トップ :: C 化学 冶金 :: C12 生化学;ビ−ル;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学

【発明の名称】 ヒト由来プロレニン受容体の製造方法、ヒト由来プロレニン受容体阻害剤のスクリーニング方法、プロレニン濃度の測定方法及び抗ヒト由来プロレニン受容体抗体
【発明者】 【氏名】朴 龍洙

【氏名】鈴木 文昭

【要約】 【課題】ヒト由来プロレニン受容体を効率よく大量に製造可能な製造方法を提供する。

【解決手段】miniFレプリコンと、BmNPV DNAと、トランスポゾンの付着部位と、ヒト由来プロレニン受容体をコードするポリヌクレオチド配列と、を含むBmNPVシャトルベクターを、カイコガ由来の細胞に導入することによってヒト由来プロレニン受容体を製造する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
miniFレプリコンと、BmNPV DNAと、トランスポゾンの付着部位と、ヒト由来プロレニン受容体をコードするポリヌクレオチド配列と、を含むBmNPVシャトルベクターを、カイコガ由来の細胞に導入する工程を含むヒト由来プロレニン受容体の製造方法。
【請求項2】
前記BmNPVシャトルベクターが、昆虫由来の分泌シグナル配列を更に含み、
前記カイコガ由来の細胞が、カイコガの幼虫の細胞またはカイコガの蛹の細胞であって、
カイコガの幼虫の体液またはカイコガの蛹から、ヒト由来プロレニン受容体を回収する回収工程を更に含むことを特徴とする請求項1に記載のヒト由来プロレニン受容体の製造方法。
【請求項3】
前記ヒト由来プロレニン受容体をコードするポリヌクレオチド配列が、配列番号1または配列番号2で表されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のヒト由来プロレニン受容体の製造方法。
【請求項4】
前記BmNPVシャトルベクターが、ウイルス由来のプロテアーゼ遺伝子の少なくとも1種を欠損していることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のヒト由来プロレニン受容体の製造方法。
【請求項5】
前記BmNPVシャトルベクターが、精製用タグ、マーカー及びエンテロキナーゼ認識部位から選ばれるいずれかの精製用ペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の少なくとも1種を更に含有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のヒト由来プロレニン受容体の製造方法。
【請求項6】
前記昆虫由来の分泌シグナル配列が、カイコ脳神経ペプチドホルモンBombyxin由来の分泌シグナル配列bx、またはフェノール酸化酵素前駆体活性化酵素由来の分泌シグナル配列ppaeであることを特徴とする請求項2〜請求項5のいずれか1項に記載のヒト由来プロレニン受容体の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の製造方法により得られたヒト由来プロレニン受容体とプロレニン受容体阻害剤との結合活性を測定する工程を含むプロレニン受容体阻害剤のスクリーニング方法。
【請求項8】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の製造方法により得られたヒト由来プロレニン受容体を用いて、プロレニンのレニン活性を測定する工程を含むプロレニン濃度の測定方法。
【請求項9】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の製造方法により得られたヒト由来プロレニン受容体と特異的に結合する抗ヒト由来プロレニン受容体抗体。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト由来プロレニン受容体の製造方法及びヒト由来プロレニン受容体阻害剤のスクリーニング方法、プロレニン濃度の測定方法及び抗ヒト由来プロレニン受容体抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
プロレニンは、本来レニン活性を示さないレニン前駆体物質であり、腎臓にのみ存在するレニン顆粒中で酵素分解を受けてレニンに変換されて、レニン活性を示すようになることが知られている。
近年、種々の細胞表面に存在し、プロレニンと結合することでレニン活性を示すプロレニン受容体が見出され、その機能が注目されている。例えば、糖尿病患者が合併症を併発すると血中のプロレニン濃度が上昇することが知られており、糖尿病におけるプロレニンとプロレニン受容体の役割について研究が進められている。従来、このようなプロレニン受容体は生物組織から単離、精製されて種々の研究に利用されているが、その機能を明らかにするのに十分な量を得ることは困難であった。
機能解析等に十分な量のタンパク質を得るために、タンパク質の発現には微生物発現系が広く用いられているが、プロレニン受容体の発現については、生物活性がほとんどないものしか得られていない。
【0003】
バキュロウイルス遺伝子発現系は、真核生物である昆虫由来の培養細胞中で組換えタンパク質を生産するため、糖鎖付加、リン酸化などの翻訳後修飾が行われるため、活性を有する組換えタンパク質の大量生産に適している。
昆虫由来培養細胞を用いてプロレニン受容体を生産する方法としては、バキュロウイルスを昆虫由来の培養細胞に感染させて、ラット由来プロレニン受容体を生産する方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
さらに効率よく組換え遺伝子の発現を行うために、カイコ発現系に利用されるカイコガ核多角体病ウイルス(BmNPV)をBAC(Bacterial Artificial Choromosome)クローン化できるBmNPVシャトルベクター(バクミド)が開発され、大腸菌体内でのクローニングや組換えウイルスの構築を迅速に行うことができるようになった(例えば、特許文献1参照)。
また、培養細胞を用いたプロレニン受容体の発現を検討した例として、ラット由来のプロレニン受容体を培養細胞に発現させてレニン活性について検討した研究例が知られている(例えば、非特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−173507号公報
【非特許文献1】Int. J. Mol. Med., (2006) 18, p.483-488
【非特許文献2】J. Hypertens. (2005), 23(Suppl 2): S259
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1に記載の方法では、プロレニン受容体の機能を詳細に検討するのに十分な発現量を得ることは困難であった。
また、非特許文献2に記載のラット由来のプロレニン受容体の製造方法では、ラット由来のプロレニン受容体が得られるのみである。プロレニン受容体は種特異性が高いために、ヒト以外の種に由来するプロレニン受容体ではヒト由来プロレニンとの結合活性が不十分である可能性が高い。更に昆虫由来の培養細胞を用いた方法では、培養細胞の取り扱いに困難性があり、また、多くの夾雑物を含む培養細胞の細胞質から目的のプロレニン受容体を単離、精製する必要があり、大量生産性にも限界があった。
【0005】
したがって、本発明は、ヒト由来プロレニン受容体を効率よく大量に生産することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
本発明の製造方法は、miniFレプリコンと、BmNPV DNAと、トランスポゾンの付着部位と、ヒト由来プロレニン受容体をコードするポリヌクレオチド配列と、を含むBmNPVシャトルベクターを、カイコガ由来の細胞に導入する工程を含むヒト由来プロレニン受容体の製造方法である。
ここで、前記BmNPVシャトルベクターが、昆虫由来の分泌シグナル配列を更に含み、前記カイコガ由来の細胞が、カイコガの幼虫の細胞またはカイコガの蛹の細胞であって、カイコガの幼虫の体液またはカイコガの蛹から、ヒト由来プロレニン受容体を回収する回収工程を更に含むことが好ましい。
【0007】
また、前記ヒト由来プロレニン受容体をコードするポリヌクレオチド配列が、配列番号1又は配列番号2で表されるポリヌクレオチド配列であることが好ましい。
また、前記BmNPVシャトルベクターがウイルス由来のプロテアーゼ遺伝子の少なくとも1種を欠損させたものであることが好ましく、精製用タグ、マーカー及びエンテロキナーゼ認識部位から選ばれるいずれかの精製用ペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を更に含むことがより好ましい。
更に、前記昆虫由来の分泌シグナル配列が、カイコガ脳神経ペプチドホルモンBombyxin由来の分泌シグナル配列bxまたはフェノール酸化酵素前駆体活性化酵素由来の分泌シグナル配列ppaeのいずれかであることが好ましい。
【0008】
また、本発明のスクリーニング方法は、本発明のヒト由来プロレニン受容体の製造方法によって製造されたヒト由来プロレニン受容体とプロレニン受容体阻害剤との結合活性を測定する工程を含むことを特徴とするプロレニン受容体阻害剤のスクリーニング方法である。
【0009】
また、本発明のプロレニン濃度の測定方法は、本発明のヒト由来プロレニン受容体の製造方法によって製造されたヒト由来プロレニン受容体を用いて、プロレニンのレニン活性を測定する工程を含むことを特徴とするプロレニン濃度の測定方法である。
【0010】
また、本発明の抗ヒト由来プロレニン抗体は、本発明のヒト由来プロレニン受容体の製造方法によって製造されたヒト由来プロレニン受容体と、特異的に結合することを特徴とする抗ヒト由来プロレニン受容体抗体である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ヒト由来プロレニン受容体を効率よく大量に生産することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のヒト由来プロレニン受容体の製造方法は、miniFレプリコンと、BmNPV DNAと、トランスポゾンの付着部位と、ヒト由来プロレニン受容体をコードするポリヌクレオチド配列と、を含むBmNPVシャトルベクターを、カイコガ由来の細胞に導入する工程を含む。
ヒト由来プロレニン受容体をコードするポリヌクレオチド配列を含むBmNPVシャトルベクターを用いることで、カイコガ由来の細胞中でヒト由来プロレニン受容体を効率よく大量に製造することができる。
【0013】
まず、本発明におけるBmNPVシャトルベクターについて説明する。
本発明におけるminiFレプリコンは、大腸菌DH5αF’IQより分離したプラスミド由来の配列であって複製に必要な領域を意味する。このminiFレプリコンは、例えばF’レプリコンから得ることができる。このminiFレプリコンの構造は、例えば特開2004−173507号公報に開示されている。
【0014】
BmNPVは、カイコガの幼虫、カイコガの蛹およびカイコガ由来の培養細胞に感染して、感染細胞の核内に多角体をつくるカイコガ核多角体病ウイルス(Bombyx mori nucleopolyhedrovirus)を意味し、「BmNPV DNA」は、BmNPVのDNA配列を意味する。
トランスポゾン(Tn)の付着部位とは、ドナーベクター内のトランスポゼース認識配列に挟まれた外来遺伝子(発現目的遺伝子)を、転位酵素トランスポゼースによりシャトルベクター内の標的部位に挿入させるための配列である。トランスポゾンの付着部位としては、Tn7の付着部位mini−attTn7、Tn3の付着部位およびTn4の付着部位などが挙げられる。このトランスポゾン(Tn)の付着部位は、例えば、lacZ遺伝子(例えば、lacZα遺伝子)に含まれている。
【0015】
この他、ベクターの構造の確認及び選別のために、種々のマーカー配列及び選択用配列等の補助配列を含んでもよい。外来遺伝子がシャトルベクター上に挿入されたことを確認するために利用されるマーカー配列としては、例えば、LacZ遺伝子、GFP遺伝子、薬剤耐性遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子等を挙げることができる。目的とする構造のベクターを選択するための選択用配列としては、薬剤耐性遺伝子、例えば、カナマイシン耐性遺伝子やアンピシリン耐性遺伝子などを挙げることができる。これらの補助配列は、当業者により適宜選択することができる。
【0016】
miniFレプリコン、BmNPV DNA及びトランスポゾンの付着部位から構成されたBmNPVシャトルベクターの基本骨格は、公知の方法で作製することができ、例えば特開2004−173507号公報や、Biochemical and Biophysica Research Communications 326 (2005) 564-9569などに記載されている。
【0017】
本発明におけるヒト由来プロレニン受容体をコードするポリヌクレオチド配列は、ヒト由来であってプロレニンと結合してレニン活性を発現するタンパク質をコードするものであればよいが、プロレニンとの結合活性の観点から、下記表1に示す配列番号1または配列番号2で表されるポリヌクレオチド配列であることが好ましい。
配列番号1で表されるポリヌクレオチド配列は、膜貫通領域を含まないヒト由来プロレニン受容体をコードするポリヌクレオチド配列であり、配列番号2で表されるポリヌクレオチド配列は、膜貫通領域含むヒト由来プロレニン受容体をコードするポリヌクレオチド配列である。配列番号2で表されるポリヌクレオチド配列から、膜貫通領域を欠損させたポリヌクレオチド配列が、配列番号1で表されるポリヌクレオチド配列に該当する。
本発明においては、ヒト由来プロレニン受容体の回収効率を向上させることができる点で、膜貫通領域を含まないヒト由来プロレニン受容体をコードするポリヌクレオチド配列であることが好ましく、配列番号1で表されるポリヌクレオチド配列を用いることがより好ましい。
【0018】
【表1】



