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【発明の名称】 リボフラビン−5’−リン酸の製造方法
【発明者】 【氏名】坂本 恵司

【氏名】伊藤 元

【氏名】浅野 泰久

【要約】 【課題】安価かつ効率的に、高純度なリボフラビン-5’-リン酸を製造する方法を提供すること。

【解決手段】リボフラビン-5’-リン酸を生成する活性を有する微生物の菌体又は処理物の存在下で、ポリリン酸、フェニルリン酸、アセチルリン酸、カルバミルリン酸及びそれらの塩からなる群より選ばれるリン酸供与体とリボフラビンとを反応させてリボフラビン-5’-リン酸を得ることを特徴とするリボフラビン-5’-リン酸の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リボフラビン-5’-リン酸を生成する活性を有する微生物の菌体又は処理物の存在下で、ポリリン酸、フェニルリン酸、アセチルリン酸、カルバミルリン酸及びそれらの塩からなる群より選ばれるリン酸供与体とリボフラビンとを反応させてリボフラビン-5’-リン酸を得ることを特徴とするリボフラビン-5’-リン酸の製造方法。
【請求項2】
前記微生物が、ブレブンディモナス(Brevundimonas)属菌、セデシア(Cedecea)属菌、エウィンゲラ(Ewingella)属菌、クレブシエラ(Klebsiella)属菌、プロビデンシア(Providencia)属菌、シュードモナス(Pseudomonas)属菌、ラーネラ(Rahnella)属菌、ラルストニア(Ralstonia)属菌、ラオウルテラ(Raoultella)属菌、セラチア(Serratia)属菌、バリオボラックス(Variovorax)属菌、ピチア(Pichia)属菌、コリオラス(Coriolus)属菌、レンチナス(Lentinus)属菌及びシゾフィラム(Schizophyllum)属菌からなる群より選ばれる請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記微生物が、ブレブンディモナス ディミヌタ(Brevundimonas diminuta)、ブレブンディモナス ベシクラリス(Brevundimonas vesicularis)、ブレブンディモナス アウランチアカ(Brevundimonas aurantiaca)、ブレブンディモナス インターメディア(Brevundimonas intermedia)、ブレブンディモナス バリアビリス(Brevundimonas variabilis)、セデシア ラパゲイ(Cedecea lapagei)、セデシア ネテリ(Cedecea neteri)、エウィンゲラ アメリカナ(Ewingella americana)、クレブシエラ プランティコラ(Klebsiella planticola)、プロビデンシア スチュアルティ(Providencia stuartii)、シュードモナス フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス シルキリエンシス(Pseudomonas schylkilliensis)、ラーネラ アクアチリス(Rahnella aquatilis)、ラルストニア ユートロファス(Ralstonia eutrophus)、ラオウルテラ テリゲナ(Raoultella terrigena)、セラチア グリメシイ(Serratia grimesii)、セラチア リクエファシエンス(Serratia liquefaciens)、バリオボラックス パラドクサス(Variovorax paradoxus)、ピチア アノマラ(Pichia anomala)、コリオラス ヒルスタス(Coriolus hirsutus)、レンチナス エドデス(Lentinus edodes)及びシゾフィラム コムネ(Schizophyllum commune)からなる群より選ばれる請求項1記載の方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、リボフラビン-5’-リン酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リボフラビン-5’-リン酸(以下、5’-FMNと記す場合がある)は、生体内の種々の酵素反応における補酵素として重要な役割を担う活性型ビタミンBであり、医薬品、食品添加物、飼料添加物及び工業用中間体等として有用な化合物である。リボフラビンとリン酸供与体とからリボフラビン-5’-リン酸を製造する方法としては、これまでに、化学的合成法による製造方法(特許文献1−3)及び微生物由来の酵素を用いた酵素法による製造方法(特許文献4−7)が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開昭48−54099
