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【発明の名称】 バイオマスからのエタノールの製造方法
【発明者】 【氏名】矢部 彰

【氏名】喜多尾 千秋

【氏名】澤山 茂樹

【氏名】遠藤 貴士

【氏名】矢野 伸一

【氏名】井上 宏之

【氏名】坂西 欣也

【要約】 【課題】バイオマスからのエタノールの製造方法を提供する。

【構成】リグノセルロース系バイオマスを原料として、糖化酵素産生微生物の培養、糖化及び発酵プロセスの一部又は全部を同一槽で行ってエタノールを製造する方法であって、リグノセルロース系バイオマスを微粉砕処理して微粉末を調製し、糖化酵素を産生する微生物をセルロース等を炭素源とする液体培地で培養し、それにより、糖化酵素を誘導・分泌生産させ、糖化酵素を含む培養液を調製し、得られた培養液を同一槽で、糖化酵素の設定反応条件に合わせて温度調整を行い、当該培養液を用いて設定反応条件で糖化処理を実施し、得られた糖化液に酵母菌を加えてアルコール発酵を実施することによりエタノールに変換する、ことを特徴とするエタノールの製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リグノセルロース系バイオマスを原料として、糖化酵素を産生する微生物の培養、糖化及び発酵プロセスの一部又は全部を同一槽で行ってエタノールを製造する方法であって、(1)リグノセルロース系バイオマスを微粉砕処理して微粉末を調製する、(2)糖化酵素を産生する微生物を、セルロース、ヘミセルロース、あるいは糖類を炭素源とする液体培地で培養する、(3)それにより、糖化酵素を誘導・分泌生産させ、糖化酵素を含有する培養液を調製する、(4)得られた培養液を同一槽で、糖化酵素の設定反応条件に合わせて温度調整を行う、(5)当該培養液を用いて設定反応条件で糖化処理を実施する、(6)得られた糖化液に酵母菌を加えてアルコール発酵を実施することによりエタノールに変換する、ことを特徴とするエタノールの製造方法。
【請求項2】
糖化酵素を産生する微生物を、セルロース、ヘミセルロース、あるいは糖類を炭素源とする液体培地で培養して、糖化酵素を誘導・分泌生産しうる誘導物質を炭素源とする液体培地で、20℃〜40℃で糖化酵素の設定pH条件に整合させて酵素誘導培養する、請求項1記載のエタノールの製造方法。
【請求項3】
糖化酵素の設定反応条件に合わせて、反応温度を40〜60℃の範囲に調整する、請求項1記載のエタノールの製造方法。
【請求項4】
上記糖化処理の残渣を回収し、燃料及び/又は肥料として再利用する、請求項1記載のエタノールの製造方法。
【請求項5】
リグノセルロース系バイオマス原料を、200ミクロン以下に微粉砕する、請求項1記載のエタノールの製造方法。
【請求項6】
上記微粉砕によって得られた原料微粉末中のセルロースの見かけ上の結晶化度が、10%以下である、請求項5記載のエタノールの製造方法。
【請求項7】
セルロース分解酵素を産生する糸状菌を培養して糖化酵素を含む培養液を調製する、請求項1記載のエタノールの製造方法。
【請求項8】
糖化酵素を産生する微生物として、トリコデルマ属、又はアスペルギルス属類縁菌を使用する、請求項1に記載のエタノールの製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、リグノセルロース系バイオマスを原料として、酵素糖化及び発酵プロセスによりエタノールに変換するバイオマスのエタノール変換技術に関するものであり、更に詳しくは、糖化とアルコール発酵のプロセス、即ち、糖化酵素を産生する微生物の培養、当該糖化酵素源による糖化、及びアルコール発酵プロセスの一部又は全部を同一槽で行うことを実用化可能にしたリグノセルロース系バイオマスの新しいエタノール変換プロセスに関するものである。本発明は、セルロースの他にヘミセルロースやリグニンを多く含有するリグノセルロース系バイオマスの糖化プロセスで採用されていた大量の硫酸等を消費する酸糖化法に代替し得るリグノセルロース系バイオマスの新しい糖化プロセス、及び当該糖化プロセスを利用したリグノセルロース系バイオマスの新しいエタノール変換技術を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
リグノセルロース系バイオマスを形成する細胞の構造は、主としてグルコース(六炭糖)からなるセルロースと、キシロース(五炭糖)、マンノース(六炭糖)、ガラクトース(六炭糖)、アラビノース(五炭糖)等から構成されるヘミセルロース、及びリグニンから構成されており、それらを鉄筋コンクリートにたとえるならば、セルロースは主軸をなす鉄筋、ヘミセルロースはそれらを束ねる針金、そしてリグニンはそれらの空隙を埋めるコンクリート(バインダー)のような役目を果たしているとされている。これらのリグノセルロース系バイオマス原料からグルコース等の糖を回収する方法として、従来は、リグノセルロース系バイオマス原料を硫酸などの強酸で処理し、最初に溶解してくるヘミセルロースやリグニンを分離ろ過し、その残渣を更に硫酸等で処理して残存するセルロースからグルコース等の糖を回収していた。しかし、これらの方法は、大量の硫酸を消費するために、その廃棄処理が環境問題となっている。
