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【発明の名称】 エステルオリゴマーの分解方法及び炭素数4の化合物の製造方法
【発明者】 【氏名】酒井 貴志

【氏名】村上 亜衣

【氏名】宇都宮 賢

【氏名】岩阪 洋司

【氏名】高橋 和成

【要約】 【課題】コハク酸及び/又は4−ヒドロキシ酪酸、並びに1,4−ブタンジオールを構成成分として含有するエステルオリゴマー(高沸点化合物)、特にγ−ブチロラクトンの製造方法で副生する高沸点化合物(エステルオリゴマー)を分解する方法を提供すること、更には工業的に有利なC4製品群、特にγ−ブチロラクトンの製造方法を提供することである。

【解決手段】コハク酸及び/又は4−ヒドロキシ酪酸、並びに1,4−ブタンジオールを構成成分として含有するエステルオリゴマーの水溶液を、エステル加水分解能を有する固定化酵素と接触させ、各構成成分に分解するエステルオリゴマーの分解方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともコハク酸及び/又は1,4−ブタンジオールを構成成分として含有するエステルオリゴマーの水溶液を、エステル分解能を有する固定化酵素と接触させ、該エステルオリゴマーを構成成分に分解することを特徴とする分解方法。
【請求項2】
上記エステルオリゴマーの水溶液とエステル分解能を有する固定化酵素とを接触させる前に、該水溶液に極性溶媒を添加することを特徴とする請求項1に記載の分解方法。
【請求項3】
上記エステルオリゴマーの水溶液が、有機リン化合物を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の分解方法。
【請求項4】
上記エステル分解能を有する固定化酵素の担体がシリカであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の分解方法。
【請求項5】
上記エステルオリゴマーの水溶液と、エステル分解能を有する固定化酵素との接触をpH1〜pH4の範囲で行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の分解方法。
【請求項6】
上記エステルオリゴマーの水溶液が、下記(1)又は(2)の製造反応時に副生する高沸点化合物を含む水溶液であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の分解方法。
(1)コハク酸、その酸無水物又は無水マレイン酸の水素化反応による対応する炭素数4の化合物の製造
(2)1,4−ブタンジオールの脱水素反応による対応する炭素数4の化合物の製造
【請求項7】
上記炭素数4の化合物がγ−ブチロラクトン、1,4−ブタンジオール、テトラヒドロフラン、コハク酸、無水コハク酸のいずれかであることを特徴とする請求項6に記載の分解方法。
【請求項8】
コハク酸、その酸無水物若しくは無水マレイン酸の水素化反応、又は1,4−ブタンジオールの脱水素反応により対応する炭素数4の化合物を製造する方法において、該水素化反応又は脱水素反応時に副生した高沸点化合物を含有する水溶液を、エステル分解能を有する固体化酵素と接触させて分解し、分解生成物の少なくともコハク酸及び/又は1,4−ブタンジオールを該水素化反応又は脱水素反応に導入することを特徴とする炭素数4の化合物の製造方法。
【請求項9】
上記炭素数4の化合物を製造する方法が、コハク酸、その酸無水物若しくは無水マレイン酸の1種又は2種以上から均一系ルテニウム錯体触媒を用いた水素化反応により、γ−ブチロラクトンを製造する方法であることを特徴とする請求項8に記載の炭素数4の化合物の製造方法。
【請求項10】
コハク酸、その酸無水物若しくは無水マレイン酸の水素化反応時に副生した高沸点化合物を含有する水溶液が、該水素化反応により得られる反応液から対応する炭素数4の化合物及び反応溶媒を除去して得た副生高沸点化合物を含有する触媒液に、水及び非極性溶媒を添加して抽出処理し、得られた複数相の内の水相であることを特徴とする請求項8又は9に記載の炭素数4の化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、無水マレイン酸、無水コハク酸等からγ−ブチロラクトン等の炭素数4の化合物を製造する際に副生するエステルオリゴマーの分解方法及び炭素数4の化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素数4からなる化学製品群の代表例である、γ−ブチロラクトン、1,4−ブタンジオール、テトラヒドロフラン、コハク酸、N−メチルピロリドンなどは各種溶剤、ポリマー原料等に使用される重要な中間体群であり、近年益々需要が増加している。特にγ−ブチロラクトンはそれ自体優れた溶剤として使用されるだけでなく、ピロリドン類など様々な物質の中間体として重要であり、そのため、異なった原料からの各種製造プロセスの開発が行われてきた。例えば、ルテニウム錯体触媒を用いた無水コハク酸の水素化反応(非特許文献1)、及び1,4−ブタンジオールの脱水素反応(特許文献1)などが報告されている。
【0003】
