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【発明の名称】 活性型肝細胞増殖因子アクティベーターに対する特異的抗体とその使用法
【発明者】 【氏名】仲 大地

【氏名】長池 一博

【要約】 【課題】活性型HGFAを特異的に認識し、不活性型HGFAは実質的に認識しない抗体、同抗体を用いて活性型HGFAを測定する方法を提供する。

【構成】HGFA前駆体をコードするHGFA cDNAを使用して調製した組換え体不活性型HGFA、及び同HGFAをプロテアーゼ処理して得られる活性型HGFAを用いて、活性型HGFAに対して反応性を示し、不活性型HGFAに対して反応性を示さないモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを選択し、得られたハイブリドーマの培養上清から目的とするモノクローナル抗体を調製する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含むことを特徴とする、モノクローナル抗体の作製方法。
(1)不活性型肝細胞増殖因子アクティベーター(HGFA)の翻訳開始アミノ酸から数えて407番目のアルギニンと408番目のイソロイシン間で限定分解を受けることにより活性化している活性型HGFAを抗原としてマウスを免疫する。
(2)マウスの脾臓から得た抗体産生細胞とミエローマ細胞を融合し、ハイブリドーマを作製する。
(3)不活性型HGFAをアルガトロバンを添加して調製する。
(4)上記(2)で得られたハイブリドーマの中から、前記活性型HGFAと上記(3)で調製された不活性型HGFAを用いて、該活性型HGFAに対する解離定数が1×10-8M以下であり、不活性型HGFAに対する解離定数が1×10-5M以上である抗体を産生するハイブリドーマを選択する。
(5)得られたハイブリドーマの培養上清から前記モノクローナル抗体を調製する。
【請求項2】
請求項1に記載の方法により作製された、不活性型HGFAの翻訳開始アミノ酸から数えて407番目のアルギニンと408番目のイソロイシン間で限定分解を受けることにより活性化している活性型HGFAに対する解離定数が1×10-8M以下であり、不活性型HGFAに対する解離定数が1×10-5M以上であるモノクローナル抗体。
【請求項3】
受託番号FERM BP−7779であるハイブリドーマにより産生される請求項2に記載のモノクローナル抗体。
【請求項4】
請求項2または3に記載のモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマ細胞系。
【請求項5】
請求項2または3に記載のモノクローナル抗体の1種又は複数種を用いて、活性型HGFAを免疫学的方法により特異的に測定することを特徴とする、活性型HGFAの測定方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、活性型肝細胞増殖因子アクティベーター(HGFA)に対する特異的測定用抗体またはモノクローナル抗体、その使用方法および測定キットに関する。また活性型HGFAを指標にした疾患状態の患者、特に臓器炎症、糸球体腎炎、癌、心筋梗塞、狭心症および血栓症に関する検出方法、さらにはこれらの方法の実施に最適な生体成分および血液の採取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)は、タンパク質・ペプチド中のペプチド結合を加水分解する機能を有するタンパク質であり、生体機能と深く関連しつつ、その恒常性維持に重要な役割を果たしている。例えば、血液中に存在する種々のプロテアーゼ群は、それら自身が緻密なカスケードを形成し、血液の凝固・線溶を制御している。
【0003】
肝細胞増殖因子アクティベーター(Hepatocyte Growth Factor Activator、以下「HGFA」と略す)は、その活性中心にセリン残基を有するセリンプロテアーゼの一種として知られている(宮澤ら、非特許文献1)。HGFAは、一般的な血中プロテアーゼが血液凝固・線溶系カスケードに関与するのとは異なり、肝細胞増殖や臓器再生に関与するサイトカインとして知られている肝細胞増殖因子(Hepatocyte Growth Factor;以下「HGF」と略す)(仲ら、非特許文献2)に作用して、これを特異的に限定分解して活性化するユニークな性質を有している(下村ら、非特許文献3)。しかしながらHGFAの作用は、ラットを用いた動物モデル実験や試験管内での実験によるHGFの活性化作用しか知られておらず(宮澤ら、非特許文献4)、ヒトの病態における役割、機能および血中濃度と病態の関連に関しては全く判っていなかった。
【0004】
HGFAはSDS−PAGE法にて分子量約96,000〜約98,000(以下「98kDaHGFA」と略す)を示すものと、その翻訳開始アミノ酸から数えて372番目のアルギニンと373番目のバリン間で限定分解をうけたC末端側のペプチドである分子量約34,000〜約38,000(以下「36kDa HGFA」と略す)を示すものが知られている。各分子量に幅があるのは、糖鎖結合量のヘテロジェナイティーおよびSDS−PAGE法を還元下または非還元下で実施する分子量測定値の相違にもとづくものであり、本質的に単一のタンパク質である。さらに、各HGFAは通常、不活性型として血中に存在しているが、翻訳開始アミノ酸から数えて407番目のアルギニンと408番目のイソロイシン間で限定分解を受けることにより活性化し、一本鎖状態のHGFAはジスルフィド結合でヘテロダイマー化した二本鎖状態のHGFAへと変換される。この活性化したHGFAは、基質であるHGFを特異的に活性化すると考えられている(下村ら、非特許文献5)。
【0005】
HGFAの血中濃度と病態の関連を解析するには、ヒト組織、体液、または血液中などの生体成分中に存在する活性型HGFAを特異的に測定する必要がある。そして、活性型HGFAを特異的に検出または測定するためには、活性型HGFAを極めて特異的に認識し、不活性型HGFAは実質的に認識しない性質を持った抗体、特に望ましくはモノクローナル抗体の取得が不可欠である。しかしながらこの様な性質を有する抗体の存在は現在まで全く知られておらず、さらにはヒト血液などの生体成分中に存在する活性型HGFAに特異的な測定方法やキットは存在しない。
【非特許文献1】J.Biol.Chem.,268:10024-10028(1993)
【非特許文献2】J.Biol.Chem.,267:20114-20119(1992)
【非特許文献3】Cytotechnology, 8:219-229(1992)
【非特許文献4】J.Biol.Chem.,271:3615-3618(1996)
【非特許文献5】J.Biol.Chem.,268:22927-22932(1993)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、活性型HGFAを特異的に認識し、不活性型HGFAは実質的に認識しない抗体、同抗体を用いて活性型HGFAを測定する方法、並びに活性型HGFAが関与する疾病の検出法及びキットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ヒト病態におけるHGFA血中濃度と各種ヒト疾患との関連を解析するため、ヒト血中におけるHGFA定量系の構築を試みた。まず、HGFAに対する既存のマウスモノクローナル抗体として知られている7E10, P1-4, A-1, A-6, A-23,A-32, A-51, A-75(宮澤ら、J.Biol.Chem.,271:3615-3618(1996))を用い、2抗体サンドイッチ法を用いた酵素標識抗体測定系(enzyme-linkedimmunosorbent assay;以下「ELISA測定系」と略す)を構築した。さらに、健常人、臓器疾患をはじめとする種々の疾患患者の血液(血漿または血清)に対して、HGFAモノクローナル抗体の反応性を解析していった。しかしながら、これらのモノクローナル抗体を用いたELISA測定系では、健常人をはじめ、すべてのヒト血液に対して一様に強い反応性を示し、ヒト疾患に対する特異的な反応性、すなわち血中におけるHGFA濃度の顕著な変化は全く検出することは出来なかった。そこで本発明者らは、HGFAに対する既存のモノクローナル抗体が有するHGFAへの反応性を解析し、この原因の追求を試みた。
【0008】
まず、HGFAは活性型および不活性型の2形態が存在することから、それぞれのHGFAに対する各モノクローナル抗体の反応性を解析した。具体的には、活性型HGFAおよび不活性型HGFAのそれぞれを固相プレートに付着させ、固相に付着したHGFAと各モノクローナル抗体の反応性を解析した結果、これらのモノクローナル抗体は、活性型HGFAおよび不活性型HGFAの両方に反応する性質を有していることが判った。これらの結果は、既存のモノクローナル抗体を使用したELISA法では、血中に恒常的かつ大量に存在していると考えられる不活性型HGFA(下村らJ.Biol.Chem.,268:22927-22932(1993))、または微量の活性型HGFAと不活性型HGFAの両方を測定していることが考えられ、これら既存のモノクローナル抗体を使用したELISA測定系では、HGFAとヒト疾患との関連が全く判らないことが判明した。
【0009】
そこで本発明者らは、HGFAは活性型および不活性型の2形態が存在することに着目し、ヒト生体内に存在するHGFAの活性化状態を特異的に検出し、各種ヒト疾患とその血中に存在する活性型HGFA量との関連に関して検討を進めた。そして、鋭意研究を重ねた結果、活性型HGFAを認識し、不活性型HGFAを実質的に認識しないポリクローナル抗体やモノクローナル抗体の作製にはじめて成功した。さらに、これらの抗体を使用した免疫学的測定法を用いることにより、ヒト生体成分中に存在する活性型HGFAと反応し不活性型HGFAとは実質的に反応しない、すなわち活性型HGFAを特異的に測定する方法およびそのキットを完成するに至った。
【0010】