【0019】
ヒト由来プロレニン受容体をコードするポリヌクレオチドは、例えば、ヒト由来のcDNAライブラリ(例えば、AF291814)から取得することができる。また、プラスミドpcDNA3−FLAG−hRRcを鋳型として下記表2に示すPCRプライマーセット(配列番号3、4、5)を用いてPCRによって取得することができる。例えば、配列番号3と配列番号4で表されるPCRプライマーセットを用いることで、膜貫通領域を含むヒト由来プロレニン受容体をコードするポリヌクレオチド配列を取得することができ、また、配列番号3と配列番号5で表されるPCRプライマーセットを用いることで、膜貫通領域を含まないヒト由来プロレニン受容体をコードするポリヌクレオチド配列を取得することができる。
【0020】
【表2】



【0021】
本発明におけるBmNPVシャトルベクターは、miniFレプリコン、BmNPV DNA及びトランスポゾンの付着部位から構成されたBmNPVシャトルベクターの基本骨格に対して、ヒト由来プロレニン受容体をコードするポリヌクレオチドを含む挿入フラグメントを相同組換えして得ることができる。
【0022】
前記挿入フラグメントは、前記ヒト由来プロレニン受容体をコードするポリヌクレオチドを含んでいればよいが、昆虫由来の分泌シグナル配列を更に含んでいることが好ましい。これにより目的とするヒト由来プロレニン受容体をカイコ細胞外に分泌させることができる。
昆虫由来の分泌シグナル配列としては、公知の分泌シグナル配列を適宜選択して用いることができるが、分泌効率の観点から、下記表3に示すカイコ脳神経ペプチドホルモンBombyxin由来の分泌シグナル配列bx(例えば、配列番号5)、またはフェノール酸化酵素由来の分泌シグナル配列ppae(例えば、配列番号6)のいずれかであることが好ましく、分泌シグナル配列bxであることがより好ましい。
【0023】
【表3】