【特許文献2】特開平11−49790
【特許文献3】WO03/010172
【特許文献4】特公昭38−8737
【特許文献5】特開昭49−124291
【特許文献6】特開平2−138988
【特許文献7】特開平5−304975
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらのうちすでに工業的に実用化されているのは化学的合成法であるが、目的とする5’位のリン酸化物の他に、生体内で非活性型の異性体であるリボフラビン-4’-リン酸及びリボフラビン-3’-リン酸、リボフラビンジホスフェート、リボフラビンポリホスフェート、リボフラビン等が副生するという不具合が発生する。したがって、高純度のリボフラビン-5’-リン酸を得ることができない。また、さらに煩雑な精製工程を必要とするため、製造コストが高価になる。
【0005】
また、微生物由来の酵素を用いた酵素法による製造方法としては、直接発酵法(特許文献4及び5)、リン酸供与体としてアデノシン三リン酸(以下、ATPと記す場合がある)を使用する方法(特許文献6及び7)が知られている。しかしながら、これらの方法にあっては使用する基質が高価なために製造コストが高価になる、リボフラビン-5’-リン酸の蓄積量が低い等の問題が存在し、工業的製法として不利であった。
【0006】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、安価かつ効率的に、高純度なリボフラビン-5’-リン酸を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意研究し、リボフラビンの5’位を特異的にリン酸化する活性を有する微生物を検索した結果、ピロリン酸等の安価なリン酸供与体とリボフラビンとからリボフラビン-5’-リン酸を生成する活性を有する微生物を見出した。さらに本発明者は、高純度なリボフラビン-5’-リン酸の製造方法を提供することを可能とし、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、リボフラビン-5’-リン酸を生成する活性を有する微生物の菌体又は処理物の存在下で、ポリリン酸、フェニルリン酸、アセチルリン酸、カルバミルリン酸及びそれらの塩からなる群より選ばれるリン酸供与体とリボフラビンとを反応させてリボフラビン-5’-リン酸を得ることを特徴とするリボフラビン-5’-リン酸の製造方法を提供する。
【0009】
上記微生物は、ブレブンディモナス(Brevundimonas)属菌、セデシア(Cedecea)属菌、エウィンゲラ(Ewingella)属菌、クレブシエラ(Klebsiella)属菌、プロビデンシア(Providencia)属菌、シュードモナス(Pseudomonas)属菌、ラーネラ(Rahnella)属菌、ラルストニア(Ralstonia)属菌、ラオウルテラ(Raoultella)属菌、セラチア(Serratia)属菌、バリオボラックス(Variovorax)属菌、ピチア(Pichia)属菌、コリオラス(Coriolus)属菌、レンチナス(Lentinus)属菌及びシゾフィラム(Schizophyllum)属菌からなる群より選ばれることが好ましい。
【0010】
また、上記微生物は、ブレブンディモナス ディミヌタ(Brevundimonas diminuta)、ブレブンディモナス ベシクラリス(Brevundimonas vesicularis)、ブレブンディモナス アウランチアカ(Brevundimonas aurantiaca)、ブレブンディモナス インターメディア(Brevundimonas intermedia)、ブレブンディモナス バリアビリス(Brevundimonas variabilis)、セデシア ラパゲイ(Cedecea lapagei)、セデシア ネテリ(Cedecea neteri)、エウィンゲラ アメリカナ(Ewingella americana)、クレブシエラ プランティコラ(Klebsiella planticola)、プロビデンシア スチュアルティ(Providencia stuartii)、シュードモナス フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス