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【発明の名称】 ラクト−N−ビオースI及びガラクト−N−ビオースの製造方法
【発明者】 【氏名】北岡 本光

【氏名】西本 完

【要約】 【課題】安価でかつ簡便にラクト−N−ビオースI及びガラクト−N−ビオースを製造する方法を提供する。

【解決手段】N−アセチルグルコサミン又はN−アセチルガラクトサミン、リン酸、ラクト−N−ビオースホスホリラーゼ(EC 2.4.1.211)及びUDP−グルコース−4−エピメラーゼ(EC 5.1.3.2)の存在下で、(i)糖質原料と、該糖質原料を加リン酸分解しα−グルコース−1−リン酸を生じる酵素との組合せ;並びに(ii)α−グルコース−1−リン酸をUDP−グルコースに変換する酵素及びUDPガラクトースをガラクトース−1−リン酸に変換する酵素とそれらの補因子との組合せ、及び/又はα−グルコース−1−リン酸及びUDP−ガラクトースをそれぞれUDP−グルコース及びα−ガラクトース−1−リン酸に変換する酵素(UDP−Gly生成酵素)とその補因子との組合せを作用させることを特徴とする、ラクト−N−ビオースI又はガラクト−N−ビオースの製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N−アセチルグルコサミン、リン酸、ラクト−N−ビオースホスホリラーゼ(EC 2.4.1.211)及びUDP−グルコース−4−エピメラーゼ(EC 5.1.3.2)の存在下で、
(i)糖質原料と、該糖質原料を加リン酸分解しα−グルコース−1−リン酸を生じる酵素との組合せ;並びに
(ii)α−グルコース−1−リン酸をUDP−グルコースに変換する酵素及びUDP−ガラクトースをα−ガラクトース−1−リン酸に変換する酵素とそれらの補因子との組合せ、及び/又はα−グルコース−1−リン酸及びUDP−ガラクトースをそれぞれUDP−グルコース及びα−ガラクトース−1−リン酸に変換する酵素とその補因子との組合せを作用させることを特徴とする、ラクト−N−ビオースIの製造方法。
【請求項2】
N−アセチルガラクトサミン、リン酸、ラクト−N−ビオースホスホリラーゼ(EC 2.4.1.211)及びUDP−グルコース−4−エピメラーゼ(EC 5.1.3.2)の存在下で、
(i)糖質原料と、該糖質原料を加リン酸分解しα−グルコース−1−リン酸を生じる酵素との組合せ;並びに
(ii)α−グルコース−1−リン酸をUDP−グルコースに変換する酵素及びUDP−ガラクトースをα−ガラクトース−1−リン酸に変換する酵素とそれらの補因子との組合せ、及び/又はα−グルコース−1−リン酸及びUDP−ガラクトースをそれぞれUDP−グルコース及びα−ガラクトース−1−リン酸に変換する酵素とその補因子との組合せを作用させることを特徴とする、ガラクト−N−ビオースの製造方法。
【請求項3】
(i)の組合せが、スクロースとスクロースホスホリラーゼ(EC 2.4.1.7)との組合せ、デンプン又はデキストリンとホスホリラーゼ(EC 2.4.1.1)との組合せ、セロビオースとセロビオースホスホリラーゼ(EC 2.4.1.20)との組合せ、セロデキストリンとセロデキストリンホスホリラーゼ(EC 2.4.1.49)及びセロビオースホスホリラーゼ(EC 2.4.1.20)との組合せ、ラミナリオリゴ糖とラミナリビオースホスホリラーゼ(EC 2.4.1.31)及び/又はβ−1,3オリゴグルカンホスホリラーゼ(EC 2.4.1.30)との組合せ、並びにトレハロースとトレハロースホスホリラーゼ(EC 2.4.1.231)との組み合わせ、よりなる群から選択される1つ以上の組合せである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
(ii)の組合せが、UDP−グルコース−ヘキソース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(EC 2.7.7.12)と、UDP−グルコース、UDP−ガラクトース又はその混合物との組合せ;グルコース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(EC 2.7.7.9)及びガラクトース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(EC 2.7.7.10)と、UTPとの組合せ;グルコース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(EC 2.7.7.9)及びガラクトース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(EC 2.7.7.10)と、UDP−グルコース及び/又はUDP−ガラクトース及びピロリン酸との組合せ;グルコース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(EC 2.7.7.9)及びガラクトース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(EC 2.7.7.10)と、UTP及びUDP−グルコース及び/又はUDP−ガラクトース及びピロリン酸との組合せ;グルコース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼとガラクトース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼの両活性を持つ酵素と、UTPとの組合せ;グルコース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼとガラクトース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼの両活性を持つ酵素と、UDP−グルコース及び/又はUDP−ガラクトース及びピロリン酸との組合せ;並びにグルコース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼとガラクトース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼの両活性を持つ酵素と、UTP及びUDP−グルコース及び/又はUDP−ガラクトース及びピロリン酸との組合せ、よりなる群から選択される1以上の組合せである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