さらに、本発明の活性型HGFA特異的測定方法およびそのキットを使用した場合、健常人と比較し、糸球体腎炎をはじめとする臓器障害の患者や癌患者の血液中に存在する活性型HGFA量が著しく増加することをはじめて見いだした。また、血中の活性型HGFA量が増加することを指標に、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞などをはじめとする血栓症を感度良く予知することが可能であることを初めて見いだすに至った。
【0011】
一方、ヒト血液をはじめとする生体成分中に存在する活性型HGFA量を測定する際、その中に存在する活性型HGFAを安定かつ再現よく採取する方法が必要となる。本発明者
らはこの方法に関し、種々のプロテアーゼインヒビターの添加等を検討した結果、選択的トロンビン阻害剤であるアルガトロバンを添加することにより、極めて安定かつ再現良く活性型HGFAを測定することが可能なことを見いだした。また、詳細に検討を重ねた結果、全血、血清、血漿などのヒト血液を採取する場合にでも、アルガトロバンの添加は有効であること、血液のなかではクエン酸血漿を用いることが極めて良好な結果が得られることを見いだした。
【0012】
本発明は、上記知見からなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
(1)活性型肝細胞増殖因子アクティベーター(HGFA)を認識する抗体であって、不活性型HGFAを実質的に認識しない抗体。
(2)活性型HGFAに対する解離定数が1×10-8M以下である(1)の抗体。
(3)モノクローナル抗体である(1)又は(2)の抗体。
(4)SDS−PAGE法で約34,000〜約98,000を示す活性型HGFAを認識し、不活性型HGFAを実質的に認識しない(3)の抗体。
(5)SDS−PAGE法で約34,000〜約38,000を示す活性型HGFAを認識する(4)の抗体。
(6)受託番号FERM BP−7779であるハイブリドーマにより産生される(4)のモノクローナル抗体。
(7)活性型HGFAの前駆体である不活性型HGFAの翻訳開始アミノ酸から数えて407番目のアルギニンと408番目のイソロイシン間で限定分解を受けることにより活性化している活性型HGFAを認識し、不活性型HGFAを実質的に認識しないモノクローナル抗体。
(8)活性型HGFAを認識し、不活性型HGFA、及び活性型HGFAとプロテアーゼインヒビターの複合体を実質的に認識しないモノクローナル抗体。
(9)(3)〜(8)のいずれかのモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマ細胞系。
(10)(1)〜(8)のいずれかの抗体の1種又は複数種を用いて、活性型HGFAを免疫学的方法により特異的に測定することを特徴とする、活性型HGFAの測定法。
(11)活性型HGFAを測定する検体が、疾患の疑いのある被検者または被検動物から採取された生体成分である(10)の方法。
(12)前記疾患が、臓器炎症、糸球体腎炎、癌、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞または血栓症である(11)の方法。
(13)疾患の疑いのある被検者から採取された生体成分中の活性型HGFAを検出または測定することを特徴とする疾患の検出方法。
(14)前記疾患が、臓器炎症、糸球体腎炎、癌、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞または血栓症である(13)の方法。
(15)前記生体成分が血液又はその分画物もしくは処理物であることを特徴とする(13)または(14)の方法。
(16)前記生体成分が血漿である(15)の方法。
(17)血漿がクエン酸血漿である(16)の方法。
(18)前記生体成分にアルガトロバンを添加することを特徴とする(13)〜(17)のいずれかの方法。
(19)(1)〜(8)のいずれかの抗体の1種又は複数種を含み、活性型HGFAを検出または測定するためのキット。
(20)臓器炎症、糸球体腎炎、癌、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞または血栓症の診断に用いられる(19)のキット。
(21)疾患の疑いのある患者から採取された生体成分中の活性型HGFAを測定することを特徴とする(19)または(20)のキット。
(22)活性型HGFAの検出または測定を、免疫染色によって行うことを特徴とする(19)〜(21)のいずれかのキット。
(23)血清もしくは血漿または全血取得用採血管であって、アルガトロバンを添加した採血管。
(24)活性型HGFA測定に用いる血清もしくは血漿または全血の採血に用いる(23)の採血管。
【0013】
本明細書において、活性型HGFAを認識し不活性型HGFAを実質的に認識しないモノクローナル抗体を、「活性型HGFA特異的モノクローナル抗体」、活性型HGFAを認識し不活性型HGFAを実質的に認識しないポリクローナル抗体を、「活性型HGFA特異的ポリクローナル抗体」ということがある。さらに、これらを総称して、「活性型HGFA特異的抗体」ということがある。また、「活性型HGFAを認識する」とは、抗原抗体反応により活性型HGFAに結合することをいい、好ましくは、活性型HGFAに対する解離定数が1×10-8M以下、より好ましくは1×10-9M以下であることをいう。「不活性型HGFAを実質的に認識しない」とは、抗原抗体反応により不活性型HGFAに実質的に結合しないことをいう。より具体的には、「不活性型HGFAを実質的に認識しない」とは、通常の免疫学的測定法によっては、不活性型HGFAを検出することができないことを意味し、好ましくは、不活性型HGFAに対する解離定数が1×10-5M以上であることをいう。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、活性型HGFAに特異的に結合し、不活性型HGFAに結合しないモノクローナル及びポリクローナル抗体が提供される。本発明の抗体は、活性型HGFAの特異的な測定、検出に用いることができる。
本発明の活性型HGFAの測定法は、活性型HGFAの血中濃度に反映される各種疾患の診断に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明を詳細に説明する。
<1>活性型HGFAに対する特異的抗体作製用の免疫抗原およびスクリーニング抗原本発明において用いられる「活性型HGFA」とは、その基質である肝細胞増殖因子(HGF)に作用し、その不活性型である一本鎖型HGF(仲らJ.Biol.Chem.,267:20114-20119(1992))から活性型である二本鎖型HGFに変換する能力を有するものを指す。ここで、一本鎖型とは、HGF遺伝子より生成された一本の前駆体タンパク質よりシグナルペプチドが除去されたものを、二本鎖型とは、HGFの翻訳開始アミノ酸から数えて494番目のアルギニンと495番目のバリン間で限定分解を受け、生じた二本の鎖がジスルフィド結合によりヘテロダイマー化したものを指す。またHGFAの活性とは、不活性型である一本鎖型HGFを活性型である二本鎖型HGFに変換する活性を示す。
【0016】
活性型HGFAは、具体的には、例えば特開平6-153946に記載されているHGFA前駆体タンパク質の翻訳開始アミノ酸から数えて407番目のアルギニンと408番目のイソロイシン間で限定分解を受けることにより活性化しているHGFAが含まれる。この活性型HGFAは、通常SDS−PAGE法で分子量約34,000〜98,000であり、そのN末端が限定分解された種々の分子量を示す活性型HGFAが知られている(Mitsubishi Kasei R & D Review, 8 (1), 26-35 (1994))。その例として還元下のSDS−PAGEにて分子量約98,000を示すもの、またはその翻訳開始アミノ酸から数えて88番目のアルギニンと89番目のアラニン間で限定分解をうけたC末端側のペプチドである分子量約80,000を示すもの、または翻訳開始アミノ酸から数えて372番目のアルギニンと373番目のバリン間で限定分解をうけたC末端側のペプチドである分子量約36,000を示すものが存在する。糖鎖結合量のヘテロジェナイティー、分子量の測定法、又は精製法により、上記の分子量約98,000を示すものは、約96,000〜98,000の幅を示すことがあり、上記の分子量約36,000を示すものは、約34,000〜38,000の幅を示すことがある。従ってここで用いられる活性型HGFAとは、そ
の分子量に限定されることなく、その基質であるHGFを活性化する能力を有していればよい。
免疫抗原またはモノクローナル抗体のスクリーニング等に使用する活性型HGFAまたは不活性型HGFAは下村らの方法(J.Biol.Chem.,268:22927-22932(1993)に従い、ヒトなどの血液より精製したものを使用することが可能である。また特開平6-153966および特開平6-153946に記載されているHGFA cDNAを使用して大腸菌などの微生物、昆虫細胞、酵母、動物細胞および動物を使用した組換え蛋白質であるHGFAを使用したものも利用可能である。
【0017】
特に、活性型HGFA特異的抗体を取得するためには、免疫用抗原、スクリーニング用抗原として、不活性型HGFAが混入していない高純度の活性型HGFA、および活性型HGFAが混入していない高純度の不活性型HGFAを調製することが必要である。このような目的から、ここで使用する活性型HGFA、不活性型HGFAとしては、HGFA cDNAを使用した組換え蛋白質が望ましい。例えば、特開平6-153946に記載されているHGFA前駆体をコードするHGFA cDNAを使用し、その全長または一部を適当な発現ベクターに挿入し、これを大腸菌などの微生物、昆虫細胞、酵母、動物細胞または動物に導入し、さらにHGFAを発現しているこれらの遺伝子導入細胞の培養上清または細胞内、組織、体液より精製操作を実施して、組換え蛋白質であるHGFAを得ることが可能である。また細胞系を使用することなく、Rapid Translation System RTS500(Roshe Diagnostics社)などを使用した試験管内での転写・翻訳システムを用いて、目的とするHGFAを作製することも可能である。
【0018】