これらγ−ブチロラクトンの製造方法は収率良く進行することが多いが、エステルオリゴマーでもある高沸点化合物を副生物として生成することがあり、原料となる無水コハク酸、コハク酸、1,4−ブタンジオール、無水マレイン酸等の原単位悪化の原因となっていた。これらの副生高沸点化合物を分解し原料を再生することができれば、より効率の高いγ−ブチロラクトンの製造方法を確立することができることから、そのための方法が求められてきた。
【0004】
例えば、高沸点化合物を分解する方法として、固体酸触媒を用いて、γ−ブチロラクトンの製造で副生するエステルオリゴマーを分解し、原料であるコハク酸や1,4−ブタンジオールを再生する方法が提案されている(特許文献2)。しかしながら、固体酸触媒は有機リン化合物などにより被毒され、その分解能が低下してしまうので、副生高沸点化合物を効率よく分解できる新たな方法が求められてきた。
【特許文献1】特開2001−240595号公報
【特許文献2】特開2006−137749号公報
【非特許文献1】Journal of catalysis 194, 188-197, 2000
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無水マレイン酸、無水コハク酸等から炭素数4の化合物を製造する際に副生するコハク酸並びに1,4−ブタンジオールを構成成分として含有するエステルオリゴマー(以下、高沸点化合物とも言う)、特にγ−ブチロラクトンの製造方法で副生する高沸点化合物を分解する方法を提供すること、更には炭素数4の化学製品群、特にγ−ブチロラクトンの工業的有利な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、炭素数4の化学製品群、特にγ−ブチロラクトンの製造で副生する高沸点化合物であるコハク酸、並びに1,4−ブタンジオールを構成成分として含有するエステルオリゴマーを含む水溶液を、エステル加水分解能を有する固定化酵素で処理することにより、該高沸点化合物を加水分解し、その構成成分であるコハク酸、並びに1,4−ブタンジオールを含む水溶液として取得し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明の要旨は、少なくともコハク酸及び/又は1,4−ブタンジオールを構成成分として含有するエステルオリゴマーの水溶液を、エステル分解能を有する固定化酵素と接触させ、該エステルオリゴマーを構成成分に分解することを特徴とする分解方法に存する。
本発明の他の要旨は、コハク酸、その酸無水物若しくは無水マレイン酸の水素化反応、又は1,4−ブタンジオールの脱水素反応により炭素数4の化合物を製造する方法において、該水素化反応又は脱水素反応時に副生した高沸点化合物を含有する水溶液を、エステル分解能を有する固体化酵素と接触させて分解し、分解生成物の少なくともコハク酸及び/又は1,4−ブタンジオールを該水素化反応又は脱水素反応に導入することを特徴とする炭素数4の化合物の製造方法に存する。
【発明の効果】
【0008】
本発明方法により、炭素数4の化合物の製造方法、特にγ−ブチロラクトンの製造方法で副生するコハク酸、並びに1,4−ブタンジオールを構成成分として含有するエステルオリゴマー(高沸点化合物)を効率よく分解し、これらの構成成分を取得する方法を提供することができる。更に、該エステルオリゴマーの分解により取得された構成成分を反応原料として使用することにより工業的に有利な炭素数4の化学製品群、特にγ−ブチロラクトンの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明するが、これらの態様は代表例であり、これらに制限されるものではない。
本発明は、下記の(i)分解方法、並びに(ii)該分解方法を用いる炭素数4の化合物の製造方法に係わるものである。
【0010】
(i)少なくともコハク酸及び/又は1,4−ブタンジオールを構成成分として含有するエステルオリゴマーの水溶液を、エステル分解能を有する固定化酵素と接触させ、該エステルオリゴマーを構成成分に分解することよりなる分解方法。
(ii)コハク酸、コハク酸無水物若しくは無水マレイン酸の水素化反応、又は1,4−ブタンジオールの脱水素反応により対応する炭素数4の化合物を製造する方法において、該水素化反応又は脱水素反応時に副生した高沸点化合物を含有する水溶液を、エステル分解能を有する固体化酵素と接触させて分解し、分解生成物の少なくともコハク酸及び/又は1,4−ブタンジオールを該水素化反応又は脱水素反応に導入することよりなる炭素数4の化合物の製造方法。
【0011】
本発明における「少なくともコハク酸および/又は1,4−ブタンジオールを構成成分として含有するエステルオリゴマー」とは、1,4−ブタンジオールとコハク酸が脱水縮合して生成するエステル結合で架橋されたエステルオリゴマー、構成成分としてコハク酸を含有するエステルオリゴマー、構成成分として1,4−ブタンジオールを含有するエステルオリゴマー、及びそれらのその混合物である。上記のエステルオリゴマーは、各々その他の構成成分を有していてもよい。
【0012】
本発明方法で分解されるエステルオリゴマーとしては、少なくとも1,4−ブタンジオール及びコハク酸由来の構成単位(モノマー)からなり、通常、2以上、20以下の構成単位からなるエステルオリゴマーが好ましい。上記のような通常の水素化反応や脱水素反応等では構成単位が20を超える高沸点化合物は生成しないものと考えられているので、エステルオリゴマーを構成する構成単位は、通常2以上であり、好ましくは2〜4である。この構成単位数が多すぎると分解するための反応条件が過酷となり高温反応による該固定化酵素の劣化、反応器の巨大化、反応時間の長大化により経済性の悪化したプロセスとなる。
