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組み換え蛋白質の製造方法 - 特開2008−54673 | j-tokkyo
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【発明の名称】 組み換え蛋白質の製造方法
【発明者】 【氏名】相沢 智康

【氏名】神谷 昌克

【氏名】北條 江里

【氏名】出村 誠

【氏名】河野 敬一

【要約】 【課題】組み換え蛋白質を融合蛋白質として生産することなく、宿主細胞内で強制的に

【構成】組み換え蛋白質の不溶性顆粒を宿主細胞を用いて製造する方法であって、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組み換え蛋白質の不溶性顆粒を宿主細胞を用いて製造する方法であって、前記組み換え蛋
白質とは異なる蛋白質であって前記宿主細胞内で単独で産生させたときに不溶性顆粒を形
成する蛋白質をコードするDNAと前記組み換え蛋白質をコードするDNAとを用いて前記宿主
細胞を形質転換する工程、及び該形質転換された宿主細胞を培養して前記組み換え蛋白質
及び前記組み換え蛋白質とは異なる蛋白質であって前記宿主細胞内で単独で産生させたと
きに不溶性顆粒を形成する蛋白質をそれぞれ産生させる工程を含む、前記組み換え蛋白質
の不溶性顆粒を製造する方法。
【請求項2】
宿主細胞が微生物細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
微生物細胞がEschericia属細菌である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
組み換え蛋白質をコードするDNAが組み込まれた発現ベクター及び前記組み換え蛋白質と
は異なる蛋白質であって前記宿主細胞内で単独で産生させたときに不溶性顆粒を形成する
蛋白質をコードするDNAが組み込まれた発現ベクターを用いて宿主細胞を形質転換する、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
組み換え蛋白質をコードするDNA及び前記組み換え蛋白質とは異なる蛋白質であって前記
宿主細胞内で単独で産生させたときに不溶性顆粒を形成する蛋白質をコードするDNAが組
み込まれた発現ベクターを用いて宿主細胞を形質転換する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
組み換え蛋白質をコードするDNA及び前記組み換え蛋白質とは異なる蛋白質であって前記
宿主細胞内で単独で産生させたときに不溶性顆粒を形成する蛋白質をコードするDNAが、
それぞれ異なる発現プロモーターに連結されている、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
組み換え蛋白質をコードするDNA及び前記組み換え蛋白質とは異なる蛋白質であって前記
宿主細胞内で単独で産生させたときに不溶性顆粒を形成する蛋白質をコードするDNAが、
同種の発現プロモーターに連結されている、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項8】
形質転換宿主細胞であって、組み換え蛋白質をコードするDNA及び前記組み換え蛋白質と
は異なる蛋白質であって前記宿主細胞内で単独で産生させたときに不溶性顆粒を形成する
蛋白質をコードするDNAにより形質転換された形質転換宿主細胞。
【請求項9】
下記の工程を含む、組み換え蛋白質の製造方法。
1)前記組み換え蛋白質をコードするDNA及び前記組み換え蛋白質とは異なる蛋白質であ
って前記宿主細胞内で単独で産生させたときに不溶性顆粒を形成する蛋白質をコードする
DNAにより形質転換された宿主細胞を調製する工程、
2)前記形質転換された宿主細胞に前記組み換え細胞の不溶性顆粒を産生させる工程、
3)前記宿主細胞から組み換え蛋白質の不溶性顆粒を回収する工程、
4)回収した組み換え蛋白質の不溶性顆粒を変性剤を含む溶液に可溶化する工程、及び
5)溶液から変性剤を除去して組み換え蛋白質をリフォールディングさせる工程。
【請求項10】
宿主細胞が微生物細胞である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
微生物細胞がEschericia属細菌である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
組み換え蛋白質をコードするDNAが組み込まれた発現ベクター及び前記組み換え蛋白質と
は異なる蛋白質であって前記宿主細胞内で単独で産生させたときに不溶性顆粒を形成する
蛋白質をコードするDNAが組み込まれた発現ベクターを用いて宿主細胞を形質転換する、
請求項9に記載の製造方法。
【請求項13】
組み換え蛋白質をコードするDNA及び前記組み換え蛋白質とは異なる蛋白質であって前記
宿主細胞内で単独で産生させたときに不溶性顆粒を形成する蛋白質をコードするDNAが組
み込まれた発現ベクターを用いて宿主細胞を形質転換する、請求項9に記載の製造方法。
【請求項14】
組み換え蛋白質をコードするDNA及び前記組み換え蛋白質とは異なる蛋白質であって前記
宿主細胞内で単独で産生させたときに不溶性顆粒を形成する蛋白質をコードするDNAが、
それぞれ異なる発現プロモーターに連結されている、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
組み換え蛋白質をコードするDNA及び前記組み換え蛋白質とは異なる蛋白質であって前記
宿主細胞内で単独で産生させたときに不溶性顆粒を形成する蛋白質をコードするDNAが、
