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【発明の名称】 発酵法によるS位置換L−システイン誘導体の製造法
【発明者】 【氏名】戸田 清

【氏名】荒木 和美

【要約】 【課題】医薬、健康保健薬あるいは食品添加物としての用途が期待されるS位置換L-システイン誘導体の経済的に有利な製造法を提供することを課題とする。

【解決手段】生育にL-メチオニンおよびL-システインを要求する微生物を発酵培地で培養するに際して、培地にメルカプト基を有する有機化合物を添加して培養することによって、発酵物および発酵液中に添加したメルカプト基を有する有機化合物に対応するS位置換L-システイン誘導体を著量に蓄積させ、これを採取する生産法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素源、窒素源、硫黄源その他微生物の生育に必要な栄養素を含む発酵培地に微生物を培養し、培養の当初あるいは発酵の途上で発酵培地にメルカプト基を有する有機化合物を添加することにより、添加したメルカプト基を有する有機化合物に対応するS位置換L-システイン誘導体を発酵物および発酵液中に生成・蓄積せしめ、発酵物および発酵液からS位置換L-システイン誘導体を採取することを特徴とする発酵法において、使用微生物として、その生育にL-システイン、L-シスチン、又は、それらの生合成前駆体硫黄化合物のうち少なくとも1つの化合物、および、L-メチオニンを要求する微生物を用いることを特徴とする発酵法によるS位置換L-システイン誘導体の製造法。
【請求項2】
使用微生物が大腸菌であることを特徴とする、請求項1記載のS位置換L-システイン誘導体の製造法。
【請求項3】
発酵培地に添加するメルカプト基を有する有機化合物が、エチルメルカプタン、L-システイン、DL-システイン、L-ホモシステイン、DL-ホモシステイン、メチルメルカプタン、2-メルカプトエタノール、3-メルカプト-1-プロパノール、メルカプト酢酸、メルカプトベンゼン、2-メルカプトエチルアミン、4-メルカプトフェノール、3-メルカプトプロピオン酸、あるいはメルカプトコハク酸のうちの一つまたはその組み合わせであることを特徴とする、請求項1記載のS位置換L-システイン誘導体の製造法。
【請求項4】
生成するS位置換システイン誘導体がS-エチル-L-システイン、S-(2-アミノ-2-カルボキシエチル)-L-システイン、S-(3-アミノ-3-カルボキシエチル)-L-システイン、S-メチル-L-システイン、S-カルボキシメチル-L-システイン、S-(2-ヒドロキシエチル)-L-システイン、S-(3-ヒドロキプロピル)-L-システイン、S-ベンジル-L-システイン、S-(2-アミノエチル)-L-システイン、S-4-ヒドロキシベンジル-L-システイン、S-(2-カルボキシエチル)-L-システイン、あるいはS-(1,3-ジカルボキシエチル)-L-システインのうちの一つあるいはその組合せである請求項1記載のS位置換L-システイン誘導体の製造法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵法によるS位置換L-システイン誘導体の製造法に関する。これらは医薬、健康保健薬あるいは食品添加物としての用途が期待される物質であり、また医薬品の合成原料としての用途も期待される物質である。
【背景技術】
【0002】
発酵法によるS位置換L-システイン誘導体の製造方法としては、炭素源、窒素源、硫黄源その他微生物の生育に必要な栄養素を含む発酵培地に少なくともL-メチオニンを生育に必要とする微生物を培養し、発酵の当初または途中で発酵培地にメルカプト基(-SH基)を有する有機化合物を添加することにより、添加したメルカプト基を有する有機化合物に対応するS位置換L-システイン誘導体を発酵物および発酵液中に生成・蓄積せしめる、本発明者らの発明にかかる方法が知られていた(特許文献1)。
【0003】
しかし、従来のL-メチオニン単独要求性変異株を用いる方法ではS位置換L-システイン誘導体の他にS位置換L-ホモシステイン誘導体が発酵物もしくは発酵液中に同時に蓄積する。発酵物もしくは発酵液からS位置換L-システイン誘導体を単離する途上で、性質が良く似ているS位置換L-ホモシステイン誘導体を除去することは難しく、それを解決する方法の開発が望まれていた。
【特許文献1】特開2004−222518号
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、安価な糖源、窒素源、硫黄源、その他微量の栄養源を含む通常の発酵培地に好適な微生物を常法により培養し、発酵の最初からあるいはその途中で培地にメルカプト基を有する有機化合物を添加し、発酵物および発酵培地に著量のS位置換L-システイン誘導体を蓄積させる発酵法によるS位置換L-システイン誘導体の製造法において、少なくともL-メチオニンの他にL-システイン(もしくはL-シスチン)も同時に生育に要求する微生物を用いることにより、S位置換L-システイン誘導体を優先的に発酵物もしくは発酵液中に蓄積させ、S位置換L-ホモシステイン誘導体の蓄積を抑制することが出来ることを見出した。
【発明の効果】
【0005】
分離が難しいS位置換L-ホモシステイン誘導体を発酵物もしくは発酵液から分離する必要が無くなることより、品質が向上し、コスト的にも安価にS位置換L-システイン誘導体を生産することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の方法によれば安価な糖源、窒素源、硫黄源、その他微量の栄養源をほどよく含む通常の発酵培地に好適な微生物を培養するに際して、培地にメルカプト基を有する有機化合物を添加すると、発酵物あるいは発酵培地にS位置換L-システイン誘導体が著量生成・蓄積する。
添加するメルカプト基を有する有機化合物を一般式(1)
RSH (1)
で表した場合(式中、Rは少なくとも炭素を含む化合物であり、炭素以外に他の元素例えば窒素、燐、硫黄、ハロゲンなどを含んでいても良い。)、発酵物および発酵液に生成・蓄積するS位置換L-システイン誘導体は一般式(2)
(L)-HOOCCH(NH2)CH2SR (2)
で表される(式中、Rは前記と同じ)。
【0007】
本発明で使用する微生物としては、細菌類、始原菌類、真菌類のいずれの微生物も利用できる。代表例として大腸菌、コリネバクテリウム・グルタミクム、バチルス属細菌、サッカロミセス・セレビシエー、アスペルギルス属菌類等に属する微生物があげられる。
【0008】
使用微生物としては例えば大腸菌の変異株が好適である。変異株としては、例えば生育に少なくともL-メチオニンと、L-システインおよび/またはL-シスチンを要求する変異株が好適である。ここで或るアミノ酸を生育に要求するとは、微生物を該アミノ酸を含まない合成培地で培養した時に、生育しないことをいう。この要求性はアミノ酸生合成系酵素に変異が入ったものでもよいし、遺伝子組換え技術を利用して薬剤耐性遺伝子などの挿入により遺伝子を破壊したものでも良く、漏出型(リーキー型)であってもよい。
【0009】