【0013】
これらエステルオリゴマーとしては、例えば炭素数4の化合物の製造時に副生する高沸点化合物が挙げられ、具体的には、以下のような化合物群である。但し、これらに限定されるものではない。
【0014】
【化1】


【0015】
これら高沸点化合物を副生する炭素数4の化合物を製造する方法としては、具体的には、固体触媒を使用する方法ではコハク酸または無水コハク酸の水素化反応によるγ−ブチロラクトン、1,4−ブタンジオール、テトラヒドロフランの製造方法;無水マレイン酸の水素化反応によるγ−ブチロラクトン、1,4−ブタンジオール、テトラヒドロフラン、コハク酸、無水コハク酸の製造方法;1,4−ブタンジオールの脱水素反応によるγ−ブチロラクトンの製造方法が挙げられ、均一系錯体触媒を用いる方法ではコハク酸または無水コハク酸の水素化反応によるγ−ブチロラクトン、1,4−ブタンジオール、テトラヒドロフランの製造方法、無水マレイン酸の水素化反応によるγ−ブチロラクトンの製造方法、あるいは均一系錯体触媒を用いた1,4−ブタンジオールの脱水素反応によるγ−ブチロラクトンの製造方法などが挙げられる。
上記炭素数4の化合物の製造法は気相、液相のいずれでもよく、また触媒は、固体触媒、錯体触媒のいずれでも差し支えない。
【0016】
炭素数4の化合物としては、例えばγ−ブチロラクトン、1,4−ブタンジオール、テトラヒドロフラン、フラン、ジヒドロフラン、コハク酸、無水コハク酸等が挙げられ、好ましくはγ−ブチロラクトン、1,4−ブタンジオール、テトラヒドロフラン、コハク酸、無水コハク酸であり、とくに好ましくはγ−ブチロラクトンである。
【0017】
本発明の分解方法は、上記全ての炭素数4の化合物の製造法で副生する高沸点化合物に適用可能であるが、好ましくは固体触媒を使用したコハク酸または無水コハク酸の水素化反応によるγ−ブチロラクトン、1,4−ブタンジオールの製造方法、無水マレイン酸の水素化反応によるγ−ブチロラクトン、1,4−ブタンジオールの製造方法、1,4−ブタンジオールの脱水素反応によるγ−ブチロラクトンの製造方法、均一系錯体触媒を用いたコハク酸または無水コハク酸の水素化反応によるγ−ブチロラクトンの製造方法、無水マレイン酸の水素化反応によるγ−ブチロラクトン、1,4−ブタンジオールの製造方法、1,4−ブタンジオールの脱水素反応によるγ−ブチロラクトンの製造法における副生高沸点化合物であり、特に好ましくは固体触媒を使用したコハク酸または無水コハク酸の水素化反応によるγ−ブチロラクトン製造方法、均一系錯体触媒を用いたコハク酸または無水コハク酸の水素化反応によるγ−ブチロラクトン製造方法における副生高沸点化合物である。
【0018】
上記炭素数4の化合物を製造する反応はその生成物に関わらず4つの形式に分類することができる。すなわち、1)固体触媒を用いた水素化反応、2)固体触媒を用いた脱水素反応、3)錯体触媒を用いた水素化反応、4)錯体触媒を用いた脱水素反応である。以下、それぞれについて説明する。
【0019】
1)固体触媒を使用する水素化反応の場合には、銅−クロム、銅−亜鉛、銅−アルミ、銅−金属酸化物系の固体触媒が好ましく、液相あるいは気相での反応条件が採用され、特に無水マレイン酸、マレイン酸、無水コハク酸、コハク酸、γ−ブチロラクトンの水素化反応に好適であり、得られる製品は無水コハク酸、コハク酸、γ−ブチロラクトン、1,4−ブタンジオールなどである。本反応は通常1MPa〜10MPaの水素圧下で実施され、反応温度は150℃〜300℃である。反応後、反応液から製品は蒸留、晶析、溶媒による抽出などにより精製される。
【0020】
2)固体触媒を用いた脱水素反応の場合も同じく、銅−クロム、銅−亜鉛、銅−アルミ、銅−金属酸化物系の固体触媒が好ましく、通常気相での反応条件が採用され、1,4−ブタンジオールの脱水素化によるγ−ブチロラクトンの製造方法に好適である。本反応は通常0.01MPa〜1MPaの圧力下で実施され、反応で副生した水素雰囲気下で行なわれる。反応温度は150℃〜300℃であり、反応後、反応液から製品が蒸留により精製される。
【0021】
3)錯体触媒を用いた水素化反応では、ルテニウム錯体触媒が好ましく、通常配位子としてリン化合物を含有する。液相の反応条件が採用され、特に無水コハク酸、コハク酸の水素化によるγ−ブチロラクトンの製造方法に好適である。反応温度は100℃〜250℃、1MPa〜5MPaの水素圧下で実施される。製品は本反応後、反応液から蒸留、晶析、溶媒による抽出などにより精製される。
【0022】
4)錯体触媒を用いた脱水素化反応も同じくルテニウム錯体触媒が好ましく、通常配位子としてリン化合物を含有する。液相の反応条件が採用され、特に1,4−ブタンジオールの脱水素化によるγ−ブチロラクトンの製造方法に好適である。本反応は通常0.01MPa〜1MPaの圧力下で実施され、反応で副生した水素雰囲気下で行なわれる。反応温度は150℃〜300℃であり、反応後、反応液から製品が蒸留により精製される。
【0023】
