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顆粒状微生物バイオマスの製造法とそのバイオマスからの貴重化合物の単離法 - 特開2008−54691 | j-tokkyo
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【発明の名称】 顆粒状微生物バイオマスの製造法とそのバイオマスからの貴重化合物の単離法
【発明者】 【氏名】ヘンドリク・ルーイ・ベイル

【氏名】アルベルト・スハープ

【氏名】ヨハネス・マルティヌス・ヤコブス・フィッセル

【要約】 【課題】微生物バイオマスから目的の化合物を単離する方法の提供

【構成】微生物バイオマスから目的の化合物を単離する方法が開示されている。この方法では、微生物バイオマス(必要であれば乾物含量が25〜80%になるよう前処理する)が(例えば押出などによって)顆粒状にされた後、乾物含量が少なくとも80%になるように乾燥される。バイオマスの顆粒への造粒は、その後に行われるそのバイオマスの乾燥をかなり容易にし(これは乾燥顆粒として保存できる)、その化合物の抽出時により高い収量を与える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種類またはそれ以上の化合物を、そのような化合物を産生した微生物を含む微生物バイオマスから単離する方法であって、次の段階を含む方法:
a)25%から80%までの乾物含量を持つバイオマスを用意または入手する;
b)そのバイオマスを25%から80%までの平均乾物含量を持つ顆粒状粒子に造粒する;
c)その顆粒状粒子を乾燥して少なくとも80%の平均乾物含量を持つ乾燥顆粒を得る;
d)(c)で得た乾燥顆粒からその化合物または各化合物を精製、抽出または単離する。
【請求項2】
(b)において造粒がバイオマスの押出によってなされる請求項1または2の方法。
【請求項3】
造粒前にバイオマスが破砕または混練される請求項2の方法。
【請求項4】
(a)のバイオマスが発酵液に対して行われる固/液分離によって得られる先の請求項のいずれかの方法。
【請求項5】
固/液分離が機械的脱水と併用される請求項4の方法。
【請求項6】
(a)において25〜80%の乾物含量を持つバイオマスが、
i)バイオマスへの固形物質の添加、または
ii)バイオマスの脱水
によって得られる先の請求項のいずれかの方法。
【請求項7】
(c)の顆粒状バイオマスを少なくとも80%の乾物含量にする乾燥が流動床もしくはサブ流動床乾燥または真空乾燥によって行われる先の請求項のいずれかの方法。
【請求項8】
バイオマスが菌類を含むまたは菌類に由来する先の請求項のいずれかの方法。
【請求項9】
その菌類がケカビ目(Mucorales)に属する請求項8の方法。
【請求項10】
その菌類がクサレケカビ属(Mortierella)に属する請求項9の方法。
【請求項11】
その菌類がモルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)である請求項8〜10のいずれかの方法。
【請求項12】
バイオマスが藻類を含むまたは藻類に由来する請求項1〜6のいずれかの方法。
【請求項13】
その藻類が渦鞭毛藻類であり、かつ/または、クリプセコジニウム属(Crypthecodinium)に属する請求項12の方法。
【請求項14】
その藻類がクリプセコジニウム・コーニイ(Crypthecodinium cohnii)である請求項12または13の方法。
【請求項15】
その化合物が、脂質に含まれていてもよい多価不飽和脂肪酸(PUFA)である先の請求項の方法。
【請求項16】
その多価不飽和脂肪酸がC18、C20もしくはC22ω−3またはC18、C20もしくはC22ω−6多価不飽和脂肪酸である請求項15の方法。
【請求項17】
その化合物がC20もしくはC22ω−3またはC20もしくはC22ω−6多価不飽和脂肪酸である請求項16の方法。
【請求項18】
その化合物がアラキドン酸(ARA)、エイコサペンタエン酸(EPA)および/またはドコサヘキサエン酸(DHA)である先の請求項のいずれかの方法。
【請求項19】
その菌類がヒゲカビ属(Phycomyces)、ブラケスレア属(Blakeslea)またはコウジカビ属(Aspergillus)に属する請求項8の方法。
【請求項20】
その化合物がカロチノイドまたはHGM−CoAレダクターゼ阻害因子(例:ロバスタチン、プラバスタチンまたはコンパクチン)である請求項1〜13のいずれかまたは請求項19の方法。
【請求項21】
その微生物が酵母である先の請求項のいずれかの方法。
【請求項22】
その化合物がテトラアセチルフィトスフィンゴシン(TAPS)である請求項21の方法。
【請求項23】
その微生物が細菌である先の請求項のいずれかの方法。
【請求項24】
その化合物がビタミンである請求項23の方法。
【請求項25】
バイオマスが酸性化(例えばpH<5への酸性化)の後に発酵液から得られる先の請求項のいずれかの方法。
【請求項26】
酸性化(例えば約2のpHへの酸性化)によって化合物の沈殿が起こる請求項25の方法。
【請求項27】
菌類を含むまたは菌類に由来する微生物押出物。
【請求項28】
その菌類がクサレケカビ属(Mortierella)に属する請求項27の押出物。
【請求項29】
バイオマスの顆粒状粒子を含む組成物であって、その粒子が少なくとも30%でしかも70%未満の平均乾物含量を持ちかつバイオマスを顆粒化することによって得られたもの。
【請求項30】
乾燥顆粒を含む組成物であって、その顆粒が微生物バイオマスに由来し、乾燥され、少なくとも80%の平均乾物含量を持つもの。
【請求項31】
その顆粒状粒子または乾燥顆粒が押出によって形成される請求項30または31の組成物。
【請求項32】
そのバイオマスが菌類を含む請求項29〜30のいずれかの組成物。
【請求項33】
その顆粒状粒子が0.3〜10mmの直径を持ち、その長さが平均でその顆粒の直径の2〜6倍である請求項29〜32のいずれかの組成物。
【請求項34】
食品組成物、栄養補助品、化粧用および/または医薬用組成物を製造するための、請求項1〜26のいずれかの方法によって単離、抽出または精製された化合物の使用。
【請求項35】
その食品組成物が乳児用調製粉乳を含む請求項34の使用。
【請求項36】
バイオマスの顆粒から1種類またはそれ以上の化合物を単離する方法であって、次の段階を含む方法:
a)少なくとも80%の乾物含量を持つ乾燥顆粒であって、そのような化合物を産生した微生物を含む微生物バイオマスから得られたものを用意する;
b)その乾燥顆粒から溶媒抽出によってその化合物または各化合物を抽出もしくは単離する。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は微生物バイオマス(一般に発酵によって生じる微生物含有産物)の処理法であって、生成したバイオマスからの有用または貴重化合物の単離が改善されうる方法に関する。この方法は、化合物の回収前にバイオマスを(例えば押出によって)顆粒状にすることを伴いうる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
このところ微生物は多種多様な産物の貴重な供給源として知られている。これらの微生物産物のいくつかはその微生物細胞の内部に存在し、あるいはその微生物細胞と結合している。このような産物を比較的純粋な形で回収するには、その産物を微生物バイオマスから分離する必要がある。例えば、微生物バイオマスから親油性化合物を単離するには、通常、有機溶媒や超臨界流体(例えば液体CO2)による抽出(浸出)処置が行われる。
【0003】
バイオマスは発酵によって生じ、生成物の抽出に使用することができる。通常これは湿った細胞塊であるが、様々な前処理によってかなりの細胞破壊が起こる。細胞破壊は物理的処理(例:噴霧乾燥や凍結乾燥などの乾燥)および/または機械的破砕(均質化や粉砕などによるもの)、化学的処理(酸またはアルカリ)または酵素的処理によって起こりうる。バイオマスの乾燥は溶媒の量を減らすために望ましく、また親油性化合物を抽出する場合は、面倒なエマルジョンを防ぐためにも望ましい。
【0004】
抽出準備が整ったバイオマスを得るには、通常、噴霧乾燥が使用される。噴霧乾燥機による乾燥には、次の条件が必要である:乾燥機に投入するには、バイオマスが(濃縮された)液体であるか、(ディスクまたはノズルによる噴霧が可能なように)小さな粒子を持つスラリーであるべきである。これは、微生物バイオマスに関して、スラリーの最大乾物含量が約20〜30%に制限され、次の乾燥段階で90〜95%の乾物含量にするには比較的費用がかかってしまうということを意味する。
【0005】
噴霧乾燥工程は時間的には比較的短いが、製品温度はほとんどの場合(比較的)高い。これは高度な酸化とそれに伴って酸化感受性化合物が分解する危険があることを意味する。大量の細胞内脂質物質を含むバイオマスの場合、高温におけるバイオマスからの脂質の「滲出(sweating)」ゆえに、乾燥が困難なこともある。その場合は、乾燥機の汚損が起こるだろう。
【0006】
噴霧乾燥のもう1つの欠点は、これが、目的化合物を単離するためにそれ以降に使用できる抽出工程のタイプをかなり制限するということである。例えば噴霧乾燥されたバイオマスなどの細粉品にパーコレーション抽出法を適用することは通常、不可能である。粉砕などによる微生物バイオマスの機械的破壊にも、大量の微粉(または粉塵)が生じるという同じ欠点がある。
【0007】
英国特許GB 1 466 853号(特許文献1)は、噴霧乾燥酵母粉末から油を単離するための方法に関する。酵母粉末は調理器具中、80℃の蒸気で濡らされ、加熱される。次にその湿った粉末はペレット製造機に供給され、ペレットに変換され、フレーク化され、水分を5〜10重量%に減らすために再び乾燥される。次に、得られたフレークはふるいにかけられ、それはペレット製造機に再利用された。この物質はパーコレーション抽出に適していた。しかしこの方法は、いったん噴霧乾燥した粉末を再水和し、高温で処理し、次に再乾燥する必要があるという点で不利である。熱および/または酸化感受性化合物の場合、このような有害な処理段階は分解を招き、したがって収量が低くなる。
【0008】
国際特許出願WO−A−94/25644号パンフレット(US 5,539,133に相当)(特許文献2)は、大型藻類および/または微小藻類(海藻の一種)から多価不飽和脂肪酸(PUFA)の含量が高い脂質を単離する方法(その際、その大型藻類はアルギナート抽出やカラギーナン抽出の残渣であってもよい)に言及している。藻類から得られる物質は50mm未満の粒子サイズと50%を超える乾物含量を持つ。指示された値よりも大きい粒子サイズおよび/または低い乾物含量を持つ藻類物質の場合は、その物質を粉砕および/または乾燥によって前処理する必要がある。しかし、上述のように粉砕は効率のよい抽出と精製工程には不利である。
【0009】
DD−A−150627号(特許文献3)は、乾燥した後、大きな顆粒(8〜12mm,外観は球状)にされる酵母(または細菌)含有バイオマスの製造に言及している。これらは20%の水分含量を持ち、次いで粉砕される。微生物の炭素源として使用された不要なディーゼル(または炭化水素)を回収するために、石油エーテルによる抽出が行われる。残った残渣は動物飼料として使用される。
