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【発明の名称】 糖脂質の製造方法
【発明者】 【氏名】北川 優

【氏名】鈴木 道子

【氏名】山本 周平

【氏名】曽我部 敦

【氏名】北本 大

【氏名】森田 友岳

【氏名】福岡 徳馬

【要約】 【課題】生分解性が高く、低毒性で環境に優しい、糖脂質型バイオサーファクタントのトリアシル体を、食品工業、化粧品工業、医薬品工業、化学工業、環境分野等に広く普及をはかるため、安価で容易に製造する方法を提供する。

【構成】エステル化反応またはエステル交換反応により、糖脂質型バイオサーファクタントに脂肪酸または脂肪酸誘導体を導入する。脂質等が添加され、糖脂質型バイオサーファクタント生産微生物が培養されている培養液の凍結乾燥物を有機溶媒に溶解して反応させることにより、副生成物の少ない糖脂質型バイオサーファクタントのトリアシル体を低コストで製造できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル化反応またはエステル交換反応により、糖脂質型バイオサーファクタントに脂肪酸または脂肪酸誘導体を導入することを特徴とする糖脂質型バイオサーファクタントのトリアシル体製造方法。
【請求項2】
糖脂質型バイオサーファクタントが、マンノシルエリスリトールリピッド(MEL)またはマンノシルマンニトールリピッド(MML)であることを特徴とする請求項1に記載の糖脂質型バイオサーファクタントのトリアシル体製造方法。
【請求項3】
糖脂質型バイオサーファクタントのトリアシル体が、式(I)
【化1】


(式中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立して炭化水素基または酸素原子含有炭化水素基を示し、マンノースの4位および6位の水酸基のいずれか一方、あるいは両方の水素原子がアセチル基に置換されていてもよい。)で表される糖脂質であることを特徴とする請求項2に記載の糖脂質型バイオサーファクタントのトリアシル体製造方法。
【請求項4】
上記式(I)のR1、R2およびR3の炭素数が6〜20であることを特徴とする請求項3に記載の糖脂質型バイオサーファクタントのトリアシル体製造方法。
【請求項5】
上記脂肪酸または脂肪酸誘導体が、油類、高級脂肪酸または合成エステル由来であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の糖脂質型バイオサーファクタントのトリアシル体製造方法。
【請求項6】
疎水性環境下において、以下の(a)、(b)および(c)を混和することにより上記エステル化反応またはエステル交換反応が進行することを特徴とする請求項5に記載の糖脂質型バイオサーファクタントのトリアシル体製造方法。
(a)糖脂質型バイオサーファクタント;
(b)油類、高級脂肪酸および合成エステルから選択される1種または2種以上の混合物;
(c)加水分解酵素
【請求項7】
糖脂質型バイオサーファクタント生産微生物を培養している培養液であって、油類、高級脂肪酸および合成エステルから選択される1種または2種以上の混合物が添加された培養液の凍結乾燥物に含有される上記(a)、(b)および(c)を用いることを特徴とする請求項6に記載の糖脂質型バイオサーファクタントのトリアシル体製造方法。
【請求項8】
糖脂質型バイオサーファクタント生産微生物を培養している培養液であって、油類、高級脂肪酸および合成エステルから選択される1種または2種以上の混合物が添加された培養液中に生成する沈殿物に含有される上記(a)および(b)を用いることを特徴とする請求項6に記載の糖脂質型バイオサーファクタントのトリアシル体製造方法。
【請求項9】
糖脂質型バイオサーファクタント生産微生物を培養している培養液であって、油類、高級脂肪酸および合成エステルから選択される1種または2種以上の混合物が添加された培養液の上清の凍結乾燥物に含有される上記(c)を用いることを特徴とする請求項6に記載の糖脂質型バイオサーファクタントのトリアシル体製造方法。
【請求項10】
上記加水分解酵素が、リパーゼ、プロテアーゼおよびエステラーゼから選択される少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項6に記載の糖脂質型バイオサーファクタントのトリアシル体製造方法。
【請求項11】
上記エステル化反応またはエステル交換反応が、有機溶媒中で進行することを特徴とする請求項6に記載の糖脂質型バイオサーファクタントのトリアシル体製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、糖脂質の製造方法に関するものである。より詳細には、微生物が生産する糖脂質型バイオサーファクタントであるマンノシルエリスリトールリピッドのエリスリトールの水酸基に脂肪酸エステルを有するトリアシル体糖脂質の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
糖脂質等のバイオサーファクタントは、生分解性が高く、低毒性で環境に優しく、新規な生理機能を持つといわれている。それゆえ、食品工業、化粧品工業、医薬品工業、化学工業、環境分野等に広く普及することが期待されており、そのためには、多くの種類のバイオサーファクタントが必要である。しかしながら、現在までに発見されているバイオサーファクタントの種類は、20数種類と少ない。
【0003】
大豆油を炭素源とする選択培地を用いて生産菌の探索を行いCandida antarctica T−34株がマンノシルエリスリトールリピッド(MEL)を大量に生産することが見出されている(非特許文献1)。マンノシルエリスリトールリピッド(MEL)は酵母が作る天然系の界面活性剤であり種々の生理作用が報告されている(非特許文献2)。また最近ではエリスリトールがマンニトールに代わったマンノシルマンニトールリピッド(MML)が見出されている(特許文献1)。バイオサーファクタントの用途としては、抗炎症剤及び抗アレルギー剤(特許文献2)、養毛・育毛剤(特許文献3)としての有用性や、抗菌作用(特許文献4)や表面張力低下作用(特許文献5)が知られている。
【特許文献1】特開2005−104837号公報
【特許文献2】特開2005−68015号公報
【特許文献3】特開2003−261424号公報
【特許文献4】特開昭57−145896号公報
【特許文献5】特開昭61−205450号公報
【非特許文献1】バイオテクノロジー レター、23,1709(2001)
【非特許文献2】ジャーナル オブ バイオサイエンス アンド バイオエンジニアリング、94,187(2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
生分解性が高く、低毒性で環境に優しい、糖脂質型バイオサーファクタントのトリアシル体を、食品工業、化粧品工業、医薬品工業、化学工業、環境分野等に広く普及をはかるため、安価で容易に製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、MEL生産微生物の培養液中に存在するMEL、脂肪および加水分解酵素を利用することにより、高効率かつ安価にトリアシルMELを製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち本発明は、以下の発明を提供するものである。
【0007】
(1)エステル化反応またはエステル交換反応により、糖脂質型バイオサーファクタントに脂肪酸または脂肪酸誘導体を導入することを特徴とする糖脂質型バイオサーファクタントのトリアシル体製造方法。
【0008】
(2)糖脂質型バイオサーファクタントが、マンノシルエリスリトールリピッド(MEL)またはマンノシルマンニトールリピッド(MML)であることを特徴とする(1)に記載の糖脂質型バイオサーファクタントのトリアシル体製造方法。
【0009】
(3)糖脂質型バイオサーファクタントのトリアシル体が、式(I)
【0010】
【化1】