γ−ブチロラクトンなど炭素数4の化合物の製造プロセスでの反応後の生成液中には、水素化反応や脱水素反応等により副生する高沸点化合物が含まれ、この副生した高沸点化合物を含有する水溶液は、本発明における「炭素数4の化合物を製造する際に副生する高沸点化合物の水溶液」でもある。具体的には、炭素数4の化合物を製造する際に副生する高沸点化合物の水溶液としては、該反応後の反応液に水を添加したもの、もしくは該反応液からγ−ブチロラクトンなどの炭素数4の化合物、及びγ−ブチロラクトンなどの炭素数4の化合物よりも軽沸点化合物、液相反応の場合は反応溶媒を除去したものに水を添加したものを用いることができ、好ましくは後者である。
【0024】
本発明におけるエステルオリゴマーは、その構成単位としてコハク酸と1,4−ブタンジオールの2種を含有しているもの、その他、構成単位としてコハク酸を含有するエステルオリゴマー、構成単位として1,4−ブタンジオールを含有するエステルオリゴマーを含む混合物であり、上記のエステルオリゴマーは、各々更にその他の構成単位を有していてもよい。
【0025】
本発明の分解方法では、これらエステルオリゴマーを1種のみ含んだ水溶液でも、多種のエステルオリゴマーを含んだ水溶液に対しても適用可能である。本発明方法で使用する該エステルオリゴマー(高沸点化合物)の水溶液では、該エステルオリゴマー(高沸点化合物)を1重量%〜80重量%含む水溶液が使用可能であり、好ましくは3重量%〜30重量%、特に好ましくは5重量%〜20重量%の水溶液である。高沸点化合物の含有量が少なすぎると加水分解の効率が低下し、工業的に不利となり、多すぎると加水分解速度が低下すると共に、高沸点化合物が完全に水に溶解せず、固液混合液となり閉塞などプロセス上の不具合が生じてしまう。
【0026】
また、該エステルオリゴマー含有水溶液中の水分量は、10重量%以上含むことが好ましく、より好ましくは水溶液中の水分量が30重量%〜95重量%であり、特に好ましくは50重量%〜90重量%である。水の含有量が少なすぎるとエステルオリゴマー(高沸点化合物)を、エステル加水分解能を有する固定化酵素に接触させた際の加水分解速度が低下し、また高沸点化合物の析出により閉塞などの不具合がプロセスにおいて生じ、多すぎると反応器単位体積あたりの加水分解生成物の生産量が低下してしまう。
【0027】
本発明では、エステルオリゴマー(高沸点化合物)の水溶液を固定化酵素と接触させるのに先立ち、該水溶液に極性溶媒を添加することが反応速度維持、固定化酵素の劣化抑制の観点から好ましい。添加する極性溶媒は酸素原子を含むものであれば、差し支えないが、エーテル系の溶媒が好ましい。具体的には、ジエチルエーテル、ジオキサン、トリグライム、テトラヒドロフラン、ジヒドロフラン、フラン、ジグライム、テトラグライムなどである。
また、場合により、高沸点化合物を含有する水溶液から高沸点化合物を取り出し、これに水と極性溶媒を一緒に混合しても差し支えない。
【0028】
ここで添加する極性溶媒の量は、固定化酵素に接触させるエステルオリゴマー(高沸点化合物)の水溶液に対して重量比で0.1以上が好ましく、より好ましくは1以上、特に好ましくは3以上である。また、添加する極性溶媒の量はエステルオリゴマー(高沸点化合物)の水溶液に対して、重量比で100以下が好ましく、より好ましくは50以下であり、特に好ましくは10以下である。ここで添加する極性溶媒の量が少なすぎるとエステルオリゴマー(高沸点化合物)の水溶液が固液2相となってしまい、加水分解速度が低下する。また多すぎた場合は、該固定化酵素で加水分解する反応器が巨大となり、プロセスの経済性が悪化する。
【0029】
本発明の固定化酵素による加水分解は該副生高沸点化合物以外の、その他の成分を含んでも差し支えなく進行し、特にコハク酸、無水コハク酸、1,4−ブタンジオール、γ−ブチロラクトンを含む該高沸点化合物の水溶液を使用することも可能である。本発明では、γ−ブチロラクトン製造工程で少量副生するアルコール類や酸類を含むエステル類が混入している場合も本発明で使用可能である。
【0030】
例えば、γ−ブチロラクトン製造反応で少量副生するアルコール類及び酸類は炭素数2〜10のアルコール類及び酸類であり、好ましくは1−オクタノール、2−オクタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、1−ブタノール、2−ブタノール、エタノール、メタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などが挙げられ、これらの中、特に好ましくはジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテルである。これら副生アルコール類及び酸類をエステルオリゴマーの水溶液中に10重量ppm〜5重量%含んでいても差し支えない。これらは反応溶媒、触媒成分、γ−ブチロラクトン、1,4−ブタンジオール、コハク酸、無水コハク酸、無水マレイン酸などから少量副生するものである。
【0031】
また上記炭素数4の化合物を製造する方法においてリン化合物を配位子として用いる錯体触媒を使用した場合には、エステルオリゴマーの水溶液中に、リン化合物が含有されていてもよい。リン化合物は固体酸触媒によるエステルオリゴマーの分解方法における、固体酸触媒の劣化原因物質となりえることが知られているが、本発明方法の分解反応で使用する固定化酵素では、リン化合物による劣化は確認されていない。
【0032】