シルキリエンシス(Pseudomonas schylkilliensis)、ラーネラ アクアチリス(Rahnella aquatilis)、ラルストニア ユートロファス(Ralstonia eutrophus)、ラオウルテラ テリゲナ(Raoultella terrigena)、セラチア グリメシイ(Serratia grimesii)、セラチア リクエファシエンス(Serratia liquefaciens)、バリオボラックス パラドクサス(Variovorax paradoxus)、ピチア アノマラ(Pichia anomala)、コリオラス ヒルスタス(Coriolus hirsutus)、レンチナス エドデス(Lentinus edodes)及びシゾフィラム コムネ(Schizophyllum commune)からなる群から選ばれることが好ましく、特に、ブレブンディモナス ディミヌタ(Brevundimonas diminuta)が好ましい。
【0011】
本発明のリボフラビン-5’-リン酸の製造方法によれば、ポリリン酸、フェニルリン酸、アセチルリン酸、カルバミルリン酸及びそれらの塩をリン酸供与体として用いることができる。リン酸供与体が従来用いられているATPよりも安価であるため、製造コストを安価に抑えることができる。また、化学反応の特異性が高いためリボフラビン-5’-リン酸の異性体であるリボフラビン-4’-リン酸及びリボフラビン-3’-リン酸、複数のリン酸基が付加されたリボフラビンジホスフェート及びリボフラビンポリホスフェート等の副生を伴うことがなく、効率的に高純度なリボフラビン-5’-リン酸を得ることができる。これにより、目的とするリボフラビン-5’-リン酸とこれらの副生物とを分離するための煩雑な精製を行う必要がなく、製造コストを安価に抑えることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のリボフラビン-5’-リン酸の製造方法によれば、安価かつ効率的に、高純度なリボフラビン-5’-リン酸を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、発明を実施の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0014】
本実施形態であるリボフラビン-5’-リン酸の製造方法は、リボフラビン-5’-リン酸を生成する活性を有する微生物の菌体又は処理物の存在下で、ポリリン酸、フェニルリン酸、アセチルリン酸、カルバミルリン酸及びそれらの塩からなる群より選ばれるリン酸供与体とリボフラビンとを反応させる工程(反応工程)と、その反応生成物からリボフラビン-5’-リン酸を得る工程(精製工程)と、を備える。
【0015】
本実施形態の微生物は、リボフラビンを基質としてリボフラビン-5’-リン酸を生成する微生物であり、例えば、ブレブンディモナス(Brevundimonas)属菌、セデシア(Cedecea)属菌、エウィンゲラ(Ewingella)属菌、クレブシエラ(Klebsiella)属菌、プロビデンシア(Providencia)属菌、シュードモナス(Pseudomonas)属菌、ラーネラ(Rahnella)属菌、ラルストニア(Ralstonia)属菌、ラオウルテラ(Raoultella)属菌、セラチア(Serratia)属菌、バリオボラックス(Variovorax)属菌、ピチア(Pichia)属菌、コリオラス(Coriolus)属菌、レンチナス(Lentinus)属菌及びシゾフィラム(Schizophyllum)属菌が挙げられる。
【0016】
また、微生物の代表的な菌株としては、ブレブンディモナス ディミヌタ(Brevundimonas diminuta)、ブレブンディモナス ベシクラリス(Brevundimonas vesicularis)、ブレブンディモナス アウランチアカ(Brevundimonas aurantiaca)、ブレブンディモナス インターメディア(Brevundimonas intermedia)、ブレブンディモナス バリアビリス(Brevundimonas variabilis)、セデシア ラパゲイ(Cedecea lapagei)、セデシア ネテリ(Cedecea neteri)、エウィンゲラ アメリカナ(Ewingella americana)、クレブシエラ プランティコラ(Klebsiella planticola)、プロビデンシア スチュアルティ(Providencia