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【発明の名称】 異種タンパク質の発現
【発明者】 【氏名】セシーラ ギャレオッティー

【要約】 【課題】非天然の宿主生物によって発現されるが、天然タンパク質様の生物学的活性および/または構造を有する異種タンパク質を提供する発現系を提供すること。

【解決手段】非天然の宿主生物によって発現されるが、天然のタンパク質様生物学的活性および/または構造を有する異種タンパク質を提供する、発現系。異種タンパク質を発現するためのベクター、発現宿主、および方法が開示される。発現系は、ジスルフィド結合形成を触媒し得るタンパク質因子と、所望の異種タンパク質との同時発現を含む。好ましい宿主として酵母細胞、タンパク質因子の好ましい例としてタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)およびチオレドキシン(TRX)、ならびに異種タンパク質の好ましい例としてHCV-E2715エンベロープ糖タンパク質およびヒトFIGFを使用する発現系が示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の生物学的に活性なおよび/または正確な構造を有する異種タンパク質の発現方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、非天然の宿主生物によって発現されるが、天然タンパク質様の生物学的活性および/または構造を有する異種タンパク質を提供する発現系に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
分子生物学および遺伝子工学における過去10年間の進歩は、異種発現系を使用して大量のタンパク質製品を製造することを可能にした。
【0003】
しかし、例えば、治療用タンパク質の製造のための異種宿主の使用は、組換え産物の生物学的および/または構造的特性における差異を導き得る。細胞におけるタンパク質の合成の間またはその後にタンパク質に通例生じる生化学的改変のうち、ジスルフィド結合の形成が重要である。なぜなら、この改変は、ジスルフィド結合したタンパク質の正確な折り畳みまたはアセンブリに関連しているからである(J.C.A.BardwellおよびJ.Beckwith,Cell,74:769-771,1993;R.B.Freedman,Protein Folding,T.E.Creighton(編)、W.H.FreemanおよびCo.,New York,455-539頁、1992にて総説される)。
【0004】
例えば、細菌および他の宿主細胞において、特定の条件下で、いくつかの異種タンパク質は、「屈折体」または「封入体」として細胞内で沈降する。このような屈折体または封入体は、部分的に折り畳まれた、しばしば生物学的に活性ではない形態にある還元型異種タンパク質の密な塊からなる(S.B.Storrsら、Protein Folding - American Chemical Society Symposium Series 470,Chapter 15:197-204,1991)。天然にジスルフィド結合した屈折または封入異種タンパク質が生物学的に不活性となるのは、タンパク質内でのジスルフィド結合の未形成または誤形成により生じる不正確なタンパク質折り畳みまたはアセンブリに起因すると考えられている。不正確なタンパク質折り畳みまたはアセンブリのプロセスに起因する、屈折または封入異種タンパク質の生物学的不活化は、細胞内沈澱の前もしくは後のいずれかで、またはタンパク質の単離の間に生じると考えられている。
【0005】
さらに、非常に頻繁に、タンパク質の生物学的な機能は制御されているか、または少なくともそのスルフィドリル基の酸化の状態によって影響を受ける。これは、スルフィドリル基の酸化の可逆性およびタイミングが生理学的制御機構として提唱されている、いくつかの酵素活性についての場合である。
【0006】
文献には、ジスルフィド結合タンパク質の多くの例が存在する。例えば、大部分のウイルス性の糖タンパク質およびいくつかの成長因子は、ジスルフィド結合されていることが知られている。一般に、ジスルフィド結合は正確なタンパク質折り畳みに不可欠である。例えば、酵母細胞において発現された場合に、誤って折り畳みされることが示されているジスルフィド結合された組換え異種タンパク質の例には、B型肝炎ウイルス大表面タンパク質(Biemansら、DNA Cell Biol.,10:191-200,1991)、α-1-アンチトリプシン(MoirおよびDumais,Gene,56:209-217,1987)、およびエリスロポエチン(Elliottら、Gene,79:167-180,1989)が挙げられる。ジスルフィド結合が正確なタンパク質折り畳みに不可欠であることが示されている、例えば、昆虫または哺乳動物細胞において発現される組換えタンパク質の例には、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)(Kaushanskyら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:1213-1217,1989)、フレンド赤白血病ウイルス(SFFV)糖タンパク質gp55(Gliniakら、J.Biol.Chem.,266:22991-22997,1991)、水疱性口内炎ウイルスの糖タンパク質(VSV-G)(Grigeraら、J.Virol.,66:3749-3757,1992)、肺胞界面活性タンパク質D(Crouchら、J.Biol.Chem.,269:15808-15813,1994)、低密度リポタンパク質(LDL)レセプター(Bieriら、Biochemistry,34:13059-13065,1995)、インスリン様成長因子(Nahriら、Biochemistry,32:5214-5221,1993)、およびアンギオテンシン変換酵素(ACE)(Sturrockら、Biochemistry,35:9560-9566,1996)が挙げられる。全てのこれらの場合において、特定の宿主細胞における異種タンパク質発現は、構造研究が行われることを可能にすると考えられる十分な量のタンパク質を生成するために使用されただけであったことに注目すべきである。
【0007】
ジスルフィド結合形成を触媒するいくつかのタンパク質因子が特徴づけられている。タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)は、分泌および細胞表面タンパク質のジスルフィド結合の適切な形成を促進する小胞体(ER)の管腔に見出される豊富な、多機能性のタンパク質である(LaMantiaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:4453-4457,1991;Farquharら、Gene,108:81-89,1991;Freedman,Cell,57:1069-1072,1989;Laboissiereら、J.Biol.Chem.,270:28006-28009,1995)。
【0008】
類似の機能(であるが異なる細胞区画にある)が、別の小さな、偏在するタンパク質であるチオレドキシン(TRX)(Gan,J.Biol.Chem.,266:1692-1696,1991;Muller,J.Biol.Chem.,266:9194-9202,1991;Chiversら、EMBO J.,15:2659-2667,1996)に起因するとされてきた。これは、PDIの配列と類似の活性部位配列を有する。チオレドキシンは、還元剤としてグルタチオンを使用するジスルフィドの還元を触媒し得る細胞質ポリぺプチドである(Holmgren,J.Biol.Chem.,264:13963-13966,1989)。チオレドキシンはまた、ERに進入したタンパク質における成熟前に形成されたジスルフィドの還元に関与し得ると考えられてきた。重要な代謝経路に関与する多くの主要な酵素の生物学的活性は、細胞質酸化還元系に依存するので、TRXは、細胞質以外の細胞区画における折り畳みに関与するタンパク質の改変に重要な役割を果たすことは妥当とおもわれる。
【0009】
異種タンパク質を(過剰)発現するように遺伝的に操作された、多くの生物(例えば、細菌、酵母、哺乳動物細胞、および昆虫細胞)において、ほとんどの発現系で遭遇する問題は、生物学的に活性なタンパク質を発現することができないことである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の要旨
現在では、非天然の発現宿主における異種タンパク質の正確な折り畳みまたはアセンブリに必要な酵素の欠失または量的不足が原因で、このような発現された異種タンパク質は、しばしば生物学的に活性ではなく、および/または正確ではないタンパク質構造を有するようである。
【0011】
本発明は、この問題を克服し、そして非天然の発現宿主において、生物学的に活性なおよび/または正確な構造を有する異種タンパク質の発現を可能にする。
【0012】
現在では、PDIまたはTRXをコードする発現カセットは、宿主生物を形質転換するために使用され得、それによりPDIまたはTRXを過剰発現し得るようにすることが見出されている。好ましくは、宿主生物は酵母である。例えば、これらのタンパク質を過剰発現する酵母細胞は、引き続いて、または同時に、1つ以上の所望の異種タンパク質をコードする発現ベクターで形質転換され得る。このようなPDI/TRX形質転換酵母細胞において発現される異種タンパク質は、同じ細胞中で同時発現されたPDIまたはTRX酵素のジスルフィド結合形成活性に起因して、適切に折り畳まれた、生物学的に活性な形態にある。
【0013】
生物学的に活性な異種タンパク質を産生するこのような系は、例えば、ヒトもしくは動物の治療用途、および/または診断用途のためのタンパク質、あるいは商業的もしくは研究目的の他のタンパク質の産生のために有利に使用され得る。本発明の方法によってもたらされる正確なそして至適な生物学的活性は、例えば、有効な薬物および診断用試薬の製造において卓越している。
【0014】
Saccharomyces cerevisiaeにおけるPDIの過剰発現は、ヒト血小板由来の成長因子Bホモダイマー(PDGF-BB)の培養培地中への分泌を増強することが見出されている(Robinsonら、Bio/Technology,12:381-384,1994)。
【0015】
本発明において、細胞中での増大したレベルの異種タンパク質折り畳み効率が実証されている。
【0016】
本発明の第一の局面によれば、ジスルフィド結合形成を触媒し得るタンパク質をコードするDNA配列を含む発現カセットを含むベクターが提供される。
【0017】
このようなベクターは、望ましいことに、形質転換された宿主細胞におけるタンパク質の(過剰)発現を生じ、従って正確な異種タンパク質折り畳みのための条件を提供する。
【0018】
タンパク質は、ジスルフィド結合形成を触媒し得る任意のタンパク質であり得、そして好ましくはタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)またはチオレドキシン(TRX)またはその組み合わせである。PDIおよびTRXをコードする遺伝子は、好ましくは酵母から、より好ましくはS.cerevisiaeから得られる。しかし、PDIおよびTRXの供給源はまた、例えば、ヒト野生型および変異体cDNA配列を含み得る。
【0019】
本明細書中で使用される用語「発現カセット」は、タンパク質および適切な発現をコードする少なくとも1つの構造DNA配列、ならびに構造DNA配列の発現を容易にするために必要に応じて制御配列を含むDNA配列を意味する。
【0020】
ベクターは、ジスルフィド結合形成を触媒し得るタンパク質をコードする1つより多いDNA配列を、1つ以上の発現カセット中に含み得る。DNA配列は、同じDNA配列の繰り返しであり得るか、またはジスルフィド結合形成を触媒し得る異なるタンパク質をコードし得る。ジスルフィド結合形成を触媒し得る同一のまたは異なるタンパク質のDNA配列の複数のコピーを提供することによって、タンパク質の所望の過剰発現を達成し、従って有利なそして創作性のある技術的効果を達成する1つの方法を示す。
【0021】
発現カセットはまた、ジスルフィド結合形成を触媒し得るタンパク質をコードする遺伝子の5’末端に融合した分泌のためのリーダーペプチドをコードするDNA配列を含み得る。このようにして、構築物は、望ましくは、(1)形質転換細胞におけるタンパク質の(過剰)発現、ならびに(2)ERにおいて、および/または他の分泌区画(そこで、その機能を発揮し得、従って正確な異種タンパク質折り畳みのための条件を提供する)において(過剰)発現されたタンパク質の局在化を生じる。
【0022】
本発明の第一の局面のベクターはまた、1つ以上の異種タンパク質をコードするDNA配列を含む発現カセットをさらに含み得る。好ましくは、異種タンパク質は、C型肝炎ウイルス(HCV)E2715エンベロープ糖タンパク質またはヒトc-fos誘導成長因子(FIGF)である。
【0023】
本発明の第一の局面のベクターは、宿主生物に形質転換された場合に、組み込み型であるかまたはエピソーム型であり得る。好ましくは、ベクターは宿主生物中に組み込まれ得る。
【0024】
本発明の第二の局面により、本発明の第一の局面によるベクターで形質転換された宿主生物が提供される。
【0025】
再び、複数のコピーのベクターが、ジスルフィド結合形成を触媒し得るタンパク質の(過剰)発現を補助するために、エピソームベクターとしてか、または宿主生物ゲノムに組み込まれてのいずれかで存在し得る。
【0026】
本発明の第三の局面により、1つ以上の異種タンパク質をコードするDNA配列を含む発現カセットを含むベクターでさらに形質転換された本発明の第二の局面の宿主生物が提供される。このさらなるベクターは、宿主生物に形質転換される場合に、組み込み型であるかまたはエピソーム型であり得る。
【0027】