本発明方法では、エステル加水分解能を有する固定化酵素を使用して少なくともコハク酸及び/又は1,4−ブタンジオールを構成成分として含有するエステルオリゴマー(高沸点化合物)を各構成成分に加水分解する。ここで使用するエステル加水分解能を有する固定化酵素は、エステラーゼ、リパーゼなどの液状酵素を、担体に担持したものである。液状酵素としては、エステラーゼ、リパーゼ、アミダーゼ、ペプチターゼなどが挙げられ、好ましくはエステラーゼ、リパーゼである。担体としては、シリカ、アルミナ、金属酸化物、ベントナイト、活性炭、多孔質セラミックス、多孔質ガラス、ポリマー、セルロース、アルギン酸塩などが挙げられ、好ましくはシリカである。担持方法としては、担体表面への直接的な吸着法、表面処理剤を介した吸着法、共有結合法、多孔体への包括法など常法を適宜採用することができる。この液状酵素、及び担体は特に限定されるものではなく、市販品を使用することができる。
【0033】
本発明方法により、エステル加水分解能を有する固定化酵素と、エステルオリゴマー(高沸点化合物)を接触させ各構成成分に分解するが、その際、反応温度は好ましくは0℃以上、より好ましくは20℃以上、特に好ましくは30℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは150℃以下、特に好ましくは100℃以下である。反応温度が低すぎる場合には加水分解速度が低下し反応効率が悪化し、また反応温度が高すぎる場合には固定化酵素の劣化が速くなってしまう。
更に、接触時のpH値は、通常7以下であり、好ましくはpH1〜4の範囲である。pH値が高くなればなるほど、固定化酵素の劣化が速く進行する傾向がある。
【0034】
該固定化酵素との接触時間、及び連続法の場合での反応器滞留時間は、好ましくは10分以上、より好ましくは1時間以上、特に好ましくは2時間以上であり、好ましくは100時間以下、より好ましくは40時間以下であり、特に好ましくは20時間以下である。反応器滞留時間が短すぎると加水分解の進行が不完全となり、長すぎると反応器が不要に巨大化してしまい効率の悪いプロセスとなる。
【0035】
更に反応器形式は回分、連続どちらでも使用可能であり、また完全混合、管型反応器の両方が使用可能である。好ましくは連続での管型反応器である。また固体であるエステル分解能を有する固定化酵素を充填した反応器中での固体物による閉塞を回避するという観点から、反応器へ該高沸点化合物の水溶液を導入する以前に、該水溶液を均一液相とすることが好ましく、該水溶液の原料槽温度を好ましくは40℃以上、200℃以下、より好ましくは60℃以上、150℃以下に加熱及び/又は保温する。
【0036】
少なくともコハク酸及び/又は1,4−ブタンジオールを構成成分として含有するエステルオリゴマー含有水溶液は、エステル加水分解能を有する固定化酵素と接触させることによりコハク酸と1,4−ブタンジオールに加水分解される。加水分解反応操作後に、反応液から水及び1,4−ブタンジオールなどを分離すれば、高濃度のコハク酸を得ることができる。得られたコハク酸水溶液は、無水コハク酸等のジカルボン酸若しくは酸無水物の水素化反応により炭素数4の化合物を製造する方法の原料として、該水素化反応に供給することにより有効利用することができる。そのため、エステルオリゴマーがジカルボン酸若しくは酸無水物の水素化反応の際に副生する高沸点化合物であれば、得られたジカルボン酸を、ジカルボン酸若しくは酸無水物の水素化反応に導入することにより収率をアップすることができる。
【0037】
さらに、エステルオリゴマー(副生する高沸点化合物)の加水分解により生成した1,4−ブタンジオールは、別途固体酸触媒によりテトラヒドロフランへと脱水環化することも可能である。また、別途固体酸触媒によりテトラヒドロフランへと脱水環化させる反応器は2つ以上あってもよい。なお、高沸点化合物の該固定化酵素による加水分解で生成した1,4−ブタンジオールをテトラヒドロフランへ脱水環化させる固体酸触媒としてはイオン交換樹脂が好ましく、特に強酸性陽イオン交換樹脂が好ましい。強酸性陽イオン交換樹脂としては、例えばスルホン化されたスチレンージビニルベンゼン共重合体が挙げられるが、このスルホン化されたスチレンージビニルベンゼン共重合体は特に限定されるものではなく、市販品を使用することができる。また、イオン交換樹脂の構造の種類は特に限定されるものではないが、ゲル型、MR型(macroreticular)型、ポーラス型、ハイポーラス型のいずれも用いることができる。
【0038】
本発明のエステルオリゴマー加水分解反応を適用する好適な炭素数4の化合物の製造方法は、特に均一系ルテニウム錯体触媒を用いたコハク酸、または無水コハク酸の水素化反応によるγ−ブチロラクトンの製造方法である。本製造方法における触媒であるルテニウムの供給形態は特に制限されるものでなく、金属又はルテニウム化合物であってよい。本製造方法で用いられるルテニウム化合物としては、例えばルテニウムの酸化物、水酸化物、無機酸塩、有機酸塩あるいは錯化合物等が挙げられる。具体的には二酸化ルテニウム、四酸化ルテニウム、二水酸化ルテニウム、塩化ルテニウム、臭化ルテニウム、沃化ルテニウム、硝酸ルテニウム、酢酸ルテニウム、トリス(アセチルアセトナト)ルテニウム、ヘキサクロロルテニウム酸ナトリウム等が挙げられ、好ましくは塩化ルテニウム、トリス(アセチルアセトナト)ルテニウム、酢酸ルテニウム等である。
【0039】