このL-メチオニン要求性はL-メチオニンの他に、DL-メチオニン、D-メチオニンによって満たされことがある。また、これらのメチオニン類の他に、L-ホモシステイン、DL-ホモシステイン、L-ホモシスチン、DL-ホモシスチン、ホモシステインチオラクトンのどれかによっても満たされることがある。また、その要求性が上記のメチオニン類では満たされるがホモシステイン類やホモシスチン類では満たされないこともある。
【0010】
またL-システインおよび/またはL-シスチン要求性は、硫化水素(もしくはその塩類)、亜硫酸塩類、チオ硫酸塩類のいずれか一つによって代替される場合がある。
【0011】
さらに、本発明に使用する微生物としては、各種の薬剤(例えばアミノ酸の構造類似体、アミノ酸生合成や核酸生合成の中間体の構造類似体、ビタミン類の構造類似体)に耐性または感受性の性質を持つものが使用される。そして、これらの薬剤耐性と薬剤感受性の性質と上記の栄養要求性の性質の両方を合わせてもつ微生物であっても良い。
【0012】
さらに、本発明に使用する微生物としては、セリン-O-アセチル転移酵素やO-アセチルセリンスルフヒドラーゼ等のシステイン生合成経路の酵素類がL-システインのフィードバック調節に対して耐性になった微生物あるいはホモセリンサクシニル転移酵素やシスタチオニン・ガンマ・シンターゼのようなメチオニン合成酵素類がL-メチオニンあるいはその誘導体のフィードバック調節に対して耐性になった微生物、あるいはその両方の性質の微生物が使用できる。そして、これらのフィードバック調節に対する耐性の性質と、上述の栄養要求性、薬剤耐性あるいは薬剤感受性の性質とを合わせてもつ微生物であっても良い。
【0013】
さらに、これらの酵素類が遺伝子工学的手法で増強あるいは欠損せしめた組換え株であってもよい。
【0014】
本発明に使用する微生物の代表例として大腸菌に属し、生育に少なくともL-メチオニンまたはL-ホモシステインまたはL-ホモシスチンを要求する変異株Escherichia coli metC/cys (FERM P-21078)をあげることができる。
【0015】
本菌株は、L-メチオニン、DL-メチオニン、D-メチオニン、DL-ホモシステインまたはL-ホモシステインのうちいずれか1つの化合物と、L-システイン、L-シスチン、硫化水素もしくはその塩類、亜硫酸塩類、チオ硫酸塩類のうちいずれか1つの化合物の両方を生育に必要とする変異株であり、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1-1-1 つくばセンター 中央第6)に前記受託番号で寄託されている(寄託日:平成18年10月31日)。
【0016】
本発明に使用する発酵培地としては、炭素源、窒素源、硫黄源、無機塩類その他の栄養物を程良く含有しかつメルカプト基を有する有機化合物を含む培地ならば合成培地、天然培地のいずれでも使用できる。
【0017】
炭素源としては、使用菌の利用可能なものであればいずれを用いてもよい。例えば、グルコース、フラクトース、しょ糖、乳糖、マンノース、マルトース、廃糖蜜、または、でんぷん加水分解物等の炭水化物、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、または、キシリトール等の糖アルコール、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、シスチン、システイン、アラニン、プロリン、グリシン、トリプトファン、セリン、ホモセリン、または、スレオニン等のアミノ酸類、乳酸、ピルビン酸、酢酸、リンゴ酸、ギ酸、コハク酸、フマール酸、クエン酸、または、各種脂肪酸等の有機酸類、エタノール、プロパノール、ブタノール、または、メタノール等のアルコール類を単独あるいは組み合わせて使用できる。
【0018】
窒素源としては、硫酸アンモニウム、亜硫酸アンモニウム、硫化アンモニウム、チオ硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、燐酸アンモニウム、または、炭酸アンモニウム等の無機アンモニウム塩、各種の有機酸アンモニウム塩、各種の硝酸塩類、アンモニア水、尿素等を単独あるいは組み合わせて使用できる。
【0019】
硫黄源としては、硫酸アンモニウム、硫酸カリウム、または、硫酸ナトリウム等の硫酸塩、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸カリウム、または、亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸塩、硫化アンモニウム、硫化カリウム、硫化ナトリウム、または、硫化水素等の硫化物、チオ硫酸塩類、メルカプタン、システイン、または、シスチン等のメルカプト化合物、その他の有機無機硫黄化合物を単独あるいは組み合わせて使用できる。
【0020】
使用菌の要求物質であるメチオニンおよびホモシステインは、L-型、D-型、DL-型のいずれでも、使用菌の利用できるものであれば単独あるいは組み合わせて利用できる。またこれらを含む天然または合成物質や、容易にこれらに変化しうる物質たとえばメチオニンのヒダントイン、ホモシスチン、ホモシステインチオラクトン等も使用できる。
【0021】
使用菌のもう一つの要求物質であるL-システイン、L-シスチン、およびそれらの生合成前駆物質(亜硫酸塩、硫化水素及びその塩類、チオ硫酸およびその塩類)は単独または組み合わせて使用できる。またこれらを含む天然または合成物質や、容易にこれらに変化しうる物質が使用できる。
【0022】
これらの要求物質の使用量は、培地の組成やその他の培養条件によって異なるが、用いた培養条件下で、それらを充分量添加した場合の最大生育量に対して、50-90%程度の生育量が得られるように制限して供給することが望ましい。これらの要求物質は、培養の初期、あるいは培養の途中で分割あるいは一括して添加する事が出来る。
【0023】
培養は振とう培養や通気撹拌培養等の好気的条件下で行われる。培養中培養液のpHは5~9に維持されるのが好適である。中和剤としては、アンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、燐酸マグネシウム、水酸化カリウム、尿素等を単独であるいは組み合わせて使用できる。
【0024】
培養期間は通常3-7日間で、主として培養液中に著量のS位置換L-システイン誘導体が蓄積する。
【0025】
生成・蓄積するS位置換L-システイン誘導体は、培地に添加するメルカプト基を有する有機化合物の種類によって異なるが、添加するメルカプト基を有する有機化合物を一般式(1)
RSH (1)
で表した場合(式中、Rは少なくとも炭素を含む化合物であり、炭素以外に他の元素例えば窒素、燐、硫黄、ハロゲンなどを含んでいても良い。)、生成・蓄積するS位置換システイン誘導体は一般式(2)
(L)-HOOCCH(NH2)CH2SR (2)
で表される(式中、Rは前記と同じ)。
【0026】
培地に添加するメルカプト基を有する有機化合物と生成・蓄積するS位置換L-システイン誘導体の例は表1に示す通りであるがこれに限定するものではない。
【0027】
【表1】