宿主生物は、1つ以上の異種タンパク質をコードするDNA配列を含む発現カセットを含む1つ以上のベクターで同時トランスフェクトされ得る。
【0028】
宿主生物は、異種タンパク質の発現が不正確なジスルフィド結合形成を生じやすい任意の宿主生物であり得る。
【0029】
異種タンパク質は、宿主生物において通常は産生されず、そしてジスルフィド結合形成を触媒し得るタンパク質の(過剰)発現の非存在下で、不正確なスルフィド結合を有する形態で産生される任意のタンパク質であり得る。好ましくは、異種タンパク質は、HCV E2715エンベロープ糖タンパク質またはヒトFIGFである。
【0030】
好ましくは、本発明の第二のおよび第三の局面による宿主生物は、酵母であり、より好ましくはS.cerevisiaeである。
【0031】
本発明の第四の局面により、本発明の第二の局面による宿主生物を産生するための方法が提供される。この方法は、本発明の第一の局面のベクターで宿主生物を形質転換する工程を包含する。
【0032】
本発明の第五の局面により、本発明の第三の局面による宿主生物を産生する方法が提供される。この方法は、本発明の第二の局面の宿主生物を、引き続いて、または同時にのいずれかで、1つ以上の異種タンパク質をコードするDNA配列を含む発現カセットを含むベクターでさらに形質転換する工程を包含する。
【0033】
本発明の第六の局面により、宿主生物において、生物学的に活性な、および/または正確な構造を有する異種タンパク質を発現するための方法が提供される。この方法は、以下を包含する:
(a)宿主生物を本発明の第一の局面による1つ以上のベクターで形質転換する工程;
(b)引き続いてまたは同時にのいずれかで、1つ以上の異種タンパク質をコードするDNA配列を含む1つ以上のベクターで工程(a)の宿主生物をさらに形質転換する工程;および
(c)1つ以上の異種タンパク質の発現に適切な条件下で工程(b)の宿主生物を培養する工程。
【0034】
本発明の第七の局面により、宿主生物において、生物学的に活性な、および/または正確な構造を有する異種タンパク質を発現するための方法が提供される。この方法は、以下を包含する:
(a)本発明の第二の局面による宿主生物を、引き続いて、または同時にのいずれかで、1つ以上の異種タンパク質をコードするDNA配列を含む1つ以上のベクターで、形質転換する工程;および
(b)工程(a)の宿主生物を、1つ以上の異種タンパク質の発現に適切な条件で培養する工程。
【0035】
本発明の第八の局面により、宿主生物において、生物学的に活性な、および/または正確な構造を有する異種タンパク質を発現するための方法が提供される。この方法は、本発明の第三の局面による1つ以上のベクターで形質転換した宿主生物を、1つ以上の異種タンパク質の発現に適切な条件で培養する工程を包含する。
【0036】
本発明の第九の局面により、HCV E2715エンベロープ糖タンパク質またはヒトFIGFを宿主生物において発現するための方法が提供される。
【0037】
本発明の第十の局面により、免疫原性組成物の調製のための方法が提供される。この方法は、本発明の第九の局面による方法によって産生されたHCV-E2715エンベロープ糖タンパク質またはヒトFIGFを、薬学的キャリアおよび必要に応じてアジュバントと結合させる工程を包含する。
【0038】
上記に加えて、本発明は、以下を提供する:
1.ジスルフィド結合形成を触媒し得るタンパク質をコードするDNA配列を含む、発現カセットを含む、ベクター。
【0039】
2.前記ジスルフィド結合形成を触媒し得るタンパク質が、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)またはタンパク質チオレドキシン(TRX)である、項目1に記載のベクター
【0040】
3.前記ベクターがさらに、分泌のための1つ以上のリーダーペプチドをコードするDNA配列を含む、項目1または2のいずれか1項に記載のベクター。
【0041】
4.前記ベクターがさらに、1つ以上の異種タンパク質をコードするDNA配列を含む発現カセットを含む、項目1〜3のいずれか1項に記載のベクター。
【0042】
5.前記異種タンパク質が、C型肝炎ウイルス(HCV)E2715エンベロープ糖タンパク質またはヒトc-fos誘導増殖因子(FIGF)である、項目4に記載のベクター。
【0043】
6.前記ベクターが、宿主生物のゲノムに組み込まれ得る、項目1〜5のいずれか1項に記載のベクター。
【0044】
7.項目1〜6のいずれか1項に記載のベクターで形質転換された宿主生物。
【0045】
8.さらに、1つ以上の異種タンパク質をコードするDNA配列を含む発現カセットを含むベクターで形質転換されている、請求項7に記載の宿主生物。
【0046】
9.前記異種タンパク質が、C型肝炎ウイルス(HCV)E2715エンベロープ糖タンパク質またはヒトFIGFである、項目8に記載の宿主生物。
【0047】
10.前記宿主生物が酵母である、項目7〜9のいずれか1項に記載の宿主生物。
【0048】
11.項目1〜6のいずれか1項に記載のベクターで宿主生物を形質転換する工程を包含する、請求項7に記載の宿主生物を生成する方法。
【0049】
12.項目8に記載の宿主生物を生成するための方法であって、該方法は、引き続いて、または同時にのいずれかで、1つ以上の異種タンパク質をコードするDNA配列を含む発現カセットを含むベクターでさらに形質転換する工程を包含する、方法。
【0050】
13.項目9に記載の宿主生物を生成するための方法であって、該方法は、引き続いて、または同時にのいずれかで、C型肝炎ウイルス(HCV)E2715エンベロープ糖タンパク質またはヒトFIGFをコードするDNA配列を含む発現カセットを含むベクターでさらに形質転換する工程を包含する、方法。
【0051】
14.宿主生物において、生物学的に活性な、および/または正確な構造を有する異種タンパク質を発現するための方法であって、該方法は、以下を包含する:
(a)項目1〜6のいずれか1項に記載の1つ以上のベクターで宿主生物を形質転換する工程;
(b)引き続いてまたは同時にのいずれかで、1つ以上の異種タンパク質をコードするDNA配列を含む1つ以上のベクターで工程(a)の宿主生物をさらに形質転換する工程;および
(c)該1つ以上の異種タンパク質の発現に適切な条件下で工程(b)の宿主生物を培養する工程。
【0052】
15.宿主生物において、生物学的に活性な、および/または正確な構造を有する異種タンパク質を発現するための方法であって、該方法は、以下を包含する:
(a)項目7に記載の宿主生物を、引き続いて、または同時にのいずれかで、1つ以上の異種タンパク質をコードするDNA配列を含む1つ以上のベクターで、形質転換する工程;および
(b)工程(a)の宿主生物を、該1つ以上の異種タンパク質の発現に適切な条件で培養する工程。
【0053】
16.宿主生物において、生物学的に活性な、および/または正確な構造を有する異種タンパク質を発現するための方法であって、該方法は、項目8に記載の宿主生物を、1つ以上の異種タンパク質の発現に適切な条件で培養する工程を包含する、方法。
【0054】
17.前記異種タンパク質は、HCV E2715エンベロープ糖タンパク質またはヒトFIGFっである、項目14〜16のいずれか1項に記載の方法。
【0055】
18.免疫原性組成物の調製のための方法であって、該方法は、項目17に記載の方法によって産生されたHCV-E2715エンベロープ糖タンパク質またはヒトFIGFを、薬学的キャリアおよび必要に応じてアジュバントと結合させる工程を包含する、方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
具体的な実施態様の説明
本発明の実施は、別に示されなければ、分子生物学、微生物学、組換えDNAおよび免疫学の通常の技術を使用し、これらは当該分野の範囲内である。このような技術は、文献(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第二版,1989;D.N Glover(編),DNA Cloning,第一巻および第二巻,1985;M.J.Gait(編),Oligonucleotide Synthesis,1984;B.D.Hames およびS.J.Higgins(編),Nucleic Acid Hybridization,1984;B.D.Hames およびS.J.Higgins(編),Transcription and Translation,1984;R.I.Freshney(編),Animal Cell Culture,1986;Immobilized Cells and Enzymes,IRL Press,1986;B.Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning,1984;The series,Methods in Enzymology,Academic Press,Inc.;J.H.MillerおよびM.P.Calos(編),Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells,Cold Spring Harbor Labolatory,1987;WuおよびGrossman(編)およびWu(編),Methods in Enzymology,それぞれ第154巻および第155巻;MayerおよびWalker(編),Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology,Academic Press,London,1987;Scopes,Protein Purification:Principles and Practice,第二版,Springer-Verlag,New York,1987;およびD.M.WeirおよびC.C.Blackwell (編),Handbook of Experimental Immunology,第I〜IV巻を参照のこと)中で全て説明される。
【0057】
上記で言及されたように、本発明で使用され得るジスルフィド結合形成を触媒し得るタンパク質の例は、詳細に記載されているPDIタンパク質およびTRXタンパク質のアミノ酸配列に由来する少数のアミノ酸改変を有するポリペプチドを含む。
【0058】
天然の供給源からタンパク質を単離および精製するのではなく、組換えDNA技術による異種タンパク質を産生する有意な利点は、等量のタンパク質が天然供給源由来のタンパク質の単離に必要とされるよりも少量の出発材料を用いて生成され得ることである。組換え技術によるタンパク質の生成はまた、細胞に通常存在するいくつかの分子の非存在下で、タンパク質の単離を可能にする。実際に、いかなる微量のヒトタンパク質の混入物も完全に皆無であるタンパク質組成物は、組換え非ヒト宿主により生成されるヒトタンパク質のみが問題の組換えタンパク質であるので、容易に生成され得る。天然供給源由来の潜在的なウイルス病原体およびヒトに対して病原性であるウイルス性成分もまた、回避される。
【0059】
薬学的に受容可能なキャリアは、組成物を受容する個体に対して有害である抗体の産生をそれ自身は誘導しない任意のキャリアを含む。適切なキャリアは代表的には、大型で、ゆっくり代謝される巨大分子(例えば、タンパク質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、アミノ酸重合体、アミノ酸コポリマー、脂質凝集体(例えば、油滴またはリポソーム)および不活性ウイルス粒子)である。このようなキャリアは当業者に周知である。さらに、これらのキャリアは、免疫賦活剤(アジュバント)として機能し得る。
【0060】
組成物の有効性を増強するための好ましいアジュバントは、以下を含むがこれらに限定されない:アルミニウム塩(ミョウバン)(例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムなど)、油状エマルジョン処方物(これらは、他の特定の、免疫賦活剤(例えば、ムラミルペプチドまたは細菌性細胞壁成分を有するかまたは有さない)(例えば、(1)マイクロ流動装置(例えば、モデル110Y マイクロ流動装置(Microfluidics,Newton,MA02164,USA))を使用してサブミクロン粒子に処方されたMF59(公開国際特許出願 WO-A-90/14837、5%のスクアレン、0.5%のTween(登録商標)80、0.5%のSpan(登録商標)85、(必要に応じて様々な量のMTP-PEを含むが(下記を参照のこと)、必要ではない)を含む)(2)サブミクロンのエマルジョンに微小流動化されているかまたはボルテックスされて、大きな粒子サイズのエマルジョンが生成されているかのいずれかである、SAF(10%のスクアレン、0.4%のTween80、5%のpluronicブロックポリマー L121およびthr-MDP(下記を参照のこと)を含む)ならびに(3)RIBITMアジュバント系(RAS)(Ribi Immunochem,Hamilton,MT,USA)(2%のスクアレン、0.2%のTween(登録商標)80および以下からなる群に由来する1つ以上の細菌性細胞壁成分:モノホスホリルリピドA(MPL)、トレハロースジミコーレート(TDM)、および細胞壁骨格(CWS)好ましくはMPL+CWS(DetoxTM)、ムラミルペプチド(例えば、N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr-MDP)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(nor-MDP)、N−アセチル−ムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(MTP-PE)など、およびサイトカイン(例えば、インターロイキン(IL-1、IL-2、など)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、腫瘍壊死因子(TNF)など。さらに、サポニンアジュバント(例えば、StimulonTM(Cambridge Bioscience,Worcester,MA,USA)、またはそれから生成された粒子(例えば、ISCOMS(免疫賦活性複合体))が使用され得る。さらに、完全フロイントアジュバント(CFA)および不完全フロイントアジュバント(IFA)が使用され得る。ミョウバンおよびMF59が好ましい。