【0010】
DE−A−1923529号(特許文献4)は、蒸発操作を施した後、流動床での乾燥によって造粒されるバイオマスに言及している。次にこれらは粉砕もしくは破砕される。次に(汚染物質としての)残油が抽出される。先の文書と同じく、抽出される物質は不純物であって、そのバイオマスに含まれる微生物によって産生されるものではない。
【0011】
EP−A−0322227号(特許文献5)は、微生物にゴマ油を供給することによってアラキドン酸(ARA)とγ−リノール酸(GLA)を生産する方法に言及している。
【0012】
米国特許第5,340,594号(特許文献6)は、菌類からの高度不飽和脂肪酸の生産法に言及している。このバイオマスはトウモロコシ粉と混合して、得られた製品を動物飼料として使用することができる。
【0013】
WO−A−92/12711号パンフレット(特許文献7)は、微生物油の混合物、とくに乳児用調製粉乳の添加物として利用されるものに言及している。そのバイオマスは、濾過器で濾過および圧搾して濾過ケーキにした後、凍結乾燥される。
【0014】
本発明は、先行技術に存在する問題点の一部または全部を解決しうる、バイオマスからの目的化合物の抽出法を提供しようとするものである。
【特許文献1】英国特許GB 1 466 853号
【特許文献2】国際特許出願WO−A−94/25644号パンフレット
【特許文献3】DD−A−150627号
【特許文献4】DE−A−1923529号
【特許文献5】EP−A−0322227号
【特許文献6】米国特許第5,340,594号
【特許文献7】WO−A−92/12711号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
微生物バイオマス(一般に発酵によって生じる微生物含有産物)の処理法であって、生成したバイオマスからの有用または貴重化合物の単離が改善されうる方法の提供。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第一の側面によれば、1種類またはそれ以上の化合物を、それら化合物の1つを産生した微生物を含む微生物バイオマスから単離する方法であって、次の段階を含む方法が提供される:
a) 25%から80%までの乾物含量を持つバイオマスを用意または入手する;
b) そのバイオマスを25%から80%までの平均乾物含量を持つ顆粒状粒子に造粒する;
c) その顆粒状粒子を乾燥して、少なくとも80%の平均乾物含量を持つ乾燥顆粒を生産する;
d) (c)で得た乾燥顆粒からその化合物または各化合物を精製、抽出または単離する。
【0017】
本発明の第二の側面によれば、バイオマスの顆粒状粒子を含む組成物であって、その粒子が少なくとも30%でしかも70%未満の平均乾物含量を持ち、かつ、バイオマスを顆粒状にすることによって得られたものである組成物が提供される。このような顆粒は、第一の側面の方法を用いて、その造粒段階(b)から得ることができる。
【0018】
本発明の第三の側面によれば、乾燥顆粒を含む組成物であって、その顆粒が微生物バイオマスに由来し、少なくとも80%の(平均)乾物含量を持つものが提供される。これらの顆粒は、第一の側面の方法を用いて、その乾燥段階(c)後に得ることができる。このような組成物は、バイオマスのとりわけ安定な形態であることがわかった。これは(たとえば室温で)何年間もではないとしても、何週間もの間、分解またはその特性の変化をほとんどまたは全く伴わずに保存することができる。これは、それが含有する化合物もまた、安定に保存(もしくは輸送)されうることを意味する。さらに、これは室温で保存することができるので、先行技術のバイオマス材料のように凍結したり、とりわけ低温に保存する必要がなくなる。このような安定性は、貯蔵条件がかなり安価なものになるので、明らかに有利である。
【0019】
本発明の第四の側面は、バイオマスの顆粒から1種類またはそれ以上の化合物を単離する方法であって、次の段階を含む方法に関する:
a) 少なくとも80%の乾物含量を持つ乾燥顆粒を用意する。ただしその顆粒は上記化合物を産生した微生物を含む微生物バイオマスから得られたものである;
b) その乾燥顆粒から溶媒抽出によってその化合物または各化合物を抽出もしくは単離する。
【発明の効果】
【0020】
微生物バイオマス(一般に発酵によって生じる微生物含有産物)の処理法であって、生成したバイオマスからの有用または貴重化合物の単離が改善されうる方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
発明の説明
本発明の第一の側面によれば、1種類またはそれ以上の化合物を、それら化合物の1つを産生した微生物を含む微生物バイオマスから単離する方法であって、次の段階を含む方法が提供される:
a) 25%から80%までの乾物含量を持つバイオマスを用意または入手する;
b) そのバイオマスを25%から80%までの平均乾物含量を持つ顆粒状粒子に造粒する;
c) その顆粒状粒子を乾燥して、少なくとも80%の平均乾物含量を持つ乾燥顆粒を生産する;
d) (c)で得た乾燥顆粒からその化合物または各化合物を精製、抽出または単離する。
【0022】
驚くべきことに、バイオマスの乾燥顆粒を使用することにより、予想以上に高い単離すべき化合物の収量を達成できることがわかった。これは、その顆粒の構造が抽出に使用される溶媒の接触を最大限にしうるからだと思われる。もちろん、粒子が大きすぎると表面積が低下し、それに相応して収量が低下するだろう。しかし粒子は小さすぎてもいけない。さもなければ、それらは抽出中に使用するフィルターを詰まらせるだろう。そのため本発明の方法は、摩砕、フレーク化または粉砕する処置もしくは段階を含まない。
【0023】
様々な段階における水分含量も収量に影響を及ぼしうる。乾物含量が高すぎるとバイオマスが砕け、濾過抽出法を使用する場合に不都合な微粉または粉塵を形成しうる。しかし水分含量が高すぎると、湿り過ぎていて顆粒にできないスラリーが得られる。
【0024】
物質を顆粒状にする工程は当技術分野ではよく知られている。しかし、それらはどこかの段階で摩砕またはフレーク化と組み合わされることが多く、それらには上述のような不都合がある。本発明では、化合物の抽出に使用されるのは乾燥顆粒であって、粉砕型やフレーク型ではない。また造粒により、バイオマス中の細胞に与える損傷を最小限に抑えることができ、これもまた化合物の収量の増加を助長しうる。US 5,340,594には、バイオマスの押出が開示されているが、そこでは押出成形品が動物飼料として使用されており、顆粒材がその顆粒材から特定化合物を抽出する際に高い収量を与えるだろうということは認識されていない。
【0025】
バイオマスを顆粒状粒子に加工することにより、乾燥工程を援助することができる。バイオマスを顆粒型に加工しておくと、乾燥がかなり容易になり、効率も向上しうる。
【0026】
また、乾燥顆粒は(とくに周囲温度または室温で)とりわけ安定であることもわかった。バイオマスはこの形態で、分解することなく、かなり長期間保存して置くことができる。理論に制約されることは望まないが、これは、化合物が顆粒の内部にあるので、ある種の化合物にとって酸化による分解の原因となりうる環境から少なくとも部分的には保護されるためだと思われる。
【0027】
本発明の第二の側面によれば、バイオマスの顆粒状粒子を含む組成物であって、その粒子が少なくとも30%でしかも70%未満の平均乾物含量を持ち、かつ、バイオマスを顆粒状にすることによって得られたものである組成物が提供される。このような顆粒は、第一の側面の方法を用いて、その造粒段階(b)から得ることができる。
【0028】
本発明の第三の側面によれば、乾燥顆粒を含む組成物であって、その顆粒が微生物バイオマスに由来し、少なくとも80%の(平均)乾物含量を持つものが提供される。これらの顆粒は、第一の側面の方法を用いて、その乾燥段階(c)後に得ることができる。このような組成物は、バイオマスのとりわけ安定な形態であることがわかった。これは(たとえば室温で)何年間もではないとしても、何週間もの間、分解またはその特性の変化をほとんどまたは全く伴わずに保存することができる。これは、それが含有する化合物もまた、安定に保存(もしくは輸送)されうることを意味する。さらに、これは室温で保存することができるので、先行技術のバイオマス材料のように凍結したり、とりわけ低温に保存する必要がなくなる。このような安定性は、貯蔵条件がかなり安価なものになるので、明らかに有利である。
【0029】
好ましいバイオマス造粒法は押出による方法である。これは細胞の破壊を最小限に抑えることができる。バイオマスの安定性は、細胞の破壊が最小限であると向上することがわかった。言い換えると、無傷のままの細胞の数が最適となるように本発明の方法を適応させることができる。これは、化合物を単離するために細胞が破壊される数多くの先行技術の押出とは対照的である。
【0030】
本発明の第四の側面は、バイオマスの顆粒から1種類またはそれ以上の化合物を単離する方法であって、次の段階を含む方法に関する:
a) 少なくとも80%の乾物含量を持つ乾燥顆粒を用意する。ただしその顆粒は上記化合物を産生した微生物を含む微生物バイオマスから得られたものである;
b) その乾燥顆粒から溶媒抽出によってその化合物または各化合物を抽出もしくは単離する。
【0031】
好ましい抽出法では、その化合物が適当に溶解する溶媒が使用される。好ましい抽出法はパーコレーションの使用である。この場合、溶媒は顆粒のベッドを通過することができる。この方法の場合、粒子が小さすぎてはならない(例えば粒子を摩砕または粉砕すべきでない)ことは理解されるだろう。そうでなければ「粉塵」(または微粉)が多くなり過ぎて、それらがフィルターを詰まらせることになる。大きい粒子も避けるべきであるが、これら両極端の間で、好ましくは顆粒がフィルターの細孔よりも大きくなるように最適な表面積を得ることができる。粒子は好ましくは、抽出すべき化合物に溶媒が容易に接触できるように高い多孔性を持つ。
【0032】
本発明では、顆粒状粒子を作るための微生物バイオマスケーキの前処理により、以降の乾燥工程が有意に改善されうる。これによって得られる乾燥顆粒状バイオマスは、浸漬またはパーコレーション抽出にとりわけ適しうる。粒子サイズは、最適な乾燥および抽出条件に合わせて個別に調節することができる。本発明に従って前処理されたバイオマスを使用することにより、抽出に先立って細胞を破壊する必要なく、目的の化合物が有利に抽出される。
【0033】
本発明の方法は、ほとんどどのタイプの微生物からでも、顆粒状粒子または乾燥顆粒の調製に使用することができる。微生物は菌類やある種の細菌のように糸状型であってもよいし、酵母、藻類および細菌のように単細胞型であってもよい。したがってバイオマスには、酵母、菌類、細菌または藻類である微生物が含まれうる。好ましい菌類はケカビ目(Mucorales)のものである。例えば菌類は、クサレケカビ属(Mortierella)、ヒゲカビ属(Phycomyces)、ブラケスレア属(Blakeslea)またはコウジカビ属(Aspergillus)のものであってもよい。好ましい菌類はモルティエレラ・アルピナ種(Mortierella alpina)、ブラケスレア・トリスポラ種(Blakeslea trispora)およびアスペルギルス・テレウス種(Aspergillus terreus)のものである。