同種の発現プロモーターに連結されている、請求項12又は13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、宿主細胞内において組み換え蛋白質の不溶性顆粒を製造する方法、及び該方
法を一部に含む組み換え蛋白質の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ある宿主細胞内で異種蛋白質を組み換え蛋白質として発現させようとすると、特に微生
物細胞である宿主細胞を用いて高等真核細胞由来の異種蛋白質を組み換え蛋白質として生
産しようとすると、当該組み換え蛋白質が宿主細胞内で不活性かつ不溶性の凝集体を形成
することが、経験的によく知られている。この様な蛋白質の不溶性の凝集体は、一般に不
溶性顆粒、封入体、あるいはインクルージョンボディ(inclusion body)などと呼ばれて
いる。なお、これらの用語はいずれも同義であるため、以下、本発明では不溶性顆粒と表
すことにする。
【0003】
組み換え蛋白質が宿主細胞内において不溶性顆粒を形成すると、活性を有する当該組み
換え蛋白質を回収するためには、この不溶性顆粒を宿主細胞から取り出し、不溶性顆粒の
可溶化と蛋白質のリフォールディング(refolding)を行って、活性を有する組み換え蛋
白質へと変換しなければならない。この可溶化とリフォールディングは、塩酸グアニジン
に代表される変性剤を含む溶液に不溶性顆粒を可溶化すること、その後、溶液から変性剤
を徐々に除去して蛋白質に活性型の立体構造をとらせることからなり、煩雑な操作と長時
間を要する。そのため、組み換え蛋白質の製造において、不溶性顆粒の形成を回避する方
法が種々検討されている。
【0004】
その一方で、宿主細胞において組み換え蛋白質の不溶性顆粒を形成させた場合には、宿
主細胞が有するプロテアーゼ等の修飾酵素による組み換え蛋白質の分解や修飾が抑制され
、結果として組み換え蛋白質の回収率が向上するという効果が期待され得る。また宿主細
胞の増殖等に対して影響を与えるおそれのある蛋白質を不溶性顆粒の形態で生産させるこ
とで、当該蛋白質の宿主細胞の増殖等に対する影響を回避することも可能である。さらに
、不溶性顆粒の単離と精製は比較的容易であるので、組み換え蛋白質に不溶性顆粒を形成
させることは、大規模な組み換え蛋白質の生産、特に工業的生産において有利であり得る
。この様な理由から、積極的に宿主細胞内において組み換え蛋白質の不溶性顆粒を形成さ
せる方法も、特に組み換え蛋白質の工業的生産において重要である。
【0005】
しかしながら、組み換え蛋白質が宿主細胞内において不溶性顆粒を形成するか否かは、
その蛋白質の固有の性質に依存し、また、ある蛋白質がある宿主細胞内で不溶性顆粒を形
成するかどうかの予測は一般に困難である。そこで、宿主細胞内において人為的にあるい
は強制的に組み換え蛋白質の不溶性顆粒を形成する方法が期待され、また現に開発されて
いる。
【0006】
その方法の代表例は、生産しようとする蛋白質を、宿主細胞内で不溶性顆粒を形成する
ことが予め分かっている蛋白質との融合蛋白質として発現させ、当該融合蛋白質の不溶性
顆粒を形成させる方法である(例えば特許文献1、特許文献2)。また、宿主細胞内にお
ける蛋白質の正しいフォールディングに関与するとされる、当該宿主細胞に固有のある種
の蛋白質の生産能を失った変異宿主細胞を用いて、組み換え蛋白質の不溶性顆粒の形成を
促す方法も報告されている(特許文献3)。
【0007】
しかし、融合蛋白質の不溶性顆粒を形成させる方法は、融合蛋白質をコードするDNA、
特に化学的あるいは酵素的に切断することのできる特定のアミノ酸配列を有するリンカー
ペプチドを介してなる融合蛋白質をコードするDNAを設計し、これを調製して宿主細胞に
導入するという、多数の工程からなる組み換え操作を必要とする。
【0008】
さらにその上で、不溶性顆粒から組み換え蛋白質を単離精製するために、不溶性顆粒の
可溶化と融合蛋白質のリフォールディングに加えて、融合蛋白質のペプチド結合を化学的
あるいは酵素的に所定の位置で切断して、組み換え蛋白質を回収、精製する操作が必要と
される。
【0009】
この化学的あるいは酵素的なペプチド結合の切断は、それ自体が煩雑な操作であり、工
業的な規模で組み換え蛋白質を生産する際の作業性あるいは生産コストの点で不利である

【0010】
またこの方法は、ペプチド結合の切断部位に関する特異性が低いと、融合蛋白質におけ
る所定の位置以外のペプチド結合が切断されてしまい、組み換え蛋白質の回収率が低下す
るという問題も指摘される。この様な非特異的なペプチド結合の切断が生じた場合、その
結果生じるペプチド断片は不純物となって、組み換え蛋白質の精製をさらに困難にする。
【0011】
また、蛋白質の正しいフォールディングの進行に関与するとされる宿主細胞に固有のあ
る種の蛋白質の生産能を失った変異宿主細胞を利用する方法は、利用可能な宿主細胞がか
かる変異宿主細胞に限定される他、全ての組み換え蛋白質に対して適用されるものではな
い。
【特許文献1】特開平5−328992
【特許文献2】特開平8−187094
【特許文献3】特表2006−513710
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、組み換え蛋白質を融合蛋白質として生産することなく、宿主細胞内で強制的
に組み換え蛋白質の不溶性顆粒を形成する、新たな方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
種々の組み換え蛋白質の宿主細胞における製造に関するこれまでの数多くの研究の結果
、宿主細胞内で単独で産生させると不溶性顆粒を形成する蛋白質が相当数報告されている
。本発明者らは、この宿主細胞内で単独で産生させたときに不溶性顆粒を形成する蛋白質