【0061】
免疫原性組成物(例えば、抗原、薬学的に受容可能なキャリアおよびアジュバント)は、代表的に希釈物(例えば、水、生理食塩水、グリセロール、エタノールなど)を含む。さらに、補助的な物質(例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質など)は、このようなビヒクルに存在し得る。
【0062】
代表的に、免疫原性組成物は、液体溶液または懸濁物のいずれかとして注射可能物として調製され;液体ビヒクル中で溶液または懸濁物に適切な固体形態もまた調製され得る。調製物はまた、薬学的に受容可能なキャリアにおいて上記で議論したように、アジュバントの効果を増強するために乳化され得るかまたはリポソーム中に被包され得る。
【0063】
ワクチンとして使用される免疫原性組成物は、免疫的有効量の抗原性ポリペプチド、および必要に応じて任意の上記で言及した他の成分を含む。「免疫的有効量」により、一回の用量または一連の用量の一部としてのいずれかでのその量の個体への投与が処置または予防に有効であることを意味する。この量は、処置される個体の健康的および身体的な状態、処置される個体の分類学上の群(例えば、非ヒト、霊長類など)、抗体を合成する個体の免疫系の能力、所望される保護の度合い、ワクチンの処方物、処置する医師の医学的状況の評価、および他の関連する因子に依存して変化する。この量は、日常的な試行を通じて決定され得る比較的広範な範囲にあることが予測される。
【0064】
免疫原性組成物は、従来のように非経口的に投与される(例えば、皮下または筋肉内のいずれかの注射により)。他の投与様式に適切なさらなる処方物は、経口処方物および肺への処方、坐薬ならびに経皮塗布を含む。投薬処置は、単一の用量スケジュールまたは多数回用量スケジュールであり得る。ワクチンは他の免疫調節剤と一緒に組み合わせて投与され得る。
【0065】
本明細書で使用される用語「組換えポリヌクレオチド」とは、ゲノム、cDNA、半合成、または合成起源のポリヌクレオチドを意図し、その起源または操作により:(1)天然では付随する全てまたは部分的なポリヌクレオチドが付随しない、(2)天然で連結されているポリヌクレオチドとは異なるポリヌクレオチドに連結されている、または(3)天然には存在しない。
【0066】
本明細書で使用される用語「ポリヌクレオチド」とは、任意の長さの重合体形態のヌクレオチドであって、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドのいずれかを意図する。この用語は、分子の一次構造のみをいう。従って、この用語は、一本鎖および二本鎖のDNAおよびRNAを含む。それはまた、公知の型の改変、例えば、当該分野で公知である標識、メチル化、「キャップ」、天然に存在するヌクレオチドとアナログの1つ以上の置換、ヌクレオチド間の改変(例えば、非電荷性結合での改変(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カルバメートなど)および電荷性結合での改変(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、など))、付属の部分(例えば、タンパク質(例えば、ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リジンなどを含む))を含む改変、インターカレーター(例えば、金属、放射性金属、臭素、ホウ素、酸化的金属など)での改変(例えば、アクリジン、ソラレンなど)、キレート剤を含む改変、アルキル化剤を含む改変、改変された結合(例えば、αアノマー性核酸など)での改変、ならびに非改変型形態のポリヌクレオチドを含む。
【0067】
「レプリコン」とは、いくつかの遺伝性エレメント(例えば、プラスミド、染色体、ウイルス、コスミドなど)であり、細胞内でのポリヌクレオチド複製の自律的単位として挙動し;すなわち、それ自身の制御下で複製し得る。これは選択マーカーを含み得る。
【0068】
「ベクター」とは、レプリコンであり、これに別のヌクレオチドセグメントが付加され、セグメントの複製および/または発現をもたらす。
【0069】
「制御配列」とは、コード配列の発現をもたらすのに必要とされるポリヌクレオチド配列をいい、これらはコード配列に連結される。このような制御配列の性質は、宿主生物に依存して異なり;原核生物では、このような制御配列は一般にプロモーター、リボソーム結合部位、および転写終結配列を含み;真核生物では、一般に、このような制御配列は、プロモーターおよび転写終結配列を含む。用語「制御配列」とは、その存在が発現に必要とされる成分全てを最小限に含み、そしてまた、その存在が有利であるさらなる成分(例えば、リーダー配列および融合パートナー配列)を含み得る。
【0070】
「作動可能に連結される」とは近位付随した部分をいい、ここでこのように記載された成分は、それらが意図する様式で機能することを可能にする関係にある。コード配列に「作動可能に連結」された制御配列は、コード配列の発現が制御配列に適合する条件下で達成されるように連結されている。
【0071】
「オープンリーディングフレーム」(ORF)とは、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの領域であり;この領域はコード配列の一部分またはコード配列全体を意味する。
【0072】
「コード配列」とは、通常mRNAを介して、適切な調節配列の制御下に配置された場合にポリペプチドに翻訳されるポリヌクレオチド配列である。コード配列の境界は5’末端の翻訳開始コドンおよび3’末端の翻訳停止コドンにより決定される。コード配列は、以下を含むがこれらに制限されない:cDNA、および組換えポリヌクレオチド配列。
【0073】
「PCR」とは、Saikiら、Nature,324:163,1986;Scharfら、Science,223:1076-1078,1986;米国特許第4,683,195号;および米国特許第4,683,202号に記載されるようなポリメラーゼ連鎖反応の技術をいう。
【0074】
本明細書で使用される場合、xは、xが同一の様式でyと天然に関連しない場合、yについて「異種」であり;すなわち、xは天然にはyと関連しないか、または、xは天然で見られるのと同じ様式ではyと関連しない。
【0075】
「相同性」とは、xとyとの間の類似性の度合いをいう。1つの形態から別の形態への配列間の対応は、当該分野で公知の技術により決定され得る。例えば、それらはポリヌクレオチドの配列情報の直接的な比較により決定され得る。あるいは、相同性は、相同領域間で安定な二重鎖を形成する条件下でポリヌクレオチドのハイブリダイゼーション(例えば、S1消化に先だって使用されるもの)、続いて一本鎖に特異的なヌクレアーゼにより消化され、続いて消化フラグメントのサイズ決定により決定され得る。
【0076】
本明細書で使用される用語「ポリペプチド」とは、アミノ酸のポリマーをいい、そして特定の長さの生成物はいわない;従って、ペプチド、オリゴヌクレオチド、およびタンパク質はポリペプチドの定義内に含まれる。この用語はまた、ポリペプチドの発現後の改変(例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化など)はいわない、すなわち除外する。例えば、1つ以上のアミノ酸アナログを含むポリペプチド(例えば、非天然アミノ酸などを含む)、置換された連結を有するポリペプチド、ならびに当該分野で公知である他の改変(天然に存在する改変、および非天然に存在する改変の両方)は、定義内に含まれる。
【0077】
特定された核酸配列に「由来する」ポリペプチドまたはアミノ酸配列とは、その配列中またはその一部分にコードされるポリペプチドのアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをいい、ここでこの一部分は少なくとも3〜5アミノ酸からなり、そしてより好ましくは少なくとも8〜10アミノ酸、そしてよりなお好ましくは少なくとも11〜15アミノ酸からなり、またはこれらはこの配列中にコードされたポリペプチドで免疫学的に同定可能である。この用語群はまた、指定された核酸配列から発現されたポリペプチドを含む。
【0078】
タンパク質は、そのタンパク質に特異的なモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体のいずれかの抗体を生成するために使用され得る。これらの抗体を生成する方法は、当該分野で公知である。
【0079】
「組換え宿主細胞」、「宿主細胞」、「細胞」、「細胞培養物」および他のこのような用語は、例えば、微生物、昆虫細胞、および哺乳動物細胞を意味し、これらは、組換えベクターまたは他の転移DNAについてレシピエントとして使用され得るかまたは使用されてきており、そして形質転換された元の細胞の子孫を含む。単一の親細胞の子孫は、天然の、偶然の、または意図的な変異に起因して元の親とは、形態学的において、またはゲノムDNAまたは全DNA相補物において必ずしも完全に同一でなくても良いことが理解される。哺乳動物宿主細胞についての例は、チャイニーズハムスターの卵巣(CHO)およびサル腎臓細胞(COS)を含む。
【0080】
詳細には、本明細書で使用される用語「細胞株」とは、インビトロで継続的または長期の増殖および分化をし得る細胞の集団をいう。しばしば、細胞株は、単一の前駆細胞由来のクローン性集団である。さらに、自発的または誘導された変化が、このようなクローン性集団の保存または移動の間に核型において生じ得ることが当該分野で公知である。従って、言及される細胞株由来の細胞は、祖先の細胞または培養物とは正確に同一ではないかもしれず、そして言及される細胞株はこのような改変体を含む。用語「細胞株」はまた、不死化細胞を含む。好ましくは、細胞株は、非ハイブリッド細胞株または2つの細胞型のみのハイブリドーマを含む。
【0081】
本明細書で使用される、用語「微生物」とは、原核微生物種および真核微生物種を含み、例えば細菌および真菌、後者は酵母および糸状菌を含む。
【0082】
本明細書で使用される「形質転換」とは、挿入について使用される方法(例えば、直接取り込み、形質転換、f-接合またはエレクトロポレーション)に関係なく外因性ポリヌクレオチドの宿主細胞への挿入をいう。外因性ポリヌクレオチドは、非組込みベクター、例えば、プラスミドとして維持され得るか、あるいは宿主ゲノムに組み込まれ得る。
【0083】
「ゲノム(の)」によって、ベクターにクローニングされた制限フラグメントに由来するDNA分子の収集物、すなわちライブラリーが意味される。これは、生物の遺伝物質の全てまたは一部を含み得る。
【0084】
「cDNA」によって、DNAの相補的鎖にハイブリダイズする相補的DNA配列が意味される。
【0085】
「精製された」および「単離された」によって、ポリペプチド配列またはヌクレオチド配列に言及する場合、意図される分子が、同型の他の生物学的高分子の実質的に非存在下で存在することが意味される。本明細書で使用される用語「精製された」は、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、なおより好ましくは95重量%、そして最も好ましくは少なくとも98重量%の同型の生物学的高分子が存在することを意味する(しかし、水、緩衝剤、および他の低分子、特に1000未満の分子量を有する分子は存在し得る)。
【0086】
適切なコード配列が一度単離されると、種々の異なる発現系(例えば、哺乳動物細胞、バキュロウイルス、細菌および酵母を用いた系)で発現され得る。
【0087】
i.哺乳動物系
哺乳動物発現系は当該分野で公知である。哺乳動物プロモーターは、哺乳動物RNAポリメラーゼを結合し、そしてコード配列(例えば、構造遺伝子)のmRNAへの下流(3’)転写を開始することが可能である任意のDNA配列である。プロモーターは転写開始領域(これは通常、コード配列の5’末端に近接して配置される)、およびTATAボックス(通常、転写開始部位の25〜30塩基対(bp)上流に位置する)を有する。TATAボックスは、正確な部位でRNA合成を開始するようにRNAポリメラーゼIIを指向させると考えられる。哺乳動物プロモーターはまた、上流プロモーターエレメントを含み、通常、TATAボックスの100〜200bp上流内に位置する。上流プロモーターエレメントは、転写が開始される率を決定し、そしてどちらかの配向性において作用し得る(Sambrookら、「Expression of Cloned Genes in Mammalian Cells」,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版、1989)。
【0088】
哺乳動物ウイルス遺伝子はしばしば高発現され、そして広範な宿主範囲を有する;従って、哺乳動物ウイルス遺伝子をコードする配列は、特に有用なプロモーター配列を提供する。例は、SV40初期プロモーター、マウス哺乳類腫瘍ウイルスLTRプロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター(Ad MLP)、および単純ヘルペスウイルスプロモーターを含む。さらに、非ウイルス遺伝子由来の配列(例えば、マウスメタロチオネイン遺伝子)もまた、有用なプロモーター配列を提供する。発現は、構成的または調節される(誘導可能)かのどちらかであり得、プロモーターに依存して、ホルモン応答性細胞中で糖質コルチコイドとともに誘導され得る。
【0089】