【0034】
酵母に関する限りは、ピチア・シフェリイ種(Pichia ciferrii)などのピチア属(Pichia)のものが好ましい。
【0035】
細菌はプロピオン酸菌属(Propionibacterium)のものであってもよい。
【0036】
バイオマスが藻類を含む場合、それは渦鞭毛藻類であり、かつ/または、クリプセコジニウム属(Crypthecodinium)に属することが好ましい。好ましい藻類はクリプセコジニウム・コーニイ種(Crypthecodinium cohnii)のものである。
【0037】
本発明に従って調製された微生物バイオマスから単離すべき化合物は、細胞内にあってもよいし、細胞膜または細胞壁と結合していてもよく、細胞外に産生されてもよい(その後、水に不溶性になってもよい)。
【0038】
単離されるべき化合物は親水性であっても、疎水性(例えば親油性)であってもよい。そのような化合物の例は、細胞内タンパク質または酵素、脂質、ビタミン類(例えばビタミンB12)、マクロライド系抗生物質またはポリエン系抗生物質のような二次代謝産物、着香性物質またはカロチノイドである。微生物バイオマスから単離されるべき化合物は、好ましくは親油性化合物である。
【0039】
本発明に従って処理されるバイオマスから抽出される化合物は高い品質を持ちうる。というのは、その処理工程には温和な条件が使用されるので、それらは(たとえあったとしても)ほんのわずかな変質しかしないからである。したがって本発明は、熱および/または酸化感受性化合物をそこから単離する必要がある微生物バイオマスの製造にとりわけ適している。
【0040】
本発明は、多価不飽和脂肪酸(PUFA)を含有する脂質などの高い不飽和度を持つ化合物を単離するための微生物バイオマスの製造に適している。そのPUFAは、好ましくはC18、C20またはC22ω−3またはω−6多価不飽和脂肪酸である。例えばその化合物は、ドコサヘキサエン酸(DHA)(渦鞭毛藻類クリプセコジニウムや菌類ヤブレツボカビ(Thraustochytrium)などの藻類または菌類から単離)、γ−リノレン酸(GLA)、ジホモ−γ−リノレン酸またはアラキドン酸(ARA)(クサレケカビ(Mortierella)、フハイカビ(Pythium)またはハエカビ(Entomophthora)などの菌類から単離)、またはエイコサペンタエン酸(EPA)(チノリモ(Porphyridium)やササノハケイソウ/ハリケイソウ(Nitzschia)などの藻類から単離)でありうる。これらのPUFAはそれだけを単離することもできるし、より一般的には脂質の形で単離することができる。
【0041】
本発明に従って単離することができる化合物のさらなる例には、例えばケカビ目(Mucorales)の菌類属(例:ヒゲカビ属(Phycomyces)、ブラケスレア属(Blakeslea))から単離されるようなβ−カロチン、酵母ファフィア・ロドチマ(Phaffia rhodozyma)から単離されるアスタキサンチン、酵母ピチア・シフェリイ(Pichia cifferrii)から単離されるテトラアセチルフィトスフィンゴシン(TAPS)および/またはプロピオン酸菌から単離されるビタミンB12がある。
【0042】
抽出されうる他の化合物には、ロバスタチン、シクロスポリンおよびライドロマイシン(laidlomycin)などの親油性/無極性化合物がある。これらのうち最初の2つは、細胞外に産生されるか、細胞壁に結合する。したがって好適な溶媒には、ヘプタン、ヘキサン、アセトン、メタノールおよびトルエン、およびエタノールがある。しかし後者の2化合物については、シクロスポリンにはイソプロピルアルコールまたは酢酸ブチルを、ライドロマイシンにはエタノールまたはメタノールを使用することができる。一般的に言って、ヘキサンは、ストレプトミセス(Streptomyces)属の生物が産生するような無極性抗生物質に適している。
【0043】
その他の化合物には、多くの抗生物質を含むポリケチドやポリケチド由来の代謝産物がある。好ましいポリケチドは窒素を含有しないものであって、好ましくは少なくとも1つの6員環を含有する芳香族であってもよい。好ましいポリケチドは、ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチンおよびコンパクチン(compactin)を含むスタチン類(statins)である。その他の好ましい化合物はHMG−CoAレダクターゼ阻害因子類である。これらは血中コレステロールレベルを減少させることができる。
【0044】
抽出されうるもう1つの化合物群として、エルゴステロールなどのステロイド類がある。これらは酵母とカビによって産生される。
【0045】
本発明の方法は、多価不飽和脂肪酸(PUFA)含有脂質および/またはカロチノイドなどの親油性化合物の単離にとりわけ適している。
【0046】
本発明の方法に従って単離される化合物は、人間または動物の食品(例:乳児用調製粉乳)または他の食用組成物、および化粧品、健康管理用の組成物または補給品、または医薬組成物での使用に適している。
【0047】
本発明の方法では、後に行なう化合物の抽出に十分な量のバイオマスを得るために、まず選択した微生物を発酵させる。発酵条件は使用する生物に依存し、得られるバイオマス中の化合物の含量が高くなるように最適化することができる。
【0048】
好適な発酵条件は、比較例26に記載する。
【0049】
この発酵工程が終了した後、単離しようとする化合物のタイプに応じて、産生生物を殺し、望ましくない酵素を失活させるために、その発酵液を低温殺菌することができる。所望であれば、濾過性を向上させるために、凝集剤および/またはその他の処理助剤を培養液に加えてもよい。
【0050】
好適な凝集剤には、CaCl2、Al2(SO43および極性陽イオンポリアミド類がある。これらは0.1〜2重量%の濃度で存在しうる。
【0051】
好ましくはバイオマス(または培養液)を低温殺菌する。衛生的に処理できるスラリーを得るには、発酵後に低温殺菌が必要かもしれない。発酵槽内でのバイオマスの低温殺菌はいくつかの利点を持ちうる。第一に、産生生物が環境にさらされることがない。また、目的化合物の品質に影響を与える有害な酵素活性が不活化されうる。
【0052】
産生生物の種に依存して、低温殺菌は60〜100℃の温度で行なわれる。低温殺菌は、発酵槽内への蒸気で(直接)加熱するか、熱交換器により、壁を通してまたは冷却コイルを使って、あるいは既知のプレート熱交換器などの外部熱交換器もしくはその他の適当な熱交換器によって、媒体を用いて(間接的に)加熱することにより達成できる。
【0053】
クサレケカビ属(Mortierella)の生物についてはとくに、次に挙げる好ましい低温殺菌条件を使用することができる。
【0054】
微生物を殺し、酵素活性を失活させるために、発酵液(またはバイオマス)を低温殺菌する。これは主発酵槽の接種の約144時間後に行なうことができる。バイオマス(または培養液)は50〜95℃、好ましくは60〜75℃、最適には63〜68℃で、好適に低温殺菌される。これは30〜90分間、好ましくは50〜75分間、最適には55〜65分間行なうことができる。これは任意の好適な加熱手段で行なうことができるが、好ましくは主発酵槽中などに直接蒸気を注入することによって行なわれる。
【0055】
低温殺菌の後、培養液を放冷するか、冷却する。これは好ましくは約25℃まで、約4時間を要しうる。
【0056】
異なるバイオマスまたは発酵液に由来する2種類以上の生物が含まれる場合は、各バイオマス(または培養液)を個別に低温殺菌するか、それらを混合してから低温殺菌することができる。しかし、異なる生物に異なる低温殺菌条件を使用できるので、前者が好ましい。
【0057】
通常、低温殺菌は、発酵が起こった発酵槽中で行われるだろう。しかしいくつかの生物(細菌など)については、微生物をまず発酵槽から取り出してから(例えば凝集造粒工程で噴霧乾燥する前に)低温殺菌することが、しばしば好ましい。
【0058】
一般的に言って低温殺菌は有利である。なぜなら、それは微生物を殺しうるばかりでなく、さらに重要なことに、化合物に有害な影響を及ぼしうる1種類またはそれ以上の酵素を失活させうるからである。例えば低温殺菌は種々のリパーゼを失活させうる。これらは脂肪酸をトリグリセリド骨格から切り離しうる。これは高いトリグリセリド含量が好ましいPUFAには不都合である。
【0059】
低温殺菌が通常、微生物の(全部ではないとしても)ほとんどを殺すことは、既に認識されている通りである。したがって乾燥顆粒では、微生物の少なくとも95%(例えば99%ではないとしても、少なくとも98%)が殺されている(すなわち生きていない)。
【0060】
いくつかの生物(例:ピチア(Pichia))については、低温殺菌を行なわないことが好ましい。
【0061】
低温殺菌されたバイオマスがその後の処理段階で再び汚染されるのを防止するため、増殖の危険が減少するように条件を設定することができる。一つの選択肢は、適当な酸で培養液を酸性化することである。多くの微生物種の増殖を防止するには、3〜4のpH域と低い処理温度の併用で十分である。
【0062】
アルコール類やソルビン酸塩などのようなその他の生物発育阻止剤も、この目的に使用できる。
【0063】
熱的に安定な生成物については、より高い温度(60〜100℃)での処理を適用できる。
【0064】
好ましい酸性化条件(例えばクサレケカビ属(Mortierella)の生物の場合)は次の通りである。
【0065】
微生物学的な安定性を向上させるために、低温殺菌した培養液のpHを2〜5、好ましくは3〜4のpH、最適には約3.5のpHに調節する。
【0066】
(低温殺菌の前または後の)培養液の酸性化は、さらなる利点を持ちうる。その化合物がポリケチド(例えばスタチン)である場合、酸性化はその化合物の沈殿をもたらしうる。多くの化合物、特に水溶性の化合物については、水を除去するために培養液を濾過する際にその化合物が失われないように、さらなる処理段階の前に沈殿させることが望ましい。したがって低温殺菌の前または後に、酸性化など(ただし当業者に知られている他の任意の手段を使用することができる)によって化合物を沈殿させることができる。
【0067】
pHは85%リン酸、好ましくは55%希リン酸、最適には33%希リン酸などの任意の適当な手段で調節することができる。
【0068】
この段階で、低温殺菌されていてもよい培養液が得られる。次の段階では、微生物を周囲の媒質から分離することによってバイオマスを得る。
【0069】
発酵液からバイオマスを分離するには、固液分離技術を実行することができる。その(収集された)バイオマスは、通常、微生物のタイプに依存して20%から35%までの範囲の乾物含量を持つ。しかし押出(とその後の乾燥)には、25%から80%までの範囲の乾物含量を持つべきである。
【0070】
バイオマスの水分含量が(例えば押出および/またはその後の乾燥にとって)高すぎる場合は、それを脱水し、かつ/または、その乾物含量を増大させることができる。これはいくつかの方法で達成できる。第一に、バイオマスを(さらなる)脱水処置にかけることができる。当業者に知られている任意の脱水法を使用でき、望ましい乾物含量は25または30%から80%まででありうる。
【0071】
