異株を用いるのが好ましい。ω3不飽和化活性が低下又は欠失し、且つΔ5不飽和化活性が低下または欠失した変異株を得るには、本発明において得られるω3不飽和化活性が低下又は欠失した変異株をさらに変異処理して、Δ5不飽和化活性が低下又は欠失した変異株を選択することができる。あるいは、すでにΔ5不飽和化活性が低下又は欠失している株を変異処理して、さらにω3不飽和化活性が低下又は欠失させることによっても得られる。
【0030】
本発明において変異処理は、放射線(X線、ガンマー線、中性子線、重イオン)照射や紫外線照射、高熱処理等を行って突然変異を誘発させたり、また微生物を適当なバッファー中などに懸濁し、変異源を加えて一定時間インキュベート後、適当に希釈して寒天培地に植菌し、変異株のコロニーを得るといった一般的な突然変異操作により行うことができる。
【0031】
変異源としては、ナイトロジェンマスタード、メチルメタンサルホネート(MMS )、N−メチル−N −ニトロ−N −ニトロソグアニジン(NTG)等のアルキル化剤や、5−ブロモウラシル等の塩基類似体や、マイトマイシンC 等の抗生物質や、6−メルカプトプリン等の塩基合成阻害剤や、プロフラビン等の色素類(その他の誘導体)や、4−ニトロキノリン−N −オキシド等のある種の発がん剤や塩化マンガン、ホルムアルデヒド等のその他の化合物を挙げることができる。また使用する微生物は、生育菌体(菌糸など)でも良いし、胞子でも良い。
【0032】
例えば本発明の変異株として、アラキドン酸生産能を有するモルティエレラ・アルピナIFO8568から本発明者らが誘導したω3不飽和化活性が限りなく低下したモルティエレラ・アルピナSAM2153(FERM P-15767)を使用することができるが、この菌株に限定しているわけではなく、低温培養下での親株のエイコサペンタエン酸の割合を1として、1以下の活性を示す変異株をすべて使用することができる。
【0033】
本発明に使用される菌株を培養する為には、その菌株の胞子、菌糸、又は予め培養して得られた前培養液を、液体培地又は固体培地に接種し培養する。液体培地の場合に、炭素源としてはグルコース、フラクトース、キシロース、サッカロース、マルトース、可溶性デンプン、糖蜜、グリセロール、マンニトール等の一般的に使用されているものが、いずれも使用できるが、これらに限られるものではない。窒素源としてはペプトン、酵母エキス、麦芽エキス、肉エキス、カザミノ酸、コーンスティープリカー、大豆タンパク、脱脂ダイズ、綿実カス等の天然窒素源の他に、尿素等の有機窒素源、ならびに硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム等の無機窒素源を用いることができる。
【0034】
この他必要に応じリン酸塩、硫酸マグネシウム、硫酸鉄、硫酸銅等の無機塩及びビタミン等も微量栄養源として使用できる。これらの培地成分は微生物の生育を害しない濃度であれば特に制限はない。実用上一般に、炭素源は0.1〜40重量%、好ましくは1〜25重量%、窒素源は0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜10重量%の濃度とするのが望ましく、より好ましくは初発の炭素源添加量を1〜5重量%、初発の窒素源添加量を0.1〜6重量%として、培養途中で炭素源及び窒素源を、さらに、より好ましくは、炭素源のみを流加して培養する。
【0035】
本発明の変異株は、培地中で培養開始から菌の最適生育温度より低い温度で培養するか、あるいは最適生育温度で培養した後に、最適生育温度より低い温度で培養する。ここで最適生育温度とは使用する微生物によって異なるが、20〜40℃、好ましくは20〜30℃であり、最適生育温度より低い温度とは25℃より低い温度、好ましくは20℃より低い温度、さらに好ましくは20℃より低く5℃以上の温度である。このような温度管理により、菌体内への油脂の蓄積を上昇せしめることができる。
【0036】
培養期間は、培養開始時から最適生育温度より低い温度で培養する場合には、2〜20日間、好ましくは2〜14日間行う。また最適生育温度で培養した後に、最適生育温度より低い温度で培養する場合には、最適生育温度で1〜6日間、好ましくは1〜4日間行い、最適生育温度より低い温度で2〜14日間、好ましくは2〜10日間行う。
培地のpHは4〜10、好ましくは6〜9として、通気攪拌培養、振盪培養又は静置培養を行う。
【0037】
固体培養で培養する場合は、固形物重量に対して50〜100重量%の水を加えたふすま、もみがら、米ぬか等を用い、前記の温度において、3〜14日間培養を行う。この場合に必要に応じて培地中に窒素源、無機塩類、微量栄養源を加えることができる。