stuartii)、シュードモナス フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス シルキリエンシス(Pseudomonas schylkilliensis)、ラーネラ アクアチリス(Rahnella aquatilis)、ラルストニア ユートロファス(Ralstonia eutrophus)、ラオウルテラ テリゲナ(Raoultella terrigena)、セラチア グリメシイ(Serratia grimesii)、セラチア リクエファシエンス(Serratia liquefaciens)、バリオボラックス パラドクサス(Variovorax paradoxus)、ピチア アノマラ(Pichia anomala)、コリオラス ヒルスタス(Coriolus hirsutus)、レンチナス エドデス(Lentinus edodes)及びシゾフィラム コムネ(Schizophyllum commune)が挙げられる。特に好ましいものとして、ブレブンディモナス ディミヌタ(Brevundimonas diminuta)が挙げられる。
【0017】
微生物は種々の微生物保存機関より入手することができる。具体的には、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NBRC)、独立行政法人理化学研究所 バイオリソースセンター 微生物材料開発室(JCM)、東京大学分子細胞生物学研究所(IAM、2007年4月1日からJCMに移管)、American Type Culture Collection(ATCC)等から入手することができる。
【0018】
なお、微生物は、リボフラビンを基質としてリボフラビン-5’-リン酸を生成する微生物である限り、野生株及び変異株のいずれも使用できる。微生物の変異株は、DNAクローニング及び遺伝子操作等の遺伝子工学的手法、細胞融合等の細胞工学的手法によって得られる組換え株でもよく、ランダム変異導入法によって得られる変異株、自然発生した変異株でもよい。
【0019】
本実施形態に用いる微生物は、菌体及び処理物等のいずれの形態であってもよい。
【0020】
微生物の菌体としては、上記微生物を適当な培地で培養したものを挙げることができ、微生物を寒天培地上で培養したもの、培養液から回収したもの、培養液より集菌洗浄したもの等を挙げることができる。微生物の培養方法は、当業者に公知の方法を用いればよく、細菌、真菌、酵母等の用いる微生物に合わせて各々適した培地及び培養条件を使用すればよい。
【0021】
微生物培養のための培地としては、通常、炭素源、窒素源、その他の栄養素を含む寒天培地又は液体培地が使用される。培地の炭素源としては、資化性のものが挙げられ、具体的には、グルコース、フルクトース、スクロース、デキストリン、デンプン、ソルビトール等の糖類;メタノール、エタノール、グリセロール等のアルコール類;フマル酸、クエン酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸類又はその塩類;パラフィン等の炭化水素類;糖蜜;又はこれらの混合物が使用できる。培地の窒素源としては、資化性のものが挙げられ、具体的には、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸のアンモニウム塩;フマル酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム等の有機酸のアンモニウム塩;硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等の硝酸塩;肉エキス、酵母エキス、麦芽エキス、ペプトン、コーンスティープリカー、大豆タンパク加水分解物等の無機又は有機含窒素化合物;又はこれらの混合物が使用できる。また、培地には、リン酸カリウム、硫酸鉄、硫酸亜鉛、硫酸マンガン等の無機物、微量金属塩、ビタミン類などの通常の培養に用いられる栄養素を適宜添加してもよい。さらに、必要に応じて、培地には微生物の活性を誘導する物質、培地のpH保持に有効な緩衝物質、消泡剤、シリコン、アデカノ-ル、プルロニック等を添加してもよい。
【0022】
微生物の培養は、それぞれの微生物の生育に適した条件下で行う。そのような条件は当業者に適宜選択可能であり、例えば、American Type Culture Collection(ATCC)等に公開されている培養条件を用いればよい。一例を挙げれば、培地のpHをpH3〜10、好ましくはpH 4〜9とし、0〜50℃、好ましくは20〜40℃で培養を行うことができる。微生物の培養は、それぞれの微生物の特性に応じて好気的条件下又は嫌気的条件下で行うことができる。培養時間は、1〜300時間、好ましくは10〜150時間であるが、それぞれの微生物及び諸条件により適宜決定することができる。