【0011】
(式中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立して炭化水素基または酸素原子含有炭化水素基を示し、マンノースの4位および6位の水酸基のいずれか一方、あるいは両方の水素原子がアセチル基に置換されていてもよい。)で表される糖脂質であることを特徴とする(2)に記載の糖脂質型バイオサーファクタントのトリアシル体製造方法。
【0012】
(4)上記式(I)のR1、R2およびR3の炭素数が6〜20であることを特徴とする(3)に記載の糖脂質型バイオサーファクタントのトリアシル体製造方法。
【0013】
(5)上記脂肪酸または脂肪酸誘導体が、油類、高級脂肪酸または合成エステル由来であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の糖脂質型バイオサーファクタントのトリアシル体製造方法。
【0014】
(6)疎水性環境下において、以下の(a)、(b)および(c)を混和することにより上記エステル化反応またはエステル交換反応が進行することを特徴とする(5)に記載の糖脂質型バイオサーファクタントのトリアシル体製造方法。
(a)糖脂質型バイオサーファクタント;
(b)油類、高級脂肪酸および合成エステルから選択される1種または2種以上の混合物;
(c)加水分解酵素。
【0015】
(7)糖脂質型バイオサーファクタント生産微生物を培養している培養液であって、油類、高級脂肪酸および合成エステルから選択される1種または2種以上の混合物が添加された培養液の凍結乾燥物中に含有される上記(a)、(b)および(c)を用いることを特徴とする(6)に記載の糖脂質型バイオサーファクタントのトリアシル体製造方法。
【0016】
(8)糖脂質型バイオサーファクタント生産微生物を培養している培養液であって、油類、高級脂肪酸および合成エステルから選択される1種または2種以上の混合物が添加された培養液中に生成する沈殿物に含有される上記(a)および(b)を用いることを特徴とする(6)に記載の糖脂質型バイオサーファクタントのトリアシル体製造方法。
【0017】
(9)糖脂質型バイオサーファクタント生産微生物を培養している培養液であって、油類、高級脂肪酸および合成エステルから選択される1種または2種以上の混合物が添加された培養液の上清の凍結乾燥物に含有される上記(c)を用いることを特徴とする(6)に記載の糖脂質型バイオサーファクタントのトリアシル体製造方法。
【0018】
(10)上記加水分解酵素が、リパーゼ、プロテアーゼおよびエステラーゼから選択される少なくとも1種以上であることを特徴とする(6)に記載の糖脂質型バイオサーファクタントのトリアシル体製造方法。
【0019】
(11)上記エステル化反応またはエステル交換反応が、有機溶媒中で進行することを特徴とする(6)に記載の糖脂質型バイオサーファクタントのトリアシル体製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、糖脂質型バイオサーファクタントのトリアシル体を高効率かつ安価に製造することができる。また、糖脂質型バイオサーファクタントに任意の脂肪酸が結合したトリアシル体を容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明に係る糖脂質型バイオサーファクタントのトリアシル体製造方法(以下「本発明に係る製造方法」と記載する)は、エステル化反応またはエステル交換反応により、糖脂質型バイオサーファクタントに脂肪酸または脂肪酸誘導体を導入するものであればよい。
【0022】
「バイオサーファクタント」とは生物によって生み出される界面活性能力や乳化能力を有する物質の総称であり、優れた界面活性や,高い生分解性を示すばかりでなく,様々な生理作用を有していることから合成界面活性剤とは異なる挙動・機能を発現する可能性がある。
【0023】
「糖脂質型バイオサーファクタント」とは、微生物によって生産される天然系の界面活性剤のうち、糖質と脂肪酸部分からなるサーファクタントである。マンノシルエリスリトールリピッド(MEL)、マンノシルマンニトールリピッド(MML)、ソホロリピッド、ラムノリピッド、トレハロースリピッドなどが知られている。いずれも生分解性が高く環境に負荷が少ない、生体に対しても安全性の高い素材である。なかでも、本発明に係る製造方法に用いられる糖脂質型バイオサーファクタントとしては、MELまたはMMLが好適である。
【0024】
MELは、マンノースの4位および6位のアセチル基の有無からMEL−A、MEL−B、MEL−CおよびMEL−Dの4種類が知られている。式(II)にMEL−Aの構造を示す。式(II)中、R1およびR2は炭化水素基を示す。すなわち、MEL−Aは、式(II)中、マンノースの2位、3位に炭素数5〜19のアルカノイル基を有し、マンノースの4位、6位にアセチル基を有する化合物である。なお、MEL−Bは式(II)においてマンノースの4位のAcがHであり、MEL−Cは式(II)においてマンノースの6位のAcがHであり、MEL−Dは式(II)においてマンノースの4位および6位のAcがいずれもHである。
【0025】
【化2】


