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【発明の名称】 固定化酵素反応塔の製造方法
【発明者】 【氏名】斉藤 淳

【氏名】仙田 良孝

【氏名】小松 利照

【要約】 【課題】固定床型反応塔へ固定化酵素を均一に、高嵩密度で充填し、酵素活性を有効に発現させ、脂肪酸類を効率的に製造する。

【解決手段】固定床型反応塔に、固定化酵素を充填する固定化酵素反応塔の製造方法であって、反応塔に油相基質を充液させた後、酵素の単位充填高さ当りの圧力損失が0.04〜1MPa/mとなるように固定化酵素と油相基質の混合スラリーを反応塔へ供給する固定化酵素反応塔の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定床型反応塔に、固定化酵素を充填する固定化酵素反応塔の製造方法であって、反応塔に油相基質を充液させた後、酵素の単位充填高さ当りの圧力損失が0.04〜1MPa/mとなるように固定化酵素と油相基質の混合スラリーを反応塔へ供給する固定化酵素反応塔の製造方法。
【請求項2】
前記固定化酵素と油相基質の混合スラリーを供給する際の通液線速度が7〜100mm/minである請求項1記載の固定化酵素反応塔の製造方法。
【請求項3】
前記固定化酵素と油相基質の混合スラリーを供給する際に、同時に油相基質を反応塔へ供給する請求項1又は2記載の固定化酵素反応塔の製造方法。
【請求項4】
前記固定床型反応塔が、複数の管状構造が形成された内装物又は配管が装填されているものである請求項1〜3いずれか1項に記載の固定化酵素反応塔の製造方法。
【請求項5】
前記固定化酵素が固定化リパーゼであり、前記油相基質が植物油、動物油又はこれらの組み合わせの油脂類である請求項1〜4いずれか1項に記載の固定化酵素反応塔の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか1項に記載の方法により製造された固定化酵素反応塔に、油相基質と水相基質とを供給し、油脂類を加水分解する脂肪酸類の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、固定化酵素反応塔の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、化学プラント等における化学物質の製造においては、各種反応を行う際に触媒が利用されている。たとえば、粒状に形成された触媒を円筒状の反応塔に充填しておき、この反応塔に原料油、反応液、ガスあるいはこれらの混合物を通過させて触媒表面に接触させることにより反応を行う方法が行われている。また、油脂類の加水分解においては、代表的な方法として、酵素を水不溶性の担体へ吸着させた固定化酵素を固定床型反応塔に充填し、これに油脂類と水を通液する方法が知られている。
【0003】
固定化酵素反応塔を用いて反応を行う場合には、反応液の塔内における流れの不均一化や圧力損失増大を抑制するために、固定床型反応塔中の固体触媒又は固定化酵素は、均一な状態に充填されることが望まれる。反応に使用する固体触媒や固定化酵素を固定床型反応塔へ充填する方法としては、作業員が反応塔内又は反応塔外にて手作業により行う方法や、ベルトコンベア等の触媒充填装置による方法が一般的である。また、充填時における触媒の破壊防止を目的として、触媒を、液体と混合してスラリー状態で充填する方法(特許文献1参照)や、反応管内に液状物を充填し、続いて固体触媒を充填した後に該液状物を除去する方法(特許文献2参照)が開示されている。
【特許文献1】特開昭61−35843号公報
【特許文献2】特開平9−141084号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、湿潤状態にある固体触媒や固定化酵素を充填する場合は、ハンドリング性が著しく劣るため、通常行われる方法においては、均一充填が非常に困難となる。また、上述した特許文献の方法では、充填層の十分に高い嵩密度が得られにくく、充填効率が低くなる問題がある。更に、嵩密度が低い充填状態で液体やガスを通過させた場合、充填層の一部が陥没し、充填層内の流れの不均一化や反応効率の低下が生じる問題もあるため、更なる改良が望まれる。
【0005】