好ましくは機械的脱水法を使用する。しかし、機械的脱水によって到達されうる最大乾物含量は、微生物のタイプに依存して変動するだろう。ある種の微生物(例えば酵母)については、機械的脱水後のバイオマスの乾物含量は35〜40%のレベルを超えないだろうが、同じ処置をある種の高脂質微生物のバイオマスに施すと、45〜60%のより高い乾物含量になりうる。
【0072】
好ましい方法は、固液分離を機械的脱水と併用することができ所望の乾物含量を得るのにとりわけ適している膜フィルタープレス(膜の圧搾を伴うろ板/枠型フィルタープレス(plate and frame filter press))の使用である。
【0073】
別法として、もしくは上記の方法に加えて、増粘(または乾燥)剤の添加によって、微生物バイオマスの望ましい乾物含量を増大させることもできる。これらの増粘剤は適度に乾燥しており、好ましくは抽出工程および/または化合物の特性に有害な干渉をしない。例えば増粘剤は、デンプンおよび/またはオート麦や小麦のふすまやセルロースなどといった植物繊維を含みうる。(より低い水分含量を持つ)もう1つのバイオマスを使用することもできる。このような物質は、それが押出性を改善するのであれば、どのように添加されてもよい。
【0074】
例えば固液分離および/または機械的脱水の後などに、バイオマスは大きなケーキを形成する場合がある。これは造粒(例えば押出)には適さないだろう。バイオマスを造粒(例えば押出機の効率のよい給送)が可能なサイズまで小さくするには、バイオマスを適当に破砕、混練および/または混合する。この破砕および/または混練は、高剪断混合機での(短い)処理によって達成できる。任意に、増粘剤をこの工程で加えてもよい。
【0075】
(破砕または混練されていてもよい)バイオマスは、引き続いて顆粒状粒子を形成させるための造粒工程にかけることができる。造粒はいくつかの異なる方法で達成することができる。
【0076】
水分含量を低下(または乾物含量を増大)させるもう1つの方法は、バイオマスの、または(好ましくは)培養液からのバイオマスの分離後に、洗浄濾過などによる塩(例えばブライン)洗浄を使用することである。
【0077】
本発明の好ましい態様では、望ましい粒子構造と粒子サイズが押出工程によって得られる。乾燥および/または抽出工程を最適化するには、構造やサイズなどといった粒子の特徴が重要でありうる。乾燥段階では、粒子が小さすぎると、それらは粉塵や微粉を生成しうるので問題となりうる。一方、大きすぎる粒子は流動化せず、乾燥性能を低下させうる。抽出段階では、顆粒サイズが小さすぎると、バイオマスベッドでの圧力低下が大きくなりすぎるだろうから、パーコレーション法の使用が不可能になりうる。微粉が多すぎると、以降の精製段階で問題が生じうる。大きすぎるサイズは抽出中の溶媒の効率のよい浸透を妨げうる。また、乾燥および抽出中の崩壊を防ぐためには、粒子構造が十分に緻密であるべきだが、粒子(乾燥顆粒)は、抽出中に溶媒の(効率のよい)浸透を許す多孔性を持つことが好ましい。
【0078】
当業者は、望ましい構造とサイズを持つ顆粒状(バイオマス)粒子が得られるように、押出条件を調節することができる。
【0079】
押出条件は、細胞破壊が最小限となるように調節することができる。最小限の細胞破壊により、不安定な酸化感受性化合物の酸化誘発性分解からの最適な保護を保証することができる。したがって押出は、どの加熱手段も伴わずに、より低温で行なわれることが好ましい。これは好ましくは20〜30℃の範囲(例えば、ほぼ室温)である。押出工程では、顆粒状粒子が自然に生成する場合、すなわち「押出物」が重力の影響によって自重でダイプレートからはなれ落ちることによって粒子を形成する場合がある。しかしバイオマスがダイプレートによって押し出された後、スパゲッティのように長い鎖状になる性質を持つ場合は、そのスパゲッティ状のものを切断して望ましいサイズの粒子にすることができる。
【0080】
バイオマスの温度は、押出時に生産される顆粒状粒子の性質に影響を与えることがわかった。バイオマスは押出前に好ましくは6〜15℃の温度を持つ。しかし押出機内にある時は、バイオマスの温度が(15〜30℃であることが好ましいのではあるが)10〜60℃に上昇しうる。この温度上昇はバイオマスにかけられる圧力とその乾物含量に依存するだろう。
【0081】
押出工程では、バイオマスは通常、しばしばスクリューにより、バレルを通してダイプレートに向かって押しやられる。このバレルは好ましくは加熱されない。実際には、これを冷却した方が有利である。冷却剤(例:水などの水性液)の温度は1〜4℃(例えば約2℃)が適当である。
【0082】
一般的に言って押出は水分含量を変化させない。(b)段階での乾物含量が(a)段階と同じであるのは、この理由による。しかし、他の造粒法(例えば後述する方法)が水分含量を変化させ、それを減少させうる(言い換えれば、乾物含量を増大させうる)ことは理解されるだろう。例えばケカビ目(Mucorales)の菌類(特にPUFAを産生するもの)を含有するバイオマスの場合、(a)でのバイオマスの乾物含量(これは通常、造粒(この場合は押出)によって生産された顆粒状粒子と同じである)は、35%と60%の間が適当であり、50〜60%が好ましい。乾燥後は、乾燥顆粒が好ましくは少なくとも90%(例えば少なくとも95%)の乾物含量を持つ。
【0083】
好ましい造粒法は押出機を使用することである。押出機の優れた概説には、W. Pietschによるもの(「Size Enlargement by Agglomeration(凝集によるサイズ拡大)」Wiley & Sons社, 1991, 385頁)がある。その機械はバッチ式押出機でも連続押出機でもよい。連続押出機については、簡単な一軸スクリュー押出機(軸方向輸送型および半径方向輸送型)を挙げることができる。同時回転型または逆回転型の二軸スクリュー押出機もある。押し出されるべきバイオマスは、多孔板(ダイプレート)を通して輸送され、いくぶんか圧縮、圧迫される。押出機のもう1つのグループには、ペレット製造機がある。この場合は、円柱状の圧迫具が多孔板上に蓄積された材料の層上を回転する。
【0084】
顆粒が押出によって得られる場合は、バイオマスが押出可能な形態にあることが必要である。水分含量は、バイオマスの状態、使用する微生物および押出条件に応じて、必要であれば調節することができる。水を除去することもできるし、例えばデンプンなどの固体を添加することによって乾物含量を増大させることもできる。この方法でバイオマスを適正な稠度(通常はペーストの稠度)に調節することができる。
【0085】
顆粒は化合物の抽出に使用することもできるが、これを保存が可能な安定型のバイオマスとみることもできる。顆粒はその他の用途も持ちうる。例えばバイオマスが1種類またはそれ以上の多価不飽和脂肪酸(PUFA)を含有する場合、その顆粒を乳児用調製粉乳の製造に使用することができる。
【0086】
本発明では、(顆粒状)粒子の形成を可能にするその他の造粒法も考えられる。例えば、多段乾燥法には噴霧乾燥と流動床の組み合せを含めることができ、この方法はやはり顆粒状粒子をもたらすことができる。
【0087】
その他のタイプの造粒技術も使用できる。一般に造粒とは、サイズ拡大またはサイズ縮小によって顆粒状の固体を得る行為である。一般的にはサイズ拡大が使用される。利用できる造粒工程のタイプに関する優れた概説は、W. Pietsch「Size Enlargement by Agglomeration(凝集によるサイズ拡大)」(Wiley & Sons社, 1991, 385頁)に記述されている。そこには造粒に利用できる数多くの異なる技術が記載されており、後述するいくつかの凝集法はここに含まれている。この場合は、凝集によって小さい粒子が互いに付着(凝集)して、より大きな粒子(この場合は顆粒状のもの)を形成する。したがって第一の方法が小さすぎる粒子をもたらすのであれば、より大きい(顆粒状)粒子を得るために凝集法を使用することができる。
【0088】
タンブル凝集法は、通常、タンブル式および/または回転式のドラム乾燥器または円錐乾燥器と、(粒子が互いに固着するように)付着性を持つ粉末とを用いて達成される。場合によっては、特別に添加された結合剤を混合できる。この機構により、球状粒子が形成されうる。
【0089】
加圧凝集は、通常、粒状物質の塊に作用する強い力を特徴とする。一般にこの方法は微粉末または「可塑性」(非弾性)物質を用いて行われる。この方法は通常、粉末材料に使用される。(ただし一定の稠度を持つ生地用の乾燥酵母生産にも使用される)。成形された粒子は最適な貯蔵に適した乾物含量まで乾燥することができる。加圧凝集は、ピストン式、ローラー式、等圧式および/または押出式圧縮機で達成することができる。このタイプの装置に関する優れた解説は上で引用したPietschの著書に記述されている。
【0090】
押出圧縮機は、通常、孔または開口ダイを通過する可塑性物質の流れに対する抵抗の原因となる壁面摩擦を利用する。特にスクリュー押出機では広範な混合が起こり、高いせん断力が働く。
【0091】
一般に、低い融点または可塑化温度を持つ物質は直接凝集させることができる。
【0092】
その他の凝集法も使用できる。例えば噴霧乾燥と流動床凝集機の併用。まずバイオマスをノズルからの噴霧によって、または噴霧乾燥器中の回転輪を用いた噴霧によって乾燥することができる。微粒子は噴霧部に再利用される。得られた粘着性粉末を流動床部でさらに凝集させる。場合によっては、粉末の再加湿により、凝集工程が改善されうる。ここに記述した技術は多段乾燥として知られている。
【0093】
多段乾燥をより詳しく説明すると、バイオマスはまず噴霧乾燥される。これにより微粉末を得ることができる。噴霧乾燥の温度(吸気温度)は通常160〜260℃であり、かつ/または、排気温度は75〜90℃である。ここではバイオマスが小さな粒子を生成するノズルまたは高速回転ディスクによって噴霧される。次にその粒子は重力を受けて噴霧乾燥塔の底に向かって落下する。ここには乾燥を達成するための熱風(90〜95℃が適当)を使用できる流動床を用意することができる。ここでは凝集が起こり、粒子が互いに固着できる。この後、凝集した(顆粒状)粒子は、例えばベルト乾燥床やサブ流動床(sub−fluidised bed)での乾燥にかけられる。この工程の出発時点で、バイオマスは30%未満の乾物含量を持ちうる。噴霧乾燥後は、これが75〜90%に上昇することが可能で、凝集後は90〜95%になりうる。乾燥後は、これが少なくとも95%に上昇しうる。
【0094】
もう1つの技術は、流動床凝集機の使用である。ここでは粉末が気流中で流動化されうる。粒子床では、粉末を濡らし凝集を促進する水が流動体に噴霧される。
【0095】
一般に、上述の凝集法は可塑化されうる乾燥粉末のための方法である。例外は多段乾燥器での乾燥である。この噴霧乾燥と乾燥機後の流動床との組み合せは、多くの異なるタイプのバイオマスの凝集に適している。しかしこの方法は、熱不安定な生成物や(熱)風による酸化を受けやすい生成物に常に適しているわけではない。顆粒状乾燥バイオマスの良い製造法は、機械的に脱水した濾過ケーキの押出と、それに続く流動床乾燥やサブ流動床乾燥のような適当な乾燥段階である。
【0096】