【0026】
MMLは上記式(II)において、エリスリトールが炭素数の2個多いマンニトールに置換された構造を有する。
【0027】
「糖脂質型バイオサーファクタントのトリアシル体を製造する」とは、例えばMELのエリスリトール部の水酸基やMMLのマンニトール部の水酸基に脂肪酸または脂肪酸誘導体を導入し、3つの脂肪酸側鎖を有する糖脂質を製造することであり、「糖脂質型バイオサーファクタントのトリアシル化」と同義である。
【0028】
上記MELのエリスリトール部の水酸基やMMLのマンニトール部の水酸基への脂肪酸または脂肪酸誘導体の導入は、エステル化反応またはエステル交換反応により行われる。ただし、製造された糖脂質型バイオサーファクタントのトリアシル体の脂肪酸側鎖がMELのエリスリトール部の水酸基やMMLのマンニトール部の水酸基とエステル結合していれば、その反応がエステル化反応であるかエステル交換反応であるかが特定される必要はない。
【0029】
導入される脂肪酸は特に限定されず、飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸でもよい。不飽和脂肪酸の場合、複数の二重結合を有していてもよい。炭素鎖の炭素数は特に限定されないが、6〜20が好ましい。また、炭素鎖は直鎖状であってもよく分岐鎖状であってもよい。脂肪酸誘導体としては、酸素原子を含む脂肪酸を挙げることができる。含まれる酸素原子の数および位置は限定されない。
【0030】
以下、MELを例として、本発明に係る製造方法について説明するが、これに限定されるものではない。
【0031】
本発明に係る製造方法により製造されるMELのトリアシル体は、式(I)で表される構造を有する。
【0032】
【化3】