【0003】
このように、従来、リグノセルロース系バイオマスからのエタノール製造プロセスでは、通常、酸による加水分解で糖化を行っており、例えば、希硫酸を用いた2段の加水分解法(希硫酸法)、等が提案されている。この方法では、1段目の加水分解により得られた糖液を回収した後、未分解残渣について2段目の加水分解が行われ、加水分解を2段階で行うことで、単糖の過分解を抑制し、ヘミセルロース及びセルロース両方から効率的に単糖を得ることが可能であるとされているが、第1段目の加水分解では、約140−190℃、第2段目の加水分解では、約180−240℃という非常に厳しい条件が必要とされる。
【0004】
また、一般に、バイオマス原料について、発酵法を利用したエタノール製造プロセスが数多く提案されているが、この場合、従来から使用されているバイオマス原料は、デンプン又はサトウキビ糖蜜などの糖質原料に限られている。これに対して、リグノセルロース系バイオマスの場合は、上述のように、セルロースとヘミセルロースを主成分としたものであり、デンプンや糖蜜と同じ糖質でありながら、糖の結合状態や構成する単糖の種類が異なり、更に、リグニンが多く含まれるという特徴がある。これまで、ヘミセルロースの分解で得られるキシロース、アラビノースなどの五炭糖は、自然界の微生物で実用的なエタノール生産をすることができなかった。
【0005】
リグノセルロース系バイオマスからのエタノール製造プロセスにおいて、発酵過程では、ヘミセルロース由来の糖の発酵は、例えば、大腸菌宿主にアルコール発酵菌の遺伝子を挿入した遺伝子組み換え大腸菌等で行い、また、セルロース由来の糖の発酵は、一般的な酵母で行う方法が知られているが、この種の方法では、発酵プロセスが多段になり、発酵方法、発酵手段、発酵条件の管理等が高コスト、かつ複雑になると言う問題があり、リグノセルロース系バイオマスのエタノール変換プロセスの生産性の向上、実用化技術の確立のためには、更なる改良が必要とされていた。
【0006】
更に、建設系廃木材等からの燃料用エタノールの製造技術の実用化開発や、リグノセルロース系バイオマスの発酵プロセスを1種類の菌体で行う方法、また、希硫酸法に代わる酵素法を利用した糖化プロセスの開発、糖化とアルコール発酵を同一槽で行う方法の開発、更に、1種類の菌体で糖化と発酵を同時に行う技術の開発等が強く期待されているが、実用化可能な技術は、未だ開発されていないのが実情である。
【0007】
リグノセルロース系バイオマスの糖化及び発酵に関する先行技術として、例えば、木材等を酵素糖化する方法(特許文献1〜4)、また、木材等を出発原料として、グルコース等の六炭糖を経由してアルコール発酵によりエタノールを製造する方法(特許文献5〜7)、更に、キシロース等の五炭糖を経由してエタノールを製造する方法(特許文献8、9)、等が提案されている。
【0008】
また、他の先行技術としては、例えば、微量のタングステン酸あるいはモリブデン酸塩触媒を含有する過酸化水素水を用い、リグニンを選択的に分解し、得られたリグノセルロース系セルロースをセルラーゼ酵素により効率良く糖化して、エタノール発酵原料であるグルコースを高効率で製造する方法が提案されている(特許文献10)。
【0009】
また、バイオマス資源を出発原料として、効率良くセルロース、ヘミセルロース、リグニンの成分を分解する方法と装置として、例えば、担子菌、腐朽菌類による菌体処理工程と、前記菌体処理工程の処理物を高圧熱水で処理する高圧熱水処理工程とを有する単糖類及び/又はオリゴ糖類の製造方法が提案されている(特許文献11)。
【0010】
更に、木材を用いてメタノール、ギ酸メチル、エタノール、乳酸、プロパンジオール等の工業用基礎化学品及び炭素材を製造すると同時に、熱回収の有効利用を図り、所内動力を差し引いた電力、蒸気及び温水を供給し、装置コスト及び操業費等の点から熱利用性の高い、木材のゼロエミッション型有効利用する方法として、例えば、木材を原料とし、前処理として水熱処理し、酵素糖化を行った後、キシロース等の五炭糖を経由してエタノールを得る方法等が提案されている(特許文献12)。
【0011】
このように、従来、リグノセルロース系バイオマスの糖化(グルコース化)によりバイオマスエタノールを得ることが強く求められており、木質系バイオマスを原料として、バイオマスエタノールを生産する技術が種々開発されているが、エタノール発酵の原料となるグルコースを木質系バイオマスから高純度で得る方法は確立されていないのが実情である。また、特に、木質系バイオマスのエタノールへの変換プロセスにおいて、糖化とアルコール酵素を同一槽で同時糖化発酵を実施する実用化可能な技術は未だ確立されておらず、そのことが、木質系バイオマスの本格的な利用を妨げる大きな原因となっていた。