酵素が担体に固定化されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素法を用いてラクト−N−ビオースI及びガラクト−N−ビオースを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
β1,3−ガラクトシドであるラクト−N−ビオースI(Galβ1−3GlcNAc)及びガラクト−N−ビオース(Galβ1−3GalNAc)は生理活性糖鎖の中によく見られる構造であり、機能性糖などとしての食品産業上の利用のほか、酵素、レクチンの基質や阻害剤、生体構成糖など、医薬品、試薬として利用することもできる。
【0003】
これらの化合物の従来の製造法としては、例えばラクトースとN−アセチルグルコサミンとを含有する基質を出発原料として、ブタ睾丸起源のβ−ガラクトシダーゼとバチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)の生産するβ−ガラクトシダーゼとを順次的に反応させることを特徴とするラクト−N−ビオースIの製造法(特許文献1)、並びに糖ヌクレオチドと複合糖質前駆物質から複合糖質を生産する能力を有する微生物、動物細胞あるいは昆虫細胞を利用した複合糖質の生産方法(特許文献2)が知られている。しかしながら、前者は反応効率が低く、後者は発酵法によりこれらの糖を製造する方法であることから製造される化合物はどうしてもコスト高になり、いずれも実用性を欠いていた。
【0004】
特許文献3には、ラクト−N−ビオースホスホリラーゼの逆反応触媒活性を利用し、ガラクトース−1−リン酸を原料として、ラクト−N−ビオース誘導体を合成可能であることが示唆されている。しかし、ガラクトース−1−リン酸が高価であるため実用的価値は無かった。
【0005】
【特許文献1】特開平6−253878
【特許文献2】特開2003−189891
【特許文献3】特開2005−341883
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、安価でかつ簡便にラクト−N−ビオースI及びガラクト−N−ビオースを製造する方法に関するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、酵素法によりラクト−N−ビオースI及びガラクト−N−ビオースを製造する方法を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は以下を包含する。
(1)N−アセチルグルコサミン、リン酸、ラクト−N−ビオースホスホリラーゼ(EC 2.4.1.211;1,3β−ガラクトシル−N−アセチルヘキソサミンホスホリラーゼ)及びUDP−グルコース−4−エピメラーゼ(EC 5.1.3.2)の存在下で、
(i)糖質原料と、該糖質原料を加リン酸分解しα−グルコース−1−リン酸を生じる酵素(G1P生成酵素)との組合せ;並びに
(ii)α−グルコース−1−リン酸をUDP−グルコースに変換する酵素及びUDP−ガラクトースをα−ガラクトース−1−リン酸に変換する酵素とそれらの補因子との組合せ、及び/又はα−グルコース−1−リン酸及びUDP−ガラクトースをそれぞれUDP−グルコース及びα−ガラクトース−1−リン酸に変換する酵素(UDP−Gly生成酵素)とその補因子との組合せを作用させることを特徴とする、ラクト−N−ビオースIの製造方法。
【0009】
(2)N−アセチルガラクトサミン、リン酸、ラクト−N−ビオースホスホリラーゼ(EC 2.4.1.211)及びUDP−グルコース−4−エピメラーゼ(EC 5.1.3.2)の存在下で、
(i)糖質原料と、該糖質原料を加リン酸分解しα−グルコース−1−リン酸を生じる酵素(G1P生成酵素)との組合せ;並びに
(ii)α−グルコース−1−リン酸をUDP−グルコースに変換する酵素及びUDP−ガラクトースをα−ガラクトース−1−リン酸に変換する酵素とそれらの補因子との組合せ、及び/又はα−グルコース−1−リン酸及びUDP−ガラクトースをそれぞれUDP−グルコース及びα−ガラクトース−1−リン酸に変換する酵素(UDP−Gly生成酵素)とその補因子との組合せを作用させることを特徴とする、ガラクト−N−ビオースの製造方法。
【0010】
(3)(i)の組合せが、スクロースとスクロースホスホリラーゼ(EC 2.4.1.7)との組合せ、デンプン又はデキストリンとホスホリラーゼ(EC 2.4.1.1)との組合せ、セロビオースとセロビオースホスホリラーゼ(EC 2.4.1.20)との組合せ、セロデキストリンとセロデキストリンホスホリラーゼ(EC 2.4.1.49)及びセロビオースホスホリラーゼ(EC 2.4.1.20)との組合せ、ラミナリオリゴ糖とラミナリビオースホスホリラーゼ(EC 2.4.1.31)及び/又はβ−1,3オリゴグルカンホスホリラーゼ(EC 2.4.1.30)との組合せ、並びにトレハロースとトレハロースホスホリラーゼ(EC 2.4.1.231)との組み合わせ、よりなる群から選択される1つ以上の組合せである、上記(1)又は(2)に記載の方法。
【0011】
(4)(ii)の組合せが、UDP−グルコース−ヘキソース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(EC 2.7.7.12)と、UDP−グルコース、UDP−ガラクトース又はその混合物との組合せ;グルコース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(EC 2.7.7.9)及びガラクトース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(EC 2.7.7.10)と、UTPとの組合せ;グルコース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(EC 2.7.7.9)及びガラクトース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(EC 2.7.7.10)と、UDP−グルコース及び/又はUDP−ガラクトース及びピロリン酸との組合せ;グルコース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(EC 2.7.7.9)及びガラクトース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(EC 