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【発明の名称】 セルロース含有物の糖化方法
【発明者】 【氏名】大島 玲子

【氏名】飯嶋 夕子

【要約】 【課題】炭酸カルシウムを含むセルロース含有物を糖化する方法の提供。

【解決手段】炭酸カルシウムを含むセルロース含有物4に、少なくともエンドグルカナーゼ、エクソグルカナーゼ、およびβ−グルコシダーゼを含むセルラーゼ(酵素5)を加え、少なくともセルロースが中性ないしアルカリ性領域で加水分解されて生成した溶解性の糖を含有する糖含有液を得る第1の工程(糖化工程1)と、糖含有液を固液分離して炭酸カルシウムを含む糖化残渣6を除去し、糖含有液7を得る第2の工程(固液分離工程2)と、少なくともエンドグルカナーゼ、エクソグルカナーゼ、およびβ−グルコシダーゼを含むセルラーゼ(酵素8)を加え、中性ないし酸性領域でグルコースを含む低分子の糖を含む糖化液9を得る第3の工程からなる糖化方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース含有物に少なくともエンドグルカナーゼ、エクソグルカナーゼ、およびβ−グルコシダーゼを含むセルラーゼを加え、中性ないしアルカリ性領域で酵素処理することにより低分子の糖まで分解する第1の工程と、固液分離により炭酸カルシウムを含む固形分をとり除く第2の工程と、得られた可溶成分に少なくともβ−グルコシターゼを含むセルラーゼを加え、中性ないし酸性領域において酵素処理することによりグルコースを含む低分子の糖を含む糖化液を得る第3の工程を有することを特徴とするセルロース含有物の糖化方法。
【請求項2】
前記第1の工程の低分子の糖が、単糖、単糖の縮合体で加水分解により単糖を生ずるオリゴ糖や多糖であることを特徴とする請求項1に記載のセルロース含有物の糖化方法。
【請求項3】
前記第1の工程の中性ないしアルカリ性領域が、pH7〜10であることを特徴とする請求項1〜2いずれかに記載のセルロース含有物の糖化方法。
【請求項4】
前記第3の工程の中性ないし酸性領域が、pH4〜7であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のセルロース含有物の糖化方法。
【請求項5】
前記セルロース含有物が古紙、古紙を含む廃棄物、または紙パルプ工場の排水工程より発生する繊維分を含むペーパースラッジであることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載のセルロース含有物の糖化方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸カルシウムを含むセルロース含有物を糖化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙に代表されるセルロース含有物を糖化する方法として、セルラーゼを用いた酵素処理による加水分解によってグルコース等の糖類を得る方法が広く知られている。これらのセルラーゼは酸性〜中性領域に適性pHを持つため、水溶液を酸性領域に調製し、酵素反応を行っている。
【0003】
古紙類などのセルロース含有物を糖化してグルコースを得る方法としては特許文献1、2があるが、セルラーゼによる加水分解処理を中性〜アルカリ性領域でおこなっている方法、β‐グルコシターゼによる加水分解の前に炭酸カルシウムを含む固形分を除去する方法は見当たらない。
【特許文献1】特開2002−176997号公報
【特許文献2】特開2002−186938号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、紙の高填料化が進み、古紙やペーパースラッジ等に含まれる炭酸カルシウムの割合が増加している。炭酸カルシウムの多い水溶液はpHが高く(pH7〜9)、酸性領域で酵素反応を行うためには多くの酸による調整が必要となる。したがって、本発明は、セルロース含有物の酸の消費量が少ない糖化方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するため、研究を重ねた結果、「中性ないしアルカリ性領域にてセルロースを低分子の糖まで分解をした後、脱水により炭酸カルシウムを含む固形分を取り除き、得られた可溶成分のみを中性ないし酸性領域、好ましくは、pH4〜7にてさらに酵素処理し、グルコースを含む糖化液を得る方法」に着目した。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、炭酸カルシウムを含むセルロース含有物の糖化を効率的で、酸消費量の少ない方法で提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の好適な実施の形態を説明するが、本発明は下記の実施の形態に何ら限定されるものではなく、適宜変更して実施することができるものである。
