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【発明の名称】 治療に有用な産物の生産法およびシステム
【発明者】 【氏名】大石 貴彦

【要約】 【課題】

【構成】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療に有用な遺伝子産物を生産する方法であって、
A)該遺伝子産物を生産する能力を有する生産体を提供する工程;
B)該生産体を、該生産体のドナーの温熱治療効果を最大に発揮させるための至適温度に供する工程;および
C)該生産体から、該遺伝子産物を得る工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
前記遺伝子産物は、Hsp72、HLA、Hsp10、Hsp27、Hsp47、Hsp40、Hsp60、Hsp90、Hsp73およびHsp110からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記遺伝子産物は、Hsp72である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記生産体は、細胞、組織、臓器または生物体である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記生産体は、血液またはリンパ液を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記生産体は、人工生産体である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記生産体は、前記遺伝子産物をコードする核酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記生産体は、前記遺伝子産物をコードする核酸配列を用いて形質転換された細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記遺伝子産物は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21または配列番号23に記載の配列によりコードされる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記至適温度は、前記ドナーの以下:
a)ドナーの血液細胞中のHsp72の発現量と機能、
b)ドナーの血圧の変化、
c)ドナーの心拍数、
d)ドナーの血流量、
e)ドナーの血液のpH、
f)ドナーの血液細胞中のHLAの発現量、および
g)ドナーの血中のリンパ球数、
からなる群より選択される生体変化を基にして決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記遺伝子産物を得る工程は、アフィニティー精製を用いることにより達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記アフィニティー精製は、抗体を用いる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記至適温度を特定する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記特定の際に、以下:
a)ドナーの血液細胞中のHsp72の発現量と機能、
b)ドナーの血圧の変化、
c)ドナーの心拍数、
d)ドナーの血流量、
e)ドナーの血液のpH、
f)ドナーの血液細胞中のHLAの発現量、および
g)ドナーの血中のリンパ球数、
からなる群より選択される生体変化を観測する工程をさらに包含する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法により生産される遺伝子産物。
【請求項16】
治療に有用な遺伝子産物を生産するシステムであって、
A)該遺伝子産物を生産する能力を有する生産体;
B)該生産体を、該生産体のドナーの温熱治療効果を最大に発揮させるための至適温度に供する手段;および
C)該生産体から、該遺伝子産物を得るための手段、
を包含する、方法。
【請求項17】
D)前記至適温度を特定する手段をさらに備える、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記遺伝子産物は、Hsp72、HLA、Hsp10、Hsp27、Hsp47、Hsp40、Hsp60、Hsp90、Hsp73およびHsp110からなる群より選択される、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
前記遺伝子産物は、Hsp72である、請求項16に記載のシステム。
【請求項20】
前記生産体は、細胞、組織、臓器または生物体である、請求項16に記載のシステム。
【請求項21】
前記生産体は、血液またはリンパ液を含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項22】
前記生産体は、人工生産体である、請求項16に記載のシステム。
【請求項23】
前記生産体は、前記遺伝子産物をコードする核酸配列を含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項24】
前記生産体は、前記遺伝子産物をコードする核酸配列を用いて形質転換された細胞を含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項25】
前記遺伝子産物は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21または配列番号23に記載の配列によりコードされる、請求項16に記載のシステム。
【請求項26】
前記至適温度は、前記ドナーの以下:
a)ドナーの血液細胞中のHsp72の発現量と機能、
b)ドナーの血圧の変化、
c)ドナーの心拍数、
d)ドナーの血流量、
e)ドナーの血液のpH、
f)ドナーの血液細胞中のHLAの発現量、および
g)ドナーの血中のリンパ球数、
からなる群より選択される生体変化を基にして決定される、請求項16に記載のシステム。
【請求項27】
前記遺伝子産物を得る手段は、アフィニティー精製手段を含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項28】
前記アフィニティー精製手段は、前記遺伝子産物に対して特異的な抗体を含む、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記特定する手段は、以下:
a)ドナーの血液細胞中のHsp72の発現量と機能を測定する手段、
b)ドナーの血圧の変化を測定する手段、
c)ドナーの心拍数を測定する手段、
d)ドナーの血流量を測定する手段、
e)ドナーの血液のpHを測定する手段、
f)ドナーの血液細胞中のHLAの発現量を測定する手段、および
g)ドナーの血中のリンパ球数を測定する手段、
からなる群より選択される生体変化を観測する手段をさらに備える、請求項17に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、治療に有用な産物の生産技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、癌の治療には外科的治療、放射線療法、化学療法等が用いられていたが、これらはいずれも人体の正常組織に対して損傷を与える侵襲的治療方法であるため、ドナーに対してダメージを与える。また、HIV等の難治性感染症では、適切な治療法が無いのが現状である。これに対し、近年、正常細胞と癌細胞やウィルスの温度感受性の差を利用して、患部を41℃〜43℃に加温して、正常細胞を守りながら癌細胞やウィルスを死滅させる温熱療法(ハイパーサーミア)が非侵襲的治療方法として注目されている。また、放射線療法や化学療法に温熱療法を併用することで、その治療効果が高まることが確認されている。そして、その治療効果には、種々の遺伝子産物が関与することが予測されている。
【0003】
本発明は、特開2003−126135号公報(特許文献1)、特開2003−126138号公報(特許文献2)、特開2001−299798号公報(特許文献3)において、全身に転移する癌やHIV等の難治性感染症に適応でき、ドナーを必要以上の高温に曝すことなく深部体温を治療温度に短時間に昇温して精度良く長時間保持し、正常細胞に対して非侵襲的に治療できる温熱治療装置を提供した。
【0004】
これらの温熱治療に用いる温度は、温熱治療に関与する種々の遺伝子産物の生産に有用であることが予測された。
【0005】
しかしながら、ドナーの温熱治療効果を最大に発揮させるための該ドナーの至適温度は、ドナー個々によって異なっており、さらに同一ドナーにおいても、日々変化する可能性があるが、従来では、一般的に好ましいとされる温度範囲に設定した治療温度で実施していた。
【0006】
そのため、ドナーにとって温熱治療効果が上がらないばかりか、ドナーの体力を消耗するという欠点があった。例えば、ドナーの治療温度が至適温度より低い場合には、効果が上がらずまたドナーへの負担時間が長くなり、至適温度よりも高い場合には、逆に顆粒球などが増えるなど好ましくない欠点があった。また、ある場合には、一般に望ましいとされる温度範囲で処置しても、顆粒球が変性、壊死、または崩壊するなどの有害な効果すら観察されることも報告されている。
【0007】
治療に好ましい遺伝子産物を生産するのに温熱治療に一般に用いられている温度を用いても、必ずしも高効率で生産されない例が少なからずある。従って、治療に好ましい遺伝子産物を生産するのに適切な技術の提供が待たれていた。
【特許文献1】特開2003−126135号公報
【特許文献2】特開2003−126138号公報
【特許文献3】特開2001−299798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の欠点を解消するためになされたものであり、その目的とするところは、治療に有用な遺伝子産物(例えば、Hsp72、HLA、Hsp10、Hsp27、Hsp47、Hsp40、Hsp60、Hsp90、Hsp73、Hsp110など)を生産するのに適切な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、温熱治療効果を最大に発揮させるための至適温度を用いることによって、治療に有用な遺伝子産物を生産することができることを見出したことによって上記課題を解決した。
【0010】
従って、本発明は、以下を提供する。
【0011】
一つの局面において、本発明は、治療に有用な遺伝子産物を生産する方法であって、
A)該遺伝子産物を生産する能力を有する生産体を提供する工程;
B)該生産体を、該生産体のドナーの温熱治療効果を最大に発揮させるための至適温度に供する工程;および
C)該生産体から、該遺伝子産物を得る工程、
を包含する、方法を提供する。
【0012】
一つの実施形態において、前記遺伝子産物は、Hsp72、HLA、Hsp10、Hsp27、Hsp47、Hsp40、Hsp60、Hsp90、Hsp73およびHsp110からなる群より選択される。
【0013】
一つの実施形態において、前記遺伝子産物は、Hsp72である。
【0014】
一つの実施形態において、前記生産体は、細胞、組織、臓器または生物体である。
【0015】
一つの実施形態において、前記生産体は、血液またはリンパ液を含む。
【0016】
一つの実施形態において、前記生産体は、人工生産体である。
【0017】
一つの実施形態において、前記生産体は、前記遺伝子産物をコードする核酸配列を含む。
【0018】
一つの実施形態において、前記生産体は、前記遺伝子産物をコードする核酸配列を用いて形質転換された細胞を含む。
【0019】
一つの実施形態において、前記遺伝子産物は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21または配列番号23に記載の配列によりコードされる。
【0020】
一つの実施形態において、前記至適温度は、前記ドナーの以下:
a)ドナーの血液細胞中のHsp72の発現量と機能、
b)ドナーの血圧の変化、
c)ドナーの心拍数、
d)ドナーの血流量、
e)ドナーの血液のpH、
f)ドナーの血液細胞中のHLAの発現量、および
g)ドナーの血中のリンパ球数、
からなる群より選択される生体変化を基にして決定される。
【0021】
一つの実施形態において、前記遺伝子産物を得る工程は、アフィニティー精製を用いることにより達成される。
【0022】
一つの実施形態において、前記アフィニティー精製は、抗体を用いる。
【0023】
一つの実施形態において、前記至適温度を特定する工程をさらに包含する。
【0024】
一つの実施形態において、前記特定の際に、以下:
a)ドナーの血液細胞中のHsp72の発現量と機能、
b)ドナーの血圧の変化、
c)ドナーの心拍数、
d)ドナーの血流量、
e)ドナーの血液のpH、
f)ドナーの血液細胞中のHLAの発現量、および
g)ドナーの血中のリンパ球数、
からなる群より選択される生体変化を観測する工程をさらに包含する。
【0025】
別の局面において、本発明は、本発明の方法により生産される遺伝子産物に関する。
【0026】
他の局面において、本発明は、治療に有用な遺伝子産物を生産するシステムであって、
A)該遺伝子産物を生産する能力を有する生産体;
B)該生産体を、該生産体のドナーの温熱治療効果を最大に発揮させるための至適温度に供する手段;および
C)該生産体から、該遺伝子産物を得るための手段、
を包含する、方法を提供する。
【0027】
一つの実施形態において、本発明のシステムは、D)前記至適温度を特定する手段をさらに備える。
【0028】
本発明のシステムの一つの実施形態において、前記遺伝子産物は、Hsp72、HLA、Hsp10、Hsp27、Hsp47、Hsp40、Hsp60、Hsp90、Hsp73およびHsp110からなる群より選択される。
【0029】
本発明のシステムの一つの実施形態において、前記遺伝子産物は、Hsp72である。
【0030】
本発明のシステムの一つの実施形態において、前記生産体は、細胞、組織、臓器または生物体である。
【0031】
本発明のシステムの一つの実施形態において、前記生産体は、血液またはリンパ液を含む、。
【0032】
本発明のシステムの一つの実施形態において、前記生産体は、人工生産体である。
【0033】
本発明のシステムの一つの実施形態において、前記生産体は、前記遺伝子産物をコードする核酸配列を含。
【0034】
本発明のシステムの一つの実施形態において、前記生産体は、前記遺伝子産物をコードする核酸配列を用いて形質転換された細胞を含む。
【0035】
本発明のシステムの一つの実施形態において、前記遺伝子産物は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21または配列番号23に記載の配列によりコードされる。
【0036】
本発明のシステムの一つの実施形態において、前記至適温度は、前記ドナーの以下:
a)ドナーの血液細胞中のHsp72の発現量と機能、
b)ドナーの血圧の変化、
c)ドナーの心拍数、
d)ドナーの血流量、
e)ドナーの血液のpH、
f)ドナーの血液細胞中のHLAの発現量、および
g)ドナーの血中のリンパ球数、
からなる群より選択される生体変化を基にして決定される、請求項16に記載のシステム。
【0037】
本発明のシステムの一つの実施形態において、前記遺伝子産物を得る手段は、アフィニティー精製手段を含む。
【0038】
本発明のシステムの一つの実施形態において、前記アフィニティー精製手段は、前記遺伝子産物に対して特異的な抗体を含む。
【0039】
本発明のシステムの一つの実施形態において、前記特定する手段は、以下:
a)ドナーの血液細胞中のHsp72の発現量と機能を測定する手段、
b)ドナーの血圧の変化を測定する手段、
c)ドナーの心拍数を測定する手段、
d)ドナーの血流量を測定する手段、
e)ドナーの血液のpHを測定する手段、
f)ドナーの血液細胞中のHLAの発現量を測定する手段、および
g)ドナーの血中のリンパ球数を測定する手段、
からなる群より選択される生体変化を観測する手段をさらに備える。
【0040】
本発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明の実施の形態の詳細な説明から一層明らかとなる。
【発明の効果】
【0041】
本発明は、治療に有用な遺伝子産物を、天然における形態で、正常な形態で、従来にないほど高効率で生産する技術を提供する。このような技術は、治療自体または治療に使用する医薬を生産する上で有用である。従って、大腸菌などのドナー由来ではない細胞において発現させる場合にように、余分なペプチドなどを含まないことから、有効である確率が高く、安全性も高い。
【0042】
以下に、本発明の好ましい実施形態を示すが、当業者は本発明の説明および当該分野における周知慣用技術からその実施形態などを適宜実施することができ、本発明が奏する作用および効果を容易に理解することが認識されるべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下に本発明を、必要に応じて、添付の図面を参照して例示の実施例により記載する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0044】
以下に提供される実施形態は、本発明のよりよい理解のために提供されるものであり、本発明の範囲は以下の記載に限定されるべきでないことが理解される。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本発明の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。
【0045】
(定義)
(生化学)
本明細書において使用される用語「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーおよびその改変体をいう。このポリマーは、直鎖であっても分岐していてもよく、環状であってもよい。アミノ酸は、天然のものであっても非天然のものであってもよく、改変されたアミノ酸であってもよい。この用語はまた、複数のポリペプチド鎖の複合体へとアセンブルされ得るものを包含する。この用語はまた、天然または人工的に改変されたアミノ酸ポリマーも包含する。そのような改変としては、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化または任意の他の操作もしくは改変(例えば、標識成分との結合体化)。この定義にはまた、例えば、アミノ酸の1または2以上のアナログを含むポリペプチド(例えば、非天然のアミノ酸などを含む)、ペプチド様化合物(例えば、ペプトイド)および当該分野において公知の他の改変が包含される。
【0046】
本明細書では、アミノ酸配列および塩基配列の類似性、同一性および相同性の比較は、配列分析用ツールであるBLASTを用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。
【0047】
本明細書において、「アミノ酸」は、天然のものでも非天然のものでもよい。「誘導体アミノ酸」または「アミノ酸アナログ」とは、天然に存在するアミノ酸とは異なるがもとのアミノ酸と同様の機能を有するものをいう。そのような誘導体アミノ酸およびアミノ酸アナログは、当該分野において周知である。
【0048】
用語「天然のアミノ酸」とは、天然のアミノ酸のL−異性体を意味する。天然のアミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、メチオニン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、システイン、プロリン、ヒスチジン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、γ−カルボキシグルタミン酸、アルギニン、オルニチン、およびリジンである。特に示されない限り、本明細書でいう全てのアミノ酸はL体であるが、D体のアミノ酸を用いた形態もまた本発明の範囲内にある。
【0049】
本明細書において「アミノ酸改変体」とは、天然のアミノ酸ではないが、天然のアミノ酸の物性および/または機能に類似する分子をいう。アミノ酸改変体としては、例えば、フェニルアラニンのベンジル側鎖(パラ位、メタ位、オルト位など)にアルキル基、ハロ基、ニトロ基などが結合したもの、エチオニン、カナバニン、2−メチルグルタミンなどが挙げられる。本発明では、アミノ酸改変体は、非天然アミノ酸およびアミノ酸模倣物を包含することがあることが理解される。
【0050】
本明細書において「非天然アミノ酸」とは、タンパク質中で通常は天然に見出されないアミノ酸を意味する。非天然アミノ酸の例として、ノルロイシン、パラ−ニトロフェニルアラニン、ホモフェニルアラニン、パラ−フルオロフェニルアラニン、3−アミノ−2−ベンジルプロピオン酸、ホモアルギニンのD体またはL体およびD−フェニルアラニンが挙げられる。
【0051】
アミノ酸は、その一般に公知の3文字記号か、またはIUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される1文字記号のいずれかにより、本明細書中で言及され得る。ヌクレオチドも同様に、一般に認知された1文字コードにより言及され得る。
【0052】
その文字コードは以下のとおりである。
アミノ酸
3文字記号 1文字記号 意味
Ala A アラニン
Cys C システイン
Asp D アスパラギン酸
Glu E グルタミン酸
Phe F フェニルアラニン
Gly G グリシン
His H ヒスチジン
Ile I イソロイシン
Lys K リジン
Leu L ロイシン
Met M メチオニン
Asn N アスパラギン
Pro P プロリン
Gln Q グルタミン
Arg R アルギニン
Ser S セリン
Thr T トレオニン
Val V バリン
Trp W トリプトファン
Tyr Y チロシン
Asx アスパラギン又はアスパラギン酸
Glx グルタミン又はグルタミン酸
Xaa 不明又は他のアミノ酸。
【0053】
塩基
記号 意味
a アデニン
g グアニン
c シトシン
t チミン
u ウラシル
r グアニン又はアデニンプリン
y チミン/ウラシル又はシトシンピリミジン
m アデニン又はシトシンアミノ基
k グアニン又はチミン/ウラシルケト基
s グアニン又はシトシン
w アデニン又はチミン/ウラシル
b グアニン又はシトシン又はチミン/ウラシル
d アデニン又はグアニン又はチミン/ウラシル
h アデニン又はシトシン又はチミン/ウラシル
v アデニン又はグアニン又はシトシン
n アデニン又はグアニン又はシトシン又はチミン/ウラシル、不明、または他の塩基。
【0054】
本明細書において、「対応する」アミノ酸または核酸とは、それぞれあるポリペプチド分子またはポリヌクレオチド分子において、比較の基準となるポリペプチドまたはポリヌクレオチドにおける所定のアミノ酸と同様の作用を有するか、あるいは有することが予測されるアミノ酸または核酸をいい、特に酵素分子にあっては、活性部位中の同様の位置に存在し触媒活性に同様の寄与をするアミノ酸をいう。例えば、あるポリヌクレオチドのアンチセンス分子であれば、そのアンチセンス分子の特定の部分に対応するオルソログにおける同様の部分であり得る。本発明のペプチドの場合、ヒトの細胞増殖因子における特定の配列が使用されるが、他の種の動物の細胞増殖因子における特定の配列において、本発明のペプチドに対応する部分が「対応するアミノ酸」に相当することが理解される。
【0055】
本明細書において、「対応する」遺伝子とは、ある種において、比較の基準となる種における所定の遺伝子と同様の作用を有するか、または有することが予測される遺伝子をいい、そのような作用を有する遺伝子が複数存在する場合、進化学的に同じ起源を有するものをいう。従って、ある遺伝子の対応する遺伝子は、その遺伝子のオルソログであり得る。例えば、マウス細胞増殖因子に対応する遺伝子は、ヒト細胞増殖因子である。
【0056】