2.7.7.10)と、UTP及びUDP−グルコース及び/又はUDP−ガラクトース及びピロリン酸との組合せ;グルコース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼとガラクトース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼの両活性を持つ酵素と、UTPとの組合せ;グルコース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼとガラクトース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼの両活性を持つ酵素と、UDP−グルコース及び/又はUDP−ガラクトース及びピロリン酸との組合せ;並びにグルコース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼとガラクトース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼの両活性を持つ酵素と、UTP及びUDP−グルコース及び/又はUDP−ガラクトース及びピロリン酸との組合せ、よりなる群から選択される1以上の組合せである、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5)酵素が担体に固定化されている、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、安価でかつ簡便にラクト−N−ビオースI及びガラクト−N−ビオースを製造する方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、酵素法による、ラクト−N−ビオースI又はガラクト−N−ビオースの製造方法に関する。
【0014】
図3に本発明の酵素法の反応経路の概略図を示す。図3に示される通り、本発明の酵素法は、主に以下の3つの酵素反応からなる:(1)糖質原料の加リン酸分解反応;(2)グルコース−1−リン酸のガラクトース−1−リン酸への変換反応、(3)N−アセチルグルコサミン又はN−アセチルガラクトサミンからのラクト−N−ビオースI又はガラクト−N−ビオースの合成反応。
【0015】
(1)の反応は、上記要素(i)として含まれる糖質原料と該糖質原料を加リン酸分解してα−グルコース−1−リン酸を生じる酵素(G1P生成酵素)との組合せが、リン酸の存在下で反応して、グルコース−1−リン酸及び還元未糖が生じる反応である。上記要素(i)として用いられる糖質原料と係る酵素の組合せは、これに限定されるものではないが、スクロースとスクロースホスホリラーゼとの組合せ、デンプン又はデキストリンとホスホリラーゼとの組合せ、セロビオースとセロビオースホスホリラーゼとの組合せ、セロデキストリンとセロデキストリンホスホリラーゼ及びセロビオースホスホリラーゼとの組合せ、ラミナリオリゴ糖とラミナリビオースホスホリラーゼとの組合せ、トレハロースとトレハロースホスホリラーゼとの組合せのいずれか一つ、あるいはそれらの組合せを含む。より好ましい組合せは、スクロースとスクロースホスホリラーゼとの組合せ、セロビオースとセロビオースホスホリラーゼとの組合せ、セロデキストリンとセロデキストリンホスホリラーゼ及びセロビオースホスホリラーゼとの組合せ、デンプン又はデキストリンとホスホリラーゼとの組合せのいずれか一つ、あるいはそれらの組合せであり、最も好ましい組合せは、スクロースとスクロースホスホリラーゼとの組合せである。糖質原料の使用濃度は特に限定されるものではないが、好ましくは約1〜約1000g/Lであり、より好ましくは約10〜約1000g/Lである。G1P生成酵素の使用形態は特に限定されるものではなく、菌体抽出液、精製酵素、固定化酵素など種々のものを利用することができ、その使用量(活性で表す)も特に限定されないが、例えば糖質原料1gあたり約0.1ユニット〜約100ユニットで使用し得る。
【0016】
またこの反応に関わるリン酸はいかなる起源のものであっても良い。反応系に加えるリン酸濃度は特に限定されるものではないが、好ましくは約0.1mM〜約1000mM、より好ましくは約1mM〜約100mM程度である。
【0017】
上記(2)の反応は、UDP−グルコース−4−エピメラーゼの存在下、上記要素(ii)として含まれる酵素及びその補因子の組合せによって、上記(1)の反応で生じたグルコース−1−リン酸をUDP−グルコースに変換しかつUDP−ガラクトースをガラクトース−1−リン酸へ変換する反応である。
【0018】
要素(ii)として使用する酵素は、α−グルコース−1−リン酸をUDP−グルコースに変換する酵素及びUDPガラクトースをガラクトース−1−リン酸に変換する酵素の組合せ、又はα−グルコース−1−リン酸及びUDP−ガラクトースをそれぞれUDP−グルコース及びα−ガラクトース−1−リン酸に変換する酵素(UDP−Gly生成酵素)、のいずれか、あるいはその組合せを包含する。すなわち、要素(ii)として含まれる酵素又は酵素の組合せは、該酵素又は酵素の組合せによる反応を進行させるための補因子、及びUDP−グルコース−4−エピメラーゼの存在下で、α−グルコース−1−リン酸をα−ガラクトース−1−リン酸へ変換する上記(2)の変換反応を進行させる。
【0019】
したがって、本発明で意図する上記要素(ii)の組合せは、以下の組合せ:UDP−グルコース−ヘキソース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(EC 2.7.7.12)と、UDP−グルコース、UDP−ガラクトース又はその混合物との組合せ;グルコース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(EC 2.7.7.9)及びガラクトース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(EC 2.7.7.10)と、UTPとの組合せ;グルコース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(EC 2.7.7.9)及びガラクトース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(EC 2.7.7.10)と、UDP−グルコース及び/又はUDP−ガラクトース及びピロリン酸との組合せ;グルコース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(EC 2.7.7.9)及びガラクトース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(EC 2.7.7.10)と、UTP及びUDP−グルコース及び/又はUDP−ガラクトース及びピロリン酸との組合せ;グルコース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼとガラクトース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼの両活性を持つ酵素(EC 