を、所望の蛋白質、特に当該宿主細胞内で単独で産生させたときに不溶性顆粒を形成しな
い蛋白質とともに当該宿主細胞内で産生させると、本来は不溶性顆粒を形成しないもしく
は僅かにしか形成しない蛋白質が不溶性顆粒を形成することを見出し、下記の各発明を完
成した。
【0014】
(1)組み換え蛋白質の不溶性顆粒を宿主細胞を用いて製造する方法であって、前記組み
換え蛋白質とは異なる蛋白質であって前記宿主細胞内で単独で産生させたときに不溶性顆
粒を形成する蛋白質をコードするDNAと前記組み換え蛋白質をコードするDNAとを用いて前
記宿主細胞を形質転換する工程、及び該形質転換された宿主細胞を培養して前記組み換え
蛋白質及び前記組み換え蛋白質とは異なる蛋白質であって前記宿主細胞内で単独で産生さ
せたときに不溶性顆粒を形成する蛋白質をそれぞれ産生させる工程を含む、前記組み換え
蛋白質の不溶性顆粒を製造する方法。
【0015】
(2)宿主細胞が微生物細胞である、(1)に記載の方法。
【0016】
(3)微生物細胞がEschericia属細菌である、(2)に記載の方法。
【0017】
(4)組み換え蛋白質をコードするDNAが組み込まれた発現ベクター及び前記組み換え蛋
白質とは異なる蛋白質であって前記宿主細胞内で単独で産生させたときに不溶性顆粒を形
成する蛋白質をコードするDNAが組み込まれた発現ベクターを用いて宿主細胞を形質転換
する、(1)に記載の製造方法。
【0018】
(5)組み換え蛋白質をコードするDNA及び前記組み換え蛋白質とは異なる蛋白質であっ
て前記宿主細胞内で単独で産生させたときに不溶性顆粒を形成する蛋白質をコードするDN
Aが組み込まれた発現ベクターを用いて宿主細胞を形質転換する、(1)に記載の製造方
法。
【0019】
(6)組み換え蛋白質をコードするDNA及び前記組み換え蛋白質とは異なる蛋白質であっ
て前記宿主細胞内で単独で産生させたときに不溶性顆粒を形成する蛋白質をコードするDN
Aが、それぞれ異なる発現プロモーターに連結されている、(4)又は(5)に記載の方
法。
【0020】
(7)組み換え蛋白質をコードするDNA及び前記組み換え蛋白質とは異なる蛋白質であっ
て前記宿主細胞内で単独で産生させたときに不溶性顆粒を形成する蛋白質をコードするDN
Aが、同種の発現プロモーターに連結されている、(4)又は(5)に記載の方法。
【0021】
(8)形質転換宿主細胞であって、組み換え蛋白質をコードするDNA及び前記組み換え蛋
白質とは異なる蛋白質であって前記宿主細胞内で単独で産生させたときに不溶性顆粒を形
成する蛋白質をコードするDNAにより形質転換された形質転換宿主細胞。
【0022】
(9)下記の工程を含む、組み換え蛋白質の製造方法。
【0023】
1)前記組み換え蛋白質をコードするDNA及び前記組み換え蛋白質とは異なる蛋白質であ
って前記宿主細胞内で単独で産生させたときに不溶性顆粒を形成する蛋白質をコードする
DNAにより形質転換された宿主細胞を調製する工程、
2)前記形質転換された宿主細胞に前記組み換え細胞の不溶性顆粒を産生させる工程、
3)前記宿主細胞から組み換え蛋白質の不溶性顆粒を回収する工程、
4)回収した組み換え蛋白質の不溶性顆粒を変性剤を含む溶液に可溶化する工程、及び
5)溶液から変性剤を除去して組み換え蛋白質をリフォールディングさせる工程。
【0024】
(10)宿主細胞が微生物細胞である、(9)に記載の方法。
【0025】
(11)微生物細胞がEschericia属細菌である、(10)に記載の方法。
【0026】
(12)組み換え蛋白質をコードするDNAが組み込まれた発現ベクター及び前記組み換え
蛋白質とは異なる蛋白質であって前記宿主細胞内で単独で産生させたときに不溶性顆粒を
形成する蛋白質をコードするDNAが組み込まれた発現ベクターを用いて宿主細胞を形質転
換する、(9)に記載の製造方法。
【0027】
(13)組み換え蛋白質をコードするDNA及び前記組み換え蛋白質とは異なる蛋白質であ
って前記宿主細胞内で単独で産生させたときに不溶性顆粒を形成する蛋白質をコードする
DNAが組み込まれた発現ベクターを用いて宿主細胞を形質転換する、(9)に記載の製造
方法。
【0028】
(14)組み換え蛋白質をコードするDNA及び前記組み換え蛋白質とは異なる蛋白質であ
って前記宿主細胞内で単独で産生させたときに不溶性顆粒を形成する蛋白質をコードする
DNAが、それぞれ異なる発現プロモーターに連結されている、(12)又は(13)に記
載の方法。
【0029】
(15)組み換え蛋白質をコードするDNA及び前記組み換え蛋白質とは異なる蛋白質であ
って前記宿主細胞内で単独で産生させたときに不溶性顆粒を形成する蛋白質をコードする
DNAが、同種の発現プロモーターに連結されている、(12)又は(13)に記載の方法

【発明の効果】
【0030】
本発明の方法によれば、宿主細胞内での安定性が低い蛋白質、宿主細胞の増殖や生存に
影響を与え得る蛋白質などを、大量かつ安定に製造することができる。また、所望の蛋白
質を別の蛋白質との融合蛋白質として発現させる必要はなく、従って組み換え蛋白質の回
収工程において融合蛋白質を化学的及び/又は酵素的に切断する必要もないので、より純
度の高い組み換え蛋白質をより簡便に調製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の一つの態様は、組み換え蛋白質の不溶性顆粒を宿主細胞を用いて製造する方法
であって、前記組み換え蛋白質とは異なる蛋白質であって前記宿主細胞内で単独で産生さ
せたときに不溶性顆粒を形成する蛋白質をコードするDNAと前記組み換え蛋白質をコード
するDNAとを用いて前記宿主細胞を形質転換する工程、及び該形質転換された宿主細胞を
培養して前記組み換え蛋白質及び前記組み換え蛋白質とは異なる蛋白質であって前記宿主
