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【発明の名称】 バイオエタノールの製造方法および装置
【発明者】 【氏名】岩渕 一徳

【氏名】高木 康夫

【氏名】小川 斗

【要約】 【課題】バイオマスを原料としてエネルギー効率高く経済性良くエタノールを製造することのできるバイオエタノールの製造方法および装置提供する。

【解決手段】バイオマスの水スラリーを4〜40MPaに加圧する加圧ポンプ17と、前記水スラリーを火力発電装置1のボイラ2から供給される蒸気と熱交換させて前記圧力での飽和温度以下かつ250〜400℃に加熱してバイオマスに含有されるヘミセルロースおよびセルロースを加水分解して糖を生成する反応器18と、生成された糖を供給されてエタノールを生成するエタノール発酵装置23とを備えている構成とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスの水スラリーを4〜40MPaに加圧する加圧ポンプと、前記水スラリーを火力発電装置のボイラから供給される蒸気と熱交換させて前記圧力での飽和温度以下かつ250〜400℃に加熱して前記バイオマスに含有されるヘミセルロースおよびセルロースを加水分解して糖を生成する反応器と、前記生成された糖を供給されてエタノールを生成するエタノール発酵装置とを備えていることを特徴とするバイオエタノールの製造装置。
【請求項2】
前記火力発電装置のボイラから供給される蒸気は、第1段過熱器から抽気した過熱蒸気であることを特徴とする請求項1に記載のバイオエタノールの製造装置。
【請求項3】
加水分解後の水スラリーを前記火力発電装置の低温復水または給水ポンプから吐出した高圧低温復水によって冷却する冷却器を備えていることを特徴とする請求項1に記載のバイオエタノールの製造装置。
【請求項4】
前記ボイラの供給燃料が石炭であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のバイオエタノールの製造装置。
【請求項5】
前記反応器の内部圧力を前記火力発電装置から供給される蒸気または復水の圧力より低く制御することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のバイオエタノールの製造装置。
【請求項6】
前記反応器は、温度の異なる複数の反応器からなることを特徴とする請求項1に記載のバイオエタノールの製造装置。
【請求項7】
前記火力発電装置のボイラのドラムの蒸気によって加熱される反応器と、前記火力発電装置の第1段過熱器から抽気された過熱蒸気によって加熱される反応器とを備えていることを特徴とする請求項6に記載のバイオエタノールの製造装置。
【請求項8】
前記複数の反応器の間に固体と液体を分離する固液分離機を備えていることを特徴とする請求項6または7に記載のバイオエタノールの製造装置。
【請求項9】
前記反応器の加熱または冷却に用いる蒸気または冷却水の流量を調整する流量調整器を備えていることを特徴とする請求項1に記載のバイオエタノールの製造装置。
【請求項10】
バイオマスの水スラリーを圧力4〜40MPaに加圧し、加圧された水スラリーを火力発電装置のボイラから供給される蒸気と反応器内で熱交換させることにより前記圧力での飽和温度以下かつ250〜400℃の範囲の温度に加熱して前記バイオマスに含有されるヘミセルロースおよびセルロースを加水分解して糖を生成し、加熱に使用した蒸気を発電のための熱源として前記火力発電装置に戻すことを特徴とするバイオエタノールの製造方法。
【請求項11】
分離されたリグニンを前記火力発電装置のボイラの燃料として使用することを特徴とする請求項10に記載のバイオエタノールの製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、木材やとうもろこしの茎などのバイオマスを構成しているリグノセルロースからエタノールを製造するバイオエタノールの製造方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガソリンの代替燃料としてエタノールが注目を集めているが、エタノールは従来は、とうもろこしや砂糖などの可食原料を用いて作られている。しかし、とうもろこしは主に家畜の飼料であり、砂糖は人が食べる食料であるために、このような可食原料では安定した供給に限界がある。そこで、木材やとうもろこしの茎などのバイオマスを構成しており現在は有効利用されていない、また豊富な資源のあるリグノセルロースを原料としたエタノール製造が必要とされている。
【0003】
リグノセルロースはそのままでは大変分解しにくい物質であるために、まず、高温・高圧、または濃酸でセルロースとリグニンの分離を行い、そのセルロースをセルラーゼと言う特殊な酵素で糖に分解する。このように糖に分離すれば、通常の発酵プロセスにより、エタノールを抽出することができる(非特許文献1)。また、もう一つの方法として、薬品をまったく使わず、亜臨界水または超臨界水を用いてリグノセルロースを一度に発酵可能な糖に変換する方法がある(特許文献1)。さらに、発電システムの廃棄熱をエタノール製造に利用する方法も提案されている(特許文献2,3)。しかしいずれの方法も、開発途上の技術であり、十分な経済性があるとはいえない。
【非特許文献1】NEDO海外レポート No.977(2006.4.26) PP58-60