従って、本発明の目的は、固定床型反応塔に固定化酵素を充填する固定化酵素反応塔の製造方法において、嵩密度が高い効率的な製造方法を提供することにある。また、充填した反応塔により、酵素活性発現が高く、効率的な脂肪酸類の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は、固定化酵素の充填時の挙動を解析した結果、油を充液させた反応塔内に、所定の圧力下で固定化酵素と油の混合スラリーを供給することにより、固定化酵素が均一で高嵩密度に充填された固定化酵素反応塔が得られ、これにより高い酵素活性が得られることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、固定床型反応塔に、固定化酵素を充填する固定化酵素反応塔の製造方法であって、反応塔に油相基質を充液させた後、酵素の単位充填高さ当りの圧力損失が0.04〜1MPa/mとなるように固定化酵素と油相基質の混合スラリーを反応塔へ供給する固定化酵素反応塔の製造方法を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、当該方法により製造された固定化酵素反応塔に、油相基質と水相基質とを供給し、油脂類を加水分解する脂肪酸類の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、固定床型反応塔へ固定化酵素を均一に充填することができ、更に高嵩密度の充填層が得られることから、酵素活性を有効に発現させ、油脂類から脂肪酸類を効率的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の態様としては、固定化酵素として油脂分解酵素を固定化担体に吸着させたものを用い、油相基質との混合スラリーとして供給することで固定化酵素を固定床型反応塔へ充填する固定化酵素反応塔の製造方法であり、更に、かくして得られた反応塔へ油相基質と水相基質を流通させて、油脂類の加水分解反応により、脂肪酸類を製造する方法であることが好ましい。
【0011】
本発明で用いる固定化酵素は、固定化担体に酵素を吸着等により担持させたものである。固定化担体としては、セライト、ケイソウ土、カオリナイト、シリカゲル、モレキュラーシーブス、多孔質ガラス、活性炭、炭酸カルシウム、セラミックス等の無機担体、セラミックスパウダー、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、キトサン、イオン交換樹脂、疎水吸着樹脂、キレート樹脂、合成吸着樹脂等の有機高分子等が挙げられるが、特に保水力が高い点からイオン交換樹脂が好ましい。また、イオン交換樹脂の中でも、大きな表面積を有することにより酵素の吸着量を高くできるという点から、多孔質であることが好ましい。
【0012】
固定化担体として用いる樹脂の粒子径は100〜1000μmが好ましく、更に250〜750μmが好ましい。細孔径は10〜150nmが好ましく、更に10〜100nmが好ましい。材質としては、フェノールホルムアルデヒド系、ポリスチレン系、アクリルアミド系、ジビニルベンゼン系等が挙げられ、特にフェノールホルムアルデヒド系樹脂(例えば、ダイヤモンドシャムロック社製Duolite A-568)が酵素吸着性向上の点から好ましい。
【0013】
本発明の固定化酵素に使用する酵素は特に限定はされないが、生産性の向上効果が大きい点から、油脂類分解用酵素としてのリパーゼが好ましい。リパーゼは、動物由来、植物由来のものはもとより、微生物由来の市販リパーゼを使用することもできる。微生物由来リパーゼとしては、リゾプス(Rizopus)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ムコール(Mucor)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ジオトリケム(Geotrichum)属、ペニシリウム(Penicillium)属、キャンディダ(Candida)属等の起源のものが挙げられる。
【0014】
酵素の固定化を行う温度は、酵素の特性によって決定することができるが、酵素の失活が起きない0〜60℃、特に5〜40℃が好ましい。また固定化時に使用する酵素溶液のpHは、酵素の変性が起きない範囲であればよく、温度同様酵素の特性によって決定することができるが、pH3〜9が好ましい。このpHを維持するためには緩衝液を使用するが、緩衝液としては、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液等が挙げられる。上記酵素溶液中の酵素濃度は、固定化効率の点から酵素の飽和溶解度以下で、かつ十分な濃度であることが好ましい。また酵素溶液は、必要に応じて不溶部を遠心分離で除去した上澄や、限外濾過等によって精製したものを使用することもできる。また用いる酵素質量はその酵素活性によっても異なるが、担体質量に対して5〜1000質量%、特に10〜500質量%が好ましい。