また、錯体触媒の配位子として用いられる有機リン化合物としては、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィンのような少なくとも1つのアリール基を含有する有機リン化合物及びその分解物を使用することもできるが、好ましくはトリアルキルリン、さらに好ましくは1級アルキル基により構成されるトリアルキルリン、及びそれらの分解物である。
【0040】
好適な有機リン化合物としては、例えば、トリデシルホスフィン、トリノニルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリヘプチルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、トリペンチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリメチルホスフィン、ジメチルオクチルホスフィン、ジオクチルメチルホスフィン、ジメチルヘプチルホスフィン、ジヘプチルメチルホスフィン、ジメチルヘキシルホスフィン、ジヘキシルメチルホスフィン、ジメチルブチルホスフィン、ジブチルメチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリベンジルホスフィン、ジメチルシクロヘキシルホスフィン、ジシクロヘキシルメチルホスフィン、1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジメチルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジメチルホスフィノ)ブタン、1,2−ビス(ジオクチルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジオクチルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジオクチルホスフィノ)ブタン、1,2−ビス(ジヘキシルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジヘキシルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジヘキシルホスフィノ)ブタン、1,2−ビス(ジブチルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジブチルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジブチルホスフィノ)ブタン、1,3−ジメチルホスホリナン、1,4−ジメチルホスホリナン、8−メチル−8−ホスファビシクロ[3.2.1]オクタン、4−メチル−4−ホスファテトラシクロオクタン、1−メチルホスホラン等の単座、複座、環状、及びアルキル基に置換基を持つアルキルホスフィン類が挙げられる。
【0041】
本反応に使用するトリアルキルリンのアルキル基は、ノルマル体、イソ体、及びその混合物でも差し支えない。これらホスフィン配位子の使用量は、ルテニウム金属1モルに対して、0.1〜1000モル、好ましくは1〜100モル、特に好ましくは1〜10モルの範囲である。
また、トリアルキルリン、あるいは芳香族置換基等を有する有機ホスフィンだけでなく、他のリン原子を含有する配位性有機化合物も配位子として使用可能であり、例えば、ホスファイト、ホスフィネート、ホスフィンオキシド、アミノホスフィン、ホスフィン酸なども使用可能である。
【0042】
また本発明方法で使用するルテニウム錯体触媒はpKaが2より小さい酸の共役塩基を用いて、カチオン性錯体の形で反応に用いることも可能であり、活性の向上、触媒の安定化など幾つかの点において共役塩基の使用は効果的である。
pKaが2よりも小さい酸の共役塩基としては触媒調製中または反応系中においてかかる共役塩基を形成するものであればよく、その供給形態としてはpKaが2より小さいブレンステッド酸あるいはその各種の塩などが用いられる。
【0043】
具体的には硝酸、過塩素酸、ホウフッ化水素酸、ヘキサフルオロリン酸、フルオロスルホン酸等の無機酸類、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ドデシルスルホン酸、オクタデシルスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素酸、スルホン化スチレン−ジビニルベンゼン共重合体等の有機酸等のブレンステッド酸もしくはこれらの酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、銀塩等が挙げられる。
また、上記の酸の共役塩基が反応系で生成すると考えられる酸誘導体の形で添加しても差し支えない。例えば酸ハロゲン化物、酸無水物、エステル、酸アミド等の形で反応系に添加しても同様の効果が期待される。
これら酸あるいはその塩の使用量は、ルテニウム金属に対して0〜1000モル、好ましくは0〜100モルの範囲である。特に好ましくは0〜10モルの範囲である。
【0044】