エンハンサーエレメント(エンハンサー)(上述されたプロモーターエレメントと組み合わされた)の存在は、通常、発現レベルを増加する。エンハンサーは、相同プロモーターまたは異種プロモーター(合成は正常なRNA開始部位で始まる)に連結される場合、1000倍まで転写を刺激し得る調節DNA配列である。エンハンサーはまた、それらが正常な方向または裏返された方向のどちらかで転写開始部位から上流または下流に、あるいはプロモーターから1000ヌクレオチドを超える距離で位置される場合、活性である(Maniatisら、Science,236:1237,1987;Albertsら、Molecular Biology of the Cell、第2版、1989)。ウイルス由来のエンハンサーエレメントは、これらが通常より広範な宿主範囲を有するために、特に有用であり得る。例は、SV40初期遺伝子エンハンサー(Dijkemaら、EMBO J.,4:761,1985)ならびにラウス肉腫ウイルスの長末端反復配列(LTR)由来のエンハンサー/プロモーター(Gormanら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,79:6777,1982b)およびヒトサイトメガロウイルス由来のエンハンサー/プロモーター(Boshartら、 Cell,41:521,1985)を含む。さらに、いくつかのエンハンサーは調節可能であり、インデューサー(例えば、ホルモンまたは金属イオン)の存在下でのみ活性になる(Sassone-CorsiおよびBorelli,Trends Genet.,2:215,1986;Maniatisら、Science,236:1237,1987)。
【0090】
DNA分子は哺乳動物細胞において細胞内発現され得る。組換えタンパク質のN-末端の最初のアミノ酸が常にメチオニン(ATG開始コドンによりコードされる)である場合、プロモーター配列はDNA分子と直接連結され得る。所望の場合、N-末端は臭化シアンとのインビトロインキュベーションによりタンパク質から切断され得る。
【0091】
あるいは、外来タンパク質はまた、哺乳動物細胞中の外来タンパク質の分泌を提供するリーダー配列フラグメントで構成される融合タンパク質をコードするキメラDNA分子を作製することにより、細胞から成長培地中へ分泌され得る。好ましくは、インビボまたはインビトロのどちらかで切断され得る、リーダーフラグメントと外来遺伝子との間にコードされるプロセシング部位がある。リーダー配列フラグメントは通常、細胞からのタンパク質の分泌を指向させる疎水性アミノ酸で構成されるシグナルペプチドをコードする。アデノウイルス三部構成(triparite)リーダーは、哺乳動物細胞中の外来タンパク質の分泌を提供するためのリーダー配列の例である。
【0092】
通常、哺乳動物細胞により認識される転写ターミネーター配列およびポリアデニル化配列は、翻訳停止コドンの3’に位置される調節領域であり、従って、プロモーターエレメントとともに、コード配列に隣接する。成熟mRNAの3’末端は、部位特異的な転写後切断およびポリアデニル化により形成される(Birnstiel ら、Cell,41:349,1985;ProudfootおよびWhitelaw,「Termination and 3’end processing of eukaryotic RNA」,:Transcription and Splicing (B.D.HamesおよびD.M.Glover編),1988;Proudfoot,Trends Biochem.Sci.,14:105,1989)。これらの配列は、DNAによりコードされるポリペプチドへ翻訳され得るmRNAの転写を指向させる。転写ターミネーター/ポリアデニル化シグナルの例はSV40由来の例を含む(Sambrookら、「Expression of cloned genes in cultured mammalian cells」,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,1989)。
【0093】
イントロン(介在性配列ともよばれる)が存在する場合、いくつかの遺伝子はより効率的に発現され得る。しかし、いくつかのcDNAは、スプライシングシグナル(スプライシングドナーおよびアクセプター部位ともよばれる)を欠損するベクターから効率的に発現されている(例えば、GothingおよびSambrook,Nature,293:620,1981を参照のこと)。イントロンは、スプライスドナーおよびアクセプター部位を含むコード配列内の介在性非コード配列である。それらは、一次転写のポリアデニル化後の「スプライシング」と呼ばれるプロセスによって除去される(Nevins,Ann.Rev.Biochem.,52:441,1983;Green,Ann.Rev.Genet.,20:671,1986;Pandgettら、Ann.Rev.Biochem.55:1119,1986;KrainerおよびManiatis,「RNA splicing」,:Transcription and Splicing (B.D.HamesおよびD.M.Gloer編),1988)。
【0094】
通常、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、および転写ターミネーター配列を含む上記の成分は、発現構築物に組み立てられる。所望の場合、エンハンサー、機能的スプライスドナーおよびアクセプター部位を有するイントロン、およびリーダー配列もまた、発現構築物中に含まれ得る。発現構築物はしばしば、哺乳動物細胞または細菌のような宿主中で安定に維持し得る染色体外エレメント(例えば、プラスミド)のようなレプリコン中で維持される。哺乳動物複製系は、動物ウイルス(複製のためにトランス作用因子を要求する)由来の系を含む。例えば、SV40(Gluzman,Cell,23:175,1981)のようなパポバウイルスまたはポリオーマウイルスの複製系を含むプラスミドは、適切なウイルスT抗原の存在下で極めて高いコピー数に複製する。哺乳動物レプリコンのさらなる例は、ウシパピローマウイルスおよびエプステインバーウイルス由来のレプリコンを含む。さらに、レプリコンは、2つの複製系を有し得、従って例えば、発現のために哺乳動物細胞中で、そしてクローニングおよび増幅のために原核生物宿主中で維持されることを可能にする。このような哺乳動物-細菌シャトルベクターの例は、pMT2(Kaufmanら、Mol.Cell.Biol.,9:946,1989)およびpHEBO(Shimizuら、Mol.Cell.Biol.,6:1074,1986)を含む。
【0095】
使用される形質転換手順は、形質転換されるべき宿主に依存する。哺乳動物細胞への異種ポリヌクレオチドの導入のための方法は当該分野で公知であり、そしてデキストラン媒介トランスフェクション、リン酸カルシウム沈澱、ポリブレン媒介トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リポソーム中へのポリヌクレオチドの封入、および核へのDNAの直接マイクロインジェクションを含む。
【0096】
発現のための宿主として利用可能である哺乳動物細胞株は、当該分野で公知であり、そしてアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)から入手可能である多くの不死化細胞株を含む(これはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、HepG2)、および多くの他の細胞株を含むが、これらに限定されない)。
【0097】
ii.バキュロウイルス系
タンパク質をコードするポリヌクレオチドはまた、適切な昆虫発現ベクターへ挿入され得、そしてこのベクター内の制御エレメントへ作動可能に連結される。ベクター構築は、当該分野で公知である技術を使用する。
【0098】
一般に、発現系の成分は、移入ベクター(通常、細菌プラスミド)、これはバキュロウイルスゲノムのフラグメントおよび発現されるべき異種遺伝子(単数または複数)の挿入のために都合のよい制限部位の両方を含む;移入ベクター中のバキュロウイルス特異的フラグメントと相同な配列を有する野生型バキュロウイルス(これはバキュロウイルスゲノムへの異種遺伝子の相同組換えを可能にする);ならびに適切な昆虫宿主細胞および増殖培地を含む。
【0099】
タンパク質をコードするDNA配列を移入ベクターに挿入した後、ベクターおよび野生型ウイルスゲノムは昆虫宿主細胞へトランスフェクトされ、ここでベクターおよびウイルスゲノムが組換えが可能になる。パッケージ化した組換えウイルスは発現され、そして組換えプラークは同定されそして精製される。バキュロウイルス/昆虫細胞発現系のための材料および方法は、とりわけ、 Invitrogen,San Diego,CA,USA (「MaxBac」 キット)からキット形式で市販されている。これらの技術は一般に当業者に公知であり、SummersおよびSmith,Texas Agricultural Experiment Station Bulletin No.1555,1987 (「下文においてSummersおよびSmith」)に十分に記載されている。
【0100】
タンパク質をコードするDNA配列をバキュロウイルスゲノムに挿入する前に、プロモーター、リーダー(所望の場合)、目的のコード配列、および転写終結配列を含む上記成分は通常、中間配置転換構築物(transplacement)(移入ベクター)に組み立てられる。この構築物は、単一遺伝子および作動可能に連結される調節エレメント;複数遺伝子、それぞれが所有する組の作動可能に連結される制御エレメント;または複数遺伝子(同じ組の調節エレメントによって制御される)を含み得る。中間配置転換構築物はしばしば、レプリコン(例えば、細菌のような宿主中での安定な維持を可能にする染色体外エレメント(例えば、プラスミド))中で維持される。レプリコンは、複製系を有し、従って、クローニングおよび増幅のために適切な宿主中で維持されることを可能にする。
【0101】
現在、AcNPV中に外来遺伝子を導入するための最も一般的に使用される移入ベクターは、pAc373である。当業者に公知の多くの他のベクターもまた、設計されている。これらは、例えば、pVL985(これは、ポリヘドリン開始コドンをATGからATTへ変化させ、そしてこれはATTから32塩基対下流にBamHIクローニング部位を導入する;LuckowおよびSummers,Virology,17:31,1989を参照のこと)を含む。
【0102】
通常、プラスミドはまた、ポリヘドリンポリアデニル化シグナル(Millerら、Ann.Rev.Microbiol.,42:177,1988)、および原核生物アンピシリン耐性(amp)遺伝子およびEscherichia coliにおける選択ならびに増殖のための複製起点を含む。
【0103】
通常、バキュロウイルス移入ベクターは、バキュロウイルスプロモーターを含む。バキュロウイルスプロモーターは、バキュロウイルスRNAポリメラーゼを結合し、そしてコード配列(例えば、構造遺伝子)のmRNAへの下流(5’から3’へ)転写を開始することを可能にする任意のDNA配列である。プロモーターは、通常コード配列の5’末端に近接して配置される転写開始領域を有する。通常、この転写開始領域は、RNAポリメラーゼ結合部位および転写開始部位を含む。バキュロウイルス移入ベクターはまた、エンハンサーと呼ばれる第二ドメイン(存在する場合、これは通常、構造遺伝子に遠位である)を有し得る。発現は調節されるかまたは構成性であるかのいずれかであり得る。
【0104】
ウイルス感染周期の後期に大量転写される構造遺伝子は、特に有用なプロモーター配列を提供する。例は、ウイルスポリヘドロンタンパク質をコードする遺伝子(Friesenら、「The Regulation of Baculovirus Gene Expression」,:The Molecular Biology of Baculoviruses(Walter Doerfler編).1986;およびEPO公開第127839号および同第155476号 )およびp10タンパク質をコードする遺伝子(Vlakら、J.Gen.Virol.,69:765,1988)に由来する配列を含む。
【0105】
適切なシグナル配列をコードするDNAは、分泌される昆虫またはバキュロウイルスタンパク質(例えば、バキュロウイルスポリヘドリン遺伝子)の遺伝子に由来し得る(Carbonellら、Gene,73:409,1988)。あるいは、哺乳動物細胞翻訳後改変(例えば、シグナルペプチド切断、タンパク質分解切断、およびリン酸化)は昆虫細胞によって認識されるようであり、そして分泌および核蓄積のために要求されるシグナルはまた、無脊椎動物細胞と脊椎動物細胞との間で保存されるようであるので、非昆虫起源のリーダー(例えば、ヒトαインターフェロン(Maedaら、Nature,315:592,1985) 、ヒトガストリン放出ペプチド(Lebacq-Verheydenら、Mol.Cell.Biol.,8:3129,1988)、ヒトIL-2(Smithら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:8404,1985)、マウスIL-3(Miyajimaら、Gene,58:273,1987)およびヒトグルコセレブロシダーゼ(Martinら、DNA,7:99,1988) をコードする遺伝子由来のリーダーもまた、昆虫における分泌を提供するために使用され得る 。
【0106】
組換えポリペプチドまたはポリタンパク質は、細胞内で発現され得るか、または適切な調節配列によって発現される場合、分泌され得る。非融合外来タンパク質の良好な細胞内発現は、通常、ATG開始コドンの前に適切な翻訳開始シグナルを含む短いリーダー配列を理想的に有する異種遺伝子を要求する。所望の場合、N末端のメチオニンは、臭化シアンとのインビトロインキュベーションによって成熟タンパク質から切断され得る。
【0107】
あるいは、天然に分泌されない組換えポリタンパク質またはタンパク質は、昆虫において外来タンパク質の分泌を提供するリーダ配列フラグメントで構成される融合タンパク質をコードするキメラDNA分子を作製することによって、昆虫細胞から分泌され得る。通常、リーダー配列フラグメントは、タンパク質の小胞体への輸送を指向させる疎水性アミノ酸で構成されるシグナルペプチドをコードする。
【0108】