【0024】
また、前記挿入フラグメントは、精製用タグ、マーカー及びエンテロキナーゼ認識部位から選ばれる精製用ペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の少なくとも1種を、更に含むことが好ましい。これにより、目的とするヒト由来プロレニン受容体の精製が容易になる。
【0025】
精製用タグとしては、公知のものを特に制限なく用いることができる。例えば、Flagタグ、Hisタグ、Sタグ、Trxタグ、CBDタグ、HSVタグ等を挙げることができ、回収率が高いことから、FlagタグまたはHisタグが好ましい。
本発明においては、2種以上のタグを組合せて用いることもできる。これにより、発現したタンパク質の検出や同定がより容易になる。タグの組合せには、特に制限はないが、FlagタグとHisタグを組合せて用いることが好ましい。
【0026】
マーカーをコードするポリヌクレオチド配列としては、例えば、LacZ遺伝子、GFP遺伝子、GFPuv遺伝子、薬剤耐性遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子等を挙げることができる。本発明においては、ヒト由来プロレニン受容体の発現を容易に検出できることから、GFP遺伝子又はGFPuv遺伝子を用いることが好ましく、GFPuv(特に緑色蛍光が強いタンパク質)の遺伝子を用いることがより好ましい。
【0027】
前記挿入フラグメントは、エンテロキナーゼ認識部位(EK−site)をコードするポリヌクレオチド配列を更に含んでいることが好ましい。これにより発現したタンパク質からヒト由来プロレニン受容体を切断して取り出すことが容易になる。
【0028】
上記分泌シグナル配列、精製用ペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、当業界で既知の手法をそのまま用いることで、ヒト由来プロレニン受容体をコードするポリヌクレオチド配列に連結することができる。これにより、分泌シグナルペプチドと精製用ペプチドとヒト由来プロレニン受容体との融合タンパク質を製造することができる。
【0029】
本発明において前記挿入フラグメントは、トランスポゾン(Tn)の両末端の配列を有するドナープラスミドに組み込み、λリコンビネーション系を用いた相同組換えによって、miniFレプリコン、BmNPV DNA及びトランスポゾンの付着部位から構成されたBmNPVシャトルベクターの基本骨格に組換えることが好ましい。これにより、本発明に用いるBmNPVシャトルベクターを効率よく作製することができる。
【0030】
本発明において利用されるλリコンビネーション系とは、Murphyの文献(J. Bacteriology, (1998) p.2063-2071)に記載されているものである。
このλリコンビネーション系とは、λバクテリオファージで機能するリコンビネーション系であり、大腸菌内で作用することが知られている。これは、gam、bet、exoで構成されており、Gamは、宿主のRecBCDとエクソヌクレアーゼVを阻害し、Bet及びExoがDNA末端に接近することができ、これら両者が相互作用することによって効率的な相同組換えが促進される。
Gam、Bet、Exoを発現させるために発現ベクターを用いてもよい。ここで使用される発現ベクターは、大腸菌において機能可能な発現系を有するものであればよく、例えば、アラビノースオペロン制御下で発現するようにクローン化されたプラスミドが用いられる。このようなプラスミドとしては、一般に使用されているものであればよく、例えばpUC18等を挙げることができる。
【0031】
上記プラスミド(ヘルパープラスミドともいう)は、当業界では既知であり、主としてトランスポゼース遺伝子配列と選択マーカー配列とを有するものである。目的タンパク質を発現するBmNPVシャトルベクター作成のために使用されるトランスポゼースは、使用されるトランスポゾンの種類に応じて適宜選択可能である。このようなヘルパープラスミドは、例えばインビトロジェン社から購入することができる。
【0032】
λリコンビネーションは、λリコンビネーション系が作用可能な大腸菌(コンピテントセル)内において行われる。このような大腸菌としては、DH10B、DH5αなどを挙げることができる。これらのコンピテントセルには、予めトランスポゼースを発現するヘルパープラスミドが組み込まれているので、前記ドナープラスミドとBmNPVシャトルベクターとをコンピテントセル内で共存させることで、BmNPVシャトルベクターにドナープラスミドからヒト由来プロレニン受容体を含む挿入フラグメントを、相同組換えによって挿入することができる。
また、相同組換えによって得られたBmNPVシャトルベクターは、上記コンピテントセル内で増殖させることができる。
【0033】
コンピテントセルへの各種核酸の導入には、通常用いられる手段をそのまま適用することができ、例えばエレクトロポレーションなどの電気的手法や、塩化カルシウム法などの薬剤を用いた化学的手法を挙げることができる。このうち、導入効率の観点から電気的手法であることが好ましい。
相同組換えは、バクミド及び挿入フラグメントを含む細胞を、λリコンビナーゼが作用可能な条件下に供することによって容易に実行することができる。このような条件は、通常の酵素活性化条件でよく、例えば37℃の温度で、1時間程度で行うことができる。
【0034】
本発明におけるBmNPVシャトルベクターは、ウイルス由来のプロテアーゼ遺伝子の少なくとも1種を欠損していることが好ましい。これにより目的とするヒト由来プロレニン受容体をより効率よく生産することができる。前記ウイルス由来のプロテアーゼ遺伝子はBmNPV DNA上に存在するプロテアーゼ遺伝子であることが好ましく、システインプロテアーゼ遺伝子であることがより好ましい。
このシステインプロテアーゼ遺伝子とは、BmNPV DNA上に存在すると共に製造するタンパク質の分解及び組織等の液化を生じさせる原因プロテアーゼをコードする遺伝子を意味する。
【0035】
BmNPV DNA上には、カテプシンLに類似した特徴を有するプロテアーゼ遺伝子(v-cath)をコードするアミノ酸配列と相同性を有するシステインプロテアーゼの遺伝子がコードされている。BmNPVにおけるシステインプロテアーゼ遺伝子は、システインプロテアーゼのパパインファミリーの活性部位がよく保存されており、システインプロテアーゼ阻害剤のE64によって阻害される。本発明において欠損の対象となるシステインプロテアーゼ遺伝子には、v-cathと相同性のある遺伝子、好ましくは90%以上の相同性を有する遺伝子、更に好ましくは96.3%の相同性を有する遺伝子(配列番号8)が該当する。