(乾燥)バイオマスのもう1つの凝集法は、(噴霧)乾燥したものの再加湿と、それに続く押出段階および例えば流動床乾燥器などでの再乾燥によって行われうる。低い融点または低い可塑化温度を持つ粉末(あるいは押出機内の力によって部分的に融解する細胞内油分を大量に含むある種の乾燥バイオマスの場合)は、押出すことができる。好適なペレットがダイプレート内で生成する。
【0097】
上記(c)のように、(押出またはその他の方法で)顆粒状にされたバイオマスは、好ましくはその粒子が無傷のままに保たれる条件下で、乾燥することができる。造粒工程後のバイオマスの粒子構造と粒子サイズは、そのバイオマスの効率的な乾燥を可能にすると考えられる。乾燥は、ベルト乾燥器、真空乾燥器、真空ベルト乾燥器、流動床またはサブ流動床乾燥器など、種々の乾燥器を用いて行なうことができる。当業者はバッチ法か連続法を選択することができる。
【0098】
流動床またはサブ流動床乾燥器の使用が本発明の方法ではとりわけ好ましい。乾燥は空気中または窒素下に起こりうる。流動床およびサブ流動床乾燥では、床内の温度を前もって設定した値に調節することができる。これらの値は、例えば35℃から120℃まで(例:50〜90℃、あるいは60〜80℃でもよい)の広い範囲に及ぶことができる。不安定な化合物をバイオマスから単離する必要がある場合は、酸化または分解の危険を減らすために、乾燥工程の温度を低い方の範囲に容易に調節することができる。
【0099】
別法として、あるいは上の方法に加えて、例えば1〜2時間の真空乾燥工程を使用することもできる。
【0100】
乾燥段階からはいくつかの利点が生じうる。第一に、(顆粒を形成するための)バイオマス粒子の乾燥は、長期間にわたって安定に保存できる中間物質をもたらしうる。ここではバイオマスの(比較的)高い乾物含量が、そのバイオマスから単離されるべき化合物の分解を防止しうる。このように、乾燥顆粒はバイオマス内に存在する、もしくはバイオマスと結合している化合物の安定な製剤とみなすことができる。
【0101】
例えば、これらの顆粒は酵素の担体として機能することができるので、適当量の架橋剤(例:グルタルアルデヒド)を押出前にバイオマス中に混合することにより、酵素は顆粒内に固定化される。
【0102】
また本発明に従って製造された乾燥顆粒は、例えば食品または飼料組成物もしくは添加物としてそのまま有利に使用できる。
【0103】
これらの粒子および/または顆粒(例えば押出によって生産されたもの)は次の特性を持ちうる。
【0104】
これらの顆粒はチョコレートキャンディーの形状を持つことができる。(押出された)顆粒の直径は0.1mmから12mmまで(例えば0.3mmから10mmまで)変動しうる。1.5mmから6mmまでがより好ましく、(抽出には乾燥時に)2mmから3mmまでの直径が最適である。顆粒の長さは直径の約2倍ないし5または6倍でありうる。そうすれば、これらは充填時に容易に取扱うことができ、また市販の抽出器で使用することができる(ベッドの透過性が保証される)。通常、顆粒の(実質上すべてではないとしても)大半が同じサイズを持つだろう。実際、全顆粒の少なくとも80%(例えば少なくとも90%)が指定した範囲の粒子特性を持つような極めて均一または均質な顆粒を得ることができる。
【0105】
第二の側面の組成物(顆粒)は好ましくは流動性である。これらはほぼ円筒状でありうる。これは押出を使用することによって達成できる。その場合、粒子は押出に使用したダイプレートの孔よりわずかに大きいこともあるが、それとほぼ同じ直径を持ちうる。この工程では、粒子はダイプレートを出た時に自動的に生成しうる。その場合は、粒子の長さは不定になるだろう。しかし、例えばナイフ(例:ダイプレートに隣接する1つまたはそれ以上の回転刃)などの切断手段を使用すれば、粒子長に影響を与えることができて、その場合は、粒子の(全部ではないとしても)大半が実質上同じ長さを持つことになる。このような粒子の好ましい長さは少なくとも2mm(例えば少なくとも3mm)である。顆粒は、その保存または輸送がより容易になるように、「注ぐ」ことが可能なサイズと水分含量を持つことが好ましい。一般的に言ってほとんどの粒子は本質的に細長いだろうが、あるものはほぼ球状でありうる。顆粒の好ましい脂質含量は、好ましくは30〜50重量%である。
【0106】
顆粒の嵩密度は通常400〜1100kg/m3だろう。
【0107】
上述した通り、抽出されるべき化合物への溶媒の接近が可能なように、顆粒は多孔性であることが好ましい。好ましくは、顆粒は中空の通路を持ち、それらは顆粒の中心に向かって、顆粒の中心に達しうる。通路の数は、顆粒の40〜60容量%、例えば45〜55容量%、最適には約50容量%が中空(空気)であるような数でありうる。通路に関する限り、それらはその平均直径の10倍〜20倍の長さを持ちうる。一般的に言って顆粒は、顆粒の外側が基本的に中心部と同じ材質であるという点で、その組成が均一だろう。これは、外側は比較的密だが中心部は比較的空疎でありうる先行技術の酵母組成物とは対照的である。
【0108】
これらの顆粒は最終的に抽出されるべき化合物に最適な温度で安定に保存することができる。
【0109】
乾燥顆粒の好ましい乾物含量は80%より高く、より好ましくは少なくとも85%、最も好ましくは少なくとも90%、最適には93%から97%までの範囲である。水混和性の溶媒を抽出に使用すべき場合は、より低い乾物含量を持つ顆粒を使用できる。
【0110】
このように(乾燥)顆粒は通常多孔性なので、抽出に使用される溶媒が顆粒(の内部)に容易に出入りできる。したがって押出および乾燥中に粉塵の量を最小限にすることができ(これは収量を増大させる)、抽出液の蒸発に先立って(溶媒)抽出液の余計な濾過を避けることができる。
【0111】
顆粒の多孔性は、顆粒状粒子の(水分または)乾物含量に依存する。顆粒状粒子中の水はしばしば乾燥時に蒸発して(中空の)細孔を残す。乾燥顆粒の多孔性は、15〜50%(例えば20〜40%)が好ましく、25〜35%が最適である。多孔性の測定については後述する(実施例25)。
【0112】
顆粒中の細胞の(実質上すべてではないとしても)大半は、好ましくは無傷である(すなわち破裂していない)。特に菌類バイオマスから製造した顆粒は、全体的に0.3〜10mmの直径、好ましくは0.7〜5mmの直径、最適には1〜3mmの直径を持つバイオマス粒子でありうる。通例、それらの粒子は望ましい長さで自動的に生成する。そうでなければ、粒子を望ましい長さに切断してもよい。造粒が押出によってなされた場合は、その押出機のダイプレートの孔が、一般にその顆粒の直径に相当しうる。
【0113】
随意に、抗酸化剤を造粒工程の前または造粒工程中に添加してもよい。これらは例えば0.1(重量)%までのトコフェロールやアスコルビン酸パルミテートを含みうる。
【0114】
このように本発明は、対費用効果が高く効率のよい化合物の抽出を可能にしうる特徴を持つバイオマス材料を提供しうる。またそれらの化合物を精製、単離または(好ましくは)抽出することができる。本発明の方法は、パーコレーション抽出工程の使用を可能にすることができる。この抽出法によって与えられる利点は、その構造とサイズおよび高い乾物含量によるものと思われる。乾燥押出物では、貴重化合物をそこから抽出するのに必要な溶媒量が減少する。また、脱溶媒焙煎(すなわち使用した溶媒のバイオマスからの放出)の工程が、押出物の形態をしたバイオマスでは、より良くより効率的に行われうる。
【0115】
脱溶媒焙煎の工程後に得られる押出物残渣は、飼料成分として有利に使用することができる。
【0116】
90〜95%を超える押出物の乾物含量はその押出物の安定な貯蔵を可能にしうるが、85%を超える乾物含量でも既に、その後の抽出工程で有意な好結果を与えうる。
【0117】
抽出は好ましくは溶媒を用いて行われる。使用する溶媒は抽出すべき化合物に依存するだろうが、特にC1-10アルキルエステル(例:酢酸エチル、酢酸ブチル)、トルエン、C1-6アルコール(例:メタノール、プロパノール)、C3-8アルカン(例:ヘキサン)および/または超臨界流体(例:液体CO2、超臨界プロパン)を挙げることができる。先行技術では、溶媒が培養液中の微生物に対して直接使用されていた。しかし、顆粒に対して抽出を行なうことにより、必要な溶媒の量を有意に減らすことができる。出願人が行なった実験のいくつかでは、抽出を行なうために必要な溶媒は、20〜30倍少なくて済んだ。この結果は、使用する溶媒が減ったために経済的にかなりの節約になるというだけでなく、排出問題を最小限に抑えることにもなる。顆粒を使用することにより、溶媒にとって利用できる表面積がとりわけ広くなり、それゆえに良好な収量を得ることができる。
【0118】
抽出すべき化合物が疎水性である場合は、無極性溶媒を使用することが好ましい。親水性化合物には、(アルコールなどの)極性溶媒が使用に適している。
【0119】
抽出は様々な技術を用いて達成することができる。好ましい方法はフィルターを用いたパーコレーション抽出である。この場合は、カラムに乾燥顆粒を充填することができる。次に、顆粒が覆われるように溶媒(ヘキサン)を加える。溶媒はカラムの中を乾燥粒子越しに一度通過させることができるが、好ましくはそれを(閉鎖系または開放系として)再循環させる。溶媒は、好ましくは半時間〜1時間半(例えば約1時間)の時間で、3〜7回(例えば5回)再循環させるのが適当である。 図3は適当なパーコレーション抽出装置を示している。溶媒は乾燥顆粒を含むパーコレーション抽出器に添加される前に、容器に保持される。溶媒はポンプを使って循環される。精製フィルターの目的は微粉を除去することである。
【0120】
その他のパーコレーション抽出器を使用することもできる。それらは向流型または逆流(cross−current)型でありうる。前者の場合、乾燥顆粒は 、種々のセクターに分割された(円形コンベヤー(カルーセル)などの)回転する円柱中に保持することができる。溶媒はあるセクター中の顆粒をある方向に通過し、次にもう1つの(例えば隣合う)セクター中の顆粒を(好ましくは同じ方向に)通過する。これらの機械はしばしばカルーセル抽出器と呼ばれ、ドイツのKrupp社から入手できる。
【0121】
もう1つの技術では、溶媒とは実質上反対に移動する移動(例えば多孔性)ベルトまたはコンベヤーなどに顆粒を置くことができる。これは新しい顆粒が既に他の顆粒を通過した溶媒で抽出され、新しい溶媒は既にその溶媒での抽出にかけられた顆粒に適用されることを意味する。この配置により、効率を最大化することができる。
【0122】
逆流(cross−current)法では、別々の顆粒のバッチを新しい溶媒の一部による抽出にかける。
【0123】
本発明の方法は、2種類以上の微生物の混合物から顆粒状粒子または顆粒を製造することにより、異なる微生物から2種類以上の化合物の混合物を得るためにも使用できる。この微生物の混合物は、2種類以上の微生物の発酵液を終了後に直接混合することによって、もしくは造粒(例えば押出工程)の直前に2種類以上の微生物に由来するバイオマスを混合することによって得ることができる。また、抽出工程の前に2種類以上の異なる微生物押出物を混合することもできる。
【0124】
したがって好ましい本発明の方法は次のようになりうる:
a) 1種類またはそれ以上の微生物を適当な培地中で、その微生物が目的化合物を産生しうる条件下に発酵させる。これにより培地に含まれた微生物である培養液が得られる;
b) 必要であれば、その化合物を酸性化などによって沈殿または固化させる;