DNA配列および/またはタンパク質の発現産物前駆体をコードする遺伝子の挿入後、昆虫細胞宿主は、移入ベクターの異種DNAおよび野生型バキュロウイルスのゲノムDNAと同時形質転換(通常、同時トランスフェクションによって)される。通常、構築物のプロモーターおよび転写終結配列は、バキュロウイルスゲノムの2〜5kbセクションを含む。バキュロウイルス中の所望の部位へ異種DNAを導入するための方法は、当該分野で公知である(SummersおよびSmith、前出;Smithら、Mol.Cell.Biol.,3:2156,1983;ならびにLuckowおよびSummers、前出を参照のこと)。例えば、挿入は、ポリヘドリン遺伝子のような遺伝子中になされ得る(相同的二重交差組換えによって);挿入はまた、所望のバキュロウイルス遺伝子に操作される制限酵素部位へなされ得る(Millerら、Bioessays,4:91,1989)。発現ベクターにおいてポリヘドリン遺伝子の代わりにクローン化される場合、DNA配列はポリヘドリン特異的配列によって5’および3’の両方に隣接され、そしてポリヘドリンプロモーターの下流に位置づけられる。
【0109】
新たに形成されたバキュロウイルス発現ベクターは、続いて、感染性の組換えバキュロウイルスにパッケージング(package)される。相同組換えは、低い確率で起こる(およそ1%と5%との間);従って、同時トランスフェクト後に産生されたウイルスの大多数は、依然として野生型ウイルスである。それ故、組換えウイルスを同定する方法が必要である。本発現系の利点は、組換えウイルスの識別を可能とする、視覚的なスクリーニングである。ネイティブウイルスによって産生されるポリヘドリンタンパク質は、ウイルス感染後の遅い時期に、感染細胞の核内で、極めて高いレベルで産生される。蓄積されたポリヘドリンタンパク質は、包埋した粒子をもまた含有する閉鎖性物質(occlusion body)を形成する。15μm の大きさに達するこれらの閉鎖性物質は、屈折率が高く、光学顕微鏡下で容易に視覚化可能な、明るく光る外観を示す。組換えウイルスによって感染された細胞は、閉鎖性物質を欠く。野生型ウイルスから、組換えウイルスを識別するために、当該分野で公知である技術により、トランスフェクションの上清を、昆虫細胞の単層上でプラーク形成(plaqued)させた。すなわち、光学顕微鏡下で、閉鎖性物質の存在(野生型ウイルスを示す)、あるいは非存在(組換えウイルスを示す)についてプラークをスクリーニングした(Ansubelら編、「Current Protocols in Microbiology」,第2巻 16.8 (Supp.10),1990;SummersおよびSmith,前出;ならびにMillerら、前出)。
【0110】
組換えバキュロウイルス発現ベクターは、幾つかの昆虫細胞への感染のために、開発されてきた。例えば、特に、Aedes aegypti,Autographa californica,Bombyx mori,Drosophila melanogaster,Spodoptera frugiperda,およびTrichoplusia ni (PCT公開第WO 89/046699号;Carbonell ら、J.Virol.,56:153,1985;Wright,Nature,321:718,1986;Smith ら、Mol.Cell.Biol.,3:2156,1983;および一般的には Fraser,ら、In Vitro Cell.Dev.Biol.,25:225,1989を参照)の組換えバキュロウイルスは、開発されてきた。
【0111】
細胞および細胞培養培地は、バキュロウイルス/発現系における異種ポリペプチドの、直接あるいは融合発現の両方について、市販されている;細胞培養の技術は、一般的に当業者に公知である(例えば、SummersおよびSmith、前出を参照)。
【0112】
その後、改変された昆虫細胞を、改変昆虫宿主中に存在するプラスミドの安定な維持を可能とする、適切な栄養培地中で増殖させる。発現産物遺伝子が誘導性の制御下にある場合、宿主細胞は高密度まで培養され、発現誘導され得る。あるいは、発現が構成性である場合、目的の生産物の除去および涸渇した栄養素の増加の間、生産物は連続的に培地中で発現され、栄養培地は連続的に循環されなければならない。生産物は、クロマトグラフィー(例えば、HPLC、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなど)、電気泳動、密度勾配遠心分離、溶媒抽出などの技術により、精製され得る。適切には、同様に培地に分泌されるかあるいは昆虫細胞の溶解の結果生じる任意の昆虫タンパク質を実質的に除去するために、少なくとも実質的に宿主細片(例えば、タンパク質、脂質、および多糖)を含まない生産物を提供するために、必要であれば、生産物はさらに精製され得る。
【0113】
タンパク質の発現を得るために、形質転換体からの組換え宿主細胞は、組換えタンパク質をコードする配列の発現を可能とする条件下でインキュベートされる。これらの条件は、選択した宿主細胞に依存して変化する。しかし、条件は、当該分野で公知であるものに基づき、当業者によって容易に探知され得る。
【0114】
iii.細菌系
細菌の発現技術は、当該分野で公知である。細菌プロモーターは、細菌RNAポリメラーゼと結合し、下流(3”)のコード配列(例えば、構造遺伝子)のmRNAへの転写を開始し得る、任意のDNA配列である。プロモーターは、通常コード配列の5’末端の付近に位置する転写開始領域を持つ。この転写開始領域は、通常RNAポリメラーゼ結合部位および転写開始部位を含む。細菌プロモーターはまた、RNA合成が開始する近接したRNAポリメラーゼ結合部位と重なり得る、オペレーターと呼ばれる第2のドメインを有し得る。遺伝子リプレッサータンパク質はオペレーターに結合し、それによって特定の遺伝子の転写を阻害し得るので、オペレーターは、負に制御された(誘導性の)転写を可能にする。構成性発現は、オペレータのような負の制御エレメントが存在しない場合に起こり得る。加えて、もし存在する場合、通常はRNAポリメラーゼ結合配列の近位(5’)に存在する遺伝子活性化タンパク質結合配列によって、正の制御は達成され得る。遺伝子活性化タンパク質の例としては、E.coliでのlacオペロンの転写開始を助ける、異化活性化タンパク質(CAP)がある(Raibaudら、Ann.Rev.Genet.,18:173,1984)。従って、制御された発現は、正または負のいずれかであり得る(それによって、転写が増強あるいは減少される)。
【0115】
代謝経路の酵素をコードする配列は、特に有用なプロモーター配列を提供する。例として、ガラクトース、ラクトース(lac)(Changら、Nature,198:1056,1977)、およびマルトースのような、糖の代謝酵素由来のプロモーター配列を含む。さらなる例として、トリプトファン(trp)(Goeddelら、Nuc.Acids Res.,8:4057,1980;Yelvertonら、Nuc.Acids Res.,9,:731,1981;米国特許第4,738,921号;および欧州特許公開第036 776号および第121 775号)のような、生合成酵素由来のプロモーター配列を含む。g−ラオタマーゼ(g-laotamase)(bla)プロモーター系(Weissmann,「The cloning of interferon and other mistakes」:Interferon3(Gresser 編),1981)、およびにバクテリオファージλPL(Shimatakeら、Nature,292:128,1981)およびT5 (米国特許第4,689,406号)プロモーター系もまた、有用なプロモーター配列を提供する。
【0116】
加えて、天然に存在しない合成プロモーターもまた、細菌プロモーターとして機能する。例えば、ある細菌またはバクテリオファージのプロモーターの転写活性化配列は、合成ハイブリッドプロモーターを作成する、別の細菌またはバクテリオファージのプロモーターのオペロン配列と結合され得る(米国特許第4,551,433号)。例えば、tacプロモーターは、trpプロモーター、およびlacリプレッサーにより制御されるlacオペロン配列の両方を包含するハイブリッドtrp-lacプロモーターである(Amannら、Gene,25:167,1983;de Boerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,80:21,1983)。さらに、細菌プロモーターは、細菌RNAポリメラーゼに結合し、転写を開始し得る、天然に存在する細菌以外の起源のプロモーターを含有し得る。細菌以外を起源とする天然に存在するプロモーターはまた、適合するRNAポリメラーゼと結合し、原核生物でのいくつかの遺伝子において高いレベルの発現を生じる。バクテリオファージT7 RNAポリメラーゼ/プロモーター系は、結合したプロモーター系の1例である(Studierら、J.Mol.Biol.,189:113,1986;Taborら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:1074,1985)。加えて、ハイブリッドプロモーターはまた、バクテリオファージプロモーターおよびE.coli オペレーター領域を含有し得る(欧州特許公開第267 851号)。
【0117】
機能的なプロモーター配列に加え、効率的なリボゾーム結合部位もまた、原核生物での外来遺伝子発現に有用である。E.coliにおいて、リボゾーム結合部位は、シャインーダルガルノ(SD)配列と呼ばれ、開始コドン(ATG)を含有し、配列3〜9ヌクレオチド長は、開始コドンの3〜11ヌクレオチド上流に位置する(Shineら、Nature,254:34,1975)。SD配列は、SD配列とE.coli 16S rRNAの3’末端との間の塩基対により、mRNAのリボゾームへの結合を促進すると考えられる(Steitzら、「Genetic signals and nucleotide sequences in messenger RNA」:Biological Regulation and Development:Gene Expression(R.F.Goldberger 編),1979)。真核生物遺伝子および原核生物遺伝子を発現するためには、弱いリボゾーム結合部位を有する(Sambrookら、「Expression of cloned genes in Escherichia coli」:Molecular Cloning:A Laboratory Manual,1989)。
【0118】
DNA分子は、細胞内にて発現され得る。プロモーター配列は、N−末端の第1のアミノ酸が常にATG開始コドンでコードされるメチオニンである場合、DNA分子と直接結合され得る。もし望まれる場合は、N−末端のメチオニンは、インビトロで、臭化シアンとのインキュベーションにより、またはインビトロあるいはインビボいずれかで、細菌メチオニンN−末端ペプチダーゼとのインキュベーションにより、タンパク質から切断され得る(欧州特許公開第219 237号)。
【0119】
融合タンパク質は、直接の発現に対する代替物を提供する。通常、内因性の細菌タンパク質、あるいは他の安定なタンパク質のN−末端部分をコードするDNA配列は、異種コード配列の5’末端に融合される。発現において、この構築物は、2つのアミノ酸配列の融合物を提供する。例えば、バクテリオファージλ細胞遺伝子は、外来遺伝子の5’末端と結合され、そして細菌で発現され得る。結果として生じる融合タンパク質は、好ましくは、バクテリオファージタンパク質を外来遺伝子から切断するための、プロセシング酵素(第Xa因子)の部位を保持する(Nagaiら、Nature,309:810,1984)。融合タンパク質はまた、lacZ(Jiaら、Gene,60:197,1987),trpE(Allenら、J.Biotechnol.,5:93,1987;Makoffら、J.Gen.Microbiol.,135:11,1989)、およびChey(欧州特許公開第324 647号)遺伝子由来の配列を伴って作成され得る。2つのアミノ酸配列の接合部のDNA配列は、切断可能部位をコードし得る、あるいはし得ない。他の例は、ユビキチン融合タンパク質である。このような融合タンパク質は、外来タンパク質からユビキチンを切断するために、好ましくは、プロセシング酵素(例えば、ユビキチン特異的プロセシングプロテアーゼ)の部位を保持するユビキチン領域とともに作成される。本方法を通じて、ネイティブな外来タンパク質は単離され得る(Millerら、Bio/Technology 7:698,1989)。
【0120】
あるいは、細菌において外来タンパク質の分泌を提供する、シグナルペプチド配列フラグメントを含有する融合タンパク質をコードするキメラDNA分子を作成することにより、外来タンパク質はまた、細胞から分泌され得る(米国特許第4,336,336号)。シグナル配列フラグメントは、通常、細胞からのタンパク質の分泌を指向させる疎水的アミノ酸を含有するシグナルペプチドをコードする。タンパク質は、培地へ(グラム陽性細菌)、あるいは細胞の内膜と外膜との間に位置するペリプラズム空間(グラム陰性細菌)のいずれかへ分泌される。好ましくは、シグナルペプチドフラグメントと外来遺伝子との間にコードされる、インビトロあるいはインビボのいずれかで切断され得る、プロセシング部位を有する。
【0121】
適切なシグナル配列をコードするDNAは、例えば、E.coli外膜タンパク質遺伝子(ompA)(Masuiら:Experimental Manipulation of Gene Expression,1983;Ghrayebら、EMBO J.,3:2437,1984)、およびE.coliアルカリホスファターゼシグナル配列(phoA)(Okaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:7212,1985)のような、細菌の分泌タンパク質の遺伝子から由来され得る。さらなる例として、種々のBacillus株由来のα−アミラーゼ遺伝子のシグナル配列が、B.subtilisから異種タンパク質を分泌するために用いられ得る(Palvaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,79:5582,1982;欧州特許公開第244 042号)。