2.7.7.9及びEC 2.7.7.10の各酵素には、グルコース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼとガラクトース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼの両活性を有するものも存在する)と、UTPとの組合せ;グルコース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼとガラクトース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼの両活性を持つ酵素と、UDP−グルコース及び/又はUDP−ガラクトース及びピロリン酸との組合せ;並びにグルコース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼとガラクトース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼの両活性を持つ酵素と、UTP及びUDP−グルコース及び/又はUDP−ガラクトース及びピロリン酸との組合せ、を包含する。上記要素(ii)の組合せが、UDP−グルコース−ヘキソース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(EC 2.7.7.12)とUDP−グルコース若しくはUDP−ガラクトース又はその両者との組合せ;グルコース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼとガラクトース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼの両活性を持つ酵素と、UTPとの組合せ;グルコース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼとガラクトース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼの両活性を持つ酵素と、UDP−グルコース及び/又はUDP−ガラクトース及びピロリン酸との組合せ;あるいはグルコース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼとガラクトース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼの両活性を持つ酵素と、UTP及びUDP−グルコース及び/又はUDP−ガラクトース及びピロリン酸との組合せ、であることが好ましい。係る要素(ii)の組合せは、各組合せを単独で使用してもよいし、組合せて使用してもよい。
【0020】
これらの酵素は特に限定されるものではなくいかなる起源の酵素を用いることも可能である。この酵素の使用形態は特に限定されるものではなく、菌体抽出液、精製酵素、固定化酵素など種々のものを利用することができ、その酵素の使用量(活性で表す)も特に限定されないが、例えば糖質原料1gあたり約1ユニット〜約1000ユニットで使用し得る。補因子の使用濃度は特に限定されるものではないが、好ましくは約0.01mM〜約100mM、より好ましくは約0.02mM〜約10mMである。
【0021】
UDP−グルコース−4−エピメラーゼは特に限定されるものではなくいかなる起源の酵素を用いることも可能である。UDP−グルコース−4−エピメラーゼの使用形態は特に限定されるものではなく、菌体抽出液、精製酵素、固定化酵素など種々のものを利用することができ、その使用量も特に限定されないが、例えば糖質原料1gあたり約0.1ユニット〜約100ユニットで使用し得る。
【0022】
上記(3)の反応は、ラクト−N−ビオースホスホリラーゼの存在下、N−アセチルグルコサミン又はN−アセチルガラクトサミンを出発原料として、上記反応(2)によって生じたガラクトース−1−リン酸からラクト−N−ビオースI又はガラクト−N−ビオースを合成する反応である。出発原料として用いるN−アセチルグルコサミン又はN−アセチルガラクトサミンの濃度は特に限定されないが、好ましくは約10mM〜約2M、より好ましくは約100mM〜約1Mである。ラクト−N−ビオースホスホリラーゼの起源はいかなるものを用いても差し支えないが、好ましくはBifidobacterium属細菌由来の酵素(例えば特開2005−341883)を用いる。ラクト−N−ビオースホスホリラーゼの使用形態は特に限定されるものではなく、菌体抽出液、精製酵素、固定化酵素など種々のものを利用することができる。ラクト−N−ビオースホスホリラーゼの使用量(活性で表す)も特に限定されないが、例えば糖質原料1gあたり約0.1ユニット〜約100ユニットで使用し得る。
【0023】
本発明で使用される上記酵素の量は以下のように定義される:ラクト−N−ビオースホスホリラーゼは、0.1M MOPS緩衝液(pH7.5)、10mM ガラクトース−1−リン酸、1M N−アセチルグルコサミンからなる反応液において1分間に1マイクロモルのリン酸を遊離する酵素量を1ユニットとする;UDP−グルコース−ヘキソース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼは、0.1M MOPS緩衝液(pH7.5)、10mM ガラクトース−1−リン酸、10mM UDP−グルコース、10mM 塩化マグネシウムからなる反応液において1分間に1マイクロモルのグルコース−1−リン酸を生成する酵素量を1ユニットとする;UDP−グルコース−4−エピメラーゼは、0.1M MOPS緩衝液(pH7.5)、5mM UDP−ガラクトースからなる反応液において1分間に1マイクロモルのUDP−グルコースを生成する酵素量を1ユニットとする;スクロースホスホリラーゼ等のホスホリラーゼ酵素は0.1M MOPS緩衝液(pH7.5)、10mM スクロース等の基質(糖質原料)、10mM リン酸水素ナトリウムからなる反応液において1分間に1マイクロモルのグルコース−1−リン酸を生成する酵素量を1ユニットとする;グルコース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼとガラクトース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼの両活性を持つ酵素は、0.1M MOPS緩衝液(pH7.5)、10mM ピロリン酸、10mM UDP−グルコース、10mM 塩化マグネシウムからなる反応液において1分間に1マイクロモルのグルコース−1−リン酸を生成する酵素量を1ユニットとする。