本明細書において、「フラグメント」とは、全長のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(長さがn)に対して、1〜n−1までの配列長さを有するポリペプチドまたはポリヌクレオチドをいう。フラグメントの長さは、その目的に応じて、適宜変更することができ、例えば、その長さの下限としては、ポリペプチドの場合、3、4、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。また、ポリヌクレオチドの場合、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、75、100およびそれ以上のヌクレオチドが挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。本発明では、生体分子としてポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどが使用される場合、所望の目的(例えば、細胞誘引効果など)が達成される限り、このようなフラグメントもまた、全長のものと同様に使用され得ることが理解される。
【0057】
本明細書において、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの長さは、上述のようにそれぞれアミノ酸または核酸の個数で表すことができるが、上述の個数は絶対的なものではなく、同じ機能を有する限り、上限または加減としての上述の個数は、その個数の上下数個(または例えば上下10%)のものも含むことが意図される。そのような意図を表現するために、本明細書では、個数の前に「約」を付けて表現することがある。しかし、本明細書では、「約」のあるなしはその数値の解釈に影響を与えないことが理解されるべきである。
【0058】
本明細書において「生物学的活性」とは、ある因子(例えば、ポリペプチドまたはタンパク質)が、生体内において有し得る活性のことをいい、種々の機能を発揮する活性が包含される。例えば、ある因子がアンチセンス分子である場合、その生物学的活性は、対象となる核酸分子への結合、それによる発現抑制などを包含する。例えば、ある因子が酵素である場合、その生物学的活性は、その酵素活性を包含する。別の例では、ある因子がリガンドである場合、そのリガンドが対応するレセプターへの結合を包含する。そのような生物学的活性は、当該分野において周知の技術によって測定することができる。
【0059】
本明細書において使用される用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマーをいう。この用語はまた、「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオチド」を含む。「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオチド」とは、ヌクレオチドの誘導体を含むか、またはヌクレオチド間の結合が通常とは異なるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをいい、互換的に使用される。そのようなオリゴヌクレオチドとして具体的には、例えば、2’−O−メチル−リボヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’−P5’ホスホロアミデート結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリボースとリン酸ジエステル結合とがペプチド核酸結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5プロピニルウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5チアゾールウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC−5プロピニルシトシンで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシン(phenoxazine−modified cytosine)で置換された誘導体オリゴヌクレオチド、DNA中のリボースが2’−O−プロピルリボースで置換された誘導体オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド中のリボースが2’−メトキシエトキシリボースで置換された誘導体オリゴヌクレオチドなどが例示される。他にそうではないと示されなければ、特定の核酸配列はまた、明示的に示された配列と同様に、その保存的に改変された改変体(例えば、縮重コドン置換体)および相補配列を包含することが企図される。具体的には、縮重コドン置換体は、1またはそれ以上の選択された(または、すべての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を作成することにより達成され得る(Batzerら、Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsukaら、J.Biol.Chem.260:2605−2608(1985);Rossoliniら、Mol.Cell.Probes 8:91−98(1994))。
【0060】
本明細書において、「核酸分子」は、核酸、オリゴヌクレオチド、およびポリヌクレオチドと互換可能に使用され、cDNA、mRNA、ゲノムDNAなどを含む。核酸分子は、環状(例えば、環状ベクター、プラスミドなど)または直鎖状(例えば、PCR断片)で提供され得る。本明細書では、核酸および核酸分子は、用語「遺伝子」の概念に含まれ得る。ある遺伝子配列をコードする核酸分子はまた、「スプライス変異体(改変体)」を包含する。同様に、核酸によりコードされた特定のタンパク質は、その核酸のスプライス改変体によりコードされる任意のタンパク質を包含する。その名が示唆するように「スプライス変異体」は、遺伝子のオルタナティブスプライシングの産物である。転写後、最初の核酸転写物は、異なる(別の)核酸スプライス産物が異なるポリペプチドをコードするようにスプライスされ得る。スプライス変異体の産生機構は変化するが、エキソンのオルタナティブスプライシングを含む。読み過し転写により同じ核酸に由来する別のポリペプチドもまた、この定義に包含される。スプライシング反応の任意の産物(組換え形態のスプライス産物を含む)がこの定義に含まれる。
【0061】
本明細書において、「遺伝子」とは、遺伝形質を規定する因子をいう。通常染色体上に一定の順序に配列している。タンパク質の一次構造を規定するものを構造遺伝子といい、その発現を左右するものを調節遺伝子(たとえば、プロモーター)という。本明細書では、遺伝子は、特に言及しない限り、構造遺伝子および調節遺伝子を包含する。本明細書では、「遺伝子」は、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」ならびに/または「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」を指すことがある。本明細書においてはまた、「遺伝子産物」は、遺伝子によって発現された「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」ならびに/または「タンパク質」「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」を包含する。当業者であれば、遺伝子産物が何たるかはその状況に応じて理解することができる。本発明の遺伝子産物は、このような遺伝子産物全般を指すことが理解される。
【0062】
本明細書において遺伝子(例えば、核酸配列、アミノ酸配列など)の「相同性」とは、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。従って、ある2つの遺伝子の相同性が高いほど、それらの配列の同一性または類似性は高い。2種類の遺伝子が相同性を有するか否かは、配列の直接の比較、または核酸の場合ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーション法によって調べられ得る。2つの遺伝子配列を直接比較する場合、その遺伝子配列間でDNA配列が、代表的には少なくとも50%同一である場合、好ましくは少なくとも70%同一である場合、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である場合、それらの遺伝子は相同性を有する。本明細書において、遺伝子(例えば、核酸配列、アミノ酸配列など)の「類似性」とは、上記相同性において、保存的置換をポジティブ(同一)とみなした場合の、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。従って、保存的置換がある場合は、その保存的置換の存在に応じて同一性と類似性とは異なる。また、保存的置換がない場合は、同一性と類似性とは同じ数値を示す。
【0063】
本明細書では、アミノ酸配列および塩基配列の類似性、同一性および相同性の比較は、配列分析用ツールであるBLASTを用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。
【0064】
本明細書において「ターミネーター」は、遺伝子のタンパク質をコードする領域の下流に位置し、DNAがmRNAに転写される際の転写の終結、ポリA配列の付加に関与する配列である。ターミネーターは、mRNAの安定性に関与して遺伝子の発現量に影響を及ぼすことが知られている。
【0065】
本明細書において「プロモーター」とは、遺伝子の転写の開始部位を決定し、またその頻度を直接的に調節するDNA上の領域をいい、通常RNAポリメラーゼが結合して転写を始める塩基配列である。したがって、本明細書においてある遺伝子のプロモーターの働きを有する部分を「プロモーター部分」という。プロモーターの領域は、通常、推定タンパク質コード領域の第1エキソンの上流約2kbp以内の領域であることが多いので、DNA解析用ソフトウエアを用いてゲノム塩基配列中のタンパク質コード領域を予測すれば、プロモータ領域を推定することはできる。推定プロモーター領域は、構造遺伝子ごとに変動するが、通常構造遺伝子の上流にあるが、これらに限定されず、構造遺伝子の下流にもあり得る。好ましくは、推定プロモーター領域は、第一エキソン翻訳開始点から上流約2kbp以内に存在する。本明細書では、例えば、T7プロモーターなどを使用することができる。
【0066】
本明細書において「エンハンサー」とは、目的遺伝子の発現効率を高めるために用いられる配列をいう。そのようなエンハンサーは当該分野において周知である。エンハンサーは複数個用いられ得るが1個用いられてもよいし、用いなくともよい。
【0067】
本明細書において「作動可能に連結された(る)」とは、所望の配列の発現(作動)がある転写翻訳調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサーなど)または翻訳調節配列の制御下に配置されることをいう。プロモーターが遺伝子に作動可能に連結されるためには、通常、その遺伝子のすぐ上流にプロモーターが配置されるが、必ずしも隣接して配置される必要はない。
【0068】
本明細書において、核酸分子を細胞に導入する技術は、どのような技術でもよく、例えば、形質転換、形質導入、トランスフェクションなどが挙げられる。 そのような核酸分子の導入技術は、当該分野において周知であり、かつ、慣用されるものであり、例えば、Ausubel F.A.ら編(1988)、Current Protocols in Molecular Biology、Wiley、New York、NY;Sambrook Jら(1987)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.およびその第三版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載される。遺伝子の導入は、ノーザンブロット、ウェスタンブロット分析のような本明細書に記載される方法または他の周知慣用技術を用いて確認することができる。