具体的な例としては、特開平6-153946に記載されている不活性型HGFA前駆体の全長であり、かつシグナル配列を有する655アミノ酸をコードするHGFAcDNAを動物細胞発現ベクターのプロモーター下流に挿入した発現ベクターを用いたり、特開平6-153966に記載された様に適当なシグナル配列とHGFA前駆体の翻訳開始アミノ酸から数え373番目のバリン以降のC末端側をコードするcDNAを結合させた動物細胞発発現ベクター、または適当なシグナル配列とHGFA活性を発揮する能力を有する領域のcDNAを結合させた動物細胞発発現ベクターを使用する方法が挙げられる。これらの発現ベクターを動物細胞に導入後、そのHGFA cDNAを発現している細胞を選択して、その培養上清から精製することにより組換え蛋白質であるHGFAを得ることが可能である。
【0019】
このような方法で得られた組換え蛋白質であるHGFAは、一般的には不活性型である。従って、下村らの方法(J.Biol.Chem.,268:22927-22932(1993))を参考に、この不活性型HGFAに対して適量のトロンビンおよびデキストラン硫酸、またはカリクレインおよびトロンビンを添加することにより、この不活性型HGFAを活性化させることが可能である。この処理により活性化されたHGFAは、HPLCを使用したゲル濾過またはアフィニティークロマトグラフィーで精製することにより、純化することが可能である。
【0020】
精製純度の高い活性型HGFAおよび不活性型HGFAは、免疫原として重要であるだけでなく、活性型HGFA特異的ポリクローナル抗体をアフィニテイー精製により選別したり、活性型HGFA特異的モノクローナル抗体をスクリーニングする際に、極めて重要な材料となる。
【0021】
精製された不活性型HGFAは極めて不安定であり、わずかな不純物の混入により活性化されてしまうことを、本発明者らは詳細な検討の結果見いだしている。このような活性型HGFAが混入された不活性型HGFAを用いたり、逆に不活性型HGFAが混入された活性型HGFAを用いては、活性型HGFA特異的ポリクローナル抗体や活性型HGFA特異的モノクローナル抗体を得ることは困難である。そこで本発明者らは、不活性型HGFAを調製する際の人為的な活性化を防ぐ阻害物質として、種々のプロテアーゼインヒビ
ターを検討した結果、選択的トロンビン阻害剤であるアルガトロバン(三菱東京製薬(株))をHGFAに添加することが有用であることを見いだした。すなわち不活性型HGFAの精製時や、モノクローナル抗体スクリーニングの際、不活性型HGFAにアルガトロバンを添加しておけば、その人為的な活性化を防ぎ活性型HGFAの混入を防ぐことが可能である。ここで調製された活性型HGFAは、活性型HGFA特異的抗体を取得するための免疫用抗原としてふさわしいし、さらに活性型HGFAを認識して不活性型HGFAを実質的に認識しない抗体を選択、精製する材料としても使用することが出来る。
【0022】
一方、不活性型HGFAは、不活性型HGFAを認識して活性型HGFAを実質的に認識しない抗体を取得するための免疫用抗原としてふさわしいし、活性型HGFAを認識して不活性型HGFAを実質的に認識しない抗体以外の抗体を選別、吸収または除去する材料として使用することが出来る。
【0023】
活性型HGFA特異的抗体を取得するのに必要な免疫用抗原またはスクリーニング用抗原として、活性型HGFAと不活性型HGFAにおける一次構造配列(アミノ酸配列)の相違部位、または立体構造の相違部位に位置するペプチドを利用することが可能である。例えば活性型HGFAの蛋白質表面だけに露出し、不活性型HGFAの蛋白質表面には露出していない部位のペプチドを用いることができる。このような蛋白質の立体構造予測は、一般的に当業者にとっては入手可能であり、コンピュータープログラムにより活性型HGFAおよび不活性型HGFAのアミノ酸配列より三次元コンフォメーション構造を図式化して表現したものが入手可能である。この両者の比較により、活性型HGFAに特異的な反応を示す抗体の結合部位(抗原部位)となる領域を探しだし、その部分アミノ酸配列を合成したペプチドを免疫抗原として使用することが可能である。
【0024】
また、GENETYX(SOFTWARE DEVELOPMENT CO., LTD)などのタンパク質構造解析ソフトウェアを使用して、HGFAのアミノ酸配列に関する情報から、活性型HGFAおよび不活性型HGFAに関する親水性・疎水性の相違部位、Cho-Fasman法やRobson法などによる二次構造解析結果の相違部位、抗原性の相違部位となる領域を探しだし、そのアミノ酸配列に基づいて合成したペプチドを免疫抗原やスクリーニング抗原として利用してもよい。例えば、活性型HGFAは、HGFA前駆体タンパク質の翻訳開始アミノ酸から数えて407番目のアルギニンと408番目のイソロイシン間で限定分解を受けたアミノ酸配列を有している。一方、不活性型HGFAは、この407番目のアルギニンと408番目のイソロイシン間が連続したアミノ酸配列を有している。従って、不活性型HGFAには存在せず活性型HGFAのみに存在するアミノ酸配列として、407番目のアルギニンをC末端として含み、そのN末端方向に存在する数アミノ酸配列を含むペプチドが利用可能である。その例として下記のものを選ぶことが可能である。配列2〜12のアミノ酸配列は、配列1のアミノ酸配列(配列番号1)のN末端側から1アミノ酸残基づつ欠失した配列である。
【0025】
配列1:GRRHKKRTFLRPR 配列2: RRHKKRTFLRPR 配列3: RHKKRTFLRPR 配列4: HKKRTFLRPR 配列5: KKRTFLRPR 配列6: KRTFLRPR 配列7: RTFLRPR 配列8: TFLRPR 配列9: FLOPR 配列10: LOPR 配列11: OPR 配列12: PR
【0026】
また不活性型HGFAには存在せず活性型HGFAのみに存在するアミノ酸配列として、408番目のイソロイシンをN末端として含みそのC末端方向に存在する数アミノ酸配列を含むペプチドとして、下記のものを選ぶことが可能である。配列14〜24のアミノ酸配列は、配列13のアミノ酸配列(配列番号2)のC末端側から1アミノ酸残基づつ欠失した配列である。
【0027】
配列13:IIGGSSSLPGSHP 配列14:IIGGSSSLPGSH 配列1
5:IIGGSSSLPGS 配列16:IIGGSSSLPG 配列17:IIGGSSSLP 配列18:IIGGSSSL 配列19:IIGGSSS 配列20:IIGGSS 配列21:IIGGS 配列22:IIGG 配列23:IIG 配列24:II
【0028】
また活性型HGFAには存在せず不活性型HGFAのみに存在するアミノ酸配列として、HGFA前駆体タンパク質の翻訳開始アミノ酸から数えて407番目のアルギニンと408番目のイソロイシン間(配列25の13位と14位の間)が連続したアミノ酸配列を含む、例えば配列25(配列番号3)のようなペプチドを選択することが出来る。
【0029】
配列25:GRRHKKRTFLRPRIIGGSSSLPGSHP
【0030】
これらのペプチドを免疫用抗原として使用する場合、一般的にはキャリアーとしてKLH(キーホール・リンペット・ヘモシアニン)、BSA(ウシ血清アルブミン)、OVA(オバルブミン)などの蛋白質または高分子体に結合させたものを免疫用抗原として使用することが望ましい。例えば、配列1から配列12に記載されたペプチドのN末端にさらにシステインを付加したもの、配列13から配列24に記載されたペプチドのC末端にさらにシステインを付加したもの、配列25に記載されたペプチドのN末端またはC末端にシスティンを付加したペプチドを合成し、PIERCE社Imject Maleimide Activated Carrier Proteinsに結合させたものを、免疫用抗原として用いることが可能である。
【0031】
また配列1から配列25に対応したcDNAとキャリアーとなる蛋白質のcDNAを結合させ、両者のコードするペプチドが融合した融合蛋白質を遺伝子工学的手法で各種細胞で発現させ、精製して得たものも使用可能である。配列1から配列24のいずれかを含むものは、活性型HGFA特異的抗体を取得するための免疫用抗原としてふさわしいし、さらに活性型HGFA特異的抗体を選択、精製する材料としても使用することが出来る。一方、配列25のようなペプチドは、不活性型HGFAを認識して活性型HGFAを実質的に認識しない抗体を取得するための免疫用抗原としてふさわしいし、活性型HGFA特異的抗体以外の抗体を吸収または除去する材料として使用することが出来る。
【0032】
<2>活性型HGFAを認識し不活性型HGFAを実質的に認識しないモノクローナル抗体の作製活性型HGFA特異的モノクローナル抗体を取得するには、免疫用抗原として、前述した活性型HGFAを用い、通常行われる免疫学的方法を実施すればよい。例えば活性型98kDa HGFAもしくは活性型36kDa HGFAまたは両者を混合して使用することが出来る。
【0033】
また、配列1から配列24のいずれかを含むペプチドを前述した方法でキャリアーと融合させたものを調製し、これらを1種以上混合して免疫用抗原としても良い。さらには活性型HGFAに特異的な抗原部位を含むペプチドを使用しても良い。
【0034】
免疫に使用する動物は特に限定されないが、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、マウス、ラット、モルモット、ニワトリ等はいずれも使用できる。免疫用抗原の動物への接種は、皮下、筋肉内、腹腔内に完全フロイントアジュバントや不完全フロイトアジュバントと免疫用抗原をよく混和して行う。接種は、2週間から5週間ごとに実施し、接種した抗原に対する免疫動物の抗体価が充分に上昇するまで続ける。この後、免疫動物に対して抗原のみの静脈注射を行い、その3日後に抗体産生細胞を含むと考えられる脾臓もしくはリンパ節を採取し、この脾臓細胞またはリンパ細胞を腫瘍細胞と細胞融合させる。この後、細胞融合して不死化した抗体産生細胞(ハイブリドーマ)を単離する。ここで使用する腫瘍細胞は、一般的に免疫を行った動物から調製される脾臓細胞もしくはリンパ細胞と同一種であることが望ましいが、異種動物間のものでも可能である。
【0035】