c) バイオマスを得るために、その培養液中の培地から微生物を分離する(これは、濾過などの固/液分離によって達成できる);
d) (a)で得た培養液または(c)で得たバイオマスを低温殺菌する;
e) 必要であれば、そのバイオマスの乾物含量を、例えば乾物または乾燥物質の添加もしくは例えば脱水または乾燥技術による水分含量の低下によって増大させる;
f) 得られたバイオマスを破砕および/または混練する(また随意に、1種類またはそれ以上の乾燥物質を添加して乾物含量を増大させる);
g) 顆粒状粒子を得るために押出などによりバイオマスを顆粒化する;
h) 乾燥顆粒を得るために顆粒状粒子を乾燥する;
i) 適当な溶媒を用いるなどして、1種類またはそれ以上の化合物を抽出する。
【0125】
本発明に従って単離された化合物は高い品質を持つことができ、人間または動物の栄養物での使用に適しうる。特に本発明に従って単離された多価不飽和脂肪酸(PUFA)含有脂質は栄養目的(具体的には乳児用調製粉乳への添加)に適している。
【実施例】
【0126】
実施例1〜6
クサレケカビ(Mortierella)発酵液の加工
予め低温殺菌(68℃、1時間)しておいたモルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)の発酵液160Lを標準的なディーフェンバッハ(Dieffenbach)ろ板/枠型フィルタープレス(ろ布タイプ:ナイコット(nycot)2794)で濾過した。培養液は1.0バールの最大加圧で濾過した。160Lの培養液は20分以内に4.35m2の総フィルター面積を通して濾過され、平均流量は約110L/m2hになった。その濾過ケーキを約3ケーキ体積(約150L)の工程用水で洗浄した。
約30kgの湿ケーキが約25%の乾物含量で回収された。3種類の乾燥法を使用した。
【0127】
真空乾燥:
10kgの濾過ケーキを真空(約50ミリバール)トレイ乾燥器(乾燥表面約1m2)中、35℃で減圧下に24時間乾燥して、約94%の乾物含量を持つ約2.5kgの乾燥バイオマスを得た。その乾燥バイオマスは砕けたバイオマスといくつかの大きな塊からなった。おそらくはその大きな塊のために、真空乾燥には時間がかかった。
【0128】
送風トレイ乾燥器:
10kgの濾過ケーキを、送風トレイ乾燥器(乾燥表面約1m2)中、35℃で窒素下に24時間乾燥した。合計で約2.5kgの乾燥バイオマスが約93%の乾物含量で回収された。その乾燥バイオマスは、砕けたバイオマスといくつかの大きな塊からなる。おそらくはその大きな塊のために、送風トレイ乾燥には時間がかかった。
【0129】
流動床乾燥器:
5kgの濾過ケーキをAEROMATICの実験室用流動床乾燥器(MP−1型)中、約200℃の吸気温度で乾燥した。出口温度は約40℃だった。約45分で湿バイオマスが乾燥され、約81%の乾物含量を持つ乾燥バイオマス約1kgが得られた。
【0130】
最後の方法で回収された乾燥物を、ヘキサンを用いた6つの異なる温度における油の抽出に使用した(実施例1〜6)。150gの乾燥バイオマスを、窒素ブランケット下に90分間、1500mLのヘキサン(加熱還流したもの)による抽出にかけた。細胞塊を濾去し、得られたミセル中の溶媒をロータベーパー(rotavapor)で減圧下に蒸発させた。これにより、粗製PUFA油が得られた。その結果を表1に示す。室温での抽出はより低い収量を与え、高温ではより良好な収量が得られた。
【0131】
【表1】


【0132】
この高トリグリセリド油は淡黄色油で、多少の固形物を含有していた。
【0133】
実施例7と比較例8
クサレケカビ(Mortierella)発酵液の加工
培養液500L(先の実施例に記述したように予め低温殺菌しておいたもの)を、約0.5バールの圧力差で、膜フィルタープレス(SCHULE)で濾過した。その濾過ケーキを10ケーキ体積の工程用水で洗浄した後、5.5バールで30分間圧搾した。得られたケーキは約46%の乾物含量を持っていた。この方法で回収されたケーキを試験用押出機(ODEKERKE,バレルの直径50mm,型彫りされたバレル)で押出した。ダイプレートはそれぞれ直径1.6mmの孔を10個持つものであった。合計で19kgの濾過ケーキを約45分で押出した。
【0134】
この方法で回収された押出物をパイロットプラント流動床乾燥器(T4 AEROMATIC,乾燥表面0.26m2)で乾燥した。押出物を65℃で乾燥したところ、約45分以内に乾物含量が約85%になった(実施例7)。
【0135】
同じ実験中に、濾過ケーキの一部を押出さずに(比較例8)、真空トレイ乾燥器中40℃で乾燥した。大きな塊ゆえに、この乾燥には極めて時間がかかった。
【0136】
両方の材料をヘキサンを用いる抽出にかけた。次に挙げる材料の特徴が認められた。
【0137】
乾燥押出物(実施例7): 主としてペレット
抽出工程はかなり容易
真空乾燥バイオマス(比較例8):ペレットと塊、大量の微粉
抽出工程は困難;濾過特性が劣等
【0138】
実施例9および10
実施例7と同じ培養液を用いる押出実験を次の押出機を使って行なった
LALESSE(オランダ・アルンヘム)
【0139】
実施例9では、LALESSE一軸スクリュー万能押出機を使用した。このタイプの押出機は通常、スナック食品の生産に使用されている。まず試験として、すりつぶしたトウモロコシ(乾物含量約95%)をこの押出機に投入し、加圧加熱下にトウモロコシを押出した。ダイから出ると押出物は直ちに膨張した。
【0140】
このタイプの押出機のバレルは、加工されるトウモロコシを輸送するために、型彫りされたバレルであった。押出に使用するスクリューのタイプは加工する材料のタイプに依存する。スクリューは直径48mmの万能輸送スクリューまたは圧縮スクリューとした。このLALESSE機は7.5Kwパイロット機(運転容量)である。この機械の総電力所要量は12.1Kwである。この押出機のバレルは加熱または冷却することができた。バイオマスの押出には、直径1.8、2.0および2.2mmの1〜4個の孔を持つダイプレートを使用した。
【0141】
クサレケカビ(Mortierella)バイオマスを押出す能力(冷却バレル)は約40kg/hだった。この押出では、ダイプレート中の孔の長さ/直径(L/D)比を変化させた。
【0142】
ALMEX(オランダ・ジュトフェン)
実施例10では、実施例7のクサレケカビ(Mortierella)バイオマスを用いて、ALMEX社のエキスパンダー押出機を使用した。このタイプの押出機はペットフードの生産に使用されている。これはバイオマスの輸送を可能にするピンを持つ滑らかなバレルを持った。これらのピンはLALESSE押出機のバレル中の輪郭と同じ機能を持つ。このエキスパンダー押出機のスクリューはモジュールスクリューとした。
【0143】
技術データ:
ALMEX Contivar 150
L/D=10(スクリューの長さとスクリューの直径の比)
最大スクリュー速度180rpm
22Kw(運転容量)
スクリューの直径150mm
水道水により冷却
ダイプレート:それぞれ直径1.8mmの孔を持つ3リング
【0144】
バイオマスは加工中に約25℃まで温度が上昇した。この機械の処理能力は毎時約250kgのクサレケカビ(Mortierella)押出物であった。
【0145】
比較例11
異なる方法で行なった固/液分離の比較
デカンター:
モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)の発酵によって得た350Lの培養液をFLOTTWEGデカンター(Z23−3/441型)でデカントした。速度は約4000rpmに設定した。差速度範囲は運転中に7.5rpmから20rpmまで変動した。
【0146】
給送量は400L/hに設定した。バイオマスは洗浄しなかった。合計で350Lの培養液をデカントした。投入物の温度は8℃で、上清は15℃だった。回収されたバイオマスの乾物含量は約25%だった。
【0147】
デカンター+真空ドラム濾過器:
上記のデカンター実験で得た乾物含量25%のバイオマス20kgを、10kgのNaClを溶解した500Lの工程用水に懸濁した。得られたスラリーを、さらに洗浄することなく、ベルトディスチャージ付きの真空ドラム濾過器(PAXMAN,ろ布タイプ:865.912 K/5プロプロプ(polyprop))で濾過した。ドラムの速度は1rpmに設定し、圧力差は最大600ミリバールに設定した。合計400Lが15分以内に濾過された。正味のフィルター表面は約0.3mm2で、平均流量は5000L/m2h(濾過表面)になった。濾過速度は極めて良好だったが、「ケーキ形成性」はかなり悪かった。回収された濾過バイオマスの乾物含量は約23%だった。
【0148】
ろ板/枠型フィルタープレス:
500Lの培養液をろ板/枠型フィルタープレス(スタンダードR&B,ろ布タイプ:ナイコット(nycot)2794)で濾過した。培養液は0.3バールの圧力差で濾過された。500Lの培養液は35分以内に5m2の総フィルター面積を通して濾過され、平均流量は±175L/m2hになった。濾過ケーキを約2.5ケーキ体積の工程用水で30分洗浄した。その平均流量は400L/m2hになった。
【0149】
そのケーキを空気で30分間送風乾燥したところ、回収されたバイオマスの乾物含量が約25%になった。
【0150】
膜フィルタープレス:
700Lの培養液を膜フィルタープレス(SCHULE,ろ布タイプ:プロペクス(propex)46K2)で濾過した。培養液は0.3バールの圧力差で濾過された。700Lの培養液は30分以内に6.8m2の総フィルター面積を通して濾過され、平均流量は約205L/m2hになった。
【0151】
その濾過ケーキを3ケーキ体積(約300L)の工程用水で7回洗浄した。その平均流量は375L/m2hになった。
【0152】
膜フィルタープレスがろ板/枠型プレスより有利な点は、濾過後のケーキを高圧で圧搾できるので、ケーキの乾物含量が増大することにある。ケーキを5.5バールで30分間圧搾したところ、回収されたバイオマスの乾物含量は約45%になった。
【0153】
もう1つの実験では、1100Lの培養液を膜フィルタープレス(SCHULE,ろ布タイプ:プロペクス(propex)46K2)で濾過した。この培養液は0.3バールの圧力差で濾過された。1100Lの培養液は45分以内に総フィルター面積12.3m2を通して濾過され、平均流量は約120L/m2hとなった。その濾過ケーキを3ケーキ体積(約600L)の1%NaCl溶液で18分間洗浄した。その平均流量は162L/m2hになった。
【0154】
そのケーキを6バールで30分間圧搾したところ、回収された濾過ケーキの乾物含量は約55%になった。
【0155】
ケーキの圧搾と1%塩溶液による洗浄はどちらも濾過ケーキの乾物含量に有意な効果を持った。
【0156】
実施例12
異なる乾物含量を持つバイオマスの押出
実施例7に記載の方法によって得た異なる乾物含量を持つバイオマスを使って押出を行なった(表2参照)。押出は、型彫りされたバレルと万能スクリューを持つ一軸スクリュー押出機を用いて行なった。押出に使用したダイプレートは異なる数の孔を持ち、その孔の直径は2mmの範囲にあった。
【0157】
押出後に得られた粒子の直径は約2mmだった。
【0158】
性能と押出物の品質は、押出に使用するバイオマスの乾物率に依存する。25%の乾物率が最も悪い結果を与えたが、他の微生物ではこのような低い乾物含量でも許容できる。