【実施例】
【0028】
以下に本発明の具体的な実施例を示す。しかし、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
(参考例)要求性の確認
大腸菌変異株FERM P-21078(本発明の使用菌)とその親株である大腸菌変異株FERM P-18891を、ブイヨン寒天培地にそれぞれ接種し37℃で一夜培養した。生育した菌体の一部を採取して、殺菌水2mlに懸濁し、1mlあたり約10個の細胞を含む細胞懸濁液をそれぞれ調製した。これらの細胞懸濁液0.1mlずつを、それぞれの菌株について4枚ずつの最少寒天培地{グルコース 1%、硫酸アンモニウム 0.2%、KH2PO4 0.15%、K2HPO4 0.05%、MgSO4・7H2O 0.05%、FeSO4・7H2O 0.01%、MnSO4・4H2O 0.007%、NaCl 0.01%、無機塩類混液(1L中にCaCl2・H2O 5.3g、CoCl2 40mg、CuSO4・5H2O 40mg、H3Bo3 30mg、Na2MoO4 47mg、ZnSO4・7H2O 200mgを含む)を1ml/Lおよび寒天2%を含む培地、pH7}30mlの基本組成の寒天平板培地とこの基本組成にL-メチオニン30μg/mlを加えた寒天平板培地の両方を用いて、それぞれの平板培地の片隅にシリンダーカップを置き、それぞれのカップの中にL-システイン2.5mg/ml)溶液、L-シスチン(2.5mg/ml)溶液、硫化ナトリウム(2.5mg/ml)溶液、亜硫酸ナトリウム(2.5mg/ml)溶液、チオ硫酸ナトリウム(2.5mg/ml)溶液または殺菌水(対照)をそれぞれ0.02mlづつ注入して、30℃で48時間静置培養した。
【0029】
その結果は表2に示すように、対照の親株は基本組成の平板培地上では、6つのどの条件でも全く生育は認められなかった。一方、L-メチオニン30μg/mlを含む平板培地の表面全体に良好な生育が認められた。したがって、対照の親株は、L-メチオニン要求株であることを確認した。
【0030】
一方、本発明の使用菌の大腸菌変異株FERM P-21078では、L-メチオニンを含まない基本培地では全く生育しなかったが、L-メチオニンを含む培地では、L-システイン、L-シスチン、硫化ナトリウム、亜硫酸ナトリウムあるいはチオ硫酸ナトリウムを与えたシリンダーカップの周辺に生育ゾーンが認められ、殺菌水(対照)を与えたカップの周辺またはカップから離れた領域ではまったく生育が認められなかった。
【0031】
この様に、本発明の使用菌FERM P-21078は、L-メチオニンと、L-システイン、L-シスチン、硫化ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、または、チオ硫酸ナトリウムのいずれか1つの両方を生育に必要とする変異株であることが分かった。
【0032】
【表2】