また本発明においては、培地中にアラキドン酸又はジホモ−γ−リノレン酸の生合成基質を添加して培養することにより、アラキドン酸又はジホモ−γ−リノレン酸の蓄積を促進することもできる。生合成基質としてはテトラデカン、ヘキサデカン、オクタデカン等の炭化水素、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸等の脂肪酸又はその塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩等)又はエステル、あるいは脂肪酸が構成成分として含まれる油脂(例えば、オリーブ油、ヤシ油、パーム油)等を挙げることができる。
【0038】
特に脂肪酸の中でもアラキドン酸又はジホモ−γ−リノレン酸の前駆体であるオメガ6系不飽和脂肪酸を添加して培養することにより、アラキドン酸又はジホモ−γ−リノレン酸の蓄積をより効果的に行うことができる。該オメガ6系不飽和脂肪酸としては例えばリノール酸、γーリノレン酸、ジホモ−γ−リノレン酸を挙げることができ、該脂肪酸を構成成分として含有する油脂としては例えばサフラワー油、大豆油、トウモロコシ油、綿実油、Bio−γ(γ−リノレン酸含有トリグリセリド)等を挙げることができる。
【0039】
基質の総添加量は培地に対して0.001〜10重量%、好ましくは0.5〜10重量%である。これらの基質は生産微生物を接種する前又はその直後に加えてもよく、又は培養を開始した後に加えてもよく、あるいは両時点で加えてもよい。培養開始後の添加は1回でもよく、又は複数回に分けて間欠的に添加してもよい。あるいは連続的に添加することもできる。またこれらの基質を唯一の炭素源として培養してもよい。
このようにして培養して、菌体内にアラキドン酸又はジホモ−γ−リノレン酸を大量に含有する脂質が生成蓄積される。液体培地を使用した場合には、培養菌体から、例えば、次のようにしてアラキドン酸又はジホモ−γ−リノレン酸の採取を行う。
【0040】
培養終了後、培養液より遠心分離及び濾過等の常用の固液分離手段により培養菌体を得る。菌体は十分水洗し、好ましくは乾燥する。乾燥は凍結乾燥、風乾等によって行うことができる。乾燥菌体は、好ましくは窒素気流下で有機溶媒によって抽出処理する。有機溶媒としてはエーテル、ヘキサン、メタノール、エタノール、クロロホルム、ジクロロメタン、石油エーテル等を用いることができ、又メタノールと石油エーテルの交互抽出やクロロホルム- メタノール- 水の一層系の溶媒を用いた抽出によっても良好な結果を得ることができる。抽出物から減圧下で有機溶媒を留去することにより、アラキドン酸又はジホモ−γ−リノレン酸を含有する脂質が得られる。
【0041】
また、上記の方法に代えて湿菌体を用いて抽出を行うことができる。メタノール、エタノール等の水に対して相溶性の溶媒、又はこれらと水及び/又は他の溶媒とから成る水に対して相溶性の混合溶媒を使用する。その他の手順は上記と同様である。
上記のようにして得られた脂質中には、各種脂肪酸が脂質化合物、例えば脂肪の構成成分として含まれている。これらを直接分離することもできるが、低級アルコールとのエステル、例えばγ- リノレン酸メチル、ジホモ- γ- リノレン酸メチル、アラキドン酸メチル等として分離するのが好ましい。
【0042】
このようなエステルにすることにより、他の脂質成分から容易に分離することができ、また培養中に生成する他の脂肪酸、例えばパルミチン酸、オレイン酸等(これらも、アラキドン酸又はジホモ−γ−リノレン酸のエステル化に際してエステル化される)から容易に分離することができる。例えば、アラキドン酸又はジホモ−γ−リノレン酸のメチルエステルを得るには、前記の抽出脂質を無水メタノール- 塩酸5〜10%、BF3−メタノール10〜50%等により、室温にて1〜24時間処理するのが好ましい。
【0043】
前記の処理液からアラキドン酸又はジホモ−γ−リノレン酸のメチルエステルを回収するにはヘキサン、エーテル、酢酸エチル等の有機溶媒で抽出するのが好ましい。次に、この抽出液を無水硫酸ナトリウム等により乾燥し、有機溶媒を好ましくは減圧下で留去することにより主として脂肪酸エステルからなる混合物が得られる。この混合物には、目的とするアラキドン酸又はジホモ−γ−リノレン酸のメチルエステルの他に、パルミチン酸メチルエステル、ステアリン酸メチルエステル、オレイン酸メチルエステル等の脂肪酸メチルエステルが含まれている。これらの脂肪酸メチルエステル混合物からアラキドン酸又はジホモ−γ−リノレン酸のメチルエステルを単離するには、カラムクロマトグラフィー、低温結晶化法、尿素包接法、液々交流分配クロマトグラフィー等を単独で、又は組み合わせて使用することができる。
【0044】
こうして単離されたアラキドン酸又はジホモ−γ−リノレン酸のメチルエステルからアラキドン酸又はジホモ−γ−リノレン酸を得るには、アルカリで加水分解した後、エーテル、酢酸エチル等の有機溶媒で抽出すればよい。