【0069】
また、ベクターの導入方法としては、細胞にDNAを導入する上述のような方法であればいずれも用いることができ、例えば、トランスフェクション、形質導入、形質転換など(例えば、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法、エレクトロポレーション法、パーティクルガン(遺伝子銃)を用いる方法など)が挙げられる。
【0070】
本明細書において遺伝子について言及する場合、「ベクター」または「組み換えベクター」とは、目的のポリヌクレオチド配列を目的の細胞へと移入させることができるベクターをいう。そのようなベクターとしては、原核細胞、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物個体および植物個体などのドナー細胞において自立複製が可能、または染色体中への組込みが可能で、本発明のポリヌクレオチドの転写に適した位置にプロモーターを含有しているものが例示される。ベクターのうち、クローニングに適したベクターを「クローニングベクター」という。そのようなクローニングベクターは通常、制限酵素部位を複数含むマルチプルクローニング部位を含む。そのような制限酵素部位およびマルチプルクローニング部位は、当該分野において周知であり、当業者は、目的に合わせて適宜選択して使用することができる。そのような技術は、本明細書に記載される文献(例えば、Sambrookら、前出)に記載されている。
【0071】
本明細書において「発現ベクター」とは、構造遺伝子およびその発現を調節するプロモーターに加えて種々の調節エレメントがドナーの細胞中で作動し得る状態で連結されている核酸配列をいう。調節エレメントは、好ましくは、ターミネーター、薬剤耐性遺伝子のような選択マーカーおよび、エンハンサーを含み得る。生物(例えば、動物)の発現ベクターのタイプおよび使用される調節エレメントの種類が、ドナー細胞またはタンパク質発現系に応じて変わり得ることは、当業者に周知の事項である。
【0072】
本明細書において「形質転換体」とは、形質転換によって作製された細胞などの生命体の全部または一部をいう。形質転換体としては、原核細胞、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞などが例示される。形質転換体は、その対象に依存して、形質転換細胞、形質転換組織、形質転換ドナーなどともいわれる。本発明において用いられる細胞は、形質転換体であってもよい。
【0073】
本発明において遺伝子操作などにおいて原核生物細胞が使用される場合、原核生物細胞としては、Escherichia属、Serratia属、Bacillus属、Brevibacterium属、Corynebacterium属、Microbacterium属、Pseudomonas属などに属する原核生物細胞、例えば、Escherichia coli XL1−Blue、Escherichia coli XL2−Blue、Escherichia coli DH1が例示される。
【0074】
本明細書において遺伝子発現(たとえば、mRNA発現、タンパク質発現)の「検出」または「定量」は、例えば、mRNAの測定および免疫学的測定方法を含む適切な方法を用いて達成され得る。分子生物学的測定方法としては、例えば、ノーザンブロット法、ドットブロット法またはPCR法などが例示される。免疫学的測定方法としては、例えば、方法としては、マイクロタイタープレートを用いるELISA法、RIA法、蛍光抗体法、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法などが例示される。また、定量方法としては、ELISA法またはRIA法などが例示される。アレイ(例えば、DNAアレイ、プロテインアレイ)を用いた遺伝子解析方法によっても行われ得る。DNAアレイについては、(秀潤社編、細胞工学別冊「DNAマイクロアレイと最新PCR法」)に広く概説されている。プロテインアレイについては、Nat Genet.2002 Dec;32 Suppl:526−32に詳述されている。遺伝子発現の分析法としては、上述に加えて、RT−PCR、RACE法、SSCP法、免疫沈降法、two−hybridシステム、インビトロ翻訳などが挙げられるがそれらに限定されない。そのようなさらなる分析方法は、例えば、ゲノム解析実験法・中村祐輔ラボ・マニュアル、編集・中村祐輔 羊土社(2002)などに記載されており、本明細書においてそれらの記載はすべて参考として援用される。
【0075】
本明細書において「改変体」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどの物質に対して、一部が変更されているものをいう。そのような改変体としては、置換改変体、付加改変体、欠失改変体、短縮(truncated)改変体、対立遺伝子変異体などが挙げられる。このような改変体もまた、所望の目的を達成することができる限り、本発明の細胞増殖因子として使用することができる。対立遺伝子(allele)とは、同一遺伝子座に属し、互いに区別される遺伝的改変体のことをいう。従って、「対立遺伝子変異体」とは、ある遺伝子に対して、対立遺伝子の関係にある改変体をいう。そのような対立遺伝子変異体は、通常その対応する対立遺伝子と同一または非常に類似性の高い配列を有し、通常はほぼ同一の生物学的活性を有するが、まれに異なる生物学的活性を有することもある。「種相同体またはホモログ(homolog)」とは、ある種の中で、ある遺伝子とアミノ酸レベルまたはヌクレオチドレベルで、相同性(好ましくは、60%以上の相同性、より好ましくは、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上の相同性)を有するものをいう。そのような種相同体を取得する方法は、本明細書の記載から明らかである。「オルソログ(ortholog)」とは、オルソロガス遺伝子(orthologous gene)ともいい、二つの遺伝子がある共通祖先からの種分化に由来する遺伝子をいう。例えば、多重遺伝子構造をもつヘモグロビン遺伝子ファミリーを例にとると、ヒトおよびマウスのαヘモグロビン遺伝子はオルソログであるが,ヒトのαヘモグロビン遺伝子およびβヘモグロビン遺伝子はパラログ(遺伝子重複で生じた遺伝子)である。オルソログは、分子系統樹の推定に有用である。オルソログは、通常別の種においてもとの種と同様の機能を果たしていることがあり得ることから、本発明の治療に有用な遺伝子のオルソログもまた、本発明において有用であり得る。
【0076】
本明細書において、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの「置換、付加または欠失」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対して、それぞれアミノ酸もしくはその代替物、またはヌクレオチドもしくはその代替物が、置き換わること、付け加わることまたは取り除かれることをいう。このような置換、付加または欠失の技術は、当該分野において周知であり、そのような技術の例としては、部位特異的変異誘発技術などが挙げられる。置換、付加または欠失は、1つ以上であれば任意の数でよく、そのような数は、その置換、付加または欠失を有する改変体において目的とする機能(例えば、血管新生、細胞再生など)が保持される限り、多くすることができる。例えば、そのような数は、1または数個であり得、そして好ましくは、全体の長さの20%以内、10%以内、または100個以下、50個以下、25個以下などであり得る。
【0077】
(治療に有用な遺伝子産物)
本明細書において「治療に有用な遺伝子産物」とは、身体が治癒するにおいて、正の働きをすることが知られる任意の遺伝子産物をいう。そのような遺伝子産物としては、例えば、Hsp(例えば、Hsp72、Hsp10、Hsp27、Hsp47、Hsp40、Hsp60、Hsp90(例えば、Hsp90αまたはHsp90β)、Hsp73、Hsp110など)、HLAなどを挙げることができるがそれらに限定されない。
【0078】
本明細書中で使用される場合、「Hsp」とは、熱ショックタンパク質を指す。Hspは、細胞や個体が平常温度より高い温度変化を受けた時に合成が誘導されるタンパク質群の総称である。代表的なHspとしては、Hsp72以外に、例えば、Hsp70、Hsp10、Hsp27、Hsp47、Hsp40、Hsp60、Hsp90(例えば、Hsp90αまたはHsp90β)、Hsp73およびHsp110、ユビキチンおよびHsp26などが挙げられるが、これらに限定されない。「熱ショックタンパク質」または「Hsp」は、細胞・組織あるいは個体が生理的温度より5〜10℃高い温度(熱ショック)にさらされたとき、合成が誘導される一群のタンパク質をいう。ストレスタンパク質の代表的な例で、大腸菌から植物、高等脊椎動物にいたるすべての生物に共通するといわれている。Hspにその分子量の1000単位の数字を付して表記し、例えば代表的な分子量7万の熱ショックタンパク質はHsp70と称する。この命名法では、厳密には、一の位まで標記することがある。熱ショックタンパク質は高温ばかりでなく、重金属、エタノール、酸素欠乏など、各種の細胞に対するストレスによっても合成が誘導される。高温をはじめとするストレスは細胞のタンパク質を変性させ、不溶性沈澱を形成して細胞に致命的な障害を与えるが、熱ショックタンパク質はこの害を除く機能を有する。作用機序から次の2タイプに分けられる。(1)異常な構造をもつタンパク質に結合し、沈澱形成を防ぐと同時にその再生を補助するタンパク質。Hsp70(大腸菌ではDnaK)、Hsp60(GroEL)がこれにあたる。(2)変性タンパク質を選択的に分解する酵素系のタンパク質。真核生物に共通に見られ、変性タンパク質に結合し分解の標識となるユビキチン、その標識によってタンパク質を分解するプロテオゾームなど。熱ショックタンパク質をコードする遺伝子の発現は、熱ショックによって活性化された転写因子(heat shock factor=HSF)のはたらきによって起こる。この誘導は転写レベルの調節によるものが主であるが、翻訳レベルの機構も関与してはたらき、短時間に大量に合成され細胞に蓄積することもある。また、熱ショックタンパク質のもつ変性タンパク質の再生を補助する機能は、平常時の細胞にとっても必須であり、したがってこれをコードする遺伝子はストレスがなくても発現する必要があるものが多いといわれる。多くの熱ショックタンパク質の遺伝子は進化の過程で重複しイソタイプを示し、同一機能をもつタンパク質をコードしていてもある遺伝子は熱ショックによってはじめて発現が誘導され、別の遺伝子は恒常的に発現している。
【0079】
本明細書において熱ショックタンパク質は、分子シャペロンともいう。タンパク質はアミノ酸の直鎖ポリマーであるが、折りたたまれて個々のタンパク質に特有の立体的な構造をとる。この折りたたみを触媒的に補助するタンパク質をシャぺロンと呼ぶ。タンパク質がそのような作用を示せば、その性質を、シャペロン的作用という。シャペロンは、折りたたみの完成したタンパク質とは相互作用せず、また、その構成部分とはならない。シャペロンは、変性しているタンパク質に結合し、変性タンパク質どうしが凝集して本来の折りたたみの経路から不可逆的に脱落してしまうのを防ぐことで、正しい折りたたみの収率をあげている、と考えられている。シャペロンとしては、例えば、Hsp100(ClpA、B)、Hsp90(HtpG)、Hsp70(DnaK、Bip)、Hsp60(GroEL、シャぺロニン)、Hsp40(DnaJ)、Hsp10(GroES、cpn10)など、いくつかのグループが挙げられるがそれらに限定されない。その多くは熱ショックタンパク質であり、特に言及しない限り本明細書において重複して使用され得る。細胞が高温にさらされて、タンパク質が変性しかかると、増産されたシャペロンがこれに結合して凝集を防ぐ。また、タンパク質が輸送されて膜を通過するときは、伸びたヒモ状の形で輸送されるので、シャぺロンが結合してあらかじめタンパク質をひきのばす。この場合には、折りたたみ促進ではなく、その一時停止であるが、これもシャペロン的作用に含めることができる。Hsp60およびHsp70などの作用には、ATPが必要である。Hsp60は非常に広範な種類のタンパク質の折りたたみを補助できるが、一方、Hsp47のようにコラーゲンにのみはたらくシャペロンもある。シャペロンのなかでも、とくにHsp60は重要であり、すべての生物の細胞に存在し、この欠損変異は致死的である。