【0024】
上述した本発明の酵素は、任意の起源のものでよく、例えば細菌等の原核生物、酵母、菌類、動物等の真核生物由来のいずれの酵素であってもよく、また組換え酵素であってもよい。そのような酵素は市販のものを使用し得るか、または当業者に周知の方法、例えば天然から精製してもよいし、あるいは遺伝子組換え法によって取得し得る。例えば、遺伝子組換えによる方法では、本発明の酵素は、文献に記載されている若しくは公知の核酸又はタンパク質配列データベースに登録されている該酵素遺伝子の塩基配列を基に作製したプライマーを用いたPCRによって適当なライブラリー中の該酵素遺伝子に対応するmRNAから作製したcDNAを増幅した後に、該cDNAを市販の遺伝子発現ベクターに組込み、該発現ベクターで大腸菌等の菌体を形質転換することによって、菌体中で生成される。生成された酵素は、硫安分画等の粗分画又は各種のカラムクロマトグラフィーなど、当業者に周知のタンパク質精製法によって精製できる。また、酵素をGSTやHis−tagとの融合タンパク質として発現させることにより、その後の精製を容易にすることができる。
【0025】
核酸又はタンパク質配列データベースは、例えばGenBank、UniGene、EMBLなどに掲載の配列を利用することができる。配列検索プログラムとして使用可能なものは、BLAST、FASTAなどのプログラムである。
【0026】
プライマーは、通常17〜30塩基、好ましくは19〜25塩基の長さを有する。目的の酵素遺伝子又は対応cDNAを鋳型にし、その5’末端及び3’末端を含む上記長さのセンスプライマー及びアンチセンスプライマーを自動DNA合成装置にて合成し、これを用いてPCRを実施することができる。PCRは、目的の鋳型DNA及びプライマー並びに4種の塩基(dNTP)及び耐熱性DNAポリメラーゼの存在下、変性、アニーリング及び伸長を1サイクルとして、通常20〜40サイクルを実施することを含む。変性は、二本鎖DNAを一本鎖に解離するための処理であり、通常94℃、15秒〜5分間の処理を行う。アニーリングは、一本鎖の鋳型DNAに、それに相補的なプライマーをアニーリングする処理であり、通常55〜60℃、30秒〜2分間の処理を行う。伸長反応は、鋳型DNAに沿ってプライマーを伸長する反応であり、通常72℃で30秒〜10分間の処理を行う。
【0027】
形質転換は、例えば、Sambrookら、Molecular Cloning, A Laboratory Manual(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載されるような技術を使用して実施できる。
【0028】
本発明の酵素はまた、上記の原核生物細胞又は真核生物細胞から直接精製してもよい。細胞破壊液を調製し、遠心分離、硫安分画、透析、各種クロマトグラフィー(例えばゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィーなど)、電気泳動、限外ろ過、結晶化などの酵素精製のための一般的な技術を適宜組合せて、目的の酵素を精製することができる。本発明に使用可能な酵素の形態は、精製酵素の他に、粗製酵素(例えば菌体抽出液、凍結乾燥体など)でもよい。粗製酵素を使用する場合には、本発明の上記反応を妨害する因子を含むべきではない。
【0029】
また本発明において、上記酵素は担体に固定化して使用することができる。本発明に使用し得る固定化酵素の調製方法には、担体結合法(物理的吸着法、イオン結合法、共有結合法、生化学的特異結合法など)、架橋法及び包括法等の当業者に周知の方法が含まれる。担体結合法は、酵素を水不溶性の担体に結合させる方法であり、この場合、セルロース、デキストラン、アガロースなどの多糖類の誘導体、ポリアクリルアミドゲル、ポリスチレン樹脂、イオン交換樹脂などの合成高分子、多孔性ガラス、金属酸化物などの無機物質などを担体として使用できる。架橋法は官能基を2個以上もった試薬と酵素とを反応させて、酵素間で架橋化を行うことで固定化する方法であり、架橋試薬として、グルタルアルデヒド、イソシアン酸誘導体、N,N−エチレンビスマレイミド、ビスジアゾベンジシン、N,N−ポリメチレンビスヨードアセトアミドなどが使用できる。包括法は天然高分子や合成高分子のゲルマトリックスの中に酵素を閉じ込める格子型等を含み、その際に用いる高分子化合物として、ポリアクリルアミドゲル、ポリビニルアルコール、光硬化性樹脂、デンプン、コンニャク粉、ゼラチン、アルギン酸、カラギーナンなどが含まれる。
【0030】
本発明の好適な実施形態によれば、上記反応に関わる全ての酵素を固定化したバイオリアクターカラムを用いて、固定化酵素リアクターとして反応を行うことも可能である。この場合、原料や補因子を含む水溶液を、例えば滞留時間0.01時間〜300時間の流速でカラムを連続的に通過させることによってラクト−N−ビオースI及びガラクト−N−ビオースの製造を実施し得る。
【0031】
反応形態は特に限定されるものではないが、通常は水溶液又は緩衝液中で行われる。反応液のpHは好ましくは5〜9である。反応温度は特に限定されるものではないが、好ましくは5℃〜80℃、より好ましくは20℃〜60℃である。また反応時間は特に限定されるものではないが、0.1〜3000時間であることが好ましい。
【0032】
本発明の一つの利点は、上記全ての酵素反応を、一容器中で又はバイオリアクターを用いて簡便かつ容易に実施できる点にある。さらに、上記(1)〜(3)の反応は、該反応に関る酵素の性質に基づいて可逆的であり得るため、全体として単純な平衡反応とすることができ、上記反応(3)で生じるリン酸、及び上記反応(2)で生じるUDP−グルコース及び/又はUDP−ガラクトースをリサイクルすることできる。したがって、これらの物質は触媒量で存在させるだけでよく、費用効果も高い。
【0033】
本発明により得られるラクト−N−ビオースI及びガラクト−N−ビオースは任意の方法で精製することができる。例えば、本発明により得られるラクト−N−ビオースI及びガラクト−N−ビオースは、カラムクロマトグラフィーや結晶化により単離することが可能である。カラムクロマトグラフィーとして、これに限定されるものではないが、サイズ排除クロマトグラフィー、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、限外濾過膜分離、逆浸透膜分離が含まれる。結晶化方法としては、これに限定されるものではないが、濃縮、温度低下、溶媒添加(エタノール、メタノール、アセトンなど)が含まれる。
以下に本発明の実施例を示す。
【実施例】
【0034】
実施例1.酵素の調製