腫瘍細胞の例として、p3(p3/x63-Ag8), P3U1, NS-1, MPC-11, SP2/0, FO, x63.6.5.3, S194, R210等の骨髄腫細胞が使用される。細胞融合は一般に行われている方法、例えば「単クローン抗体実験マニュアル」(講談社サイエンティフィック 1987年出版)に従って実施すればよい。細胞融合は、融合させる細胞を懸濁した融合培地に細胞融合促進剤を加えることに実施することができる。細胞融合促進剤としては、センダイウイルスや平均分子量1000-6000のポリエチレングリコールなどが挙げられる。この際、更に融合効率を高めるために、ジメチルスルホキシド等の補助剤やIL−6等のサイトカインを融合培地に添加することも出来る。免疫を行った脾臓細胞もしくはリンパ細胞に対する腫瘍細胞の混合比は、例えば腫瘍細胞に対し、脾臓細胞もしくはリンパ細胞を約1倍から10倍程度用いればよい。
【0036】
上記の融合培地としてはERDF培地、RPMI-1640培地、MEM培地等の通常の各種培地を使用することが出来、融合時は通常、牛胎児血清(FBS)等の血清を培地から抜いておくのがよい。融合は、上記の免疫を行った脾臓細胞もしくはリンパ細胞と腫瘍細胞との所定量を上記の培地内でよく混合し、予め37℃程度に加温しておいたポリエチレングリコール溶液を20%から50%程度加え、好ましくは30℃から37℃で1分から10分程度反応させることによって実施する。以降、適当な培地を逐次添加して遠心し、上清を除去する操作を繰り返す。
【0037】
目的とするハイブリドーマは、通常の選択培地、例えばHAT培地(ヒポキチンサン、アミノプテリン及びチミジンを含む培地)で培養する。このHAT培地での培養は、目的とするハイブリドーマ以外の細胞(未融合細胞等)が死滅するのに充分な時間、通常では数日から数週間行えばよい。活性型HGFA特異的モノクローナル抗体を取得する際、最も技術的に重要な点がそのスクリーニングである。活性型HGFA特異的モノクローナル抗体を産生しているハイブリドーマのスクリーニングは、前述した活性型HGFA、不活性型HGFAなどの材料を用い、種々の免疫化学的方法で解析することにより可能となる。例えば活性型HGFAまたは不活性型HGFAをスクリーニング用抗原として用い、これらのスクリーニング用抗原とハイブリドーマ培養上清中に分泌されるモノクローナル抗体との結合を、ELISA法などの酵素免疫測法、またはウエスタンブロッティング法などで解析して、目的とするハイブリドーマを選択することが出来る。
【0038】
具体的には、活性型HGFAをスクリーニングプレートなどに付着させ、BSA等でブロッキングしたものに対して、上記ハイブリドーマの培養上清を添加して、活性型HGFAを認識する抗体を分泌しているハイブリドーマを選別する。さらに、選別されたハイブリドーマに対し、不活性型HGFAをスクリーニングプレートなどに付着させ、BSA等でブロッキングしたものを行い、この不活性型HGFAを認識しない抗体を分泌しているハイブリドーマを選別する。例えば、選択するハイブリドーマの培養上清を活性型HGFAもしくは不活性型HGFAが付着したELISA法用のプレートに添加して反応させ、十分な洗浄操作後、標識抗マウスIgGポリクローナル抗体を添加してさらに反応させる。洗浄操作後に標識の検出を行い、活性型HGFAを付着したプレートに反応性を有し、不活性型HGFAを付着させたプレートに対して反応性を示さない培養上清を有するハイブリドーマを選択する。標識としては、後述する各種酵素、蛍光物質、化学発光物質、ラジオアイソトープ、ビオチンまたはアビジン等が用いられる。
【0039】
上記のスクリーニングにより、活性型HGFAを認識するモノクローナル抗体であって、不活性型HGFAを実質的に認識しないモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマが得られる。一方、この様なハイブリドーマをスクリーニングする際、先に示した配列1から配列24を含むペプチドのいずれかに反応し、配列25などのペプチドに反応しないことを指標としても良い。この様な方法で選択されたハイブリドーマが産生する抗体に関しては、さらに活性型HGFAに反応し不活性型HGFAとは反応しないことを確認すると
良い。上記抗体の反応性は、活性型HGFA又は不活性型HGFAに対する解離定数を測定することによって確認することができる。本発明の抗体の活性型HGFAに対する解離定数は、好ましくは1×10-8M以下、より好ましくは1×10-9M以下である。また、不活性型HGFAに対する解離定数は、好ましくは1×10-5M以上である。
【0040】
得られたハイブブリドーマは、限界希釈法によりクローニングすることにより、単一のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマクローンを得ることが出来る。このハイブリドーマクローンは、あらかじめFBS中に含まれるウシ抗体(IgG)を除いたFBSを1〜5%程度加えた培地または無血清用培地を用いて培養を行い、得られた培養上清を目的のモノクローナル抗体を精製する原料とする。一方、得られたハイブリドーマクローンをあらかじめプリステンを投与したBalb/CマウスまたはBalb/c(nu/nu)マウスの腹腔内に移植し、10日から14日後にモノクローナル抗体を高濃度に含む腹水を採取し、目的のモノクローナル抗体を精製する原料としてもよい。モノクローナル抗体を精製する方法は、通常の免疫グロブリン精製法を用いれば良く、例えば、硫安分画法、ポリエチレン分画法、エタノール分画法、陰イオン交換クロマトグラフィー、プロテインAまたはプロテインGが結合したアフィニティークロマトグラフィー等により実施することが出来る。
【0041】
<3>活性型HGFAを認識し不活性型HGFAを実質的に認識しないポリクローナル抗体の作製活性型HGFA特異的ポリクローナル抗体は、活性型HGFAまたは不活性型HGFAを免疫用抗原として用い、得られた免疫動物由来のポリクローナル抗体に対し、活性型HGFAを認識し不活性型HGFAを実質的に認識しない抗体を精製する操作を実施すれば取得することが可能である。
【0042】
また、ポリクローナル抗体を取得する免疫用抗原として、前述した活性型HGFAに特異的な抗原部位を含むペプチドとキャリアーの融合体も使用可能である。例えば、前述した配列1から配列25を含むいずれかのペプチドとキャリアー蛋白質または高分子体と融合させたものを1種以上混合して免疫用抗原して用いてもよい。免疫に使用する動物は特に限定されないが、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、マウス、ラット、モルモット、ニワトリ等はいずれも使用できる。免疫用抗原の動物への接種は皮下、筋肉内、腹腔内に完全フロイントアジュバントや不完全フロイトアジュバントとよく混和して行う。接種は2週間から5週間ごとに実施し、接種した抗原に対する免疫動物の抗体価が充分に上昇するまで続ける。この後、免疫動物に対して抗原のみの静脈注射を行い、その3日後から5日後に抗血清を取得する。
【0043】
取得した抗血清からポリクローナル抗体を精製する方法は、通常の免疫グロブリン精製法を用いれば良く、例えば、硫安分画法、ポリエチレン分画法、エタノール分画法、陰イオン交換クロマトグラフィー、プロテインAまたはプロテインGが結合したアフィニティークロマトグラフィー等により実施することが出来る。
【0044】
活性型HGFA特異的ポリクローナル抗体を取得するための精製操作とは、活性型HGFAを認識し不活性型HGFAを実質的に認識しないポリクローナル抗体を分画または精製可能な方法であればいずれでも良く、例えばイオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、分子ふるいクロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲル電気遊動法、免疫電気遊動法等が挙げられる。具体的な方法の一つとして、活性型HGFAまたは不活性型HGFAを固定化した樹脂を用いたアフィニティーカラムクロマトグラフィーが挙げられる。例えば、前述の方法で得られたポリクローナル抗体を材料にして、不活性型HGFAを固定化した樹脂を用いたアフィニティークロマトグラフィーを実施する。この方法により、不活性型HGFAに結合しない非吸着画分に存在するポリクローナル抗体を回収する。次に、この非吸着画分を材料にして、活性型HGFAを固定化した樹脂を用いたアフ
ィニティークロマトグラフィーを実施し、活性型HGFAに結合した吸着画分に存在するポリクローナル抗体を回収する。
【0045】
これらの方法により、活性型HGFA特異的ポリクローナル抗体を得ることが出来る。また、このアフィニティークロマトグラフィーの方法として、活性型HGFA特異的な抗原部位と考えられるアミノ酸配列をもったペプチドを利用することも可能である。例えば、前述した配列1から配列25のいずれか一種類以上を固定化した樹脂を用いたアフィニティークロマトグラフィーが利用可能である。例えば配列1から配列24を含むペプチドを固定化した樹脂は、活性型HGFA特異的ポリクローナル抗体を精製するアフィニティークロマトグラフィー用の固定化用担体として使用することが出来る。一方、配列25のようなペプチドを固定化した樹脂は、活性型HGFA特異的抗体以外の抗体を吸収もしくは除去するアフィニティークロマトグラフィー用の固定化用担体として使用することが出来る。
【0046】
<4>活性型HGFAを特異的に測定する方法活性型HGFAを特異的に測定する方法とは、活性型HGFA特異的抗体と、活性型HGFAを反応させる操作を含む方法を意味する。従ってこの方法は、活性型HGFAを測定し、不活性型HGFAは実質的には測定しないことを特徴とする方法である。本方法は、本発明の活性型HGFA特異的抗体を使用して、生体試料中の活性型HGFAを定性または定量する様々な診断方法、測定方法、アッセイ方法に用いることが可能である。その方法としては、活性型HGFAを検出する目的であれば特に限定されない。例えば、活性型HGFAを特異的に検出する組織染色法法や免疫沈降法、活性型HGFAを特異的に測定する競合的結合アッセイ方法、または直接的または間接的サンドイッチアッセイ法、2抗体サンドイッチアッセイ法などが挙げられる。また検出方法としては、酵素イムノアッセイ、ラジオイムノアッセイ、蛍光イムノアッセイ、化学発光イムノアッセイ、イムノブロッティング法、イムノクロマト法、ラテックス凝集法などが挙げられる。
【0047】