本発明において欠損の対象となるシステインプロテアーゼ遺伝子は、機能的に有効な酵素としてのシステインプロテアーゼを生成しないように欠損されていればよく、全長が欠損していてもよい。
【0036】
本発明において、ウイルス由来のプロテアーゼ遺伝子を欠損させたBmNPVシャトルベクターは、例えば、BmNPV DNA上に存在するシステインプロテアーゼ遺伝子の上流及び下流と相同性を有する一対の相同配列、並びに該相同配列間に配置された挿入配列から構成されているノックアウト用挿入フラグメントを相同組換えによって、システインプロテアーゼ遺伝子と組換えることで作製することができる。
相同組換えは、例えば、上述したλリコンビネーション系を用いて好適に行うことができる。
【0037】
前記ノックアウト用挿入フラグメントに含まれる一対の相同配列は、上記システインプロテアーゼ遺伝子と相同組換えを起こさせるために、この遺伝子の両端側のそれぞれ所定の領域の配列と相同性を有する配列である。相同配列は、システインプロテアーゼ遺伝子の両側に配置されて相同組換え可能な程度の長さがあればよく、例えば30〜200bpの範囲で変更することができる。組換え精度の観点からは、100〜200bpが好ましく、経済的な観点からは30〜50bpが好ましい。これら双方の観点を考慮すれば、好ましくは50〜75bp、さらに好ましくは36〜50bpの長さにすることができる。
この相同配列は、システインプロテアーゼ遺伝子に対して完全に相同組換えを起こさせるために、システインプロテアーゼ遺伝子のコード領域よりも外側にそれぞれ配置されていることが好ましく、特に、上流側に配置された相同配列については、システインプロテアーゼ遺伝子のプロモータ領域よりも上流側に配置されていることが特に好ましい。これにより、プロモータ配列を含む広範囲にわたって、確実にシステインプロテアーゼ遺伝子を欠損させることができる。
【0038】
システインプロテアーゼ遺伝子との相同組換えが可能であれば、一対の相同配列の位置は、限定されないが、システインプロテアーゼ遺伝子の上流側の場合には、システインプロテアーゼ遺伝子の開始コドンの上流35〜50bpの位置から開始されていることが好ましく、確実にシステインプロテアーゼ遺伝子の相同組換えを起こさせるためには、開始コドンの上流40〜50bpの位置からの配列と相同であることが好ましい。一方、下流側の場合には、システインプロテアーゼ遺伝子の停止コドンの下流40〜50bpの範囲、確実にシステインプロテアーゼ遺伝子の相同組換えを起こさせるためには、停止コドンの下流35〜50bpの範囲に存在する配列と相同であればよい。
なお相同配列における「相同」とは、本明細書では、対象となる配列に対して少なくとも70%以上、好ましくは90%以上の相同性を有する配列をいう。
【0039】
前記ノックアウト用挿入フラグメントは、挿入可能な長さのものであればよく、例えば、1100〜1300bp、好ましくは1100〜1200bpとすることができる。
前記ノックアウト用挿入フラグメントは挿入配列を含むが、挿入配列としては、マーカーをコードするポリヌクレオチド配列であることが好ましい。これにより、ウイルス由来のプロテアーゼ遺伝子のノックアウトを容易に確認することができる。マーカーをコードするポリヌクレオチド配列としては、既述のものを特に制限なく用いることができるが、薬剤耐性遺伝子であることが好ましい。薬剤耐性遺伝子としては、例えば、CAT遺伝子(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ)を挙げることができる。
【0040】
また、本発明におけるBmNPVシャトルベクターは、ウイルス由来のキチナーゼ遺伝子の少なくとも1種を欠損していてもよい。これにより目的とするヒト由来プロレニン受容体をより効率よく製造することができる。
ここでキチナーゼ遺伝子とは、ウイルスのDNA上に存在すると共にカイコガの個体を構成するキチンを溶解する原因キチナーゼをコードする遺伝子をいう。
【0041】
本発明において欠損の対象となるキチナーゼ遺伝子には、好ましくはBmNPVキチナーゼ、更に好ましくは配列番号9で表されるものが該当する。
また、本発明において欠損の対象となるキチナーゼ遺伝子は、機能的に有効な酵素としてのキチナーゼを生成しないように欠損されていればよく、全長が欠損していてもよい。
キチナーゼを欠損させる方法については、既述のシステインプロテーゼ遺伝子の欠損方法を適宜変更して適用することができる。
【0042】
上述の方法によって得られたBmNPVシャトルベクターを用いて、所望のヒト由来プロレニン受容体を大量に効率よく生成することができる。
本発明においては、上記BmNPVシャトルベクター(目的タンパク質発現バクミド)を、カイコガ由来の細胞に導入する工程を含むことを特徴としている。
【0043】
上記BmNPVシャトルベクターを導入(感染)するカイコガ由来の細胞としては、天然のカイコガの幼虫(カイコ)または蛹に含まれる細胞であればよく、カイコガの幼虫個体又は蛹個体であっても、カイコガの幼虫又は蛹から単離した細胞であってもよい。更に、カイコガの幼虫又は蛹から単離した細胞から確立した細胞株であってもよい。
【0044】
本発明においては、ヒト由来プロレニン受容体を効率よく大量に生産できる点から、カイコガの幼虫個体もしくは蛹個体、または前記細胞株を用いることが好ましく、カイコガの幼虫個体又は蛹個体を用いることがより好ましく、カイコガの幼虫個体を用いることが更に好ましい。
本発明においては、カイコガの蛹を用いることもまた好ましい。蛹の組織はほとんど脂肪体で構成されており、カイコガ幼虫に比べて感染効率や目的タンパク質の発現効率が高く、また長期保存が可能である点で好ましい。その上、カイコガ由来のプロテアーゼやキチナーゼの発現が抑制された状態とすることができるので、より一層、効率よくヒト由来プロレニン受容体を得ることができる
【0045】
カイコガの幼虫個体又は蛹個体としては、その品種は特に限定されず、公知の品種を好適に用いることができる。また、前記細胞株としては、例えば、Bm5、BmN4等を挙げることができ、細胞の増殖の観点からBm5であることが好ましい。
【0046】
前記BmNPVシャトルベクターをカイコガ由来の細胞へ導入する方法としては、例えば、カイコガ幼虫個体(カイコ)への導入には、上記BmNPVシャトルベクターを含む溶液をカイコに直接接種してもよく、餌などに混ぜて摂取させてもよい。感染効率の観点からカイコへの直接接種することが好ましい。