又、アラキドン酸又はジホモ−γ−リノレン酸をそのメチルエステルを経ないで得るには、前記の抽出脂質をアルカリ分解(例えば5%水酸化ナトリウムにより室温にて2〜3時間)した後、この分解液から、脂肪酸の抽出・精製に常用されている方法により抽出・精製することができる。
次に、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。
【実施例】
【0045】
実施例1
モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)IFO8568を、Czapek寒天培地(0.2%NaNO3 、0.1%K2HPO4 、0.05%MgSO4・7H2O、0.05%KCl、0.001%FeSO4・7H2O、3%シュークロース、2%寒天、pH6.0)300mlを含む大型スラント瓶に植菌し、2週間、28℃で培養した。培養後、大型スラント瓶にTween80を2滴加えた滅菌水50mlを加えてよく振り、4重のガーゼで濾過した。この操作を2回繰り返し、濾液を8000x g で10分間遠心した。このようにして得られた胞子を50mM Tris/maleate緩衝溶液(pH7.5)で1x106/ml になるように懸濁し、胞子溶液を調製した。
【0046】
得られた胞子溶液1.0mlに、100mM Tris/maleate緩衝溶液(pH7.5)0.5mlを加え、NTG溶液(N-メチル-N'-ニトロ-N- ニトロソグアニジン5mg/脱イオン水1 ml)500μl を加えて、28℃で15分間インキュベートして変異処理を施した。10%Na22O3 を3ml加えて、反応液を5500x g で10分間遠心し、沈殿物(変異処理が施された胞子)を滅菌水3mlで洗浄し、5500x g で10分間遠心後、沈殿物に滅菌水2mlを加えてNTG処理された胞子懸濁液とした。
【0047】
NTG処理された胞子懸濁液は、10-3〜10-4程度に希釈し、GY寒天プレート(1%グルコース、0.5%酵母エキス、0.005%トリトン(Triton)X-100、1.5%寒天、pH6.0)に塗布した。28℃で培養し、コロニーが出現したものからランダムに新しいプレートにピックアップし、28℃で生育が見られるまで培養した。生育が見られた時点でそのまま低温で保存した。
【0048】
ピックアップした保存コロニーを、GY寒天プレートにて28℃で2日間、12℃で2日間培養し、寒天ごとくりぬいて100℃で乾燥させた。得られた乾燥菌体をねじ口試験管(16.5 mm φ)に入れ、塩化メチレン1ml、無水メタノール−塩酸(10%)2mlを加え、50℃で3時間処理することによってメチルエステル化し、n−ヘキサン4ml、水1mlを加えて、2回抽出し、抽出液の溶媒を遠心エバポレーター(40℃、1時間)で留去した後、得られた脂肪酸メチルエステルをキャピラリーガスクロマトグラフィーで分析した。そして、スクリーニングの結果、低温培養下でエイコサペンタエン酸を生産しないモルティエレラ・アルピナSAM2153(FERM P-15767)が得られた。
【0049】
実施例2
GY寒天プレート(1%グルコース、0.5%酵母エキス、0.005%トリトン(Triton)X-100、1.5%寒天、pH6.0)にモルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)IFO8568および実施例1で得たモルティエレラ・アルピナSAM2153(FERM P-15767)を植菌し静置培養した。培養温度は下記の6条件で行った。
【0050】
1.28℃(2日間)、12℃(2日間)
2.28℃(4日間)
3.12℃(6日間)
4.28℃(4日間)、12℃(3日間)
5.28℃(7日間)
6.12℃(7日間)
培養終了後、実施例1と同様にメチルエステル化を行い、得られた脂肪酸メチルエステルをキャピラリーガスクロマトグラフィーで分析した。表1にその結果を示す。
【0051】
【表1】


【0052】
親株であるIFO8568は12℃で培養した場合、エイコサペンタエン酸を産生し、その割合も12℃での培養時間に比例して増加しているが、変異株であるモルティエレラ・アルピナSAM2153(FERM P-15767)は12℃で長時間培養してもエイコサペンタエン酸を全く産生せず、ω3不飽和化酵素(アラキドン酸からエイコサペンタエン酸に変換する酵素)活性が欠失あるいは限りなく低下した変異株であることが明らかとなった。またアラキドン酸からエイコサペンタエン酸への変換能がないことから、低温下では本来エイコサペンタエン酸に変換されるべき分がアラキドン酸として蓄積されるため、低温培養で効率的にアラキドン酸の含有率を高めることが明らかとなった。
【0053】
実施例3