【0012】
【特許文献1】特開2004−171799号公報
【特許文献2】特許第3041539号公報
【特許文献3】特開2002−186938号公報
【特許文献4】特開2002−238590号公報
【特許文献5】特開2003−289893号公報
【特許文献6】特開2003−310246号公報
【特許文献7】特開2002−537848号公報
【特許文献8】特表2001−516584号公報
【特許文献9】米国特許第6582944号明細書
【特許文献10】特開2006−149343号公報
【特許文献11】特開2005−27541号公報
【特許文献12】特開2006−111593号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、現在、行われている希硫酸法等の酸による加水分解技術に代わる酵素糖化とアルコール発酵を同一槽で行うことが可能な新しい糖化発酵技術を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、糖化酵素産生微生物の培養槽をそのまま糖化酵素反応槽乃至エタノール発酵槽として使用することが可能な、リグノセルロース系バイオマスの新しいエタノール変換方法を開発することに成功し、本発明を完成するに至った。本発明は、上記培養、糖化及びアルコール発酵プロセスの一部又は全部を同一槽で行うことが可能なリグノセルロース系バイオマスからの新規エタノール生産技術を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)リグノセルロース系バイオマスを原料として、糖化酵素を産生する微生物の培養、糖化及び発酵プロセスの一部又は全部を同一槽で行ってエタノールを製造する方法であって、1)リグノセルロース系バイオマスを微粉砕処理して微粉末を調製する、2)糖化酵素を産生する微生物を、セルロース、ヘミセルロース、あるいは糖類を炭素源とする液体培地で培養する、3)それにより、糖化酵素を誘導・分泌生産させ、糖化酵素を含有する培養液を調製する、4)得られた培養液を同一槽で、糖化酵素の設定反応条件に合わせて温度調整を行う、5)当該培養液を用いて設定反応条件で糖化処理を実施する、6)得られた糖化液に酵母菌を加えてアルコール発酵を実施することによりエタノールに変換する、ことを特徴とするエタノールの製造方法。
(2)糖化酵素を産生する微生物を、セルロース、ヘミセルロース、あるいは糖類を炭素源とする液体培地で培養して、糖化酵素を誘導・分泌生産しうる誘導物質を炭素源とする液体培地で、20℃〜40℃で糖化酵素の設定pH条件に整合させて酵素誘導培養する、前記(1)記載のエタノールの製造方法。
(3)糖化酵素の設定反応条件に合わせて、反応温度を40〜60℃の範囲に調整する、前記(1)記載のエタノールの製造方法。
(4)上記糖化処理の残渣を回収し、燃料及び/又は肥料として再利用する、前記(1)記載のエタノールの製造方法。
(5)リグノセルロース系バイオマス原料を、200ミクロン以下に微粉砕する、前記(1)記載のエタノールの製造方法。
(6)上記微粉砕によって得られた原料微粉末中のセルロースの見かけ上の結晶化度が、10%以下である、前記(5)記載のエタノールの製造方法。
(7)セルロース分解酵素を産生する糸状菌を培養して糖化酵素を含む培養液を調製する、前記(1)記載のエタノールの製造方法。
(8)糖化酵素を産生する微生物として、トリコデルマ属、又はアスペルギルス属類縁菌を使用する、前記(1)に記載のエタノールの製造方法。
【0015】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、リグノセルロース系バイオマスを原料として、糖化酵素を産生する微生物の培養、糖化及び発酵プロセスの一部又は全部を同一槽で行ってエタノールを製造する方法であって、リグノセルロース系バイオマスを微粉砕処理して微粉末を調製すること、糖化酵素を産生する微生物をセルロース、ヘミセルロース、あるいは糖類を炭素源とする液体培地で培養する、それにより、糖化酵素を誘導・分泌生産させ、糖化酵素を含む培養液を調製すること、得られた培養液を同一槽で、糖化酵素の設定反応条件に合わせて温度調整を行うこと、当該培養液を用いて設定反応条件で糖化処理を実施すること、得られた糖化液に酵母菌を加えてアルコール発酵を実施することによりエタノールに変換すること、を特徴とするものである。リグノセルロース系バイオマス原料としては、代表的なものとして、製材工場等残材、林地残材、建築発生木材の他、トウモロコシ残渣、サトウキビバガス、イナワラ等が例示されるが、これらに制限されるものではなく、リグノセルロース系由来のバイオマスであれば、同様に使用することができる。
【0016】