また、カイコガ蛹個体への導入には、上記BmNPVシャトルベクターを含む溶液をカイコに直接接種することが好ましい。
更に前記BmNPVシャトルベクターをカイコガ由来の細胞に導入して得られたバキュロウイルスを、カイコガ幼虫個体又はカイコガ蛹個体に接種することもできる。
【0047】
本発明においては、カイコガ由来の細胞によって生成されたヒト由来プロレニン受容体を回収する回収工程を更に設けることが好ましい。
生成タンパク質の回収としては、カイコガ細胞、カイコガ幼虫個体の体液もしくは組織、またはカイコガ蛹の組織からの回収を挙げることができるが、実施が容易であることからカイコガ幼虫個体の体液もしくは組織、またはカイコガ蛹の組織からの回収が好ましい。
このような回収工程には、通常カイコ個体を用いた生成タンパク質の回収に用いられる手段であれば、いずれの方法も含むことができる。例えば、Hisタグ及びFlagタグのようなタグや、発現タンパク質に対する抗体などを用いる方法や、イオン交換カラム及びアフィニティカラムなどによる精製方法など、公知の手段を用いることができる。
【0048】
本発明のヒト由来プロレニン受容体阻害剤のスクリーニング方法は、本発明の製造法で製造されたヒト由来プロレニン受容体を用いて、ヒト由来プロレニン受容体との結合活性を測定する工程を含むことを特徴とする。本発明の製造方法により製造されたヒト由来プロレニン受容体を用いることで、種特異性の高い受容体阻害剤のスクリーニングを効率よく行うことができる。
ヒト由来プロレニン受容体阻害剤のスクリーニング方法としては、本発明の製造方法により製造されたヒト由来プロレニン受容体を用いること以外は、公知の方法をそのまま適用することができる。
【0049】
ヒト由来プロレニン受容体阻害剤のスクリーニング方法としては、例えば以下の工程を含んでなることができる。
(a)1又は2以上の候補化合物と、本発明の製造方法で製造されたヒト由来プロレニン受容体とを接触させる接触工程、
(b)前記接触工程後に、前記候補化合物とヒト由来プロレニン受容体との結合活性を測定する結合活性測定工程、
(c)前記結合活性に基づいて、前記候補化合物からヒト由来プロレニン受容体阻害剤を選択する選択工程。
【0050】
前記候補化合物は、天然由来の化合物(ヒト由来プロレニンを含む)、天然由来の化合物の誘導体、有機合成化合物等のいずれであってもよい。
また、結合活性の測定方法は、候補化合物とヒト由来プロレニン受容体との結合活性を測定できる方法であればいかなる方法も用いることができる。例えば、分光吸収の変化を用いる方法、蛍光性化合物を用いる方法、放射性化合物を用いる方法等を挙げることができる。
また、前記結合活性測定方法においては、候補化合物との接触に先立ってヒト由来プロレニン受容体にヒト由来プロレニンを結合させておいてもよい。
【0051】
本発明のスクリーニング方法により選択されるヒト由来プロレニン受容体阻害剤は、高い種特異性を有していることから、例えば、糖尿病性腎症の治療等に用いることができる。
【0052】
本発明のプロレニン濃度の測定方法は、本発明の製造方法で製造されたヒト由来プロレニン受容体を用いてレニン活性を測定する工程を含むことを特徴とする。これにより、検体中のプロレニン濃度をより精度よく測定することができる。
レニン活性の測定方法としては、本発明の製造方法により製造されたヒト由来プロレニン受容体を用いること以外は、公知の方法をそのまま適用することができる。
【0053】
本発明におけるプロレニン濃度の測定方法は、例えば以下の工程を含んでなることができる。
(a)検体と、本発明の製造方法で製造されたヒト由来プロレニン受容体とを接触させる接触工程、
(b)前記接触工程後の検体のレニン活性を測定する測定工程、
(c)前記測定工程で得られたレニン活性の測定値からプロレニン濃度を算出する工程。
【0054】
本発明のプロレニン濃度の測定方法は、例えば、血液中のプロレニン濃度の測定や、血中プロレニン濃度を測定することを特徴とする糖尿病及び/又はその合併症の診断に適用することができる。
【0055】
本発明の抗ヒト由来プロレニン受容体抗体は、本発明のヒト由来プロレニン受容体の製造法によって製造されたヒト由来プロレニン受容体と特異的に結合することを特徴とする。これにより、特異性のより高い抗ヒト由来プロレニン受容体抗体を得ることが容易になる。
前記抗体を得る方法としては、公知の方法を特に制限なく用いることができる。
【0056】
本発明の、抗ヒト由来プロレニン受容体抗体は、例えば、ヒト由来プロレニン受容体の検出や精製、ヒト由来プロレニン受容体の活性測定等に用いることができる。
【実施例】
【0057】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、実施例中の%は特記しない限り、質量基準である。尚、市販のキットを使用した場合には、特記しない限り添付の取り扱い説明書にしたがって操作を行った。
【0058】
(参考例)
<システインプロテアーゼ欠損BmNPVシャトルベクターの構築>
以下に示すように、BmNPV DNAゲノム上にコードされるシステインプロテアーゼ遺伝子の5’上流のプロモータ領域から3’下流域の全部をλリコンビナーゼによって欠損させた。
[1]プラスミドのクローニング
温度感受性レプリコンをもつと共にリコンビナーゼを発現するpKD46(図1参照:エール大学(米)のMary K.B. Berlyn 博士から供与)を含む大腸菌を、アンピシリンLB培地中で30℃一晩培養して、pKD46をクローニングした。またテンプレートプラスミドであるpKD3(図1参照:エール大学(米)のMary K.B. Berlyn 博士から供与)を含む大腸菌を、アンピシリンLB培地中で37℃一晩培養し、pKD3をクローニングした。
【0059】
[2]システインプロテアーゼ遺伝子欠損用フラグメントの作製
pKD3と、下記表4に示すプライマーセットBm98758Fcat(配列番号10)−Bm99687Rcat(配列番号11)とを用いてPCRを行い、システインプロテアーゼ遺伝子欠損用フラグメントCPDcatを作製した(1.1kbp)。PCR条件は、KODポリメラーゼ(TOYOBO社製)を利用し、94℃30秒、60℃30秒、74℃45秒を合計28サイクル行った。CPDcatフラグメントは、システインプロテアーゼ遺伝子の上流域50bpと下流域50bpの間にCAT遺伝子(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ)がカセットされているフラグメントである。
【0060】
【表4】