【0159】
【表2】


【0160】
実施例13および14ならびに比較例15
モルティエレラ・アルピナ(Mortierella
alpina)の従来型バイオマスおよび押出バイオマスの乾燥
真空乾燥:
従来通りに回収したバイオマス(比較例15,押出されていないもの)を真空トレイ乾燥器で乾燥したが、40℃で約50時間を要した。この乾燥は塊のために極めて遅かった。この方法で乾燥したバイオマスの乾物含量は約92.5%だった。
【0161】
比較のために、55%の乾物含量を持つ約20gの押出物(実施例11で得たもの,φ粒子=2mm)を、実験室規模でロータベーパー(rotavapor)で乾燥した。水槽の温度は68℃とし、40ミリバールの圧力を適用した。乾燥バイオマスが壁に付着し、油がわずかに滲出した点を除いて、この乾燥の性能は妥当なものだった。乾燥後の乾物含量は92.3%だった。
【0162】
流動床乾燥:
実施例13では、バイオマス(実施例1)を使って異なる温度で乾燥を行なった。バイオマスに前処理を施さなかった場合は、バイオマスの大きな塊が完全な乾燥状態にはならなかった。この場合、乾燥バイオマスは粒子サイズに関して極めて不均質だった。
【0163】
乾燥前に押出を使ってバイオマス前処理すると、乾燥の性能がかなり改善された。この場合、乾燥バイオマスの粒子サイズはより均一だった。
【0164】
これらの結果の結論は、流動床乾燥は異なる形態の単離されたバイオマスを使って行いうるが、その乾燥は押出物を用いることによって改善されるということである。
【0165】
もう1つの実験(実施例14)では、異なる量(15kgと30kg)の押出物の乾燥を、空気を用いる流動床乾燥器で行なった(8000Nm3/m2h)。乾燥中に試料を採取し、その乾物含量を計算した。図1に、これら(2つの)異なる量の温度と乾物含量の間の関係を示す。
【0166】
床温度は80℃に設定した。押出バイオマスの直径は1.3mmだった。乾燥後の押出バイオマスの乾物含量は約96%だった。
【0167】
実施例16
モルティエレラ・アルピナ(Mortierella
alpina)の乾燥押出物からの脂質の抽出
異なる温度における乾燥押出物の撹拌抽出:
それぞれ93.4%と97.8%の乾物を含む乾燥押出物の試料100gを、500mLのヘキサンまたは500mLの2−プロパノールを使って、ヘキサンについては20℃、35℃および50℃で、2−プロパノールについては20℃、40℃および70℃で3時間抽出した。スラリーは四口丸底フラスコ内で2枚羽根撹拌機を使って撹拌し、マントルヒーターで加熱した。最終的に蒸発したヘキサンまたは2−プロパノールを還流冷却管を使って再生利用した。
【0168】
抽出中は30分毎に、撹拌機を停止して粒子が沈降した後でフラスコから上清の試料15mLを採取した。その試料のうち1mLを、予め秤量しておいた2mlエッペンドルフチューブにピペットで移した。減圧下40℃で終夜乾燥した後、そのエッペンドルフチューブを秤量し、総油量を計算した。これらの実験の結果を図2に示す。
【0169】
ヘキサン抽出に関する結論:
・ 温度は抽出されうる脂質の総量に影響しなかった。すなわち比較的低い抽出温度でも良好な脂質収量を与えた。
・ 温度は脂質の総量が抽出されうる時間にわずかな影響しか持たなかった。
・ 脂質の総量は20℃を超える温度で、5体積のヘキサンにより、バイオマスから30分以内に抽出された。
【0170】
2−プロパノール抽出に関する結論
・ 温度は抽出されうる脂質の総量に有意な影響を持った。
・ 温度は脂質の総量が抽出されうる時間に有意な影響を持った。
・ 脂質の総量は73℃で5体積の2−プロパノールにより、バイオマスから2時間以内に抽出された。
【0171】
油の組成は抽出に使用した溶媒に依存した(表3参照)。抽出溶媒の極性が高いほど、より多くのリン脂質が抽出された。油の組成が最適になるように、溶媒の極性を選択することができる。
【0172】
【表3】


【0173】
より大きな規模では、抽出工程中の高い撹拌機速度により押出物が小さな粒子に崩壊するので、ミセルの濾過に問題が認められた。
【0174】
この問題は、撹拌抽出の代わりにパーコレーション抽出を用いることによって回避された。
【0175】
ヘキサンによる乾燥押出物のパーコレーション抽出
試行規模で数種類のパーコレーション抽出を行なった(工程図については図3を参照されたい)。約40〜45kgの乾燥押出バイオマスを、ヘキサン(初期ヘキサン/バイオマス比:4.4L/kg)を使って20℃で抽出した。ギアポンプの流量は1.5m3/hに設定した。保持槽には約0.1バールのわずかな窒素パージを行なった。
【0176】
抽出は4時間行なった(抽出中に温度が18℃から25℃まで上昇する)。30分毎に、ミセルから試料を採取した。各試料のうち100mlを実験室規模で減圧下(約50ミリバール)に20分間、ロータベーパーにより蒸発させた(T水槽は64℃とした)。その結果を図4に示す。2時間後に「平衡」に達したことがわかる。その後、抽出されたバイオマスを約0.6ベッド体積のヘキサンで洗浄した。抽出中、ベッド高は変化しなかった。
【0177】
蒸発に先立って、ミセルを精製フィルターに通した。我々は、この抽出中に、粒子のベッドを通したデプスフィルトレーションによって、ミセルがどんどん澄んでいくことに気づいた。
【0178】
実施例17と比較例18
ブラケスレア・トリスポラ(Blakeslea
trispora)からのβ−カロチン油の回収
予め低温殺菌(75℃,15分)しておいた菌類ブラケスレア・トリスポラ(Blakeslea trispora)の発酵液10Lを、実験室用濾過装置を使って収集した。培養液の濾過性を向上させるためにCaCl2を加えた(最終濃度5g/l)。この方法で回収されたバイオマスを実験室規模で、典型的な果実用圧搾器(柑橘用圧搾器,HAFICO D.G.M)を使って45%の乾物含量まで機械的に脱水(圧搾)した。この方法で回収されたケーキを、それぞれ直径1.8mmの孔4つを持つダイプレートを装着したステンレス鋼製注射器を使って押出した。得られた押出物を実験室用流動床乾燥器で乾燥した(T空気=40℃,乾燥時間90分,空気流量150Nm3/h,AEROMATIC MP−1)。この方法で乾燥されたバイオマスの乾物含量は約95%だった。
【0179】
乾燥押出物の試料約50gを、酢酸エチル(初期体積/バイオマス比;30L/kg)によるパーコレーション抽出法で抽出した。50℃で2時間の抽出後、抽出物を減圧濾過によって収集した。バイオマスを1ベッド体積の酢酸エチルで洗浄した。この方法で回収された抽出物を脱イオン水(抽出物/水比;5v/v)で2回洗浄した。8gβ−カロチン/Lの濃度に到達するまで、酢酸エチルを50℃(T水槽)で蒸発させた。
【0180】
その濃縮物から制御された結晶化とそれに続く濾過によって、β−カロチン結晶を回収した。
【0181】
混合と乾燥を行い、押出を行なわなかったバイオマスで、同じ実験を行なった(比較例18)。混合乾燥バイオマスの抽出後の濾過性は、乾燥押出物と比較して悪かった。
【0182】
実施例19と比較例20
酵母ピチア(Pichia)の乾燥押出物からのTAPSの単離
酵母ピチア・シフェリイ(Pichia ciferrii)の未低温殺菌発酵液2Lから、5000rpmで10分間の遠心分離により、バイオマスを収集した。その固相濾過ケーキを5%NaClを含む塩溶液で洗浄した。この方法で回収された乾物量33%のバイオマスを実験室規模で、典型的な果実用圧搾器(HAFICO D.G.M)を使って機械的に脱水した。ケーキを200kg/cm2で1分間脱水した。
【0183】
乾物含量は47%に上昇した。脱水されたケーキを、万能スクリューと型彫りされたバレルを用いる一軸スクリュー実験室用押出機を使って押出した(実施例19)。ダイプレートの孔の直径は2mmであった。得られた押出物を40℃で減圧下に乾燥したところ、乾物含量は約92%になった。その乾燥押出物25gを酢酸エチル(バイオマス/溶媒比は1:5(w/v))により50℃で6.5時間抽出した。
【0184】
この方法で回収された抽出物を減圧下(250ミリバール)に50℃で蒸発させて、TAPS油(約60%テトラアセチルフィトスフィンゴシン/L油)を得た。
【0185】
TAPS含有ピチア・シフェリイ(Pichia ciferrii)の噴霧乾燥(比較例20):
ピチア・シフェリイ(Pichia ciferrii)の培養液約1kgを、Buchi 190実験室用噴霧乾燥器中、180℃(入口温度)と110℃(出口温度)の空気温度で噴霧乾燥した。この噴霧乾燥器の給送中は、培養液を連続的に撹拌した。培養液は1.2L/hの速度で乾燥器に供給された。TAPSの初期量のTAPS濃度を噴霧乾燥品で分析した。噴霧乾燥品では、13%のTAPSしか回収されなかった。高温ゆえにTAPSは分解された。したがって、高い処理温度ゆえに、TAPSの単離にはこの方法を選択できない。
【0186】
実施例21
クリプセコジニウム(Crypthecodinium)からのDHA油の回収
藻類クリプセコジニウム・コーニイ(Crypthecodinium cohnii)の発酵液(予め低温殺菌(65℃,1時間)したもの)7Lから、BECKMANN JM/6Eの実験室用遠心機を使ってバイオマスを収集した。培養液を800mLずつに分けて5000rpmで2分間遠心分離することにより、透明な上清を得た。
【0187】
13%の乾物含量を持つ合計224gのバイオマスが回収された。これは、発酵液の収集時のバイオマス濃度が4g/kgであることを意味している。乾物含量を増大させるために、回収されたこのバイオマスに300gのデンプン(ROQUETTE,バッチ番号10EV0024)を加えた。この方法で回収されたケーキを、万能スクリューと型彫りされたバレルを用いて一軸スクリュー実験室用押出機で押出した。ダイプレートの孔の直径は2mm、ダイプレートの厚さは6mmなので、ダイプレートのL/Dは3であった。得られた滑らかな押出物を減圧下に50℃で終夜乾燥したところ、ひび入り乾燥押出物が得られた。この方法で乾燥されたバイオマスの乾物含量は約94%だった。
【0188】
その乾燥押出物の試料約180gをヘキサン(初期体積/バイオマス比:5L/kg)で抽出した。60℃で3時間の抽出後、ミセルをワットマンフィルターで濾過した。得られた抽出住みバイオマスを新たなヘキサン1000mLで1回洗浄した。この方法で回収した濾過されたミセルを68℃(T水槽)で蒸発させた。この方法で、粗製DHA含有油が回収された。この油中のDHA濃度をGCで分析したところ32.6%だった。この方法で回収された油は約67%のトリグリセリド、12%のジグリセリド、3.7%のステロールおよび約0.2%の消泡剤を含有していた(NMR)。この油のもう1つの特徴は、そのカロチノイドのレベルだった(0.15mg/mlのβ−カロチンと5mg/mlのγ−カロチン)。
【0189】
実施例22
プロピオン酸菌(Propionibacterium)種からの
ビタミンB12の回収