グルコース4%および酵母エキス1%を含む培地(pH6.0)2mlを10mlのエルレンマイヤーフラスコに入れ、120℃で20分間殺菌した。モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)IFO8568および実施例1で得たモルティエレラ・アルピナSAM2153(FERM P-15767)を培地に一白金耳接種し、レシプロシェーカー(150rpm)により、12℃で7日間、あるいは12℃で10日間培養した。表2にその結果を示す。12℃で培養を行ってもエイコサペンタエン酸を全く産生せず、アラキドン産の含有率並びに生産量を高めることが、液体培養でも確かめられた。
【0054】
【表2】


【0055】
実施例4
グルコース4%および酵母エキス1%を含む培地(pH6.0)2mlに表3に示したアラキドン酸の生合成基質又はそれを含有する油脂をそれぞれ0.5%添加し、10mlのエルレンマイヤーフラスコに入れ、120℃で20分間殺菌した。実施例1で得たモルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)SAM2153(FERM P-15767)を培地に一白金耳接種し、レシプロシェーカー(150rpm)により、12℃で10日間培養した。表3にその結果を示す。
【0056】
【表3】


【0057】
実施例5
グルコース2%、大豆タンパク1.5%、KH2PO4 0.3%、MgCl2・6H2 O 0.05%、Na2SO4 0.1%および大豆油0.1%を含む培地(pH6.0)5Lを10Lジャーファーメンターに入れ、120℃で30分間殺菌した。実施例1で得たモルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)SAM2153(FERM P-15767)を接種し、通気量1vvm、10日間の通気攪拌培養を行った。培養温度は、培養開始時は20℃で培養3日目より12℃に下げて行った。なお培養1日目のみ1%のグルコースを添加した。
【0058】
培養2日目より培養液12mlのサンプリングを行い、実施例1と同様にメチルエステル化を行い、得られた脂肪酸メチルエステルをガスクロマトグラフィーで分析した。図1a,b,c,dにそれぞれアラキドン酸の生産量(g/l)、全脂肪酸に対するアラキドン酸の割合(%)、生育度(g/l)、培地中のグルコース濃度(%)の変化を示す。10Lジャーファーメンターでの低温条件下での培養が確かめられ、培養10日目にはアラキドン酸の全脂肪酸に対する割合が実に56.4%に達した。
【0059】
実施例6
グルコース2%、大豆タンパク1.5%、KH2PO4 0.3%、MgCl2・6H2 O0.05%、CaCl2・2H2 O0.05%、Na2SO4 0.1%および大豆油を0.1%含む培地(pH6.0)5Lを10Lジャーファーメンターに入れ、120℃で30分間殺菌した。そして、実施例1と同様にモルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina) IFO8568を親株として、再度変異処理を施し、モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina) ω3不飽和化酵素低下株SAM2239を取得した。
【0060】
そして、このSAM2239を植菌し、通気量1vvm 、12日間の通気攪拌培養を行った。培養温度は、培養開始時は24℃で培養3日目より12℃に下げて行った。なお、培養1,2,3日目の1%のグルコースを添加した。培養最終日の12日目にサンプリングを行い、実施例1と同様にメチルエステル化を行い、得られた脂肪酸メチルエステルをガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、全脂肪酸に対するアラキドン酸の割合は75.1%に達し、生産量は4.1g/Lであった。
【出願人】 【識別番号】000001904
【氏名又は名称】サントリー株式会社
【出願日】 平成20年9月29日(2008.9.29)
【代理人】 【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬

【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積

【識別番号】100082898
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 雅也


【公開番号】 特開2008−307063(P2008−307063A)
【公開日】 平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願番号】 特願2008−251510(P2008−251510)