【0061】
PCR溶液の一部についてアガロースゲル電気泳動を行い、1.1kbpのフラグメントを確認した後、そのまま溶液をフェノール/クロロホルム抽出で精製し、微量に混入しているpKD3を除去するためにDpnIで制限酵素消化した。酵素消化後のPCR溶液全量をゲル精製し、純粋なCPDcatフラグメントを得た。
【0062】
[3]BmNPVシャトルベクターのシステインプロテアーゼ欠損変異体の構築
特開2004−173507公報を参考にして作製したBmNPVシャトルベクターを含むDH10B(TM)コンピテントセル(Invitrogen社製)にRed recombinase plasmid pKD46をトランスフォーメーションし、Kan/Amp LBプレート(カナマイシン、アンピシリン:各50μg/mL)上で30℃一晩培養した。生育したコロニーのうちBmNPVシャトルベクターとpKD46が含まれているものを選択し、0.2%−アラビノース存在下のSOB培地(カナマイシン、アンピシリン:各50μg/mL)で再度30℃一晩培養した培養液(D610の値が0.5〜0.6)に氷冷10%グリセロールを加えて、エレクトロポレーション用のコンピテントセルを作製した。
【0063】
作製したコンピテントセル50μLに500ngの精製CPDcatフラグメントを常法に従ってヒートショックによってトランスフォーメーションし、500μLのSOCを添加後に37℃1時間培養した。前記コンピテントセルはλredリコンビナーゼをコードするpKD46を含んでいるので、アラビノースによって3種類のλリコンビナーゼ、gam,bet,exoが誘導される。Gamは相同組換えを阻害する宿主大腸菌のrecBCD遺伝子産物であるエキソヌクレアーゼVを阻害するが、BetとExoはDNA末端に接近して相同組換えを促進する。培養液をCm/Kan LBプレート一枚に付き250μLでプレーティング後、37℃一晩培養した。pKD46プラスミドは温度感受性レプリコンをコードしているため、このときに自動的に除去される。形成されたコロニーを拾い、BmNPVシャトルベクターのシステインプロテアーゼ欠損変異体=BmNPV(CPD)シャトルベクターを含む大腸菌を単離した。
【0064】
(実施例1)
<融合遺伝子の構築>
pcDNA3−FLAG−hRRc(配列番号12)を鋳型とし、下記表5に示すプライマーセット(配列番号3及び5)と、KOD PLUSポリメラーゼ(TOYOBO社製)を用いて、94℃15秒、48℃30秒、68℃60秒の合計35サイクルのPCRを行った。
【0065】
【表5】