【0033】
式(I)中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立して炭化水素基または酸素原子含有炭化水素基を示し、マンノースの4位および6位の水酸基のいずれか一方、あるいは両方の水素原子がアセチル基に置換されていてもよい。炭化水素基は飽和結合のみを有していてもよく、不飽和結合を有していてもよい。不飽和結合を有している場合、複数の二重結合を有していてもよい。炭素鎖は直鎖状であってもよく分岐鎖状であってもよい。また、酸素原子含有炭化水素基の場合、含まれる酸素原子の数および位置は限定されない。
【0034】
式(I)中、R1、R2は炭素数が6〜20であることが好ましく、脂肪族アシル基(RCO−)としてマンノースの2位および3位の水酸基とエステル結合をしており、残りの水酸基にはアセチル基がエステル結合していてもよい。R3は炭素数が6〜20であることが好ましく、脂肪族アシル基(RCO−)としてエリスリトールの一級水酸基とエステル結合をしている。
【0035】
本発明に係る製造方法において、MELのエリスリトール部の水酸基に導入される脂肪酸または脂肪酸誘導体は油類、高級脂肪酸または合成エステル由来であることが好ましい。
【0036】
「油類」としては、植物油、動物油、鉱物油およびその硬化油であればよい。具体的には、アボカド油、オリーブ油、ゴマ油、ツバキ油、月見草油、タートル油、マカデミアンナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、ナタネ油、卵黄油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、キリ油、ホホバ油、カカオ脂、ヤシ油、馬油、パーム油、パーム核油、牛脂、羊脂、豚脂、ラノリン、鯨ロウ、ミツロウ、カルナウバロウ、モクロウ、キャンデリラロウ、スクワラン等の動植物油およびその硬化油。流動パラフィン、ワセリン等の鉱物油、トリパルミチン酸グリセリン等の合成トリグリセリンが挙げられる。好ましくはアボカド油、オリーブ油、ゴマ油、ツバキ油、月見草油、タートル油、マカデミアンナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、ナタネ油、卵黄油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、より好ましくはオリーブ油、大豆油である。
【0037】
「高級脂肪酸」としては、例えばカプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、イソステアリン酸、ウンデシン酸、トール酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸などが挙げられる。好ましくはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアリン酸、ウンデシレン酸、より好ましくはオレイン酸、リノール酸、ウンデシレン酸である。
【0038】
「合成エステル」としては、例えば、カプロン酸メチル、カプリル酸メチル、カプリン酸メチル、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、オレイン酸メチル、リノール酸メチル、リノレン酸メチル、ステアリン酸メチル、ウンデシン酸メチル、カプロン酸エチル、カプリル酸エチル、カプリン酸エチル、ラウリン酸エチル、ミリスチン酸エチル、パルミチン酸エチル、オレイン酸エチル、リノール酸エチル、リノレン酸エチル、ステアリン酸エチル、ウンデシン酸エチル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、オレイン酸ビニル、リノール酸ビニル、リノレン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ウンデシン酸ビニル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、オレンイ酸デシル、ジメチルオクタン酸、乳酸セチル、乳酸ミリスチル等が挙げられる。好ましくはラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、オレイン酸メチル、リノール酸メチル、リノレン酸メチル、ステアリン酸メチル、ウンデシレン酸メチル、より好ましくはオレイン酸メチル、リノール酸メチル、ウンデシレン酸メチルである。
【0039】
本発明に係る製造方法は、疎水性環境下において、(a)糖脂質型バイオサーファクタント;(b)油類、高級脂肪酸および合成エステルから選択される1種または2種以上の混合物;および(c)加水分解酵素を混和することによりエステル化反応またはエステル交換反応が進行するものであればよい。
【0040】
疎水性環境下は特に限定されないが、有機溶媒中において上記(a)、(b)および(c)を反応させることを挙げることができる。さらに、反応溶液中にモレキュラーシーブスを加えてもよい。有機溶媒としては、上記(a)、(b)および(c)を可溶化できるものであれば限定されない。全部を可溶化できなくても一部を可溶化できるものであればよい。また、有機溶媒は複数の有機溶媒の混合物でもよい。具体的には、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アセトン、プロパノン、ブタノン、ペンタン−2−オン、1,2−エタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジオキサン、アセトニトリル、2−メチル−ブタン−2−オール、第3級ブタノール、2−メチルプロパノール、4−ヒドロキシ−2−メチルペンタノン、テトラヒドロフラン、ヘキサン、DMF、DMSO、ピリジン、メチルエチルケトンなどを挙げることができる。好ましくはアセトン、テトラヒドロフラン、第3級ブタノール、アセトニトリル、ジオキサン、より好ましくはアセトンである。
【0041】
また、疎水性環境は無溶媒でも構わない。
【0042】
加水分解酵素としては、リパーゼ、プロテアーゼ、エステラーゼが挙げられる。これらの中から選択される少なくとも1種を用いることが好ましく、複数の加水分解酵素を用いてもよい。好ましくはリパーゼ、エステラーゼ、より好ましくはリパーゼである。
【0043】