【0015】
酵素を固定化する場合、担体と酵素を直接吸着してもよいが、高活性を発現するような吸着状態にするため、酵素吸着前に予め担体を脂溶性脂肪酸又はその誘導体で処理することが好ましい。脂溶性脂肪酸又はその誘導体と担体の接触法としては、水又は有機溶剤中にこれらを直接加えてもよいが、分散性を良くするため、有機溶剤に脂溶性脂肪酸又はその誘導体を一旦分散、溶解させた後、水に分散させた担体に加えてもよい。この有機溶剤としては、クロロホルム、ヘキサン、エタノール等が挙げられる。脂溶性脂肪酸又はその誘導体の使用質量は、担体質量に対して1〜500質量%、特に10〜200質量%が好ましい。接触温度は0〜100℃、特に20〜60℃が好ましく、接触時間は5分〜5時間程度が好ましい。この処理を終えた担体は、ろ過して回収するが、乾燥してもよい。乾燥温度は室温〜100℃が好ましく、減圧乾燥を行ってもよい。
【0016】
予め担体を処理する脂溶性脂肪酸又はその誘導体のうち、脂溶性脂肪酸としては、炭素数4〜24、好ましくは炭素数8〜18の飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐鎖の、水酸基を有していてもよい脂肪酸が挙げられる。具体的には、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、リシノール酸、イソステアリン酸等が挙げられる。また前記脂溶性脂肪酸の誘導体としては、これらの脂溶性脂肪酸と一価若しくは多価アルコール又は糖類とのエステル、リン脂質、及びこれらのエステルにエチレンオキサイドを付加したもの等が挙げられる。具体的には、上記脂肪酸のメチルエステル、エチルエステル、モノグリセライド、ジグリセライド、それらのエチレンオキサイド付加体、ポリグリセリンエステル、ソルビタンエステル、ショ糖エステル等が挙げられる。これら脂溶性脂肪酸及びその誘導体はいずれも常温で液状であることが酵素を担体に固定化する工程上好ましい。これら脂溶性脂肪酸又はその誘導体としては、上記2種以上を併用してもよく、菜種脂肪酸、大豆脂肪酸等の天然由来の脂肪酸を用いることもできる。
【0017】
固定化酵素の加水分解活性は20U/g以上、更に100〜10000U/g、特に500〜5000U/gの範囲であることが好ましい。ここで酵素の1Uは、40℃において、油脂類:水=100:25(質量比)の混合液を攪拌混合しながら30分間加水分解をさせたとき、1分間に1μmolの遊離脂肪酸を生成する酵素の分解能を示す。
【0018】
油脂類の単位質量当りに付与した固定化酵素の加水分解活性(U/g−oil)と、ある加水分解率に到達するまでの所要時間は、略反比例の関係にある。固定化酵素を充填した充填層(酵素塔)を用いて加水分解を行う場合、送液条件(通液速度、温度等)により分解速度は異なるが、加水分解所要時間(充填層内の滞留時間)と充填層内に存在する油脂類の重量(g−oil)及び固定化酵素の充填重量(g)から固定化酵素の見かけ活性(発現活性)(U/g)が求められる。
【0019】
本発明に使用する油相基質とは主に油脂類をいうが、油脂類とはトリアシルグリセロールの他、ジアシルグリセロール、モノアシルグリセロール、又は脂肪酸類を含んでいても良く、加水分解の結果得られる脂肪酸を含んでいても良い。油相基質の具体例としては、菜種油、大豆油、ヒマワリ油、パーム油及びアマニ油等の植物油、牛脂、豚脂及び魚油等の動物油等、又はこれらの組み合わせの油脂類が挙げられる。これら油脂類は、脱臭油の他、予め脱臭されていない未脱臭油脂を用いることができるが、これら油脂類の一部又は全部に未脱臭油脂を使用することが、トランス不飽和脂肪酸、共役不飽和脂肪酸を低減し、原料油脂由来の植物ステロール、植物ステロール脂肪酸エステル、トコフェロールを残存させることができる点から好ましい。油相基質中には、前記油脂類の他に脂肪酸等の油溶性成分が混合されていても良い。脂肪酸類とは、加水分解の結果得られる脂肪酸の他、上記グリセリドの1種以上を含むものも指す。
【0020】
本発明に使用する水相基質は水であるが、加水分解の結果得られるグリセリン等、その他の水溶性成分が混合されていても良い。
【0021】