細胞内で単独で産生させたときに不溶性顆粒を形成する蛋白質をそれぞれ産生させる工程
を含む、前記組み換え蛋白質の不溶性顆粒を製造する方法である。
【0032】
本発明の方法は、それ自身を単独で宿主細胞内で発現させたときに不溶性顆粒を形成し
ないあるいは僅かにしか形成しない蛋白質を組み換え蛋白質として製造する場合に適して
いる方法である。特に、不溶性顆粒を形成しないことで宿主細胞が有するプロテアーゼ等
によって分解及び/又は修飾を受けやすい蛋白質、蛋白質が活性型として産生されること
によるフィードバック制御等の影響によって宿主細胞内での発現量を高めることが難しい
蛋白質、宿主細胞内で活性型として産生されることで当該宿主細胞の増殖能あるいは生存
能に好ましくない影響を与える蛋白質、などを組み換え蛋白質として製造する場合に、特
に適した方法である。
【0033】
この様な蛋白質の一部としては、ABF-2(AntiBacterial Factor-2)、ASABF(Ascaris
Suum AntiBacterial Factor)等の抗菌性蛋白質、FMBP-1(Fibroin modulator-binding p
rotein-1)等のDNA結合性蛋白質を挙げることが出来る。しかしながら、上記以外の蛋白
質であっても、不溶性顆粒としての生産が有利であると判断される蛋白質である限り、い
かなる蛋白質であっても本発明の対象とすることが出来る。
【0034】
本発明の方法で使用される宿主細胞の種類には特別の制限はないが、種々の発現系が確
立された、蛋白質の組み換え生産にとって好適な宿主細胞、特に微生物細胞を利用するこ
とが好ましい。例えば、Eschericia属細菌、Bacillus属細菌、Pseudomonas属細菌、Sacch
aromyces属酵母、Pichia属酵母、Aspergillus属の糸状菌などを好適な宿主細胞として挙
げることが出来る。特にEschericia属細菌、中でも大腸菌(Eschericia coli)の利用が
特に好ましい。
【0035】
本発明の方法で利用される宿主細胞内で単独で産生させたときに不溶性顆粒を形成する
蛋白質は、本発明の方法で生産しようとする組み換え蛋白質とは異なる蛋白質であって、
上記で説明したいずれかの宿主細胞内で単独で産生させたときに、不溶性顆粒を形成する
蛋白質であり、その殆どは宿主細胞に対する異種蛋白質である。以下、本発明で使用する
上記の蛋白質を「不溶性顆粒誘発蛋白質」と表すことにする。
【0036】
これまでの蛋白質の組み換え生産に関する研究において、宿主細胞内において不溶性顆
粒を形成する性質を有する蛋白質は多数報告されている(例えばMisawaらの総説、Biopol
ymers、Refolding of therapeutic proteins produced in Echerichia coli as inclusio
n bodies、1999年、第51巻、第4号、第297-307頁)。本発明では、これらのいずれも当該
宿主細胞における不溶性顆粒誘発蛋白質として利用することができる。また、宿主細胞内
で単独で産生させたときに不溶性顆粒を形成する性質を有することが新たに確認された蛋
白質も、本発明にいう不溶性顆粒誘発蛋白質として利用することができる。さらに、例え
ば特許文献1又は2に記載されている様な、不溶性顆粒を形成するために設計された融合
蛋白質、これは宿主細胞内で単独で産生させたときに不溶性顆粒を形成する蛋白質という
ことができる、を不溶性顆粒誘発蛋白質として使用してもよい。
【0037】
Eschericia属細菌を宿主細胞として選択したときに利用可能な不溶性顆粒誘発蛋白質と
しては、αーラクトアルブミン、リゾチーム、EGF、成長ホルモン、インターロイキン2
、インターロイキン6、特許文献1、2に記載の方法で調製される融合蛋白質等、その他
にも前記Misawaらの総説に記載されている蛋白質を具体的に例示することが出来る。また
Eschericia属細菌以外の微生物細胞を宿主として選択したときの不溶性顆粒誘発蛋白質の
例としては、Saccharomyces属細菌の場合にはプロインシュリン(Cousens L. et al.、Ge
ne、1987年、第61巻、第3号、第265-275頁)、Bacillus属細菌の場合にはプロキモシン(
Parente D. et al.、FEMS Microbial Lett.、1991年、第15巻、第61(2-3):243-9頁)など
を挙げることができる。この場合、本発明の方法で生産しようとする組み換え蛋白質が宿
主細胞内の環境において正負のいずれに電荷を有しているかを参考にし、当該電荷と反対
の電荷を有する蛋白質を不溶性顆粒誘発蛋白質として選択することが好ましい。
【0038】
本発明の方法は、不溶性顆粒誘発蛋白質をコードするDNAと組み換え蛋白質をコードす
るDNAとを用いて前記宿主細胞を形質転換する工程を含む方法である。
【0039】
この工程で使用されるDNAは、不溶性顆粒誘発蛋白質又は組み換え蛋白質の各アミノ酸
配列をコードするORF配列とこれを宿主細胞内で産生させることのできる機能性プロモー
ター配列とを有するDNAであり、その他ターミネーター配列等の宿主細胞内での発現に好
適な塩基配列を含んでいてもよい。なお、各蛋白質は、His-tagなどの蛋白質の精製等に
有用なタグ配列等が付加されていてもよい。
【0040】
かかるDNAは、蛋白質を組み換え的に生産する際に用いられる一般的な遺伝子組み換え
手法を用いて、当業者が容易に作成することができる。例えば、宿主細胞において蛋白質
を発現させることのできる適当な機能性プロモーター配列を有する発現ベクターに、不溶
性顆粒誘発蛋白質又は組み換え蛋白質をコードするORFを組み込んで、組み換えベクターD