本発明に係る製造方法においては、糖脂質型バイオサーファクタント生産微生物を培養している培養液であって、油類、高級脂肪酸および合成エステルから選択される1種または2種以上の混合物が添加された培養液の凍結乾燥物に含有される上記(a)、(b)および(c)を用いることが好ましい。
【0044】
また、上記培養液中に生成する沈殿物に含有される上記(a)および(b)を用い、(c)を外部から添加してもよい。
【0045】
さらに、上記培養液の上清に含有される上記(c)を用いることができる。
【0046】
MEL生産微生物としては、本発明者らはPseudozyma antarctica NBRC 10736 を用いているがこれに限定されず、Candida antarctica、Candida sp.、等を用いることができる。これらの微生物の培養により、容易にMELが得られることは当業者に周知である。
【0047】
上記MEL生産微生物の培養に用いる培養液としては、酵母エキス、ペプトン等のN源、グルコース、フルクトース等のC源、および硝酸ナトリウム、リン酸水素二カリウム、硫酸マグネシウム7水塩等の無機塩類からなる一般的な組成の培養液を用いることができ、さらに油類、高級脂肪酸および合成エステルから選択される1種または2種以上の混合物が添加される。なかでも植物油脂を添加することが好ましい。植物油脂は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、大豆油、菜種油、コーン油、ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、パーム油などが挙げられ、これらの中でも、大豆油がMELの生産効率(生産量、生産速度、および収率)を向上させることができる点で特に好ましい。これらは、1種を単独で、または2種以上を併用しても構わない。
【0048】
培養条件(培養温度、培養時間など)は、任意に設定できる。例えば、本発明者らは、Pseudozyma antarctica NBRC 10736 を30℃、200rpm(攪拌回転)、0.5L/min(Air)の条件で5L−jarを用いて11日間培養し、大豆油を2日おきに追加添加するという条件で培養している。ただし、これに限定されるものではない。
【0049】
MELを製造するためにMEL生産微生物を上記のようにして培養した培養液(菌体を含む)を凍結乾燥すれば、上記(a)、(b)および(c)を含有する凍結乾燥物が得られる。培養液の凍結乾燥方法は特に限定されず、市販の凍結乾燥装置等を用いて公知の方法により行うことができる。培養液を凍結乾燥する理由は、加水分解酵素を触媒としてエステル化反応またはエステル交換反応を行う場合、水が存在していると加水分解反応が生じるためエステル化反応またはエステル交換反応が進行し難くなるためである。
【0050】
また、培養液中に生成される沈殿物は、培養液を遠心分離し上清を除去することにより取得することができる。この沈殿物には上記(a)および(b)が含まれている。得られた沈殿物は、そのままトリアシル体の製造に用いることができる。あるいは、沈殿物に酢酸エチル等の適当な抽出溶媒を添加し、十分攪拌後遠心分離して得られた上清をトリアシル体の製造に用いてもよい。さらに当該上清をエバポレーターで濃縮したものをトリアシル体の製造に用いてもよい。なお、遠心分離により除去した培養液上清中にも(a)が含まれるため、上清を酢酸エチルで抽出して得られた(a)をトリアシル体の製造に用いることができる。
【0051】
また、培養液を遠心分離して上清を取得し、これを凍結乾燥することにより上記(c)を含有する凍結乾燥物が得られる。培養液の凍結乾燥方法は特に限定されず、市販の凍結乾燥装置等を用いて公知の方法により行うことができる。
【0052】
また、培養液からMELを抽出または精製し、これを上記(a)として用いることができる。MELの抽出(回収)、精製方法としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、例えば、培養液を遠心分離して油分を回収し、酢酸エチルエステルで抽出濃縮することにより回収できる。
【0053】
抽出溶媒としては、水、アルコール類(例えば、メタノール、無水エタノール、エタノールなどの低級アルコール、またはプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールなどの多価アルコール)、アセトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、ジオキサン、アセトニトリル、酢酸エチルなどのエステル類、キシレン、ベンゼン、クロロホルムなどの有機溶媒を、単独であるいは2種類以上の混液を任意に組み合わせて使用することができ、また、各々の溶媒抽出物が組み合わされたものでも使用することができる。
【0054】
抽出方法は特に制限されるものはないが、通常、常温から常圧下での溶媒の沸点の範囲であればよく、抽出後は濾過またはイオン交換樹脂を用い、吸着・脱色・精製して溶液状、ペースト状、ゲル状、粉末状とすればよい。多くの場合は、そのままの状態で利用できるが、必要であれば、その効力に影響のない範囲でさらに脱臭、脱色などの精製処理を加えてもよい。脱臭・脱色等の精製処理手段としては、活性炭カラムなどを用いればよく、抽出物質により一般的に適用される通常の手段を任意に選択して行えばよい。必要に応じて、シリカゲルカラムを用いて精製することにより、純度の高いMELを得ることができる。なお、得られるMELの中に少量のトリアシルMELが含まれる。
【0055】
以下に、具体的なトリアシルMEL製造方法について説明するが、これらに限定されるものではない。
【0056】
(i)精製MELの有機溶媒溶液に、油類、高級脂肪酸および合成エステルから選択される1種または2種以上の混合物(以下「油脂等」と記載する)並びに加水分解酵素を添加して反応させる場合
精製MELは上述のように培養液から精製したMELを用いることができる。なお、最終的に活性炭カラムやシリカゲルカラムを用いて脱臭、脱色処理をした精製MELに限定されず、その前段階において抽出後濾過またはイオン交換樹脂処理を施した粗精製MELも使用できる。
【0057】
有機溶媒は特に限定されないが、アセトンが好ましい。
【0058】