【0066】
これにより、5’側にPstIサイトと3’側にEcoRIサイトとを付加し、膜貫通領域を削除したhRRc−noTM遺伝子を905bpのポリヌクレチド(配列番号13、表6)として得た。
【0067】
【表6】



【0068】
次いで、pBlueBacHis2(pBH、Invitrogen社製)にGFPuv遺伝子を挿入したpBlueBacHis2/GFPuv遺伝子と前記hRRc−noTM遺伝子とをそれぞれPstIとEcoRIで消化し、アガロースゲル電気泳動後、ゲルからバンドを切り出し精製した。pBlueBacHis2/GFPuv遺伝子とhRRc−noTM遺伝子について、DNA Ligation Kit(TKR社製)を用いてライゲーションを行った。構築したプラスミドをpBH/GFPuv−hRRc−noTMとし、これを用いてE.ColiDH5αを形質転換後、LB培地(Amp)を用いて37℃で、一昼夜培養した。培養液から通常のアルカリ法によりプラスミドを抽出した。抽出した2つのプラスミドをPstIとEcoRIで消化し、アガロースゲル電気泳動を行って構築を確認した。
尚、pBHのマルチクローニングサイトの上流には6xヒスチジンタグ(Hisタグ)、エンテロキナーゼ認識部位(EK−site)の配列が存在する。
【0069】
上記により構築したpBH/GFPuv−hRRc−noTMを鋳型とし、5’側に塩基配列CACCとカイコ脳神経ペプチドホルモンBombyxin由来のシグナル配列遺伝子bxとをコードするフォワ−ドプライマー(配列番号14)とpBH/GFPuv−hRRc−noTM遺伝子のリバースプライマー(配列番号5)を用いてPCRを行った。使用したPCRプライマーセットの配列を下記表7に示す。またPCRは、KOD PLUSポリメラーゼ(TOYOBO社製)を用いて、95℃30秒、47℃40秒、68℃150秒の合計35サイクルで行った
これによりbxシグナル配列を付加した融合タンパク質遺伝子bx‐GFPuv−hRRc−noTMを構築した。アガロースゲル電気泳動にて構築を確認し、電気泳動後のゲルからバンドを切り出して、bx‐GFPuv−hRRc−noTM遺伝子を得た。
【0070】
【表7】



【0071】
<BmNPVシャトルベクターの製造>
上記により得られたbx‐GFPuv−hRRc−noTM遺伝子を、pENTR(TM)/Directional TOPO(R) Cloning Kit(Invitrogen社製)を用いて、TOPO entry vector pENTR/D−TOPO(Rにクローニングした。構築したプラスミドをpENTR/D/bx‐GFPuv−hRRc−noTMとし、これらを用いてE.coliDH5αを形質転換させ、カナマイシン耐性の形質転換体を得た。形質転換体をカナマイシン存在下で培養し、アルカリ法によりプラスミドを抽出した。抽出したプラスミドをエントリーベクターとして用いることとした。
【0072】
上記により構築したentry vectorを用いて、Baculovirus Expression System with Gateway(R) Technology(Invitrogen社製)により、デスティネーションベクターであるpDEST(TM)8に目的遺伝子をクローニングした。構築したプラスミドをpDEST8/D/bx‐GFPuv−hRRC−noTMとし、これらを用いてE.coli DH5αを形質転換させた。形質転換体からアルカリ法によりプラスミドpDEST8/D/bx‐GFPuv-hRRc−noTMを抽出した。
【0073】
参考例のようにして構築したBmNPV(CPD)シャトルベクターを含むE.ColiDH10Bを、上記により構築したプラスミドpDEST8/D/bx‐GFPuv-hRRc−noTMを用いて、Bac−To−Bac(R) System(Invitrogen社製)により形質転換させ、白コロニーを形成したBmNPV(CPD)シャトルベクターを含む形質転換大腸菌を得た。形質転換体からアルカリ法によってBmNPV(CPD)シャトルベクター(バクミドDNA)を抽出した。
【0074】
<カイコを用いたヒト由来プロレニン受容体の製造>
1.注射用バクミドの作製
500mLフラスコに、LB培地50mLと、カナマイシン50μg/mLと、ジェンタマイシン7μg/mLと、テトラサイクリン10μg/mLとを添加し、37℃、200rpmの条件で、プレートから植菌した形質転換大腸菌を1昼夜培養した。培養終了後、培養液を4℃、9000rpmの条件で10分遠心した後、上清を除去し、菌体を得た。この菌体から、アルカリSDS法を用い、バクミドDNAを抽出した。抽出したバクミドDNAに500μLのミリQ水を加え、ペレットを溶解した。この溶液をフェノール処理およびエタノール沈殿を行い、バクミドDNAを精製した。その後、精製したバクミドDNAに200μLのPBS(−)を加えて溶解した。得られたバクミドDNAをカイコへの注射に用いることとし、4℃で保存した。
【0075】
2.カイコへの注射
PBS(−)を加えて、280ng/μLになるようにバクミドDNA溶液を希釈した。バクミドDNA溶液45μLとDMRIE−C5μLとを混合し、室温で45分間インキュベートをした。この混合液40μLを、シリンジを用いて、1匹の5齢のカイコ幼虫に注射した。毎日カイコにUV照射を行い観察したところ、5日目にGFPuvの蛍光が観察された。GFPuvの蛍光が検出されたカイコから体液を回収した。回収は、氷上のチューブにカイコの体液0.8mLを滴下することで行った。その際1‐フェニル−2−チオウレアを5mMになるようにチューブに添加した。得られた体液は分注し−80℃で保存した。
以上のようして膜貫通領域を含まないヒト由来プロレニン受容体を作製した。
【0076】
(実施例2)
実施例1の<融合遺伝子の構築>において、hRRc−noTM遺伝子の代わりに、下記表8に示すプライマーセット(配列番号3、4)を用いて作製した膜貫通領域を含むhRRc−wTM遺伝子(表9、配列番号15、1046bp)を用いて、実施例1と同様にしてpBH/GFPuv−hRRc−wTMを構築した。
【0077】
【表8】