イムノブロッティングの応用例としては、活性型HGFA特異的抗体をマイクロアレイやチップに添加もしくは固定したものも含まれる。また活性型HGFA特異的抗体を蛍光ラベル化し、蛍光偏向解消法、蛍光相関分散法を用いて活性型HGFAとの相互作用を検出することも可能である。表面プラズモン共鳴装置を利用して活性型HGFA特異的抗体と、活性型HGFAとの相互作用を測定することも可能である。例えば、この抗体をセンサーチップ上に結合させた後、このチップをとりつけた表面プラズモン共鳴装置に活性型HGFAを含む生体試料を流し、応答シグナルの時間変化を追跡することにより、生体成分中の活性型HGFAを定量することが可能である。
【0048】
活性型HGFAを特異的に測定する方法で使用される抗体、例えば活性型HGFA特異的抗体は、そのまま用いてもよいし、定法であるパパイン処理によって得られるFabもしくはペプシン処理によって得られるF(ab')2またはF(ab')の形態を持った抗体を用いても良い。また活性型HGFAを認識し不活性型HGFAを実質的に認識しない性質を有する抗体の断片も、本発明に含まれる。例えば、活性型HGFA特異的抗体のH鎖とL鎖の両可変ドメイン内の相補性決定領域(CDR)または超可変領域などを含む断片がこれに含まれる。
【0049】
生体成分中の活性型HGFAを定量する2抗体サンドイッチアッセイ法とは、例えば、活性型HGFAを特異的に測定する方法であって、(1)活性型HGFA特異的抗体の一種または複数を含むものからなる試薬を、検体中の活性型HGFAと反応させ、免疫反応物を生成させる工程、(2)免疫反応物を分離した後、免疫反応物中のHGFAを認識する標識抗体と反応させる工程、及び(3)免疫反応物に結合した標識抗体を測定する工程を含む方法、または、
【0050】
活性型HGFAを特異的に測定する方法であって、(1)活性型HGFAと活性型HGFA特異的抗体の一種または複数を第一次抗体として含むものからなる試薬、検体中の活性型HGFAと反応させ、免疫反応物を生成させる工程、(2)免疫反応物を分離した後、免疫反応物中のHGFAを認識する第二次抗体と反応させ、免疫反応物を生成させる工程、(3)免疫反応物を分離した後、免疫反応物中の第二次抗体を認識する標識抗体を反応させる工程、及び(4)免疫反応物に結合した標識抗体を測定する工程を含む方法、が挙げられる。
【0051】
具体的には、マイクロタイターウェルやマイクロ磁気ビーズなどの固相に対して活性型HGFA特異的ポリクローナル抗体又は活性型HGFA特異的モノクローナル抗体を、定法により一次抗体として固相化する。次に、この固相表面の過剰な蛋白質結合部位を、ウシ血清アルブミン、スキムミルクまたはゼラチン等でブロッキングする。この後、活性型HGFAを含む生体成分を添加して固相上で免疫反応物を形成させた後に洗浄する。次にHGFAを認識する標識ポリクローナル抗体または標識モノクローナル抗体を二次抗体として添加して反応させる。この際、一次抗体としてモノクローナル抗体を用いた場合は、一次抗体とエピトープが異なる活性型HGFA特異的モノクローナル抗体を標識したものを二次抗体として使用しても良い。さらに洗浄後、標識抗体量を測定することにより、生体成分中の活性型HGFA量を測定することが出来る。
【0052】
ここで使用するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体の標識とは、アルカリホスファターゼ、西洋わさびペルオキシターゼ、β−ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、グルコースオキシダーゼなどの酵素でもよいし、フルオレッセイン誘導体やローダミン誘導体などの蛍光物質でもよい。またアクリジニウムエステル等の化学発光物質であってもよいし、125I、3H、14C、32Pなどのラジオアイソトープでもよい。すなわち、発色、蛍光、化学発光、電気化学発光、放射活性を測定する方法を用いて生体成分中の活性型HGFA量を定量することが本発明に含まれる。また、二次抗体をビオチン化標識し、アビジンと複合体を形成しているアルカリホスファターゼ、西洋わさびペルオキシターゼ、β―ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、グルコースオキシダーゼ、フルオレッセイン誘導体、ローダミン誘導体、アクリジニウムエステル等の化学発光物質、125I、3H、14C、32Pなどのラジオアイソトープを検出することも本発明に含まれる。
【0053】
<5>活性型HGFAを特異的に測定または染色するキット活性型HGFA特異的測定キットまたは活性型HGFA特異的染色キットとは、活性型HGFAを測定または検出することを特徴とする、疾患の診断キットである。ここで述べる特異的とは、活性型HGFAを測定または検出する際、不活性型HGFAが活性型HGFAの測定値もしくは検出値に影響を与えないことを意味する。活性型HGFAを測定することにより、疾患状態にある患者、例えば糸球体腎炎、腎炎、肝炎、膵臓炎、肺炎、腸炎、胃炎をはじめとする臓器障害の患者、癌患者、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞などをはじめとする血栓症の患者の診断および予知が可能であることが本発明により初めて判明した。したがって、活性型HGFAを測定または検出することにより、前記のような各種疾患を検出することができる。本発明においては、疾患を診断する目的の活性型HGFA特異的測定キットであるならば、そのキットを構成する材料、方法には限定されない。
【0054】
具体的には、例えば、電気遊動法、HPLC法、各種カラムクロマトグラフィー法、各種アレー、チップ、表面プラズモン共鳴装置等を用い、活性型HGFAを測定または検出することにより、疾患を診断するキットなどが挙げられる。より具体的には、抗体を用いた免疫学的方法により活性型HGFAを測定または検出するキットが挙げられる。抗体としては、前記の活性型HGFAを認識し不活性型HGFAを実質的に認識しない抗体の少なくとも一つ以上が用いられる。
【0055】
例えば、本発明のキットが2抗体サンドイッチアッセイ法によるものである場合には、活性型HGFAを特異的に測定するキットであって、(1)活性型HGFAと活性型HGFA特異的抗体の一種または複数を含むものからなる試薬を検体中の活性型HGFAと反応させ、免疫反応物を生成させる工程、(2)免疫反応物を分離した後、免疫反応物中のHGFAを認識する標識抗体と反応させる工程、及び(3)免疫反応物に結合した標識抗体を測定する工程を含んだキット、または、
【0056】
活性型HGFAを特異的に測定するキットであって、(1)活性型HGFA特異的抗体の一種または複数を第一次抗体として含むものからなる試薬を検体中の活性型HGFAと反応させ、免疫反応物を生成させる工程、(2)免疫反応物を分離した後、免疫反応物中のHGFAを認識する第二次抗体と反応させ、免疫反応物を生成させる工程、(3)免疫反応物を分離した後、免疫反応物中の第二次抗体を認識する標識抗体を反応させる工程、及び(4)免疫反応物に結合した標識抗体を測定する工程を含んだキット、が挙げられる。
【0057】
このキットは、少なくとも活性型HGFA特異的モノクローナル又は活性型HGFA特異的ポリクローナル抗体を含み、さらに、活性型HGFAを検出または測定する操作に必要な構成要素が含まれていてもよい。その構成要素の例として、標準蛋白質としての活性型HGFA、不活性型HGFA、酵素および基質等が挙げられる。キットに含まれるモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体は、酵素などの標識物質が結合した状態でもよいし、これらの抗体を認識する標識抗体が含まれていてもよい。また適切な各種緩衝液、抗原希釈液、反応希釈液、基質溶液、反応停止液等が含まれていてもよい。本キットにはラベルが付き、活性型HGFA検出および定量に必要な材料が封入された容器が含まれていてもよい。適した容器としては、例えばガラス、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ナイロン、テフロン(登録商標)などの各種プラスチックを材質とした容器が挙げられる。キットには、好ましくは、上述した活性型HGFAを検出または測定するのに必要な材料、容器とともに、活性型HGFAを検出または測定する方法が記載された説明書が含まれる。
【0058】
<6>ヒト疾患に関する活性型HGFA特異的抗体とその使用法本発明による活性型HGFA特異的抗体を使用した方法、キットを用いることにより、疾患状態にある患者から採取された生体成分中の活性型HGFAを検出することが出来、また定量することも可能である。活性型HGFAを検出する生体材料は特に限定されず、組織、血清、血漿、尿、漿液、髄液、組織の抽出液等、いずれの生体材料も適切な前処理を行うことによって適応可能である。疾患状態にある患者の生体材料中に存在する活性型HGFAを検出または定量することにより、その疾患の診断、予知、経過を判断することが可能である。疾患の例として、糸球体腎炎、腎炎、肝炎、膵臓炎、肺炎、腸炎、胃炎などをはじめとする臓器炎症、癌、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞などをはじめとする血栓症などが挙げられる。
【0059】
特に腎炎の例としては、メサンギウム増殖性腎症、IgA腎症、膜性増殖性腎炎、膜性腎症、巣状糸球体硬化症、急性腎不全、溶連菌感染後急性糸球体腎炎、慢性・急性間質性腎炎、ネフローゼ症候群などが挙げられる。また狭心症、心筋梗塞の例としては安定労作時狭心症、不安定狭心症、急性心筋梗塞、陳旧性心筋梗塞、安定狭心症が挙げられ、冠動脈インターベンション施行患者、経食道心エコー施行患者、下肢動脈バイパス手術施行患者、大動脈バルーンパンピング施行患者、急性大動脈解離患者などの疾患状況、予後を知ることも可能である。
【0060】
また活性型HGFA特異的抗体は、活性型HGFAの活性を特異的に抑制する効果が期待できるため、活性型HGFAにより引き起こされる疾患の治療薬として使用することが期待される。例えば、活性型HGFAは不活性型HGFに作用してこれを活性化する性質を