【0023】
微生物の菌体は、そのまま又は固定化した形で使用することができる。固定化の方法としては、当業者に公知の方法(例えば、架橋法、物理的吸着法、包括法等)で行うことができる。固定化担体としては、一般に用いられているものを適宜使用することができ、例えば、セルロース、アガロース、デキストラン、κ−カラギーナン、アルギン酸、ゼラチン、酢酸セルロース等の多糖類;グルテン等の天然高分子;活性炭、ガラス、白土、カオリナイト、アルミナ、シリカゲル、ベントナイト、ヒドロキシアパタイト、リン酸カルシウム等の無機物;ポリアクリルアミド、ポリビニルアセテート、ポリプロピレングリコール、ウレタン等の合成吸着剤等を使用することができる。菌体は、当該分野で知られた方法を用いてマイクロカプセルに封入した形で使用することもできる。
【0024】
微生物の処理物としては、乾燥又はアセトンパウダー処理したものを用いてもよい。また、乳鉢、ダイノミル、フレンチプレス、超音波、ホモジナイザー等の物理的破砕方法、リゾチーム等の酵素的消化方法、微生物の自己消化(熱処理等)、又はそれらの組み合わせによって微生物を破砕・消化した処理物を使用してもよい。熱処理は当該分野で利用可能な任意の方法で行うことができる。熱処理温度は目的に合わせて予備実験等により適宜決定することができるが、例えば、約37℃以上、好ましくは約40〜70℃、より好ましくは約45〜60℃である。熱処理時間は熱処理温度に応じて適宜選択できるが、例えば、約5分間〜24時間、好ましくは約30分間〜10時間、より好ましくは約1〜5時間である。代表的な熱処理は、約45℃、約50℃、又は約55℃の温度で約2〜4時間処理する工程を含むが、より好ましくは約45〜55℃で約3時間程度処理する工程を含む。熱処理によって得られた微生物の処理物を使用することにより、リボフラビンからリボフラビン-5’-リン酸への反応の選択性や転換率を含めて良好な結果を得ることができる場合がある。
【0025】
また、微生物の処理物としては、上記の方法によって得られた処理物を水又は適当な緩衝液で抽出した抽出物、さらに硫安及びアルコールを用いた塩析によって得られる沈殿物、並びに、当業者に公知の方法で精製したものを挙げることができ、例えば、酵素を含む抽出物等が挙げられる。精製方法としては、セファデックス等によるゲルろ過;ブチル基、オクチル基、フェニル基等の疎水性基を持つ担体等を用いた疎水クロマトグラフィー;ジエチルアミノエチル基又はカルボキシルメチル基を持つ担体等を用いたイオン交換クロマトグラフィー;色素ゲルクロマトグラフィー;電気泳動;透析;限外ろ過;アフィニティクロマトグラフィー;高速液体クロマトグラフィー;又はこれらの方法の組み合わせを使用することができる。
【0026】
リボフラビン-5’-リン酸は、リボフラビンの5’位リン酸化物である。また、本明細書における「リボフラビン-5’-リン酸」という用語は、化合物であるリボフラビン-5’-リン酸のみに限定されず、リボフラビン-5’-リン酸及びその塩を包含するものである。リボフラビン-5’-リン酸の塩とは、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩等を指す。リボフラビン-5’-リン酸又はその塩は、水溶液中で電離した状態で存在していてもよく、また、タンパク質等の分子中に取り込まれた状態のものであってもよい。本実施形態のリボフラビン-5’-リン酸又はその塩は、ポリリン酸、フェニルリン酸、アセチルリン酸、カルバミルリン酸及びそれらの塩からなる群より選ばれるリン酸供与体とリボフラビンとを反応させて得られる。
【0027】
リン酸供与体としては、ポリリン酸、フェニルリン酸、アセチルリン酸、カルバミルリン酸及びそれらの塩が挙げられる。具体的には、ポリリン酸及びその塩としては、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸、ペンタポリリン酸、トリメタリン酸、テトラメタリン酸、ヘキサメタリン酸等、若しくはそれらのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、又は、それらの混合物等が使用できる。フェニルリン酸及びその塩としては、フェニルリン酸、p-ニトロフェニルリン酸等、それらの無水物、若しくはナトリウム塩若しくはカリウム塩等のアルカリ金属塩、又は、それらの塩混合物等が使用できる。アセチルリン酸及びその塩としては、アセチルリン酸リチウムカリウム等が使用できる。カルバミルリン酸及びその塩としては、カルバミルリン酸ジナトリウム、カルバミルリン酸ジカリウム、カルバミルリン酸ジアンモニウム、カルバミルリン酸ジリチウム、又はそれらの混合物等が使用できる。