本発明者らはスクロースを糖質原料としたときのラクト−N−ビオースI合成について、ラクト−N−ビオースホスホリラーゼ、スクロースホスホリラーゼ、UDP−グルコース−4−エピメラーゼ、UDP−グルコース−ヘキソース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、及びグルコース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼとガラクトース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼの両活性を持つ酵素を取得するため、Bifidobacterium longum JCM1217株ゲノムDNAより該酵素遺伝子の単離を行った。ラクト−N−ビオースホスホリラーゼ遺伝子は特開2005−341883に記載の方法で取得した。スクロースホスホリラーゼ(BL0536;配列番号1)、UDP−グルコース−4−エピメラーゼ(BL1644;配列番号2)、UDP−グルコース−ヘキソース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(BL1211;配列番号3)、及びグルコース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼとガラクトース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼの両活性を持つ酵素(BL0739;配列番号4)の各遺伝子はBifidobacterium longum NCC2705株ゲノムデータベースに登録されている該酵素遺伝子の塩基配列を基にしてプライマーを作製した(配列番号5〜20;表1参照)。
【0035】
【表1】


【0036】
これらを用いて、Bifidobacterium longum JCM1217株より抽出したゲノムDNAを鋳型として行ったポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)により、DNA塩基配列を有する1346、1238、1820、2053bpの明瞭なバンドを得た。得られたバンド(PCR産物)をDNAシークエンサーで分析してDNA塩基配列を解読した(配列表の配列番号1〜4参照)。このDNA塩基配列をアミノ酸に翻訳したところ、それぞれBifidobacterium longum NCC2705株由来遺伝子と相同性の高い1251、1023、1627、1530bpのオープンリーディングフレーム(ORF)が認められた。これらのORFが該酵素遺伝子であることを実証するために、ORFの5’末端及び3’末端で作製したプライマー(表1参照)を用いてORF全長をPCRにより増幅し、導入した制限酵素部位を利用して市販の遺伝子発現用pET30プラスミドに連結した。このプラスミドを用いて、常法により大腸菌を形質転換し、形質転換体を得た。得られた形質転換体を30℃で培養し、該遺伝子発現誘導後の菌体より組換え酵素の精製を行った。精製は各酵素のC末端に付加したヒスチジンタグ配列を利用し、ニッケルカラムを用いて行った。1Lの培養液より精製される酵素量はそれぞれ表1に示された通りである。生産された組換え酵素が各酵素活性を有していたことからクローニングした各遺伝子が該酵素遺伝子であることが確認された。各酵素の活性は以下のように定義した。なお、反応温度は全て30℃とした。ラクト−N−ビオースホスホリラーゼは0.1M MOPS緩衝液(pH7.5)、10mM ガラクトース−1−リン酸、1M N−アセチルグルコサミンからなる反応液において1分間に1マイクロモルのリン酸を遊離する酵素量を1ユニットとした。UDP−グルコース−ヘキソース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼは0.1M MOPS緩衝液(pH7.5)、10mM ガラクトース−1−リン酸、10mM UDP−グルコース、10mM 塩化マグネシウムからなる反応液において1分間に1マイクロモルのグルコース1リン酸を生成する酵素量を1ユニットとした。UDP−グルコース−4−エピメラーゼは0.1M MOPS緩衝液(pH7.5)、5mM UDP−ガラクトースからなる反応液において1分間に1マイクロモルのUDP−グルコースを生成する酵素量を1ユニットとした。スクロースホスホリラーゼは0.1M MOPS緩衝液(pH7.5)、10mM スクロース、10mM リン酸水素ナトリウムからなる反応液において1分間に1マイクロモルのグルコース−1−リン酸を生成する酵素量を1ユニットとした。グルコース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼとガラクトース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼの両活性を持つ酵素は、0.1M MOPS緩衝液(pH7.5)、10mM ピロリン酸、10mM UDP−グルコース、10mM 塩化マグネシウムからなる反応液において1分間に1マイクロモルのグルコース−1−リン酸を生成する酵素量を1ユニットとした。
【0037】
セロビオースホスホリラーゼ(Acta Cryst.,D60,1877−1878(2004))、ラミナリビオースホスホリラーゼ(Arch.Biochem.Biophys.,304(2),508−514(1993))はそれぞれかっこ内の文献に記載された方法で調製した。ホスホリラーゼはSigma−Aldorich社よりウサギ筋肉由来の酵素を購入した。
【0038】
実施例2.スクロースのラクト−N−ビオースIへの変換
スクロースを糖質原料としてラクト−N−ビオースIへの変換反応を行った。反応液量は1ミリリットルとし、終濃度0.24Mスクロース、0.24M N−アセチルグルコサミン、10mM 塩化マグネシウム、30mM リン酸−ナトリウム緩衝液(pH7.0)、1mM UDP−グルコースからなる基質溶液を調製し、そこにラクト−N−ビオースホスホリラーゼ、UDP−グルコース−4−エピメラーゼ、UDP−グルコース−ヘキソース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、スクロースホスホリラーゼを1ミリリットル当たり2U、20U、2.6U、2U加え、30℃で90時間反応を行った。反応を10分間煮沸停止後反応液のpHを4.5に調整しインベルターゼ処理を行うことにより残存スクロースを分解した。反応液をTLC(溶媒アセトニトリル−水75:25、担体シリカゲル60)で分析した結果、ラクト−N−ビオースI濃度は200mMであった。(図1、レーン2,3)
【0039】
実施例3.セロビオースのラクト−N−ビオースIへの変換