NAを作成することができるが、もちろんこの方法のみには限定されない。
【0041】
本発明の不溶性顆粒誘発蛋白質をコードするDNA及び組み換え蛋白質をコードするDNAは
、それぞれ別個の発現ベクターDNAであってもよく、また両蛋白質からなる融合蛋白質が
コードされる結果とならない限り、不溶性顆粒誘発蛋白質をコードするORF及び組み換え
蛋白質をコードするORFを一つの発現ベクターに有するDNAであってもよい。
【0042】
また、不溶性顆粒誘発蛋白質をコードするDNA及び組み換え蛋白質をコードするDNAは、
それぞれの蛋白質に固有の発現プロモーターの制御下で発現させてもよいが、人為的な発
現の誘導が可能な機能性プロモーターの制御下に不溶性顆粒誘発蛋白質をコードするORF
及び組み換え蛋白質をコードするORFを連結し、当該誘導が可能な機能性プロモーターに
よって発現させることが好ましい。この場合、不溶性顆粒誘発蛋白質をコードするORF及
び組み換え蛋白質をコードするORFは、それぞれ別の機能性プロモーターによって発現さ
せても、同種の機能性プロモーターによって発現させてもよいが、発現誘導を一つの操作
で行うことができる点で、同種の機能性プロモーターによって発現させることが好ましい
。また同種の機能性プロモーターによって発現させる場合には、不溶性顆粒誘発蛋白質を
コードするORF及び組み換え蛋白質をコードするORFのそれぞれの上流に同種の機能性プロ
モーターを配置してもよく、また一つの機能性プロモーターの下流に不溶性顆粒誘発蛋白
質をコードするORF及び組み換え蛋白質をコードするORFを直列において、RNAポリメラー
ゼのいわゆるリードスルーを利用して発現させてもよい。
【0043】
上記の人為的な発現の誘導が可能な機能性プロモーターは、例えばIPTGやラクトースそ
の他の化合物を培地に添加することで誘導可能な機能性プロモーター、培地組成、培養温
度、培地のpHその他の培養条件を変化させることで誘導可能な機能性プロモーター、光
や電気等の物理学的刺激を与えることで誘導可能な機能性プロモーター、その他いかなる
機能性プロモーターであってもよい。
【0044】
かかる機能性プロモーターの非限定的な例としては、Eschericia属細菌で利用可能なT7
プロモーター、lacプロモーター、trpプロモーター、λPLプロモーターなど、Bacillus属
細菌で利用可能なアルカリプロテアーゼ由来プロモーター、中性プロテアーゼ由来プロモ
ーター、αアミラーゼ由来プロモーター、Saccharomyces属酵母で利用可能なGAL1プロモ
ーター、GAL10プロモーター、Pichia属酵母で利用可能なAOX1プロモーター等を挙げるこ
とができるが、これらには限定されない。
【0045】
上記のDNAを用いて宿主細胞を形質転換する方法は、格別の限定や工夫を要することな
く、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、PEG法、その他の方法から宿主細
胞毎に利用可能な好適な方法を選択して行えばよい。なお、この様にして形質転換された
宿主細胞も、本発明の一態様である。
【0046】
本発明のもう一つの工程は、形質転換された宿主細胞を培養して組み換え蛋白質及び不
溶性顆粒誘発蛋白質をそれぞれ産生させる工程である。
【0047】
形質転換された宿主細胞の培養は、培地組成、温度、pH、酸素濃度などの種々の培養
条件を、当該宿主細胞の増殖に好適な条件に設定して行えばよい。その様な条件は、各宿
主細胞において公知であり、当業者にとって試行錯誤を要するものではない。また、かか
る培養条件の下で増殖させた形質転換された宿主細胞に対して、機能性プロモーターの制
御下にある組み換え蛋白質及び不溶性顆粒誘発蛋白質をコードするDNAの発現を、該機能
性プロモーター毎に定まる所定の方法で誘導させることで、組み換え蛋白質及び不溶性顆
粒誘発蛋白質を産生させることができる。
【0048】
以上の方法により、形質転換された宿主細胞内で組み換え蛋白質の不溶性顆粒を製造す
ることができる。
【0049】
本発明のもう一つの態様は、下記の工程を含む、組み換え蛋白質の製造方法である
1)前記組み換え蛋白質をコードするDNA及び不溶性顆粒誘発蛋白質をコードするDNAによ
り形質転換された宿主細胞を調製する工程、
2)前記形質転換された宿主細胞に前記組み換え細胞の不溶性顆粒を産生させる工程、
3)前記宿主細胞から組み換え蛋白質の不溶性顆粒を回収する工程、
4)回収した組み換え蛋白質の不溶性顆粒を変性剤を含む溶液に可溶化する工程、及び
5)溶液から変性剤を除去して組み換え蛋白質をリフォールディングさせる工程。
【0050】
上記工程1)と2)は、先に詳細に説明した本発明の組み換え蛋白質の不溶性顆粒を製
造する方法に相当する。これらを除く工程3)〜5)は、宿主細胞から蛋白質の不溶性顆
粒を回収して活性型の蛋白質を得るまでの一般的な方法をそのまま利用すればよく、特別
な操作は要しない。
【0051】
工程3)の不溶性顆粒の回収は、超音波処理、圧壊、凍結融解、溶菌酵素処理などの手
法を用いて不溶性顆粒を含む宿主細胞を破壊し、遠心分離操作等によって不溶性顆粒を他
の細胞構成成分から分離して回収する工程である。上記の細胞を破壊する手法や遠心分離
の条件は、当業者により広く知られた方法あるいは条件を採用して行うことができる。
【0052】
工程4)は、不溶性顆粒を溶解することのできる変性剤を含む適当な溶液に不溶性顆粒
を置いて、不溶性顆粒を可溶化する工程である。本発明では、従来公知の変性剤であれば
いずれも利用可能である。非限定的な例としては、塩酸グアニジン、チオシアン酸カリウ
ム、尿素、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、TritonX-100などを挙げることができる。一