【特許文献1】特開2005−206468号公報
【特許文献2】特開平11−169188号公報
【特許文献3】特開2004−261696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先にも述べたように、従来のリグノセルロースを原料として用いるエタノール製造プロセスは、多種類があるが、いずれの方法も、反応に時間がかかったり、収率に問題があるなど、大変高コストであるために実用化には至っていない。特に、濃酸を用いる方法では、その薬剤費及び回収・中和などに大きなコストが必要とされる。一方、亜臨界水または超臨界水を用いる方法においては、エネルギー効率が非常に重要であり、特許文献1に見られるように、電気ヒータを用いるなど、エネルギー効率が最も大きなコスト要因であるにもかかわらず、まったく考慮されてこなかった。
【0005】
そこで本発明は、バイオマスを原料としてエネルギー効率高く経済性良くエタノールを製造することのできるバイオエタノールの製造方法および装置提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明のバイオエタノールの製造装置は、バイオマスの水スラリーを4〜40MPaに加圧する加圧ポンプと、前記水スラリーを火力発電装置のボイラから供給される蒸気と熱交換させて前記圧力での飽和温度以下かつ250〜400℃に加熱して前記バイオマスに含有されるヘミセルロースおよびセルロースを加水分解して糖を生成する反応器と、前記生成された糖を供給されてエタノールを生成するエタノール発酵装置とを備えている構成とする。
【0007】
本発明のバイオエタノールの製造方法は、バイオマスの水スラリーを圧力4〜40MPaに加圧し、加圧された水スラリーを火力発電装置のボイラから供給される蒸気と反応器内で熱交換させることにより前記圧力での飽和温度以下かつ250〜400℃の範囲の温度に加熱しして前記バイオマスに含有される前記ヘミセルロースおよびセルロースを加水分解して糖を生成し加熱に使用した蒸気を発電のための熱源として前記火力発電装置に戻す製造方法とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、バイオマスを原料としてエネルギー効率高く経済性良くエタノールを製造することのできるバイオエタノールの製造方法および装置提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の2つの実施の形態を図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態のバイオエタノールの製造装置は、図1に示すように、石炭火力発電装置1と、ホッパー14と、粉砕機15と、ミキサー16と、加圧ポンプ17と、加水分解反応器18と、冷却器19と、減圧弁20と、固液分離機21と、フィルタ22と、エタノール発酵装置23とから構成されている。石炭火力発電装置1は、ボイラ2と、蒸気タービン8と、発電機9と、復水器11と、給水加熱器12と、給水ポンプ13とから構成され、ボイラ2は、節炭器3と、ドラム4と、蒸発器5と、過熱器6および7とから構成されている。
【0010】
ホッパー14に投入された木屑等のバイオマスを粉砕機15によって粉砕し、ミキサー16で水と混合してスラリーとし、このスラリーを加圧ポンプ17で加圧して加水分解反応器18に供給する。加水分解反応器18では、石炭火力発電装置1から供給される高温の水蒸気の熱によって加熱し、図2の斜線を施した範囲の温度・圧力において、バイオマスのリグノセルロースを構成するヘミセルロース、セルロース、リグニンのうちヘミセルロースとセルロースを加水分解して糖を生成する。この糖とリグニンを含む水溶液は、冷却器19で冷却され、減圧弁20で減圧され、固液分離機21によってリグニンを含む水不溶部が固体として取り除かれる。糖を含む液体はフィルタ22を通してエタノール発酵装置23に供給される。
【0011】
本実施の形態の特徴は、超臨界水または亜臨界水を用いたエタノール製造コストの決定的要因であるエネルギーコストを最小にするために、石炭火力発電装置1と併設したことである。石炭火力発電装置の蒸気製造コストは、石炭の価格が化石燃料の中では最も安価なことから、最も安価である。これにより、必要な高温・高圧(250〜400℃、4〜40MPa)が安価に得られる。そしてこのような高温・高圧においては水はイオン積が大きく、加水分解作用を行う。
【0012】
本実施の形態では、最も高温・高圧の必要な加水分解反応器18の熱を供給するために、ボイラ2の第1段の過熱器6より取り出した高温蒸気を用いる。第1段の過熱器6は十分高圧であるために、加水分解反応器18に仮に漏れが生じても、木屑等のバイオマスがボイラ蒸気に混入することはない。また、ここで加熱に用いた蒸気は、大きな温度低下はないので第2段の過熱器7に戻してさらに加熱し蒸気タービン8に供給して発電に用いる。加水分解反応器18は容器内に配管を有する一種の熱交換器である。反応器18の容器内の圧力を配管内の蒸気圧力より低く保つように制御する。これにより、反応器18にかかるストレスを低減することができる。また、冷却器19も一種の熱交換器であるが、その冷却水として復水器11の出口からの低温のボイラ給水を用いる。この場合もボイラ給水は十分に圧力が高いので、冷却器19の内容物がボイラ給水に混入するのを防ぐことが容易である。また、冷却器19のストレスを小さくすることができる。