【0028】
ここで、本実施形態における反応工程、すなわち、微生物の菌体又は処理物の存在下で、ポリリン酸、フェニルリン酸、アセチルリン酸、カルバミルリン酸及びそれらの塩からなる群より選ばれるリン酸供与体とリボフラビンとを反応させる工程において、反応条件は特に限定されず、微生物の菌体又は処理物が基質であるリボフラビン及びリン酸供与体と十分に接触でき、その結果、リボフラビン-5’-リン酸を生成する条件であればいかなる条件を選択することもできる。例えば、基質(リボフラビン及びリン酸供与体)を含む水溶液に、微生物の菌体又は処理物を混合すればよい。上記の混合工程は、水性の均一系中、又は、水に実質的に不溶性若しくは水に難溶性の有機溶媒と水との二相系中で行うことができるが、一般的には、水のみを溶媒として用いるか、又は、水と混合する適当な有機溶媒(例えば、エタノール、メタノール、ジオキサン、ジメチルスルホキシド等)に基質を溶解し、得られた溶液を上記の微生物の菌体又は処理物を含む水溶液又は水中懸濁液に添加して用いてもよい。必要に応じて、微生物の菌体又は処理物及び/又は基質を一度に、逐次又は連続的に反応液中に添加することもできる。
【0029】
微生物の菌体又は処理物の使用量は、リボフラビン-5’-リン酸の生成反応が進行する条件であれば特に限定されない。微生物の菌体又は処理物の調製方法によって、その重量に対する活性が大きく異なるが、目安として、リボフラビンとの重量比にして、0.01〜1000倍、好ましくは0.1〜100倍である。また、基質であるリボフラビンの使用濃度は、反応系の全重量に対して0.01〜20重量%、好ましくは、0.1〜10重量%である。リン酸供与体の使用濃度は、リン酸受容体であるリボフラビンの濃度によって決定される。例えば、リボフラビンに対して0.1〜10倍、好ましくは1〜10倍である。
【0030】
反応液のpHは、pH 3〜8、好ましくはpH 4〜6であり、反応温度は、10〜60℃、好ましくは20〜40℃である。pHを安定させるために緩衝液を使用することもできる。緩衝液としては、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、酢酸緩衝液等を用いることができる。さらに、pHを調整するために、酸、塩基を使用することもできる。また、反応時間は、0.1〜200時間、好ましくは1〜50時間であるが、それぞれの微生物により適宜選択することができる。必要に応じて界面活性剤、有機溶剤等を反応液に添加することにより、リボフラビン-5’-リン酸の生成率を向上させることができる。生成物であるリボフラビン-5’-リン酸を連続的に取り出しながら、微生物の菌体又は処理物及び/又は基質を逐次又は連続的に添加する等によって、反応を継続させ、反応速度を高めることもできる。
【0031】
本実施形態における精製工程では、反応によって生成したリボフラビン-5’-リン酸を慣用の分離精製手段によって単離精製する。例えば、反応工程で得られた反応溶液又は反応溶液から菌体を分離した後の溶液を用いることができる。精製方法としては、膜分離、有機溶媒(例えば、トルエン、クロロホルム等)による抽出、カラムクロマトグラフィー、減圧濃縮、蒸留、晶析、再結晶等の通常の精製方法を使用することができる。また、反応溶液のpH調整により析出した目的物を含む析出物をろ過及び回収することにより、粗精製物を得ることができる。粗精製物は、必要により、吸着クロマトグラフィー、再結晶(エタノール、2-プロパノール等)等によりさらに精製することができる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0033】
(実施例1)