加水分解酵素は、市販のリパーゼ(例えば、ノボザイム435(ノボザイムズ社製)など)を好適に用いることができる。または、上述の培養液上清の凍結乾燥物(以下「上清凍結乾燥物」と記載する)を用いてもよい。上清凍結乾燥物を用いると加水分解酵素を購入する必要がないためコストを低く抑えることができる。
【0059】
添加する油脂等は特に限定されない。MEL製造用培養液に添加した油脂等と同一のものを添加してもよく、異なるものを添加してもよい。ここで添加した油脂等によりMELのエリスリトール部に導入される脂肪酸基が決定されるので、添加する油脂等を適宜選択することにより、所望の脂肪酸がエリスリトール部に導入されたトリアシルMELを製造することが可能となる。
【0060】
この製造方法の場合、反応温度は10〜100℃、好ましくは20〜50℃、より好ましくは25〜40℃で、1日〜7日間攪拌すればよい。また、反応液にモレキュラーシーブスを添加してもよい。この製造方法により、材料として添加したMELがほぼ定量的にトリアシル体となる。この知見は当業者でも容易に予測できないことであった。
【0061】
(ii)上述の培養液中の沈殿物(以下「培養沈殿物」と記載する)を用いる場合
培養沈殿物中にはMELおよび油脂等が含まれている。この培養沈殿物を有機溶媒に溶解し、これに加水分解酵素を添加して反応させればよい。さらにモレキュラーシーブスを添加してもよい。
【0062】
有機溶媒は特に限定されないが、アセトンが好ましい。加水分解酵素は、市販のリパーゼ(例えば、ノボザイム435(ノボザイムズ社製)など)を好適に用いることができる。または、上記上清凍結乾燥物を用いてもよい。
【0063】
この製造方法の場合、反応温度は10〜100℃、好ましくは20〜50℃、より好ましくは25〜40℃で、1日〜7日間攪拌すればよい。これにより、材料として添加したMELがほぼ定量的にトリアシル体となる。この知見は当業者でも容易に予測できないことであった。
【0064】
この製造方法において、市販の加水分解酵素を用いずに上清凍結乾燥物を用いれば、MELを製造するための培養液のみからトリアシルMELを製造することができ、何ら他の原料を購入する必要がないため、安価にトリアシルMELを製造することが可能となる。
【0065】
(iii)上述の培養液の凍結乾燥物(以下「培養液凍結乾燥物」と記載する)を用いる場合
培養液凍結乾燥物にはMEL、油脂等および加水分解酵素が含まれている。したがって、培養液凍結乾燥物を有機溶媒に溶解し、反応させればよい。さらにモレキュラーシーブスを添加してもよい。有機溶媒は特に限定されないが、アセトンが好ましい。
【0066】
この製造方法の場合、反応温度は10〜100℃、好ましくは20〜50℃、より好ましくは25〜40℃で、1日〜7日間攪拌すればよい。
【0067】
この製造方法は、MELを製造するための培養液を凍結乾燥するのみで、何ら他の原料を購入する必要がない。また、培養液を上清と沈殿物とに分けてそれぞれ別の操作を行う必要もない。したがって、非常に簡便かつ低コストで効率よくトリアシルMELを製造することが可能となる。
【0068】
以上のように、本発明に係る製造方法を用いれば、副生成物がほとんど生成しないトリアシルMELの低コスト製造が可能となる。また、便宜上MELを例として本発明を説明したが、トリアシルMELの事例を示せば、他の糖脂質型バイオサーファクタント(例えば、MMLなど)に応用できることを、当業者は容易に理解する。
【0069】
また、本発明に係る製造方法を用いれば、添加する油類や高級脂肪酸や合成エステルを任意に変えることにより、培養液中から得られない新規なトリアシルMELも容易にデザインできる。この点で、本発明は、糖脂質型バイオサーファクタントを応用していく上で、単品ではなくいくつかの物性が異なる材を提供する方法を示したものである。一例として挙げたトリアシルMELは、従来のMELに比べて疎水性が高く、疎水性を必要とする用途に応じたMEL類の一つとして産業に寄与するものである。
【0070】
なお、発明を実施するための最良の形態の項においてなした具体的な実施態様および以下の実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、当業者は、本発明の精神および添付の特許請求の範囲内で変更して実施することができる。
【実施例】
【0071】
以下の実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これらに何ら限定されるものではない。
【0072】
〔実施例1:大豆油を原料にしたMEL―A、トリアシルMELの製造〕
種菌培養はPseudozyma antarctica NBRC 10736を種培地(20ml/500ml容坂口フラスコ×4本)に1roop植菌して実施した。30℃、180rpmにて一晩培養した。得られた培養液を種菌とした。種培地組成は4% Glucose、0.3% NaNO、0.02% MgSO・HO、0.02% KHPO、0.1% yeast extractとした。MEL製造培養は上記種菌100mlを生産培地2.0L(5L−jar)に植菌し、30℃、200rpm(攪拌回転)、0.5L/min(Air)の条件で5L−jarを用いて11日間培養し、大豆油30gに等量の水を加え2日おきに追加添加をした。生産培地組成は、3% 大豆油、0.02% MgSO・HO、0.02% KHPO、0.1% yeast extractとした。得られた培養液2Lを500ml容遠心管×6本に分注し、遠心分離(6500rpm、30min)した。上清を取り除き、沈殿(菌体)を回収した。沈殿に、50mlの酢酸エチルを加え、十分攪拌後、遠心(8500rpm、30min)し、沈殿と上清に分け、上清をエバポーレーターで濃縮し、粗抽出物86gを得た。シリカゲルを用いて、ヘキサン:アセトン=5:1、ヘキサン:アセトン=1:2で溶出し、MEL―A80gとトリアシルMELとしてMELのエリスリトールリノール酸エステル体(LI−MEL(SB))3.5gを単離し、その構造をNMRで確認した。C−NMR解析の結果、すなわち、大豆油から製造したMELのトリアシル体のC−NMR(溶媒:DMSO−d6における各炭素原子のケミカルシフト値(ppm)を、表1に示した。なお、表1のE1,E2,E3,E4,M1,M2,M3,M4,M5,M6は下記式(III)のマンノシルエリスリトール骨格の炭素原子を示す。
【0073】
【化4】