【0080】
本明細書において「Hsp72」とは、配列番号1(核酸)および配列番号2(アミノ酸)に代表的に示される熱ショックタンパク質をいう。本明細書では、Hsp72の働き(例えば、分子シャペロンなど)を有する限り、上記配列の改変体もまた使用され得ることが理解される。
【0081】
本明細書中で使用される場合、「HLA」とは、ヒト白血球抗原を指す。HLA抗原は、クラスI抗原とクラスII抗原の2群に大別される。クラスI抗原としては、例えば、HLA−A、HLA−B、HLA−C、HLA−E、HLA−F、HLA−Gなどが挙げられる。クラスI抗原は、ほとんどすべての有核細胞上に発現している。クラスI抗原は、細胞内で産生されるペプチドと複合体を形成し、その複合体を、CD8陽性細胞傷害性T細胞の抗原特異的T細胞受容体に提示する。クラスII抗原としては、例えば、HLA−DR、HLA−DQ、HLA−DPなどが挙げられる。クラスII抗原は、マクロファージ、B細胞、活性化T細胞、樹状細胞、胸腺上皮細胞などの細胞上でのみ発現し、外来抗原由来ペプチドをCD4陽性ヘルパーT細胞に提示する。クラスII抗原は、抗原提示のほかにも胸腺でのT細胞の正の選択および負の選択にも関与していることが公知である。「HLA」は、ヒトの主要組織適合抗原遺伝子複合体で、第6染色体短腕上に1.8cMの長さの領域にわたって存在する遺伝子領域にある。これまでに、HLA−A、B、C、DR、DP、DQの少なくとも6遺伝子座あるいは領域が同定されている。HLA−A、B、C遺伝子はそれぞれ、HLA−A、B、C抗原をコードする。各遺伝子ともきわめて高度な多型性を示し、数十種の対立遺伝子が存在する。HLA−DR、DP、DQ領域には、HLA−D抗原(=Ia抗原)のα鎖とβ鎖の構造遺伝子座が存在し、通常は同一領域内のα鎖とβ鎖遺伝子産物同士が結合してD抗原(DR、DP、DQ抗原)を作る。DP、DQ領域には一つずつのα鎖およびβ鎖の機能的遺伝子が存在するが、DR領域には一つのα鎖遺伝子と少なくとも三つのβ鎖遺伝子が同定されている。これらの各遺伝子座にも、多くの対立遺伝子が存在する。HLA−A、B、C、DR、DP、DQ各遺伝子座の特定の対立遺伝子の組合せの1セットをHLAハプロタイプ(HLA haplotype)とよぶ。したがって、一人のヒトは父親および母親に由来する二つのHLAハプロタイプを有することになる。HLA各遺伝子座の特定の対立遺伝子間には強い連鎖不均衡が存在し、一定の集団中に特定のHLAハプロタイプが高い頻度で認められる。特に、HLA各遺伝子座間の連鎖不均衡および各遺伝子座における対立遺伝子の頻度には、著明な人種差の存在することがわかっている。また、HLA遺伝子の特定の対立遺伝子と、いくつかの原因不明の難治性疾患との間に統計的にきわめて有意な相関が認められ(例えばHLA−B27と強直性脊髄炎)、その病因との関係を利用して、疾患の診断に用いることが可能である。代表的な遺伝子配列としては、配列番号3および4(それぞれ、核酸およびアミノ酸配列)を挙げることができるがそれらに限定されない。
【0082】
本明細書において「Hsp10」とは、配列番号5(核酸)および配列番号6(アミノ酸)に代表的に示される熱ショックタンパク質をいう。本明細書では、Hsp10の働き(例えば、分子シャペロンなど)を有する限り、上記配列の改変体もまた使用され得ることが理解される。
【0083】
本明細書において「Hsp27」とは、配列番号7(核酸)および配列番号8(アミノ酸)に代表的に示される熱ショックタンパク質をいう。本明細書では、Hsp27の働き(例えば、分子シャペロンなど)を有する限り、上記配列の改変体もまた使用され得ることが理解される。
【0084】
本明細書において「Hsp40」とは、配列番号9(核酸)および配列番号10(アミノ酸)に代表的に示される熱ショックタンパク質をいう。本明細書では、Hsp40の働き(例えば、分子シャペロンなど)を有する限り、上記配列の改変体もまた使用され得ることが理解される。
【0085】
本明細書において「Hsp47」(CBP2ともいう)とは、配列番号11(核酸)および配列番号12(アミノ酸)に代表的に示される熱ショックタンパク質をいう。本明細書では、Hsp47働き(例えば、分子シャペロンなど)を有する限り、上記配列の改変体もまた使用され得ることが理解される。
【0086】
本明細書において「Hsp60」とは、配列番号13(核酸)および配列番号14(アミノ酸)に代表的に示される熱ショックタンパク質をいう。本明細書では、Hsp60の働き(例えば、分子シャペロンなど)を有する限り、上記配列の改変体もまた使用され得ることが理解される。
【0087】
本明細書において「Hsp70」とは、配列番号15(核酸)および配列番号16(アミノ酸)に代表的に示される熱ショックタンパク質をいう。本明細書では、Hsp70の働き(例えば、分子シャペロンなど)を有する限り、上記配列の改変体もまた使用され得ることが理解される。
【0088】
本明細書において「Hsp73」とは、配列番号17(核酸)および配列番号18(アミノ酸)に代表的に示される熱ショックタンパク質をいう。本明細書では、Hsp73の働き(例えば、分子シャペロンなど)を有する限り、上記配列の改変体もまた使用され得ることが理解される。
【0089】
本明細書において「Hsp90」とは、配列番号19(核酸=Hsp90α)および配列番号20(アミノ酸=Hsp90α)、ならびに配列番号21(核酸=Hsp90β)および配列番号22(アミノ酸=Hsp90β)、に代表的に示される熱ショックタンパク質をいう。本明細書では、Hsp90の働き(例えば、分子シャペロンなど)を有する限り、上記配列の改変体もまた使用され得ることが理解される。
【0090】
本明細書において「Hsp110」とは、配列番号23(核酸)および配列番号24(アミノ酸)に代表的に示される熱ショックタンパク質をいう。本明細書では、Hsp110の働き(例えば、分子シャペロンなど)を有する限り、上記配列の改変体もまた使用され得ることが理解される。
【0091】
本明細書において「生産体」とは、遺伝子産物を生産することができいる生命体の全部または一部あるいはその人工生産物をいう。そのような例としては、細胞、組織、臓器または生物体を挙げることができるがそれらに限定されない。あるいは、人工生産物の例としては、例えば、無細胞系、形質転換した細胞、組織、臓器または生物体などを挙げることができるがそれらに限定されない。好ましくは、このような生産体は、天然に存在する状態で提供され得る。従って、例えば、体液、血液、リンパ液なども本発明の生産体として使用することができることが理解される。
【0092】
本明細書において「ドナー」とは、本発明の生産体が由来する被検体をいう。ドナーは、血液系を有する生物であれば、どのような生物であっても用いることができる。好ましくは、脊椎動物が用いられ、より好ましくは、哺乳動物(例えば、霊長類、齧歯類など)が用いられる。さらに好ましくは、霊長類が用いられる。最も好ましくはヒトが用いられる。
【0093】
本明細書中で使用される場合、「至適温度(セットポイントともいう)」とは、 a)ドナーの血液細胞中のHsp72、HLA、Hsp10、Hsp27、Hsp47、Hsp40、Hsp60、Hsp90、Hsp73およびHsp110などのタンパク質の発現量と機能、b)ドナーの血圧の変化、c)ドナーの心拍数、d)ドナーの血流量、e)ドナーの血液のpH、f)ドナーの血液細胞中のHLAの発現量、g)ドナーの血中のリンパ球数などの変化がドナーの血液中において生じる、ドナーの体温を指す。「至適温度」は、一般的には、39℃±1.0℃の範囲にあり、それぞれの個体および個体の健康状態に依存して異なる。このドナーの体温は、例えば、腋下、舌下、直腸、皮下深部、動脈内、鼓膜および食道などにおいて測定され得る。ドナーの体温は、好ましくは、舌下および直腸において測定され得、最も好ましくは、直腸において測定され得る。
【0094】
ドナーを徐々に加温していくと、至適温度前後において、以下のような変化が生じる。
【0095】
Hsp72の発現量は、体温が至適温度に到るまで次第に増加し、体温が至適温度を超えると減少する。血圧は、体温が至適温度に到るまで次第に増加し、体温が至適温度を超えると減少する。心拍数は、体温が至適温度に到るまで次第に増加し、体温が至適温度を超えると減少する。
血流量は、体温が至適温度に到るまで次第に増加し、体温が至適温度を超えると減少する。
【0096】
血液pHは、体温が至適温度に到るまで減少する場合は、体温が至適温度を超えると増加し、体温が至適温度に到るまで増加する場合は、体温が至適温度を超えると減少する。
【0097】
HLAの発現量は、体温が至適温度に到るまで次第に増加し、その後プラトーに達する。
【0098】
インビトロで上記パラメータが変化する温度と、インビボで上記パラメータが変化する温度とがほぼ一致していることが、予想外にもわかった。従って、インビボでの上記パラメータ変化をわざわざ観察する必要がない。ドナーの至適温度を特定することは、ドナーから採取した末梢血白血球をインビトロで温度を可変にすることにより産生される、Hsp72またはHLA、細胞の大きさ、細胞の密度を指標として行われる。
【0099】
(末梢血白血球におけるHsp72およびHLAの発現を検出および定量するアッセイ)
末梢血白血球におけるHsp72、HLA、Hsp10、Hsp27、Hsp47、Hsp40、Hsp60、Hsp90、Hsp73、Hsp110などの発現は、従来のウェスタンブロット法、ELISA、リアルタイムRT−PCR法、ノーザンブロット法などを使用することによって、検出および定量することが可能である。このために必要な末梢血細胞数は、当業者によって容易に決定されるが、好ましくは、8×10〜10×10細胞である。末梢血白血球細胞膜上でのHLA発現は、従来のFACS分析、蛍光顕微鏡などを使用することによって、検出および定量することが可能である。このために必要な末梢血細胞数は、当業者によって容易に決定されるが、好ましくは、5×10〜10×10細胞である。
【0100】
上記ドナーの至適温度を特定する手段(A)は、制御装置(D)に直接接続して、リアルタイムでドナーの至適温度の信号を制御装置へ入力するようにしてもよく、あるいは制御装置と分離し、または間接的に至適温度の信号を制御装置へ入力するようにしてもよい。
【0101】
ドナーの至適温度を特定するための昇温プログラムは、例えば、以下の点を留意して作成される。
【0102】
チャンバー(湯温)と体温の差が大きい場合は、昇温速度は速く、チャンバー(湯温)と体温の差が小さい場合は、昇温速度は遅く設定する。
【0103】
直腸温度の上昇が急に速くなるポイント(体表からの浸潤温度と血液循環による温度上昇が一致する点)から、比熱の小さい温度制御に切り替える。
【0104】
目的温度より少し低い温度(例えば、目的直腸温度が42.0℃の場合、湯温度は41.8℃)を維持する。この理由は、熱たまり(予熱)効果の利用である。湯温は41.8℃であるが、直腸温度は42.0℃になる。
【0105】
保持時間は、体表面温度から湯温への温度差による放熱の速度(1)と、直腸温度の上昇加速(2)とのバランスを考慮する。湯温を低く設定する場合は、速度(2)が速度(1)より高いときである。時間の経過につれて速度(1)と速度(2)のバランスが、均衡から逆転することになる。この場合は、速度(1)を抑えるために湯温を加温してもよいし、予め逆転しないよう速度(2)を強めておいてもよい。
【0106】
このように、チャンバー(湯温)と体温の差を基に、速度(1)と速度(2)のバランスを計算により調節して、温度調節をする。
【0107】
上記本体機構の治療開始から、治療終了までの一連の動作を説明すると、例えば、次のようになる。