プロピオン酸菌(Propionibacterium)種の大規模発酵(28トン)から、BRPX−213−SGV型の浄化装置(ALFA LAVAL,3〜7トン/h)を使って、約5000のG−ファクターで、培養液を収集した。この方法で浄化された培養液を、カットオフが5kDで約150m2のらせん状に巻かれたポリエチレンスルホン膜(HFK131−VSV型)を持つABCOR KOCHモジュールを使った限外ろ過により2.5倍に濃縮した。得られた限外濾過物を、工程用水を用いて、濃縮された体積に応じて500%のダイアフィルトレーションにかけた。得られたダイアフィルトレートを減圧蒸留によって3倍に濃縮し、得られた濃縮物に90℃で2分間の熱ショックを加えた。
【0190】
得られた濃縮物を顆粒状にし、NIRO250多段乾燥器(流動床噴霧乾燥器/凝集機)で乾燥した。乾燥器の吸気温度は約250℃で、排気温度は約70℃だった。適用した吸気流量は約3000m3/hだった。これにより、製品温度は約70〜80℃になった。乾燥器に供給される濃縮物の密度は約1050kg/m3だった。
【0191】
乾燥顆粒の試料約2gを、約75%のエタノール(この水分含量は最適な抽出/機械性能を与える)125mLを使ってコニカルフラスコ中、周囲温度で60分間撹拌することによる抽出に使用した(透明な抽出物)。抽出後、抽出されたバイオマスをワットマンろ紙を使って濾過した(容易な濾過)。この方法で回収された透明でピンク色の濾液をビタミンB12について分析した。得られたバイオマスを25mLの約75%エタノールで洗浄した。この方法で約90%のビタミンB12が顆粒バイオマスから抽出された(表4)。
【0192】
【表4】


【0193】
実施例23
クリプセコジニウム・コーニイ(C. cohnii)と
モルティエレラ・アルピナ(M. alpina)の同時抽出
菌類モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)の発酵液10Lとクリプセコジニウム・コーニイ(Crypthecodinium cohnii)の発酵液10Lを互いに混合した。この混合培養液の濾過性を向上させるためにCaCl2を加えた(最終濃度5g/L)。その混合培養液を濾過し、得られたケーキを典型的な果実用圧搾器(柑橘用圧搾器,HAFICO)で機械的に脱水した。
【0194】
この方法で回収されたケーキを、型彫りされたバレル内の万能輸送スクリューと2mmの孔1つを持つダイプレートとを使用する一軸スクリュー実験室用押出機によって押出した。押出物の直径は約2mmだった。この方法で回収された押出物を実験室用流動床乾燥器(T空気=40℃,乾燥時間約1時間,流量150Nm3/h,AEROMATIC MP−1)で乾燥した。この方法で乾燥されたバイオマスの乾物含量は約92%だった。
【0195】
乾燥押出物の試料約100gをヘキサン(初期体積/バイオマス比:4L/kg)による抽出に使用した。周囲温度で2時間の抽出後、減圧濾過によってミセルを回収した。残った抽出済み押出物を4体積の新しいヘキサン(初期体積/バイオマス比:4L/kg)で洗浄した。洗浄ヘキサンをミセルと混合し、得られたミセルを50℃(T水温)で蒸発させた。この方法で、ARA(C20:4ω6)とDHA(C22:6ω3)を含有する粗製PUFA油が回収された。
【0196】
この粗製油は食用/植物油に常用される方法に従って精製することができる。
【0197】
実施例24
アスペルギルス・テレウス(Aspergillus
terreus)からの粗製ロバスタチンの回収
ロバスタチンを沈殿させるために、発酵液1kgあたり2gのロバスタチンを含有する菌類アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)の(未低温殺菌)発酵液のpHを硫酸でpH2.1に調節し、そのpHで15分間撹拌した。次にその培養液を濾過し、培養液中に存在するロバスタチンの総量の3.5%しか含んでいないその濾液を捨てた。
【0198】
典型的な果実用圧搾器(柑橘用圧搾器,HAFICO)を使って湿濾過ケーキ(230グラム,乾物18.5%)を機械的に脱水して45%の乾物含量にした後、それぞれ1.8mmの孔4つを持つダイプレートを装着したステンレス鋼の注射器を使って押出した。得られた押出物を真空オーブン中40℃で終夜乾燥して、約95%の乾物含量にした。その乾燥押出物10gをトルエン(0.85L)とアセトン(0.15L)の混合液1Lにより周囲温度で15分間抽出した。濾過による押出物の分離後、ロバスタチン含量が1.5g/Lのロバスチン含有抽出物が得られた。
【0199】
実施例25
市販品FERMIPANからのエルゴステロールの回収
FERMIPANは ヒストブロカデス社(Gist brocades)が製造している市販の乾燥酵母である。約2グラムのFERMIPAN試料(バッチ番号9510702)を100mLの70%エタノールを使って周囲温度で30分間抽出した。得られた透明な抽出物を濾過によって抽出済のFERMIPANから分離した。この方法で回収された透明な濾液をNMRで分析した。約22gの抽出物中に0.09mgのエルゴステロールが認められた。エルゴステロールの抽出では、エタノール中の水分含量が重要である。この濃度は最適化したものではない。この実験は顆粒状酵母(押出乾燥酵母)からの貴重化合物エルゴステロールの抽出を示すために行なった例示的実験である。
【0200】
実施例25
顆粒化/押出バイオマスの利点
PUFAバイオマスを実施例1に記述した経路(濾過、押出および乾燥)に従って加工した。
【0201】
乾燥押出PUFAバイオマスの多孔性を、ポロシメーター(porosimeter)2000(Pharmitalia Carlo Erba(イタリア))およびマクロポアズ(macroporse)ユニット120(Carlo Erba)で測定した。その結果を表5に示す。
【0202】
細孔容積分布を図5に示す。比較のため、図6に乾燥酵母(FERMIPAN;Gist−bracades社)の細孔容積分布を示す。
【0203】
線(と左側のY軸)は累積細孔容積を表わし、ヒストグラム(と右側のY軸)は相対微分細孔容積分布である。これは、細孔の大部分が10,000〜100,000nm細孔直径領域に認められることを示している。
【0204】
【表5】


【0205】
PUFA油を得るために、乾燥押出PUFAバイオマス81gを、向流パーコレーション抽出法で周囲温度(20℃)のヘキサンによるカラム内での抽出にかけた。13ベッド体積の新しいヘキサン(1ベッド体積はベッド全体を濡らすのに必要なヘキサンの量である)をバイオマスのベッドを通して流した。各ベッド体積の流出ヘキサン中の粗製油の量をヘキサンの蒸発後の重量によって決定した。
【0206】
抽出条件:
・ バイオマスベッドの粒子内容量は80ml(=1ベッド体積)だった。
・ 300秒につき1ベッド体積の流速。
・ 総油量の50%が300秒で1ベッド体積中に抽出された。
・ 乾燥バイオマスの嵩密度は570kg/m3だった。
・ 粒子直径は0.0025mだった。
・ 抽出温度は20℃。
・ ヘキサンへの油の溶解度は無限大である。
・ バイオマスの油含量:35.5(w/v)%
【0207】
PUFAを得るため、ヘキサンを実験室規模でロータベーパー中、60℃(T水槽)で減圧下に蒸発させた。上述のPUFA粒子(乾燥押出物)は多孔性の均一な粒子で、抽出には理想的だった。油の交換に利用できる表面積が大きかった。したがって抽出に関する拡散制限は少ない。
【0208】
比較例26
先の実施例に記述したバイオマスと培養液を得るために使用した種々の培養条件を次の表に記載する。
【0209】
【表6】


【0210】
【表7】


【0211】
発酵技術に関する参考文献
Maister H.G., Rogovin S.P., Stodola F.H., Wickerham L.J.「Formation of Extracellular Sphingolipids by Microorganisms IV. Pilot−Plant Production of Tetraacetylphytosphingosine by Hansenula ciferrii(微生物による細胞外スフィンゴ脂質の形成IV.ハンゼヌラ・シフェリイによるテトラアセチルフィトスフィンゴシンのパイロットプラント生産)」
Appl. Microbiol., 10, 401−406(1962)Zu−Yi Li, Yingyin Lu, Yadwad V.B., Ward O.P.「Process for Production of Arachidonic Acid Concentrate by Strain of Mortierella alpina(モルティエレラ・アルピナの株によるアラキドン酸濃縮物の生産法)」
Can. J. Biochem. Eng. 73, 135−139(1995) Finkelstein M., Huang C−C., Byng G.S., Tsau B−R., Leach J.「Blakeslea trispora mated culture capable of increased beta−carotene production(増大したβ−カロチン産生能を持つブラケスレア・トリスポラ交配培養)」米国特許第5,422,247(1995)
Kojima I., Kouji K., Sato H., Oguchi Y.「Process for the producing Vitamin B12 by the fermentation technique, and Vitamin B12−producing microorganism(発酵法によるビタミンB12の生産法およびビタミンB12産生微生物)」米国特許第4,544,633号
Kyle D.J., Reeb S.E., Sicotte V.J「Production of docosahexaenoic acid by dinoflagellates(渦鞭毛藻類によるドコサヘキサエン酸の生産)」米国特許第5,407,957号(1995)
【0212】
例示のために記載する実施例に関して本発明を説明する。それらには次の図面を添付する。
【図面の簡単な説明】
【0213】
【図1】図1は、異なる温度における異なる量の押出バイオマスの乾燥性を示す、時間に対する温度と乾物量(%)のグラフである。
【図2】図2は、異なる温度における押出バイオマスからの油収量の温度に対するグラフである。
【図3】図3は、(既知の)パーコレーション法の作業工程図である。
【図4】図4は、抽出された油とその抽出時間の関係を示す、時間に対する油収量のグラフである。
【図5】図5は、本発明の乾燥顆粒と先行技術の顆粒のサイズ分布のグラフである。
【図6】図6は、本発明の乾燥顆粒と先行技術の顆粒のサイズ分布のグラフである。
【出願人】 【識別番号】594178859
【氏名又は名称】デーエスエム・アンティ−インフェクティブス・ベスローテン・フェンノートシャップ
【出願日】 平成19年10月24日(2007.10.24)
【代理人】 【識別番号】100062144
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 葆

【識別番号】100088801
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 宗雄


【公開番号】 特開2008−54691(P2008−54691A)
【公開日】 平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願番号】 特願2007−276642(P2007−276642)