【0074】
【表1】


【0075】
〔実施例2:オリーブ油を原料にしたMEL―A、トリアシルMELの製造〕
種菌培養はPseudozyma antarctica NBRC 10736を種培地(20ml/500ml容坂口フラスコ×4本)に1roop植菌して実施した。30℃、180rpmにて一晩培養した。得られた培養液を種菌とした。種培地組成は4% Glucose、0.3% NaNO、0.02% MgSO・HO、0.02% KHPO、0.1% yeast extractとした。MEL製造培養は上記種菌100mlを生産培地2.0L(5L−jar)に植菌し、30℃、200rpm(攪拌回転)、0.5L/min(Air)の条件で5L−jarを用いて11日間培養し、オリーブ油30gに等量の水を加え2日おきに追加添加をした。生産培地組成は、3% オリーブ油、0.02% MgSO・HO、0.02% KHPO、0.1% yeast extractとした。得られた培養液2Lを500ml容遠心管×6本に分注し、遠心分離(6500rpm、30min)した。上清を取り除き、沈殿(菌体)を回収した。沈殿に、50mlの酢酸エチルを加え、十分攪拌後、遠心(8500rpm、30min)し、沈殿と上清に分け、上清をエバポレーターで濃縮し、粗抽出物70gを得た。シリカゲルを用いて、ヘキサン:アセトン=5:1、ヘキサン:アセトン=1:2で溶出し、MEL―A60gとトリアシルMELとしてMELのエリスリトールオレイン酸エステル体(OL−MEL(OL))2.5gを単離し、その構造をNMRで確認した。C−NMR解析の結果、すなわち、オリーブ油から製造したMELのトリシル体のC−NMR(溶媒:DMSO−d6における各炭素原子のケミカルシフト値(ppm)を、表2に示した。表2のE1,E2,E3,E4,M1,M2,M3,M4,M5,M6は下記式(IV)のマンノシルエリスリトール骨格の炭素原子を示す。
【0076】
【化5】