【0108】
はじめに、該ドナーの温熱治療効果を最大に発揮させるための該ドナーの至適温度を特定する。ドナーの至適温度を特定する手段(A)が、ドナーから採取した末梢血白血球をインビトロで温度を可変にすることにより産生量が変動するHsp72またhHLAを指標として行われることが好ましい。この場合、具体的には、ドナーの血液(2−3ml)を採取し、図16に示すように、温度を変えることにより、Hsp72の産生量が大きく変化する点を、ドナーの至適温度(セットポイントともいう)とする。このようにして、ドナー個々の至適加温条件を決定し(つまりインビボの加療プログラムの作成ができる)、この加温効果のシミュレーションに基づいて、上記制御装置を制御する。
【0109】
本明細書においてタンパク質生産体は、翻訳に必要なセットのtRNAおよびmRNAを翻訳するための翻訳酵素(代表的には、リボソームRNA=rRNAまたはそれを含むリボソーム)ならびに他の調節因子を含む。
【0110】
本明細書において「転写」とは、当該分野において通常使用される意味と同じ意味で用いられ、伝子DNAのヌクレオチド配列を相補的RNAとして写しとる反応をいう。この反応は、通常、生体内(細胞内)で行われるが、必要な材料が存在する限り、無細胞系でも行われ得る。そのような無細胞系には、当該分野において公知のDNA依存性RNAポリメラーゼおよびその補因子および/または調節因子、ならびに必要なヌクレオチドなどを含み得る。なお、転写の逆の反応(RNAを鋳型とするDNA合成反応)は、本明細書において「逆転写」という。
【0111】
本明細書において「翻訳」とは、タンパク質の生合成または人工合成の際に、mRNA上の塩基配列を読みとってその情報に対応するアミノ酸を選びだしペプチド鎖を形成していく過程をいう。翻訳もまた、通常、生体内(細胞内)で行われるが、必要な材料が存在する限り、無細胞系でも行われ得る。そのような無細胞系は、本明細書において「タンパク質合成系」という。生体内で行われる場合は、mRNAはリボソームと結合し,そのmRNA上のコドン(3連塩基)にそれぞれ対応した構造をもつアミノアシルtRNAによって,アミノ酸は順次連結される。無細胞系は、細胞から取り出したリボゾーム系および他の必要なアミノ酸などを含み、これらの系は試験管内で行われ得る。
【0112】
本明細書において、物質(例えば、細胞、核酸またはタンパク質などの生物学的因子)の「単離」とは、その生物学的因子が天然に存在する生物体の細胞内の他の物質(例えば、糖鎖または糖鎖含有物質である場合、糖鎖または糖鎖含有物質以外の因子、あるいは、目的とする糖鎖または糖鎖含有物質以外の糖鎖または糖鎖含有物質;核酸である場合、核酸以外の因子および目的とする核酸以外の核酸配列を含む核酸;タンパク質である場合、タンパク質以外の因子および目的とするタンパク質以外のアミノ酸配列を含むタンパク質など)から実質的に分離または精製されたものをいう。「単離された」、糖鎖または糖鎖含有物質には、本発明の精製方法によって精製された糖鎖または糖鎖含有物質が含まれる。したがって、単離された糖鎖または糖鎖含有物質は、化学的に合成した糖鎖または糖鎖含有物質を包含する。
【0113】
本明細書において、物質(例えば、糖鎖、核酸またはタンパク質などの生物学的因子)の「精製」とは、その物質に天然に随伴する因子の少なくとも一部を除去することをいう。したがって、精製および分離は、その形態が一部重複する。したがって、通常、精製された物質(例えば、糖鎖または糖鎖含有物質のような生物学的因子)におけるその物質の純度は、その物質が通常存在する状態よりも高い(すなわち濃縮されている)が、天然に随伴する因子が低減されている限り、濃縮されていない状態も「精製」の概念に包含される。
【0114】
本明細書において物質(例えば、糖鎖または糖鎖含有物質のような生物学的因子)の「濃縮」とは、その物質が濃縮前に試料に含まれている含有量よりも高い濃度に上昇させる行為をいう。従って、濃縮もまた、精製および分離と、その概念が一部重複する。したがって、通常、濃縮された物質(例えば、糖鎖または糖鎖含有物質のような生物学的因子)は、その物質が通常存在する状態における不純物の含有量は低減されているが、目的とする物質の含有量が増加している限り、ある特定の不純物が増加していてもよく、「精製」されていない状態も「濃縮」の概念に包含される。
【0115】
(細胞系を用いる場合のタンパク質の製造方法)
本発明の治療に有用な遺伝子産物を生産する能力を有する生産体、あるいは、必要に応じて治療に有用な遺伝子産物をコードするDNAを組み込んだ組換え体ベクターを保有する動物細胞などに由来する形質転換体を、通常の培養方法に従って培養し、本発明のタンパク質を生成蓄積させ、本発明の培養物より本発明のタンパク質を採取することにより、本発明のタンパク質または糖タンパク質を製造することができる。
【0116】
本発明の生産体を培地に培養する方法は、ドナー由来の細胞の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。細胞を培養する培地としては、本発明の生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。
【0117】
炭素源としては、それぞれの微生物が資化し得るものであればよく、グルコース、フラクトース、スクロース、これらを含有する糖蜜、デンプンあるいはデンプン加水分解物等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール等のアルコール類を用いることができる。
【0118】
窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の各種無機酸または有機酸のアンモニウム塩、その他含窒素物質、ならびに、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕および大豆粕加水分解物、各種発酵菌体およびその消化物等を用いることができる。
【0119】
無機塩としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等を用いることができる。培養は、振盪培養または深部通気攪拌培養等の好気的条件下で行う。
【0120】
培養温度は、通常であれば15〜40℃が適しているとされているが、本発明では、生産体のドナーの温熱治療効果を最大に発揮させるための至適温度(セットポイント)に設定することが重要である。この至適温度に本発明の生産体を維持することによって、予想外に、本発明は、遺伝子産物の生産能力が向上することが示された。例えば、その向上の水準としては、37℃における2倍〜10倍、100倍程度あるいは遺伝子産物によっては、0が1(すなわち、発現していないものが発現するようになる)ようなものもある。培養時間は、通常5時間〜7日間である。培養中pHは、3.0〜9.0に保持する。pHの調整は、無機あるいは有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニア等を用いて行う。また培養中必要に応じて、アンピシリンまたはテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
【0121】
特定の実施形態において、プロモーターを用いる場合、プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド等を、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸等を培地に添加してもよい。
【0122】
例えば、動物細胞を用いる場合、本発明の細胞を培養する培地は、一般に使用されているRPMI1640培地[The Journal of the American Medical Association,199,519(1967)]、EagleのMEM培地[Science,122,501(1952)]、DMEM培地[Virology,8,396(1959)]、199培地[Proceedings of the Society for the Biological Medicine,73,1(1950)]またはこれら培地にウシ胎児血清等を添加した培地等が用いられる。
【0123】
培養は、通常pH6〜8、25〜40℃、5%CO2存在下等の条件下で1〜7日間行う。また培養中必要に応じて、カナマイシン、ペニシリン、ストレプトマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
【0124】
組織、臓器または生物体を用いる場合でも、温度以外は、通常そのような組織、臓器または生物体が生育する条件を用い、生産体のドナーの温熱治療効果を最大に発揮させるための至適温度(セットポイント)に設定することによって生産を達成することができる。この至適温度に本発明の生産体を維持することによって、予想外に、本発明は、遺伝子産物の生産能力が向上することが示された。例えば、その向上の水準としては、37℃における2倍〜10倍、100倍程度あるいは遺伝子産物によっては、0が1(すなわち、発現していないものが発現するようになる)ようなものもある。
【0125】
(タンパク質の精製および単離)
本発明の治療に有用な遺伝子産物を生産する能力を有する生産体の培養物または必要に応じて治療に有用な遺伝子産物をコードする核酸配列で形質転換された形質転換体から、本発明のタンパク質を単離または精製するためには、当該分野で周知慣用の通常の酵素の単離または精製法を用いることができる。例えば、本発明の治療に有用な遺伝子産物が生産体の細胞外に本発明のタンパク質が分泌される場合には、その培養物を遠心分離等の手法により処理し、可溶性画分を取得する。その可溶性画分から、溶媒抽出法、硫安等による塩析法脱塩法、有機溶媒による沈澱法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−Sepharose、DIAION HPA−75(三菱化学)等樹脂を用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S−Sepharose FF(Pharmacia)等の樹脂を用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等の樹脂を用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を用い、精製標品を得ることができる。
【0126】
本発明の治療に有用な遺伝子産物が生産体内に溶解状態で蓄積する場合には、培養物を遠心分離することにより、培養物中の細胞を集め、その細胞を洗浄した後に、超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモジナイザー、ダイノミル等により細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。その無細胞抽出液を遠心分離することにより得られた上清から、溶媒抽出法、硫安等による塩析法脱塩法、有機溶媒による沈澱法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−Sepharose、DIAION HPA−75(三菱化学)等樹脂を用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S−Sepharose FF(Pharmacia)等の樹脂を用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等の樹脂を用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を用いるこ生産体細胞内に不溶体を形成して発現した場合は、同様に細胞を回収後破砕し、遠心分離を行うことにより得られた沈澱画分より、通常の方法により本発明のタンパク質を回収後、そのタンパク質の不溶体をタンパク質変性剤で可溶化する。この可溶化液を、タンパク質変性剤を含まないあるいはタンパク質変性剤の濃度がタンパク質が変性しない程度に希薄な溶液に希釈、あるいは透析し、本発明のタンパク質を正常な立体構造に構成させた後、上記と同様の単離精製法により精製標品を得ることができる。