本発明では、糖化酵素を産生する微生物をセルロース等を炭素源とする液体培地で20〜40℃で糖化酵素の設定pH条件に整合させて培養すること、また、糖化酵素の設定反応条件に合わせて、反応温度を40〜60℃の範囲に調整すること、を好適な実施の態様としている。糖化酵素を産生する微生物の培養は、好適には、例えば、20〜40℃、pH4〜5で実施されるが、この場合、培養のpH条件は、糖化酵素の至適pH条件(設定pH条件)に調整することが好ましく、そのためには、当該条件を満たすような糖化酵素産生微生物を選択することが必要とされる。
【0017】
また、上記微生物の培養温度の20〜40℃に対して、糖化処理の温度条件は数10℃高温であることが好ましいことから、得られた培養液の温度は、糖化酵素の至適反応温度(設定反応条件)に合わせて、好適には、例えば、40〜60℃の範囲に調整する。この場合、培養液の温度調整は、培養液を移動させることなく、同一槽内で行われる。したがって、この段階では、必ずしも菌体分離を行う必要性はないので、このプロセスでは、残渣を回収することは行われないが、必要に応じて、菌体分離の操作を行うことを防げるものではない。
【0018】
上述のように、本発明では、糖化酵素を産生する微生物及び糖化酵素の組み合わせを選択して、糖化処理により糖化液を調製するプロセスの好適な設定反応条件(温度及び/又はpH条件)に合わせた条件で糖化酵素産生微生物の培養を行い、引き続き、例えば、糖化処理の温度条件を高温側にシフト及び発酵の温度条件を低温側にシフトさせる調整を行い、上記微生物の培養液を糖化酵素液及び発酵液としてそのまま使用できるようにしたことで、上記培養、糖化及び発酵プロセスの一部又は全部を同一槽で行うことを実現したことに特徴を有するものである。このような条件を満たすためには、糖化酵素を産生する微生物の培養と、当該糖化酵素による糖化処理の反応条件がうまく合致するように、それらを選択して組み合わせることが必要とされる。本発明は、それらの要件を満たす微生物、糖化酵素及び糖化処理条件を組み合わせることで同時的培養、糖化及び発酵を実現させたものである。
【0019】
本発明は、従来の酸糖化に代わる酵素法によるリグノセルロース系バイオマスの糖化方法により糖化液を調製し、当該糖化液をアルコール発酵させ、エタノールを得ることを特徴とするものである。本発明では、土壌よりセルロース等のバイオマスを糖化する能力を有するカビ(糸状菌)4株を分離し、使用したが、これらの微生物は、独立行政法人産業技術総合研究所中国センター内バイオマス研究センターで分譲可能に保存されている。
【0020】
本発明では、リグノセルロース系バイオマス原料は、粉砕して使用される。原料の粉砕処理は、例えば、木材チップを適当な粉砕機にて2mm位までに粉砕し、更に、遊星ボールミルなどで20ミクロン位にまで微粉砕する。例えば、遊星ボールミル(FRITSCH社製 遊星ボールミル モデルPULSEROSETTE5等)を用いて、反応容量450mLの容器に直径16mmのジルコニウムボール25個及び木材チップ25gを封入し、250回転で4時間粉砕処理して粒径20ミクロン、セルロースの見かけ上の結晶化度10%以下の微粉末を調製する。
【0021】
本発明では、以下の方法で、糖化酵素を産生する有用微生物を分離し、使用した。即ち、セルロースを唯一の炭素源とし、適度に窒素源及びミネラル源を加えた寒天平板培地に、自然界から採集した土壌の希釈懸濁液を塗布し、30℃等にて数日から数週間培養した。寒天平板上に出現する微生物コロニーを新鮮な無菌寒天平板に釣菌し、更に、セルロースを唯一の炭素源とし、適度に窒素源及びミネラル源を加えた液体培地にて、30℃等にて数日から1週間位培養し、培養液を得た。
【0022】
上記培養液に、微粉砕処理ユーカリなどの木粉を基質として反応させ、それらを分解してグルコース等の糖を生成する能力のある微生物をスクリーニングした。この方法により、KIF−62糸状菌(トリコデルマ属類縁菌)、KIF−68糸状菌(アスペルギルス属類縁菌)、KIF−77糸状菌(トリコデルマ属類縁菌)、KIF−78糸状菌(アスペルギルス属類縁菌)の4菌株を分離した。
【0023】
上記微生物を培養して酵素培養液を調製するが、本発明は、これらの微生物のみに制限されるものではなく、これらと同等ないし類似の糖化酵素産生菌であって本発明の方法に適合し得るものであれば同様に使用することができる。分離選択した微生物を、更に、セルロースを炭素源とする液体培地にて培養すると、セルラーゼ等の糖化酵素が誘導的に高濃度培養液に蓄積するので、これを酵素液(培養液)として利用する。この場合、必要に応じて、これを遠心分離して菌体と分離することにより、酵素培養ろ液とすることも可能である。
【0024】
セルロースを炭素源とする糖化酵素誘導生産用液体培地としては、例えば、ポリペプトン15g/L、酵母エキス1g/L、硝酸ナトリウム5g/L、りん酸2水素カリウム10g/L、硫酸マグネシウム・7HO1g/L、硫酸第一鉄・7HO0.01g/L、硫酸亜鉛・7HO0.01g/L、硫酸マンガン・5HO0.01g/L、硫酸銅・5HO0.01g/Lを含む培地が好適なものとして例示される。培養の温度は20〜40℃、pHはpH4〜5が好適である。