般的には、これらの変性剤を高濃度(例えば4〜7M程度)に含む緩衝水溶液を用意し、
この水溶液に回収した組み換え蛋白質の不溶性顆粒を加え、数時間〜数日に亘って低温ま
たは室温でインキュベーションしながら、不溶性顆粒を可溶化すればよい。
【0053】
工程5)は、変性剤ならびに可溶化された組み換え蛋白質を含む緩衝水溶液から、変性
剤を除去して、組み換え蛋白質をリフォールディングさせる工程である。この工程におけ
る詳細な条件も、変性剤によって可溶化された蛋白質にリフォールディングさせるための
一般的な条件に従えばよい。通常は、数時間〜数日にわたる透析操作によって、緩衝溶液
中の変性剤の濃度を徐々に低下させることで、組み換え蛋白質をリフォールディングさせ
ることができる。
【0054】
上記の操作を経て回収、精製される活性型の組み換え蛋白質は、他の蛋白質、特に不溶
性顆粒誘発蛋白質との融合蛋白質の形態にはない蛋白質である。その為本発明は、融合蛋
白質の形態で不溶性顆粒を形成させる従来の方法で必要とされる融合蛋白質の所定の位置
におけるペプチド結合の切断と組み換え蛋白質のさらなる回収、という操作を必要としな
い。また、当該ペプチド結合の切断によって生じる融合蛋白質の部分断片の混入や、また
ペプチド結合の非特異的な切断によって生じるペプチド断片の混入もなく、組み換え蛋白
質を高純度に製造することができる。
【0055】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限
定されるものではない。
【実施例】
【0056】
<実施例1>
1)線虫C.elegans由来の抗菌性ペプチドABF-2(AntiBacterial Factor-2、GenBank En
try:AB029810)ならびに線虫Ascaris.suum由来の抗菌性ペプチドASABF(Ascaris Suum An
tiBacterial Factor、GenBank Entry:D83529)のシグナル配列を除く各ORFに対して、増
幅DNA断片の5’末端と3’末端にそれぞれ制限酵素NdeIとXhoIの認識配列が導入されるよ
うに設計・合成したプライマーDNAを用いてPCR反応を行い、増幅DNA断片を調製した。ま
た、カイコ(Bombix mori)由来DNA結合性蛋白質FMBP-1(Fibroin modulator-binding pro
tein-1、GenBank Entry:AB163434)をコードするORFに対して、増幅DNA断片の5’末端と3
’末端にそれぞれ制限酵素AseIとXhoIの認識配列が導入されるように設計・合成したプラ
イマーDNAを用いてPCR反応を行い、増幅DNA断片を調製した。
【0057】
上記の様にして得た増幅DNA断片それぞれを、制限酵素NdeIとXhoIで開環させた市
販の発現ベクターpET-22bに組み換えて、pET/ABF-2/HT、pET/ASABF/HT及びpET/FMBP/HTを
得た。上記の操作で用いたプライマーDNAは、pET-22b由来のヒスチジンタグ(His-tag、H
T)がその上流に位置する組み換え蛋白質のC末端に付加されるように設計してあり、よっ
てpET/ABF-2/HT、pET/ASABF/HT及びpET/FMBP/HTは、pET-22b由来のHTがC末端に付加され
た組み換え蛋白質であるABF-2/HT、ASABF/HT及びFMBP/HTをそれぞれ発現する。
【0058】
2)ヒトラクトアルブミン(HLA、Humanα-lactalbmin、GenBank Entry:HSLACTG)のシ
グナル配列を除くORFに対して、増幅DNA断片の5’末端と3’末端にそれぞれ制限酵素NdeI
とXhoIの認識配列が導入されるように設計・合成したプライマーDNAを用いてPCR反応を行
い、増幅DNA断片を調製した。これを、制限酵素NdeIとXhoIで開環させた市販の発現ベク
ターpCOLADuet-1(Novagen社)に組み換えて、発現ベクターpCOLA/HLAを得た。
【0059】
3)大腸菌BL21(DE3)に上記1)2)で調製したベクターをそれぞれ導入して、各抗
菌性ペプチドならびにHLAをそれぞれ単独に発現する形質転換体(TF/ABF-2/HT、TF/ASABF
/HT、TF/FMBP/HT)を得た。また大腸菌BL21(DE3)に2)で調製したpCOLA/HLAを導入し
て形質転換体を得、この形質転換体にさらに1)で調製したベクターをそれぞれ導入して
、HLAと抗菌性ペプチドまたはDNA結合性蛋白質とを共に発現可能な形質転換体(TF/ABF-2
/HT/HLA、TF/ASABF/HT/HLA、TF/FMBP/HT/HLA)を得た。またpET-22bのみで形質転換させ
た大腸菌(Control 1)ならびにpCOLADuet-1のみで形質転換させた大腸菌(Control 2)
を用意した。
【0060】
4)3)で得た各形質転換体を、TF/ABF-2/HT、TF/ASABF/HT、TF/FMBP/HT並びにContro
l 1についてはアンピシリンを含むLB培地、TF/ABF-2/HT/HLA、TF/ASABF/HT/HLA、TF/FMBP
/HT/HLAについてはアンピシリン及びカナマイシンを含むLB培地、Control2についてはカ
ナマイシンを含むLB培地それぞれ3mlを用いて37℃でOD=0.8(600nm)となるまで培養した
後、IPTGを終濃度1mMとなるように加え、さらに4時間培養を続けた後、菌体を遠心分離
処理で回収した。
【0061】
5)4)で回収した菌体を20mM Tris-HCL緩衝液0.6mlに懸濁し、出力10W、30秒間の超
音波処理と遠心分離処理を行って、不溶性顆粒を沈殿として回収した。沈殿をSDSを含む
泳動試料用緩衝液(100mM Tris-HCl pH6.8、25%グリセロール、1%SDS、0.02%Coomasiie G