【0122】
細菌によって認識される転写終結配列は、通常、翻訳終止コドンの3’に位置する制御領域であり、従って、プロモーターとともにコード配列に隣接する。これらの配列は、DNAにコードされたポリペプチドに翻訳され得るmRNAの転写を指向する。転写終結配列は、転写の終結を促進するステムループ構造形成が可能である約50ヌクレオチドのDNA配列を、しばしば含有する。例は、強力なプロモーターを有する遺伝子(例えば、E.coliのtrp遺伝子、および他の生合成遺伝子)由来の転写終結配列を含有する。
【0123】
通常は、プロモーター、シグナル配列(もし望まれる場合)、目的のコード配列、および転写終結配列を含有する上記成分は、共に、発現構築物中に配置される。発現構築物は、しばしば、細菌のような宿主中で安定に維持され得る染色体外エレメント(例えば、プラスミド)のようなレプリコン中に維持される。レプリコンは、複製システムを有し、従って、発現またはクローニングおよび増幅のいずれかのために、原核生物宿主中で維持されることを可能にする。加えて、レプリコンは、高コピー数あるいは低コピー数のいずれかのプラスミドであり得る。高コピー数プラスミドは一般に、約5〜約200(通常は、約10〜約150)の範囲のコピー数を有する。高コピー数プラスミドを含有する宿主は、好ましくは、少なくとも約10の、より好ましくは、少なくとも約20のプラスミドを含有する。高コピー数あるいは低コピー数のいずれかのベクターは、宿主に対するベクターの効果および外来タンパク質の効果に依存し、選択され得る。
【0124】
あるいは、発現構築物は、組み込み型ベクターにより、細菌ゲノム中に組み込まれ得る。通常、組み込み型ベクターは、ベクターを組み込むことを可能にする細菌染色体と相同な配列を少なくとも1つ含有する。組み込みは、ベクターの相同DNAと細菌染色体との間の組換えの結果生じると思われる。例えば、種々のBacillus株由来のDNAで構築された組み込み型ベクターは、Bacillus染色体中に組み込まれる(欧州特許公開第127 328号)。組み込み型ベクターはまた、バクテリオファージあるいはトランスポゾンの配列を含有し得る。
【0125】
通常、染色体外のおよび組み込み型の発現構築物は、形質転換された細菌株の選択を可能とする選択マーカーを、含有し得る。選択マーカーは、細菌宿主中で発現され得、そして、選択マーカーは、アンピシリン、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、カナマイシン(ネオマイシン)、およびテトラサイクリンなどの薬物に対する耐性を細菌に与える遺伝子を含有し得る(Daviesら、Ann.Rev.Microbiol.,32:469,1978)。選択マーカーはまた、ヒスチジン、トリプトファン、およびロイシン生合成経路中などの生合成遺伝子を含有し得る。
【0126】
あるいは、上記成分のいくつかは、共に、形質転換ベクター中に置かれ得る。形質転換ベクターは、通常、上記のとおりレプリコン中に維持されるか、あるいは組み込み型ベクター中に現れるかのいずれかの選択マーカーを含有する。
【0127】
発現および形質転換ベクター(染色体外レプリコンあるいは組み込み型ベクター)は、多くの細菌への形質転換のために、開発されてきた。例えば、発現ベクターは、特に、以下の細菌について開発されている:B.subtilis(Palvaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,79:5582,1982;欧州特許公開第036 259号および第063 953号;PCT公開第WO 84/04541号),E.coli(Shimatakeら、Nature,292:128,1981;Amannら、Gene,40:183,1985;Studierら、J.Mol.Biol.,189:113,1986;欧州特許公開第036 776号,第136 829号および第136 907号),Streptococcus cremoris(Powellら、Appl.Environ.Microbiol.,54:655,1988);Streptococcus lividans(Powellら、Appl.Environ.Microbiol.,54:655,1988),およびStreptomyces lividans(米国特許第4、745、056号)。
【0128】
外因性DNAを細菌性宿主に導入する方法は、当該分野で周知であり、通常、CaCl2または二価陽イオンおよびDMSOなどの他の薬剤のいずれかで処理した細菌の形質転換を含む。DNAはまた、エレクトロポレーションにより細菌細胞に導入され得る。形質転換手順は、通常、形質転換されるべき細菌種により変化する(例えば、Massonら、FEMS Microbiol.Lett.,60:273,1989;Palvaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,79:5582,1982;欧州公開第036 259号および第063 953号;PCT公開番号第WO 84/04541号[Bacillus],Millerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,8:856,1988;Wangら、J.Bacteriol.,172:949,1990[Campylobacter],Cohenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,69:2110,1973;Dowerら、Nuc.Acids Res.,16:6127,1988;Kushner,Genetic Engineering:Proceedings of the International Symposium on Genetic Engineeringの「ColE1誘導性プラスミドによるEscherichia coliの形質変換の改良方法」(H.W.BoyerおよびS.Nicosia編),1978;Mandelら、J.Mol.Biol.,53:159,1970;Taketo,Biochim.Biophys.Acta,949:318,1988[Escherichia],Chassyら、FEMS Microbiol.Lett.,44:173,1987[Lactobacillus],Fiedlerら、Anal.Biochem,170:38,1988[Pseudomonas],Augustinら、FEMS Microbiol.Lett.,66:203,1990[Staphylococcus],Baranyら、J.Bacteriol.,144:698,1980;Harlander,Streptococcal Geneticsの「エレクトロポレーションによるStreptococcus lactisの形質転換」(J.FerrettiおよびR.Curtiss III編),1987;Perryら、Infec.Immun.,32:1295,1981;Powellら、Appl.Environ.Microbiol.54:655,1988;Somkutiら、Proc.4th Eur.Cong.Biotechnology,1:412,1987[Streptococcus]を参照)。
【0129】
iv.酵母発現
酵母発現系もまた、当業者に公知である。酵母プロモーターは、酵母RNAポリメラーゼを結合し得、mRNAへのコード配列(例えば、構造遺伝子)の下流(3’)転写を開始し得る任意のDNA配列である。プロモーターは、通常、コード配列の5’末端と近位に位置する転写開始領域を有する。この転写開始領域は、通常、RNAポリメラーゼ結合部位(「TATA Box」)および転写開始部位を有する。また、酵母プロモーターは、上流活性化因子配列(UAS)と呼ばれる第二のドメインを有し、これは、存在すれば、通常、構造遺伝子と遠位にある。UASは、調節された(誘導性)発現を可能にする。構成発現は、UAS不在下で生じる。調節発現は、正または負のいずれかであり得、それにより、転写を増強または低下させ得る。
【0130】
酵母は、活性代謝経路を有する発酵生物であり、従って、代謝経路の酵素をコードする配列は、特に有用なプロモーター配列を提供する。例として、アルコール脱水素酵素(ADH)、(欧州公開第284 044号)、エノラーゼ、グルコキナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸-脱水素酵素(GAPまたはGAPDH)、ヘキソキナーゼ、ホスホフラクトキナーゼ、3-ホスホグリセリン酸ムターゼおよびピルビン酸キナーゼ(PyK)(欧州公開第329 203号)が含まれる。また、酸性ホスファターゼをコードする酵母PH05遺伝子は、有用なプロモーター配列を提供する(Myanoharaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,80:1,1983)。
【0131】
さらに、天然に存在しない合成プロモーターもまた、酵母プロモーターとして機能する。例えば、酵母プロモーターの一つであるUAS配列を別の酵母プロモーターの転写活性化領域と結合し、合成ハイブリッドプロモーターを作製し得る。このようなハイブリッドプロモーターの例には、GAP転写活性化領域に結合したADH調節配列が含まれる(米国特許第4,876,197号および第4,880,734号)。その他のハイブリッドプロモーターの例には、GAPまたはPyKなどの解糖酵素遺伝子の転写活性化領域と結合したADH2GAL4GAL10またはPHO5遺伝子のいずれかの調節配列から成るプロモーターが含まれる(欧州公開第164 556号)。さらに、酵素プロモーターは、天然に存在する非酵母起源のプロモーターを含み得、これは、酵母RNAポリメラーゼに結合し、転写を開始させる能力を有する。このようなプロモーターの例には、とりわけ、Cohenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:1078,1980;Henikoffら、Nature,283:835,1981;Hollenbergら、Curr.Topics Microbiol.Immunol.,96:119,1981;Hollenbergら、Plasmids of Medical,Environmental and Commercial Importance(K.N.TimmisおよびA.Puhler編),1979,「酵母Saccharomyces cerevisiaeにおける細菌性抗生物質抵抗遺伝子の発現」;Mercerau-Puigalonら、Gene,11:163,1980;Panthierら、Curr.Genet.,2:109,1980が挙げられる。
【0132】
DNA分子は、酵母において細胞内で発現し得る。プロモーター配列をDNA分子と直接結合し得る。この場合、組換えタンパク質のN-末端の第一のアミノ酸は常にメチオニンであり、これはATG開始コドンによりコードされる。所望すれば、N-末端のメチオニンを、臭化シアンとともにインビトロでインキュベートすることによりタンパク質から切断し得る。
【0133】
融合タンパク質は、酵母発現系、および哺乳動物においてはバキュロウイルス、ならびに細菌発現系の代替物を提供する。通常、内因性酵母タンパク質または他の安定なタンパク質のN-末端部分をコードするDNA配列は、異種コード配列の5’-末端に融合される。発現の際、この構築物は、二つのアミノ酸配列の融合物を提供する。例えば、酵母またはヒトスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)遺伝子は、外来遺伝子の5’末端に結合し、酵母内で発現し得る。二つのアミノ酸配列の結合点のDNA配列は、切断可能な部位をコードし得るか、またはコードし得ない(例えば、欧州公開第196 056号を参照)。別の例は、ユビキチン融合タンパク質である。このような融合タンパク質は、好ましくは、ユビキチンを外来タンパク質から切断するためのプロセシング酵素(例えば、ユビキチン特異的プロセシングプロテアーゼ)部位を保持するユビキチン領域を有して作製される。従って、この方法により、天然の外来タンパク質を単離し得る(例えば、PCT公開第WO88/024066号を参照)。
【0134】
あるいは、外来タンパク質もまた、外来タンパク質の酵母での分泌に供するリーダー配列断片を含有する融合タンパク質をコードするキメラDNA分子を作製することにより、細胞から増殖培地中に分泌され得る。好ましくは、リーダー断片と外来遺伝子との間にコードされるプロセシング部位があり、インビボまたはインビトロのいずれかで切断され得る。リーダー配列断片は、通常、細胞からのタンパク質の分泌を指向する疎水性アミノ酸から成るシグナルペプチドをコードする。
【0135】
適切なシグナル配列をコードするDNAは、酵素インベルターゼ遺伝子(欧州公開第012 873号;日本公開第62,096,086号)およびA因子遺伝子(米国特許第4,588,684号)などの分泌酵母タンパク質の遺伝子から誘導され得る。あるいは、インターフェロンリーダーなどの非酵母起源のリーダーが存在し、これもまた、酵母における分泌に供する(欧州公開第060 057号)。
【0136】
好ましいクラスの分泌リーダーは、酵母α因子遺伝子の断片を用いるもので、この断片は、「プレ」シグナル配列および「プロ」領域の両方を含む。使用し得るα因子断片の型には、完全長プレ-プロα因子リーダー(約83アミノ酸残基)ならびに短縮型α因子リーダー(通常、約25〜約50アミノ酸残基)が含まれる(米国特許第4,546,083号および第4,870,008号;欧州公開第324 274号)。分泌に供するα因子リーダー断片を用いるさらなるリーダーには、第二の酵母α因子由来のプロ領域ではなく、第一の酵母のプレ配列で作製したハイブリッドα因子リーダーが含まれる(例えば、PCT公開第WO89/02463号を参照)。
【0137】