【0025】
次に、上記培養液を設定反応条件に調整して糖化反応を実施する。例えば、微粉砕処理木粉を酵素培養液に対して10%〜30%程度混合し、pH3〜6にて40℃〜60℃にて数日間反応させると、糖化液が得られる。この場合、必要に応じて、糖化反応液を遠心分離して、糖含有液とリグニンなどの未分解残渣とに分離することも可能である。
【0026】
次に、上記糖化液にアルコール発酵菌(酵母菌)を加えてエタノール発酵を実施する。グルコース等の六炭糖を炭素源とするエタノール発酵菌としては、サッカロミセス属に代表される酵母が例示される。また、キシロース等の五炭糖を炭素源とするエタノール発酵菌としては、ピシア属に代表される酵母が例示される。しかし、これらに制限されるものではなく、適宜のアルコール発酵菌を使用することができる。
【0027】
本発明では、例えば、エタノール発酵用酵母菌を液体培養し、その5〜10%を糖を含む糖化液に混合し、サッカロミセス酵母の場合は、無通気の嫌気条件でゆっくりと撹拌しながら30℃で48時間培養する。また、五炭糖を主とする炭素源とする場合は、ピシア属菌を用い、この場合は、30℃で通気撹拌しながら24〜100時間培養する。
【0028】
発酵液を所定のエタノール蒸留装置に直接導入し、高濃度に蒸留すると、精製エタノールを得ることができる。発酵液からの菌体分離操作を省略することによって、作業の効率化とコストの低減化を図ることができる。発酵液を遠心分離して、エタノール含有液と酵母残渣とに分離し、蒸留装置にて蒸留することもできる。蒸留装置より排出される死菌体などの蒸留釜残、あるいは遠心分離操作にて排出される酵母などの培養残渣は、回収して肥料あるいは燃料の原料としてリサイクル使用して、肥料、燃料として製品化することができる。
【0029】
本発明のエタノール発酵プロセスを、図1に示す。KIF78などのセルラーゼ関連酵素産生菌の至適生育温度は、30℃付近にあり、これにより、産生されるセルラーゼ等の酵素の糖化反応の至適温度は50℃付近にある。したがって、50℃で酵素反応を実施すると、酵素は、活性化され、糖化反応が促進されて高濃度の糖化液を得ることができるが、糖化酵素産生菌は50℃では生残できず、死滅する。
【0030】
糖化反応により得られたグルコース、キシロース等をエタノールに変換させる酵母菌の培養至適温度は、30℃付近にあるので、糖化反応によって得られたKIF菌の死菌を含む糖化培養液に、エタノール発酵能を有する酵母を添加して、30℃で発酵させても、エタノール発酵では何ら阻害を受けることなしに糖がエタノールに変換される。
【0031】
表1−2に、KIF菌株によって産生されるセルラーゼ及びヘミセルラーゼの至適pH、pH安定性、至適温度及び熱安定性について記載した。
【0032】
【表1】


【0033】
【表2】


【0034】
本発明は、上記微生物の培養、酵素、糖化反応等の至適pH及び温度差等の特性を利用して、微生物の培養液そのものから糖化及び発酵プロセスの一部又は全部を同一槽で行うことにより、リグノセルロース系バイオマスを効率的に目的物質であるエタノールに変換させることができる。また、本発明では、糖化反応やエタノール発酵にて発生する未反応残渣や死菌体などの残渣は、蒸留操作後に釜残として回収し、肥料、燃料などとして極力リサイクルさせることができる。
【0035】
従来、リグノセルロース系バイオマスを原料としてエタノールに変換するには、酸による糖化処理、糖化液のアルコール発酵を多段で行う必要があり、また、酵素法による糖化処理とアルコール発酵を組み合わせるとしても、糖化処理と発酵の条件が大きく相違するため、これらを別工程で行う必要があった。これに対して、本発明は、少なくとも温度条件を除く他の条件をできるだけ整合させることが可能になるように、微生物の培養、糖化処理及び発酵プロセスの条件を集約化させることで、リグノセルロース系バイオマスの培養、糖化及び発酵プロセスの一部又は全部を同一槽で実施することを実現するものである。
【0036】
本発明は、リグノセルロース系バイオマス原料を対象とした培養、糖化及び発酵プロセスの条件のうち、少なくとも温度条件を変動因子とし、他の条件(例えば、pH条件)を固定因子とする培養、糖化及び発酵系を構築することで、これらのプロセスの一部又は全部を同一槽で実施することを可能にしたものである。本発明では、上記変動因子として、少なくとも温度条件を含むことが重要であるが、例えば、最後の発酵プロセスにおいて、栄養成分を追加的に添加して培地組成を変動させても問題はない。また、本発明では、上記培養、糖化及び発酵の各プロセスを他のプロセスを阻害することなしに同一槽で実施し得るものであれば、上記温度条件に加えて、変動因子を適宜増やすことが可能である。
【0037】