有している。このため活性型HGFAの活性を抑制する抗体は、生体中で出現する活性型HGF量の増加を抑制し、活性型HGFにより引き起こされることが想定されている疾患(WO96/38557:ジェネンティックインコーポレーテッド、HGFの分子医学(1998年出版)メディカルレビュー社)、例えば胃癌、肺癌、結腸癌、脾癌、肝臓癌などの癌およびその転移、糸球体腎炎をはじめとする各種腎炎などの治療薬、予防薬として使用することが可能である。活性型HGFAの活性を抑制するマウスモノクローナル抗体の存在(モノクローナル抗体P1−4)は宮澤ら(J. Biol. Chem., 271:3615-3618 (1996))に記載されているが、このP1−4抗体は活性型HGFAおよび不活性型HGFAの両方に反応することが本発明者らの検討によって明らかとなっている。生体内には不活性型HGFAが多量に存在することから、活性型HGFAの活性抑制のために極めて多量のP1−4抗体が必要と考えられる。これに対し、本発明の活性型特異的抗体は、活性型HGFAの活性を抑制する抗体であると推定されるので、少量で上記疾患の治療薬として極めて優れた効果を発揮すると思われる。この目的で使用する抗体は、遺伝子工学的手法を使用してヒト化しておくと良い。抗体のヒト化は、例えば特表平11-506327などに記載されている当業者によく知られた方法によって実施することができる。
【0061】
<7>活性型HGFAを測定するための採血方法および採血管活性型HGFAを検出または測定するための生体成分は特に限定されないが、通常、血液又はその分画物もしくは処理物であり、望ましくは血液、血清、クエン酸血漿、ヘパリン血漿、EDTA血漿等の血漿など、血管より採取可能な生体成分又はその分画物もしくは処理物や、採取が容易な尿が望ましい。特に生体成分の採取時および保管時に、生体成分中に混在する不活性型HGFAが活性型HGFAへ人為的に変換されることを防ぐ操作が必要である。例えば採取した血清または血漿、尿等は採取後、ただちに氷冷等の低温下におくことが望ましい。
【0062】
また、迅速に血管から血液、血清、クエン酸血漿、ヘパリン血漿、EDTA血漿を採取するために、採血管を使用することが望ましい。特に活性型HGFAを検出または測定するための血液は、血漿、特にクエン酸血漿の状態が良い。また活性型HGFAを検出または測定するための生体成分に対して種々のプロテアーゼインヒビターを添加する方法も良い。例えば生体成分の採取時および保管時に生体成分中に含まれる不活性型HGFAが活性型HGFAへ人為的に変換されることを防ぐため、例えば選択的なトロンビン阻害薬であるアルガトロバンを採取した生体試料に添加すると良好な結果が得られる。特にあらかじめアルガトロバンを添加した血液、血清、クエン酸血漿、ヘパリン血漿、EDTA血漿取得用採血管を使用すると良い。
【0063】
<8>活性型HGFAに対するプロテアーゼインヒビターのスクリーニング方法活性型HGFAを認識する抗体であって、不活性型HGFAを実質的に認識せず、活性型HGFAとプロテアーゼインヒビターの複合体を認識しない抗体を使用することにより、活性型HGFAに対して作用するプロテアーゼインヒビターをスクリーニングすることが可能である。
【0064】
上記の性質を有する抗体は、活性型HGFA特異的抗体から、さらに活性型HGFAとプロテアーゼインヒビターの複合体を認識しない抗体を選択することによって、取得することができる。
【0065】
上記スクリーニング法として具体的には、(1)活性型HGFAとそのプロテアーゼインヒビターの候補となる化合物を混合して反応させる工程、(2)活性型HGFAとプロテアーゼインヒビターの候補となる化合物を混合したものに対し、活性型HGFAを認識する抗体であって、不活性型HGFAを実質的に認識せず、活性型HGFAとプロテアーゼインヒビターの複合体を認識しないモノクローナル抗体を添加する工程、(3)免疫反応物を分離した後、活性型HGFAとプロテアーゼインヒビターの候補となる化合物からな
る複合体と、前記抗体からなる免疫反応物量の低下を測定する工程が挙げられる。この免疫反応物量の低下を検出する方法としては、酵素イムノアッセイ、ラジオイムノアッセイ、蛍光イムノアッセイ、化学発光イムノアッセイ、電気化学発光イムノアッセイ、イムノブロッティング法、イムノクロマト法、ラテックス凝集法、イムノブロッティングの応用例であるマイクロアレイ法、蛍光偏向解消法、蛍光相関分散法、さらには表面プラズモン共鳴装置を利用したものが利用可能である。例えば活性型HGFAを認識する抗体であって、不活性型HGFAを実質的に認識せず、活性型HGFAとプロテアーゼインヒビターの複合体を認識しない抗体をセンサーチップ上に結合させた後、このチップをとりつけた表面プラズモン共鳴装置に活性型HGFAを含む生体試料を流し、応答シグナルの時間変化を追跡することによりプロテアーゼインヒビターをスクリーニングすることが可能である。
【0066】
またここで使用する抗体は、そのまま用いてもよいし、定法であるパパイン処理によって得られるFabまたはペプシン処理によって得られるF(ab')2もしくF(ab')の形態を持った抗体を用いても良い。またここで使用する抗体の性質を有する抗体の断片も使用可能である。
【0067】
[実施例]
以下に実施例を挙げ本発明を具体的に説明するが, 本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0068】
不活性型HGFAおよび活性型HGFAの作製
不活性型HGFAの調製は、特開平6-153946に記載されているHGFA前駆体をコードするHGFA cDNAを使用し、特開平6-153966に記載された方法に準じ、組換え体不活性型HGFAを作製することによって行った。すなわち不活性型HGFAの前駆体の全長である655アミノ酸をコードするHGFA cDNAを、定法により動物細胞発現ベクターであるpcDNA3.1(Invitrogen社)のCMVプロモーター下流に挿入した。
【0069】
得られた発現ベクターを、チャイニーズハムスター卵巣細胞由来である動物細胞株、CHO細胞へBIOSEPRA社TRANSFECTAMを使用し、添付の方法に従って導入した。この後、導入した発現ベクター上に存在するネオマイシン耐性遺伝子の性質を利用し、HGFA cDNAを発現しているCHO細胞を選択した。すなわち400μg/mlのネオマイシンおよび5%牛胎児血清を含むERDF(極東製薬社製)培地中、5% CO2下、37℃にて生育可能な細胞を選択した。さらに選択したHGFA cDNAを発現しているCHO細胞を100μMナファモスタットメシレート,400μg/mlネオマイシンおよび5%牛胎児血清を含むERDF(極東製薬社製)培地にて約10日間の培養を行い約5Lで培養上清を得た。
【0070】
得られた培養上清をフィルター濾過後、10mM EDTA, 10mMベンズアミジン, 100μMナファモスタットメシレート, 大豆トリプシンインヒビター,1000KIU/mlアプロチニンを含むプロテアーゼインヒビターを添加し、さらに0.5M酢酸緩衝液(pH4.5)を添加することにより、培養上清のpHを約5.8に調整した。この培養上清を、100mM NaClを含む50mM酢酸緩衝液(pH5.5)で平衡化した硫酸化セルロファインカラム(生化学工業(株))に添加し、100mM NaClを含む50mM酢酸緩衝液(pH5.5)で洗浄を行った。この後、500mM NaCl, 0.05% CHAPS(3-[(3-cholamidopropyl)dimethylammonio]propanesulfonic acid)を含む50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)で溶出操作を行い、不活性型HGFA画分を得た。
【0071】
得られた画分は、150mM NaClを含む50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)に透析後、A6モノクローナル抗体アフィニィティーカラム(下村ら、J. Biol. Chem., 268:22927-22932 (1993))にかけた後に、50mMグリシン−HCl(pH3.0)緩衝液で溶出を行った。得られた
不活性型HGFA画分は100mM NaCl, 0.05% CHAPSを含む10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.3)に置換した。この一部はプロテアーゼインヒビターであるアルガトロバンを終濃度40μMになる様添加して、不活性型HGFAとして-40℃下で保存した。一方、アルガトロバンを添加しなかった不活性型HGFAに対し、その重量比で1/100量のプラズマカリクレインおよびトロンビンを添加し37℃下で充分反応させることにより活性型36kDa HGFAを得た。
【0072】
またアルガトロバンを添加しなかった不活性型HGFAに対し、HGFAに対する重量比で1/100量のトロンビンおよび10μg/mlのデキストラン硫酸を添加し、37℃下で20分反応させることにより、活性型98kDa HGFAを得た。各活性型HGFA画分はそれぞれ再度、A6モノクローナル抗体アフィニィティーカラムにて精製後、100mM NaCl, 0.05% CHAPSを含む10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.3)で平衡化したAsahipak GS520HQカラム(昭和電工社製)を使用したHPLC操作を実施した後、活性型36kDa HGFAおよび活性型98kDa HGFAとして、-40℃下で保存した。
【実施例2】
【0073】
活性型HGFA特異的モノクローナル抗体スクリーニング用ELISAプレートの作製
実施例1で作製した活性型36kDa HGFAまたは活性型98KDa HGFをハイブリドーマスクリーニング用の抗原として、最終濃度1μg/mlになる様に生理的リン酸水素緩衝液(PBS(-))に希釈後、96wellプレートのウェルに100μlずつ添加した。この後、4℃下にて24時間保存して、各抗原を96ウェルプレートに吸着させた。この抗原付着プレートより溶液を除き、5%ウシ血清アルブミン(以下「BSA」と略す)を含むPBS(-)を250μlずつウェルに添加して、4℃にて一昼夜(12時間程度)または37℃にて2時間以上おくことによりブロッキング操作を行い、活性型HGFAスクリーニング用ELISAプレートとして、4℃下にて保存した。