上記コハク酸、または無水コハク酸の水素化反応によるγ−ブチロラクトンの製造方法は特に溶媒の存在なしに、すなわち反応原料および生成物そのもの、またはエステルオリゴマーの一種である副生する高沸点化合物を溶媒として実施することが好ましいが、反応原料以外の溶媒を使用することもできる。溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、アニソール、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類、メタノール、エタノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、フェノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のアルコール類、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、トルイル酸等のカルボン酸類、酢酸メチル、酢酸ブチル、安息香酸ベンジル等のエステル類、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭素類、n−ヘキサン、n−オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ジクロロメタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類が挙げられる。
【0045】
更に、ニトロメタン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のカルボン酸アミド、ヘキサメチルリン酸トリアミドその他のアミド類、N,N−ジメチルイミダゾリジノン等の尿素類、ジメチルスルホン等のスルホン類、ジメチルスルフォキシド等のスルフォキシド類、γ−ブチロラクトン、カプロラクトン等のラクトン類、テトラグライム、トリグライム等のポリエーテル類、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート等の炭酸エステル類等の溶媒も使用し得る。これらの中、好ましくはエーテル類、ポリエーテル類、および反応原料、生成物のγ−ブチロラクトンである。
【0046】
水素化反応の反応温度は、通常20〜350℃、好ましくは100〜250℃、さらに好ましくは150〜220℃である。反応は回分方式および連続方式のいずれでも実施することができる。
【0047】
本発明方法では、上記のγ−ブチロラクトン製造の水素化反応後に得られる、γ−ブチロラクトンと副生する高沸点化合物を含む反応液からγ−ブチロラクトン及び反応溶媒を除去して得た触媒液を、ヘプタンなどの非極性溶媒及び水を用いて抽出処理し、ルテニウム触媒を多く含む非極性溶媒相と、該高沸点化合物を多く含む水相の2相に分離し、該水相を、エステル加水分解能を有する固定化酵素を含む反応器に流通し、高沸点化合物を分解することも可能である。またγ−ブチロラクトン及び反応溶媒を除去して得た触媒液を、ヘプタンなど非極性溶媒及び水を用いて抽出処理し、非極性溶媒相、水相、及び非極性溶媒と水の両者に対して不溶なオイル相の3相に分離し、該水相をエステル加水分解能を有する固定化酵素を充填した反応器に流通し、分解することも可能である。
【0048】
該触媒液を非極性溶媒及び水を用いた抽出処理により2相分離するか、3相分離するかは触媒液の組成によるが、どちらでも差し支えなく、いずれの場合の水相も副生する高沸点化合物を多く含み、エステル加水分解能を有する固定化酵素を充填した反応器により加水分解することが可能である。これら2相分離及び3相分離のいずれの相分離で得られる水相は、本発明における「副生する高沸点化合物の水溶液」に該当する。
【0049】
ここで用いられる非極性溶媒としては、脂肪族炭化水素化合物、脂環式炭化水素化合物や芳香族炭化水素化合物などが挙げられる。また、これら非極性溶媒としては置換基を有していても構わない。具体的な例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジエチルベンゼン、イソプロピルベンゼンなどが挙げられるが、特にペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの炭素数が5〜8の脂肪族炭化水素化合物が好ましい。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明の要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例において、コハク酸、1,4−ブタンジオールの分析は内部標準法によるガスクロマトグラフィー(島津社製GC−14B)、コハク酸の分析は液クロマトグラフィー(島津社製カラムCA−10S、検出器SPD−10A)、水分分析はカールフィッシャー法(三菱化学社製Mitsubishi Moisture:CA−20)により行った。
【0051】
また参考例1〜4の高沸点副生物はGPC(東ソー製GPCカラムTSKgel G−1000HXL&2000HXL 7.8φ×300mm)により分取し、分取したサンプルをLC−MS(装置:Micromass Q−Tof、ESI Positive、Negativeイオン化法)、及びNMR(Varian製Unity Plus400)により分析した。その結果、以下のエステルオリゴマーの混合物であることが明らかになった。
【0052】
【化2】


【0053】
参考例1