【0008】
本発明においてセルロース含有物としては、特に限定されるものはないが、新聞紙、雑誌、オフィス紙、段ボール紙などの古紙、紙パルプ工場の排水処理工程より発生する繊維分を含むスラッジなどが利用される。
【0009】
図1は本発明のセルロース含有物の糖化方法の一実施形態を示す工程図である。まず糖化工程1(第1の工程)においては、必要に応じて前処理したセルロース含有物4に酵素5としてセルラーゼを加え、さらに必要に応じて水を供給し、最適なpHおよび温度で攪拌してセルラーゼによるセルロースの加水分解を行って、低分子の糖含有物を得る。一般的な古紙の前処理は酸やアルカリなどの薬品による処理や叩解、凍結粉砕等による機械的破壊等の形態を変えたり、繊維を短くしたりするような前処理と、裁断のみのシュレッディングや古紙に水を加えて単にミキシングし、繊維をほぐすだけの繊維を切断しない簡単な前処理がある。本発明においてはコストや処理の煩雑さを考慮して、後者の簡単な前処理が好ましい。
【0010】
本発明の第1の工程に用いるセルラーゼは少なくともエンドグルカナーゼ、エクソグルカナーゼ、およびβ−グルコシダーゼを含み、中性〜アルカリ性領域、好ましくは、pH7〜10で活性を持つものであればよく、特に限定されない。基質量に対するセルラーゼの使用量は、0.1〜30重量%が好ましく、0.5〜5重量%が特に好ましい。
【0011】
基質量に対するセルラーゼの使用量が、0.1重量%未満であると、酵素処理に長時間を要し、能力的に問題がある。また、30重量%を超えると、酵素の使用量が多くなる割には処理能力がそれほど向上しないので、コスト的な問題がある。
糖化工程1における水の供給量はセルロース含有物4および酵素5を含むスラリーが攪拌可能な粘度となるように適宜設定しうる。反応条件は、pHは中性〜アルカリ性領域(pH7〜10)、温度40〜70℃程度が好ましい。
【0012】
糖化工程1においては、セルロース含有物4に含まれるセルロースにセルラーゼが作用することによってセルロースが短繊維化や糖化され、短繊維、オリゴ糖や多糖、キシロース等の低分子の糖、またはその他、可溶性の糖が生成される。
【0013】
攪拌時間はセルロースの大部分が溶解するように設定するのが好ましく、例えば10〜50時間程度が好ましい。
【0014】
次に第2の工程として、糖化工程1で得られた糖含有液を固液分離して(固液分離工程2)、固形分が除去された糖含有液7を得る。
【0015】
糖化工程1で得られる糖含有液には、セロオリゴ糖やキシロオリゴ糖、キシロース等の低分子の溶解性の糖、セルラーゼ以外に、リグニンやヘミセルロース、炭酸カルシウム等の不溶性成分が含まれている。また、糖化工程3はpHを4〜7に調製することが望ましいが、炭酸カルシウム存在下では調製に必要な酸が多く必要となる。固液分離工程2において炭酸カルシウム等の不溶性成分を除去することで、第3の工程の効率を上げ、さらに、酸の必要量を減らすことができる。
【0016】
固液分離の方法としては濾布、濾過膜、遠心等により、炭酸カルシウムを固形分として分離できる方法が好ましい。例えば、フィルタプレスによって脱水する方法が挙げられる。
【0017】
この固液分離工程2では、リグニンやヘミセルロース、炭酸カルシウム等の不溶性物質が固相として除去され、液相すなわち固液分離工程2で得られた糖含有液7にはセロオリゴ糖やキシロオリゴ糖、多糖、キシロース等の低分子の溶解性の糖が生成される。セルラーゼの一部は基質であるセルロース等に吸着し、固形分とともに除去されるが、糖含有液7にも含まれる。
【0018】
固液分離工程2で除去された固形分は、糖化残渣6として適宜、焼却処分する。または、除去された固形分はセルラーゼを含むため、セルロース含有物4と共に再び糖化処理を行うと、セルラーゼの供給量を減らすことができる。
【0019】
次の第3の工程、糖化工程3では固液分離工程2で得られた糖を含む可溶成分にβ‐グルコシターゼを含むセルラーゼを加え、最適なpHおよび温度で攪拌して、セルラーゼによる低分子糖等の加水分解を行って、グルコースを含む糖化液9を得る。
【0020】
本発明の第3の工程に用いるセルラーゼは少なくともβ‐グルコシターゼを含むものであればよく、特に限定されない。基質量に対するセルラーゼの使用量は0.1〜30重量%が好ましく、0.5〜5重量%が特に好ましい。基質量に対するセルラーゼの使用量が、0.1重量%未満であると、酵素処理に長時間を要し、能力的に問題がある。また、30重量%を超えると、酵素の使用量が多くなる割には処理能力がそれほど向上しないので、コスト的な問題がある。