-250、2%βメルカプトエタノール)に懸濁し、98℃で10分間加熱した。加熱後の試料につ
いて、16.5%ポリアクリルアミドゲルを用いたTricine-PAGE(Schagger Hら、Anal. Bioch
em.、1987年、第166巻、第2号、368-379頁)を行った。
【0062】
泳動後のゲルをCBBを用いて染色したところ、TF/ABF-2/HT、TF/ASABF/HT、TF/FMBP
/HTではcontrol1及びControl2と比較して特徴的なバンドはほとんど確認されなかったが
、TF/ABF-2/HT/HLA、TF/ASABF/HT/HLA、TF/FMBP/HT/HLAでは、Control1とControl2それぞ
れに対して特徴的なバンドとして、各抗菌性ペプチドに相当する蛋白質のバンドならびに
HLAに相当するバンドが観察された(図1a〜1c)。
【0063】
また電気泳動後のゲルを、CBBに代えてHis-tagを有する蛋白質のみを染色すること
のできるキット(Invirtogen社製)を用いて染色し、UVトランスイルミネーターを用いて
His-tagを有する蛋白質のみを選択的に蛍光検出するとともに(図1a〜1c)、CCDカメラ装
置を用いて染色後のゲルの画像撮影を行い、解析ソフト(CS Analyzer 2.0)を用いて蛋
白質の定量を行った。この結果、TF/ABF-2/HT、TF/ASABF/HT及びTF/FMBP/HTにおけるバッ
ググラウンドノイズを考慮しても、TF/ABF-2/HT/HLA、TF/ASABF/HT/HLA及びTF/FMBP/HT/H
LAでは少なくとも8倍、6倍、3倍の発現量の増加がそれぞれ確認された。
【0064】
<実施例2>
1)実施例1で使用した線虫C.elegans由来の抗菌性ペプチドABF-2のシグナル配列を除
くORFに対して、増幅DNA断片の5’末端と3’末端にそれぞれ制限酵素NdeIとXhoIの認識配
列が導入されるように設計・合成したプライマーDNAを用いてPCR反応を行い、増幅DNA断
片を調製した。この増幅DNA断片を、制限酵素NdeIとXhoIで開環させた市販の発現ベクタ
ーpET-22bに組み換えて、His-tagを持たないABF-2を産生するベクターpET/ABF-2を得た。
上記の操作で用いたプライマーDNAは、pET-22b由来のHTの上流に終止コドンが挿入される
様に設計してあり、よってpET/ABF-2はC末端にHTを持たないABF-2を発現する。
【0065】
2)ヒトリゾチーム(HLZ、Human lysozyme、GenBank Entry:HUMLSZA)のシグナル配列
を除くORFに対して、増幅DNA断片の5’末端と3’末端にそれぞれ制限酵素NdeIとXhoIの認
識配列が導入されるように設計・合成したプライマーDNAを用いてPCR反応を行い、増幅DN
A断片を調製した。これを、制限酵素NdeIとXhoIで開環させた市販の発現ベクターpCOLADu
et-1(Novagen社)に組み換えて、発現ベクターpCOLA/HLZを得た。
【0066】
3)大腸菌BL21(DE3)に上記1)2)で調製したベクター、並びに実施例1の2)で
調製したpCOLA/HLAをそれぞれ導入して、ABF-2、HLA及びHLZをそれぞれ単独に発現する形
質転換体(TF/ABF-2、TF/HLA、TF/HLZ)を得た。また大腸菌BL21(DE3)に2)で調製し
たpCOLA/HLAとpCOLA/HLZをそれぞれ導入して形質転換体を得、この形質転換体にさらにpE
T/ABF-2を導入して、HLA又はHLZとABF-2とを共に発現可能な形質転換体(TF/ABF-2/HLA、
TF/ABF-2/HLZ)を得た。またpET-22bのみで形質転換させた大腸菌(Control1)ならびにp
COLADuet-1のみで形質転換させた大腸菌(Control2)を用意した。実施例1の4)5)と
同様の操作を行い、Tricine-PAGE後のゲルをCBBで染色した(図2)。
【0067】
この結果、TF/ABF-2/HLA、TF/ABF-2/HLZは、いずれもHLA、HLZに相当するバンドの
他に、ABF-2に相当する特徴的なバンドが観察された。また、TF/ABF-2におけるABF-2の発
現量に比較して、TF/ABF-2/HLA並びにTF/ABF-2/HLZにおけるABF-2の発現量が有意に増加
していた。
【0068】
<実施例3>
実施例2で調製した形質転換体TF/ABF-2/HLA(HLAとABF-2とが共に発現する宿主細胞)
を、アンピシリン及びカナマイシンを含むLB培地250mlでそれぞれ37℃でOD=0.8(600nm)
となるまで培養した後、IPTGを終濃度1mMとなるように加え、さらに4時間培養を続けた
後、菌体を遠心分離処理で回収した。
【0069】
回収した菌体を20mM Tris-HCL緩衝液25mlに懸濁し、出力180W、15分間の超音波処理と
遠心分離処理を行って、不溶性顆粒を沈殿として回収した。沈殿を0.5% Triton-X100を含
む水溶液10mlで2回洗浄した後、8M 尿素、3mM EDTA、200mMβメルカプトエタノールを含
む20mM Tris-HCl pH8.0に沈殿を懸濁し、37℃で3時間インキュベーションした。
【0070】
インキュベーション後、9400×g、30分間の遠心分離処理を行って回収した上清を、平
衡化バッファー(6M尿素、3mM EDTA、3mMβメルカプトエタノールを含む20mM Tris-HCl p
H8.0)で平衡化した陽イオン交換樹脂(SP-sepharose)を充填したカラムに供した。平衡
化バッファーでカラムを洗浄後、平衡化バッファーを基にした0〜1MのNaClの直線勾配溶
出を行って、カラムからABF-2を回収した。