ルテニウムトリオクチルホスフィン−パラトルエンスルホン酸系触媒を用いた無水コハク酸の水素化反応を次の通り行った。反応は図1に示す気液分離器(1)、蒸留塔(2)付きの循環装置を使用して行った。触媒容器(3)に0.056重量%のトリス(アセチルアセトン)ルテニウム、0.51重量%のトリオクチルホスフィン、0.22重量%のパラトルエンスルホン酸をトリグライム(トリエチレングリコール ジメチルエーテル)に溶解し、窒素雰囲気下200℃で2時間加熱処理し、新触媒容器(5)に入れ新フィード触媒液とした。この触媒液を3500mL/hの流量でオートクレーブ(8)に供給し、気液分離後、蒸留塔の缶出蒸気として回収リサイクルした。
【0054】
一方、水素圧縮機(6)より7.9Nm3/hの水素ガスをオートクレーブに送り20気圧に調節した。オートクレーブを200℃へ昇温し、無水コハク酸80重量%、γ−ブチロラクトン20重量%から成る原料液を375g/hの流量で連続的に供給した。反応液は60℃に冷却後、常圧で気液分離した後、蒸留塔で生成物の水、及びγ−ブチロラクトンと触媒液を分離し、触媒液を触媒容器へと(3)に戻すが、反応開始7日後よりそのうちの一部の流れとして29g/hの流量で触媒液を抜き出し、抜き出し触媒容器(4)に保存した。
抜き出した分に相当する29g/hの流量で新触媒液(5)から新触媒をオートクレーブに補給した。反応は30日間連続して行ったが7日目以降安定した成績が得られた。抜き出し触媒液の組成は下記表1に示す通りであった。
【0055】
【表1】


【0056】
参考例2
上記参考例1で得られた抜き出し触媒液の濃縮を以下のようにして行った。抜き出し触媒液878.1gを減圧蒸留装置付きのジャケット式反応器に入れ、減圧蒸留により溶媒であるトリグライムを留去した。この時、液温を160℃以下に保つように減圧度を70mmHg〜5mmHgの範囲でコントロールした。溶媒留去後、濃縮触媒液を295.75g得た。得られた濃縮触媒液の組成は下記表2に示す通りであった。
【0057】
【表2】


【0058】
参考例3
上記参考例2で得られた濃縮触媒液39.8gに水90.3g、ヘプタン28.0gを添加し、80℃で1時間攪拌した。80℃で静置すると上からヘプタン相、水相、ヘプタン相及び水相のいずれにも不溶のオイル相の3相に分離した。この3相から水相を分離し、水相114.1gを得た。この水相の組成は下記表3に示す通りであった。
本水相を用いて以下の実施例を行った。尚、ICPで分析した結果、水相中のリン濃度は210wtppmであった。
【0059】
【表3】



【0060】
参考例4
上記参考例2で得られた濃縮触媒液39.8gに水86.5g、ヘプタン28.0gを添加し、80℃で1時間攪拌した後、冷却し65℃で1時間静置した。その結果、上からヘプタン相、水相、ヘプタン相及び水相のいずれにも不溶のオイル相の3相に分離した。この3相から水相を分離し、水相113.2gを得た。この水相の組成は下記表4に示す通りであった。尚、ICPで分析した結果、水相中のリン濃度は59wtppmであった。
【0061】
【表4】


【0062】
実施例1
<固定化酵素の調製>
表面処理剤であるγ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランを80mg、トルエンを溶媒として40ccをガラス製フラスコに添加し、そこにトヨナイト(商品名:東洋電化工業(株)製;多孔質セラミックス)2.0gを加えて、25℃にて20分撹拌した。撹拌終了後、内容液とトヨナイトを濾別分離し、得られた固体を以下の担体として、固定化酵素の合成に使用した。
即ち、上記の方法で表面処理剤を導入したトヨナイト2.0gに市販のリパーゼPS(商品名:アマノ社製)から得られた酵素溶液20.0g(蛋白量=0.91mg/cc)を添加し、25℃にて、24時間振とうを行った。振とう終了後、固体を濾別回収し、真空乾燥を行い、固定化酵素を得た。
【0063】
<副生高沸点化合物の加水分解反応>
参考例3で得られた水相(高沸点化合物18.2重量%)から水分を乾燥除去し、高沸点化合物を得た。この高沸点化合物を500mg、ジオキサン5.25cc、脱塩水0.75ccをフラスコ内で溶解し、得られた高沸点化合物の溶液を上記方法で調製した固定化酵素500mgと30℃、7時間接触させた。反応後の液をNMRにて分析した結果、コハク酸42%、1,4−ブタンジオール1.26%の収率で生成した。また、高沸点化合物の転化率は6.5%であった。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】参考例1のγ−ブチロラクトン製造に使用した循環装置の概略図
【符号の説明】
【0065】
(1)気液分離器
(2)蒸留塔
(3)触媒容器
(4)抜き出し触媒容器
(5)新触媒容器
(6)水素圧縮機
(7)原料容器
(8)オートクレーブ
【出願人】 【識別番号】000005968
【氏名又は名称】三菱化学株式会社
【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
【出願日】 平成19年1月9日(2007.1.9)
【代理人】 【識別番号】110000257
【氏名又は名称】特許業務法人志成特許事務所


【公開番号】 特開2008−167663(P2008−167663A)
【公開日】 平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願番号】 特願2007−1018(P2007−1018)