ブレブンディモナス ディミヌタ(Brevundimonas diminuta) NBRC13182をペプトン1.0%、酵母エキス 0.5%及びNaCl 1.0%を含む培地4 mLに接種し、30℃で24時間、振盪培養を行った。遠心分離によって得られた菌体をリボフラビン 5 mg、酸性ピロリン酸ナトリウム 12.5 mg、0.1 M 酢酸ナトリウム緩衝液(pH 4.0)0.5 mLに懸濁し、30℃で16時間、振盪し反応を行った。反応終了後、反応液を遠心分離して菌体を除去し、5’-FMNを含む溶液を得た。HPLC〔カラム:Inertsil ODS-3 直径4.6 mm×75 mm(GL sciences社製)、溶離液:50 mM NH4H2PO4(pH 6.0):アセトニトリル= 88:12、流速:2.0 mL/min、温度:40℃、検出波長:450 nm〕に付して、得られた溶液中の反応生成物の生成量を測定した結果、5’-FMN 278.4 mg/mLが生成蓄積していた。なお、リボフラビン-4’-リン酸、リボフラビン-3’-リン酸、リボフラビンジホスフェート、リボフラビンポリホスフェート等の副生物は全く生成しなかった。
【0034】
(実施例2〜28)
実施例1のブレブンディモナス ディミヌタ(Brevundimonas diminuta) NBRC13182の代わりに、表1に示す微生物をそれぞれ用い、実施例1と同様に反応を行った。反応液を実施例1と同様に処理した後、得られた溶液中の5’-FMN生成量をHPLC分析により測定した。その結果を表1に示す。
【0035】
【表1】


【0036】
(実施例29)
ブレブンディモナス ディミヌタ(Brevundimonas diminuta) NBRC13182を実施例1と同様に培養を行った。得られた菌体をリボフラビン4.7 mg(12.5mmoL)、表2に示すリン酸供与体それぞれ50 mmoL、0.1M 酢酸ナトリウム緩衝液(pH 4.0) 0.5 mLに懸濁し、30℃で16時間、振盪し反応を行った。反応液を実施例1と同様に処理した後、得られた溶液中の5’-FMN生成量をHPLC分析により測定した。その結果を表2に示す。
【0037】
(実施例30)
0.1M 酢酸ナトリウム緩衝液(pH 4.0)に代えて、0.1M 酢酸ナトリウム緩衝液(pH 5.0)を用いて、実施例29と同様の実験を行った。その結果を表2に示す。
【0038】
【表2】


【0039】
(実施例31)
ブレブンディモナス ディミヌタ(Brevundimonas diminuta) NBRC13182をペプトン 1.0%、酵母エキス 0.5%及びNaCl 1.0%を含む培地1 Lに接種し、30℃で24時間、振盪培養を行った。遠心分離によって得られた菌体(14.7g)を0.1 M 緩衝液(pH 4.0)1 Lに懸濁し、リボフラビン 10.0 g、酸性ピロリン酸ナトリウム 25.0 gを加え、30℃で45時間、振盪し反応を行った。反応終了後、反応液を遠心分離して菌体を除去し、5’-FMNを含む溶液1Lを得た。得られた反応上清を28% NaOHにてpH 5.5に調整後、減圧濃縮し、析出した不溶物をろ取した。残渣をクロマトグラフィーカラム(SEPABEADSSP207(三菱化学社製);200 mL)に吸着し、水から50%メタノール水溶液で溶出した。5’-FMNを含む画分を集め、0.1N 塩酸水でpH 5.5に調整し、20 mLまで濃縮後、活性炭(50%湿体)20 mgを投入し、60℃で30分攪拌した。活性炭をろ別後、ろ液を濃縮乾固した。残渣を水 1 mLに溶解後、エタノール4 mLを加え、析出した粉末をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥し、橙色粉末の5’-FMN-Na 247 mgを得た。得られた粉末をHPLC〔カラム:Inertsil ODS-3 直径4.6 mm×75 mm(GL sciences社製)、溶離液:50 mM NH4H2PO4(pH 6.0):アセトニトリル = 88:12、流速:0.5 mL/min、温度:40℃、検出波長:266 nm、試料濃度:1.0 mg/mL〕に付して評価した結果、以下の組成であった。
【0040】
【表3】



【出願人】 【識別番号】390010205
【氏名又は名称】第一ファインケミカル株式会社
【出願日】 平成19年5月25日(2007.5.25)
【代理人】 【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹

【識別番号】100092657
【弁理士】
【氏名又は名称】寺崎 史朗

【識別番号】100126653
【弁理士】
【氏名又は名称】木元 克輔


【公開番号】 特開2008−289434(P2008−289434A)
【公開日】 平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願番号】 特願2007−139584(P2007−139584)