通常、酵母により認識される転写終結配列は、翻訳停止コドンに対して3’に位置する調節領域であるため、プロモーターと共にコード配列に隣接する。これらの配列は、DNAによりコードされるポリペプチドに翻訳され得るmRNAの転写を指向する。転写終結配列および解糖酵素をコードする配列のような他の酵母認識終結配列の例は、周知である。
【0138】
通常、プロモーター、リーダー(所望の場合)、目的のコード配列および転写終結配列を有する上記の成分を共に発現構築物中に入れる。発現構築物は、しばしば酵母または細菌などの宿主で安定に維持し得る染色体外エレメント(例えば、プラスミド)などのレプリコンで維持される。このレプリコンは、二つの複製系を有し得るため、例えば、発現のための酵母ならびにクローニングおよび増幅のための原核生物宿主で維持され得る。このような酵母細菌シャトルベクターの例には、YEp24(Botsteinら、Gene,8:17-24,1979)、pC1/1(Brakeら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:4642-4646,1984)、およびYRp17(Stinchcombら、J.Mol.Biol.,158:157,1982)が挙げられる。さらに、レプリコンは、高または低コピー数プラスミドのいずれかであり得る。高コピー数プラスミドは、一般的に約5〜約200、通常、約10〜約150の範囲のコピー数を有する。高コピー数プラスミドを含む宿主は、好ましくは、少なくとも約10、より好ましくは、少なくとも約20を有する。高または低コピー数ベクターのいずれかを、宿主に及ぼすベクターおよび外来タンパク質の効果に依存して選択し得る(例えば、Brakeら、上記を参照)。
【0139】
あるいは、発現構築物を組込みベクターで酵母ゲノムに組み込み得る。通常、組込みベクターは、ベクターに組み込ませる酵母染色体に相同な少なくとも一つの配列を有し、そして好ましくは、発現構築物に隣接する2つの相同配列を有する。組込みは、ベクターおよび酵母染色体の相同なDNA間の組換えから生じると思われる(Orr-Weaverら、Methods in Enzymol.,101:228-245,1983)。組込みベクターを、ベクターでの封入について適当な相同配列を選択することにより、酵母の特定の遺伝子座に指向し得る(Orr-Weaverら、上記を参照)。一つ以上の発現構築物は組み込み得、おそらく生成される組換えタンパク質のレベルに影響を及ぼし得る(Rineら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,80:6750,1983)。ベクターに含まれる染色体配列は、全ベクターの組込みが生じるベクターの単一のセグメントとしてか、または発現構築物のみの安定な組込みを生じ得る、染色体の隣接セグメントに相同な、ベクター内の発現構築物と隣接する二つのセグメントのいずれかとして生じ得る。
【0140】
通常、染色体外および組込み発現構築物は、形質転換した酵母株を選択できるように、選択マーカーを含有し得る。選択マーカーは、ADE2HIS4LEU2TRP1およびALG7などの酵母宿主で発現され得る生合成遺伝子、ならびに酵母細胞において、それぞれツニカマイシンおよびG418に対する耐性を付与するG418耐性遺伝子を含み得る。さらに、適した選択マーカーはまた、金属などの毒性化合物の存在下で増殖能を有する酵母を提供し得る。例えば、CUP1の存在により、銅イオンの存在下で酵母を増殖させ得る(Buttら、Microbiol.Rev.,51:351,1987)。
【0141】
あるいは、上記成分の幾つかを共に形質転換ベクターに入れ得る。形質転換ベクターは、通常、上記のように、レプリコンで維持されるか、または組込みベクターに発展される選択マーカーから構成される。
【0142】
染色体外レプリコンまたは組込みベクターのいずれかの発現および形質転換ベクターが、多くの酵母に形質転換するため開発された。例えば、発現ベクターがとりわけ、以下の酵母:Candida albicans(Kurtzら、Mol.Cell.Biol.,6:142,1986),Candida maltose(Kunzeら、J.Basic Microbiol.,25:141,1985),Hansenula polymorpha(Gleesonら、J.Gen.Microbiol.,132:3459,1986;Roggenkampら、Mol.Gen.Genet.,202:302,1986),Kluyveromyces fragilis(Dasら、J.Bacteriol.,158:1165,1984),Kluyveromyces lactis(De Louvencourtら、J.Bacteriol.,154:737,1983;Van den Bergら、Bio/Technology,8:135,1990),Pichia guillerimondii(Kunzeら、J.Basic Microbiol.,25:141,1985),Pichia pastoris(Creggら、Mol.Cell.Biol.,5:3376,1985;米国特許第4,837,148号および第4,929,555号)、Saccharomyces cerevisiae(Hinnenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75:1929,1978;Itoら、J.Bacteriol.,153:163,1983),Schizosaccharomyces pombe(BeachおよびNurse,Nature,300:706,1981)およびYarrowia lipolytica(Davidowら、Curr.Genet.,10:39,1985;Gaillardinら、Curr.Genet.,10:49,1985)用に開発された。
【0143】
外因性DNAを酵母宿主に導入する方法は、当該分野で周知であり、通常、スフェロプラストまたはアルカリ性カチオンで処理したインタクトな酵母細胞のいずれかの形質転換を含む。形質転換の手順は、通常、形質転換される酵母種により変化する(例えば、Kurtzら、Mol.Cell.Biol.,6:142,1986;Kunzeら、J.Basic Microbiol.,25:141,1985[Candida],Gleesonら、J.Gen.Microbiol.,132:3459,1986;Roggenkampら、Mol.Gen.Genet.,202:302,1986[Hansenula],Dasら、J.Bacteriol.,158:1165,1984;De Louvencourtら、J.Bacteriol.,154:737,1983;Van den Bergら、Bio/Technology,8:135,1990[Kluyveromyces],Creggら、Mol.Cell.Biol.,5:3376,1985;Kunzeら、J.Basic Microbiol.,25:141,1985;米国特許第4,837,148号および第4,929,555号[Pichia],Hinnenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75:1929,1978;Itoら、J.Bacteriol.,153:163,1983[Saccharomyces],BeachおよびNurse,Nature,300:706,1981[Schizosaccharomyces],およびDavidowら、Curr.Genet.,10:39,1985;Gaillardinら、Curr.Genet.,10:49,1985[Yarrowia])。
【実施例】
【0144】
株、プラスミドおよび培地
使用した株およびプラスミドについて表1および図1A-Dで説明する。図1A-1Dは、S.cerevisiae株の改変に使用した組込みカセットを図式により示す。白四角は、相同性染色体遺伝子座への組込みに使用したS.cerevisiae染色体配列ade2(図1A)およびlys2(図1B-D)を示す。組込み体の選択に使用した遺伝子マーカー(HIS3およびTRP1)を斜線を付した矢印で示し、白矢印(GAL/CYC)は、プロモーター配列を示す。黒四角(term)は、転写終結配列を示す。プラスミドベクター配列は、示されていない。
【0145】
【表1】


E.coli株HB101(F-hsdS20 recA13 ara-14 proA2 lacY1 galK2 rpsL20 xyl-5 metl-1 supE44)をプラスミドの構築に使用した。E.coli細胞の形質転換および組換えプラスミドの分析を、Sambrookら、Molecular Cloning:A laboratory Manual,2nd Edition,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,New York,USA,1989による記載のように、実施した。
【0146】
必要なアミノ酸(50μg/ml)を補充した2%炭素源および0.67%酵母窒素塩基を含む合成培地(Difco Laboratories,Detroit,MI,USA)、または2%グルコース(YPD)またはガラクトース(Ga1YP)、1%酵母抽出物、2%ペプトン、0.3%KH2PO4を含む完全培地中、S.cerevisiae株を30℃で増殖させる。
【0147】
プラスミド構築および遺伝子操作
制限酵素、T4 DNAリガーゼならびにDNAおよびRNA操作に使用する他の酵素は、New England Biolabs(Hitchin,UK)またはBoehringer Mannheim GmbH(Mannheim,Germany)から入手される。特定のDNAフラグメントのPCR増幅を、合成オリゴヌクレオチドを使用してPerkin Elmer Thermal Cycler(Norwalk,CT,USA)で行う。DNA配列決定をApplied Biosystems(Norwalk,CT,USA)モデル373 DNA Sequencerを使用して行う。全酵母DNAまたはRNAを標準的手順に従って抽出する(Shermanら、Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,New York,USA,1983)。他のDNA操作はすべて、Sambrookら、同上による記載のように行う。S.cerevisiae株をLiC1法(Rothstein,DNA Cloning(Glover,D.M.編),第11巻,45-66頁,IRL Press,1985)により形質転換する。
【0148】
異なる二つのS.cerevisiaeの染色体遺伝子座、LYS2およびADE2に発現カセットを挿入するため、二つの組込みカセットを構築する。組込みプラスミドYIpLyT(表1)を、プラスミドpUC8のEcoRI部位とHindIII部位との間に1,318bpのS.cerevisiae LYS2遺伝子を有するEcoRI-HindIII PCRフラグメントをクローニングすることにより得る。得られるプラスミドpUC8-Lys(表1)は、LYS2配列内に位置する特有のBg1II部位を含有し、これをプラスミドYRp17のTRP1遺伝子のPCR増幅により得られたS.cerevisiae選択マーカーTRP1のクローニングに使用する。5’末端にEcoRI部位および3’末端にPstI部位を付加するPCR法で増幅したS.cerevisiae ADE2遺伝子の1,059bpのXbaIフラグメントをpUC8のEcoRI-PstI部位に挿入することにより、組込みプラスミドYIpAH(表1)を構築する。5’末端に制限部位BamHI-SpeI-NotIおよび3’末端にBamHI部位を付加するPCR法により、S.cerevisiae選択マーカーHIS3を増幅する。HIS3 BamHI消化PCR産物をpUC8-Adeの特有のBg1II部位にクローン化してプラスミドYIpAHを与える。
【0149】
発現カセットを保有するpUC18yexプラスミドを、プロモーターから終結配列に及ぶプラスミドYEpsec1のPCR増幅NotIの1,238bpフラグメント(Baldariら、EMBO J.,6:229-234,1987;Galeottiら、米国特許第5,432,082号、1995年7月11日)をpUC18Notベクター(Herreroら、J.Bacteriol.,172:6557-6567,1990)にクローニングすることにより構築する。S.cerevisiae PDIをコードする配列(LaMantiaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:4453-4457,1991)のpUCyex発現カセットへの挿入を、pUC18yexのSacI-PstI部位へSacI-PstI PCRフラグメントをクローニングすることにより得る。同様に、ATGコドンの近位にSacI部位およびTGA停止コドンから遠位にSalI部位を付加するPCR法により、S.cerevisiae TRX2コード配列(Muller,J.Biol.Chem.,266:9194-9202,1991)を増幅し、そしてpUC18yexのSacI-SalI部位にクローン化する。クローンのsTRXバージョンは、SacI-ATG PCRプライマーをSacI-ATG PCRプライマーと置換して、pUC18yexのシグナルペプチド配列を有するフレーム内の第二コドン(TAG)からTRX2コード配列を増幅し、そのPCRフラグメントをpUC18yexのSmaI-SalI部位内にクローニングすることにより得る。PCRクローンはすべて、pUC18yexプラスミドへのクローニング後に配列を決定する。
【0150】
PDI発現カセットを含むpUC18yexのNotI-XbaIフラグメントをプラスミドYIpAH(表1)のNotI-SpeI部位に挿入してベクターYIpex2-PDI(第1A図)を得、発現カセットの3’末端のXbaI部位を除去し、ADE2組込みカセットの二つの端のXbaI部位のみを残す。XbaI消化YIpex2-PDIで株S150-2Bを形質転換することにより、株S150-PA2のADE2染色体遺伝子座へのPDI発現カセットの組み込みが生じる(表1)。