【0078】
【表9】



【0079】
次いで、下記表10に示すPCRプライマーセット(配列番号14、4)を用いて、実施例1と同様にして、bxシグナル配列を付加した融合タンパク質遺伝子bx−GFPuv−hRRc−wTMを構築した。実施例1における融合タンパク質遺伝子bx−GFPuv−hRRc−noTMの代わりに、融合タンパク質遺伝子bx−GFPuv−hRRc−wTMを用いた以外は実施例1と同様にして膜貫通領域を含むヒト由来プロレニン受容体を作製した。
【0080】
【表10】



【0081】
<ヒト由来プロレニン受容体の発現確認>
カイコ体液中におけるヒト由来プロレニン受容体の発現を、以下の手順によりウエスタンブロッティング法で確認した。
カイコの体液中のタンパク質量をプロテインアッセイ(Bio-Rad社製、Bradford法)で測定した後、50mMのTris-HCl(pH7.6)を用いて各サンプルが同じタンパク質量、同じ体積になるように調製し、5倍濃縮サンプルバッファーを加え、10分間煮沸した。これをウエスタンブロッティングのサンプルとした。このサンプルについて電気泳動を行った後、トランスブロットSDセル(Bio-Rad社製)を用い、Hybond-P膜(GEヘルスケアバイオサイエンス(株)製、PVDF膜)へのタンパク質の転写を、Towbinの転写バッファー(25mM Tris、192mM グリシン、20%メタノール、pH8.3)を用いて、15Vの定電圧で1時間行った。転写後、5%のスキムミルクを含むTBST(0.05% Tween(R)-20を含むTBS)中で、1時間室温でブロッキングを行った。TBSTで洗浄後、一次抗体としてAnti-Flag抗体(SIGMA社製)を用い、TBSTで215000倍希釈した溶液中で、室温で1時間穏やかに攪拌した。次いでTBSTで洗浄後、二次抗体として、Peroxidase labeled Anti-mouse抗体(GEヘルスケアバイオサイエンス(株)製)を用い、TBSTで20000倍希釈した溶液中で、室温で1時間穏やかに攪拌して、二次抗体のラベルを行った。再び、TBSTで洗浄後、ECL Plus Western blotting detection reagents (GEヘルスケアバイオサイエンス(株)製)のA液(ECL Plus substrate solution containing Tris buffer)とB液(Stock Acidan solution in dioxane and ethanol)を40:1の割合で混合したものを、タンパク質を転写したHybond−P膜に添加し、5分間遮光して反応させた後、Fluor-S/MAX マルチイメージャー(Bio-Rad社製)を用いて検出した。尚、マーカーにはMagicMark XP Western Protein Standards(Invitrogen)を用いた。
一次抗体としてAnti-His抗体(SIGMA社製)を用いた以外は、上記と同様にしてウエスタンブロッティングを行った。
【0082】
ウエスタンブロットの結果を図2に示す。図2(A)は抗FLAGタグ抗体による検出結果であり、図2(B)は抗Hisタグ抗体による検出結果である。図2において、Wは膜貫通領域を有するヒト由来プロレニン受容体(実施例2)のレーンを表し、W/Oは膜貫通領域を含まないヒト由来プロレニン受容体(実施例1)のレーンを表す。また、Mは分子量マーカーのレーンを表す。
図2から、約60kDaの位置にヒト由来プロレニン受容体が発現していることが分かる。
【0083】
<ヒト由来プロレニン受容体とヒトプロレニンの結合性>
実施例1で得られたカイコの体液をPBSで20倍希釈し、ヒト由来プロレニン受容体溶液とした。この溶液200μLを96ウエルのプレートの各ウエルに添加し、4℃で15時間静置した。その後、ブロッキングバッファー(1% Casin)150μLを各ウエルに添加して、全量を350μLとして実験まで4℃で保存した。種々の濃度のヒト由来プロレニン溶液各200μLを、内容物を除去したウエルに添加し、ウエル壁面に吸着したプロレニン受容体とプロレニンの結合を4℃、30分間反応させた。添加時のプロレニン濃度と遊離プロレニン濃度の差から、受容体に結合したプロレニン濃度を算出した。
尚、ブランクはヒト由来プロレニン受容体遺伝子を含まないBmNPVシャトルベクターを導入したカイコの体液を用いて行った。
以上の結果を図3に示す。
【0084】
図3(B)から、本発明で製造されるヒト由来プロレニン受容体と、ヒト由来プロレニンとのKdは6.6nMと算出され、本発明で製造されるヒト由来プロレニン受容体はヒト由来プロレニンとの結合活性を有することが分かる。
また、図3(A)から、初期濃度4.8nMプロレニンは約50%が受容体に結合していることが分かる。この場合のレニン活性を測定したところ、添加したプロレニン濃度に対して約40%のレニン活性が観察された。したがって、本発明で製造されたヒト由来プロレニン受容体に結合したほとんどのヒト由来プロレニンが活性化されたことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】左は本発明の参考例で使用されたRedリコンビナーゼプラスミドpKD46のベクターマップであり、右はテンプレートプラスミドpKD3のベクターマップである。
【図2】(A)は本発明の実施例におけるヒト由来プロレニン受容体の発現の様子を、FLAGタグ抗体で検出したウエスタンブロットの写真であり、(B)はHisタグ抗体で検出したウエスタンブロットの写真である。
【図3】本発明の実施例におけるヒト由来プロレニン受容体に対するプロレニン結合活性測定の結果を示すグラフである。
【出願人】 【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
【識別番号】304019399
【氏名又は名称】国立大学法人岐阜大学
【出願日】 平成19年1月26日(2007.1.26)
【代理人】 【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳

【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳

【識別番号】100085279
【弁理士】
【氏名又は名称】西元 勝一

【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志


【公開番号】 特開2008−182905(P2008−182905A)
【公開日】 平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願番号】 特願2007−16973(P2007−16973)