セロビオースを糖質原料としてラクト−N−ビオースIへの変換反応を行った。反応液量は1ミリリットルとし、終濃度0.24Mセロビオース、0.24M N−アセチルグルコサミン、10mM 塩化マグネシウム、30mM リン酸−ナトリウム緩衝液(pH7.0)、1mM UDP−グルコースからなる基質溶液を調製し、そこにラクト−N−ビオースホスホリラーゼ、UDP−グルコース−4−エピメラーゼ、UDP−グルコース−ヘキソース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、セロビオースホスホリラーゼを1ミリリットル当たり2U、20U、2.6U、10U加え、30℃で90時間反応を行った。反応を10分間煮沸停止後反応液のpHを5に調整しβグルコシダーゼ処理を行うことにより残存スクロースを分解した。反応液をTLC(溶媒アセトニトリル−水75:25、担体シリカゲル60)で分析した結果、ラクト−N−ビオースI濃度は80mMであった。(図1、レーン4,5)
【0040】
実施例4.ラミナリビオースのラクト−N−ビオースIへの変換
ラミナリビオースを糖質原料としてラクト−N−ビオースIへの変換反応を行った。反応液量は1ミリリットルとし、終濃度0.24Mラミナリビオース、0.24M N−アセチルグルコサミン、10mM 塩化マグネシウム、30mM リン酸−ナトリウム緩衝液(pH7.0)、1mM UDP−グルコースからなる基質溶液を調製し、そこにラクト−N−ビオースホスホリラーゼ、UDP−グルコース−4−エピメラーゼ、UDP−グルコース−ヘキソース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ラミナリビオースホスホリラーゼを1ミリリットル当たり2U、20U、2.6U、5U加え、30℃で90時間反応を行った。反応を10分間煮沸停止後反応液のpHを5に調整しβグルコシダーゼ処理を行うことにより残存スクロースを分解した。反応液をTLC(溶媒アセトニトリル−水75:25、担体シリカゲル60)で分析した結果、ラクト−N−ビオースI濃度は80mMであった。(図1、レーン6,7)
【0041】
実施例5.マルトヘプタオースのラクト−N−ビオースIへの変換
マルトヘプタオースを糖質原料としてラクト−N−ビオースIへの変換反応を行った。反応液量は1ミリリットルとし、終濃度0.24Mマルトヘプタオース、0.24M N−アセチルグルコサミン、10mM 塩化マグネシウム、30mM リン酸−ナトリウム緩衝液(pH7.0)、1mM UDP−グルコースからなる基質溶液を調製し、そこにラクト−N−ビオースホスホリラーゼ、UDP−グルコース−4−エピメラーゼ、UDP−グルコース−ヘキソース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ、ホスホリラーゼを1ミリリットル当たり2U、20U、2.6U、7U加え、30℃で90時間反応を行った。反応液をTLC(溶媒アセトニトリル−水75:25、担体シリカゲル60)で分析した結果、ラクト−N−ビオースI濃度は100mMであった。(図1、レーン8,9)
【0042】
実施例6.スクロースからラクト−N−ビオースIの調製
ラクト−N−ビオースIの合成は以下の通りに行った。反応液量は10ミリリットルとし、終濃度0.66M スクロース、0.60M N−アセチルグルコサミン、10mM 塩化マグネシウム、30mM リン酸−ナトリウム緩衝液(pH7.0)、1mM UDP−グルコースからなる基質溶液を調製し、そこにラクト−N−ビオースホスホリラーゼ、スクロースホスホリラーゼ、UDP−グルコース−4−エピメラーゼ、UDP−グルコース−ヘキソース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼをそれぞれ1ミリリットル当たり0.25U、0.08U、2.50U、0.33U加え、30℃で500時間反応を行った。反応液中のラクト−N−ビオースI濃度はおよそ0.52Mであり、糖質原料の約80%がラクト−N−ビオースIに変換していた。反応液中の未反応のスクロースを分解するため、反応液のpHを塩酸で4.5に調整し、Sigma社より購入したインベルターゼ3mgを加え37℃で15時間処理した。処理後の反応液をTOYOPEARL HW40Fカラムに供し、ゲルろ過によりラクト−N−ビオースI画分を単離、回収した。回収した画分をエバポレーターで濃縮し、凍結乾燥によりラクト−N−ビオースI標品0.95g(単離収率41%)を得た。
【0043】
実施例7.スクロースからガラクト−N−ビオースの調製
ガラクト−N−ビオースの合成は以下の通りに行った。反応液量は10ミリリットルとし、終濃度0.66M スクロース、0.60M N−アセチルガラクトサミン、10mM 塩化マグネシウム、30mM リン酸−ナトリウム緩衝液(pH7.0)、1mM UDP−グルコースからなる基質溶液を調製し、そこにラクト−N−ビオースホスホリラーゼ、スクロースホスホリラーゼ、UDP−グルコース−4−エピメラーゼ、UDP−グルコース−ヘキソース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼをそれぞれ1ミリリットル当たり0.25U、0.08U、2.50U、0.33U加え、30℃で500時間反応を行った。反応液中のガラクト−N−ビオース濃度はおよそ0.40Mであり、糖質原料の約60%がガラクト−N−ビオースに変換していた。反応液中の未反応のスクロースを分解するため、反応液のpHを塩酸で4.5に調整し、Sigma社より購入したインベルターゼ3mgを加え37℃で15時間処理した。処理後の反応液をTOYOPEARL HW40Fカラムに供し、ゲルろ過によりガラクト−N−ビオース画分を単離、回収した。回収した画分をエバポレーターで濃縮し、凍結乾燥によりガラクト−N−ビオース標品0.78g(単離収率34%)を得た。
【0044】
実施例8.ラクト−N−ビオースIの大量調製