【0074】
一方、実施例1で作製した不活性型HGFAをハイブリドーマスクリーニング用の抗原として、最終濃度1μg/mlになる様にPBS(-)で希釈した。この後、96ウェルプレートのウェルに100μlずつ添加し、4℃下にて24時間保存して各抗原を96ウェルプレートに吸着させた。この抗原付着プレートより溶液を除き、5% BSAを含むPBS(-)を250μlずつウェルに添加して4℃にて一昼夜(12時間程度)、または37℃にて2時間以上おくことによりブロッキング操作を行い、不活性型HGFAスクリーニング用ELISAプレートとして、4℃下にて保存した。これらのELISAプレートは、使用直前にプレート中のブロッキング溶液を除いて使用した。
【実施例3】
【0075】
活性型HGFA特異的モノクローナル抗体の作製
実施例1で作製した活性型36kDa HGFA100μgまたは98KDa HGFA100μgを含む溶液を、同容量のフロイント完全アジュバントとともに、Balb/cマウスの皮下および腹腔内に2週間間隔で6回投与した。マウスの血清中に抗体が産生していることを確認後、100μgのHGFAを含む溶液を尾静脈内に投与した。3日後に脾臓を取り出し、「単クローン抗体実験マニュアル」(講談社サイエンティフィック1987年出版)に従い、ポリエチエングリコール1500を使用して、脾臓細胞をミエローマ細胞P3U1と細胞融合させ、96ウェルプレートに注入後HAT培地を添加して14日間の培養を行った。
【0076】
この後、各活性型HGFAに対して特異的なモノクローナル抗体を培地中に産生するハイブリドーマの選別を行った。すなわち実施例2で作製した36kDa HGFAまたは活性型98KDa HGFAスクリーニング用ELISAプレートに対して、選択するハイブリドーマの培養上清を添加し、培養上清に存在するモノクローナル抗体の反応性を解析した。各活性型スクリーニング用ELISAプレートに対し、選択するハイブリドーマの培養上清を100μl/ウ
ェルにて添加した後4℃下にて2時間以上反応させた。
【0077】
この後、0.05% Tween20を含むPBS(-)液(以下「PBST液」と略す)を用いて十分な洗浄を行ない、HRP(西洋わさびペルオキシターゼ)標識ヒツジ抗マウスIgG・Fcポリクローナル抗体(DAKO社)1μg/mlおよび1% BSAを含むPBS(-)を100μlずつウェルに添加し、さらに室温で1時間反応させた。PBST液で充分に洗浄操作を行った後、0.4mg/mlオルトフェニレンジアミン(OPD、Sigma社 P-9029)および0.015〜0.03%過酸化水素溶液を含むクエン酸−リン酸緩衝液(pH5.0)を添加して室温にて反応させ、発色を行なった。この後1N H2SO4溶液を添加して反応を止め、測定波長490nm、リファレンス波長650nmにて測定を行なった。
【0078】
次に、ここで得られた活性型36kDa HGFAまたは活性型98KDa HGFAに対して反応性を有するモノクローナル抗体産生ハイブリドーマの培養上清を用い、実施例2で作製した不活性型HGFAスクリーニング用ELISAプレートにて同様にスクリーニングを行い、不活性型HGFAに対して反応性を全く示さないハイブリドーマを選択した。このスクリーニングにより、活性型36kDa HGFAを認識するモノクローナル抗体であって、不活性型HGFAを実質的に認識しないモノクローナル抗体、または活性型98KDa HGFAを認識するモノクローナル抗体であって、不活性型HGFAを認識しないモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ(AHGA-A、AHGA-B、AHGA-C)が得られた。得られた各ハイブブリドーマは、限界希釈法による4回のクローニング操作後、培養上製を回収してプロテインAが結合したアフィニティークロマトグラフィー(アマシャムファルマシアバイオテク製)により、モノクローナル抗体の精製を行った。ハイブリドーマクローンAHGA-Aは、平成13年10月19日より、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(〒305-8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に、FERM BP−7779の受託番号で寄託されている。
【実施例4】
【0079】
活性型HGFA特異的モノクローナル抗体の反応特異性解析
実施例3にて作製・精製された活性型HGFA特異的モノクローナル抗体のうち、ハイブリドーマクローンAHGA-A, AHGA-BおよびAHGA-C由来のモノクローナル抗体に関する反応性を解析した。このため、実施例2にて作製した活性型36kDaHGFAもしくは活性型98KDa HGFAスクリーニング用ELISAプレートまたは不活性型HGFAスクリーニング用ELISAプレートに対して、ハイブリドーマクローンAHGA-A, AHGA-BおよびAHGA-C由来のモノクローナル抗体約1μg/mlおよび1%BSAを含むPBS(-)を100μlずつウェルに添加して、4℃下にて2時間以上反応させた。
この後、0.05% Tween20を含むPBS(-)液(以下「PBST液」と略す)を用いて十分な洗浄を行ない、HRP標識ヒツジ抗マウスIgGポリクローナル抗体(DAKO社)1μg/mlおよび1%
BSAを含むPBS(-)を100μlずつウェルに添加し、さらに室温で1時間反応させた。PBST液で充分に洗浄操作を行った後、0.4mg/mlオルトフェニレンジアミン(OPD、Sigma社 P-9029)および0.015〜0.03%過酸化水素溶液を含むクエン酸−リン酸緩衝液(pH5.0)を添加して室温にて反応させ、発色を行なった。
【0080】
この後、1N H2SO4溶液を添加して反応を止め、測定波長490nm、リファレンス波長650nmにて測定を行なった。測定結果を図1に示す。ハイブリドーマクローンAHGA-A、AHGA-B由来のモノクローナル抗体は、活性型36kDa HGFAと反応し、不活性型HGFAとは反応しなかった。またハイブリドーマクローンAHGA-Cは、活性型98kDa HGFAと反応し、不活性型HGFAとは反応しなかった(図1)。一方、HGFAに対する既存のモノクローナル抗体(7E10, P1-4, A-1, A-6, A-23,A-32, A-51, A-75)に関して、活性型36kDa HGFAおよび不活性型HGFAに対する反応性を解析した結果、活性型および不活性型HGFAの両者に対して同等の反応性を示し、本発明で得られたモノクローナル抗体の様に活性型HGF
Aに対して特異的な反応性を有していなかった。
【実施例5】
【0081】
活性型HGFA特異的モノクローナル抗体の解離定数測定
実施例3にて作製・精製された活性型HGFA特異的モノクローナル抗体のうち、ハイブリドーマクローンAHGA-A由来のモノクローナル抗体について解離定数を測定した。活性型HGFAを固相化し、BSAでブロッキングを行った活性型HGFA固相化プレートに対して抗体濃度を変えて添加し、平衡状態に達するまで十分に反応させた(2時間以上)。この後、0.05% Tween20を含むPBS(-)液(以下「PBST液」と略す)を用いて十分な洗浄を行ない、HRP(西洋わさびペルオキシターゼ)標識ヤギ抗マウスIgG・Fcポリクローナル抗体(ICN社)1μg/mlおよび1% BSAを含むPBS(-)を100μlずつウェルに添加し、さらに室温で1時間反応させた。PBST液で充分に洗浄操作を行った後、0.4mg/mlオルトフェニレンジアミン(OPD、Sigma社 P-9029)および0.015〜0.03%過酸化水素溶液を含むクエン酸−リン酸緩衝液(pH5.0)を添加して室温にて反応させ、発色を行なった。この後、1N H2SO4溶液を添加して反応を止め、測定波長490nm、リファレンス波長650nmにて測定を行なった。測定結果よりスキャチャードプロットを行い、解離定数を求めた。結果は4.05×10-10Mであった。この結果は、本発明の抗体の親和性が高いことを示している。
【実施例6】
【0082】
活性型HGFAを特異的に認識し、活性型HGFAとプロテアーゼインヒビターの複合体を認識しないモノクローナル抗体の作製
実施例3にて選択された活性型HGFAを特異的に認識し、不活性型HGFAを認識しないモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマに対し、さらに以下のスクリーニングを行った。実施例2で作製した活性型36kDa HGFAまたは活性型98KDa HGFAスクリーニング用ELISAプレートのブロッキング溶液を除いた後、プロテアーゼインヒビターであるナファモスタットメシレート200μMを含むPBS(-)を20μlずつウェルに添加して室温で1時間反応させ、活性型HGFAとナファモスタットメシレートとの複合体を形成させた。この後、選択するハイブリドーマの培養上清を100μl/ウェルにて添加した後4℃下にて2時間反応させた。
【0083】
この後0.05% Tween20を含むPBS(-)液(以下PBST液と略す)を用いて十分な洗浄を行ない、HRP標識ヒツジ抗マウスIgGポリクローナル抗体(DAKO社)1μg/mlおよび1% BSAを含むPBS(-)を100μlずつウェルに添加し、さらに室温で1時間反応させた。PBST液で充分に洗浄操作を行った後、0.4mg/mlオルトフェニレンジアミン(OPD、Sigma社 P-9029)および0.015〜0.03%過酸化水素溶液を含むクエン酸−リン酸緩衝液(pH5.0)を添加して室温にて反応させ、発色を行なった。
【0084】
この後1N H2SO4溶液を添加して反応を止め、測定波長490nm、リファレンス波長650nmにて測定を行なった。このスクリーニングにより、活性型36kDa HGFAとナファモスタットメシレートの複合体を認識しないモノクローナル抗体を選択した。選択されたモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマクローンをAHGA-Dとした。得られた各ハイブブリドーマは限界希釈法による4回のクローニング操作後、培養上製を回収してProteinAが結合したアフィニティークロマトグラフィーによりモノクローナル抗体の精製を行った。
【実施例7】
【0085】