本発明は、上記培養、糖化及び発酵のプロセスを集約化して、ヒータ及び/又は冷却手段を配設した温度制御装置を備えた一つのタンクを使用することで、これらのプロセスの一部又は全部を同一槽で実施することを可能にするものであり、それにより、これらのプロセスの省エネルギー、低コスト化を図り、低環境負荷型で実用化可能なリグノセルロース系バイオマスのエタノール変換方法を構築し、提供することを実現するものである。
【0038】
本発明は、リグノセルロース系バイオマス原料を対象とした糖化酵素産生微生物の培養プロセス、当該糖化酵素による糖化プロセス及び酵母菌によるアルコール発酵プロセスの培養、糖化及び発酵の一部又は全部のプロセスにおいて、少なくとも温度条件を主たる変動因子として任意の温度条件に制御、設定することが可能な共通の培養、糖化及び発酵槽を用いて、上記培養、糖化及び発酵の温度条件を各プロセスに好適なレベレルに順次調整することで、また、必要に応じて、培養、糖化及び発酵液の組成を適宜調整することで、これらのプロセスの一部又は全部を同一槽で実施することを特徴とするものである。リグノセルロース系バイオマス原料のエタノール変換プロセスにおいて、温度を主たる変動因子とする共通の培養槽等での培養、糖化及び発酵の各プロセスを実施可能にした例はこれまで見当らない。
【発明の効果】
【0039】
本発明により、以下のような効果が奏される。
(1)糖化酵素を産生する微生物の培養から、糖化及び発酵プロセスの一部又は全部を同一槽で高効率に実施できるリグノセルロース系バイオマスの新しいエタノール変換プロセスを構築し、提供することができる。
(2)リグノセルロース系バイオマス原料から、上記エタノール変換プロセスを利用して、高い効率と、低コストでエタノールを生産することが実現できる実用化可能な新規エタノール生産技術を提供することができる。
(3)リグノセルロース系バイオマスの従来の糖化方法である酸による糖化プロセスに代替可能な酵素法による同時培養及び糖化プロセスを提供することができる。
(4)リグノセルロース系を化学処理しないで微粉砕処理し、化学薬品を使用しないで微生物由来の糖化酵素を用いて温和な条件で木材を糖化処理できる。
(5)セルロース成分からグルコース(六炭糖)を、ヘミセルロース成分からマンノース等の六炭糖及びキシロース等の五炭糖を同時に糖化、回収できる。
(6)適宜適切なエタノール発酵微生物を用いてグルコース及びキシロースの両方からエタノール発酵させ、無駄なくエタノールを生産できる。
(7)硫酸などの強酸類を使用しないので、廃液処理が簡単で環境負荷が低い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0041】
本実施例では、糖化酵素を産生する微生物としてKIF62株を使用し、酵素誘導生産用の栄養源として、ポリペプトン15g/L、酵母エキス1g/L、硝酸ナトリウム5g/L、りん酸2水素カリウム10g/L、硫酸マグネシウム・7HO1g/L、硫酸第一鉄・7HO0.01g/L、硫酸亜鉛・7HO0.01g/L、硫酸マンガン・5HO0.01g/L、硫酸銅・5HO0.01g/Lを含み、pH条件を糖化反応の設定pH条件に合わせてpH5.0に調整した培地100mLと、酵素誘導用として、微粉砕処理ユーカリ粉末4gを500mL容三角フラスコに分注し、これらを30℃にて5日間振とう培養し、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ等の酵素が誘導された培養液を調製した。
【0042】
この培養液100mLに、微粉砕処理ユーカリ粉末20gを加え、設定反応温度に合わせて培養液の温度を調整して、pH5.0、50℃にて4日間攪拌しながら酵素糖化反応による糖化処理を実施して、グルコース8g及びキシロース2gを含有する糖化液100mLを調製した。糖化液の温度を30℃に戻し、これに、エタノール発酵用の栄養源として、酵母エキス2.5g/L、りん酸2アンモニウム0.25g/L、硫酸マグネシウム・7HO0.025g/L、pH5.0の10倍濃度液を10m加え、更に、グルコース資化性能を有する酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)種菌液を10mL加えて、嫌気的条件にて24時間培養し、培養液中に3.5gのエタノールを得た。
【実施例2】
【0043】
本実施例では、糖化酵素を産生する微生物としてKIF68株を使用し、酵素誘導生産用の栄養源として、ポリペプトン 15g/L、酵母エキス1g/L、硝酸ナトリウム5g/L、りん酸2水素カリウム10g/L、硫酸マグネシウム・7HO1g/L、硫酸第一鉄・7HO0.01g/L、硫酸亜鉛・7HO0.01g/L、硫酸マンガン・5HO0.01g/L、硫酸銅・5HO0.01g/Lを含み、pH条件を糖化反応の設定pH条件に合わせてpH5.0に調整した培地1000mLと、酵素誘導用として、微粉砕処理ベイマツ粉末40gを5000mL容三角フラスコに分注し、これらを30℃にて5日間振とう培養し、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ等の酵素が誘導された培養液を調製した。