(実施例1)
グルコース10g/l、ポリペプトン10g/l、酵母エキス5g/l、尿素3g/lの組成からなるpH7の種母培地10mlを300ml容三角フラスコに入れて120℃で10分間オートクレーブ殺菌した。これに大腸菌変異株FERM P-21078を接種し、往復振とう培養機上で130rpmの振とう速度で30℃の温度下で24時間振とう培養して種母とした。得られた培養液を下記の基本組成からなる殺菌した発酵培地7mlを含む300ml容三角フラスコに0.7ml接種し、さらに別に殺菌したL-メチオニンとL-システインの培地中の最終濃度が表3のようになるように0-500μg/mlに変えて各フラスコに添加し、種母培養と同様に振とう培養した。
【0033】
発酵培地の基本組成(培地1Lあたり)は次の通りであった。フラクトース 30g、(NH4)2SO4 10g、FeSO4・7H2O 0.01g、MnSO4・4H2O 0.007g、MgSO4・7H2O 0.5g、KH2PO4 1.5g、K2HPO4 0.5g、NaCl 0.1g、酵母エキス 1g、ウラシル 0.1g、CaCO3 20g。ただし、(NH4)2SO4 とCaCO3 は他の培地組成とは別に殺菌して加えた。また、培地のpHをアンモニア水でpH7に調整した後、120℃で10分間オートクレーブ殺菌した。
【0034】
培養18時間目に殺菌した30%フラクトース溶液を0.7mlづつ各フラスコに添加し、同時にフィルター除菌した20mg/mlの2-メルカプトエタノールを0.7mlづつ添加して、その後さらに培養を続行して合計40時間培養した。その結果、各培養条件下の菌の生育度と培養液中のS-(2-ヒドロキシエチル)-L-システインの蓄積量は表3の通りであった。なお、菌の生育度は東京光電社製光電比色計モデルANA-7Aで、光路長2cmの比色セルを用いてOD660を測定し、この値で記した。
【0035】
【表3】