本発明において使用する固定床型反応塔(酵素塔)は、その形状は使用するポンプの押し込み圧に耐えられるものであれば良い。また、酵素塔の周囲にジャケットを設け、酵素塔内に流通する反応液を酵素反応に適した温度に調整できるものであることが好ましい。酵素塔内の温度は、固定化酵素の活性をより有効に引き出すために、0〜60℃、更に20〜40℃とすることが好ましい。酵素塔の長さは、所望の分解率を得るのに必要な長さとすれば良いが、反応性、塔内圧力損失等の点から0.01〜10m、好ましくは0.1〜5mの範囲とすることが好ましい。
【0022】
本発明において、酵素塔として複数の管状構造が形成された内装物又は配管が装填されたものを用いてもよい。ここで複数の管状構造は、一の管の断面が直径100mm以下の円形又は対角線長100mm以下の多角形であるのが好ましい。このような酵素塔を用いた場合、該管状構造内に固定化酵素を充填し、該管状構造内に前記原料混合物を供給して反応を行ってもよい。このような小さな断面積を有する複数の管状構造内で反応を行わせることにより、酵素塔内の流路の断面積が小さくなり、2液相となっている反応液の流れを均一にすることができる。内装物又は配管は、酵素塔内に前記断面積を有する複数の管状構造を形成できればよく、該内装物には、例えば円柱状のもの、角柱状のもの、板状のもの(仕切板)が挙げられる。すなわち、内装物又は配管は、上下方向に装填され、好ましくは柱状に装填される。より具体的には、配管を装填して多管式とする方法、酵素塔内部に上下方向の仕切板(平板、コルゲート板等)を装填する方法、円形や多角形の断面を有する内装物を装填する方法などが挙げられる。このうち、内装物を装填する場合には、内装物の装填効率の観点から、断面の形状は正三角形、正方形、正六角形が好ましい。内装物としては、例えば角パイプを束ねた形態のものが使用できる。
【0023】
配管又は内装物により形成される複数の管状構造の一の管(一流路)の断面の直径又は対角線長は100mm以下であることが好ましいが、反応性向上の観点から、更に75mm以下、更に50mm以下、特に35mm以下とすることが好ましい。
【0024】
酵素塔内における配管又は内装物の長さは、固定化酵素の充填厚み以上であることが、塔内の反応液全体の流れを均一化する点から好ましいが、充填厚みより短くても充填厚みの50%以上、更に75%以上の範囲であれば同様の効果が得られる。
【0025】
また、配管又は内装物は、その全長に渡って切れ目がなくても良いが、充填した固定化酵素の交換し易さ等の作業性の点から、上下方向に複数段に分割されていることが好ましい。段数としては、酵素塔の全長にもよるが、2〜30分割、更に2〜10分割であることが好ましい。また、更に、各段の配管又は内装物は、酵素塔内への装填し易さ等の点から、それぞれ横方向に複数部分に分割されていても良い。
【0026】
本発明において、固定床型反応塔へ固定化酵素を充填する際に、先ず塔内へ油相基質を充液させ、その後、固定化酵素と油相基質の混合スラリーを供給する。混合スラリー中の固定化酵素濃度(混合スラリー中の固定化担体及び酵素の含有量(乾き基準))はハンドリング性及び生産性の観点から、1質量%〜50質量%、更に3質量%〜30質量%が好ましい。
【0027】
混合スラリーを充填する際、反応塔内の酵素充填嵩密度が低いと、反応効率の低下を招き、充分な酵素活性発現効果を期待できないことから、所望の嵩密度を得るために一定以上の圧力を付与することが必要である。一方で、過度の圧力を付与すると、耐圧性の高い酵素充填塔が必要となる他に、固定化酵素が塔内圧力増加により破砕される問題が生じる。以上の観点より、充填物の種類にもよるが、酵素の単位充填高さ当りの圧力損失(塔頂圧力を充填厚みで除した値)は0.04〜1MPa/m、更に0.05〜0.5MPa/mとすることが好ましい。また、前記圧力を得るために、スラリー供給時の通液線速度を7〜100mm/min、更に10〜50mm/minとするのが好ましい。この通液線速度(mm/min)は、1分間当りの送液量(mm3/min)(又は送液速度(10-3mL/min)ともいう)を充填層断面積(mm2)で除した商で表わされる値をいう。
【0028】
充填物の種類にもよるが、反応塔内の充填率は0.4〜0.55が好ましい。この充填率とは、充填嵩密度(kg/m3)を充填粒子の真密度(kg/m3)で除した値で表される。
【0029】