【0127】
また、通常のタンパク質の精製方法[J.Evan.Sadlerら:Methods in Enzymology,83,458]に準じて精製できる。
【0128】
さらに、本発明のタンパク質自身に対する抗体を用いたアフィニティークロマトグラフィーで精製することもできる。本発明のタンパク質は、公知の方法[J.Biomolecular NMR,6,129−134、Science,242,1162−1164、J.Biochem.,110,166−168(1991)]に準じて、in vitro転写・翻訳系を用いてを生産することができる。
【0129】
精製した本発明のタンパク質の構造解析は、タンパク質化学で通常用いられる方法、例えば遺伝子クローニングのためのタンパク質構造解析(平野久著、東京化学同人発行、1993年)に記載の方法により実施可能である。本発明のタンパク質の生理活性は、そのタンパク質に応じ、公知の測定法に準じて測定することができる。
【0130】
(本明細書において用いられる一般技術)
本明細書において使用される技術は、そうではないと具体的に指示しない限り、当該分野の技術範囲内にある、マイクロフルイディクス、微細加工、有機化学、生化学、遺伝子工学、分子生物学、微生物学、遺伝学および関連する分野における周知慣用技術を使用する。そのような技術は、例えば、以下に列挙した文献および本明細書において他の場所おいて引用した文献においても十分に説明されている。
【0131】
微細加工については、例えば、Campbell,S.A.(1996).The Science and Engineering of Microelectronic Fabrication,Oxford University Press;Zaut,P.V.(1996).Micromicroarray Fabrication:a Practical Guide to Semiconductor Processing,Semiconductor Services;Madou,M.J.(1997).Fundamentals of Microfabrication,CRC1 5 Press;Rai−Choudhury,P.(1997).Handbook of Microlithography,Micromachining,& Microfabrication:Microlithographyなどに記載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
【0132】
本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例えば、Maniatis,T.et al.(1989).Molecular Cloning: A Laboratory Manual,Cold Spring Harborおよびその3rd Ed.(2001);Ausubel,F.M.,et al. eds,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons Inc.,NY,10158(2000);Innis,M.A.(1990).PCR Protocols: A Guide to Methods
and Applications,Academic Press;Innis,M.A.et al.(1995).PCR Strategies,Academic Press;Sninsky,J.J.et al.(1999).PCR Applications: Protocols for Functional Genomics,Academic Press;Gait,M.J.(1985).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press;Gait,M.J.(1990).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press;Eckstein,F.(1991).Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approac ,IRL Press;Adams,R.L.et al.(1992).The Biochemistry of the Nucleic Acids,Chapman & Hall;Shabarova,Z.et al.(1994).Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids,Weinheim;Blackburn,G.M.et al.(1996).Nucleic Acids in Chemistry and Biology,Oxford University Press;Hermanson,G.T.(1996).Bioconjugate Techniques,Academic Press;Method in Enzymology 230、242、247、Academic Press、1994;別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載されており、これらは本明細書において関連する部分(全部であり得る)が参考として援用される。
【0133】
(医薬・化粧品など、およびそれを用いる治療、予防など)
別の局面において、本発明は、医薬および化粧品に関する。この医薬および化粧品は、薬学的に受容可能なキャリアなどをさらに含み得る。本発明の医薬に含まれる薬学的に受容可能なキャリアとしては、当該分野において公知の任意の物質が挙げられる。
【0134】
そのような適切な処方材料または薬学的に受容可能なキャリアとしては、抗酸化剤、保存剤、着色料、風味料、および希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクル、希釈剤、賦形剤および/または薬学的アジュバント挙げられるがそれらに限定されない。代表的には、本発明の医薬は、単離された多能性幹細胞、またはその改変体もしくは誘導体を、1つ以上の生理的に受容可能なキャリア、賦形剤または希釈剤とともに含む組成物の形態で投与される。例えば、適切なビヒクルは、注射用水、生理的溶液、または人工脳脊髄液であり得、これらには、非経口送達のための組成物に一般的な他の物質を補充することが可能である。
【0135】
本明細書で使用される受容可能なキャリア、賦形剤または安定化剤は、レシピエントに対して非毒性であり、そして好ましくは、使用される投薬量および濃度において不活性であり、そして以下が挙げられる:リン酸塩、クエン酸塩、または他の有機酸;アスコルビン酸、α−トコフェロール;低分子量ポリペプチド;タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン);親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジン);モノサッカリド、ジサッカリドおよび他の炭水化物(グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む);キレート剤(例えば、EDTA);糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトール);塩形成対イオン(例えば、ナトリウム);ならびに/あるいは非イオン性表面活性化剤(例えば、Tween、プルロニック(pluronic)またはポリエチレングリコール(PEG))。
【0136】
例示の適切なキャリアとしては、中性緩衝化生理食塩水、または血清アルブミンと混合された生理食塩水が挙げられる。好ましくは、その生成物は、適切な賦形剤(例えば、スクロース)を用いて凍結乾燥剤として処方される。他の標準的なキャリア、希釈剤および賦形剤は所望に応じて含まれ得る。他の例示的な組成物は、pH7.0−8.5のTris緩衝剤またはpH4.0−5.5の酢酸緩衝剤を含み、これらは、さらに、ソルビトールまたはその適切な代替物を含み得る。
【0137】
本発明の医薬は、経口的または非経口的に投与され得る。あるいは、本発明の医薬は、静脈内または皮下で投与され得る。全身投与されるとき、本発明において使用される医薬は、発熱物質を含まない、薬学的に受容可能な水溶液の形態であり得る。そのような薬学的に受容可能な組成物の調製は、pH、等張性、安定性などを考慮することにより、当業者は、容易に行うことができる。本明細書において、投与方法は、経口投与、非経口投与(例えば、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、粘膜投与、直腸内投与、膣内投与、患部への局所投与、皮膚投与など)であり得る。そのような投与のための処方物は、任意の製剤形態で提供され得る。そのような製剤形態としては、例えば、液剤、注射剤、徐放剤が挙げられる。
【0138】
本発明の医薬は、必要に応じて生理学的に受容可能なキャリア、賦型剤または安定化剤(日本薬局方第14版またはその最新版、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition,A.R.Gennaro,ed.,Mack Publishing Company,1990などを参照)と、所望の程度の純度を有する糖鎖組成物とを混合することによって、凍結乾燥されたケーキまたは水溶液の形態で調製され保存され得る。
【0139】
本発明の処置方法において使用される組成物の量は、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、ドナーの年齢、体重、性別、既往歴、細胞の形態または種類などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。本発明の処置方法を被検体(またはドナー)に対して施す頻度もまた、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、ドナーの年齢、体重、性別、既往歴、および治療経過などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。頻度としては、例えば、毎日−数ヶ月に1回(例えば、1週間に1回−1ヶ月に1回)の投与が挙げられる。1週間−1ヶ月に1回の投与を、経過を見ながら施すことが好ましい。
【0140】
本発明が化粧品として使用されるときもまた、当局の規定する規制を遵守しながら化粧品を調製することができる。
【0141】
(農薬)
本発明の組成物は、農薬の成分としても用いることができる。農薬組成物として処方される場合、必要に応じて、農学的に受容可能なキャリア、賦型剤または安定化剤などを含み得る。
【0142】
本発明の組成物が、農薬として使用される場合は、除草剤(ピラゾレートなど)、殺虫・殺ダニ剤(ダイアジノンなど)、殺菌剤(プロベナゾールなど)、植物成長調整剤(例、パクロブトラゾールなど)、殺線虫剤(例、ベノミルなど)、共力剤(例、ピペロニルブトキサイドなど)、誘引剤(例、オイゲノールなど)、忌避剤(例、クレオソートなど)、色素(例、食用青色1号など)、肥料(例、尿素など)などもまた必要に応じて混合され得る。
【0143】
(保健・食品)
本発明はまた、保健・食品分野においても利用することができる。このような場合、上述の経口医薬として用いられる場合の留意点を必要に応じて考慮すべきである。特に、特定保健食品のような機能性食品・健康食品などとして使用される場合には、医薬に準じた扱いを行うことが好ましい。
【0144】
以下に本発明の好ましい実施形態を実施例として説明する。以下に提供される実施形態は、本発明のよりよい理解のために提供されるものであり、本発明の範囲は以下の記載に限定されるべきでないことが理解される。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本発明の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。
【0145】
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