上記と同様に、L-メチオニン250μg/mlとL-システイン100μg/mlを添加した条件で培養を繰り返して発酵液を集めて450mlとし、-20℃で凍結し、それを解凍後8,000rpm、4℃の条件で遠心分離して得た上澄液の中には、S-(2-ヒドロキシエチル)-L-システインが1,360mg含まれていた。この液を内径2.5cm、長さ30cmのHタイプの陽イオン交換樹脂ダイアイオンSK#1B(日本錬水社製)のカラムに、1時間当たり153mlの速度で通液して、S-(2-ヒドロキシエチル)-L-システインを吸着させた。
【0036】
カラムに259mlの水を同様に通液して水洗後、順次各々295mlずつの0.5N、1N、および2N NH4OHで同様に溶出した。水で溶出した画分は、77mlフラクション3本と28mlフラクション1本に回収した。0.5N、1N、および2N NH4OHで溶出した画分は、それぞれ77mlフラクション3本と64mlフラクション1本に回収した。全てのフラクションを薄層クロマトグラフィーで分析した結果、1N NH4OHで溶出した1番目と2番目のフラクションにS-(2-ヒドロキシエチル)-L-システインが主として含まれることが分かった。
【0037】
それぞれのフラクションを集めて減圧下で濃縮し、デシケータの中で乾燥させ、S-(2-ヒドロキシエチル)-L-システインの粗精製品を1,150mg得た。粗精製品の一部を5mg/mlになるように溶解し、DevelosilC30-UG5(野村化学社製)の分取用カラムを用いた高速液体クロマトグラフィーで、S-(2-ヒドロキシエチル)-L-システインを分取し、減圧下で濃縮後デシケータ中で乾燥して、精製品を得た。NMRで解析した結果、得られたデータはS-(2-ヒドロキシエチル)-システインと一致した。また、LC-MS解析の結果、分子量は理論値と一致した。

(実施例2)
メルカプト基を有する有機化合物として、2-メルカプトエタノールに代えてエチルメルカプタン、メチルメルカプタン、3-メルカプト-1-プロパノール、メルカプト酢酸、メルカプトベンゼン、2-メルカプトエチルアミン、4-メルカプトフェノール、3-メルカプトプロピオン酸、またはメルカプトコハク酸を各々25mMの最終濃度になるように培地に添加した他は実施例1と同様に実施した結果、表4に示すS位置換L-システイン誘導体が蓄積した。
【0038】
【表4】


【産業上の利用可能性】
【0039】
発酵法によって、S位置換L-システイン誘導体を経済的に有利に生産できる。
【出願人】 【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
【出願日】 平成18年12月8日(2006.12.8)
【代理人】 【識別番号】100086586
【弁理士】
【氏名又は名称】安富 康男

【識別番号】100117112
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 文男


【公開番号】 特開2008−141996(P2008−141996A)
【公開日】 平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願番号】 特願2006−331975(P2006−331975)