【0044】
この培養液1000mLに、微粉砕処理ユーカリ粉末200gを加え、設定反応温度に合わせて培養液の温度を調整して、50℃にて6日間攪拌しながら酵素糖化反応による糖化処理を実施して、グルコース71g及びキシロース8.2gを含有する糖化液1000mLを調製した。糖化液の温度を30℃に戻し、これに、エタノール発酵用の栄養源として、酵母エキス2.5g/L、りん酸2アンモニウム0.25g/L、硫酸マグネシウム・7HO0.025g/L、pH5.0の10倍濃度液を100mL加え、糖化液量の10%(本例では100mL)容量加え、更に、グルコース資化性能を有する酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)種菌液を100mL加えて、嫌気的条件にて24時間培養し、培養液中に35gのエタノールを得た。
【実施例3】
【0045】
本実施例では、糖化酵素を産生する微生物としてKIF77株を使用し、酵素誘導生産用の栄養源として、コーンスチィプリカー 5g/L、りん酸2水素カリウム10g/L、硝酸カリウム5g/L、りん酸2アンモニウム5g/L、硫酸マグネシウム・7HO1g/L、硫酸第一鉄・7HO0.01g/L、硫酸亜鉛・7HO0.01g/L、硫酸マンガン・5HO0.01g/L、硫酸銅・5HO0.01g/L、消泡剤SAG471 0.1g/Lを含み、pH条件を糖化反応の設定pH条件に合わせてpH4.5に調整した培地1000mLと、酵素誘導用として、微粉砕処理ベイマツ粉末40gを2000mL容ジャーファーメンタに分注し、これらを30℃にて5日間通気攪拌培養し、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ等の酵素が誘導された培養液を調製した。
【0046】
この培養液1000mLに、微粉砕処理ベイマツ粉末200gを加え、設定反応温度に合わせて培養液の温度を調整して、50℃にて6日間攪拌しながら酵素糖化反応による糖化処理を実施して、グルコース84g、マンノース16g、及びキシロース4gを含有する糖化液1000mLを調製した。糖化液の温度を30℃に戻し、これに、エタノール発酵用の栄養源として、酵母エキス 2.5g/L、りん酸2アンモニウム0.25g/L、硫酸マグネシウム・7HO0.025g/L、pH5.0の10倍濃度液を100mL加え、更に、グルコース資化性能を有する酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)種菌液を100mL加えて、嫌気的条件にて24時間培養し、培養液中に48gのエタノールを得た。
【実施例4】
【0047】
本実施例では、糖化酵素を産生する微生物としてKIF78株を使用し、酵素誘導生産用の栄養源として、コーンスチィプリカー 5g/L、りん酸2水素カリウム10g/L、硝酸カリウム5g/L、りん酸2アンモニウム5g/L、硫酸マグネシウム・7HO1g/L、硫酸第一鉄・7HO0.01g/L、硫酸亜鉛・7HO0.01g/L、硫酸マンガン・5HO0.01g/L、硫酸銅・5HO0.01g/L、消泡剤SAG471 0.1g/Lを含み、pH条件を糖化反応の設定pH条件に合わせてpH4.5に調整した培地5000mLと、酵素誘導用として、微粉砕処理ユーカリ粉末250gを10L容ジャーファーメンタに分注し、これらを30℃にて8日間通気攪拌培養し、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ等の酵素が誘導された培養液を得た。
【0048】
この培養液5Lに、微粉砕処理ユーカリ粉末1000gを加え、設定反応温度に合わせて培養液の温度を調整して、50℃にて6日間攪拌しながら酵素糖化反応による糖化処理を実施して、グルコース400g及びキシロース80gを含有する糖化液5Lを調製した。糖化液の温度を30℃に戻し、これに、エタノール発酵用の栄養源として、酵母エキス2.5g/L、りん酸2アンモニウム0.25g/L、硫酸マグネシウム・7HO0.025g/L、pH5.0の10倍濃度液を500mL加え、更に、グルコース資化性能を有する酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)種菌液を500mL加えて、嫌気的条件にて24時間培養し、エタノール190gを含む発酵液6Lを得た。
【0049】
その後、更に、培養液中に同上の濃縮栄養源を500mL加え、これに、キシロース発酵能を有するピシア・スチピチス(Pichia stipitis)種菌液を500mL加え、30℃で通気攪拌しながら好気的条件にて72時間培養した結果、更に、10gのエタノールが蓄積され、培養液約7L中に合計200gのエタノールが蓄積された。
【実施例5】
【0050】