【0013】
本実施の形態によれば、石炭火力発電装置1で生成される高温蒸気の熱を利用するので、極めて小さなエネルギー消費でバイオマスからエタノールを製造することができ、低コスト化を図ることができる。
【0014】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態のバイオエタノールの製造装置は、図3に示すように、石炭火力発電装置1と、ホッパー14と、粉砕機15と、ミキサー16と、加圧ポンプ17と、加水分解反応器18と、固液分離機24と、加水分解反応器26と、冷却器19と、減圧弁20と、固液分離機21と、フィルタ22と、エタノール発酵装置23とから構成されている。石炭火力発電装置1は、ボイラ2と、蒸気タービン8と、発電機9と、復水器11と、給水加熱器12と、給水ポンプ13とから構成され、ボイラ2は、節炭器3と、ドラム4と、蒸発器5と、過熱器6および7とから構成されている。
【0015】
ホッパー14に投入された木屑等のバイオマスを粉砕機15によって粉砕し、ミキサー16で水と混合してスラリーとしこのスラリー混合物を加圧ポンプ17で加圧して加水分解反応器18に供給する。加水分解反応器18では、石炭火力発電装置1から供給される高温の水蒸気の熱によってバイオマスのリグノセルロースを構成するヘミセルロース、セルロース、リグニンのうち主としてヘミセルロースを加水分解して糖を生成する。このセルロースとリグニンと糖を含む水スラリーは固液分離機24に供給されて固液分離され、糖を含む液体は減圧弁25を経て後段のフィルタ22に供給される。セルロースとリグニンを含む固体は水を加えられて加水分解反応器26に供給され、ここでセルロースが加水分解され糖を生成する。この糖とリグニンを含む水溶液は、冷却器19で冷却され、減圧弁20で減圧され、固液分離機21によってリグニンが固体として取り除かれる。糖を含む液体はフィルタ22を通してエタノール発酵装置23に供給される。
【0016】
本実施の形態は、加水分解反応器を2段階としたものである。木材等は、一般的に、ヘミセルロース、セルロース、リグニンからなり、それぞれ加水分解の難度が異なる。比較的加水分解の容易なヘミセルロースは、300度以下の温度が望ましい。一方、セルロースは、300度を超える温度が適切である。一方、あまりに高温・高圧の条件下では、加水分解のみでなく、さらに進んで糖ではない形まで分解してしまう。それでは効率が低下するので、本実施の形態では、2段の加水分解反応器としている。第1段の反応器18は比較的低温であり、ヘミセルロースを主に分解する。その後、高圧の状態で液分を抽出する。次に、反応器26にてさらに高温化して、セルロースを分解する。
【0017】
熱効率を向上させるために、反応器18の熱源はドラム蒸気を抽気する。反応器26の熱源は第1段過熱器6の蒸気を用いる。このように効率的に熱を利用することにより極めて効率の良いプラントを実現することができる。
【0018】
本実施の形態によれば、多段反応器とすることにより効率よく木材等の原料から発酵容易な糖類を製造することができ、従来の課題であったエタノール製造コスト削減に大きく寄与する。
【0019】
なお上記2つの実施の形態において、冷却器19の冷却水を給水ポンプ13から吐出された高圧低温復水からとる構成としてもよい。また、加水分解反応器18,26に供給される蒸気の流量調整器および冷却器19に供給される復水の流量調整器を設けた構成としてもよい。さらに、固液分離機21で分離された主にリグニンからなる固体をボイラ2の燃料としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施の形態のバイオエタノールの製造装置の構成を示すブロック図。
【図2】本発明の第1の実施の形態のバイオエタノールの製造装置に備えられる加水分解反応器の温度・圧力範囲を示す図。
【図3】本発明の第2の実施の形態のバイオエタノールの製造装置の構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0021】
1…石炭火力発電装置、2…ボイラ、3…節炭器、4…ドラム、5…蒸発器、6,7…過熱器、8…蒸気タービン、9…発電機、11…復水器、12…給水加熱器、13…給水ポンプ、14…ホッパー、15…粉砕機、16…ミキサー、17…加圧ポンプ、18…加水分解反応器、19…冷却器、20…減圧弁、21…固液分離機、22…フィルタ、23…エタノール発酵装置、24…固液分離機、25…減圧弁、26…加水分解反応器。
【出願人】 【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
【出願日】 平成19年1月29日(2007.1.29)
【代理人】 【識別番号】100087332
【弁理士】
【氏名又は名称】猪股 祥晃

【識別番号】100081189
【弁理士】
【氏名又は名称】猪股 弘子

【識別番号】100145816
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿股 俊雄


【公開番号】 特開2008−182925(P2008−182925A)
【公開日】 平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願番号】 特願2007−18010(P2007−18010)