【0151】
YIpLyTのNotI部位へのyex-PDI NotIフラグメントのクローニングにより(表1)、LYS2組込み遺伝子座に関して、反対向きにPDI発現カセットを含む二つのプラスミドが生じる。プラスミドYIpex1-PDIA(図1B)は、YIpex2-PDIと同じ向きを有するが、プラスミドのYIpex1-PDIBでのyex-PDI挿入物は、反対向きにある。YIpex1-PDIA/BによるS.cerevisiaeの形質転換をSpeI制限組込みカセットを使用して行う。株S150-PA1(表1)は、yex-PDIAバージョンを保有する組込み体であるが、株W303-PB1およびS150-PB1(表1)は、yex-PDIBの組込みから生じる。
【0152】
プラスミドYIpex1-TRX2およびYIpex1-sTRX2(図1Cおよび1D)を、pUC18yexのNotI部位へそれぞれpUC18yex-TRXおよびpUC18yex-sTRXのNotIフラグメントをサブクローン化することにより生成する。S.cerevisiae組込み体の生成に選択したクローン化フラグメントの向きは、YIpex-PDIAと同じである。組込み体S150-X21およびSX21-PA2を、SpeI消化YIpex1-TRX2で株S150-2BおよびS150-PA2(表1)を形質転換して得るが、YIpex1-sTRX2によるS150-2Bの形質転換により、組込み体S150-sX21(第1表)を生成する。次に、異なるS.cerevisiae組込み体を、酵母のHCV-E2715エンベロープ糖タンパク質を発現させるため、YEpsec1-E2715プラスミドで形質転換する。
【0153】
また、同様の方法で、PDIを(過剰)発現する酵母株(S150-PA1、表1)を使用して、可溶型のヒトFIGFを得た。同因子は、野生型酵母株(S150-2B)で発現したとき、不溶性である。
【0154】
組込み遺伝子の転写分析
抑制(YPD)または誘導性(GalYP)条件下で増殖させた異なる組込み体由来のRNAを2.2Mホルムアルデヒド-1.2%アガロースゲル上で分離し、ニトロセルロース膜に移行させた後、32P標識特異的プローブにハイブリダイズさせて、発現カセットの組込み部位および/または方向が、組み込まれたPDIまたはTRX2の転写に影響するかどうかを決定する。PDI組込み体のノーザン分析にPDI特異的プローブを使用することにより、組み込んだPDIのガラクトース誘導性プロモーターの転写が正しく調節されること、すなわち、グルコース培地における増殖により抑制されることを示す(図2A)。しかも、転写ユニットの方向および組込み部位は共に、転写レベルに影響する。組み込まれたPDIの転写物と内因性遺伝子の転写物間の割合は、A(S150-PA1)方向よりむしろB(S150-PB1、W303-PB1)方向の構築物を保有する組込み体で低いことが観察され、そしてade2に組み込む(S150-PA2)と、なおいっそう減少する。
【0155】
GalYPで増殖させたlys2::TRX2およびlys2::sTRX2組込み体のYEpsec1(Y-E2715)でクローン化したHCV-E2715cDNAの転写分析により、これらの株におけるガラクトース調節TRX2遺伝子の挿入は、たとえ両遺伝子の発現に同じ転写因子が欠かせないとしても、E2715mRNAのレベルに影響しないことを示す(図2B)。
【0156】
PDIおよびTRX2の過剰発現は、S.cerevisiaeでHCV-E2715の折り畳みを促進する
Braunホモジナイザー内のガラスビーズで細胞を4℃で20秒間崩壊させることにより、酵母培養物から細胞抽出物を調製する。崩壊後、細胞懸濁液をPBSで希釈し、アフィニティー精製する(下記を参照)。タンパク質サンプルをLaemmli(Laemmli,Nature,227:680-685,1970)による記載のように、LBS緩衝液(2%SDS,10%グリセロール、200mM DTT、62.5mM Tris-HCl、pH6.8)中でSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により分析し、ニトロセルロース膜(Nitrobind,MSI,Westborough,MA,USA)(Towbinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,76:4350-4354,1979)に移す。PBS、3%粉乳および0.1%Tritonを含む緩衝液中で膜をインキュベートする。昆虫細胞(3E5-1)で発現させたHCV-E2715タンパク質の線状エピトープに対するモノクローナル抗体(mAb)、二つの立体配座mAb(291A2および5E5-H7)およびHeLa細胞(L559)から同時精製したHCV-E1E2に対するチンパンジー抗血清(Chooら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91:1294-1298,1994;Rosaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93:1759-1763,1996)をイムノブロッティングに使用する。イムノブロットを増強化学発光により発色させる(ECL,Amersham,Arlington Heights,IL,USA)。
【0157】
HCV-E2715を、レクチンカラム(Galanthus nivalis-アガロースレクチン(GNL);使用した特定の市販GNLはGNAであった、Vector Laboratories Inc.,Burlingame,CA,USA)を使用するアフィニティークロマトグラフィーにより酵母培養物から精製する。カラムを40cm/時でPBSにより平衡化し、0.9M NaClのPBS溶液で洗浄した後、糖タンパク質を1M a-メチル-D-マンノシド、0.9M NaClのPBS溶液を用いることによって溶出する。カラム画分をPBSに対して透析し、タンパク質濃度をLowry法(Bio-Rad DC Protein Assay,Bio-Rad,Hercules,CA,USA)を使用して測定した後、モノクローナル抗E2抗体によるドットブロットで分析する。
【0158】
HCV-E2715を発現するlys2::TRX2、lys2::PDI、lys2::TRX2-ade2::PDI組込み体の細胞抽出物由来のアフィニティー精製タンパク質のウエスタンブロット分析により、E2715糖タンパク質の一部は、PDIを過剰発現する組込み体サンプルにおいてのみ、DTT無存在下で分離ゲルに入り得ることを示す。還元剤無しでゲルに入る糖タンパク質の相対量は、二重組込み体SX21-PA2(図3)からのサンプルでなおいっそう大きくなるようである。
【0159】
異なる酵母株由来の非変性E2715のイムノブロッティングにより、PDI組込み体から精製した糖タンパク質は、5E5-H7と結合し、より低い程度で291A2立体配座抗体(図4)と結合することが示される。
【0160】
改変した酵母株で発現した異なる形態のHCV-E2タンパク質はMOLT-4細胞に結合する
HCV-E2タンパク質は哺乳動物細胞で自然に発現し、そして高親和性でヒト細胞と結合する。改変した酵母発現E2タンパク質が類似の生物学的活性を有し、ヒト細胞と結合し得るかどうかを検討するため、ヒトT細胞リンパ腫株の細胞であるMOLT-4を異なる型の改変した酵母発現E2タンパク質(8.7μg/ml)と4℃でインキュベートする。ポジティブコントロールとして、CHO発現E2タンパク質を同濃度で使用する。ネガティブコントロールとして、MOLT-4細胞をE2タンパク質の非存在下でインキュベートする。次いで、細胞ペレットをE2に対して生じたmAbとインキュベートする。フィコエリスリン標識F(ab’)2フラグメントヤギ抗マウスIgGとインキュベーション後、標的細胞への結合を細胞結合蛍光としてフローサイトメトリーにより間接的に検出する(図5)。
【0161】
図5に示すように、CHO発現HCV-E2タンパク質(E2 CHO GNL)とプレインキュベートしたMOLT-4細胞は、改変した酵母発現E2タンパク質(M=26.24(E2酵母PDI GNL);M=5.32(E2酵母TRX GNL))とプレインキュベートしたMOLT-4細胞と比較したとき、最も高い平均蛍光強度(M=133.78)を有する。しかし、改変した酵母発現E2タンパク質とプレインキュベートしたMOLT-4細胞の平均蛍光強度は、それでもE2タンパク質とプレインキュベートしなかったMOLT-4細胞(M=3.97(-ve/コントロール))よりも高い。
【0162】
MOLT-4細胞への異なる形態のE2タンパク質の結合は、タンパク質の構造により影響を受ける。CHO発現E2タンパク質は、適切に形成されたジスルフィド結合を有するため、そして正しく折り畳まれ、そして生物学的に活性である。この結果、MOLT-4細胞の細胞表面に対するCHO発現E2タンパク質の結合親和性が高くなり、平均蛍光強度が高くなる。同様に、改変した酵母発現E2タンパク質もまた、生物学的に活性であると思われる。なぜなら、これらは、MOLT-4細胞と結合し、それによって平均蛍光強度が、ネガティブコントロールと比較して高くなるからである。
【0163】
改変した酵母発現E2タンパク質の平均蛍光強度(従って、MOLT-4細胞に対する結合親和性)は、CHO発現E2タンパク質と比較して低いが、非改変酵母発現E2タンパク質(すなわち、PDIまたはTRXの同時発現なしに、酵母細胞で発現させたもの)は、MOLT-4細胞と結合し得ない(Rosaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93:1759-1763,1996;特に、1760ページ、結果の段落の16〜18行目および図1を参照のこと)。従って、この発明の改変した宿主発現系は、自然宿主によって生成された天然タンパク質と類似した生物学的活性および/または構造の異種タンパク質を生成し得る。
【図面の簡単な説明】
【0164】
ここで、本発明を以下の図に関する例によって示す。
【図1】図1Aは、S.cerevisiaeのADE2染色体遺伝子座に発現カセットYIpex-PDIを挿入するための組込みカセットの線形制限地図であり、誘導性GAL/CYCプロモーターからのPDI転写の方向を示す(白矢印)。選択した制限部位を示す。図1Bは、S.cerevisiaeのLYS2染色体遺伝子座に図1Aに示した同じ発現カセットを挿入するための組込みカセットの制限地図である。図1Cは、発現カセットに挿入されたS.cerevisiae TRX2コード配列を含むLYS2組込みカセットの制限地図である。図1Dは、YEpsec1のシグナルペプチド配列を有するフレームで融合した発現カセットに挿入されたS.cerevisiae TRX2コード配列を含むLYS2組込みカセットの制限地図である。
【図2】図2Aは、PDI特異的プローブを使用した、PDI遺伝子の染色体挿入を保有するS.cerevisiae株から抽出したRNAのノーザンブロット分析を示す。矢じりは、内因性遺伝子(PDI)および組込みPDI構築物(::PDI)の転写物を示す。図2Bは、TRX2特異的プローブ(上方パネル)およびHCV-E2715特異的プローブ(下方パネル)にハイブリダイズしたTRX2遺伝子およびY-E2715プラスミドの染色体挿入を保有するS.cerevisiae株から抽出したRNAを示す。矢じりは、内因性遺伝子(TRX2)、組込みTRX2構築物(::TRX2)およびYEpseclにクローン化したHCV-E2715 cDNA(Y-E2715)の転写物を示す。
【図3】図3は、抗E2モノクローナル抗体(mAb)を使用した、HCV-E2715を発現する改変した酵母株の細胞抽出物由来の可溶性タンパク質のウエスタンブロット分析を示す。タンパク質を還元剤の存在(+DTT)下または非存在(-DTT)下でSDS-PAGEにより分離した。
【図4】図4は、改変した酵母株由来のアフィニティー精製E2715(10μg/ドット)のドット−ブロット分析を示す。昆虫細胞で発現したHCV-E2715タンパク質に対するmAb(3E5-1)、HeLa細胞から同時精製したHCV-E1E2に対するチンパンジー抗血清(L559)(Chooら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91:1294-1298,1994)および三つの抗E2715特異的立体配座mAbs(291A2,5E5-H7,6A1)(Rosaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93:1759-1763,1996)をイムノブロッティングに使用する。
【図5】図5は、改変した酵母株およびCHO細胞により発現した異なる型のHCV-E2タンパク質とプレインキュベートしたMOLT-4細胞の細胞結合蛍光分析を示す。プレインキュベートしたMOLT-4細胞を抗E2 mAbとともにインキュベートし、蛍光標識F(ab’)2フラグメントIgGとのインキュベート後、標的細胞への結合を細胞結合性蛍光(相対細胞数(y軸)対平均蛍光強度(x軸)としてフローサイトメトリーにより間接的に検出する。プレインキュベートしたMOLT-4細胞(HCV-E2タンパク質なし)は、ネガティブコントロールである。
【出願人】 【識別番号】592243793
【氏名又は名称】カイロン ソチエタ ア レスポンサビリタ リミタータ
【出願日】 平成20年1月30日(2008.1.30)
【代理人】 【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策

【識別番号】100062409
【弁理士】
【氏名又は名称】安村 高明

【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹


【公開番号】 特開2008−173126(P2008−173126A)
【公開日】 平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願番号】 特願2008−19936(P2008−19936)