本実施例では、糖化酵素を産生する微生物としてKIF77株を使用し、酵素誘導生産用の栄養源として、ポリペプトン 15g/L、酵母エキス1g/L、硝酸ナトリウム5g/L、りん酸2水素カリウム10g/L、硫酸マグネシウム・7HO1g/L、硫酸第一鉄・7HO0.01g/L、硫酸亜鉛・7HO0.01g/L、硫酸マンガン・5HO0.01g/L、硫酸銅・5HO0.01g/Lを含み、pH条件を糖化反応の設定pH条件に合わせてpH5.0に調整した培地1000mLと、酵素誘導用として、微粉砕処理ユーカリ粉末50gを5000mL容三角フラスコに分注し、これらを30℃にて5日間振とう培養し、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ等の酵素が誘導された培養液を調製した。
【0051】
この培養液1Lに、シラカバ由来キシラン100gを加え、設定反応温度に合わせて培養液の温度を調整して、pH4.0、50℃にて5日間攪拌しながら酵素糖化反応による糖化処理を実施して、キシロース63を含有する糖化液1000mlを調製した。糖化液の温度を30℃に戻し、これに更に、エタノール発酵用の栄養素として、酵母エキス2.5g/L、りん酸二アンモニウム0.25g/L、硫酸マグネシウム・7HO0.025g/L、pH5.0の10倍濃度液を、糖化液量の10%(本例では100ml)容量加え、更に、キシロース資化性能を有する酵母ピシア・スチピチス(Pichia stipitis)種菌液を100mL加え、30℃で通気攪拌しながら好気的条件にて72時間培養し、培養液中に12gのエタノールを得た。
【実施例6】
【0052】
本実施例では、糖化酵素を産生する微生物としてKIF77株を使用し、酵素誘導生産用の栄養源として、ポリペプトン 15g/L、酵母エキス1g/L、硝酸ナトリウム5g/L、りん酸2水素カリウム10g/L、硫酸マグネシウム・7HO1g/L、硫酸第一鉄・7HO0.01g/L、硫酸亜鉛・7HO0.01g/L、硫酸マンガン・5HO0.01g/L、硫酸銅・5HO0.01g/Lを含み、pH条件を糖化反応の設定pH条件に合わせてpH5.0に調整した培地500mLと、酵素誘導用として、微粉砕処理サトウキビバガス粉末25gを5000mL容三角フラスコに分注し、これらを30℃にて5日間振とう培養し、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ等の酵素が誘導された培養液を調製した。
【0053】
この培養液500mLに、微粉砕処理サトウキビバガス粉末100gを加え、設定反応温度に合わせて培養液の温度を調整して、pH5.0、50℃にて4日間攪拌しながら酵素糖化反応による糖化処理を実施して、グルコース32g、及びキシロース14gを含有する糖化液500mLを調製した。糖化液の温度を30℃に戻し、これに更に、エタノール発酵用の栄養素として、酵母エキス2.5g/L、りん酸二アンモニウム0.25g/L、硫酸マグネシウム・7HO0.025g/L、pH5.0の10倍濃度液を50mL加え、更に、グルコース資化性能を有する酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)種菌液を50mL加えて、嫌気的条件にて24時間培養し、エタノール30gを含む発酵液600mLを得た。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上詳述したように、本発明は、バイオマスからのエタノールの製造方法に係るものであり、本発明により、バイオマスから同時的培養、糖化及び発酵、即ち、培養、糖化及びアルコール発酵プロセスの一部又は全部を同一槽で行う方式により、高い効率で、低コストで、しかも、低環境負荷型のプロセスで、エタノールを生産することが可能なリグノセルロース系バイオマスの新しいエタノール変換技術を提供することができる。また、本発明により、リグノセルロース系バイオマスのエタノール変換プロセスにおいて、糖化酵素産生微生物の培養プロセス、糖化プロセス及び糖化液のアルコール発酵プロセスの一部又は全部を同一槽で行い、上記同時培養、糖化及び発酵を実現可能にする糸状菌を用いた新しい糖化プロセスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明のエタノール発酵プロセスを示す。
【出願人】 【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
【出願日】 平成19年8月3日(2007.8.3)
【代理人】 【識別番号】100102004
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 政彦


【公開番号】 特開2008−54676(P2008−54676A)
【公開日】 平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願番号】 特願2007−203513(P2007−203513)