活性型HGFAを特異的に認識し、活性型HGFAとプロテアーゼインヒビターの複合体を認識しないモノクローナル抗体の反応特異性解析
実施例6にて選択されたハイブリドーマクローンAHGA-D由来のモノクローナル抗体の反応性を解析した。実施例2にて作製した活性型36kDa HGFAスクリーニング用ELISAプレートに対して、0μM, 0.820μM, 7.40μM, 22.20μM, 2000μMの濃度のナファモスタット
メシレートを含むPBS(-)を20μlずつウェルに添加して室温で1時間反応させ、活性型HGFAとナファモスタットメシレートとの複合体を形成させた。この後、ハイブリドーマクローンAHGA-D由来のモノクローナル抗体約1μg/ml, 1% BSAおよび種々の濃度のナファモスタットメシレート(0μM, 0.820μM, 7.40μM, 22.20μM, 2000μM)を含むPBS(-)を100μlずつウェルに添加して、4℃下にて2時間以上反応させた。
【0086】
この後、0.05% Tween20を含むPBS(-)液(以下「PBST液」と略す)を用いて十分な洗浄を行ない、HRP標識ヒツジ抗マウスIgGポリクローナル抗体(DAKO社)1μg/mlおよび1% BSAを含むPBS(-)を100μlずつウェルに添加し、さらに室温で1時間反応させた。PBST液で充分に洗浄操作を行った後、0.4mg/mlオルトフェニレンジアミン(OPD、Sigma社 P-9029)および0.015〜0.03%過酸化水素溶液を含むクエン酸−リン酸緩衝液(pH5.0)を添加して室温にて反応させ、発色を行なった。
【0087】
この後1N H2SO4溶液を添加して反応を止め、測定波長490nm、リファレンス波長650nmにて測定を行なった。測定結果を図2に示す。ハイブリドーマクローンAHGA-D由来のモノクローナル抗体は、プロテアーゼインヒビターであるナファモスタットメシレートと結合したHGFAに対して、著しく反応性が低下した。
【実施例8】
【0088】
HGFAに対するポリクローナル抗体およびその標識体の作製
HGFAに対するポリクローナル抗体は、実施例1で調製した活性型36kDa HGFAおよび活性型98kDa HGFAならびに不活性型 HGFA各100μgずつ混合したものを抗原として、ウサギ皮下へ2週間間隔で7回投与した。血清中に抗体が産生していることを確認後、さらに10μgの各抗原を脈内に投与し、5日後に抗血清を取得た。さらに硫安沈殿操作後、プロテインAカラムを使用した精製操作により、抗HGFAポリクローナル抗体を取得した。この後、得られたHGFAポリクローナル抗体をビオチン標識することにより、ビオチン標識抗HGFAポリクローナル抗体を調製した。
【実施例9】
【0089】
活性型HGFA特異的測定系の構築
実施例4で使用したハイブリドーマクローンAHGA-A由来のモノクローナル抗体を一次抗体として使用した。このモノクローナル抗体を30μg/mlの濃度になるように0.05M炭酸−重炭酸緩衝液(pH9.6)に溶解し、100μl/ウェルにて96ウェルプレートへ添加し、4℃にて一昼夜(12時間程度以上)おいた。この一次抗体付着プレートより一次抗体溶液を除いた後、1% BSAを含むPBS(-)を250〜300μl/ウェルずつ添加し、4℃にて一昼夜(12時間程度)または37℃にて2時間以上おいた。このプレートからブロッキング溶液を除き、0.15M NaCl, 0.1% CHAPS,0.05% Tween20, 0.05% Az(アジ化ナトリウム), 0.1% BSA, 20mMリン酸ナトリウム緩衝液pH7.5に溶解された種々の濃度(0, 0.69, 2.1, 6.2, 18.5, 55.6, 167, 500 ng/ml)の活性型36kDaHGFAまたは不活性型98kDa HGFAを100μlずつ添加し、4℃下にて約2時間以上反応させた。
【0090】
この後、500mM NaCl, 0.05% Tween 20, 20mM Tris-HCl pH7.5を組成とする洗浄液を使用して十分な洗浄を行なった後、実施例8で作製したビオチン標識抗HGFAポリクローナル抗体1μg/mlおよび1%BSAを含むPBS(-)を100μlずつウェルに添加し、37℃インキュベーター中にて2時間反応させた。
【0091】
次に上記の洗浄液を使用して十分な洗浄を行ない、HRP標識ストレプトアビジン(アマシャムファルマシアバイオテク、コードRPN1231)を2000倍希釈した1% BSAを含むPBS(-)を100μlずつウェルに添加し、さらに室温で1時間反応させた。洗浄液液で充分に洗浄操作を行った後、0.4mg/mlオルトフェニレンジアミン(OPD、Sigma社 P-9029)および0
.015〜0.03%過酸化水素溶液を含むクエン酸−リン酸緩衝液(pH5.0)を100μl/ウェルずつ添加して室温にて反応させ、発色を行なった。
【0092】
この後1N H2SO4溶液を100μl/ウェルずつ添加して反応を止め、測定波長490nm、リファレンス波長650nmにて測定を行なった。この結果を図3に示す。図3AはHGFAの濃度、0〜500ng/mlの範囲で記載した。図3Bは図3Aに記したHGFAの濃度のうち、0〜55.6ng/mlの範囲を拡大して示した。
【実施例10】
【0093】
健常人血液中おける活性型HGFA量の測定
実施例9で作製した活性型HGFA特異的測定系を用いて、健常人144人の血清を測定した。健常人血清は採取後に凍結して保存され、本実験の直前に解凍して使用した。まず実施例9で作製した一次抗体付着後にブロッキング操作を行った96ウェルプレートに対し、あらかじめ0.15M NaCl, 0.1% CHAPS, 0.05% Tween20, 0.05% Az, 0.1% BSA, 20mMリン酸ナトリウム緩衝液pH7.5を50μlずつウェルに添加し、さらに健常人の血清または標準36kDa活性型HGFA(0, 0.69,2.1, 6.2, 18.5, 55.6, 167, 500 ng/ml)を50μlずつ添加した。この後、4℃下にて約2時間以上反応させ、500mM NaCl, 0.05% Tween 20, 20mM
Tris-HCl pH7.5を組成とする洗浄液を使用して十分な洗浄を行なった後、実施例8で作製したビオチン標識抗HGFAポリクローナル抗体1μg/mlおよび1%BSAを含むPBS(-)を100μlずつウェルに添加し、37℃インキュベーター中にて2時間反応させた。次に上記の洗浄液を使用して十分な洗浄を行ない、HRP標識ストレプトアビジン(アマシャムファルマシアバイオテク、コードRPN1231)を2000倍希釈した1% BSAを含むPBS(-)を100μlずつウェルに添加し、さらに室温で1時間反応させた。
【0094】
洗浄液液で充分に洗浄操作を行った後、0.4mg/mlオルトフェニレンジアミン(OPD、Sigma社 P-9029)および0.015〜0.03%過酸化水素溶液を含むクエン酸−リン酸緩衝液(pH5.0)を100μl/ウェルずつ添加して室温にて反応させ、発色を行なった。この後1N H2SO4溶液を100μl/ウェルずつ添加して反応を止め、測定波長490nm、リファレンス波長650nmにて測定を行なった。この後、標準36kDa活性型HGFA濃度とその発色量による検量線を作製し、健常人血清中の濃度を算出した。この結果を図4に示す。健常人血清においては、0ng/mlから58.5ng/mlまでの範囲を示し、平均は19ng/mlであった。
【実施例11】
【0095】
各種ヒト疾患患者血液中における活性型HGFA量の測定
実施例9で作製した活性型HGFA特異的測定系を用い、実施例10の方法に従って各種ヒト疾患患者血清を測定した。患者数は、各疾患毎に5例とした。各血清は採取後に凍結して保存され、本実験の直前に解凍して使用した。その結果を表1に示す。糸球体腎炎、膵炎、癌、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞の患者血液中には、健常人(検体数9 平均値19ng/ml)と比較して活性型HGFAの濃度が高値であることが判った。
【0096】
【表1】


【実施例12】
【0097】
活性型HGFA測定用血液の採血方法と安定性の検討
健常人より血清、クエン酸血漿、ヘパリン血漿もしくはEDTA血漿、またはアルガトロバンを終濃度40μM含む血清、クエン酸血漿、ヘパリン血漿もしくはEDTA血漿を採取、調製し、それぞれを4℃または37℃にて12時間保管後、実施例10に記載の方法にて活性型HGFA量を測定した。この結果を図5に示す。血清または血漿の保管による活性型HGFA量値の上昇は血清よりも血漿で少ないこと、この上昇はアルガトロバン添加により良く押さえられることが判った。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】活性型HGFA及び不活性型HGFAに対するモノクローナル抗体の反応性を示す図。
【図2】活性型HGFAとプロテアーゼインヒビターとの複合体と、モノクローナル抗体との反応性を示す図。
【図3】活性型HGFA測定系における活性型HGFAおよび不活性型HGFAとモノクローナル抗体との反応性を示した図である。図3AはHGFAの濃度、0〜500ng/mlの範囲で記載、図3Bは図3Aに記したHGFAの濃度のうち、0-55.6ng/mlの範囲を拡大して示した。
【図4】健常人血清中における活性型HGFA量のヒストグラムを示した図である。
【図5】健常人の血清、クエン酸血漿、ヘパリン血漿、EDTA血漿における活性型HGFA値の保存安定性とアルガトロバン添加の効果を示した図である。
【出願人】 【識別番号】000005968
【氏名又は名称】三菱化学株式会社
【出願日】 平成19年9月25日(2007.9.25)
【代理人】 【識別番号】100100549
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 嘉之

【識別番号】100090516
【弁理士】
【氏名又は名称】松倉 秀実

【識別番号】100089244
【弁理士】
【氏名又は名称】遠山 勉


【公開番号】 特開2008−48738(P2008−48738A)
【公開日】 平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願番号】 特願2007−247210(P2007−247210)