ラクト−N−ビオースIの大量調製は以下の通りに行った。反応液量は1リットルとし、終濃度0.66M スクロース、0.60M N−アセチルグルコサミン、10mM 塩化マグネシウム、30mM リン酸−ナトリウム緩衝液(pH7.0)、1mM UDP−グルコースからなる基質溶液を調製し、そこにラクト−N−ビオースホスホリラーゼ、スクロースホスホリラーゼ、UDP−グルコース−4−エピメラーゼ、UDP−グルコース−ヘキソース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼをそれぞれ1ミリリットル当たり2U、0.3U、20U、2.6U加え、30℃で135時間反応を行った。このときのスクロース濃度及びラクト−N−ビオースI濃度の経時変化を図2に示す。反応収率は87%であった。反応終了後の反応液に25mMリン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化したDEAE−TOYOPEARL 650M 160 mL加え、1時間撹拌することにより酵素を吸着させた後、ろ過により上清を分離した。この上清にドライイースト(日清カメリヤ)20グラムを加え、30℃で18時間攪拌し、酵母処理を行った。処理後、遠心分離及びセライトを用いたろ過により、酵母を取り除いた上清を得た。得られた上清をエバポレーターで濃縮した後、室温に静置しておくことで結晶が得られたため、この結晶をろ過により分離し、真空乾燥により標品を得た。また、結晶を分離した母液についても再度結晶化を行い回収率の向上を行った。これにより純度97%のラクト−N−ビオースI130グラム(収率55%)、純度85%のラクト−N−ビオースI65グラム(収率24%、合計収率79%)が得られた。
【0045】
実施例9. ラクト−N−ビオースIのバイオリアクターによる調製
実施例8で調製した酵素の吸着されたDEAE−TOYOPEARL 650M 160mL分を径2.6cmのガラス製カラムにつめてバイオリアクターカラム(φ2.6cm×30cm)を調製した。該カラムにはラクト−N−ビオースホスホリラーゼ、スクロースホスホリラーゼ、UDP−グルコース−4−エピメラーゼ、UDP−グルコース−ヘキソース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼがそれぞれ約2000U、300U、200000U、2600U吸着されていた。本カラムに30℃、流速0.1ml毎分(滞留時間27時間)の条件で500mlの基質溶液(終濃度0.66M スクロース、0.60M N−アセチルグルコサミン、10mM 塩化マグネシウム、30mM リン酸−ナトリウム緩衝液(pH7.0)、1mM UDP−グルコース)を供し、循環させた。1回カラム循環後の基質溶液中のラクト−N−ビオースI濃度はおよそ0.3M、2回カラム循環後では0.4M、3回カラム循環後のでは0.5Mであった。
【0046】
実施例10. グルコース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(EC 2.7.7.9)とガラクトース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(EC 2.7.7.10)の両活性を持つ酵素を用いたラクト−N−ビオースIの調製
ラクト−N−ビオースIの合成は以下の通りに行った。反応液量は1ミリリットルとし、終濃度0.66M スクロース、0.60M N−アセチルグルコサミン、10mM 塩化マグネシウム、30mM リン酸緩衝液(pH7.0)、1mM UTPからなる基質溶液を調製し、そこにラクト−N−ビオースホスホリラーゼ、スクロースホスホリラーゼ、UDP−グルコース−4−エピメラーゼ、グルコース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(EC 2.7.7.9)とガラクトース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(EC 2.7.7.10)の両活性を持つ酵素をそれぞれ1ミリリットル当たり0.25U、0.08U、2.5U、5.0U加え、30℃で60時間反応を行った。60時間後の反応液中のラクト−N−ビオースI濃度は50mMであった。
【0047】
実施例11. グルコース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(EC 2.7.7.9)とガラクトース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(EC 2.7.7.10)の両活性を持つ酵素を用いたラクト−N−ビオースIの調製
ラクト−N−ビオースIの合成は以下の通りに行った。反応液量は1ミリリットルとし、終濃度0.66M スクロース、0.60M N−アセチルグルコサミン、10mM 塩化マグネシウム、30mM リン酸緩衝液(pH7.0)、1mM UDP−グルコース、1mM ピロリン酸ナトリウムからなる基質溶液を調製し、そこにラクト−N−ビオースホスホリラーゼ、スクロースホスホリラーゼ、UDP−グルコース−4−エピメラーゼ、グルコース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(EC 2.7.7.9)とガラクトース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(EC 2.7.7.10)の両活性を持つ酵素をそれぞれ1ミリリットル当たり0.25U、0.08U、2.5U、5.0U加え、30℃で60時間反応を行った。60時間後の反応液中のラクト−N−ビオースI濃度はいずれも50mMであった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明により製造可能なラクト−N−ビオースI及びガラクト−N−ビオースは、食品添加物、機能性食品、医薬品のバルク又は原料成分としてその有効利用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は、示された糖質原料及びこれを加リン酸分解する酵素から、本発明の方法により、ラクト−N−ビオースIが製造できることを示す薄層クロマトグラフィーの結果である。
【図2】図2は、スクロースを糖質原料とする本発明のラクト−N−ビオースIの製造方法における、スクロースとラクト−N−ビオースIの濃度の継時変化を示す。
【図3】図3は、本発明の酵素法の反応経路の概略図を示す。
【出願人】 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
【出願日】 平成18年12月22日(2006.12.22)
【代理人】 【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔

【識別番号】100096183
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 貞次

【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節


【公開番号】 特開2008−154495(P2008−154495A)
【公開日】 平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願番号】 特願2006−346470(P2006−346470)