【0021】
糖化工程3における反応条件は、通常のセルラーゼによる糖化条件を適用する。例えばpH4〜7、温度40〜70℃程度が好ましい。
【0022】
糖化工程3においては主にオリゴ糖からグルコースへの加水分解が行われる。糖化液9にはグルコース、オリゴ糖等の糖類、セルラーゼ等が含まれる。
【0023】
糖化工程3で得られた糖化液9は例えば、アルコール発酵や乳酸発酵等の発酵によって、有価物を生成する。
【実施例】
【0024】
以下に具体的な実施例を示して本発明の効果を明らかにする。
(実施例1)
セルロース含有物として、炭酸カルシウムを加え、pHを8〜9に調製した広葉樹クラフトパルプ(LBKP)を用意した。糖化槽として、1lビーカーを用いた。酵素5として、最適pHが中性ないしアルカリ性領域にある少なくともエンドグルカナーゼ、エクソグルカナーゼ、およびβ−グルコシダーゼを含む市販のセルラーゼ(商品名:Novozyme 51081、Novozyme社製)をLBKPに対して1%添加した。まず、1lビーカーにLBKP、水、酵素を投入し、これらを攪拌しながら酵素による加水分解を行った(第1の工程)。温度50〜60℃で、25時間反応させた後、ろ紙を用いて吸引濾過し、濾液を別の1lビーカーに入れた(第2の工程)。この濾液に硫酸を加えて、pHを5〜6に調製した。酵素8として、最適pHが酸性領域にある少なくともβ−グルコシターゼを含む市販のセルラーゼ(商品名:Novozyme 188、Novozyme社製)をLBKPに対して1%添加し、攪拌しながら酵素による加水分解を行った(第3の工程)。25時間反応させた後、糖化液のグルコース含有量を測定した。その結果を下記表1に示す。
(実施例2)
セルロース含有物として、紙パルプ工場排水処理工場より発生する繊維分を含むスラッジとした以外は、実施例1と同様の条件でセルロース含有物の糖化を行い、糖化液のグルコース量を測定した。その結果を下記表1に示す。
(比較例1)
前記実施例1において酵素5を最適pHが酸性領域にある市販の酵素(商品名:celcraft、Novozyme社製)を用いて糖化を行った。この濾液に硫酸を加えて、pHを5〜6に調製し、温度50〜60℃で25時間反応させた後、糖化液のグルコース濃度を測定した。第2の工程である固液分離工程と、第3の工程である糖化工程は行わなかった。その結果を下記表1に示す。
(比較例2)
前記実施例2において酵素5を最適pHが酸性領域にある市販の酵素(商品名:celcraft、Novozyme社製)を用いて糖化を行った。この濾液に硫酸を加えて、pHを5〜6に調製し、温度50〜60℃で25時間反応させた後、糖化液のグルコース濃度を測定した。第2の工程である固液分離工程と、第3の工程である糖化工程は行わなかった。その結果を下記表1に示す。
<結果>
炭酸カルシウムを含むセルロース含有物を中性〜アルカリ性領域で糖化しても、酸性領域で糖化したときと同等の糖化率を得ることができた。また、固液分離処理工程を行うことで酸添加量を激減することができた。
【0025】
【表1】


【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明に係る一実施例を示す工程図である。
【符号の説明】
【0027】
1 糖化工程(第1の工程)
2 固液分離工程(第2の工程)
3 糖化工程(第3の工程)
4 セルロース含有物
5 酵素
6 糖化残渣
7 糖含有液
8 酵素
9 糖化液

【出願人】 【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
【出願日】 平成18年12月28日(2006.12.28)
【代理人】 【識別番号】100089705
【弁理士】
【氏名又は名称】社本 一夫

【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎

【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰

【識別番号】100080137
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 昭男

【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行

【識別番号】100092015
【弁理士】
【氏名又は名称】桜井 周矩


【公開番号】 特開2008−161137(P2008−161137A)
【公開日】 平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願番号】 特願2006−355840(P2006−355840)