固定床の断面積が大きい場合には、前記通液線速度を得るために、大流量で混合スラリーを供給する必要が生じる。しかしこの方法では、送液するポンプ内部において強い剪断力がかかり、固定化酵素が破砕する恐れがあることから、混合スラリーと同時に油相基質を反応塔へ供給する方法が好ましい。同時に供給する方法としては、混合スラリーと油相基質を、酵素塔へ直結する異なる配管にて行うことが好ましい。これにより、混合スラリーは小流量で供給することで固定化酵素への剪断力付与が低減でき、また油相基質を前記線速度にて供給することで、油相基質を所望の充填率で固定化酵素を充填することができ、酵素活性の高い固定化酵素反応塔を得ることができる。なお、混合スラリーと同時に反応塔へ供給する油相基質の通液線速度は、前記スラリー供給時の通液線速度と同じであることが好ましい。
【0030】
得られた固定化酵素反応塔を用いれば、効率良く酵素反応を行うことができる。得られた固定化酵素反応塔を用いた反応時における反応液の通液線速度は、好ましくは1〜400mm/min、更に5〜200mm/minであるのが好ましい。ここで、反応液は、前記油相基質、すなわち油脂類であるのが好ましい。通液線速度を上げることによる充填塔内圧力の増大に伴ない、通液が困難となり、耐圧性の高い酵素充填塔が必要となる他に、固定化酵素が塔内圧力増加により破砕される場合が生じることもあるため、通液線速度は400mm/min以下とすることが好ましい。また、生産性の点から通液線速度は1mm/min以上とすることが好ましい。固定化酵素の発現活性は、通液線速度により変化するため、最適な通液線速度を選定して反応条件を決定することで、所望の生産能力、製造コストに見合った反応を行うことができる。
【0031】
酵素塔内の反応液の滞留時間は、油脂類の加水分解反応の平衡状態を回避し、固定化酵素の活性をより有効に引き出し、生産性を向上させる点から30秒〜60分、更に1分〜40分とすることが好ましい。滞留時間(min)とは、充填層の厚み(mm)に空隙率を乗じ、これを通液線速度(mm/min)で除した値で表わされる。
【0032】
本発明においては、反応性、生産性等の兼ね合いから、酵素塔を通過した反応液をそのまま反応終了物としても良く、また、一旦油水分離を行った後に新しい水を加えて上記と同様の方法で再度同一の酵素塔へ供給し、所望の反応率が得られるまで繰り返し通過させても良い。また、一旦油水分離を行った後に上記と同様の方法で再度、別の酵素塔へ供給して連続反応を行っても良い。また、複数の酵素塔を用いて油水分離を行いながら、油相を次の酵素塔へ、水相を前の酵素塔へ供給することにより、より分解率の高い油相を新鮮な水相と反応させる擬似向流法で行っても良い。油水分離としては、自然沈降型、遠心分離型等の油水分離器が一般に使用されるが、特に限定されない。
【実施例】
【0033】
〔固定化リパーゼの調製〕
DuoliteA-568(ダイヤモンドシャムロック社製、粒径分布100〜1000μm)1重量部をN/10のNaOH溶液10質量部中で1時間攪拌した。ろ過した後10質量部のイオン交換水で洗浄し500mMの酢酸緩衝液(pH7)10質量部でpHの平衡化を行った。その後50mMの酢酸緩衝液(pH7)10質量部で2時間づつ2回pHの平衡化を行った。この後ろ過を行い担体を回収した後、エタノール5質量部でエタノール置換を30分行った。ろ過した後、リシノール酸を1質量部含むエタノール5質量部を加え30分間、リシノール酸を担体に吸着させた。その後ろ過し、担体を回収し、50mMの酢酸緩衝液(pH7)5質量部で30分づつ4回洗浄し、エタノールを除去し、ろ過して担体を回収した。その後市販のリパーゼ(リパーゼAYアマノ天野製薬(株))1質量部を50mMの酢酸緩衝液(pH7)9質量部に溶解した酵素液と5時間接触させ、固定化を行った。ろ過し固定化酵素を回収して50mMの酢酸緩衝液(pH7)10質量部で洗浄を行い、固定化していない酵素やタンパクを洗浄した。その後実際に分解を行う大豆油を4質量部加え12時間攪拌した。以上の操作はいずれも20℃で行った。その後ろ過して油脂と分離し、固定化酵素とした。2700U/g(乾燥重量)の加水分解活性(発現すべき活性)を示す固定化リパーゼが得られた。固定化酵素の質量基準平均粒子径は451μmであった。
【0034】
<実施例1>
ジャケット付きのステンレス製カラム(内径22mm、高さ1500mm)に菜種油を充液させた後、前記固定化リパーゼ5.0kg(乾燥重量)と菜種油を混合したスラリー充填物(スラリー濃度13重量%,乾燥重量基準)を0.005L/min(カラム内線速度13mm/min)で供給した。結果を表1に示す。
【0035】
<実施例2>