【0077】
【表2】


【0078】
〔実施例3:培養粗抽出物への酵素添加によるトリアシルMELの合成〕
実施例1の大豆油で培養して得られた粗抽出物1.5gをアセトン10mlに溶かし、モレキュラーシーブス4A 1g、ノボザイム435 200mgを加え、室温(20℃)で3日間撹拌した。反応液を濾過して酵素粒子を除去した後、エバポレーターを用いてアセトンを留去し、シリカゲルカラムを用いて酢酸エチル:ヘキサン(1:5)で流して生成物を単離した。トリアシルMELとしてMELのエリスリトールリノール酸エステル体(LI−MEL(SB))の淡黄色油状生成物1.5gを得た。なお、モレキュラーシーブスを加えなくてもよいがその場合は反応液中にフリーの脂肪酸が残存するので、反応液を酢酸エチルと水で分液し、水層を除去する操作が必要である。C−NMR解析の結果は、上記実施例1で単離したLI−MEL(SB)の値(表1参照)と同様の値であった。
【0079】
〔実施例4:培養液を用いたトリアシルMELの合成〕
実施例1で得られた大豆油培養液20mlをそのまま凍結乾燥後、アセトン10mlに溶かし、モレキュラーシーブス4A 1gを加え、室温(20℃)で3日間撹拌した。エバポレーターを用いてアセトンを留去し、シリカゲルカラムを用いて酢酸エチル:ヘキサン(1:5)で流して生成物を単離した。トリアシルMELとしてMELのエリスリトールリノール酸エステル体(LI−MEL(SB))の淡黄色油状生成物0.8gを得た。なお、モレキュラーシーブスを加えなくてもよいがその場合は反応液中にフリーの脂肪酸が残存するので、反応液を酢酸エチルと水で分液し、水層を除去する操作が必要である。C−NMR解析の結果は、上記実施例1で単離したLI−MEL(SB)の値(表1参照)と同様の値であった。
【0080】
〔実施例5:オレイン酸を有するトリアシルMELの酵素合成〕
(1)大豆油を原料に実施例1で得られたMEL−A1.48gをアセトン10mlに溶かし、オリーブ油4ml、モレキュラーシーブス4A 1g、ノボザイム435 200mgを加え、室温(20℃)で3日間撹拌した。反応液を濾過して酵素粒子を除去した後、エバポレーターを用いてアセトンを留去し、シリカゲルカラムを用いて酢酸エチル:ヘキサン(1:5)で流して生成物を単離した。トリアシルMELとしてMELのエリスリトールオレイン酸エステル体(OL−MEL(SB))の淡黄色油状生成物1.4gを得た。C−NMR解析の結果は表1に示した。なお、モレキュラーシーブスを加えなくてもよいがその場合は反応液中にフリーの脂肪酸が残存するので、反応液を酢酸エチルと水で分液し、水層を除去する操作が必要である。
【0081】
(2)オリーブ油を原料に実施例2で得られたMEL−Aを用いる以外は上記(1)と同様に行った場合も、トリアシルMELとしてエリスリトールオレイン酸エステル体(OL−MEL(OL))1.4gが得られた。C−NMR解析の結果は、上記実施例2で単離したOL−MEL(OL)の値(表2参照)と同様の値であった。
【0082】
〔実施例6:リノール酸を有するトリアシルMELの酵素合成〕
(1)上記実施例5(1)において、オリーブ油を大豆油に変更した以外は同様の方法で反応を行い、トリアシルMELとしてエリスリトールリノール酸エステル体(LI−MEL(SB))の淡黄色油状生成物1.3gを得た。C−NMR解析の結果は、上記実施例1で単離したLI−MEL(SB)の値(表1参照)と同様の値であった。
【0083】
(2)上記(1)において、実施例1で得られたMEL−Aを実施例2で得られたMEL−Aに変更した以外は同様の方法で反応行った場合も、トリアシルMELとしてエリスリトールリノール酸エステル体(LI−MEL(OL))1.45gが得られた。C−NMR解析の結果は表2に示した。
【0084】
〔実施例7:ウンデシレン酸を有するトリアシルMELの酵素合成〕
(1)上記実施例5(1)において、オリーブ油をウンデシレン酸に変更した以外は同様の方法で反応を行い、ウンデシレン酸エステルをエリスリトール部に有するトリアシルMEL(UNDE−MEL(SB))の淡黄色油状生成物1.35gを得た。C−NMR解析の結果は表1に示した。
【0085】
(2)上記(1)において、実施例1で得られたMEL−Aを実施例2で得られたMEL−Aに変更した以外は同様の方法で反応行った場合も、ウンデシレン酸エステルをエリスリトール部に有するトリアシルMEL(UNDE−MEL(OL))1.25gが得られた。C−NMR解析の結果は表2に示した。
【0086】
〔実施例8:ステアリン酸を有するトリアシルMELの酵素合成〕
上記実施例5(2)において、オリーブ油をステアリン酸変更した以外は同様の方法で反応を行い、ステアリン酸エステルをエリスリトール部に有するトリアシルMEL(STE−MEL(OL))の淡黄色油状生成物1.5gを得た。C−NMR解析の結果は表2に示した。
【0087】
表1および表2より、大豆油あるいはオリーブ油を原料に製造したMELのケミカルシフト値とトリアシルMELのシフト値を比べ、E4炭素原子が低磁場シフトし隣接するE3,E2炭素が高磁場シフトしていることから、エリスルトールの末端の一級水酸基に脂肪酸が結合していることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、糖脂質型バイオサーファクタントのトリアシル体を低コストで製造できる技術を提供するものであり、食品産業、化粧品産業、医薬品産業、化学産業、環境分野等に広く利用可能である。
【出願人】 【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡績株式会社
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
【出願日】 平成18年8月11日(2006.8.11)
【代理人】 【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人原謙三国際特許事務所


【公開番号】 特開2008−43210(P2008−43210A)
【公開日】 平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願番号】 特願2006−219166(P2006−219166)