【0146】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【実施例】
【0147】
以下、実施例により、本発明の構成をより詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において使用した試薬類は、特に言及した場合を除いて、和光純薬、Promegaから市販されているものを使用した。
【0148】
(実施例1:加温によるHsp(熱ショックタンパク質)産生法〜産生Hspの抽出・精製法)
(I. Hsp70に対するモノクローナル抗体の作製)
GST Gene Fusion System Kit(Amersham Bioscience製)を用いて、GST融合タンパク質(GST−Hsp72)を作製する。Hsp72 cDNAをpGEXベクターとライゲーションし、作製したプラスミドで大腸菌(E.coli BL21)を形質転換する。その後、目的のプラスミドを持つクローンを選択する。この選択した大腸菌を培養し、発現を確認する。確認は、ノーザンブロット分析などの任意の公知の方法を用いる。目的のGSTタンパク質を(以下のドナー細胞の抽出手順に準じて)可溶化し、抗GST抗体結合カラムにて精製する。精製したGSTタンパク質を上記KitのFactor Xaを用いて消化し、再度抗GST抗体カラムにかけ、素通り画分(Hsp72)を得る。。このようにして作製した組換えHsp(rHsp)(配列番号2を含む)をアジュバントと共に、マウス(Balb/cマウス雌性、日本クレア)皮内に投与・免疫(3〜4回)する。抗体価はrHsp70を用いたELISA、及びWestern blottingにより評価する。ELISAおよびウェスタンブロッティングは、Promegaから市販されるキットを用いて行うことができる。
【0149】
再度、rHspを用いて、boostしたマウスから摘出した脾臓と、ミエローマ細胞(ヒューマンサイエンス研究資源バンクから入手可能)と融合させる。融合した細胞を、限界希釈法により選択をする。
【0150】
抗Hsp抗体産生ハイブリドーマをrHspコーティングされた96ウェルマイクロタイタープレートを用いてスクリーニングする。選択したハイブリドーマをマウス腹腔内に投与し、増殖させ、大量の腹水を得る。抗体含有腹水に等量の飽和硫酸アンモニウムを加えて、抗体画分を沈澱させる(部分精製抗体)。
【0151】
部分精製抗体をプロテインAあるいはプロタミンカラムを用いて精製する。精製した抗体をCNBrで活性化したSepharose beadsと反応させ、抗体を結合させる。これを、抗Hsp抗体結合アフィニティーカラムとして使用する。
【0152】
(II. Hsp抽出・精製)
(Hsp72の発現量を指標とする至適温度の決定)
被験体から末梢血を4ml採血した。Lymphoprep(Nycomed Pharma AS,Oslo,Norway)によって、末梢血から末梢血単核球を分離した。約1×10個の末梢血単核球を溶解緩衝液((株)フナコシ、Hsp70 ELISA kitに含まれる)中に溶解した。この溶液を37℃から始めてゆっくり加温した。0.5℃ごとに、この溶液からアリコートを取り出した。取り出した溶液アリコートから、(株)フナコシ、Hsp70 ELISA kitによってタンパク質を抽出し、Hsp72 ELISA Kit(Stressgen Biotechnologies社、シドニー、カナダ)を用いるELISAによってHsp72の発現量を定量した。Hsp72の発現量が増加から減少に転じた温度を、この被験体を温熱治療する際の至適温度とした。すなわち、この至適温度において、Hsp72の発現量は最大であった。
【0153】
(HLA−DRの発現量を指標とする至適温度の決定)
被験体から末梢血を4ml採血した。Lymphoprep(Nycomed Pharma As,Oslo,Norway)によって、末梢血から末梢血単核球を分離した。約1×10個の末梢血単核球をCD4、CD8、CD16、CD56あるいはCD57に対する抗体と、抗HLA抗体で二重染色し、FACS分析によって、それぞれの細胞集団について、HLA−DRの発現量を定量した。この被験体の末梢血をインビトロで加温した場合のHLA−DRの発現量が増加から減少に転じた温度を、この被験体を温熱治療する際の至適温度とした。すなわち、この至適温度において、HLA−DRの発現量は最大であった。
【0154】
(ドナーの指標を用いる至適温度の決定)
以下のパラメータに関して、被検体(ヒト)から各々の情報を得た:
a)ドナーの血液細胞中のHsp72の発現量と機能、
b)ドナーの血圧の変化、
c)ドナーの心拍数、
d)ドナーの血流量、
e)ドナーの血液のpH、
f)ドナーの血液細胞中のHLAの発現量、および
g)ドナーの血中のリンパ球数。
【0155】
これらのうち、至適温度は、以下の条件で求めた。
【0156】
a)ドナーの血液細胞中のHsp72の発現量と機能:最大の発現量を誘導する温度
b)ドナーの血圧の変化:拡張気圧が上昇し始める温度
c)ドナーの心拍数:上昇した心拍数が減少し始める温度
d)ドナーの血流量:増大した血流量が減少し始める温度
e)ドナーの血液のpH:ドナーの末梢血pHの変化(上昇または下降)がプラトーに達する時の温度
f)ドナーの血液細胞中のHLAの発現量:細胞膜表面上で最大発現量を示す温度
g)ドナーの血中のリンパ球数:最大のリンパ級数の増加を示す温度
(至適温度での生産体の処理)
上記のようにして得た至適温度は、被検体1では、39℃、被検体2では、38.5℃、被検体3では、39.5℃であった。これらの温度を厳密に維持するシステムを用いて、各々の被検体から取り出した、リンパ液および血液を処理した。
【0157】
対照実験として、37℃および40℃で一律行ったもののほか、38.5℃が至適温度のものについて、39℃あるいはその逆のものを行った。
【0158】
(精製)
リンパ液および血液は、各々500mLずつ、以下の処理に供する。この量は適宜変更することができ、以下の処理もスケールアップおよびダウンすることができることが理解される。
【0159】
1% chaps 含有10 mM Tris−HCl緩衝液pH 7.4 [含150 mM NaCl,10 μg/ml ロイペプチン,1 μg/mlペプスタチン,20 μg/ml ダイズインヒビター,10μM p−アミノフェニル−フェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)] を加える(10 細胞/mlの割合で)。得られた混合物を超音波処理(氷中、5分)し、細胞を均一に破壊する。
【0160】
得られた混合物を超遠心分離(100,000xg,1時間)する。
【0161】
さらに、上清をろ過する(0.45μm ポアサイズフィルター)。
【0162】
ろ液を、上記のようにして調製したアフィニティカラム(抗Hsp抗体結合アフィニティーカラム)にアプライする。
【0163】
カラムを 1% Chaps含有10 mM Tris−HCl緩衝液 pH 7.4 (含150mM NaCl,10 mM PMSF)にて洗浄する。洗浄は280 nmの吸光度(OD280)でモニターする。
【0164】
0.2 M 酢酸溶液 pH 2.5にてHspを脱着する。
【0165】
吸着画分を1M Tris−HCl pH 8.0にて、中和する。
【0166】
中和した画分をリン酸緩衝液に対して十分に透析する(4℃にて)。透析外液交換を繰り返す。これにより、精製Hspを得る。
【0167】
精製した量を計測すると、それぞれの至適温度では、37℃および40℃に比べ、Hsp72が10倍以上増加していた。また、38.5℃が至適温度のものでは、39℃で培養した場合は、生産量が半減する。至適温度が39.0℃のものを、38.5℃で培養した場合には30%に生産量が減少する。従って、至適温度に生産体を維持することが遺伝子産物の生産に重要であることが理解される。
【0168】
(実施例2:組織、臓器および生物体における実施例)
末梢血より単核球を、リンホプレップ(#1114545、Axis−Shield POC.As製、オスロ、ノルウェイ)を用いて、分離および分取した後、または肝組織をコラゲナーゼ処理して、肝実質細胞を得る。この細胞を、実施例1において決定した至適温度で加温してHsp72の発現量の増加を誘導する。コントロール実験として、実施例1で記載される他の温度での実験も行う。
【0169】
タンパク質の誘導後、モノクローナル抗体を結合させたアフィニティーカラムにより、分離および精製を行い、定量する。
【0170】
精製を、実施例1に記載されるのと同様に行い、精製した量を計測すると、それぞれの至適温度では、37℃および40℃に比べ、Hsp72の発現量が増加することが分かる。
【0171】
(実施例3:組換え実験)
配列番号1に記載されるヌクレオチドを含むベクター(pGEX)を用いて、HeLa細胞またはCHO細胞を形質転換した。この形質転換体を、実施例1と同様に至適温度にて培養する。
【0172】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0173】
本発明により、医薬、農薬、食品などで使用され得る、治療に有用なタンパク質(例えば、Hsp72)を、高効率で簡便に製造することができるようになった。従って、その用途は、種々の分野に及ぶことが理解される。
【配列表フリ−テキスト】
【0174】
(配列の説明)
配列番号1:本発明において使用されるHsp72の核酸配列を示す。
配列番号2:本発明において使用されるHsp72のアミノ酸配列を示す。
配列番号3:本発明において使用されるHLA−Bの核酸配列を示す。
配列番号4:本発明において使用されるHLA−Bのアミノ酸配列を示す。
配列番号5:本発明において使用されるHsp10の核酸配列を示す。
配列番号6:本発明において使用されるHsp10のアミノ酸配列を示す。
配列番号7:本発明において使用されるHsp27の核酸配列を示す。
配列番号8:本発明において使用されるHsp27のアミノ酸配列を示す。
配列番号9:本発明において使用されるHsp40の核酸配列を示す。
配列番号10:本発明において使用されるHsp40のアミノ酸配列を示す。
配列番号11:本発明において使用されるHsp47の核酸配列を示す。
配列番号12:本発明において使用されるHsp47のアミノ酸配列を示す。
配列番号13:本発明において使用されるHsp60の核酸配列を示す。
配列番号14:本発明において使用されるHsp60のアミノ酸配列を示す。
配列番号15:本発明において使用されるHsp70の核酸配列を示す。
配列番号16:本発明において使用されるHsp70のアミノ酸配列を示す。
配列番号17:本発明において使用されるHsp73の核酸配列を示す。
配列番号18:本発明において使用されるHsp73のアミノ酸配列を示す。
配列番号19:本発明において使用されるHsp90αの核酸配列を示す。
配列番号20:本発明において使用されるHsp90αのアミノ酸配列を示す。
配列番号21:本発明において使用されるHsp90βの核酸配列を示す。
配列番号22:本発明において使用されるHsp90βのアミノ酸配列を示す。
配列番号23:本発明において使用されるHsp110の核酸配列を示す。
配列番号24:本発明において使用されるHsp110のアミノ酸配列を示す。
【出願人】 【識別番号】500188543
【氏名又は名称】株式会社日本厚生科学研究所
【出願日】 平成16年6月15日(2004.6.15)
【代理人】 【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策

【識別番号】100062409
【弁理士】
【氏名又は名称】安村 高明

【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹


【公開番号】 特開2008−48601(P2008−48601A)
【公開日】 平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願番号】 特願2004−177656(P2004−177656)