断面が24mm×24mmの正方形(肉厚1.5mm)で、高さ300mmの角パイプを16本束ねた内装物(段数5、合計高さ1500mm)を装填したジャケット付きのステンレス製カラム(内径200mm、高さ1600mm)に菜種油を充液させて後、前記固定化リパーゼ11kg(乾燥重量)と菜種油を混合したスラリー充填物(スラリー濃度5重量%,乾燥重量基準)を1.1L/min(カラム内線速度43mm/min)で供給した。結果を表1に示す。
【0036】
<実施例3>
断面が24mm×24mmの正方形(肉厚1.5mm)で、高さ300mmの角パイプを584本束ねた内装物(段数5、合計高さ1500mm)を装填したジャケット付きのステンレス製カラム(内径685mm、高さ1600mm)に菜種油を充液させて後、前記固定化リパーゼ96kg(乾燥重量)と菜種油を混合したスラリー充填物(スラリー濃度13重量%,乾燥重量基準)を5.7L/minで供給した。スラリーを供給している間中、菜種油をカラムへ5.7L/min(カラム内線速度20mm/min)で供給し続けた。結果を表1に示す。
【0037】
<比較例1>
断面が24mm×24mmの正方形(肉厚1.5mm)で、高さ300mmの角パイプを584本束ねた内装物(段数5、合計高さ1500mm)を装填したジャケット付きのステンレス製カラム(内径685mm、高さ1600mm)に菜種油を充液させて後、前記固定化リパーゼ96kg(乾燥重量)と菜種油を混合したスラリー充填物(スラリー濃度13重量%,乾燥重量基準)を5.7L/min(カラム内線速度4mm/min)で供給した。結果を表1に示す。
【0038】
<実施例4>
実施例3でスラリー充填した固定床反応器を用いて、反応器上部より菜種油と蒸留水を10:6で混合した液を320kg/hで送液し、加水分解反応を行った。その結果、得られた分解油の分解率は88%であった。なお、分解率は、分析により求めた酸価をケン化価で除することにより算出した。また、酸価は、American Oil Chemists. Society Official Method Ca 5a-40により、ケン化価はAmerican Oil Chemists. Society Official Method Cd 3a-94により測定した。
【0039】
<比較例2>
比較例1でスラリー充填した固定床反応器を用いて、実施例4と同様の手順で加水分解反応を行った。その結果、分解率は62%であった。
【0040】
【表1】


【0041】
表1に示した結果から、固定床型反応へ酵素スラリーを供給する際に、一定以上の圧力を充填層へかかるように行うことで充填嵩密度が向上し、効率よく充填できることが明らかとなった。更に、本発明を用いて充填した反応塔で加水分解反応を行うことにより、高い酵素発現活性が得られ、反応効率が向上できることが明らかとなった。
【出願人】 【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
【出願日】 平成18年11月13日(2006.11.13)
【代理人】 【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所

【識別番号】100068700
【弁理士】
【氏名又は名称】有賀 三幸

【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄

【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫

【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹

【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人

【識別番号】100101317
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 ひろみ

【識別番号】100121153
【弁理士】
【氏名又は名称】守屋 嘉高

【識別番号】100134935
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 詩木

【識別番号】100130683
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 政広

【識別番号】100140497
【弁理士】
【氏名又は名称】野中 信宏


【公開番号】 特開2008−118920(P2008−118920A)
【公開日】 平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願番号】 特願2006−306285(P2006−306285)