【0071】
回収したABF-2画分に対する透析を、透析バッファー(2mM還元型グルタチオン、0.2mM
酸化型グルタチオンを含む20mM Tris-HCl pH8.0)を用いて繰り返し行った。尿素の含有
量を低下させる毎にサンプルの一部を回収し、Tricine-PAGEを行った(図3)。この操作
によって、ABF-2を大量に生産することができる。
【0072】
<実施例4>
1)P.horikoshii由来の機能未知の蛋白質PHS001(hypothetical protein、Uniprot entry : O74079)をコードするORFに対して、増幅DNA断片の5’末端と3’末端にそれぞれ制限酵素NdeIとXhoIの認識配列が導入されるように設計・合成したプライマーDNAを用いてPCR反応を行い、増幅DNA断片を調製した。
【0073】
上記の様にして得た増幅DNA断片を、制限酵素NdeIとXhoIで開環させた市販の発現ベクターpET-22bに組み換えて、pET/PHS001/HTを得た。上記の操作で用いたプライマーDNAは、pET-22b由来のヒスチジンタグ(His-tag、HT)がその上流に位置する組換え蛋白質のC末端に付加されるように設計してあり、よってpET/PHS001/HTは、pET-22b由来のHTがC末端に付加された組み換え蛋白質であるPHS001/HTを発現する。
【0074】
2)大腸菌BL21(DE3)に、上記1)で調製したベクター及び実施例2の2)で調製したpCOLA/HLZをそれぞれ導入して、PHS001/HT及びHLZをそれぞれ単独に発現する形質転換体(TF/PHS001/HT、TF/HLZ)を得た。また大腸菌BL21(DE3)に2)で調製したpCOLA/HLZを導入して形質転換体を得、この形質転換体にさらにpET/PHS001/HTを導入して、HLZとPHS001/HTを共に発現可能な形質転換体(TF/PHS001/HT/HLZ)を得た。またpET-22bのみで形質転換させた大腸菌(Control 1)ならびにpCOLADuet-1のみで形質転換させた大腸菌(Control 2)を用意した。実施例1の4)5)と同様の操作の操作を行って得られたTricine-PAGE後のゲルをCBBで染色した(図4上)。
【0075】
この結果、TF/PHS001/HT/HLZ(図4上、右レーン)からは、HLZに相当するバンドの他に、PHS001に相当する特徴的なバンド(矢印→)が観察された。また、TF/PHS001/HT(図4上、左)におけるPHS001の発現量に比較して、TF/PHS001/HT/HLZにおけるPHS001の発現量が有意に増加していた。
【0076】
また電気泳動後のゲルを、CBBに代えてHis-tagを有する蛋白質のみを染色することのできるキット(Invitrogen社製)を用いて染色し、UVトランスイルミネーターを用いてHis-tagを有する蛋白質のみを選択的に蛍光検出するとともに(図4下)、CCDカメラ装置を用いて染色後のゲルの画像撮影を行い、解析ソフト(CS Analyzer 2.0)を用いて蛋白質の定量を行った。この結果、TF/PHS001/HTにおけるバックグラウンドノイズを考慮しても、TF/PHS001/HT/HLZでは少なくとも3倍の発現量の増加が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1a】実施例1で調製した形質転換体TF/ABF-2/HT/HLA(レーン右)及びTF/ABF-2/HT(レーン左)の細胞抽出物について行ったSDS-PAGEのCBB染色(上)ならびにHT染色(下)の結果を示す。矢印はABF-2を表す。
【図1b】実施例1で調製した形質転換体TF/ASABF/HT/HLA(レーン右)及びTF/ASABF/HT(レーン左)の細胞抽出物について行ったSDS-PAGEのCBB染色(上)ならびにHT染色(下)の結果を示す。矢印はASABFを表す。
【図1c】実施例1で調製した形質転換体TF/FMBP/HT/HLA(レーン右)及びTF/FMBP/HT(レーン左)の細胞抽出物について行ったSDS-PAGEのCBB染色(上)ならびにHT染色(下)の結果を示す。矢印はFMBP-1を表す。
【図2】形質転換体TF/ABF-2(レーン左)、TF/ABF-2/HLZ(レーン中央)、TF/ABF-2/HLA(レーン右)の細胞抽出物について行ったSDS-PAGEのCBB染色の結果を示す。
【図3】ヒト−αラクトアルブミンと共発現させたABF-2の精製結果を示す。各レーンは左から、分子量マーカー、不溶性顆粒、不溶性顆粒を可溶化して得られる上清、陽イオン交換樹脂カラムの通過液、陽イオン交換樹脂から回収されたABF-2(透析前)、透析後のABF-2をそれぞれ示す。
【図4】実施例4で調製した形質転換体TF/PHS001/HT/HLZ(レーン右)及びTF/PHS001/HT(レーン左)の細胞抽出物について行ったSDS-PAGEのCBB染色(上)ならびにHT染色(下)の結果を示す。矢印はPHS001を表す。
【出願人】 【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人 北海道大学
【出願日】 平成19年8月2日(2007.8.2)
【代理人】 【識別番号】100102668
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 憲生

【識別番号】100113332
【弁理士】
【氏名又は名称】一入 章夫


【公開番号】 特開2008−54673(P2008−54673A)
【公開日】 平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願番号】 特願2007−201532(P2007−201532)